JP2020141608A - α−エチル化された糖類の製造方法 - Google Patents

α−エチル化された糖類の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】食習慣のある清酒製造工程での生産を模した、安全なα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法及び精製方法を提供することを目的とする。【解決手段】エタノールと、マルトースとを含む溶液に、α−グルコシダーゼを添加することにより合成液を調製する工程と、前記合成液を酵素反応させることによりα−エチルイソマルトシド及びα−エチルマルトシドを酵素的に生成する酵素反応工程と、を有する、α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法により解決する。【選択図】図5

Description

本発明は、α−エチル化された糖類を酵素的に製造する方法、具体的には、麹菌由来のα−グルコシダーゼを利用してα−エチルイソマルトシド及びα−エチルマルトシドを製造する方法に関する。
清酒中に多く含まれる配糖体としてα−エチルグルコシド(α−EG)が知られている。α−EGは清酒中に0.24〜0.71%含まれ、即効性の甘味、遅効性の温和な苦味を呈する呈味物質で、非う蝕性、体重増加抑制効果、肝保護作用、更に保湿効果、あれ肌の予防及び改善作用を持つため化粧品に用いられている。また、α−EGはα−グルコシダーゼの糖転移作用によって生成される配糖体であることが知られている。
α−エチルグルコシド(α−EG)の製造方法としては、例えば、特開2019−24360号公報に、清酒粕を含む醪を蒸留し焼酎を製造する工程において、前記醪にデンプン原料及びα−グルコシターゼを添加して混合する工程と、前記混合する工程で得られた混合物を、15℃以上25℃以下の温度で発酵させる工程と、を含む、エチル−α−D−グルコシドの製造方法が記載されている(特許文献1)。
一方、α−エチルグルコシド(α−EG)にグルコース1分子が脱水縮合したα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドが知られている。α−エチルマルトシド又はα−エチルイソマルトシドの合成方法としては、金属触媒を用いたα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの合成方法(非特許文献1)、放線菌由来のイソマルトデキストラナーゼを用いたα−エチルイソマルトシドの合成方法(非特許文献2)が報告されている。
特開2019−24360号公報
Tomonari,T.,et al.:Chemistry Letters,44,846-848 (2015) Yeon-Kye,K.,et al.: Bioscience,Biotechnology and Biochemistry,59,1367-1369 (1995)
上述したように、従来のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの合成方法は、金属触媒を用いた有機化学的な合成方法や、放線菌由来の酵素を用いた合成方法である。そのため、経口摂取を目的としたサプリメントの用途や、化粧水やクリームなどの化粧品の用途に利用される原料とされる場合、金属触媒や放線菌に対する不安から、自然素材や安全素材を志向する消費者が使用する際の心理的な安心感がないことが問題であった。
そこで、本発明は、食習慣のある清酒製造工程での生産を模した、安全なα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法及び精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らはα−グルコシダーゼ遺伝子(agdA)破壊株を用いて作製した製成酒を分析したところ、偶然にも、α−エチルグルコシド(α−EG)にグルコース1分子が脱水縮合したα−エチルマルトシドと思われる化合物が減少することが示された。そこで、粗精製α−グルコシダーゼによってα−EMを生産し、核磁気共鳴装置(NMR)によって構造解析を行ったところ、α−EMはα−エチルマルトシド(Ethyl α−maltoside)及びα−エチルイソマルトシド(Ethyl α−isomaltoside)であることが判明した。
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、エタノールと、マルトースとを含む溶液に、α−グルコシダーゼを添加することにより合成液を調製する工程と、前記合成液を酵素反応させることによりα−エチルイソマルトシド及びα−エチルマルトシドを酵素的に生成する酵素反応工程と、を有する、α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、一方で、本発明はアルペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を用いており、本菌は本国において長い食経験があることから、製造されるα−エチルマルトシド(Ethyl α−maltoside)及びα−エチルイソマルトシド(Ethyl α−isomaltoside)は安全性において優れている。更に、酵素精製方法が簡便であることも特長である。
α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドは清酒中を含め、天然では存在が確認されていなかった新規な配糖体である。前駆物質のα−EGは様々な生理活性を示すことから、α−EMも同様に生理活性を示すことが期待される。
限外濾過処理試料のSDS−PAGEの結果を示す図である。 α−EM、α−EG及びオリゴ糖生成量に対するα−グルコシダーゼ濃度の影響を検討した結果を示す図である。 インタクトセル処理前後のα−EM合成液のクロマトグラムである。 インタクトセル処理済α−EM合成液のクロマトグラムである。 α−EMのクロマトグラムである。 α−エチルマルトシドのクロマトグラムである。 α−エチルイソマルトシドのクロマトグラムである。 α−エチルマルトシドの構造を確認した際のH−NMRチャートである。 α−エチルイソマルトシドの構造を確認した際のH−NMRチャートである。
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係るα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法は、エタノールと、マルトースとを含む溶液に、α−グルコシダーゼを添加することにより合成液を調製する工程と、前記合成液を酵素反応させることによりα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを酵素的に生成する酵素反応工程と、を有する、
本実施形態において生産されるα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの構造を下記に示す。
α−エチルマルトシド(α−EM)はα−エチルグルコシド(α−EG)にグルコース1分子が脱水縮合した構造であり、α−エチルイソマルトシド(α−EiM)はα−エチルマルトシド(α−EM)の構造異性体である。本実施形態においては、α−エチルイソマルトシドとα−エチルマルトシドの混合物として生産される。
本実施形態において、α−グルコシダーゼは、アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌由来の酵素であることが好ましい。アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌としては、例えば、アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)、アスペルギルス・ルーチュエンシス(A.luchuensis)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・カワチ(A.kawachii)等を挙げることができる。これらのアスペルギルス属糸状菌は清酒、味噌、醤油、焼酎又は泡盛製造における麹菌として長年利用されてきた実績があるため、食習慣のない他の微生物由来のα−グルコシダーゼと比較してその安全性は極めて高い。
前記アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌は、α−グルコシダーゼ遺伝子(agdA)を組み込み作製したAgdA高発現株であることが、酵素生産の観点から好ましい。具体的には、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受領番号NITE AP−02912として寄託されたNTAA1株であることが好ましい。
本実施形態において、エタノール濃度は、20〜60重量%であることが好ましく、30〜40重量%であることがさらに好ましい。エタノール濃度を上記の範囲とすることで、マルトースの加水分解に対する糖転移の割合を高めることができる。
本実施形態において、マルトース濃度は、1〜10重量%であることが好ましく、2.5〜7.5重量%であることがさらに好ましい。マルトース濃度を上記の範囲とすることで、残存するマルトースを減らし、α−EMやα−EiMの割合を高めることができる。
本実施形態において、α−グルコシダーゼ濃度は、0.5unit/100ml以上であることが好ましく、70unit/100ml以上であることがさらに好ましい。α−グルコシダーゼ濃度が低いとオリゴ糖濃度が高くなるため、最後にα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを分離精製する観点からは、α−グルコシダーゼ濃度を高くした方が精製効率がよくなる。
前記エタノール及び前記マルトースを溶解する溶液は、酵素反応が最適条件で行われる溶液であれば特に限定はないが、後述するように、α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを分離精製する観点からは、緩衝液を用いることが好ましく、好ましい緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、グッドバッファー緩衝液等を挙げることができる。また、溶液のpHは、α−グルコシダーゼの至適pHを考慮して、4.0〜8.0とすることが好ましい。
本実施形態において、酵素反応工程は、30〜40℃、15〜30時間反応させることが好ましい。
本実施形態においては、さらに、前記酵素反応工程の後、80℃以上で10分以上加熱することにより、酵素反応を停止する加熱処理工程を有することが好ましい。加熱処理工程はα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの酵素的生産には影響はないが、残存しているマルトースやその他オリゴ糖を基質として、さまざまなオリゴ糖が生成する可能性があり、後述する分離精製が困難になる可能性があることから、加熱処理により、酵素反応を停止したほうが好ましい。
本実施形態においては、さらに、前記加熱処理工程の後、酵母を添加することにより、酵素反応液中に存在するグルコースを酵母により消費させるインタクトセル処理工程を有することが好ましい。
液体クロマトグラフィーでは、グルコースのフラクションとα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドのフラクションが近い位置にあるため、グルコース濃度が高いほどα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを分離しにくくなる。インタクトセル処理により、酵素反応によって生成したグルコースを酵母が消費し、後述する分離精製工程において、より純度の高いα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドとすることができる。
酵母の種類は、グルコースを資化できるものであれば特に限定はないが、安全性の面から、従来から清酒製造で利用されているサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)属の酵母を利用することが好ましい。酵母の添加量は特に限定はないが、多ければそれだけグルコース消費も早くなるため、添加前に前培養した酵母を用いることが好ましい。なお、培地成分の混入を防ぐため、前培養した酵母は蒸留水等で洗浄しておくことが好ましい。
インタクトセル処理工程は、好気的条件下で実施することが、酵母の増殖を促しグルコース消費速度も上がるため好ましい。また、温度は25〜35℃、時間は1〜5時間ほどで、溶液中のグルコースをほぼ消費することができる。インタクトセル処理終了後は、遠心分離や濾過などにより、酵母を分離回収することが好ましい。なお、この工程によってグリセロールが生産されることがあるが、微量であるため、後述する分離精製工程には影響しない。
本実施形態においては、さらに、前記インタクトセル処理工程の後、α−エチルマルトシドと、α−エチルイソマルトシドとを分離精製する分離精製工程を有することが好ましい。
前記分離精製工程は、特に限定はないが、例えば、前記インタクトセル処理した溶液を全糖40%に調整する工程と、液体クロマトグラフィーによりα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを含むフラクションを回収する工程と、前記α−エチルイソマルトシド及びα−エチルマルトシドを含むフラクションを濃縮し、再度液体クロマトグラフィーによりα−エチルイソマルトシドを含むフラクションと、α−エチルマルトシドを含むフラクションをそれぞれ回収する工程と、回収液を凍結乾燥する工程と、を有することが好ましい。
1.α−グルコシダーゼの精製
<目的>
麹菌が生産するプロテアーゼや、グルコアミラーゼを除去し、α−エチルマルトシド(α−EM)及びα−エチルイソマルトシド(α−EiM)合成に用いるα−グルコシダーゼを精製することを目的とした。
<方法>
(1)供試菌株
アスペルギルス・オリゼー(Aspergilus oryzae)NTAA1株(受領番号NITE AP−02912)を使用した。この菌株は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergilus oryzae)niaD300株にagdAを組み込み作製したAgdA高発現株である。
(2)培養条件
YPM(1:1:5)培地を300mL△フラスコ5本に100 mL分注し、それぞれNTAA1株を1白金耳接種した。30℃、130rpmで6日間振とう培養した後、Miracloth(Millipore)によって菌体を除去し、培養液を得た。
(3)限外濾過
培養液を100kDaカットの限外ろ過フィルター(Amicon Ultra−15mL Centrifugal Filters Ultracel−100K:Millipore)を用いて、4℃、5000Gで遠心ろ過した。
(4)活性測定
α−グルコシダーゼ(以下「AGL」という。)活性を糖化力分別定量キット(キッコーマンバイオケミファ株式会社)で測定した。
(5)総タンパク量
試料の総タンパク量をUV法で測定した。a=0.7b(a:吸光度、b:タンパク質濃度(mg/ml)、波長:280nm)とした。
(6)SDS−PAGE
試料50μLに、2×SDS化サンプルバッファーを50μL加えボルテックスで撹拌した後、100℃で3分煮沸し、SDS化した。泳動ゲルの分離ゲルはアクリルアミド濃度10%のものを作製し、分子量マーカー(Bluestar Prestained Maker MWP03:NIPPON Genetics EUROPE GmbH)を5μL、SDS化した試料を10μLアプライし、20mAで80分泳動し、CBB染色した。
<結果>
(2)の培養によって、培養液が260 mL得られた。このうち、210 mLを限外濾過したところ、濾過残液が21mL得られた(表1)。限外濾過後AGL活性は約6.4倍に濃縮されていた。収量は64%で一部のAgdAが失われているが、SDS−PAGEによってAgdAタンパク質のバンドは濃く検出され、精製度は6.2となった事から、AgdAタンパク質以外のタンパク質が除去され、AgdAタンパク質が濃縮されていることが示された(図1)。
2.α−EMの合成
<目的>
粗精製AgdAを用いてα−EM及びα−EiM(これらをまとめて「α−EM等」ということがある)を合成することを目的とした。
<方法>
(1)合成条件
α−EM等合成液をエタノール40%、マルトース5%、酢酸緩衝液10mM(pH5.0)、粗精製α−グルコシダーゼ0.18unit/mLに調製し、37℃で48h反応させることによりα−EM及びα−EiMを合成した。80℃で10min加熱することで反応を停止させた。
(2)HPLC条件
液体クロマトグラフィーにはSIL−20A、SCL−10Avp及びLC−20AD(株式会社島津製作所)を用い、カラムはShodex SUGAR SZ5532(6.0×150mm)を用いた。導入量は5μL、流速は0.9mL/minとし、25%Milli−Q Water/75%アセトニトリルのアイソクラティック条件で行った。検出器はshodex RI−501を用いた。
<結果>
37℃で48h反応させたα−EM等合成液をHPLCによって分析したところ、全不揮発成分に対して2.7%のα−EM等が合成された。α−EM等のピークは溶出時間4.8minと5.5minに2つ確認され、溶出時間の早いものがα−エチルマルトシド(α−EM)、遅いものがα−エチルイソマルトシド(α−EiM)であった。これらはおよそ1:19の割合で生産された(図2においては単に「α−EM」と表記する)。
なお、本実施例では粗精製α−グルコシダーゼを0.18unit/mLに調製しているが、これよりα−グルコシダーゼ濃度を減らした場合にもα−EM等は生成される(図2)。しかし、オリゴ糖濃度が高くなるため、α−EM及びα−EiMの精製を考慮するとα−グルコシダーゼ濃度を高くした方が精製効率は良い。
3.インタクトセル処理によるグルコースの消費
<目的>
効率的な精製を行うには、α−EM及びα−EiM以外の不揮発性成分含量が少ないことが合成液として望ましい。前記2で作成したα−EM等合成液中に多く含まれているグルコースを除去するため、酵母を用いたインタクトセル処理によって、グルコースを消費することを目的とした(表2)。
<方法>
(1)酵母前培養
供試菌株にはきょうかい酵母901号を用いた。GYP(2:0.5:0.5)培地をα−EM等合成液の3倍容量調製し、酵母を1白金耳接種後、30℃で2日間静置培養した。
(2)菌体洗浄
前記(1)で前培養した酵母を2000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、蒸留水で菌体洗浄した後、再度遠心分離を行った。この洗浄工程を2回行い、培地成分を取り除いた。
(3)インタクトセル処理
α−EM等合成液を減圧蒸留しエタノールを除き、蒸留水で全糖5%に調製した。これに前記(2)で洗浄した酵母を添加し、30℃で5時間インタクトセル処理を行った。インタクトセル処理後、遠心分離によって酵母を除去した。
(4)HPLC条件
前記(3)によって処理したα−EM等合成液をHPLCによって分析した。LCにはSIL−20A、SCL−10Avp及びLC−20AD(株式会社島津製作所)カラムはShodex SUGAR SZ5532(6.0×150mm)を用いた。導入量は5μL、流速は0.9mL/minとし、25%Milli−Q Water/75%アセトニトリルのアイソクラティック条件で行った。検出器はshodex RI−501を用いた。
<結果>
本方法によって処理したことで、α−EM等合成液中のグルコースはHPLCによって検出されなくなり、ほぼ完全に除去することが出来た(図3)。酵母によってグリセロールが生産されるが、微量であるため、後の精製において支障をきたすことはない。
4.α−EM及びα−EiMの精製
<目的>
本発明の合成方法により、α−エチルマルトシド(α−EM)及びα−エチルイソマルトシド(α−EiM)の2つの構造異性体を持ったα−エチルマルトシドが合成される。本精製工程では、構造異性体を分離し、純度の高いα−エチルマルトシド(α−EM)及びα−エチルイソマルトシド(α−EiM)を精製することを目的とした。
<方法>
(1)α−EMの分取
LCにはSIL−20A、SCL−10Avp及びLC−20AD(株式会社島津製作所)カラムはAsahipak NH2P−130G 7B(7.5×50mm)(昭和電工株式会社)及びAsahipak NH2P−90 20F(20×300mm)(昭和電工株式会社)を用いた。導入量は100μL、流速は5.0mL/minとし、35%Milli−Q Water/65%アセトニトリルのアイソクラティック条件で行った。検出器はshodex RI−501を用いた。前記3においてグルコースを除去したα−EM等合成液を全糖40%に調整し、試料とした。溶出時間18.5〜21.1minのフラクションを回収し、α−エチルマルトシド(α−EM)及びα−エチルイソマルトシド(α−EiM)をまとめて分取した(図4)。
(2)α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの単離
前記(1)の移動相組成を25%Milli−Q Water/75%アセトニトリルに変更し、再度HPLCによって分取した。前記(1)で回収したフラクションを濃縮し、α−EMを20%に調整したものを試料とした。溶出時間30.3〜32.5min、33.7〜36.2minのフラクションを回収し、凍結乾燥することでα−エチルマルトシド(Ethyl α−maltoside)及びα−エチルイソマルトシド(Ethyl α−isomaltoside)を回収した(図5)。
(3)純度の測定
前記(2) によって精製したα−エチルマルトシド(Ethyl α−maltoside)及びα−エチルイソマルトシド(Ethyl α−isomaltoside)をHPLCによって分析した。LCにはSIL−20A、SCL−10Avp及びLC−20AD(株式会社島津製作所)カラムはShodex SUGAR SZ5532(6.0×150mm)を用いた。導入量は5μL、流速は0.9mL/minとし、25%Milli−Q Water/75%アセトニトリルのアイソクラティック条件で行った。検出器はshodex RI−501を用いた。
<結果>
前記(1)において試料12.5 mLからフラクションを回収したところ、α−EMの回収量は157mgで回収率は73.7%であった。続いて前記(2)により、α−エチルマルトシド(α−EM)及びα−エチルイソマルトシド(α−EiM)を単離したところ、α−エチルマルトシド(α−EM)が10.6mg、α−エチルイソマルトシド(α−EiM)が128.1mg得られた。これらの純度を求めたところ、α−エチルマルトシド(α−EM)は僅かに不純物のピークが検出されたが、純度は94.8%で、高い精度で精製されていた(図6)。一方で、α−エチルイソマルトシド(α−EiM)は不純物が検出されず、極めて高い精度で精製されていた(図7)。
5.構造解析
次に、精製されたα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドについて1H−NMRを用いて、構造を解析した。具体的には、日本電子製NMR機器を用い、室温にて500MHz、SCAN回数128回程度の条件で行った。データ解析は、ACLICE2 for windows ver.4を用いて行った。
これらの結果を図8及び図9に示す。図8はα−エチルマルトシドの構造を確認した際のH−NMRチャートであり、図9はα−エチルイソマルトシド構造を確認した際のH−NMRチャートである。図8、図9に示すように、α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドであることが確認された。

Claims (13)

  1. エタノールと、マルトースとを含む溶液に、α−グルコシダーゼを添加することにより合成液を調製する工程と、
    前記合成液を酵素反応させることによりα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを酵素的に生成する酵素反応工程と、
    を有する、α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  2. 前記α−グルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌由来の酵素である、請求項1に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  3. 前記α−グルコシダーゼが、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来の酵素である、請求項1又は2に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  4. 前記アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌が、α−グルコシダーゼ遺伝子(agdA)を組み込み作製したAgdA高発現株である、請求項2又は3に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  5. 前記アスペルギルス(Aspergillus oryzae)属糸状菌が、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受領番号NITE AP−02912として寄託されたNTAA1株である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  6. 前記エタノール濃度が、20〜60重量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  7. 前記マルトース濃度が、1〜10重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  8. 前記α−グルコシダーゼ濃度が、0.5〜70Unit/100mlである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  9. 前記酵素反応工程が、10〜60℃、1〜48時間反応させる工程である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  10. さらに、前記酵素反応工程の後、80℃以上で10分以上加熱することにより、酵素反応を停止する加熱処理工程を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  11. さらに、前記加熱処理工程の後、酵母を添加することにより、酵素反応液中に存在するグルコースを酵母により消費させるインタクトセル処理工程を有する、請求項10に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  12. さらに、前記インタクトセル処理工程の後、α−エチルマルトシドと、α−エチルイソマルトシドとを分離精製する分離精製工程を有する、請求項11に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
  13. 前記分離精製工程が、前記インタクトセル処理した溶液を全糖40%に調整する工程と、
    液体クロマトグラフィーによりα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを含むフラクションを回収する工程と、
    前記α−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドを含むフラクションを濃縮し、再度液体クロマトグラフィーによりα−エチルマルトシドを含むフラクションと、α−エチルイソマルトシドを含むフラクションをそれぞれ回収する工程と、
    回収液を凍結乾燥する工程と、
    を有する、請求項12に記載のα−エチルマルトシド及びα−エチルイソマルトシドの製造方法。
JP2019041331A 2019-03-07 2019-03-07 α−エチル化された糖類の製造方法 Pending JP2020141608A (ja)

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BIOSCI. BIOTECH. BIOCHEM., vol. 59(8), JPN6023003223, 1995, pages 1516 - 1521, ISSN: 0004976794 *
日本農芸化学会2019年度大会要旨集, JPN6023003224, 5 March 2019 (2019-03-05), ISSN: 0004976793 *

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