JP3431574B2 - メナキノン−7の製造方法 - Google Patents

メナキノン−7の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,大麦を使用する蒸
留酒の製造において副生する蒸留残液を固液分離して得
られる液体分に糖類を添加したものを主たる構成成分と
する培地を使用して、Bacillus subtilisに属するメナ
キノン−7生産菌を培養することにより、アンモニアの
生成を抑制しつつ、メナキノン−7を高収率で製造する
方法に関する。特に本発明は、大麦を使用する焼酎の製
造において副生する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して得
られる液体分に糖類を添加したものを主たる構成成分と
する培地を使用して、Bacillus subtilisに属するメナ
キノン−7生産菌を培養することにより、アンモニアの
生成を抑制しつつ、メナキノン−7を高収率で製造する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビタミンKは血液の正常な凝固能を維持
するのに不可欠な栄養素である。一般にビタミンKと称
されるものには、合成されたものを含めてビタミンK1
乃至ビタミンK7が知られている。これらのうち、ビタ
ミンK1(フィロキノン)及びビタミンK2 (メナキノ
ン)は天然に存在するものである。ビタミンK1は主に植
物の葉緑体で合成されることから、緑黄色野菜に多く、
他に植物油、豆類、海藻類及び魚介類に比較的多く含ま
れている。一方、ビタミンK2は一般細菌や腸内細菌が
生産するもので、納豆等の発酵食品、あおのり、鶏卵、
肉類及び乳製品に比較的多く含まれる。ビタミンK2は
その側鎖構造の違いによってメナキノン−1〜メナキノ
ン−14に類別される。これらのうち特に納豆に多く含ま
れるビタミンK2は、主としてメナキノン−7(以下、MK
−7と略称する)から成るものであり、当該MK−7は納豆
菌によって生産されることが知られている。MK-7は血液
凝固能の維持に関わるだけでなく、骨芽細胞による骨形
成を促進すると同時にカルシウムの骨からの溶出を抑制
し、骨のカルシウム量の減少を抑制する作用を有するこ
とが知られている。こうしたことからMK-7は骨粗鬆症の
治療薬として既に利用されており、その需要は益々高ま
っている。
【0003】ところで、MK−7の工業的製造について
は、以下に述べるように、(1)蒸煮大豆、大豆煮汁ま
たは豆腐粕等の大豆由来の材料を培地として使用する
か、或いは(2)大豆煮汁または醤油火入れオリ等の大
豆由来の材料に特定の物質を混合して培地として使用
し、納豆菌を培養することによりMK-7を製造する方法が
提案されている。前記(1)の方法については、特開平
8−9916号公報、特開平8−19378号公報、特開平8−7339
6号公報方法、及び特開平11−196820号公報に記載され
ている。即ち、特開平8−9916号公報には、蒸煮大豆に
納豆菌を植菌し、42乃至50℃で24乃至48時間培養して納
豆を得ることによりMK−7を製造する方法が記載されて
いる。特開平8−19378号公報には、納豆製造時に副生す
る大豆煮汁をpH7に調整して滅菌し、これに納豆菌を接
種し、培養温度48℃、攪拌数120rpmで4日間振とう培養
することによりMK−7を製造する方法が記載されてい
る。また当該公報には、豆腐製造時に副生する豆腐粕を
滅菌し、これに納豆菌を接種し、培養温度48℃で、5日
間静置培養することによりMK−7を製造する方法が記載
されている。特開平8−73396号公報には、納豆製造時に
副生する大豆煮汁に納豆菌を接種し培養することにより
MK−7を製造する方法が記載されている。特開平11−196
820号公報には、豆腐の製造過程で発生した豆腐粕(オ
カラ)を滅菌し、これに納豆菌Bacillus spTT-52を接種
し、ステンレス製金網上に厚さ約1cmの層として載置
し、37℃で48時間発酵させ、その後25℃で17時間発酵さ
せて培養することによりMK−7を製造する方法が記載さ
れている。
【0004】前記(2)の方法については、特開平10-2
95393号公報、及び特開平11−32787号公報に記載されて
いる。即ち、特開平10-295393号公報には、ブリックス
濃度を5乃至10%に調整した大豆煮汁に3乃至10重量%のグ
リセリン(グリセロール)を添加して滅菌し、これに納
豆菌を接種し、培養温度40℃、通気量0.5L/min、攪拌速
度500rpmで4日間培養することによりMK−7を製造する方
法が記載されている。尚、特開平10-295393号公報に
は、前記グリセリンに代えてシュクロース(スクロー
ス)5%を前記大豆煮汁に添加し、以下同様にしてMK−7
を製造する方法が記載されている。特開平11−32787号
公報には、醤油火入れオリ7%(W/V)、グルコース5%(W/
V)、K2HPO4 0.25%(W/V)、MgSO4・7H2O 0.05%(W/V)、NaC
l 2%(W/V)からなる組成の培地をpH8.0に調整して滅菌
し、これにバシルス・ズブチリスに属するMK−7生産菌
を接種して、ジャーファーメンターにて、培養温度40
℃、攪拌数400rpm、通気量1vvmの条件で、培養液のpH値
を2NのNaOHで7.0に保ちながら、48時間培養することに
よりMK−7を製造する方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来のMK−7の製造方法は、いずれの場合において
も、得られる培養液中のMK−7濃度が十分に高いとは言
えない。即ち、通常の市販納豆に含まれるMK−7含量は
約10乃至20ppmである。これに対して、上述した公報に
記載の方法では、得られる培養物中のMK−7含量は、最
大でも、当該市販納豆中のMK−7含量と大差ないもので
ある。即ち、特開平8−9916号公報に記載の方法では納
豆中のMK−7濃度は5.8mg/100g(即ち、58mg/kg)であ
り、特開平8−73396号公報に記載の方法では培養生産物
中のMK−7濃度は17.2mg/kgであり、特開平11−32787号
公報に記載の方法では培養生産物中のMK−7濃度は29.8m
g/kgである。また、特開平10−295393号公報に記載の方
法(グリセリンを添加)では培養生産物中のMK−7濃度
は40.6mg/Lである。尚、特開平10−295393号公報に記載
の方法(グリセリンに代えてシュクロース(スクロー
ス)を添加)では培養生産物中のMK−7濃度は25mg/Lで
あり、このMK−7濃度は、グリセリンを添加した場合の
前記MK−7濃度(40.6mg/L)より明らかに低い。更に特
開平11−196820号公報に記載の方法では培養生産物中の
MK−7濃度は、豆腐粕(オカラ)発酵物1g当たり29636ng
(即ち29.6mg/kg)である。特開平8-19378号公報の記載
には、培養生産物中のMK−7の濃度は11.7mg/100ml(即
ち117mg/L)である旨記載されているが、この値は途方
もなく高い濃度であり、当該公報に記載された内容の方
法で達成できるものとは到底考えられない。因みに、本
発明者らが特開平8-19378号公報に記載の方法に従っ
て、後述する比較例3に記載の追試を行った結果、得ら
れた培養液中のMK−7濃度は10.8mg/Lであった。このこ
とから、当該公報に記載の方法ではそこに記載のMK−7
濃度117mg/Lは達成できないことが判明した。従って、
これらの従来のMK−7の製造方法は、いずれの場合にお
いても得られる培養液中のMK−7濃度が低く、工業的製
造方法として十分なものとは言えない。
【0006】付言するに、上述した特開平11−32787号
公報に記載のMK-7の製造方法においては、醤油中に溶存
するタンパク質を主たる構成成分とする醤油火入れオリ
に、グルコース、K2HPO4、MgSO4・7H2O、及びNaCl を栄
養成分として添加した培地を必要とする。また、上述し
た特開平10−295393号公報に記載のMK−7の製造方法に
おいては、ブリックス濃度を5乃至10%に調整した大豆煮
汁に1重量%以上のグリセロールを添加した培地を必要と
する。このように大豆由来の材料に特定の化学物質を加
えて使用することは、製品の製造コストを引き上げてし
まう。従って、これらのMK−7の製造方法は、上述した
ように培養液中のMK−7濃度が低い上に、経済的な面で
も問題がある。こうしたことから、容易に入手すること
ができて、比較的安価な材料を培地に使用し、MK−7の
高収率での生産を可能にするMK−7の製造方法の早期提
供が切望されている。
【0007】ところで、上述した特開平8−9916号公報
には、納豆菌を培養することによりMK−7を製造する場
合、MK−7濃度の上昇に伴って培地中のアンモニア濃度
が高まる旨記載されている。こうしたことから、従来の
MK−7製造方法に従って納豆菌の培養を行った場合に
は、上述したように、MK−7の生成量が低いにも拘わら
ずアンモニアの生成量が高い、即ち、得られる培養液に
ついては、含有するMK−7の濃度は、上述したように、
低いにも拘わらず、含有するアンモニアの濃度は高い、
と云う問題がある。従って、 培養中のアンモニアの生
成を抑制しつつ、MK−7の高収率での生産を可能にするM
K−7の製造方法についても早期提供が切望されている。
本発明は,上述した課題に鑑みて、本発明者らが鋭意研
究の結果完成に至ったものである。本発明の主たる目的
は,従来のMK−7製造方法における上述の問題点を解決
し且つ上述の要望を叶える、アンモニアの生成を抑制し
つつMK−7の効率的且つ高収率での生産を可能にする方
法を提供することにある。 本発明の該方法は、MK−7高
含有物質を製造し、該MK−7高含有物質を精製して、高
純度のMK−7含有物質を製造する方法を包含する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、多くの場
合、廃棄に付される大麦焼酎蒸留残液の使用が、従来の
MK−7の製造方法における上述した問題点の解決を図れ
るのではないかとの推測に立って、実験を介して鋭意研
究を行った。すなわち、本発明者らは、大麦を使用する
焼酎製造において副生する焼酎蒸留残液を固液分離し
て、アミノ酸、ポリフェノール、有機酸、及びグリセロ
ールを含有する液体分を得、該液体分のみを培地に用い
て、Bacillus subtilisに属するMK−7生産菌である納豆
菌の培養を行った。その結果、前記液体分に、他の栄養
成分を何ら添加することなくして、従来から納豆菌の培
養の際に一般的に用いられてきた大豆煮汁、グリセロー
ルを添加した大豆煮汁、豆腐粕、蒸煮大豆、及び醤油火
入れオリを添加した合成培地などを培地に用いた場合と
比較して、増殖菌体の量が著しく増加するだけでなく、
培養液中において納豆菌が生産するMK−7の濃度も飛躍
的に高まることが判明した。
【0009】そこで、本発明者らは、大麦焼酎と同様に
原料に大麦を用いるウイスキーの製造において副生する
ウイスキー蒸留残液から得た培地においても同様の効果
が得られるのではないかと考えて次の実験を行った。す
なわち、大麦を使用するウイスキーの製造において副生
するウイスキー蒸留残液を固液分離して液体分を得、該
液体分に含まれる酸を実質的に中和処理して調製液を
得、該調製液を滅菌処理することにより得られた培地を
用いて、Bacillus subtilisに属するMK−7生産菌である
納豆菌の培養を行った。その結果、前記液体分に、他の
栄養成分を何ら添加することなくして、従来から納豆菌
の培養の際に一般的に用いられてきた大豆煮汁、グリセ
ロールを添加した大豆煮汁、豆腐粕、蒸煮大豆、及び醤
油火入れオリを添加した合成培地などを培地に用いた場
合と比較して、増殖菌体の量が著しく増加するだけでな
く、培養液中において納豆菌が生産するMK−7の濃度も
飛躍的に高まることが判明した。
【0010】以上の結果から,大麦を使用する蒸留酒の
製造において副生する蒸留残液を固液分離して、アミノ
酸、ポリフェノール、有機酸、及びグリセロールを含有
する液体分を得、該液体分に含まれる酸を実質的に中和
処理して調製液を得、該調製液を滅菌処理することによ
り得られた培地を用いて、Bacillus subtilisに属するM
K-7生産菌を培養して培養液を得ることにより、該培養
液中のMK-7濃度が極めて高いMK-7含有物が得られ,上述
の課題が達成できることが判明した。ところで、大麦を
使用する焼酎製造において副生する焼酎蒸留残液から得
られる前記培地の組成を分析したところ、表1に示すよ
うに本発明において用いる大麦を使用する焼酎製造で副
生する大麦焼酎蒸留残液は、粗タンパク質(食品のタン
パク質量を測定する場合、窒素含量を測定し、その値に
窒素−タンパク質換算計数を乗じて算出した量を意味す
る)が 約4%であり、主なアミノ酸として、プロリン、ロ
イシン、アルギニン、アラニン、及びグルタミン酸を含
有することが判った。更に該大麦焼酎蒸留残液は、焼酎
製造における発酵過程において生産されるグリセロー
ル、クエン酸、酢酸、及び乳酸、あるいは大麦に由来す
るポリフェノールなどの納豆菌の培養に好ましい栄養成
分を含有することが判明した。
【0011】本発明者らは、前記培地に必ずしも十分に
含有されているとは言えない炭素源について別途ある種
の炭素源を加えることにより、培養液中のMK−7生産量
が更に高まるのではないかと考え、上述の特開平10−29
5393号公報にシュクロース(スクロース)の添加がビタ
ミンK含量の増大にさ程寄与しない旨記載されはいるも
ののこの点は無視して、前記大麦焼酎蒸留残液の液体分
に前記炭素源として少量の糖類(即ち、スクロース)を
添加したものを培地に用いて、Bacillus subtilisに属
するMK−7生産菌を培養して培養液を得た。その結果、
該培養液中のMK−7濃度は、前記焼酎蒸留残液から得ら
れた培地のみを用いて培養することにより得た培養液中
のMK−7濃度よりも明らかに高くなっていることが判明
した。更に驚くことに、該培養液中のアンモニア濃度を
調べたところ、該アンモニア濃度は、焼酎蒸留残液から
得られた培地のみを用いて培養した培養液中のアンモニ
ア濃度よりも大幅に低くなっていた。そこで本発明者ら
は、スクロース以外の糖類についても同様の実験を介し
て鋭意研究を重ねたところ、本発明において使用する焼
酎蒸留残液に1重量%以上の量のグルコース、フルクト
ース、マルトース、及びスクロースからなる群から選ば
れる一種又はそれ以上の単糖類又は二糖類を添加した培
地を用いて納豆菌を培養する場合、アンモニアの生成が
望ましく抑制されて、培養液中のMK−7濃度が更に高ま
ることが判明した。
【0012】図1は、本発明者らが、後述する実施例1
と同様にして、大麦焼酎蒸留残液にスクロース(少量)
を添加した本発明の培地を使用して納豆菌を培養し、ま
た、後述する比較例1と同様にして、従来のMK−7の製
造方法において最も一般的に使用する大豆煮汁にスクロ
ース(少量)を添加した培地を使用して納豆菌を培養
し、それぞれの場合における培養時間との関係での納豆
菌培養液中のMK−7の生成状況(即ち、MK−7の濃度)及
びアンモニアの生成状況(即ち、アンモニアの濃度)を
調べ、得られた結果をグラフ化して示したものである。
図1に示した結果から次のことが判明した。即ち、従来
のMK−7の製造方法において最も一般的に使用する大豆
煮汁に糖類(スクロース)を添加した培地を使用した場
合には、MK−7の生成量(即ち、得られる培養液中のMK
−7濃度)が低いのに対して、アンモニアの生成量(即
ち、得られる培養液中のアンモニア濃度)はMK−7の生
成量よりは遥かに高く、MK−7の生成量の2倍以上に達
してしまう。一方、大麦焼酎蒸留残液に糖類(スクロー
ス)を添加した本発明の培地を使用した場合は、MK−7
の生成量(即ち、得られる培養液中のMK−7濃度)は極
めて高く、これと同様にアンモニアの生成量(即ち、得
られる培養液中のアンモニア濃度)も高い。しかしなが
ら、アンモニアの生成は、前者の場合とは明らかに異な
り、MK−7の生成と略同様の傾向をたどり、得られる培
養液中のアンモニア濃度は、該培養液中のMK−7濃度と
略同等か若しくは僅かに高い程度である。このことか
ら、本発明の培地を使用した場合、アンモニアの生成
は、上述の大豆煮汁を使用した場合におけるようにMK−
7の生成を卓越することはなく、MK−7の生成と略同等か
若しくは僅かに高い程度であることが理解される。即
ち、糖類を添加した本発明の培地を使用する場合、アン
モニアの生成が抑制されて、極めて高い収率でのMK−7
の生成が達成できる。
【0013】このように本発明の方法により製造される
MK−7含有物質(即ち、高濃度MK−7含有物質)は、比
較的高濃度のアンモニアを含有するものであるが、該MK
−7含有物質をアルカリ性に保持しながら曝気すること
により該MK−7含有物質に含まれる前記アンモニアを容
易に除去することができる。これによりアンモニアを含
まないMK−7含有物質を得ることができ、そのまま食品
或いはビタミン剤として使用することができる。また本
発明の方法により製造される該MK−7含有物質は、公知
の精製方法によりアンモニアを除去するとともに精製し
て、アンモニアを全く含まない高純度のMK−7含有物質
とすることができる。
【0014】本発明は、上述の判明した事実に基づいて
完成に至ったものである。以下に、本発明の好ましい態
様について述べるが,本発明はこれらに限定されるもの
ではない。本発明のMK−7の製造方法は、大麦を使用す
る蒸留酒の製造において副生する蒸留残液を固液分離し
て、アミノ酸、ポリフェノール、有機酸、及びグリセロ
ールを含有する液体分を得る第1の工程、該液体分に1重
量%以上の糖類を添加する第2の工程、前記糖類を添加
後の該液体分に含まれる酸を実質的に中和処理して調製
液を得る第3の工程、該調製液を培地に用いてBacillus
subtilisに属するMK−7生産菌を培養する第4の工程から
なるものである。以下に、本発明のMK−7の製造方法を
実施する際に原料として用いる蒸留残液、及び各工程に
ついて詳述する。
【0015】本発明において言う蒸留残液は、(イ)大
麦又は精白大麦を原料として大麦麹、及び蒸麦を製造
し、得られた大麦麹、及び蒸麦中に含まれるでんぷんを
麹、及び/又は酵素剤を使用して糖化し、さらに酵母に
よるアルコール発酵を行い熟成もろみを得、得られた熟
成もろみを減圧蒸留または常圧蒸留等の蒸留装置を用い
て蒸留して蒸留酒を製造する際に蒸留残渣として副生す
るもの、及び(ロ)大麦を原料として麦芽を製造し、得
られた麦芽中に含まれるでんぷんを麦芽、及び/又は酵
素剤を使用して糖化し、さらに酵母によるアルコール発
酵を行い熟成もろみを得、得られた熟成もろみをポット
スチルまたはパテントスチル等の蒸留装置を用いて蒸留
して蒸留酒を製造する際に蒸留残渣として副生するもの
を意味する。このような蒸留残液としては、代表的には
例えば大麦焼酎あるいはウイスキーの製造における蒸留
残液が挙げられる。ウイスキーの製造における蒸留残液
の場合は、大麦麦芽だけを原料とするモルトウイスキー
はもちろんのこと、未発芽穀類を主原料とするグレイン
ウイスキーにおいても一部に大麦麦芽を使用する場合に
副生するウイスキー蒸留残液も本発明において言う蒸留
残液に包含される。また焼酎の製造における蒸留残液の
場合は、米焼酎、甘藷焼酎、そば焼酎の製造において
も、これらの焼酎製造において原料の一部として大麦を
使用する場合に副生する焼酎蒸留残液も本発明において
言う蒸留残液に包含される。
【0016】このように本発明のMK−7の製造方法にお
いて使用する、蒸留残液から得られる培地は、大麦、大
麦麹、麦芽及び酵母に由来する成分を含有するものであ
る。即ち、本発明において使用する蒸留残液から得られ
る培地は、従来のMK−7の製造に用いられている、大豆
煮汁、蒸煮大豆、豆腐粕、及び醤油火入れオリなどの大
豆に由来する材料の液体培地または固体培地とは全く異
なるものである。この点具体的には、表1に示すよう
に、本発明において用いる大麦を使用する焼酎製造で副
生する大麦焼酎蒸留残液は、粗タンパク質(食品のタン
パク質量を測定する場合、窒素含量を測定し、その値に
窒素-タンパク質換算計数を乗じて算出した量のこと)が
約4%であり、主なアミノ酸として、プロリン、ロイシ
ン、アルギニン、アラニン、及びグルタミン酸を含有す
る。且つ、該大麦焼酎蒸留残液は、焼酎製造における発
酵過程において生産されるグリセロール、クエン酸、酢
酸、及び乳酸、あるいは大麦に由来するポリフェノール
などの納豆菌の培養に好ましい栄養成分を含有する。よ
って本発明のMK−7の製造方法において使用する培地
は、従来のMK−7製造方法において使用する培地から客
観的に区別される明らかに別異のものである。
【0017】ところで、上述の特開平10-295393号公報
に記載のMK−7の製造方法においては、ブリックス濃度
を5乃至10%に調整した大豆煮汁に1重量%以上のグリセロ
ールを添加した培地を用いることにより、培養液中のビ
タミンK(MK−7)含量が高まる旨記載されている。一
方、表1から明らかなように、本発明において用いる大
麦を使用する焼酎製造で副生する大麦焼酎蒸留残液は、
それ自体既に1.3%のグリセロールを含有する。従来のMK
-7の製造方法における培地に使用する上述した大豆由来
の材料は、こうした化合物は含有しておらず、当該化合
物は該大豆由来の材料に別途添加されるものである。よ
って、本発明においては、MK−7の培地中での生産量を
高めるについて、従来技術におけるようにグリセロール
を添加する必要は全くない。即ち、本発明においてはグ
リセロールを別途添加することなくして、MK−7の生産
量の向上が達成される。
【0018】本発明において、蒸留酒の製造における蒸
留工程で得られた蒸留残液を固液分離して、アミノ酸、
ポリフェノール、有機酸、及びグリセロールを含有する
液体分を得る第1の工程は、前記蒸留残液から原料大
麦、麹あるいは麦芽由来の水不溶性の発酵残渣を除去
し、液体分を得ることを目的として行うものである。こ
の第1の工程においては、一般的にスクリュープレス方
式やローラープレス方式、あるいはろ過圧搾式の固液分
離機を用いて行うことが出来る。第1の工程で得た該液
体分に、1重量%以上の糖類を添加する第2 の工程にお
いては、該糖類として、グルコース、フルクトース、マ
ルトース、及びスクロースからなる群から選ばれる一種
又はそれ以上の単糖類又は二糖類を用いることができ
る。このような糖類を添加することにより、上述したよ
うに、培養液中のMK-7濃度を更に高め、且つ該培養液中
のアンモニアの生成を抑制する(即ち、該培養液中のア
ンモニア濃度を低減する)ことが可能となる。第2の工
程で得られた前記糖類添加後の該液体分に含まれる酸を
実質的に中和処理して調製液を得る第3の工程において
は、適当な中和剤を用いて中和処理することができ、こ
うした中和剤としては,水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム等を使用することができる。
【0019】第3の工程で得られた前記調製液を培地に
用いて、Bacillus subtilisに属するMK−7生産菌を培養
する第4の工程においては、該MK-7生産菌としては、Bac
illussubtilisに属するMK-7生産能を有する菌株であれ
ばいずれの菌株であっても用いることができる。特に好
ましくは、Bacillus subtilisに属する代表的なMK−7生
産菌である納豆菌を用いることができ、該納豆菌の具体
例としては、市販納豆菌である成瀬菌、宮城野菌、及び
高橋菌等を挙げることができる。これらの他に、MK−7
生産能の高い納豆菌菌株を用いることもできる。前記培
地を用いた該納豆菌の培養は、公知の液体培養法により
行うことができるが、好ましくは、ジャーファーメンタ
ーなどを用いた通気攪拌培養により、培養温度40℃〜50
℃の温度範囲で行うことが望ましい。この際、培養中の
培養液のpH値は水酸化ナトリウム等を用いて7.0程度に
保持するのが好ましい。
【0020】本発明においては、前記第4の工程におい
て得られる納豆菌の培養液、即ちMK-7を含有する培養液
は、上述したようにアンモニアを含有するものである
が、 該培養液をアルカリ性に保持しながら曝気するこ
とにより該MK−7含有物質に含まれる前記アンモニアを
容易に除去することができる。これによりアンモニアを
含まないMK−7含有物質を得ることができ、そのまま食
品或いはビタミン剤として使用することができる。ま
た、公知の精製方法により、該MK−7を含有する培養液
からアンモニアを除去するとともにMK−7を抽出してア
ンモニアを全く含まない高純度のMK−7含有物質を得る
ことができる。その場合の精製方法としては、例えば特
開平8-73396号公報に記載されている、アルコールやエ
ーテルなどの有機溶媒を用いる溶媒抽出法、活性炭を用
いた吸着分別法、分子蒸留や水蒸気蒸留等の高真空蒸留
を用いる蒸留法、合成吸着剤などを用いたクロマトグラ
フィー法等を用いることができる。この他、特開平11-3
2787号公報に記載されている、限外濾過膜や逆浸透膜を
用いた分離濃縮法、及び乾燥操作により脱水する方法を
用いることができる。この場合、有機溶媒の不存在下で
脱水処理することにより、光に対する安定性の優れた高
純度のMK−7含有物を得ることができる。
【0021】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが,本発明はこれらの実施例によって何ら限定され
るものではない。
【0022】
【実施例1】1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得た。該液体分に1重量%のスクロースを
添加した後、該液体分に水酸化ナトリウムを加えてその
pH値を7.0に調整して約0.9キロリットルの調製液を得
た。得られた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地
を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウム添加してそのpH値を7.0に調
整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキス
培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、上記1で得た培地1Lと上
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これにより、MK−7を含有する納豆菌培養液を
得た。なお、培養により生産するMK−7は光により分解
する恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲
を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0023】
【比較例1】本比較例においては、実施例1において使用
する大麦焼酎蒸留残液から得られた液体分に代えて、納
豆製造時に副生する大豆煮汁廃液を使用する以外は、実
施例1と同様にしてMK−7を含有する納豆菌培養液を得
た。 1.大豆煮汁廃液からの培地の調整 納豆製造時に副生された大豆煮汁廃液に1重量%のスクロ
ースを添加し、得られた液体に水酸化ナトリウムを加え
てそのpH値を7.0に調整して調整液を得、得られた調整
液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城
野菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間
振とう培養して納豆菌前培養液を得た。3.納豆菌の本
培養2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1L
と前記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2
vvm、攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間
培養を行った。これによりMK−7を含有する納豆菌培養
液を得た。なお、培養により生産されるMK−7は光によ
り分解する恐れがあるため、前記ジャーファーメンター
の周囲を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0024】
【比較例2】本比較例においては、上述した従来のMK−
7製造方法の中で、大豆煮汁廃液にグリセロールを添加
することにより、得られた培養液中のMK−7濃度を高め
ることができる旨記載されている特開平10-295393号公
報に記載の方法に従って、納豆菌培養液を得た。即ち、
実施例1において使用する大麦焼酎蒸留残液から得られ
る液体分に代えて大豆煮汁廃液にグリセロールを添加し
たものを使用する以外は、実施例1と同様にして納豆菌
培養液を得た。1.大豆煮汁廃液からの培地の調整ブリ
ックス濃度を10%に調整した大豆煮汁廃液に5重量%の
グリセロールと1重量%のスクロースを添加し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整して調整液を得た。得られた調整液を滅菌処理して
納豆菌培養用の培地を得た。2.納豆菌の前培養肉エキ
ス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られた液体
に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に調整
後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキス培
地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野菌1
白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振とう
培養して納豆菌前培養液を得た。3.納豆菌の本培養2L
容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前記
2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK−7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK−7は光により分解
する恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲
を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0025】
【実施例2】上述した従来のMK−7製造方法の中で、最も
高いMK−7濃度を達成できる旨述べている特開平8-19378
号公報に記載の方法に従って、納豆菌培養液を得た。但
し、本実施例においては当該公報に記載の納豆製造時に
副生された大豆煮汁廃液の代わりに、本発明において使
用する大麦焼酎蒸留残液に糖類を添加することにより得
られた培地を用いた。即ち、大麦焼酎製造における蒸留
工程で得られた焼酎蒸留残液1キロリットルを信和エン
ジニアリング(株)製のスクリュープレス方式の固液分
離機で固液分離して約0.8キロリットルの液体分を得、
該液体分に1重量%のグルコースを添加し、さらに該液体
分に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に調整
して約0.9キロリットルの調製液を得た。該調製液100ml
を500ml容の三角フラスコに導入した後、綿栓をし、オ
ートクレーブにて121℃×20minで蒸気加圧滅菌を行い、
培地を得た。該培地にO.D.660nmが10.0の納豆菌胞子を
無菌的に10μl接種し、48℃において120rpmで4日間振盪
培養を行なうことによりMK−7を含有する納豆菌培養液
を得た。なお、培養により生産されるMK−7は光により
分解する恐れがあるため、前記三角フラスコの周囲を予
めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0026】
【比較例3】本比較例では、特開平8-19378号公報に記
載の方法に従って納豆菌培養液を得た。但し、実施例2
と同様に1重量%のグルコースを添加した培地を用いた。
即ち、納豆製造時に副生された大豆煮汁廃液に1重量%の
グルコースを添加し、得られた液体に水酸化ナトリウム
を添加してそのpH値を7に調整して調整液を得た。得ら
れた調整液100ml を500ml容の三角フラスコに導入した
後、綿栓をし、オートクレーブにて121℃×20minで蒸気
加圧滅菌を行い、培地を得た。該培地にO.D.660nmが10.
0の納豆菌胞子を無菌的に10μl接種し、48℃において12
0rpmで4日間振盪培養を行うことによりMK−7を含有する
納豆菌培養液を得た。なお、培養により得られるMK−7
は光により分解する恐れがあるため、前記三角フラスコ
の周囲を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0027】
【実施例3】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に3重量%のグルコ
ースを添加した培地を用いてMK−7を含有する納豆菌培
養液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に3重量%のグルコースを添
加後、該液体分に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値
を7.0に調整して約0.9キロリットルの調製液を得た。得
られた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得
た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城
野菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間
振とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK−7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK−7は光により分解
する恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲
を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0028】
【実施例4】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に3重量%のスクロ
ースを添加した培地を用いてMK-7を含有する納豆菌培養
液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に3重量%のスクロースを添
加後、該液体分に水酸化ナトリウムを添加し、そのpH値
を7.0に調整して約0.9キロリットルの調製液を得、得ら
れた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、水酸化
ナトリウムを用いてpHを7.0に調整後、121℃、15分間の
条件で滅菌処理を行い肉エキス培地を得、該肉エキス培
地5mlと市販納豆菌の宮城野菌1白金耳を試験管に導入し
攪拌し、42℃で15時間振とう培養して納豆菌前培養液を
得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0029】
【実施例5】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に3重量%のフルク
トースを添加した培地を用いてMK-7を含有する納豆菌培
養液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に3重量%のフルクトースを
添加後、該液体分に水酸化ナトリウムを添加し、そのpH
値を7.0に調整して約0.9キロリットルの調製液を得、得
られた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得
た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得、該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0030】
【実施例6】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に3重量%のマルト
ースを添加した培地を用いてMK-7を含有する納豆菌培養
液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に3重量%のマルトースを添
加後、該液体分に水酸化ナトリウムを添加して、そのpH
値を7.0に調整して約0.9キロリットルの調製液を得、得
られた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得
た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得、該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0031】
【実施例7】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に1.5重量%のグル
コースと1.5重量%のスクロースを添加した培地を用いて
MK-7を含有する納豆菌培養液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に1.5重量%のグルコースと
1.5重量%のスクロースを添加後、該液体分に水酸化ナト
リウムを添加して、そのpH値を7.0に調整して約0.9キロ
リットルの調製液を得、得られた調製液を滅菌処理して
納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得、該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0032】
【実施例8】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に1.5重量%のグル
コースと1.5重量%のフルクトースを添加した培地を用い
てMK-7を含有する納豆菌培養液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に1.5重量%のグルコースと
1.5重量%のフルクトースを添加後、該液体分に水酸化ナ
トリウムを添加して、そのpH値を7.0に調整して約0.9キ
ロリットルの調製液を得、得られた調製液を滅菌処理し
て納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得、該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0033】
【実施例9】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に1.5重量%のグル
コースと1.5重量%のマルトースを添加した培地を用いて
MK-7を含有する納豆菌培養液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に1.5重量%のグルコースと
1.5重量%のマルトースを添加後、該液体分に水酸化ナト
リウムを添加して、そのpH値を7.0に調整して約0.9キロ
リットルの調製液を得、得られた調製液を滅菌処理して
納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得、該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0034】
【実施例10】本実施例では、大麦焼酎製造における蒸留
工程で副生する焼酎蒸留残液の液体分に1重量%のグルコ
ース、1重量%のマルトース、及び1重量%のフルクトース
を添加した培地を用いてMK-7を含有する納豆菌培養液を
得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造の蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液1キロ
リットルを信和エンジニアリング(株)製のスクリュー
プレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キロリッ
トルの液体分を得,該液体分に1重量%のグルコース、1
重量%のマルトース、及び1重量%のフルクトースを添加
後、該液体分に水酸化ナトリウムを添加して、そのpH値
を7.0に調整して約0.9キロリットルの調製液を得、得ら
れた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得、該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城野
菌1白金耳を試験管に導入して攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK-7は光により分解す
る恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を
予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0035】
【比較例4】本比較例では、糖(グルコース)を大麦焼
酎製造における蒸留工程で副生する焼酎蒸留残液の液体
分に添加しなかった以外は、実施例3と同様にしてMK−7
を含有する納豆菌培養液を得た。 1.大麦焼酎蒸留残液からの培地の調製 大麦焼酎製造における蒸留工程で得られた焼酎蒸留残液
1キロリットルを信和エンジニアリング(株)製のスク
リュープレス方式の固液分離機で固液分離して約0.8キ
ロリットルの液体分を得,該液体分に水酸化ナトリウム
を加えてそのpH値を7.0に調整して約0.9キロリットルの
調製液を得た。得られた調製液を滅菌処理して納豆菌培
養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加してそのpH値を7.0に
調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エキ
ス培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮城
野菌1白金耳を試験管に導入て攪拌し、42℃で15時間振
とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと前
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これによりMK−7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産されるMK−7は光により分解
する恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲
を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0036】
【実施例11】本実施例では、実施例1において使用する
大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する焼酎蒸留残液
の液体分に代えて、モルトウイスキー製造の蒸留工程で
得られたウイスキー蒸留残液を固液分離して得られた液
体分を使用する以外は、実施例1と同様にしてMK−7を
含有する納豆菌培養液を得た。 1.ウイスキー蒸留残液からの培地の調製 モルトウイスキー製造の蒸留工程で得られたウイスキー
蒸留残液を固液分離して液体分を得た。該液体分に1重
量%のグルコースを添加後、水酸化ナトリウムを添加し
て、そのpH値を7.0に調整することにより調製液を得
た。得られた調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地
を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加して、そのpH値を7.0
に調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エ
キス培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮
城野菌1白金耳を試験管に導入て攪拌し、42℃で15時間
振とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、上記1で得た培地1Lと上
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これにより、MK−7を含有する納豆菌培養液を
得た。なお、培養により生産するMK−7は光により分解
する恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲
を予めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0037】
【比較例5】本比較例においては、実施例11において使
用するウイスキー蒸留残液から得られた液体分に代え
て、大豆煮汁廃液を使用した以外は、実施例11と同様に
してMK−7を含有する納豆菌培養液を得た。 1.大豆煮汁廃液からの培地の調製 納豆製造時に副生された大豆煮汁廃液に1重量%のグルコ
ースを添加し、得られた液体に水酸化ナトリウムを添加
して、そのpH値を7.0に調整して調製液を得、得られた
調製液を滅菌処理して納豆菌培養用の培地を得た。 2.納豆菌の前培養 肉エキス10gとペプトン10gを蒸留水1Lに溶解し、得られ
た液体に水酸化ナトリウムを添加して、そのpH値を7.0
に調整後、121℃、15分間の条件で滅菌処理を行い肉エ
キス培地を得た。該肉エキス培地5mlと市販納豆菌の宮
城野菌1白金耳を試験管に導入て攪拌し、42℃で15時間
振とう培養して納豆菌前培養液を得た。 3.納豆菌の本培養 2L容ジャーファーメンターに、前記1で得た培地1Lと上
記2で得た納豆菌前培養液5mlを導入し、通気量0.2vvm、
攪拌速度300rpm、培養温度42℃の条件で、14日間培養を
行った。これにより、MK-7を含有する納豆菌培養液を得
た。なお、培養により生産するMK-7は光により分解する
恐れがあるため、前記ジャーファーメンターの周囲を予
めアルミホイルで覆って培養を行った。
【0038】
【MK−7の定量】実施例1乃至実施例11、及び比較例1乃
至比較例5で得られたそれぞれの納豆菌培養液中のMK−7
濃度を以下の方法により定量した。即ち、実施例1乃至
実施例11、及び比較例1乃至比較例5で得られたそれぞれ
の納豆菌培養液について、その1.5mlに、1.5mlのイソプ
ロピルアルコールと5mlのヘキサンを加え、振とう後、1
710g×10minの条件で遠心分離を行い、有機層と水層を
得、該有機層4mlを回収し、該有機層4ml中に含まれるヘ
キサンをエバポレーターを用いて完全に除いた後、残っ
た黄褐色の油を97%エタノール500μlに溶解し、以下に
示す条件の高速液体クロマトグラフィーを用いてMK−7
濃度を定量した。即ち、カラムにInertsil ODS 4.6×25
0mm(GLサイエンス社製)、ポストカラムに白金-アルミ
ナ触媒(ビーズ)カラム4.6×50mm(白金-アルミナビー
ズは和光純薬工業株式会社製)を用い、97%エタノール
を溶離液として、流速0.7ml/min、カラム温度40℃、サ
ンプル注入量10μlとし、蛍光検出器(励起320nm、蛍光
430nm)を用いて分析を行った。なお、MK−7の検量線作
成のために、100ppmのMK−7標準試料を用いた。得られ
たMK−7の定量結果を、表2乃至表4に示す。
【0039】
【アンモニアの定量】実施例1乃至実施例11、及び比較
例1乃至比較例5で得られたそれぞれの納豆菌培養液中の
アンモニア濃度を以下の方法により定量した。即ち、実
施例1乃至実施例11、及び比較例1乃至比較例5で得られ
たそれぞれの納豆菌培養液について、マイクロフィルタ
ー(0.45μm)を通した該納豆菌培養液に等量の5%TCAを添
加後、遠心分離して上清を得、得られた上清を0.02N HC
lで25倍希釈したものをサンプルとして、(株)日立製
作所製L-8500型高速アミノ酸分析計を用いて測定した。
得られたアンモニアの定量結果を、表2乃至表4に示す。
【0040】
【評価1】前記MK−7の定量において得られた、実施例
1、比較例1及び比較例2で得られた培養液中のMK−7の定
量結果を表2に示す。表2に示した結果から明らかなよう
に、実施例1で得られた培養液中のMK−7濃度が87.3mg/L
であったのに対して、比較例1で得られた培養液中のMK
−7濃度は12.8mg/L、比較例2で得られた培養液中のMK−
7濃度は35.5mg/L、であった。即ち、本発明の実施例1で
得られた培養液中のMK−7濃度は、比較例 1で得られた
培養液中のMK−7濃度の約6.8倍であり、比較例2で得ら
れた培養液中のMK−7濃度の約2.5倍であることが判っ
た。前記アンモニアの定量において得られた、実施例
1、比較例1及び比較例2で得られた培養液中のアンモニ
アの定量結果を表2に示す。一般に、培養液中のアンモ
ニア濃度は、MK-7濃度に比例して増加することが知られ
ている。即ち、培地中のMK-7濃度が2倍になると、アン
モニア濃度も約2倍に増加することが知られている。と
ころが、表2に示した結果から明らかなように、実施例1
で得られた培養液中のアンモニア濃度が92.2 mg/Lであ
ったのに対して、比較例1で得られた培養液中のアンモ
ニア濃度は31.4mg/L、比較例2で得られた培養液中のア
ンモニア濃度は88.6mg/Lであった。即ち、比較例 1で得
られた培養液中のアンモニア濃度は、該培養液中のMK−
7濃度の約2.5倍であり、比較例2で得られた培養液中の
アンモニア濃度は、該培養液中のMK−7濃度の約2.5倍で
ある。これに対し、本発明の実施例1で得られた培養液
中のアンモニア濃度は、該培養液中のMK−7濃度の約1.1
倍(該MK−7濃度と略同程度)である。このことから本
発明のMK−7の製造方法によれば、アンモニアの生成を
抑制しつつ、MK−7を高収率で得られることが判った。
そして、大麦焼酎製造における蒸留工程において副生す
る焼酎蒸留残液にスクロースを添加することにより得ら
れる培地を用いた場合には、納豆製造時に副生された大
豆煮汁廃液にスクロースを添加することにより得られる
培地、或いは大豆煮汁廃液にグリセロールとスクロース
を添加することにより得られる培地を用いた場合に比べ
て、アンモニアの生成を抑制しつつ、 MK-7を高収率で
製造できることが判明した。
【0041】
【評価2】上記MK−7の定量において得られた、実施例2
及び比較例3で得られた培養液中のMK−7の定量結果を表
3に示す。表3に示した結果から明らかなように、実施例
2の大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する大麦製焼
酎蒸留残液に1重量 %のグルコースを添加した培地を用
いることにより得た培養液中のMK−7濃度が23.4mg/Lで
あったのに対して、比較例2の特開平8-19378号公報に記
載の培地に1重量%のグルコースを添加することにより得
られた培養液中のMK−7濃度は10.8mg/Lであった。すな
わち、特開平8-19378号公報に記載の方法によれば、培
養生産物中のMK−7の濃度は11.7mg/100ml(すなわち117
mg/L)である旨記載されているが、この値は途方もなく
高い濃度であり、斯かる高濃度を当該公報に記載の方法
により達成することは全く不可能であることが明らかに
なった。そして、大麦焼酎製造における蒸留工程で得ら
れた焼酎蒸留残液に1重量%のグルコースを添加した培地
を用いた場合には、納豆製造時に副生された大豆煮汁廃
液に1重量 %のグルコースを添加した培地を用いた場合
に比べて、得られる培養液中のMK−7濃度が、顕著に高
まることが判明した。上記アンモニアの定量において得
られた、実施例2及び比較例3で得られた培養液中のMK−
7の定量結果を表3に示す。表3に示した結果から明らか
なように、実施例2の大麦焼酎製造における蒸留工程で
副生する大麦製焼酎蒸留残液に1重量 %のグルコースを
添加した培地を用いることにより得た培養液中のアンモ
ニア濃度が24.5mg/Lであったのに対して、比較例3の特
開平8-19378号公報に記載の培地に1重量%のグルコース
を添加することにより得られた培養液中のアンモニア濃
度は26.3mg/Lであった。即ち、比較例 3で得られた培養
液中のアンモニア濃度は、該培養液中のMK−7濃度の約
2.4倍であったのに対して、本発明の実施例2で得られた
培養液中のアンモニア濃度は、該培養液中のMK−7濃度
とほぼ同じであり、本発明のMK−7の製造方法において
は、アンモニアの生成を抑制しつつ、MK−7を高収率で
得られることがわかった。即ち、大麦焼酎製造における
蒸留工程において副生する焼酎蒸留残液にグルコースを
添加することにより得られる培地を用いた場合には、納
豆製造時に副生された大豆煮汁廃液にグルコースを添加
することにより得られる培地を用いた場合に比べて、ア
ンモニアの生成を抑制しつつ、 MK-7を高収率で製造で
きることが判明した。
【0042】
【評価3】大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する焼
酎蒸留残液の液体分に他の糖類を添加することによって
も、同様の効果が得られるかどうかを検討した。上記MK
-7の定量において得られた、実施例3乃至実施例10、及
び比較例4で得られた培養液中のMK-7の定量結果を表4に
示す。表4に示した結果から明らかなように、実施例3乃
至実施例10において、大麦焼酎製造における蒸留工程で
副生する焼酎蒸留残液の液体分にグルコース、フルクト
ース、マルトース、及びスクロースからなる群から選ば
れる一種又はそれ以上の単糖類又は二糖類を添加した培
地を用いることにより得た培養液中のMK-7濃度は、比較
例4の大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する焼酎蒸
留残液のみの培地を用いることにより得た培養液中のMK
-7濃度よりもいずれも高い値を示した。即ち、焼酎蒸留
残液の液体分にグルコース、フルクトース、マルトー
ス、及びスクロースからなる群から選ばれる一種又はそ
れ以上の単糖類又は二糖類を添加することにより、MK-7
濃度がさらに高まることが明らかになった。上記アンモ
ニアの定量において得られた、実施例3乃至実施例10、
及び比較例4で得られた培養液中のMK-7の定量結果を表4
に示す。表4に示した結果から明らかなように、実施例3
乃至実施例10において、大麦焼酎製造における蒸留工程
で副生する焼酎蒸留残液の液体分にグルコース、フルク
トース、マルトース、及びスクロースからなる群から選
ばれる一種又はそれ以上の単糖類又は二糖類を添加した
培地を用いることにより得たそれぞれの培養液中のアン
モニア濃度は、いずれにおいてもそれぞれの培養液中の
MK-7濃度の約1.1倍であったのに対して、比較例4におい
て大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する焼酎蒸留残
液の液体分を培地に用いることにより得た培養液中のア
ンモニア濃度は、該培養液中のMK-7濃度の約2.8倍であ
った。即ち、焼酎蒸留残液の液体分にグルコース、フル
クトース、マルトース、及びスクロースからなる群から
選ばれる一種又はそれ以上の単糖類又は二糖類を添加す
ることを特徴とする本発明のMK−7の製造方法において
は、アンモニアの生成を抑制しつつ、MK−7を高収率で
得られることが判った。以上述べた結果から明らかなよ
うに、本発明の大麦焼酎製造における蒸留工程で得られ
た焼酎蒸留残液の液体分に糖類を添加することにより得
られる培地を用いることを特徴とするMK−7高含有物質
の製造方法によれば、従来のMK−7製造方法に比べて、
アンモニアの生成を抑制しつつ、MK-7を高収率で製造で
きることが判明した。
【0043】
【評価4】実施例11及び比較例5で得られた培養液につい
て上述したMK−7の定量法によりMK−7濃度の測定を行っ
た。その結果、実施例11で得られた培養液のMK−7濃度
は、比較例5で得られた培養液のMK−7濃度よりも顕著に
高いことが判った。また、実施例11及び比較例5で得ら
れた培養液について上述したアンモニアの定量法により
アンモニア濃度の測定を行った。その結果、実施例11で
得られた培養液のアンモニア濃度は、比較例4で得られ
た培養液のアンモニア濃度よりも遥かに低いことが判っ
た。即ち、ウイスキー製造の蒸留工程で副生するウイス
キー蒸留残液に糖類を添加することにより得られた培地
を用いた場合には、納豆製造時に副生する大豆煮汁廃液
に糖類を添加することにより得られた培地を用いた場合
に比べて、得られる培養液中のMK−7濃度は顕著に高
く、且つ該培養液のアンモニア濃度は著しく低くなるこ
とが判明した。
【0044】以上の結果から、本発明の大麦を使用する
蒸留酒の製造において副生する蒸留残液に糖類を添加す
ることにより得られる培地を用いることを特徴とするMK
−7高含有物質の製造方法によれば、従来のMK-7製造方
法に比べて、アンモニアの生成を抑制しつつ、MK−7濃
度が飛躍的に高いMK−7高含有物を効率的に製造できる
ことが判明した。
【0045】
【実施例12】実施例1乃至実施例10の各実施例で得られ
た納豆菌培養液からMK-7を含有する油状物質を抽出し
た。即ち、実施例1乃至実施例10の各実施例で得られた
納豆菌培養液に、該納豆菌培養液と同量のイソプロピル
アルコールを導入し、次に該納豆菌培養液の3倍量のヘ
キサンを導入し、振とう後、1710g×10minの条件で遠心
分離を行い、有機層と水層を得、該有機層を回収後、該
有機層に含まれるヘキサンをエバポレーターを用いて完
全に除くことにより、アンモニアを全く含まない黄褐色
の油状物質を得た。
【0046】
【比較例6】比較例1乃至比較例4の各比較例で得られた
納豆菌培養液からMK-7を含有する油状物質を抽出した。
即ち、比較例1乃至比較例4の各比較例で得られた納豆菌
培養液に、該納豆菌培養液と同量のイソプロピルアルコ
ールを導入し、次に該納豆菌培養液の3倍量のヘキサン
を導入し、振とう後、1710g×10minの条件で遠心分離を
行い、有機層と水層を得、該有機層を回収後、該有機層
に含まれるヘキサンをエバポレーターを用いて完全に除
くことにより、アンモニアを全く含まない黄褐色の油状
物質を得た。
【0047】
【評価5】実施例12及び比較例6で得た、実施例1乃至
実施例10及び比較例1乃至比較例4の夫々において得た納
豆菌培養液から抽出したそれぞれの油状物質について、
重量を測定し、更に該油状物質中のMK-7濃度を、上述し
たMK-7の定量法により測定した。得られた測定を結果を
表5に示す。表5に示した結果から以下の事実が判明し
た。 (1)実施例1の培養液から得た油状物質中のMK-7濃度
は、20302ppmであったのに対して、比較例1の培養液か
ら得た油状物質中のMK-7濃度は1293ppm、比較例2の培養
液から得た油状物質中のMK-7濃度は3585ppmであった。
即ち、実施例1の培養液から得た油状物質中のMK-7濃度
は、比較例1の培養液から得た油状物質中のMK-7濃度の
約15.7倍であり、比較例2の培養液から得た油状物質中
のMK-7濃度の約5.7倍であることが判明した。このこと
から、大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する蒸留残
液を固液分離して得られる液体分に糖類を添加したもの
を主たる構成成分とする培地を使用した場合には、大豆
煮汁廃液に糖類を添加した培地、或いは大豆煮汁廃液に
グリセロールと糖類を添加した培地を用いる場合に比べ
て、卓越したMK-7濃度の油状物質が得られることが判明
した。 (2)実施例2の培養液から得た油状物質中のMK-7濃度
は5571ppmであったのに対して、比較例3の培養液から得
た油状物質中のMK-7濃度は1102ppmであった。即ち、実
施例2の培養液から得た油状物質中のMK-7濃度は、比較
例3の培養液から得た油状物質中のMK-7濃度の約5.1倍で
あることが判明した。このことから、大麦焼酎製造にお
ける蒸留工程で副生する蒸留残液を固液分離して得られ
る液体分に糖類を添加したものを主たる構成成分とする
培地を使用した場合には、大豆煮汁廃液に糖類を添加し
た培地を用いる場合に比べて、卓越したMK-7濃度の油状
物質が得られることが判明した。 (3)実施例3乃至実施例10の培養液から得た油状物質中
のMK-7濃度は、実施例3が26439ppm、実施例4が24333pp
m、実施例5が23952ppm、実施例6が26048ppm、実施例7が
24441ppm、実施例8が25902ppm、実施例9が23590ppm、実
施例10が24762ppmであったのに対して、比較例4の培養
液から得た油状物質中のMK-7濃度は19488ppmであった。
即ち、実施例3乃至実施例10の培養液から得た油状物質
中のMK-7濃度は、比較例4の培養液から得た油状物質中
のMK-7濃度の1.2乃至1.4倍であることが判明した。この
ことから、大麦焼酎製造における蒸留工程で副生する蒸
留残液を固液分離して得られる液体分に糖類を添加した
ものを主たる構成成分とする培地を使用した場合には、
前記蒸留残液を固液分離して得られる液体分のみの培地
を用いる場合に比べて、卓越したMK-7濃度の油状物質が
得られることが判明した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
以下述べるような顕著な効果が奏される。即ち、大麦を
使用する蒸留酒の製造において副生する蒸留残液を固液
分離して液体分を得、該液体分に1重量%以上の糖類を
添加後、該液体分に含まれる酸を実質的に中和して調製
液を得、該調製液を滅菌処理することにより得られた培
地を用いて、Bacillus subtilisに属するMK-7生産菌
(即ち、納豆菌)を培養することにより、アンモニアの
生成を抑制して、MK−7濃度が極めて高いMK-7含有物を
効率的に安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のMK−7の製造方法において最も一般的に使
用する大豆煮汁に糖類(スクロース)を添加した培地、
及び大麦焼酎蒸留残液に糖類(スクロース)を添加した
本発明の培地を使用して納豆菌を培養することにより得
られる培養液中のMK−7濃度及びアンモニア濃度と培
養時間との関係についての実験結果をグラフ化して示し
たものである。
【図2】本発明のMK−7の製造工程を模式的に示す製造工
程図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−131399(JP,A) 特開2001−204459(JP,A) 特開2001−204400(JP,A) 特開 平11−32787(JP,A) 特開2001−136959(JP,A) 特開 平8−73396(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 3/00 - 11/00 C12N 1/00 - 1/38 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG) JSTPlus(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】大麦を使用する蒸留酒の製造において副生
    する蒸留残液を固液分離して、アミノ酸、ポリフェノー
    ル、有機酸、及びグリセロールを含有する液体分を得、
    該液体分に1重量%以上の糖類を添加後、該液体分に含
    まれる酸を実質的に中和処理して得られる調製液を培地
    に使用し、Bacillus subtilisに属するメナキノン-7生
    産菌を培養することを特徴とするメナキノン−7含有物
    質の製造方法。
  2. 【請求項2】アンモニアの生成を抑制して、前記培地中
    に前記メナキノン−7を高収率で生産する請求項1に記載
    のメナキノン−7含有物質の製造方法。
  3. 【請求項3】前記糖類が、グルコース、フルクトース、
    マルトース、及びスクロースからなる群から選ばれる一
    種またはそれ以上の単糖類又は二糖類である請求項1に
    記載のメナキノン−7含有物質の製造方法。
  4. 【請求項4】前記蒸留残液が、大麦を使用する焼酎の製
    造において副生する蒸留残液である請求項1に記載のメ
    ナキノン−7含有物質の製造方法。
  5. 【請求項5】前記蒸留残液が、大麦を使用するウイスキ
    ーの製造において副生する蒸留残液である請求項1に記
    載のメナキノン−7含有物質の製造方法。
  6. 【請求項6】前記メナキノン−7含有物質を精製して高
    純度のメナキノン−7含有物質にする工程を包含する請
    求項1乃至5のいずれかに記載のメナキノン−7含有物
    質の製造方法。
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