JP2018139549A - ペプチド系抗生物質の生産用培地、及びそれを用いたペプチド系抗生物質の製造方法 - Google Patents

ペプチド系抗生物質の生産用培地、及びそれを用いたペプチド系抗生物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ペプチド系抗生物質の生産用培地にペプチド系抗生物質生産菌を接種してペプチド系抗生物質を製造するにあたり、よりその生産性の高い培地及び製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】糖化酵素により糖化された飛粉及びトリプトファンの少なくともいずれか一方をペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が高まることを見出した。したがって、糖化酵素により糖化された飛粉及びトリプトファンの少なくともいずれか一方を含む、ペプチド系抗生物質の生産用培地を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、ペプチド系抗生物質の生産用培地、及びそれを用いたペプチド系抗生物質の製造方法に関する。特に、トリプトファン及び飛粉糖化液の少なくともいずれか一方を含むペプチド系抗生物質の生産用培地、及びそれを用いたペプチド系抗生物質の製造方法に関する。
従来から医療の現場等で細菌による感染症を治療する目的で様々な抗生物質が用いられてきたが、近年その抗生物質に対する耐性菌の出現が大きな問題となっている。このような耐性菌に対して有効な抗生物質として、ダプトマイシンに代表されるペプチド系抗生物質が知られている。ダプトマイシンは、N−デカノイル−L−トリプトフィル−D−アスパラギニル−L−アスパルチル−L−トレオニルグリシル−L−オルニチル−L−アスパルチル−D−アラニル−L−アスパルチルグリシル−D−セリル−トレオ−3−メチル−L−グルタミル−3−アントラニロイル−L−アラニンεl−ラクトンという化学名を有するものである。当該ダプトマイシンは、体内の細菌の細胞膜に結合して細胞内に存在するKの流出を補助し、細菌の細胞機能障害を引き起こすことで、細菌による感染症を治療する。したがって、その作用機序の特殊性から耐性菌に対する効果が大いに期待されている抗生物質の一つである。
しかし、その製造はペプチド系抗生物質生産菌の培養・抽出・精製という生合成を利用した製造方法が主に用いられており、その生産性の向上が求められていた。例えば、上記ダプトマイシンは、放線菌を所定の培地に接種してその培地からダプトマイシンを分離・精製することによって製造されており(特許文献1)、より生産性の高い製造方法が求められていた。
一方、コンニャク芋は、サトイモ科の多年生の植物として知られている。そして、当該コンニャク芋からは、主に煮込み料理などに用いられるコンニャクの原材料となるコンニャク粉と、そのコンニャク粉の製造過程で副産物として生じる飛粉が製造される。飛粉については、その抽出物が動脈硬化の予防などに役立つことが開示されている(特許文献2)。しかし、飛粉の利用に対する研究・開発は十分になされておらず、その多くが産業廃棄物として廃棄されている。また、上記方法においても多くの産業廃棄物が産生される。
また、ペプチド系抗生物質の生産菌の培養において必須アミノ酸の一つであるトリプトファンの添加がその生産性にどのような影響を及ぼすかについてはこれまで全く調査研究がなされてこなかった。
特開昭55−092353号公報 特開2006−089440号公報
本発明は、ペプチド系抗生物質の生産用培地にペプチド系抗生物質生産菌を接種してペプチド系抗生物質を製造するにあたり、よりその生産性の高い培地及び製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、糖化酵素により糖化された飛粉をペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が高まることを見出した。したがって、本発明の第1の局面は、
(1)糖化酵素により糖化された飛粉を含む、ペプチド系抗生物質の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(2)上記糖化酵素がアミラーゼである、上記(1)に記載の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(3)上記飛粉は、タンパク質分解酵素により処理された飛粉である、上記(1)又は(2)に記載の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(4)上記タンパク質分解酵素がプロテアーゼである、上記(3)に記載の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(5)糖化酵素により糖化された上記飛粉を、0.1体積%〜5.0体積%の添加量で含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(6)上記添加量が2.0体積%〜3.0体積%である、上記(5)に記載の生産用培地、である。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、糖化酵素により糖化された飛粉とトリプトファンとを、ペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が相乗的に高まることを見出した。したがって、本発明の好適な態様は、
(7)トリプトファンをさらに含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の生産用培地、である。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、トリプトファンをペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が高まることを見出した。したがって、本発明の他の局面は、
(8)トリプトファンを含む、ペプチド系抗生物質の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(9)1.0mM〜25.0mMの上記トリプトファンを含む、上記(7)又は(8)に記載の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(10)上記ペプチド系抗生物質は、リポペプチド系抗生物質である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の生産用培地、である。
本発明の好適な態様は、
(11)上記リポペプチド系抗生物質は、ダプトマイシンである、上記(10)に記載の生産用培地、である。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、糖化酵素により糖化された飛粉をペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が高まることを見出した。したがって、本発明の他の局面は、
(12)糖化酵素により糖化された飛粉を、ペプチド系抗生物質の生産用培地に添加する工程を含む、ペプチド系抗生物質の製造方法、である。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、糖化酵素により糖化された飛粉とトリプトファンとを、ペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が相乗的に高まることを見出した。したがって、本発明の好適な態様は、
(13)トリプトファンをペプチド系抗生物質の生産用培地に添加する工程をさらに含む、上記(12)に記載の製造方法、である。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、トリプトファンをペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することで、ペプチド系抗生物質の生産性が高まることを見出した。したがって、本発明の他の局面は、
(14)トリプトファンを、ペプチド系抗生物質の生産用培地に添加する工程を含む、ペプチド系抗生物質の製造方法、である。
本発明は、ペプチド系抗生物質の生産用培地にペプチド系抗生物質生産菌を接種してペプチド系抗生物質を製造するにあたり、よりその生産性の高い培地及び製造方法を提供することができる。
以下で本発明のペプチド系抗生物質の生産用培地、及びそれを用いたペプチド系抗生物質の製造方法を実施する形態を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための一例であり、本発明が当該実施形態のみに限定されるものではない。
1.飛粉の製造
コンニャクは、一般的には、コンニャク粉、特には精粉を所定の温度に加温した水中に添加してゲル状になるまで撹拌し、その後、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤を添加して撹拌し、それを型に流し込んで固めた後に熱湯で煮沸して得られる。「飛粉」とは、このようなコンニャクの原材料として用いられる精粉、微粉、又は中粉等のコンニャク粉の製造過程において、副産物として生産されるものである。コンニャク粉はグルコマンナンを主成分とする一方で、当該飛粉は、コンニャク粉に比べて、グルコマンナンの含有量が相対的に少なく、デンプン等の糖質、セルロース、タンパク質、脂質及び/又は灰分等を多量に含む。
一例としては、飛粉中には、50〜70%の糖質、10〜30%のタンパク質、0.7〜7%の脂質、及び6〜10%の灰分が含まれる。
コンニャク粉の製造は、一般的には、採取したコンニャク芋を洗浄及びスライスし、温熱乾燥により乾燥させることで、コンニャク芋のスライス乾燥品を得る。その後、公知の粉砕方法により所望の大きさとなるようにスライス乾燥品を複数回に分けて徐々に粉砕する。その各粉砕工程において、比重により分離し、比重の重い方はその後篩にかけ、その粒径に応じて精粉、微粉、及び中粉のコンニャク粉として回収される。飛粉は、比重による分離の際に、比重の軽い粉として分離・回収することによって得られる。
なお、スライス乾燥品の粉砕には、タービンミキサー粉砕法、ターボミル粉砕法、ローラーミル研磨粉砕法など、公知の方法であればいずれを用いても良いが、好適には、タービンミキサーによる粗粉砕、次いでタービンミキサーにより微粉砕、次いでターボミル粉砕、最後にローラーミル研磨による粉砕の順で、徐々に粒径が細かくなるように粉砕することが好ましい。
また、飛粉の分離及び回収には、得られた粉体の落下速度の違いを利用する重力場分離、得られた粉体の慣性力の違いを利用する慣性力場分離、又は得られた粉体に遠心力をかけて分離する遠心力場分離などを利用することができる。そして、好適には遠心力場分離が用いられ、その中でも特にサイクロンセパレータを用いるのが好ましい。
2.糖化酵素により糖化された飛粉(飛粉糖化液)の製造
本実施形態においては、糖化酵素により糖化された飛粉(飛粉糖化液)の製造には、一例としては上記方法により得られた飛粉を用いる。以下、飛粉を用いた本実施形態に係る飛粉糖化液の製造方法を説明するが、当該方法は一例であって、本実施形態に係る飛粉糖化液を他の製造方法によって製造することも可能である。
(1)液化工程
まず、本実施形態に係る飛粉糖化液を製造するにあたり、飛粉を純水に混合しpHを調整して得られた溶液中に所定量の液化酵素が添加される。その後、得られた溶液を所定の温度まで加温し、当該温度で所定の時間、液化反応させる。次いで、液化反応後の溶液をオートクレーブで所定時間(例えば、15分間)、加熱処理(例えば、120℃)を行い、液化酵素を失活させて、液化液を得る。
なお、添加される液化酵素としては、所定の力価を有するものであればいずれでもよく、好ましくはα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)を用いることができる。このような液化酵素としては市販のものでも良く、好ましくは、耐熱性が高い酵素、例えば、商品名「クライスターゼSD8」、商品名「クライスターゼT10S」(以上、天野エンザイム社製)、商品名「ターマミルSC」(ノボザイムズジャパン社製)、商品名「スピターゼHK」(長瀬産業社製)が挙げられる。
また、液化酵素の添加量は、酵素力価をJIS K7001−1990により測定した液化力単位(LJU)を1unitとした場合に、原料(飛粉)1gに対して1unit〜150units、好ましくは10units〜100units、より好ましくは20units〜70unitsである。1unit以上であれば、液化反応は十分に進み、150units以下であれば経済的である。
液化酵素の反応温度及び反応時間は、添加する液化酵素の種類によっても異なる。しかし、一例として、65℃〜120℃の反応温度、好ましくは80℃〜110℃の反応温度であって、0.01時間〜24時間の反応時間、好ましくは0.1時間〜12時間の反応時間、より好ましくは0.1時間〜2時間の反応時間とすることが挙げられる。
また、液化反応には、沸騰湯浴であったり、ジェットクッカーなどの連続式液化装置を利用することが可能である。
(2)糖化工程
まず、糖化工程では、上記液化工程によって得られた液化液に、所定量のタンパク質分解酵素及び糖化酵素が添加される。その後、得られた溶液を所定の温度まで加温し、その温度で所定時間、タンパク質分解反応及び糖化反応させる。次いで、タンパク質分解反応及び糖化反応後の溶液をガスや電気または蒸気を使用した加熱装置付の反応槽で所定時間(例えば、30分間)、加熱処理(例えば、70℃)を行い、タンパク質分解酵素及び糖化酵素を失活させて、糖化液を得る。
なお、添加されるタンパク質分解酵素の一例としては、EC番号が3.4群のものであれば良く、好ましくはエンド型プロテアーゼ(より好ましくは酸性プロテアーゼまたは中性プロテアーゼを用いることができる。このようなタンパク質分解酵素としては市販のものでも良く、好ましくは、商品名「プロテアックス」、商品名「ニューラーゼF3G」、商品名「パパインW−40」、商品名「プロメラインF」、商品名「パンクレアチンF」、商品名「プロテアーゼA「アマノ」SD」、商品名「プロテアーゼM「アマノ」SD」、商品名「プロテアーゼP「アマノ」3SD」、商品名「ペプチダーゼR」、商品名「サモアーゼPC10F」(EC3.4.24.27)、商品名「プロチンSD-NY10」(EC3.4.24.28)(以上、天野エンザイム社製)、商品名「食品用精製パパイン」、商品名「デナチームAP」、商品名「デナプシン2P」(以上、長瀬産業社製)、商品名「スミチームAP」、商品名「スミチームLP」、商品名「スミチームLPL」、商品名「スミチームFP」、商品名「スミチームLP50D」(EC3.4.11.1、EC3.4.21.63、及びEC3.4.23.18の混合)(以上、新日本化学工業社製)が挙げられる。
上記タンパク質分解酵素の添加量は、酵素力価をpH6.0で30℃、1分間、カゼインに添加して反応させた結果チロシン1μg相当のフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1unitとした場合に、原料1gに対して10units〜2000units、好ましく10units〜1000units、より好ましくは30units〜500unitsである。2000units以下であれば、不快な風味を抑制でき、10units以上であれば十分にタンパク質分解反応が進む。
また、添加される糖化酵素の一例としては、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)を用いることができる。このような糖化酵素としては市販のものでもよく、好ましくは商品名「グルコチーム#20000」、商品名「OPTIMAX4060VHP」(以上、長瀬産業社製)、商品名「グルクザイムPL45」、商品名「ダイザイムGPS」(以上、天野エンザイム社製)、商品名「スミチームAD」(新日本化学工業社製)が挙げられる。
上記糖化酵素の添加量は、酵素力価をpH4.5で40℃、30分間、アミロースに添加して反応させた結果グルコースを1mg生産する酵素量を1unitとした場合に、原料1gに対して3units〜300units、好ましくは15units〜150units、より好ましくは30units〜150unitsである300units以下であれば不快な風味を抑制でき、3units以上であれば十分に糖化反応が進む。
タンパク質分解酵素及び糖化酵素の反応温度及び反応時間は、添加するタンパク質分解酵素及び糖化酵素の種類によっても異なる。しかし、一例として、30℃〜65℃の反応温度、好ましくは40℃〜65℃の反応温度、より好ましくは45℃〜65℃の反応温度であって、1時間〜48時間の反応時間、好ましくは6時間〜36時間の反応時間、より好ましくは12時間〜24時間の反応時間とすることが挙げられる。
上記糖化反応においては、得られる糖化液の糖組成に応じて、β−アミラーゼ等の糖化酵素や、液化により生じるデキストリン類のα−1,6結合を切断するためのいわゆる枝切酵素などを適宜添加しても良い。
また、上記糖化反応においては、糖化酵素と一緒にタンパク質分解酵素も一緒に添加したが、当然に糖化酵素のみを添加して糖化反応をすることも可能である。なお、糖化反応の結果得られる糖化液の取り扱いのしやすさ(タンパク質分解酵素を添加しない場合には糖化液の流動性が低い)、ペプチド系抗生物質の生産性の観点から、タンパク質分解酵素も一緒に添加する方が好ましい。
(3)濃縮工程
まず、濃縮工程では、上記糖化工程によって得られた糖化液に対して珪藻土や活性炭を助剤とする濾過を行い、更にフィルター上を通液することで不溶部を取り除いた液部を得る。その後、得られた液部を所望のBrixとなるようにエバポレータなどを用いて濃縮して、飛粉糖化液を得る。
以上のとおり得られた飛粉糖化液は、取扱いの容易さ等を考慮して、Brixとして30%〜80%、より好ましくは50%〜80%、より好ましくは60%〜75%に調製することが望ましい。
また、当該飛粉糖化液中には、成分として、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類以上等の糖類、アミノ酸、灰分、ポリフェノール、水分等が含まれる。特に、当該成分の各組成は、30質量%〜90質量%、好ましくは30質量%〜80質量%の糖類、0.3質量%〜10.0質量%、好ましくは0.3質量%〜5.0質量%のアミノ酸、0.5質量%〜12質量%、好ましくは0.5質量%〜10質量%の灰分であることが望ましい。このような組成を有していれば、当該飛粉糖化液をペプチド系抗生物質の生産用培地に添加することによって、ペプチド系抗生物質生産菌の増殖を促進しペプチド系抗生物質の生産性を高めることが可能となる。
なお、得られた飛粉糖化液は、必要に応じて、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色料、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、矯味剤等を含んで、ペプチド系抗生物質生産菌の生育促進剤として利用することができる。
また、上記製造方法により得られた飛粉糖化液は、液状の形態を有するが、上記飛粉糖化液の用途等に応じて、公知の方法によって、固形状、顆粒状、粉末状などの形態で用いることも可能である。
また、以下の実施形態においては、飛粉糖化液が、ペプチド系抗生物質生産菌を培養するための培地に添加する添加剤として使用される例を記載するが、当該用途に限らず、食品や飲料、医薬品や化粧品、農薬等の添加剤として利用することも可能である。
3.トリプトファンの製造
本実施形態においては、トリプトファン、特にL−トリプトファンは必須アミノ酸の一種であるが、その製造方法としてはトリプトファンシンターゼの作用によりインドールとL−セリンから製造する方法や、トリプトファナーゼの作用によりインドールとL−セリンまたはインドール、ピルビン酸及びアンモニウムイオンとから製造する方法など、公知の方法を適宜用いることが可能であるし、市販品のL−トリプトファンを購入して用いることも可能である。
4.ペプチド系抗生物質の製造
本実施形態においては、糖化酵素により糖化された飛粉、つまりは飛粉糖化液及びトリプトファンのうちの少なくとも一つを培地に添加して、当該培地にてペプチド系抗生物質生産菌を培養することによりペプチド系抗生物質を製造する。以下、本実施形態に係る飛粉糖化液及びトリプトファンのうちの少なくとも一つを含む培地を用いたペプチド系抗生物質の製造方法等を説明するが、以下に記載する方法等は一例であって、他の方法によってペプチド系抗生物質生産菌を培養してペプチド系抗生物質を製造することも可能である。
(1)ペプチド系抗生物質
本実施形態において製造されるペプチド系抗生物質としては、バシトラシン、コリスチン、及びポリミキシンB等のポリペプチド系抗生物質、又はダプトマイシン等の、環状若しくは線状ペプチドに脂溶性側鎖(リポ部分)が結合した構造を有するリポペプチド系抗生物質が、好ましくはリポペプチド系抗生物質が、より好ましくはダプトマイシンが挙げられる。
(2)ペプチド系抗生物質生産菌
ペプチド系抗生物質の生産菌は、製造する抗生物質に応じて、枯草菌、芽胞桿菌、放線菌等、適宜公知の細菌を用いることができる。特に、リポペプチド系抗生物質であるダプトマイシンを製造する場合には、放線菌、好ましくはストレプトミセス・ロセオスポルス(Streptomyces roseosporus)、より好ましくはストレプトミセス・ロセオスポルスのATCC 31568株(American Type Culture Collection(ATCC)が発行するカタログに保存番号ATCC31568として掲載)が培養に用いられる。
(3)ペプチド系抗生物質生産菌の培養
ペプチド系抗生物質生産菌の培養は、飛粉糖化液及びトリプトファンのうちの少なくとも一つを添加した培地に、所定の培地で前培養したペプチド系抗生物質生産菌を接種して、培養することにより行われる。
前培養には、液体培地、半流動培地、又は固形培地など、所望に応じていずれの培地を用いることができるが、好ましくは液体培地を用いる。この場合、前培養のための培地には、培地に添加される窒素源、生育促進物質として添加されるエキス類、生育を補助する目的で添加される炭素源、pHをペプチド系抗生物質生産菌の生育に至適な範囲に調整するためのバッファー、水、核酸や無機塩等が含まれる。
前培養される培養期間としては1日間〜10日間、好ましくは1.5日〜5日間、より好ましくは2日間〜4日間が、また培養温度としては30℃〜40℃が例示されるが、これらの範囲で用いる菌株に応じて適宜調整することが可能である。また、培養条件としては、静置、通気、撹拌、振盪等から用いる菌株に応じて適宜選択することが可能である。
飛粉糖化液及びトリプトファンのうちの少なくとも一つを添加したペプチド系抗生物質生産菌によるペプチド系抗生物質の生産用培地、すなわち本培養のための培地には、液体培地、半流動培地、又は固形培地など、所望に応じていずれの培地を用いることができるが、好ましくは液体培地を用いる。本培養のための培地には、飛粉糖化液及びトリプトファンのうちの少なくとも一つに加えて、培地に添加される窒素源、生育促進物質として添加されるエキス類、生育を補助する目的で添加される炭素源、pHをペプチド系抗生物質生産菌の生育に至適な範囲に調整するためのバッファー、水、核酸や無機塩等が含まれる。
上記培地において添加される飛粉糖化液は、ペプチド系抗生物質の生産用培地に対して、0.1体積%〜7.0体積%の範囲で、好ましくは0.3体積%〜3.0体積%の範囲で添加させる。0.1体積%〜7.0体積%の範囲であればペプチド系抗生物質生産菌の増殖効率が向上しペプチド系抗生物質の生産性を十分に高めることができる。
また、上記培地において添加されるトリプトファンは、ペプチド系抗生物質の生産用培地に対して、1.0mM〜25.0mMの範囲で、好ましくは5.0mM〜20.0mMの範囲で添加させる。1.0mM〜25.0mMの範囲であればペプチド系抗生物質生産菌の増殖効率が向上しペプチド系抗生物質の生産性を十分に高めることができる。
上記培地において添加される他の成分は、一例としては、0.1質量%〜50質量%の窒素源やエキス類及び20質量%未満の炭水化物からなる。より好ましくは、2質量%〜30質量%の窒素源やエキス類及び0.1質量%〜3質量%の炭水化物からなる。特に好ましくは、2質量%〜15質量%の窒素源やエキス類及び0.5質量%〜2質量%の炭水化物からなる。
上記培地に利用可能な窒素源やエキス類としても、牛肉や魚肉などの肉抽出液を濃縮した肉エキスや、ポテトエキスに代表される植物エキス、トルラ酵母、パン酵母、ビール酵母に代表される酵母エキス等が挙げられるが、好ましくは、トルラ酵母、パン酵母、ビール酵母に代表される酵母エキスである。また、利用可能な炭水化物としては、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、ラクトース、オリゴ糖、澱粉等が挙げられるが、これらに限定されない。
ペプチド系抗生物質生産菌が本培養される培養期間としては1日間〜30日間、好ましくは5日〜25日間、より好ましくは10日間〜20日間が、また培養温度としては30℃〜40℃が例示されるが、これらの範囲で用いる菌株に応じて適宜調整することが可能である。また、培養条件としては、静置、通気、撹拌、振盪等から用いる菌株に応じて適宜選択することが可能である。
(4)ペプチド系抗生物質の回収
飛粉糖化液及びトリプトファンのうちの少なくとも一つを所定の添加量で添加したペプチド系抗生物質の生産用培地にペプチド系抗生物質生産菌を接種して得られた培養液中にはペプチド系抗生物質が生成されている。したがって、本実施形態に係るペプチド系抗生物質の製造には、当該培養液からペプチド系抗生物質を所望の方法によって回収する工程を含む。一例としては、固相抽出、液液抽出など公知の方法で分離・濃縮することが可能であるが、好ましくは固相抽出により分離・濃縮してペプチド系抗生物質を培養液から回収する。
5.各種測定
(1)Brixの測定
Brixとは、可溶性固形分濃度(%)のことであり、可溶性固形分が溶解した水溶液の20℃における屈折率を測定し、ICUMSA(International Commission for Uniform Methods of Sugar Analysis)提供の換算表に基づいて、純ショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値のことである。本実施形態においては、飛粉糖化液を濃縮するときの濃度を調整するために測定される。Brixは、ガラスビーカーに当該飛粉糖化液が投入されて所定時間経過後の溶液を用いて、既に知られている公知の測定法を適宜用いて測定することができ、一般的には市販の糖度計(例えば、デジタル屈折計 商品名「RX−5000α」(アタゴ社製))を用いて測定することができる。
(2)飛粉糖化液の組成の測定
本実施形態において、得られた飛粉糖化液に含まれる各成分の分析は、以下の各方法により測定可能である。
[固形分]
固形分量は、公知の測定法を適宜用いて測定することができ、例えば、7訂日本食品標準成分分析マニュアル(文部科学省発行)の常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)に準じて測定することができる。
[灰分]
灰分量は、公知の測定法を適宜用いて測定することができ、例えば、7訂日本食品標準成分分析マニュアル(文部科学省発行)の直接灰化法により測定することができる。
[アミノ酸]
アミノ酸量は、公知の測定法を適宜用いて測定することができ、例えば、第四回改正国税庁所定分析法注解(注解編集委員会編、日本醸造協会発行)の23頁の記載に準じたホルモール滴定法によりアミノ酸度を測定し、この測定されたアミノ酸度に定数をかけてグリシン相当量として算出することができる。
[糖類]
本実施形態において、得られた飛粉糖化液に含まれる糖類の組成は、公知の測定法を適宜用いて測定することができ、例えば、当該飛粉糖化液を純水で所定のBrixに希釈し、所定の細孔サイズのフィルターに通液させたのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:例えば、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製))によって測定することができる。
また、各糖類の質量は、まず全体の固形分量から、7訂日本食品標準成分分析マニュアル(文部科学省発行)のマクロ改良ケルダール法により測定されるタンパク質量、ソックスレー抽出法により測定される脂質量、及び上記のとおり測定される灰分量を差し引いたものを全糖類量として算出する。次に、当該全糖類量に、上記のとおり測定される糖組成に基づいて、各糖類の割合を乗じることで、各糖質の質量が算出される。全成分(固形分換算後の全量)に対する各糖類(固形分換算後)の割合は、当該各糖類の質量を全固形分量で除すことで、質量%として算出される。
(3)ペプチド系抗生物質の定量
本実施形態において、最終的に得られた培養液中に含まれるペプチド系抗生物質の定量は、ペプチド系抗生物質の回収工程においてペプチド系抗生物質のみに分離・濃縮したのち、HPLC(例えば、商品名「クロマスター5000シリーズ」(日立ハイテクノロジーズ社製))にかけ、標品とのピーク面積の比較により定量する。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
I.ダプトマイシンの製造
[実施例1]
1.飛粉糖化液の原材料(飛粉)の製造
飛粉の製造には、コンニャク芋を洗浄しスライスした後、温熱乾燥機で温熱乾燥をし、得られたコンニャク芋のスライス乾燥品を、タービンミキサーによる粗粉砕、タービンミキサーによる微粉砕、ターボミルによる粉砕、及びローラーミルによる研磨に順次かけ、徐々に粉状になるようにした。得られた粉状体はコンニャク粉として回収したが、上記粉砕・研磨の各工程で得られた粉砕物を、サイクロンセパレータにかけ、比重に基づいて、比重の軽い粉を「飛粉」として回収し、飛粉糖化液の原材料とした。
2.糖化酵素により糖化された飛粉(飛粉糖化液)の製造
上記にて得られた飛粉250gに対して1:6(質量比)の割合で純水を混合し、水酸化カルシウムを加えて20℃でpH6.3に調整した。その後、液化酵素として、13,100units/g(測定法はJIS K7001−1990による)の力価を有する商品名「クライスターゼT10S」(天野エンザイム社製)を飛粉1gに対して39units添加した。その後、沸騰湯浴中に添加後の反応液を入れて90℃になるまで加温し、温度を保持しつつ1時間液化酵素を反応させた。次いで、オートクレーブを用いて121℃で15分間の加熱処理を行い、用いた液化酵素を失活させ、液化液を得た。
次に、得られた液化液を恒温槽中で60℃まで冷却し、タンパク質分解酵素として酵素力価をpH6.0で30℃、1分間、カゼインに添加して反応させた結果チロシン1μg相当のフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1unitとした場合に、90,000units/gの比活性を有する商品名「スミチームLP50D」(新日本化学工業社製)を、飛粉1gに対して180units添加し、また糖化酵素として酵素力価をpH4.5で40℃、30分間、アミロースに添加して反応させた結果グルコースを1mg生産する酵素量を1unitとした場合に、32,000units/gの比活性を有する商品名「ダイザイムGPS」(天野エンザイム社製)を、飛粉1gに対して96units添加した。その後、恒温槽中で、60℃で18時間の酵素反応を行った。次いで、得られた反応液を70℃まで加温して各酵素を失活させ、糖化液を得た。
次に、得られた糖化液を、珪藻土(商品名「ラヂオライト#500S」(昭和化学工業社製))で被覆した濾紙(商品名「定性濾紙No.2」(東洋濾紙社製))を張ったヌッチェに吸引しながら上記糖化液を通液させた。得られた濾過液を細孔サイズ5.0μmのメンブレンフィルターで再度濾過した。得られた濾過液をエバポレータによってBrixが65.3%になるまで濃縮し液状の飛粉糖化液を得た。得られた飛粉糖化液を以下の実験において利用した。
なお、得られた飛粉糖化液の固形分の質量は、試料採取量1gから、加熱乾燥条件を105℃、16時間とし、7訂日本食品標準成分分析マニュアル(文部科学省発行)の常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定した。灰分の質量は、試料採取量1gから、加熱乾燥条件を550℃、16時間とし、7訂日本食品標準成分分析マニュアル(文部科学省発行)の直接灰化法により測定した。アミノ酸量は、飛粉糖化液のBrixを10%に調整し、第四回改正国税庁所定分析法注解(注解編集委員会編、日本醸造協会発行)の23頁の記載に準じたホルモール滴定法によりアミノ酸度を測定し、このアミノ酸度に定数をかけてグリシン相当量として算出し、調整前のBrixに換算して算出した。糖類の組成は、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製)を用いて分析した。
(測定条件)
カラム:商品名「ULTRON PS−80N」(島津ジーエルシー社製)
溶媒:純水
温度:60℃
流速:0.6mL/min
検出:RI(示差屈折率)
また、試料採取量1gから商品名「ケルテック2300」(フォス・ジャパン社製)を使用して改良マクロ改良ケルダール法によりタンパク質量を、試料採取量10gから商品名「ソックステック2055」(フォス・ジャパン社製)を使用してソックスレー抽出法により脂質量を各々測定し、固形分量から灰分量、タンパク質量、脂質量を減じて炭水化物量を算出し、当該炭水化物量を上記HPLC分析により得た各糖の組成割合で乗じ、各糖の質量を算出した。
得られた飛粉糖化液の組成は表1に示すとおりであった。なお、各成分の数値は、全成分(固形分換算後の全量)に対する各成分(固形分換算後)の質量%として表した。
Figure 2018139549
3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造
(1)ダプトマイシン生産菌の前培養
ダプトマイシン生産菌の前培養のために、3.0質量%のソイトン、及び2.5質量%のコーンスターチを含む液体培地で、ダプトマイシン生産菌としてストレプトミセス・ロセオスポルスのATCC 31568株を接種し、28℃で3日間、220rpmの速度で振盪培養した。
(2)ダプトマイシン生産菌の本培養
ダプトマイシン生産菌の本培養のために、3.0質量%のコーンスターチ、0.15質量%のKCl、0.14質量%のNaSO、及び0.13質量%のアスパラギン酸・1水塩を含む液体培地を基本培地として、当該基本培地に0.3体積%の飛粉糖化液をさらに添加した。その後、100mL容三角フラスコに19mLの液体培地を分注し滅菌した。次いで、前培養で得られた培養液5質量%接種して、28℃で14日間、220rpmの速度で振盪培養した。
(3)ダプトマイシンの回収
本培養で得られた培養液を所定量採取し、等量のメタノールを採取した培養液に添加して、メタノール抽出を行った。その後、メタノールを留去し、商品付属の取扱説明書に従って商品名「Sep−Pak C18カートリッジ」(日本ウォーターズ社製)に吸着させた。その後、カートリッジを蒸留水で洗浄し、80%アセトニトリルで溶出した。これを乾固するまで濃縮し、少量のメタノールに再度溶解して1mg/mLの濃度で実施例1に係るダプトマイシンとして回収した。
[実施例2]及び[実施例3]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液の添加量を1.0体積%(実施例2)、又は3.0体積%(実施例3)とした以外は、全て同様の方法によって実施例2又は3に係るダプトマイシンを得た。
[実施例4]及び[実施例5]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液の添加量を3.0体積%とし、さらに0.17質量%(実施例4)又は1.70質量%のKHPOを添加した以外は、全て同様の方法によって実施例4又は5に係るダプトマイシンを得た。
[実施例6]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液の添加量を3.0体積%とし、さらに1.0質量%のポリペプトンを添加した以外は、全て同様の方法によって実施例6に係るダプトマイシンを得た。
[実施例7]及び[実施例8]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液に代えて、5.0mM(実施例7)又は20.0mM(実施例8)のL−トリプトファン(和光純薬工業社製)を添加した以外は、全て同様の方法によって実施例7又は8に係るダプトマイシンを得た。
[実施例9]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液の添加量を3.0体積%とし、さらに20.0mMのL−トリプトファンを添加した以外は、全て同様の方法によって実施例9に係るダプトマイシンを得た。
[比較例1]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で飛粉糖化液を全く添加しなかった以外は、全て同様の方法によって比較例1に係るダプトマイシンを得た。
[比較例2]及び[比較例3]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液に代えて、0.17質量%(比較例2)又は1.70質量%(比較例3)のKHPOを添加した以外は、全て同様の方法によって比較例2又は3に係るダプトマイシンを得た。
[比較例4]
上記実施例1の「3.ダプトマイシン生産菌の培養及びダプトマイシンの製造」の「(2)ダプトマイシン生産菌の本培養」の工程で添加した飛粉糖化液に代えて、1.0質量%のポリペプトンを添加した以外は、全て同様の方法によって比較例4に係るダプトマイシンを得た。
II.得られたダプトマイシンの定量
各実施例及び比較例において得られたダプトマイシンの定量は、HPLC(商品名「クロマスター5000シリーズ」(日立ハイテクノロジーズ社製))を用いて分析した。
(測定条件)
カラム 商品名「ODS−120T」(東ソー社製)
※内径:4.6mm、長さ150mm
溶媒 水:アセトニトリル:リン酸二水素アンモニウム(65:35:1)
流速 0.75mL/min
検出 UV検出(280nm)
具体的には、上記測定によって得られた曲線と、標品を同様の手順に従って測定して得られた曲線とのピーク面積の比較によって、各実施例及び比較例で得られたダプトマイシンを定量した。表2に、各実施例及び比較例において添加された添加物(各実施例及び比較例間で量が異なるもののみ)の添加量と、製造されたダプトマイシンの量の定量結果を示した。
Figure 2018139549
表2によれば、0.3体積%、1.0体積%、又は3.0体積%の飛粉糖化液を添加した実施例1〜3のダプトマイシン生産用培地を用いた場合には、飛粉糖化液を全く添加しなかった比較例1の生産培地を用いた場合に比べて、明らかに多量のダプトマイシンを製造し得ることが確認された。また、ダプトマイシンの生産量も飛粉糖化液の添加量が増えるに応じて増加した。また、飛粉糖化液に加えて他の添加物(KHPO又はポリペプトン)を添加した実施例4〜6のダプトマイシン生産用培地を用いた場合にも、飛粉糖化液を添加しなかった比較例2〜4の生産用培地を用いた場合に比べて、明らかに多量のダプトマイシンを製造し得ることが確認された。この結果は、ダプトマイシンの生産量の増加が、他の添加物による効果ではなく、飛粉糖化液による効果であることを裏付けた。
また、表2によれば、5.0mM、又は20.0mMのL−トリプトファンを添加した実施例7及び8のダプトマイシン生産用培地を用いた場合には、L−トリプトファンを全く添加しなかった比較例1の生産培地を用いた場合に比べて、明らかに多量のダプトマイシンを製造し得ることが確認された。また、ダプトマイシンの生産量も飛粉糖化液の添加量が増えるに応じて増加した。
さらに、表2によれば、3.0体積%の飛粉糖化液と20.0mMのL−トリプトファンの両方を添加した実施例9のダプトマイシン生産用培地を用いた場合には、L−トリプトファンを全く添加しなかった比較例1の生産培地を用いた場合に比べて、顕著に多量のダプトマイシンを製造し得ることが確認された。また、実施例9のダプトマイシン生産用培地を用いた場合には、実施例3及び8のそれぞれ単独で飛粉糖化液及びL−トリプトファンを用いた場合に比べて、単に相加的な増加ではなく、明らかに相乗的なダプトマイシンの生産量の増加が確認された。
以上によれば、ペプチド系抗生物質の製造において用いられる生産用培地にペプチド系抗生物質生産菌を接種してペプチド系抗生物質を製造するにあたり、飛粉糖化液、又はL−トリプトファンの添加により、その生産性が高まることが確認された。また、同生産用培地に、飛粉糖化液、及びL−トリプトファンの両方を添加することで、相乗的にその生産性が高まることが確認された。
本発明は、ペプチド系抗生物質のより高い生産性を有するペプチド系抗生物質生産用培地、またはそれを用いたペプチド系抗生物質の製造方法を提供する。したがって、本発明は、例えば医薬品の製造において利用可能である。

Claims (14)

  1. 糖化酵素により糖化された飛粉を含む、ペプチド系抗生物質の生産用培地。
  2. 前記糖化酵素がアミラーゼである、請求項1に記載の生産用培地。
  3. 前記飛粉は、タンパク質分解酵素により処理された飛粉である、請求項1又は2に記載の生産用培地。
  4. 前記タンパク質分解酵素がプロテアーゼである、請求項3に記載の生産用培地。
  5. 糖化酵素により糖化された前記飛粉を、0.1体積%〜5.0体積%の添加量で含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の生産用培地。
  6. 前記添加量が2.0体積%〜3.0体積%である、請求項5に記載の生産用培地。
  7. トリプトファンをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の生産用培地。
  8. トリプトファンを含む、ペプチド系抗生物質の生産用培地。
  9. 1.0mM〜25.0mMの前記トリプトファンを含む、請求項7又は8に記載の生産用培地。
  10. 前記ペプチド系抗生物質は、リポペプチド系抗生物質である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の生産用培地。
  11. 前記リポペプチド系抗生物質は、ダプトマイシンである、請求項10に記載の生産用培地。
  12. 糖化酵素により糖化された飛粉を、ペプチド系抗生物質の生産用培地に添加する工程を含む、ペプチド系抗生物質の製造方法。
  13. トリプトファンをペプチド系抗生物質の生産用培地に添加する工程をさらに含む、請求項12に記載の製造方法。
  14. トリプトファンをペプチド系抗生物質の生産用培地に添加する工程を含む、ペプチド系抗生物質の製造方法。
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