以下、本発明の住宅の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の住宅の一実施例の二階の構成を示す間取り図であり、(a)は二人の子供それぞれの個室がある場合の間取り、(b)は子供が小さい場合または子供が独立した場合の間取りを示している。本実施例の住宅1は、壁部2に囲まれた居室3と、居室3に隣接して配置される水回り4と、居室3内に配置されて居室3と行き来可能とされる囲繞空間5と、居室3内に配置されて居室3と行き来可能とされる居室空間6とを備える。ここでは、本実施例の住宅1は、二階建てとされ、前述した居室3が二階に配置されている。
居室3は、住宅1の奥行方向へ延出する部分と、この部分から住宅1の間口方向一方側へ延出する部分とからなる上面視略L字形状に形成されている。居室3の周囲の壁部2の内、住宅1の奥行方向へ延出する部分の奥側の壁部7、住宅1の間口方向他方側の壁部8、住宅1の奥行方向手前側の壁部9、および住宅1の間口方向一方側へ延出する部分の、住宅1の間口方向一方側の壁部10は、住宅外部と居室3との間の壁とされ、それぞれの壁部に窓11,12,13,14が設けられる。残りの壁部、すなわち、住宅1の奥行方向へ延出する部分の、住宅1の間口方向一方側の壁部15、および住宅1の間口方向一方側へ延出する部分の、住宅1の奥行方向奥側の壁部16は、住宅1内において居室3と他の空間とを区画する間仕切り壁とされる。居室3には、住宅1の一階と二階とを接続する階段17が接続されている。階段17は、上面視略L字形状とされ、住宅1の奥行方向奥側であって、住宅1の間口方向他方側の隅部に配置される。この際、階段17は、住宅1の間口方向へ沿って配置される部分の間口方向一端部が居室3に接続されている。
水回り4は、洗面室、浴室またはキッチンなどが挙げられるが、ここでは洗面室とされる。洗面室4は、上面視略四角形状に形成されており、居室3に隣接して配置される。具体的には、洗面室4は、間口方向他方側の壁部が居室3の奥行方向へ延出する部分の間口方向一方側の壁部15とされると共に、奥行方向他方側の壁部が居室3の間口方向一方側へ延出する部分の奥行方向奥側の壁部16とされる。すなわち、洗面室4は、居室3の奥行方向へ延出する部分に隣接されると共に、居室3の間口方向一方側へ延出する部分に隣接される。洗面室4と居室3の奥行方向へ延出する部分との間の壁部15には、洗面室4と居室3とを互いに行き来可能とする出入口18が形成されており、この出入口18には開閉可能な扉19が設けられる。洗面室4には、住宅1の奥行方向奥側の壁部に窓20が設けられる。なお、洗面室4内には、洗面台が設置され、洗濯乾燥機が配置される。
洗面室4に隣接して、浴室21が配置される、浴室21は、上面視略四角形状に形成されており、洗面室4に隣接して配置されると共に、居室3の間口方向一方側へ延出した部分に隣接して配置される。浴室21と洗面室4との間の壁部には、互いを行き来可能とする出入口22が設けられており、この出入口22には開閉可能な扉23が設けられる。なお、浴室21には、住宅1の奥行方向奥側の壁部に窓24が設けられる。このようにして、本実施例の住宅1の二階は、居室3、洗面室4および浴室21によって、全体が上面視略四角形状に形成されている。
図2および図3は、本実施例の住宅が備える空間を示す概略斜視図であり、図2は囲繞空間、図3は居室空間を示している。図4から図7は、居室空間の構造を示す図であり、図4は側壁材同士の接続構造において一部を断面にして示す概略正面図、図5は側壁材同士の接続構造において一部を断面にして示す概略平面図、図6は側壁材同士の接続構造に用いられる接続金具の概略斜視図、図7は居室の床部への側壁材の接続構造を示す概略分解斜視図である。
囲繞空間5は、側壁部25で仕切られる空間であって、本実施例では、下方へ開口した略矩形ボックス状に形成されている。本実施例の囲繞空間5は、側壁部25を構成する複数の側壁部材26と、天井部を構成する天井部材27とを有している。
側壁部材26は、略矩形板状に形成されており、複数を互いに接続して側壁部25を形成することができる。側壁部25の内、前後の側壁部は、前後方向へ離隔して配置され、左右の側壁部は、左右方向へ離隔して配置される。これらの前後左右の側壁部はそれぞれ、複数の側壁部材26の側端部同士が互いに接続されて構成される。また、前方の側壁部と左方の側壁部、左方の側壁部と後方の側壁部、後方の側壁部と右方の側壁部、右方の側壁部と前方の側壁部とは、対応する側壁部材26,26同士が接続されて、互いに接続される。これにより、側壁部25は、上下方向へ開口する略矩形筒状に形成される。図2に示されるように、前方の側壁部には、囲繞空間5と居室3とを互いに行き来可能とする出入口28が設けられる。本実施例では、出入口28は、複数の側壁部材26の内の一つの上下長さを他の側壁部材の上下長さよりも短く形成し、その短く形成された側壁部材を上部に配置することで形成される。
天井部材27は、略矩形板状に形成されており、筒状の側壁部25の上端部に設けられる。本実施例では、二枚の天井部材27,27が左右方向へ離隔した状態で、側壁部25の上端部に設けられる。これにより、囲繞空間5の天井部には、上下方向へ開口する開口部29が形成される。なお、本実施例では、天井部材27にハンガーパイプ30を設けてもよい。ハンガーパイプ30は、取付具31を介して天井部材27に設けられる。取付具31は、正面視略T字形状で、上端部に天井部材27への固定部が設けられ、下端部にハンガーパイプ30が通される挿通穴が形成されている。複数の取付具31が間隔をあけた状態で天井部材27に固定されると共に、取付具31の挿通穴にハンガーパイプ30が通されることで、ハンガーパイプ30が天井部材27に吊下げられる。この際、ハンガーパイプ30は、天井部材27の下端部に、前後方向へ沿って配置される。
このようにして、囲繞空間5は、居室3内において略矩形ボックス状に組み立てられる。この際、囲繞空間5は、居室3の周囲の壁部2と間隔をあけた状態で、出入口28が洗面室4と居室3との間の壁部15に設けられた出入口18と対向するようにして、居室3内に配置される。本実施例では、囲繞空間5は、居室3の奥行方向へ延出した部分において、略L字形状の階段17によって囲まれたスペースに配置される。
居室空間6は、複数の側壁材32で囲まれる空間であって、本実施例では、下方へ開口した略矩形ボックス状に形成されている。本実施例の居室空間6は、周壁部33を構成する複数の側壁材32と、天井部を構成する天井材34とを有している。
側壁材32は、略矩形板状に形成されており、本実施例では、前後の板材35,36と、前後の板材35,36間に設けられる中間材37とを有している。前後の板材35,36は、略矩形板状に形成されており、対面した状態で前後方向へ離隔して配置される。中間材37は、左右方向を長手方向とする縦断面略矩形状で左右方向へ沿って配置される。中間材37と前側の板材35とは、中間材37の前面と板材35の後面とが接着剤などで固定されており、中間材37と後側の板材36とは、中間材37の後面と板材36の前面とが接着剤などで固定されている。
この際、前後の板材35,36は、前側の板材35が後側の板材36よりも上方へ延出されている。中間材37は、前後の板材35,36間において、上下方向へ互いに間隔をあけて複数配置されている。すなわち、中間材37,37間には、中空部38が形成されている。ここで、最も上方に配置される中間材37は、後側の板材36の上面と面一とされ、これにより、側壁材32の上端部に段部39が形成されている。一方、最も下方に配置される中間材37は、前後の板材35,36の下端よりも上方に配置され、これにより、側壁材32の下端部には、前後の板材35,36を側壁とする溝部40が下方へ開口して形成されている。
側壁材32の下端部には、居室3の床部に形成された被係合部41に着脱可能に係合される係合部42が形成されている。本実施例では、側壁材32は、後述する接続部43を介して、床部に接続される。接続部43は、前記溝部40に差し込まれる略矩形ブロック状の本体部44と、居室3の床部に形成された被係合部41への係合部42とを有している。本実施例では、係合部42は、本体部44から下方へ突出する丸棒状で外周面にネジ山が形成されており、被係合部41は、係合部42がねじ込まれるネジ穴とされる。
このような構成の複数の側壁材32を互いに接続することで、居室空間6の周壁部33が形成される。周壁部33の内、前後の周壁部は、前後方向へ離隔して配置され、左右の周壁部は、左右方向へ離隔して配置される。これらの前後左右の周壁部はそれぞれ、複数の側壁材32の側端部同士が互いに接続されて構成される。また、前方の周壁部と左方の周壁部、左方の周壁部と後方の周壁部、後方の周壁部と右方の周壁部、右方の周壁部と前方の周壁部とは、対応する側壁材32,32同士が接続されて、周壁部同士が互いに接続される。これにより、周壁部33は、上下方向へ開口する略矩形筒状に形成される。図3に示されるように、前方の周壁部には、居室空間6と居室3とを互いに行き来可能とする出入口45が設けられる。本実施例では、出入口45は、複数の側壁材32の内の一つの上下長さを他の側壁材の上下長さよりも短く形成し、その短く形成された側壁材を上部に配置することで形成される。また、右方の周壁部33には、居室空間6内と居室3内とを連通する窓部46が設けられる。本実施例では、窓部46は、複数の側壁材32の内の一つを上側部材47と下側部材48とから構成し、その間に隙間を設けることで形成される。
ここで、周壁部33を形成する際には、まず、接続部43の係合部42が居室3の床部の被係合部41にねじ込まれて、接続部43が床部に配置される。そして、互いに隣接する側壁材32,32同士が接続されると共に、側壁材32が接続部43に接続される。本実施例では、隣接する側壁材32,32同士の接続は、側壁材32に設けられる接続金具49によりなされる。接続金具49は、板状の支持部50と、この支持部50に設けられる軸部51と、軸部51に固定される揺動部52とを有している。
支持部50は、側面視において上方へ開口する略コ字形状に形成されており、開放両端部の左端部には、互いに前後方向へ離隔するように延出して延出部53が形成されている。延出部53には、左右方向へ沿う貫通穴54が上下に離隔して形成されている。軸部51は、丸棒状とされ、軸方向一端部にドライバーなどの工具が係合される被係合部55が形成されている。丸棒状の軸部51は、支持部50の開放両端部間に架け渡すようにして設けられる。この際、軸部51は、その軸線まわりに回転可能とされる。揺動部52は、正面視略T字形の板状とされ、一片56の一端部には軸部51が通される貫通穴57が前後方向へ沿って形成されており、他片58は正面視略半円形状に形成されている。揺動部52は、一片56の貫通穴57に軸部51が通された状態で、一片56が軸部51に固定される。従って、接続金具49は、支持部50に保持された軸部51をその軸線まわりに回転させることで、揺動部52を回転させることができる。
このような構成の接続金具49は、隣接する側壁材32,32の内の一方の側壁材32に設けられる。一方の側壁材32の中間材37の側端部には、側方へ開口する凹部59が形成されており、この凹部59内に接続金具49が配置される。この際、接続金具49は、延出部53が凹部59の底部に接触した状態で、延出部53の貫通穴54を介して中間材37にネジ60がねじ込まれて、凹部59内に配置される。なお、接続金具49は、一方の側壁材32の複数の中間材37の内、任意の中間材37に設けられる。隣接する側壁材32,32の内、他方の側壁材32の中間材37の側端部には、側方へ開口する凹部61が形成されている。凹部61の開口部には、上方へ突出して突出部62が形成されている。
隣接する側壁材32,32同士を接続する際には、前述した接続金具49が用いられる。具体的には、一方の側壁材32と他方の側壁材32とは、接続金具49が設けられた側の側端部と凹部61が設けられた側の側端部とが接触した状態で、軸部51を回転させて揺動部52を回転させ、揺動部52の略半円形部を凹部61内に差し込むことで接続される。この際、揺動部52の先端部の略半円形部が凹部61内の突出部62に接触されることで、隣接する側壁材32,32同士が互いに離隔する方向へ移動することが防止される。
ここで、揺動部52を回転させる際には、ドライバーなどの工具が用いられる。この工具を軸部51の被係合部55に係合させるために、一方の側壁材32には貫通穴63が形成されている。貫通穴63は、中間材37に形成された凹部59と対応する箇所において、側壁材32に前後方向へ沿って形成されている。すなわち、凹部59は、貫通穴63を介して外部と連通されている。従って、凹部59内に配置された接続金具49の軸部51に形成された被係合部55に、貫通穴63を介して工具を係合させ、その状態で工具により軸部51を回転させて、軸部51に固定された揺動部52を回転させることができる。
一方、側壁材32を接続部43に接続する際には、棒状のピン部材64が用いられる。具体的には、居室3の床部に設けられた接続部43が側壁材32の下端部に形成された溝部40に差し込まれた状態で、前後の板材35,36に前後方向へ沿って形成された貫通穴65および接続部43の本体部44に前後方向へ沿って形成された貫通穴66に、棒状のピン部材64が差し込まれる。これにより、側壁材32が居室3の床部に立設される。
このようにして、前後左右の周壁部が形成されて、筒状の周壁部33が居室3の床部に組み立てられる。周壁部33が組み立てられる際、前方の周壁部と左方の周壁部、左方の周壁部と後方の周壁部、後方の周壁部と右方の周壁部、右方の周壁部と前方の周壁部とは、対応する側壁材32,32同士が前述した接続金具49により接続される。この場合、一方の側壁材32の中間材37の側端部に側方へ開口して形成された凹部59に接続金具49が設けられ、他方の板状の側壁材32に板面に開口して凹部61が形成されている。この凹部61は、側壁材32の中間材37が設けられた箇所に形成されており、開口部に突出部62が形成されている。従って、周壁部同士が接続金具49により接続される。また、出入口45が形成された箇所の上下長さが短い側壁材、および窓部46が形成された箇所の上側部材47と下側部材48とは、接続金具49によって隣接する側壁材32と接続されると共に、ダボにより隣接する側壁材32と接続される。なお、通常の側壁材32,32同士の接続は、接続金具49が用いられたが、これに代えてまたはこれに加えて、ダボによりなされてもよい。
周壁部33の組立後、天井部が周壁部33に設けられる。天井部を構成する天井材34は、略矩形板状に形成されており、筒状の周壁部33の上端部に設けられる。具体的には、天井材34は、周壁部33の上端部に形成された段部39に載せ置かれた状態で、天井材34に上下方向へ沿って形成された貫通穴67、および最も上側に配置された中間材37に上方へ開口して形成された凹部68によって形成された長穴に、棒状の係止材69が嵌め込まれることで、周壁部33に設けられる。
天井部には、上下方向へ開口する開口部70が形成される。本実施例では、天井部は、二枚の天井材34,34から構成されており、両天井材34に円弧状の切欠き部71が形成されている。従って、両天井材34を周壁部33に設けた際に、それぞれの切欠き部71が互いに対応することで、上面視円形状の開口部70が形成される。このようにして、略矩形ボックス状の居室空間6は、居室3の床部に形成された被係合部41に側壁材32の係合部42が係合されることで、居室3内に配置される。なお、接続金具49は、側壁材32内に設けられる複数の中間材37の内、任意の中間材37に設けられる。また、側壁材32の接続部43による床部への接続は、前後左右の周壁部の任意の位置でなされる。
居室空間6内には、棚板72およびカウンター73が設けられる。棚板72およびカウンター73は、板状に形成されており、たとえば、左右の周壁部に沿って配置される。この際、棚板72およびカウンター73は、ダボや従来公知のL字金具などによって周壁部に取り付けられる。また、カウンター73は、板状の支持脚74によっても支持される。棚板72およびカウンター73の長さは、特に限定されるものではないが、本実施例では、対面する周壁部間の長さと同一に形成されている。
本実施例では、二つの居室空間6,6が居室3内に配置される場合と、一つの居室空間6が居室3内に配置される場合とにできるように、被係合部41が居室3の床部に形成されている。すなわち、住宅1は、居室3内に二つの居室空間6,6と囲繞空間5とが配置された間取りと、居室3内に一つの居室空間6と囲繞空間5とが配置された間取りとにできる。この際、囲繞空間5は、どちらの間取りにおいても共通の位置に配置されている。
居室空間6が二つの場合、一方の居室空間6は、居室3の周囲の壁部2と間隔をあけた状態で、囲繞空間5に隣接して配置される。この際、一方の居室空間6は、その出入口45が囲繞空間5とは逆側の位置となるように配置される。他方の居室空間6は、一方の居室空間6の囲繞空間5とは逆側の位置に配置される。この際、他方の居室空間6は、一方の居室空間6と間隔をあけつつ、一方の居室空間6の出入口45と対向しないようにずれて配置される。しかも、他方の居室空間6は、その出入口45が、一方の居室空間6の出入口45が開口する、一方の居室空間6と壁部2との間の間隔に開口して配置される。
本実施例では、前述したように囲繞空間5が居室3内に配置される。二つの居室空間6,6の内、一方の居室空間6は、住宅1の奥行方向において囲繞空間5の手前側に、囲繞空間5に隣接して配置される。この際、一方の居室空間6は、住宅1の奥行方向において階段17の手前側であって、住宅1の間口方向他方側の壁部8との間に間隔をあけて配置されると共に、居室3と洗面室4との間の出入口18が形成された壁部15との間に間隔をあけて配置される。また、一方の居室空間6は、出入口45が住宅1の奥行方向手前側へ開口して配置される。なお、窓部46は、それぞれの居室空間6で適宜の位置に形成されている。たとえば、他方の居室空間6では、壁部2の窓に対応する位置に、窓部46が形成されている。
他方の居室空間6は、住宅1の奥行方向において一方の居室空間6の手前側に配置される。この際、他方の居室空間6は、一方の居室空間6との間に間隔をあけつつ、一方の居室空間6の出入口45と対向しないように、住宅1の間口方向他方側にずれて配置される。図示例では、他方の居室空間6は、居室3の壁部2の内の住宅1の間口方向他方側の壁部8に接触して配置されると共に、居室3の壁部2の内の住宅1の奥行方向手前側の壁部9に接触して配置される。また、他方の居室空間6は、その出入口45が、居室3の壁部2の内の住宅1の奥行方向手前側の壁部9と一方の居室空間6との間の間隔に開口して配置される。すなわち、他方の居室空間6の出入口45は、住宅1の間口方向一方側に開口される。
居室空間6が一つの場合、居室空間6は、囲繞空間5と間隔をあけて配置されると共に、居室空間6の囲繞空間5とは逆側の位置の居室3の壁部2との間に間隔をあけて配置される。本実施例では、前述したように囲繞空間5が居室3内に配置される。一つの居室空間6は、住宅1の奥行方向において囲繞空間5の手前側に、囲繞空間5との間に間隔をあけて配置される。また、居室空間6は、居室3の壁部2の内の住宅1の間口方向他方側の壁部8に接触して配置される。この際、居室空間6の出入口45は、住宅1の間口方向一方側に開口される。しかも、居室空間6は、居室3の壁部2の内の住宅1の奥行方向手前側の壁部9との間に間隔をあけて配置される。
このようにして、居室3の床部には、居室空間6が二つの場合の間取りにおいて、両居室空間6,6が配置される箇所に対応する被係合部41と、居室空間6が一つの場合の間取りにおいて、その居室空間6が配置される箇所に対応する被係合部41とが、予め形成されている。なお、使用されていない被係合部41であるネジ穴には、キャップがなされている。
前記いずれの間取りにおいても、居室空間6の側壁材32の高さおよび囲繞空間5の側壁部材26の高さは、居室3の床面と天井面との間の長さよりも小さく形成されている。すなわち、本実施例では、囲繞空間5および居室空間6がボックス状に形成されているので、両空間5,6の天井部の高さが居室3の床面と天井面との間の長さよりも小さく形成されている。具体的には、囲繞空間5と居室3の天井面との間には間隔が形成されていると共に、居室空間6と居室3の天井面との間には間隔が形成されている。
ところで、本実施例では、囲繞空間5の側壁部材26の下端部に、居室3の床部に形成された囲繞空間用被係合部に着脱可能に係合する囲繞空間用係合部を形成してもよい。この場合、囲繞空間5は、囲繞空間用係合部が囲繞空間用被係合部に係合することで、居室3内に配置される。この構成は、典型的には、囲繞空間5の側壁部材26を居室空間6の側壁材32と同様に構成すればよい。すなわち、囲繞空間5の側壁部材26は、前後の板材と、前後の板材間に配置される中間材とを有し、下端部に下方へ開口する溝部が形成されている。この構成の側壁部材26は、居室空間6の側壁材32に用いられた接続部43と同様の構成の接続部を用いて、居室空間6の側壁材32と同様にして、居室3の床部に接続される。従って、囲繞空間用被係合部と被係合部41とが同様の構成とされると共に、囲繞空間用係合部と係合部42とが同様の構成とされる。また、天井部材27は、居室空間6の天井材34と同様に、前後両端部が係止材にて側壁部に接続される。
本実施例の住宅1の場合、居室3の床部に、居室3内に居室空間6が二つ設けられる間取りと、居室3内に居室空間6が一つ設けられる間取りとに対応できるように、被係合部41が形成されている。従って、たとえば、二人の子供が個室を望んだ場合には居室空間6が二つの間取りを選択することができ、子供が独立して家を出た場合や子供が小さい場合には居室空間6が一つの間取りを選択することができる。また、本実施例の住宅1の場合、上記両間取りにおいて囲繞空間5が共通位置に配置されているので、一方の間取りから他方の間取りへ変更する際の作業時の負担を軽減することができる。
また、本実施例の住宅1の場合、階段17で囲まれて狭くなったスペースに囲繞空間5が配置されるので、そのスペースを無駄にすることなく、有効に利用することができる。また、本実施例の住宅1の場合、囲繞空間5は、その出入口28と洗面室4と居室3とを行き来する出入口18とが対向するように、居室3内に配置される。従って、洗面室4内の洗濯乾燥機で洗濯および乾燥された衣服類を囲繞空間5に収納する際の動線を短くすることができ、家事の負担を軽減することができる。なお、囲繞空間5が洗面室4および浴室21からなる空間と対応して配置される場合には、囲繞空間5は、介護や介助が必要な人の利用スペースとして活用することができる。また、水回り4がキッチンの場合には、囲繞空間5をパントリーや食器類の収納部として利用する等の多目的な活用が可能となる。
また、本実施例の住宅1の場合、居室空間6が二つの間取りの場合において、両居室空間6,6の間の間隔および一方の居室空間6と壁部8との間の間隔に、上面視略L字形状のスペース75を形成することができる。従って、たとえば、略L字形状のスペース75に沿ってハンガーラックを設置して、略L字形状のスペース75を収納部として利用することができる。このスペース75は、居室3内にいる人からは見え難い箇所に形成されているので、収納部に適している。また、本実施例の住宅1の場合、居室空間6が二つの間取りにおいて、両居室空間6,6のそれぞれの出入口45が開口する居室内スペース76が共通している。従って、各居室空間6と居室内スペース76とを連続した一体的な空間とすることができ、その一体的な空間を形成する際の居室内スペース76を共通化することができる。
また、本実施例の住宅1の場合、居室空間6が一つの間取りの場合において、居室空間6と壁部9との間に形成されたスペースに机77を設置することで、家族の共有スペースとすることができる。また、本実施例の住宅1の場合、囲繞空間5が組立可能な構成であるので、囲繞空間5を容易に設置することができる。また、本実施例の住宅1の場合、囲繞空間5を構成する部材と居室空間6を構成する部材とが同様の構成とされるので、囲繞空間5および居室空間6にかかるコストの低減を図ることができる。さらに、本実施例の住宅1の場合、囲繞空間5および居室空間6の天井部が居室3の天井部よりも低く形成されているので、居室3の空間の広さを失わずに、居室空間6および囲繞空間5を設置して個別の空間を形成することができる。
なお、本発明の住宅は、前記実施例の構成に限らず、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。図8は、他の実施形態の一例を示す間取り図である。
住宅1の一階は、台所、食堂および居間からなる上面視略矩形状のLDK78を有している。住宅1の奥行方向においてLDK78の奥側の外壁および手前側の外壁にはそれぞれ、窓79,80が設けられる。LDK78に隣接して、トイレ81が配置される。トイレ81は、上面視略四角形状に形成されており、住宅1の間口方向においてLDK78の他方側に配置される。トイレ81およびLDK78に隣接して、上面視略四角形状の空間82が配置される。この空間82は、住宅1の奥行方向においてトイレ81の手前側に隣接して配置されると共に、住宅1の間口方向においてLDK78の他方側に隣接して配置されており、住宅1の奥行方向手前側が開口した空間とされる。空間82とトイレ81との間の壁部には、空間82とトイレ81とを行き来可能とする出入口83が設けられており、その出入口83には開閉可能に扉84が設けられる。
本実施例では、LDK78に隣接して、上面視略長方形状の玄関部85が配置される。玄関部85は、玄関扉86の屋内側に配置される空間であって、LDK78と連続して配置される。上面視略長方形状の玄関部85は、住宅1の奥行方向においてLDK78の手前側であって、住宅1の間口方向においてLDK78の他方側に配置される。この際、玄関部85は、その長手方向が住宅1の間口方向へ沿って配置される。住宅1の間口方向において玄関部85の他方側の外壁には、玄関扉86が設けられる。住宅1の奥行方向において玄関部85の手前側の外壁には、窓87,87が設けられる。
玄関部85と前述した空間82との間には、靴などが収納される上面視略四角形状の玄関収納空間88が配置される。この際、玄関収納空間88は、空間82との間にスペース89をあけて配置される。スペース89には、前述した階段17が接続される。住宅1の間口方向においてスペース89の他方側の外壁には、窓90が設けられる。また、玄関収納空間88は、住宅1の間口方向他方側の外壁との間にスペース91をあけて配置される。このスペース91は、玄関収納空間88と空間82との間のスペース89と連続しており、両スペース89,91によって玄関部85とLDK78とを接続する上面視略L字形状の通路が形成される。
本実施例では、LDK78に、前述した囲繞空間5および居室空間6と同様の構成の空間92が配置される。すなわち、空間92を構成する部材は、LDK78の床部に対して着脱可能とされる。空間92の位置は、特に限定されるものではなく、たとえば、玄関収納空間88に隣接して配置される。この際、LDK78の空間92が配置される箇所の床部に畳を敷いておくことで、LDK78に間仕切られた和室を形成することができる。LDK78に配置される空間92は、前述したように和室に限定されるものではなく、たとえば、書斎または家事室などの個室として使用することができる空間であってもよい。また、本実施例では、玄関収納空間88を、前述した囲繞空間5および居室空間6と同様の構成の空間としてもよい。すなわち、玄関収納空間88を構成する部材は、住宅1の床部に着脱可能とされる。この場合、玄関収納空間88の出入口93には、開閉可能に扉94が設けられる。なお、囲繞空間5の出入口28および居室空間6の出入口45には、開閉可能に扉を設けてもよい。