以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、センサユニットが備えるセンサについて説明する。
[第一実施形態の線状センサ]
図1は、センサの一実施形態に相当する線状センサの断面図である。
図1(A)は、第一実施形態の線状センサ10の構造を示す断面図である。線状センサ10は、中心に設けられた第一の内部導体101と、その外側に設けられた第二の内部導体102と、さらにその外側に設けられた外部シールド導体103を有する。このうち第一の内部導体101と第二の内部導体102との間には第一の絶縁被覆104が設けられている。すなわち、第一の内部導体101は第一の絶縁被覆104で覆われており、これによって第二の内部導体102や外部シールド導体103と絶縁されている。また、第二の内部導体102と外部シールド導体103との間には第二の絶縁被覆105が設けられている。すなわち、第二の内部導体102は第二の絶縁被覆105で覆われており、これによって外部シールド導体103と絶縁されている。さらに外部シールド導体103の外側にはシース130が設けられている。
図1(A)では、第一の内部導体101が直交する斜めの線によるハッチングで示されており、第二の内部導体102および外部シールド導体103が水平線によるハッチングで示されている。また、第一の絶縁被覆104が右下がりの線によるハッチングで示されており、第二の絶縁被覆105が左下がりの線によるハッチングで示されている。
図1(B)は、線状センサ10の第一の内部導体101の構造を示す断面図である。第一の内部導体101は、この図1(B)に示すように7本の導体線1000を撚り合わせたものである。また、図示は省略するが、図1(B)に示す導体線1000も、それぞれがより細い7本の導線(本実施形態では太さ10μm)を撚り合わせて構成されている。すなわち、第一の内部導体101は、49本の導線を2段階に分けて撚り合わせて構成されたものである。より具体的には、導体線1000は、中心に銅の導線を配置し、その周囲に銅の導線とステンレスワイヤの導線を交互にそれぞれ3本ずつ配置したものを撚り合わせたものである。なお、中心の導体線1000を、銅の導線だけを撚り合わせたものとし、その中心の導体線1000の周囲に、銅の導線だけを撚り合わせた導体線1000とステンレスワイヤの導線だけを撚り合わせた導体線1000を交互にそれぞれ3本ずつ配置した構成であってもよいし、中心の導体線1000を、ステンレスワイヤの導線だけを撚り合わせたものとし、その中心の導体線1000の周囲に、銅の導線だけを撚り合わせた導体線1000を合計6本配置した構成であってもよい。
第一の内部導体101の構成については、ここで説明した構成に限られるものではなく、撚り合わせる段数が異なってもよいし、撚り合わせる導体線の数が異なってもよく、また、撚り合わせる導体線の太さが異なってもよい。さらに、撚り合わせる導線の数が異なってもよく、また、撚り合わせる導線の太さが異なってもよい。撚り合わせる際には、異なる方向に捩じった導体線を組み合わせてもよいし、撚り合わせる段階に応じて捩じる方向を異ならせてもよい。さらに、1本の導体線で第一の内部導体101を構成してもよい。また、導線の素材については特に限定されるものではなく、例えばステンレス、タングステン、チタン、マグネシウム、あるいはこれらの合金であってもよく、素材の異なる複数種類の導線を組み合わせてもよい。さらには、素材の異なる複数種類の導体線を組み合わせてもよい。
第二の内部導体102および外部シールド導体103は、いずれもアルミフィルムと銅のメッシュの組み合わせで構成されているが、これらの導体についてはこの構成に限定されるものではない。従って例えば、金属製のフィルムや、金属製のメッシュ、さらには金属線をらせん状に巻き付けたもの、またはその組み合わせであってもよい。また、第二の内部導体102および外部シールド導体103の構成や素材は同じである必要はなく、異なっていてもよい。また例えば、外部シールド導体103が、金属製のメッシュの層と、金属箔を付けたPETフィルムの層との二層構造のように、複数の層を有するものであってもよい。
第一の絶縁被覆104は、圧電材料であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムを用いて構成されたものであり、図2に示すように第一の内部導体101に螺旋状に巻き付けられたものである。なお、第一の絶縁被覆104は分極処理が施されたことにより圧電性を有するものである。
第一の内部導体101に圧電性フィルムを巻き付ける場合には隙間が生じないようにし、第一の内部導体101対してノイズの影響が生じにくくなるようにすることが好ましい。このため本実施形態の第一の絶縁被覆104では、図2(A)に示すように二枚の帯状の圧電性フィルムを180度ずらしながら同じ方向に巻き付けることで、第一の内部導体101を中心にして圧電性フィルムに係る張力を均等にし、フィルムの偏りによって隙間が生じることを防止している。また、図1(A)に示すように第一の内部導体101を導体線1000を撚り合わせて構成した場合には、第一の内部導体101のより方向と同じ方向に圧電性フィルムを巻き付けてもよいし、逆方向に巻き付けてもよい。この方向によっては、線状センサ10の柔軟性を変えることができる場合がある。
なお、図2(A)では、第一の絶縁被覆104を二枚の圧電性フィルムで構成した例が示されているが、圧電性フィルムを用いる場合の数はこれに限定されるものではなく、例えば一枚であってもよいし複数であってもよい。
図2(B)は、第一の内部導体101の外周面に一枚の圧電性フィルムである第一の絶縁被覆104を巻き付けていく様子を示す図である。
第一の絶縁被覆104を第一の内部導体101の外周面に螺旋状に巻き付ける際に、第一の内部導体101の延在方向に隣り合う第一の絶縁被覆104の幅方向の一端と他端どうしを重ね合わせた状態で巻き付けていく。こうすることで、線状センサ10が曲げられた場合であっても、第一の内部導体101の延在方向に隣り合う第一の絶縁被覆104の間に隙間が生じにくい。なお、隙間が生じた箇所は、センシングできない箇所になってしまう。また、第一の絶縁被覆104の面積をなるべく大きくとることができ、センサ感度の向上につながる。重ね合わせ幅は、第一の絶縁被覆104の幅の1/4以上3/4以下が好ましい。1/4未満であった場合には、線状センサ10の曲げ伸ばしが繰り返されると、隙間が生じる恐れがある。一方、3/4を超えると、第一の絶縁被覆104を使用する量が増えすぎてしまいコストアップにつながってしまう。さらに、重ね合わせ幅を、第一の絶縁被覆104の幅の1/2にすると、2重巻きになり、隙間がより生じにくくなる。
第一の絶縁被覆104の幅は、2mm以上5mm以下であればよく、3mm以上4mm以下が好ましい。第一の絶縁被覆104の幅が狭すぎると第一の内部導体101の外周面に螺旋状に巻き付ける際に第一の内部導体101の延在方向に隣り合う第一の絶縁被覆104の間に隙間が生じやすくなってしまう。一方、第一の絶縁被覆104の幅が広すぎると第一の内部導体101の外周面に螺旋状に巻き付ける際に弛みが生じやすくなってしまう。
また、第一の絶縁被覆104の厚さは、20μm以上100μm以下であればよく、25μm以上80μm以下であることが好ましい。第一の絶縁被覆104の厚さが薄すぎるとセンサとしての感度が不十分になってしまい、反対に厚すぎると線状センサ10が硬くなりすぎてしまい柔軟性に欠けてしまう。
さらに、第一の絶縁被覆104の巻き付け角度θは、10°以上50°以下であることが好ましい。第一の絶縁被覆104を巻き付けていく場合に、すでに巻き付けが完了した側を上流側と称し、これから巻き付ける側を下流側と称した場合、ここにいう巻き付け角度θとは、第一の内部導体101と、第一の絶縁被覆104の下流側の縁1041との角度になる。50°を超えると、第一の絶縁被覆104を使用する量が増えすぎてしまいコストアップにつながってしまう。一方、10°未満であると、第一の絶縁被覆104の重なりがなくなる方向に、巻き付けた第一の絶縁被覆104がズレやすくなってしまう。
さらに、第一の絶縁被覆104は、圧電性が、長手方向(伸び方向)にしか対応していないものよりも、結晶の配向性により複数方向(伸び方向及び曲げ方向)に対応したものである方が好ましい。
このように、第一の絶縁被覆104を採用することで熱をかける必要がなくなり、キュリー温度を超えるまで加熱される恐れがなく、圧電性に影響が及ぼされない。ただし、圧電材料を第一の内部導体101の外周面に溶着することも可能である。例えば、フッ化ビニリデン(VDF)と三フッ化エチレン(TrFE)の共重合体P(VDF/TrFE)を熱で溶融させておき、そこに第一の内部導体101を通せば、第一の内部導体101の外周面に圧電材料が担持される。この場合には、後から高電場を印加し、分極処理を行う。また、圧電材料を第一の内部導体101の外周面に塗布することも可能である。圧電材料を塗布する場合には、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいし含浸塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。第一の絶縁被覆104を螺旋状に巻き付けた場合であっても、第一の絶縁被覆104は第一の内部導体101の外周形状に馴染み、内側に入り込んだ形状になるが、圧電材料を溶着させた場合、あるいは塗布した場合には、周方向に隣り合う導体線1000と導体線1000との間に圧電材料が入り込み、その間が圧電材料で埋められ、圧電材料の第一の内部導体101との密着性が向上する。密着性が向上すると、第一の内部導体101の表面に誘起される電荷が発生しやすくなって、信号強度が高まり、センサとしての性能向上が期待できる。
なお、本実施形態ではPVDFを用いているが、第一の絶縁被覆104が圧電性を有する材料で構成されていればよく、例えば、トリフルオロエチレン(TrEF)や、PVDFとTrEFの混晶材料や、ポリ乳酸、ポリ尿酸、ポリアミノ酸等の双極子モーメントをもつ高分子材料を用いてもよい。
以上説明した、第一の内部導体101は第1導体の一例に相当し、第二の内部導体102は第2導体の一例に相当し、第一の絶縁被覆104は圧電材料の一例に相当する。
第二の絶縁被覆105は、絶縁体の樹脂(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)による被覆であり、第一の絶縁被覆104とは異なり圧電性を有しないものである。
次に、上記説明した線状センサ10の使用例について図3を用いて説明する。図3は、図1に示す線状センサ10を用いたセンサユニット20を示す図である。このセンサユニット20では、第一の内部導体101と第二の内部導体102が差動増幅器150に接続されており、外部シールド導体103がグランドに接続されている。差動増幅器150は、第一の内部導体101と第二の内部導体102との電位差を増幅して出力するものである。なお、差動増幅器150は、グランドに接続した導電性の筐体の中に収納されていることが好ましい。
上記のセンサユニット20において線状センサ10に対して振動等の外力が加えられると、圧電性を有する第一の絶縁被覆104が変形し、その圧電効果によって第一の内部導体101と第二の内部導体102の電位差が変動する。この電位差が差動増幅器150によって増幅されて出力される。すなわちセンサユニット20は、線状センサ10にかかる振動等の外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能を有する。
また上記のセンサユニット20においては、振動等の外力に基づく信号に対する外部ノイズの影響を抑えるように構成されている。まず、第一の内部導体101と第二の内部導体102は、グランドに接続された外部シールド導体103によって囲まれており、外部ノイズによって電位が変動しにくくなるように構成されている。さらに、外部ノイズが外部シールド導体103を通過してしまっても、内側にある第一の内部導体101および第二の内部導体102の双方がこのノイズによる影響を受け、これらの内部導体同士で同様の電位の変動が生じる。上記センサユニット20では、第一の内部導体101と第二の内部導体102の電位差を増幅することで、外部ノイズの影響による電位の変動分を相殺するように構成されている。
上記説明したようにセンサユニット20では、線状センサ10に対して振動等の外力が加えられた際に第一の内部導体101および第二の内部導体102の電位差が生じる一方、外部ノイズの影響による第一の内部導体101および第二の内部導体102の電位差についてはこれを抑えることができる。この構成により、外部ノイズの影響を抑えつつ、振動等の外力に基づく信号を得ることができる。
なお、外部シールド導体103の接地の状況によってはグランド電位が変動する場合があるが、上記説明したセンサユニット20ではグランドとの電位差ではなく第一の内部導体101と第二の内部導体102との電位差を用いているため、グランド電位の変動による影響を抑えることができる。
なお、線状センサ10を使用する際には、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体101、第二の内部導体102、外部シールド導体103が露出していると、これらが互いに接触して振動等の外力に基づく信号が正確に得られなくなる場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体101、第二の内部導体102、外部シールド導体103の絶縁を確実にしておくことが好ましい。また、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体101および第二の内部導体102が外部シールド導体103に覆われていない部分があると、そこから外部ノイズの影響を受ける場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体101および第二の内部導体102を確実にシールドしておくことが好ましい。
図4は、線状センサ10の端部のうち回路に接続されていない側の端部について、絶縁部材および導体部材を施した一例を示す図である。この図では、端部に対して絶縁部材171、173、導体部材172、174、カバー部材175が適用されているが、各段階が理解しやすいよう、図4(A)から(F)までが段階的に示されている。
図4(A)では、第一の内部導体101、第二の内部導体102、外部シールド導体103が露出した端部が示されている。図4(B)には、図4(A)で示す第一の内部導体101ごと第一の絶縁被覆104までが絶縁部材171で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材171が第一の絶縁被覆104まで覆われており、第一の内部導体101を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
図4(C)には、図4(B)で示す状態から、絶縁部材171ごと第二の内部導体102までが導体部材172で覆われた様子が示されている。この例では、第二の内部導体102と導体部材172の電位は同じになる。この導体部材172により、第一の内部導体101が外部ノイズの影響を受けにくくすることができる。
図4(D)には、図4(C)で示す状態から、導体部材172ごと第二の絶縁被覆105までが絶縁部材173で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材173が第二の絶縁被覆105まで覆われており、第二の内部導体102を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
図4(E)には、図4(D)で示す状態から、絶縁部材173ごと外部シールド導体103までが導体部材174で覆われた様子が示されている。この例では、外部シールド導体103と導体部材174の電位は同じになる。この導体部材174により、第一の内部導体101および第二の内部導体102がシールドされ、外部ノイズの影響を受けにくくすることができる。
図4(F)には、図4(E)で示す状態から、導体部材174ごとシース130までがカバー部材175(シース130と同様の素材)で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材171、173および導体部材172、174が設けられた端部を保護することができる。なお、このカバー部材175を熱収縮(あるいは熱融着)する素材で構成しておき、端部を覆った状態で加熱することで密着させてもよい。
なお、上記の例で説明した絶縁部材171、173は、絶縁体の素材(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)であればよい。また、導体部材172、174は導電性の素材(例えば、アルミ、銅、錫、あるいは複数材料による合金、等)であればよい。また、導体部材172、174の形状についても、フィルム状やメッシュ状の他、筒状の棒端子を用いてもよく、その形状が限定されるものではない。
なお、上記の例で説明した絶縁部材171、173、導体部材172、174、カバー部材175は、カバー部材175だけを用いたり、導体部材172を除いたりする、といったように、全て適用しなくともよい。また、上記の例に限らず、例えば、シース130を除く端部が平面である場合には、このシース130を除く端部を絶縁部材で覆い、その上を外部シールド導体103と接するように導体部材で覆い、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。また、第一の内部導体101、第一の絶縁被覆104、第二の内部導体102、第二の絶縁被覆105までを、外部シールド導体103よりも短く切断し、これらを絶縁した上で外部シールド導体103で包み、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。すなわち、導体同士の絶縁およびシールドをより確実にする構成であればよく、その構成が限定されるものではない。
[第一実施形態の線状センサの変形例1]
図1で説明した線状センサ10は、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101が一つの構成であったが、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を複数設けた構成としてもよい。図5は、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を二つ設けた線状センサ11の構造を示す断面図である。この線状センサ11では、第一の内部導体101A、101Bによって複数(ここでは二つ)の芯が構成されており、これらの芯のそれぞれから振動等の外力に基づく信号が出力される。この断面図において第一の絶縁被覆104A、104Bと第二の内部導体102との間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。なお、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を複数設けるにあたっては、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらを撚り合わせた構成としてもよい。さらに、例えば第一の絶縁被覆104A、104Bの厚さを異ならせる、あるいは素材を異ならせるといったように、振動等の外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体101のそれぞれで異なるように構成してもよい。また、第二の内部導体102については図1の線状センサ10と同様の構成としてもよいし、導電性の素材による介在物を用いた構成としてもよい。
図6および図7は、図5に示す線状センサ11を用いたセンサユニットの一例を示す図である。図6に示すセンサユニット21では、複数の第一の内部導体101A、101Bの出力を合わせて増幅する構成を採用しており、振動等の外力に対する感度を高めることができる。一方図7に示すセンサユニット22では、複数の第一の内部導体101A、101Bのそれぞれに対し、第二の内部導体102との電位差を増幅して複数の信号を出力する構成となっている。振動等の外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体101A、101Bのそれぞれで異なる場合に図7のセンサユニット22の構成を採用した場合、振動等の外力に合わせて適切な信号を用いることができ、ダイナミックレンジを大きくとることができる。
[第一実施形態の線状センサの変形例2]
図5で説明した線状センサ11は、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101が複数設けられており、これらが一つの第二の内部導体102で一緒に覆われた構成となっているが、この第二の内部導体102が、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101のそれぞれに対して設けられたものであってもよい。図8は、第一の内部導体101を覆う第一の絶縁被覆104、およびさらにその外側を覆う第二の内部導体102の組み合わせを二つ設けた線状センサ12の構造を示す断面図である。この線状センサ12では、第一の内部導体101A、101Bによって複数の芯が構成されており、これらの芯のそれぞれから振動等の外力に基づく信号が出力される。なお、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を複数設けるにあたり、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらを撚り合わせた構成とすることや、例えば第一の絶縁被覆104A、104Bの厚さを異ならせる、あるいは素材を異ならせるといった点については図5の線状センサ11と同様である。さらに、この線状センサ12を用いたセンサユニットを構成する際には、図6のセンサユニット21のように複数の第一の内部導体101A、101Bの出力を合わせて、第二の内部導体102(102A、102Bのいずれか、または双方)との電位差を増幅する構成としてもよいし、図7のセンサユニット22のように複数の第一の内部導体101A、101Bのそれぞれに対し、第二の内部導体102(102A、102Bのいずれか、または双方)との電位差を増幅して複数の信号を出力する構成としてもよい。
図9は、図8に示す線状センサ12を用いたセンサユニットの一例を示す図である。線状センサ12では、第一の内部導体101Aと第二の内部導体102Aが一方の芯に属し、第一の内部導体101Bと第二の内部導体102Bがもう一方の芯に属する構成となっている。ここで、これらの芯に設けられた第一の絶縁被覆104A、104Bは、製造の際に厚さにばらつきが生じる場合があり、その結果部位によって振動等の外力に応じた電位の変化量が他の部位と比較して異なる場合がある。そこで図9に示すセンサユニット23では、同じ芯に属する内部導体同士の電位差ではなく、異なる芯に属する内部導体同士の電位差を増幅する構成を採用している。具体的には、第一の内部導体101Aと第二の内部導体102Bの電位差と、第一の内部導体101Bと第二の内部導体102Aの電位差をそれぞれ増幅し、さらにこれらの出力間の電位差を増幅する構成を採用している。この構成では、振動等の外力に応じた電位の変化量にばらつきが生じても、出力を平均化して安定させることができる。
[第二実施形態の線状センサ]
図10(A)は、第二実施形態の線状センサ13の構造を示す断面図である。
線状センサ13は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202を有し、これらを覆う第二の絶縁被覆205と、さらにこの外側に設けられた外部シールド導体203を有する。第一の内部導体201、第二の内部導体202、および外部シールド導体203は互いに絶縁されている。さらに外部シールド導体203の外側にはシース230が設けられている。この断面図においては第一の絶縁被覆204、第二の内部導体202、および第二の絶縁被覆205の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。上記説明した第一実施形態では、第二の内部導体102によって第一の内部導体101とは異なる芯が構成されていないのに対し、この第二実施形態では、第二の内部導体202によって第一の内部導体201とは異なる芯が構成されている点が異なる。また、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202は、図10(B)に示すように外部ノイズの影響を抑えるためにこれらを撚り合わせた構成となっている。
図10では、第一の内部導体201および第二の内部導体202が直交する斜めの線によるハッチングで示されており、外部シールド導体203が水平線によるハッチングで示されている。また、第一の絶縁被覆204が右下がりの線によるハッチングで示されており、第二の絶縁被覆205が左下がりの線によるハッチングで示されている。
第一の内部導体201および第二の内部導体202は、第一実施形態における第一の内部導体101と同様の構成のものであり、素材については第一実施形態における第一の内部導体101と同様のものを採用することができる。なお、第一の内部導体201および第二の内部導体202の構成や素材は同じである必要はなく、異なるものであってもよい。
外部シールド導体203は、アルミフィルムと銅のメッシュの組み合わせで構成されているが、この構成に限定されるものではない。従って例えば、金属製のフィルムや、金属製のメッシュ、さらには金属線をらせん状に巻き付けたもの、またはその組み合わせであってもよい。また例えば、外部シールド導体203が、金属製のメッシュの層と、金属箔を付けたPETフィルムの層との二層構造のように、複数の層を有するものであってもよい。
第一の絶縁被覆204は、第一実施形態における第一の絶縁被覆104と同様に圧電材料であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムを用いて構成されたものであり、図2に示す第一実施形態の第一の絶縁被覆104と同様に第一の内部導体201に螺旋状に巻き付けられたものである。この第一の絶縁被覆204は分極処理が施されたことにより圧電性を有するものである。第一の絶縁被覆204の素材や構成については第一実施形態における第一の絶縁被覆104と同様のものを採用することができる。
以上説明した、第一の内部導体201は第1導体の一例に相当し、第二の内部導体202は第2導体の一例に相当し、第一の絶縁被覆204は圧電材料の一例に相当する。
第二の絶縁被覆205は、絶縁体の樹脂(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)による被覆であり、第一の絶縁被覆204とは異なり圧電性を有しないものである。
次に、図10に示す線状センサ13の使用例について図11を用いて説明する。図11は、図10に示す線状センサ13を用いたセンサユニット24を示す図である。このセンサユニット24では、第一の内部導体201と第二の内部導体202が差動増幅器250に接続されており、外部シールド導体203がグランドに接続されている。差動増幅器250は、第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を増幅して出力するものである。なお、差動増幅器250は、グランドに接続した導電性の筐体の中に収納されていることが好ましい。
上記のセンサユニット24において線状センサ13に対して振動等の外力が加えられると、圧電性を有する第一の絶縁被覆204が変形し、その圧電効果によって第一の内部導体201と第二の内部導体202の間の電位が変動する。この電位差が差動増幅器250によって増幅されて出力される。すなわちセンサユニット24は、線状センサ13にかかる振動等の外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能を有する。
また上記のセンサユニット24においては、振動等の外力に基づく信号に対する外部ノイズの影響を抑えるように構成されている。まず、第一の内部導体201と第二の内部導体202は、グランドに接続された外部シールド導体203によって囲まれており、外部ノイズによって電位が変動しにくくなるように構成されている。さらに、外部ノイズが外部シールド導体203を通過してしまっても、内側にある第一の内部導体201および第二の内部導体202の双方がこのノイズによる影響を受け、これらの内部導体同士で同様の電位の変動が生じる。上記センサユニット24では、第一の内部導体201と第二の内部導体202の電位差を増幅することで、外部ノイズの影響による電位の変動分を相殺するように構成されている。
上記説明したようにセンサユニット24では、線状センサ13に対して振動等の外力が加えられた際に第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差が生じる一方、外部ノイズの影響による第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差についてはこれを抑えることができる。この構成により、外部ノイズの影響を抑えつつ、振動等の外力に基づく信号を得ることができる。
なお、外部シールド導体203の接地の状況によってはグランド電位が変動する場合があるが、上記説明したセンサユニット24ではグランドとの電位差ではなく第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を用いているため、グランド電位の変動による影響を抑えることができる。
なお、線状センサ13を使用する際には、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体201、第二の内部導体202、外部シールド導体203が露出していると、これらが互いに接触して振動等の外力に基づく信号が正確に得られなくなる場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体201、第二の内部導体202、外部シールド導体203の絶縁を確実にしておくことが好ましい。また、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体201および第二の内部導体202が外部シールド導体203に覆われていない部分があると、そこから外部ノイズの影響を受ける場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体201および第二の内部導体202を確実にシールドしておくことが好ましい。
図12は、線状センサ10の端部のうち回路に接続されていない側の端部について、絶縁部材および導体部材を施した一例を示す図である。この図では、端部に対して絶縁部材271、273、導体部材274、カバー部材275が適用されているが、各段階が理解しやすいよう、図12(A)から(E)までが段階的に示されている。
図12(A)では、第一の内部導体201、第二の内部導体202、外部シールド導体203が露出した端部が示されている。図12(B)には、図12(A)で示す第一の内部導体201ごと第一の絶縁被覆204までが絶縁部材271で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材271が第一の絶縁被覆204まで覆われており、第一の内部導体201を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
図12(C)には、図12(B)で示す状態から、絶縁部材271および第二の内部導体202ごと第二の絶縁被覆205までが絶縁部材273で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材273が第二の絶縁被覆205まで覆われており、第二の内部導体202を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
図12(D)には、図12(C)で示す状態から、絶縁部材273ごと外部シールド導体203までが導体部材274で覆われた様子が示されている。この例では、外部シールド導体203と導体部材274の電位は同じになる。この導体部材274により、第一の内部導体201および第二の内部導体202がシールドされ、外部ノイズの影響を受けにくくすることができる。
図12(E)には、図12(D)で示す状態から、導体部材274ごとシース230までがカバー部材275(シース230と同様の素材)で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材271、273および導体部材274が設けられた端部を保護することができる。なお、このカバー部材275を熱収縮(あるいは熱融着)する素材で構成しておき、端部を覆った状態で加熱することで密着させてもよい。
なお、上記の例で説明した絶縁部材271、273は、絶縁体の素材(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)であればよい。また、導体部材274は導電性の素材(例えば、アルミ、銅、錫、あるいは複数材料による合金、等)であればよい。また、導体部材274の形状についても、フィルム状やメッシュ状の他、筒状の棒端子を用いてもよく、その形状が限定されるものではない。
なお、上記の例で説明した絶縁部材271、273、導体部材274、カバー部材275は、カバー部材275だけを用いたり、導体部材272だけを他の導体から絶縁する絶縁部材を用いたりする、といったように、同じ構成である必要はない。また、上記の例に限らず、例えば、シース230を除く端部が平面状である場合には、このシース230を除く端部を絶縁部材で覆い、その上を外部シールド導体203と接するように導体部材で覆い、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。また、第一の内部導体201、第一の絶縁被覆204、第二の内部導体202、第二の絶縁被覆205までを、外部シールド導体203よりも短く切断し、これらを絶縁した上で外部シールド導体203で包み、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。すなわち、導体同士の絶縁およびシールドをより確実にする構成であればよく、その構成が限定されるものではない。
[第二実施形態の線状センサの変形例1]
図10で説明した線状センサ13は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202を、第二の絶縁被覆205で覆う構成を採用しているが、この構成に限らず、例えば、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と、第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202のそれぞれが設け、さらにこれらの外側を外部シールド導体203で覆う構成としてもよい。図13は、この構成を採用した線状センサ14の構造を示す断面図である。この線状センサ14は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202を有し、さらにこれらの外側に設けられた外部シールド導体203を有する。第一の内部導体201、第二の内部導体202、および外部シールド導体203は互いに絶縁されている。さらに外部シールド導体203の外側にはシース230が設けられている。なお、図10の線状センサ13とは、第二の絶縁被覆205が設けられた位置が異なっている。この断面図においては第一の絶縁被覆204、第二の絶縁被覆205、および外部シールド導体203の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。なお、図10の線状センサ13では、外部ノイズの影響を抑えるために第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と第二の内部導体202を撚り合わせているが、この線状センサ14では、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202を撚り合わせた構成となっている。
また、第二の絶縁被覆205は、第一の絶縁被覆204と同じ素材、構成の被覆であって、圧電性を有しないものを採用している。すなわち、第二の絶縁被覆205は、第一の絶縁被覆204とは圧電性の有無が異なるものである。なお、第一の絶縁被覆204と同じ素材に限らず、例えば絶縁体の樹脂(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)のような第一の絶縁被覆204と異なる素材を用いてもよい。
図14は、図13に示す線状センサ14を用いたセンサユニット25を示す図である。このセンサユニット25は、第二の絶縁被覆205の位置以外は図11に示すセンサユニット24と同じ構成である。上記のセンサユニット25において線状センサ14に対して振動等の外力が加えられると、圧電性を有する第一の絶縁被覆204が変形し、その圧電効果によって第一の内部導体201の電位が変動する。一方、第二の絶縁被覆205は圧電性を有しないため、第二の内部導体202においては振動等の外力に応じた電位の変動が生じない。結果として、線状センサ14に対して振動等の外力が加えられると第一の内部導体201と第二の内部導体202の電位差が変動し、この電位差が差動増幅器250によって増幅されて出力される。すなわちセンサユニット25は、線状センサ14にかかる振動等の外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能を有する。
また上記のセンサユニット25においては、振動等の外力に基づく信号に対する外部ノイズの影響を抑えるように構成されている。まず、第一の内部導体201と第二の内部導体202は、グランドに接続された外部シールド導体203によって囲まれており、外部ノイズによって電位が変動しにくくなるように構成されている。さらに、外部ノイズが外部シールド導体203を通過してしまっても、内側にある第一の内部導体201および第二の内部導体202の双方がこのノイズによる影響を受け、これらの内部導体同士で同様の電位の変動が生じる。上記センサユニット25では、第一の内部導体201と第二の内部導体202の電位差を増幅することで、外部ノイズの影響による電位の変動分を相殺するように構成されている。なお、外部ノイズの影響による電位の変動分をより効果的に相殺するにあたっては、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202の長さや太さ、静電容量(絶縁被覆の誘電率および厚さ)、インピーダンス、シールドのされ具合等、電気的・物理的な条件が揃っていることが好ましい。
上記説明したようにセンサユニット25では、線状センサ14に対して振動等の外力が加えられた際に第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差が生じる一方、外部ノイズの影響による第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差についてはこれを抑えることができる。この構成により、外部ノイズの影響を抑えつつ、振動等の外力に基づく信号を得ることができる。
なお、外部シールド導体203の接地の状況によってはグランド電位が変動する場合があるが、上記説明したセンサユニット25ではグランドとの電位差ではなく第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を用いているため、グランド電位の変動による影響を抑えることができる。
[第二実施形態の線状センサの変形例2]
図13で説明した線状センサ14は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202の双方が、外部シールド導体203によって仕切られた一つの空間内に収められた構成となっている。しかし、線状センサの構成はこれに限られるものではなく、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202が、それぞれ外部シールド導体203によって仕切られた別々の空間内に収められた構成であってもよい。図15に示す線状センサ15はこのような構成の一例であり、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202が、それぞれ別の外部シールド導体203A、203Bに覆われた構成となっている。なお、外部シールド導体203Aおよび第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と、外部シールド導体203Bおよび第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202については、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらを撚り合わせた構成としてもよい。
図16は、図15に示す線状センサ15を用いたセンサユニットの一例を示す図である。図16のセンサユニット26では、二つの外部シールド導体203A、203Bがそれぞれグランドに接続されていること以外は図14に示すセンサユニット25と同じ構成であり、図14に示すセンサユニット25と同様の効果を奏する。なお、図15に示す線状センサ15では、二つの外部シールド導体203A、203Bが接しているためいずれかをグランドに接続した構成としてもよい。また、二つの外部シールド導体203A、203Bが絶縁された構成としてもよく、この場合には図16に示すようにいずれの外部シールド導体203もグランドに接続した構成とすればよい。
[第二実施形態の線状センサの変形例3]
図10で説明した線状センサ13や図13で説明した線状センサ14は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201が一つの構成であったが、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201を複数設けた構成としてもよい。図17はこのような構成の一例であって、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201を二つ設けた線状センサ16の構造を示す断面図である。この線状センサ16では、第一の内部導体201A、201Bのそれぞれから振動等の外力に基づく信号が出力される。この断面図においては第一の絶縁被覆204A、204B、第二の絶縁被覆205、および外部シールド導体203の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。なお、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201を複数設けるにあたっては、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらを撚り合わせた構成としてもよく、第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202と撚り合わせた構成としてもよい。さらに、例えば第一の絶縁被覆204A、204Bの厚さを異ならせる、あるいは素材を異ならせるといったように、振動等の外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体201のそれぞれで異なるように構成してもよい。また、図17に示す線状センサ16では、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202がすべて外部シールド導体203によって仕切られた一つの空間に収められた構成となっているが、図15の例で説明したように、それぞれ外部シールド導体203によって仕切られた別の空間に分けて収められた構成であってもよい。
図18および図19は、図17に示す線状センサ16を用いたセンサユニットの一例を示す図である。図18に示すセンサユニット27では、複数の第一の内部導体201A、201Bの出力を合わせて増幅する構成を採用しており、振動等の外力に対する感度を高めることができる。一方図19に示すセンサユニット28では、複数の第一の内部導体201A、201Bのそれぞれに対し、第二の内部導体102との電位差を増幅して複数の信号を出力する構成となっている。振動等の外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体201A、201Bのそれぞれで異なる場合に図19のセンサユニット28の構成を採用した場合、振動等の外力に合わせて適切な信号を用いることができ、ダイナミックレンジを大きくとることができる。
[第二実施形態の線状センサの変形例4]
図13の線状センサ14の説明において、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202の長さや太さ、静電容量、インピーダンス、シールドのされ具合等、電気的・物理的な条件が揃っていることが好ましい点について述べたが、このような電気的・物理的な条件を揃えた組を採用する場合、その数は一つに限られるものではなく、複数設けてもよい。この場合、振動等の外力に対して生じる第一の内部導体201の電位の変動(センサ感度)が、各組において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図20に示す線状センサ17は、第一の内部導体201と第二の内部導体202の組を二つ設けた例を示す断面図である。この図20では左側と上側にそれぞれ第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201が配置され、右側と下側にそれぞれ第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202が配置されている。二つある第一の内部導体201は、これらを覆う第一の絶縁被覆204の厚さがそれぞれ異なっている。具体的には、図20の左側に位置している第一の絶縁被覆204Aよりも、上側に位置している第一の絶縁被覆204Bの方がより厚くなっている。これにより、上側に位置している第一の内部導体201Bの方が、左側に位置している第一の内部導体201Aよりも、振動等の外力に対して生じる電位の変動(センサ感度)が高くなっている。この断面図においては第一の絶縁被覆204A、204B、第二の絶縁被覆205A、205B、および外部シールド導体203の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。
なお、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202を複数設けるにあたっては、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらを撚り合わせた構成としてもよい。このとき例えば、後述する第一の組および第二の組のそれぞれを撚り合わせた後でさらにこれらを撚り合わせる、といったように、段階的に撚り合わせてもよく、撚り合わせ方が限定されるものではない。また、図20に示す線状センサ17では、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202がすべて外部シールド導体203によって仕切られた一つの空間に収められた構成となっているが、図15の例で説明したように、それぞれ外部シールド導体203によって仕切られた別の空間に分けて収められた構成であってもよい。
二つある第二の内部導体202のうち、右側にある第二の内部導体202Aは、左側にある第一の内部導体201Aにおける外部ノイズの影響を相殺するために設けられたものである。第一の内部導体201Aと第二の内部導体202Aは同じ構成のものである。また、第一の絶縁被覆204Aと第二の絶縁被覆205Aは、第一の絶縁被覆204Aが圧電性を有している(分極処理が施されている)のに対し、第二の絶縁被覆205Aは圧電性を有しない(分極処理が施されていない)点が異なるが、その素材や厚さは同じ構成のものである。すなわち、第一の絶縁被覆204Aで覆われた第一の内部導体201Aと、第二の絶縁被覆205Aで覆われた第二の内部導体202Aは、圧電性の有無を除き、電気的・物理的な条件を揃えたものである。なお以下の説明では、これらの第一の絶縁被覆204Aで覆われた第一の内部導体201Aと、第二の絶縁被覆205Aで覆われた第二の内部導体202Aの組を第一の組と称する。
二つある第二の内部導体202のうち、下側にある第二の内部導体202Bは、上側にある第一の内部導体201Bにおける外部ノイズの影響を相殺するために設けられたものである。第一の内部導体201Bと第二の内部導体202Bは同じ構成のものである。また、第一の絶縁被覆204Bと第二の絶縁被覆205Bは、第一の絶縁被覆204Bが圧電性を有している(分極処理が施されている)のに対し、第二の絶縁被覆205Bは圧電性を有しない(分極処理が施されていない)点が異なるが、その素材や厚さは同じ構成のものである。すなわち、第一の絶縁被覆204Bで覆われた第一の内部導体201Bと、第二の絶縁被覆205Bで覆われた第二の内部導体202Bは、圧電性の有無を除き、電気的・物理的な条件を揃えたものである。なお以下の説明では、これらの第一の絶縁被覆204Bで覆われた第一の内部導体201Bと、第二の絶縁被覆205Bで覆われた第二の内部導体202Bの組を第二の組と称する。
図21は、図20に示す線状センサ17を用いたセンサユニット29を示す図である。このセンサユニット29では、第一の組の第一の内部導体201Aおよび第二の内部導体202Aが差動増幅器250に接続され、第二の組の第一の内部導体201Bおよび第二の内部導体202Bが差動増幅器250に接続され、外部シールド導体203がグランドに接続されている。差動増幅器250は、第一の組と第二の組のそれぞれにおいて、第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を増幅して出力する。このセンサユニット29では、振動等の外力に合わせて適切な信号を用いることができ、ダイナミックレンジを大きくとることができる。
[その他]
上記説明した線状センサの導体をメッシュ状に構成する場合、その孔の大きさによっては、内側にノイズが侵入し易くなる問題がある。この場合、その孔の大きさが、問題とするノイズの波長の半分以下となるように構成することで、ノイズが侵入しにくくすることができる。また、上記のセンサユニットの実施形態では、線状センサの端部の一方側に差動増幅器を接続する構成について説明したが、線状センサの両端側ともに同じ差動増幅器に接続する構成としてもよい。
[第三実施形態の線状センサ]
図22は、第三実施形態の線状センサ40の構造を示す断面図である。
図22に示すように、線状センサ40は、圧電性繊維410と、その外周を覆うフレキシブルチューブ420を有する。また、このフレキシブルチューブ420と圧電性繊維410の間には樹脂430が充填され、フレキシブルチューブ420と圧電性繊維410が一体化されている。
圧電性繊維410には、7本の導体線4000で構成された内部導体401が中心に配置されており、この圧電性繊維410は、その内部導体401と、内部導体401の外周に設けられた圧電体402と、さらにその外周に設けられた外部導体403を有する。
7本の導体線4000は、いずれも直径が10μmのものであって、このうち4本はステンレス製の導体線4000Sであり、残りの3本は銅製の導体線4000Cである。図22では、ステンレス製の導体線4000Sが左下がりのハッチングで、また銅製の導体線4000Cが右下がりのハッチングでそれぞれ示されている。図22に示す内部導体401では、中心に配置される導体線には、ステンレス製の導体線4000S(ステンレスワイヤ)が用いられており、外周に配置される導体線には、ステンレス製の導体線4000Sと銅製の導体線4000Cが交互に用いられている。銅製の導体線4000Cは、ステンレス製の導体線4000Sに比べて、電気抵抗が低く、かつ柔らかい。反対に、ステンレス製の導体線4000Sは、銅製の導体線4000Cに比べて、電気抵抗は高くなるが、機械的強度(例えば、引張強度等)は高くなる。
図23は、圧電性繊維の内部導体の形状を示す図である。
図22では、7本の導体線4000が、正六角形の各頂点およびその正六角形の中心に配置された状態となっているが、これらの7本の導体線4000は、図23に示すように一本に撚り合わされた状態のものである。すなわち、内部導体401は、7本の導体線4000をその断面において最密構造に配置した上で撚り合わせたものである。なお、この場合の内部導体401の太さは最大30μmとなる。このように複数本の導体線4000を甘撚、あるいは中撚程度に撚っておくことで、撚りの方向とは逆方向の緩みを許容し、この緩みによって圧電性繊維410、引いては線状センサ40に柔軟性を与えることができる。
なお、導体線4000の直径は10μmに限られず、10μm以上40μm以下であってもよく、20μm以上30μm以下となることが好ましい。導体線4000は、細ければ細いほど柔軟性は高められるが強度が低下し、太ければ太いほど柔軟性は低下するが強度が高められる。また、導体線4000の太さが20μm以上であれば、低コストで製造することができ、且つ製造も容易である。また、導体線4000の太さを同じにする構成に限られるものではなく、異なる太さの導体線4000を撚り合わせて内部導体401を構成してもよい。
なお、図22に示す内部導体401は、7本の導体線4000を撚り合わせたものであったが、この数については7本でなくてもよい。また例えば、複数本を撚り合わせた束を複数用意し、これらをさらに撚り合わせる、といったように複数段階に分けて撚り合わせものであってもよい。複数の導体線4000を撚り合わせることにより、圧電性繊維410、引いては線状センサ40の柔軟性を高めることができる。なお、複数段階に分けて撚り合わせる場合のように、撚り合わせの工程が複数回ある場合には、撚り合わせる方向を異ならせてもよい。一方、複数の導体線4000を撚り合わせずに、直線状に束にしたものを用いてもよい。また、例えば、撚り合わせない複数の導体線4000の束と、撚り合わせた複数の導体線4000を撚り合わせる、といったように、これらの構成を組み合わせてもよい。これらの場合であっても、圧電材料を塗布することで、複数の導体線4000が互いに接着されて束ねられ、一本の圧電性繊維を製造することができる。
以上説明した圧電性繊維410では、内部導体401を構成する導体線4000として、機械的強度や電気抵抗が異なる複数種類の導体線が用いられているが、柔軟性をさらに高める場合や、電気抵抗をさらに低くする場合には、中心の導体線4000を、銅製の導体線4000Cに代えてもよく、あるいは、7本の導体線4000の全てを銅製の導体線4000Cにしてもよい。反対に、機械的強度をさらに高める場合には、7本の導体線4000の全てをステンレス製の導体線4000Sにしてもよい。また、ステンレス製の導体線4000Sに代えて、タングステン製の導体線や、タングステン及びその合金等の高張力鋼材あるいは超高張力鋼からなる導体線を用いてもよいし、銅製の導体線4000Cに代えて、チタン製の導体線や、チタン合金あるいはマグネシウムやマグネシウム合金等からなる導体線を用いてもよい。さらには、カーボンナノチューブを含む導体線であってもよいし、ピッチ系炭素繊維を含む導体線であってもよい。あるいは、弾性変形しやすいバネ鋼材からなる導体線を用いてもよい。
圧電体402は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電材料を内部導体401に塗布することによって形成されたものである。ポリフッ化ビニリデンは、圧電効果が発生する軽量の高分子材料であり、これに圧力を加えると電圧が発生し、電圧を加えると歪が発生する特性を備えている。圧電体402には分極処理が施されており、圧電体402に変形が生じたときに内部導体401と外部導体403の間に電圧が誘起される。振動等の外力が圧電体402に伝わり圧電体402が変形したときに、内部導体401と外部導体403の間に電圧が誘起される。
圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデンの他に、トリフルオロエチレン(TrEF)や、PVDFとTrEFの混晶材料や、ポリ乳酸、ポリ尿酸、ポリアミノ酸等の双極子モーメントをもつ高分子材料があげられる。また、圧電材料を塗布する方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいし含浸塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。なお、塗布する構成に限らず、例えば、帯状のPVDFフィルムを内部導体401に螺旋状に巻き付けた構成であってもよい。
圧電体402の厚みは、導体線4000の直径以上であることが好ましく、図22に示す圧電体402の厚さは、最も薄い箇所で10μmであるが、10μm以上50μm以下であればよい。なお、圧電体402の厚さは、厚ければ厚いほどセンサ感度が良好になるが、圧電体402の厚さの限界値は、塗布する圧電材料の粘度や塗布方法によって決まってくる。また、圧電体402の厚さが厚すぎると圧電性繊維410、引いては線状センサ40が硬くなりすぎてしまい柔軟性に欠けてしまうといった欠点もある。
図22に示す内部導体401では、複数の導体線4000を撚り合わせているため、導体線4000同士の境目に窪みがある。この窪みの部分では、より多くの圧電材料を担持することができ、圧電材料の体積が大きく(厚く)なるため、センサ感度が他の部分よりも良好になる。内部導体401には、こうした窪みによって圧電材料が他の部分よりも厚い部分が6か所、周方向に均等間隔で存在するため、どの方向に曲げられても高感度な圧電性繊維として機能する要因になる。
なお、図22に示す隣り合う導体線4000は互いにほぼ接しているが、わずかな隙間から毛細管現象によって圧電材料が浸透し、隣り合う導体線4000同士の隙間(内部導体401の内部)が圧電材料によって埋められた状態になっている。しかし、圧電材料の粘度や塗布方法によっては、隣り合う導体線4000同士の隙間に圧電材料が浸透しない場合があるが、少なくとも内部導体401の外周に面した部分に圧電材料が担持された状態となっていればよい。
図22に示す外部導体403は、圧電体402の外周に、カーボンナノチューブ等のカーボンを含む高分子導電性材料が塗布されることで形成された層である。外部導体403を形成する導電性材料としては、銀の微粒子を含む高分子導電性材料や銀ペースト等であってもよい。また、この導電性材料を塗布する方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいし含浸塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。外部導体403の厚さは、導体線4000の直径以下であることが好ましく、また、圧電体402の厚さ以下であることも好ましい。図22に示す外部導体403の厚さは、5μmであるが、5μm以上50μm以下であればよい。また、外部導体403に導電性材料を用いずに導線を用いてもよい。
なお、上述したように、内部導体401において隣り合う導体線4000の隙間は圧電材料によって埋められた状態となっており、高分子導電性材料が入り込む余地はない。
以上説明した、内部導体401は第1導体の一例に相当し、外部導体403は第2導体の一例に相当する。
図22に示す圧電性繊維410には、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高めるためのシース層を設けていないが、このシース層を設けたものであってもよい。このシース層を設けるにあたっては単層であってもよいが、例えば、厚さが6μmのシース層を2回塗布し、内層と外層とからなる2層構造としてもよい。この場合、内層は、外装に比べて柔らかい材料(例えば、ポリアミド合成樹脂やポリ塩化ビニル樹脂)を塗布することで形成し、外層は、内層に比べて耐摩耗性が高い材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化・6フッ化プロピレン フッ素樹脂(FEP)、4フッ化エチレンエチレン共重合(EPFE)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合 フッ素樹脂(PFA))を塗布することで形成してもよい。ここにいう塗布とは、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいし吹き付け塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。また、ピンホールが発生することを考慮して複数回塗布することが好ましい。また、外層は、内層よりも厚くてもよい。さらに、内層は、可燃性材料で形成されていてもよいが、外層は、難燃性材料、不燃性材料、耐炎性材料で形成されていることが好ましい。また、シース層全体の厚みは5μm以上50μm以下とすることが好ましい。さらに、ポリエステルテープやチューブタイプのシース(単層、複層いずれも)を用いてもよく、その厚みは、20μm以上50μm以下であればよい。
図22に示す圧電性繊維410の太さ(内部導体401、圧電体402、および外部導体403を合わせた太さ)は最大60μmであり、厚さ10μmのシース層を二重構造で設けても0.1mmの太さの圧電性繊維となる。ここで、製造が容易で低コストに得ることができる圧電性繊維の例としては、直径20μmの導体線4000を用いて太さが60μmの内部導体401に、厚さが最大20μmの圧電体402と、厚さが10μmの外部導体403を形成したものがある。この構成では、外部導体403までの太さが0.12mmである。これに、シース層を二重構造で設けても0.15mm以下の圧電性繊維410を実現することができる。
フレキシブルチューブ420は、被覆材の一例に相当し、樹脂チューブ等の非金属製のものであってもよいし、金属製のものであってもよい。樹脂チューブとしては、例えば、シリコンゴム製のチューブやポリウレタン樹脂製のチューブやフッ素樹脂製のチューブが用いられる。金属製のチューブとしては、ステンレス製のチューブに絞り加工を施したものを用いることができる。
図24は、金属製のフレキシブルチューブの一例を示す斜視図である。
表面が平らなステンレス製のチューブに絞り加工を施すことで、表面に凹部4201と凸部4202が交互に形成され、表面は凹凸形状になる。図24に示すフレキシブルチューブ420は、この凹凸形状によって柔軟性が高められている。また、図24に示すフレキシブルチューブ420は、この凹凸形状によって、内部導体401や図22に示す圧電性繊維410よりも弾性変形しやすいものになる。すなわち、フレキシブルチューブ420は、内部導体401や図22に示す圧電性繊維410では塑性変形してしまう場合でも弾性変形によって元の形状に戻るものである。なお、柔軟性をより高めるには、スパイラル状の凹凸形状にしてもよい。
さらに、図24に示すフレキシブルチューブ420では、表面に形成された凹凸が埋まらない程度に、その表面に、ポリ塩化ビニルやポリテトラフルオロエチレン等の熱可塑性樹脂Pの樹脂コーティングが施されている。熱可塑性樹脂Pは熱を加えることで収縮し凹凸形状に密着する。また、ポリテトラフルオロエチレンであれば、耐火性に優れている。また、汚れがつきにくく、カビが発生しにくい。樹脂コーティングを施すことで、樹脂が持っている粘弾性により、ノイズ等の振動が吸収される。ただし、衛生上の観点から塩素消毒を行う場合には、樹脂コーティングを施さず、表面をステレンス製のままにしておくことが好ましい。
なお、絞り加工を施したフレキシブルチューブ420に代えて、ピアノ線等の線状のバネ材を螺旋状に隙間なく券回したコイルバネタイプのチューブを用いてもよい。また、フレキシブルチューブ420は表面に凹凸が形成されていない金属製のものであってもよい。
また、フレキシブルチューブ420の内径と圧電性繊維410の外径の差は、0.1mm以上あることが好ましい。両者の差が0.1mm未満であると、フレキシブルチューブ420内に圧電性繊維410を挿通させる際に、圧電性繊維410がフレキシブルチューブ420の内周面に引っかかってしまう恐れがある。特に、フレキシブルチューブ420の内周面が樹脂製であると摩擦係数が高くなりやすく、圧電性繊維410が引っかかった場合にそれ以上挿通させにくいが、その内周面が金属製であると摩擦係数が低く、圧電性繊維410を挿通させやすくなる。
以上説明したフレキシブルチューブ420は、内部導体401や図22に示す圧電性繊維410よりも剛性が高いものになる。
フレキシブルチューブ420と圧電性繊維410の間に充填される樹脂430には、シリコン樹脂やポリウレタン樹脂が用いられる。これらの樹脂は、圧電性繊維410が挿通されたフレキシブルチューブ420内に、真空引きすることで充填され、フレキシブルチューブ420と圧電性繊維410が一体化される。樹脂を充填しておくことで、フレキシブルチューブ420内で圧電性繊維410が軸方向にズレてしまうことを防止することができる。なお、フレキシブルチューブ420の両端にのみ樹脂を充填することも考えられるが、フレキシブルチューブ420内で圧電性繊維410に弛みが生じる可能性があるため、フレキシブルチューブ420の全長にわたって樹脂を充填しておくことが好ましい。また、ここで充填される樹脂として、2液混合による時効硬化樹脂や、50〜60℃程度で硬化が始まる熱効果性樹脂などの利用が可能である。
図25は、図22に示す線状センサ40を用いたセンサユニット50を示す図である。
フレキシブルチューブ420の後端では、熱可塑性樹脂Pが除去され、ステンレスの表面が露出している。差動増幅器551が内部に配置された導電性の筐体5に、ステンレスの表面が露出したフレキシブルチューブ420の後端が差し込まれ、フレキシブルチューブ420と筐体5は電気的に接続される。導電性の筐体5は、グランドに接続している。導電性の筐体5は、電磁波等の外乱要素を遮断するシールド手段である。
圧電性繊維410の内部導体401は、差動増幅器551の非反転入力端子(+)5511に接続され、外部導体403は反転入力端子(−)5512に接続されている。また、フレキシブルチューブ420は、導電性の筐体5を介してグランドに接続している。この構成によって、圧電体402が変形したときに内部導体401と外部導体403の間に誘起される電圧の大きさ(電位差)が、差動増幅器551によって正確に増幅される。
[第三実施形態の線状センサの変形例]
図26には、図22に示す線状センサの変形例である線状センサ40’を作製する様子が示されている。この変形例の線状センサ40’は、フレキシブルチューブ421の内側で、圧電性繊維418とサポート線SYが撚り合わされたものである。図26では、圧電性繊維418とサポート線SYを撚り合わせたものを、フレキシブルチューブ421の内側に挿入していく様子が示されている。図26に示す圧電性繊維418は、最外周にシース層が設けられたものであって、そのシース層を含めた外径(直径)が0.63mmである。サポート線SYは、7本のステンレスワイヤをその断面において最密構造に配置した上で撚り合わせたものであって、圧電性繊維418の強度以上の強度を有するものである。サポート線SYの強度が、圧電性繊維418の強度未満であると、両者を撚り合わせようとしたときに、強度不足からサポート線SYが伸びてしまい、圧電性繊維418に弛みが生じてしまう場合があり、うまく撚り合わせることができない。さらに、サポート線SYの表面はナイロンなどの樹脂によって被覆されている。サポート線SYにおけるこの被覆により、身体に接触して配置する際のフレキシブルチューブ421内での屈曲時に、圧電性繊維418の表面を堅い金属のサポート線SYで擦ることがなくなり、圧電性繊維418とサポート線SY相互の滑りが良くなって、圧電性繊維418の長寿命化に好適である。図26に示すサポート線SYの直径は、この樹脂による被覆分も含めて0.46mmである。なお、サポート線SYは、ステンレスワイヤを撚り合わせたものに限られることはなく、樹脂による被覆も必須ではない。
図26に示すフレキシブルチューブ421は、表面にスパイラル状の凹凸が形成されたものであり、柔軟性に富んだものである。また、表面には樹脂コーティングが施されている。このフレキシブルチューブ221の内径は、1.2mmである。圧電性繊維418とサポート線SYを撚り合わせたものの外径は、両者がスパイラル状に絡み合っていることから、最大で1.09mm(0.63mm+0.46mm)であり、フレキシブルチューブ421の内径に対して、0.1mm以上の差がある。この差は隙間となり、圧電性繊維418とサポート線SYを撚り合わせたものを、フレキシブルチューブ421の内側に、容易に挿入させることができる。
なお、圧電性繊維418とサポート線SYを撚り合わせたものを解くと、サポート線SYは直線状に戻るのに対し、圧電性繊維418は波形に変形したままである。すなわち、圧電性繊維418には撚り跡が残っており、圧電性繊維418がしっかりと撚られていたことがわかる。
この変形例における線状センサ40’では、フレキシブルチューブ421の内周面と、圧電性繊維418とサポート線SYが撚り合わされたものとの間に、樹脂は充填されておらず、フレキシブルチューブ421と、圧電性繊維418とサポート線SYが撚り合わされたものとは一体化されていない。
[第四実施形態の線状センサ]
図27は、第四実施形態の線状センサA1の構造を示す断面図である。
図27に示す線状センサA1は、内部導体A11と、圧電体A12と、外部導体A13と、シースA14から構成されている。
内部導体A11は、直径が30μmのステンレスワイヤAsyを7本撚り合わせた撚り線A111を、正六角形の各頂点およびその正六角形の中心に配置した状態で、さらにこれらの撚り線A111を撚り合わせたものである。すなわち、7本の撚り線A111を1次撚り線として最密構造に配置し、これら7本の1次撚り線をさらに撚り合わせた2次撚り線になる。複数本の線状体を甘撚、あるいは中撚程度に撚っておくことで、撚りの方向とは逆方向の緩みを許容し、この緩みが柔軟性を与えることができる。特に、1次撚り線と2次撚り線といったように2段階に分けて撚っておくことで、柔軟性がさらに向上する。なお、2次撚り線を複数本用意してさらに撚り合わせて3次撚り線・・・といったように3段階以上の複数段階に分けて撚ってもよい。また、2次撚り線の撚り方向は、1次撚り線の撚り方向と同じ方向である。ただし、内部導体A11の柔軟性をさらに高めたい場合には、2次撚り線の撚り方向と1次撚り線の撚り方向とを逆方向にしてもよい。図27に示す内部導体A11全体の直径は、0.27mmであり、その内部導体A11の切断荷重は0.058kNになる。
1次撚り線を構成するステンレスワイヤAsyの本数は、7本に限らない。また、ステンレスワイヤAsy1本の直径は、10μm以上40μm以下であればよく、20μm以上30μm以下であることが好ましい。ステンレスワイヤは、細ければ細いほど柔軟性は高められるが強度が低下し、太ければ太いほど柔軟性は低下するが強度が高められる。直径が20μmのステンレスワイヤAsyを用いた場合には、内部導体A11の切断荷重は0.025kNになり、直径が40μmのステンレスワイヤAsyを用いた場合には、内部導体A11の切断荷重は0.107kNになる。また、内部導体全体の直径としては、0.15mm以上0.8mm以下であればよく、0.18mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
なお、1次撚り線の直径を異ならせてもよい。例えば、内部導体A11を構成する中央に位置する撚り線A111の直径を、その周囲に位置する撚り線A111よりも太くしてもよいし、あるいは反対に細くしてもよい。また、撚り線A111を構成するステンレスワイヤAsyの直径も、撚り線A111ごとに異ならせてもよい。例えば、太い撚り線A111を得るために、相対的に太いステンレスワイヤAsyを用いてもよいし、細い撚り線A111を得るために、相対的に細いステンレスワイヤAsyを用いてもよい。さらには、撚り線A111を構成するステンレスワイヤAsyの本数を、撚り線A111ごとに異ならせてもよい。例えば、太い撚り線A111を得るために、相対的に多数本のステンレスワイヤAsyを用いてもよいし、細い撚り線A111を得るために、相対的の少数本のステンレスワイヤAsyを用いてもよい。また、撚り線A111は、ステンレスワイヤAsyのみからなるものの他に、他の導電性材料の線とステンレスワイヤAsyを撚り合わせたものであってもよい。ここにいう導電性材料としては、ステンレスと、電気抵抗値が異なる材料であったり機械的強度が異なる材料であったりする。例えば、銅、チタン、マグネシウム等の一種類であってもよいし、これらの材料の組み合わせであってもよい。
さらに、内部導体A11は、撚り線A111のみから構成されたものであってもよいし、撚り線A111と他の金属線から構成されたものであってもよい。例えば、他の金属線として、ステンレスよりも電気抵抗が低い金属線を用いてもよいし、ステンレスよりも柔らかい金属線を用いてもよい。例えば、ステンレスよりも電気抵抗が低く、かつ柔らかい銅の金属線を用いてもよい。より具体的には、他の金属線として1本の銅線を用い、撚り線A111が正六角形の各頂点に配置されその正六角形の中心に1本の銅線が配置された状態で全体が撚られたものであってもよいし、撚り線A111が正六角形の頂点のうち一つおきに配置され残りの頂点には銅線が配置され、その正六角形の中心には銅線又は撚り線A111が配置された状態で全体が撚られたものであってもよい。あるいは、1本の銅線に代えて、複数の細い銅線を撚り合わせたものを用いてもよいし、細い銅線とステンレスワイヤAsyを撚り合わせたものを用いてもよい。さらには、銅に代えてチタンやマグネシウムを用いてもよいし、銅とチタン、銅とマグネシウム、チタンとマグネシウム、銅とチタンとマグネシウムといった異種金属の組み合わせであってもよく、以下の説明で、銅を例示した場合にも同じである。
また、内部導体A11を構成する中央に位置する線状体(図27では撚り線A111)と、その周囲に位置する線状体(図27では6本の撚り線A111)との隙間AS1に、線状体を配置してもよい。この隙間AS1に配置される線状体としては、1本の銅線であってもよいし、ステンレスワイヤAsyの撚り線であってもよいし、複数の細い銅線を撚り合わせた撚り線であってもよい。さらに、上記周囲に位置する線状体(図27では6本の撚り線A111)どうしの外側の隙間AS2にも、線状体を配置してもよい。この外側の隙間AS2に配置される線状体も、1本の銅線であってもよいし、ステンレスワイヤAsyの撚り線であってもよいし、複数の細い銅線を撚り合わせた撚り線であってもよい。ここで説明したように、内部導体A11を構成する線状体どうしの隙間に、さらに線状体を追加してもよい。
また、内部導体A11は、上記最密構造に限らず、1本の銅線を中心に、その周囲を、中心の銅線よりも細い撚り線A111で囲んだ構成であってもよいし、20μm以上30μm以下の1本のステンレスワイヤを中心に、その周囲を、中心のステンレスワイヤよりも細い銅線で囲んだ構成であってもよい。これらの例でも、内部導体A11を構成する線状体の太さを異ならせている。なお、ここで説明した1本の銅線は、複数の細い銅線を撚り合わせたものであってもよい。
圧電体A12は、幅3mmの帯状のピエゾフィルムから構成されたものである。このピエゾフィルムは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる。ポリフッ化ビニリデンは、高い電圧が付与されて分極すると圧電効果が発生する軽量の高分子材料であり、これに外力を加えると電圧が発生し、電圧を加えると歪が発生する特性を備えている。圧電体A12には分極処理が施されており、圧電体A12に外部から力が加わったときに内部導体A11と外部導体A13の間に電圧が誘起される。なお、内部導体A11と外部導体A13の間に電圧をかけると、圧電体A12に変形(歪み)が生じる。内部導体A11の外周面には、このピエゾフィルムが螺旋状に隙間なく巻き付けられている。すなわち、このピエゾフィルムを内部導体A11の外周面に螺旋状に巻き付ける際に、内部導体A11の延在方向に隣り合うピエゾフィルムの幅方向の一端と他端どうしを重ね合わせた状態で巻き付けていく。こうすることで、ピエゾフィルムの面積をなるべく大きくとることができ、センサ感度の向上につながる。帯状のピエゾフィルムの幅は、3mmに限られず、2mm以上5mm以下であればよく、3mm以上4mm以下が好ましい。ピエゾフィルムの幅が狭すぎると内部導体A11の外周面に螺旋状に巻き付ける際に内部導体A11の延在方向に隣り合うピエゾフィルムの間に隙間が生じやすくなってしまう。隙間が生じた箇所は、センシングできない箇所になってしまう。一方、ピエゾフィルムの幅が広すぎると内部導体A11の外周面に螺旋状に巻き付ける際に弛みが生じやすくなってしまう。
図27に示す圧電体A12を構成するピエゾフィルムの厚さは、28μmであるが、20μm以上100μm以下であればよく、25μm以上80μm以下であることが好ましい。ピエゾフィルムの厚さが薄すぎるとセンサとしての感度が不十分になってしまい、反対に厚すぎると線状センサA1が硬くなりすぎてしまい柔軟性に欠けてしまう。
さらに、圧電体A12に採用するピエゾフィルムは、ピエゾ特性が、長手方向(伸び方向)にしか対応していないものよりも、結晶の配向性により複数方向(伸び方向及び曲げ方向)に対応したものである方が好ましい。
外部導体A13は、圧電体A12の外周面に、1本の銅線を1列に螺旋状に巻き付けたものである。すなわち、横巻きシールドの構成である。銅線としては、直径50μmのスズメッキ軟銅線を用いる。なお、外部導体A13は、銅線に限らず、ステンレスワイヤの撚り線であってもよく、例えば、内部導体A11を構成する1次撚り線(撚り線A111)と同じものであってもよい。また、外部導体A13の厚さは、10μm以上120μm以下であればよく、25μm以上90μm以下であることが好ましい。すなわち、内部導体A11の直径よりも薄い。さらに、この外部導体A13は、圧電体A12の外周面に、導線をクロスして編み上げた編組シールドであってもよいし、テープ状の導体を螺旋状に巻き付けていったテープシールドであってもよい。ただし、横巻きシールドが最も柔軟性が高い。またさらに、外部導体A13は、複数本の導線を螺旋状に巻き付けていったものであってもよいし、複数本のテープ状の導体を螺旋状に巻き付けていったものであってもよい。
ここで、内部導体A11は、外部導体A13よりも機械的強度が高いものである。
シースA14は、外部導体A13を覆うものであり、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高めるためのものである。シースA14は、ポリエステルテープであってもよく、その厚みは、20μm以上40μm以下であればよい。なお、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高める必要がなければ、シースA14を設けなくてもよい。
図27に示すシースA14は厚さが30μmの単層構造であるが、複層構造であってもよい。例えば、内層と外層とからなる2層構造であってもよく、内層は、外装に比べて柔らかい材質(例えば、ポリアミド合成樹脂やポリ塩化ビニル樹脂)で形成されており、外層は、内層に比べて耐摩耗性が高い材質(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)で形成されている。また、外層は、内層よりも厚くてもよい。さらに、内層は、可燃性材料で形成されていてもよいが、外層は、難燃性材料、不燃性材料、耐炎性材料で形成されていることが好ましい。
図27に示す線状センサA1は、全体の直径(太さ)が、0.378mmであり、十分に細いにもかかわらず、内部導体A11の切断荷重は0.058kNであるため、内部導体A11をピンと張った状態で、帯状のピエゾフィルムを巻き付けることができ、内部導体A11の外周面とピエゾフィルムとの間に隙間が生じてしまうことが抑えられ、線状センサA1を用いた正確な計測や検知が可能になる。
内部導体A11の外周面にピエゾフィルムを螺旋状に巻き付けると、ピエゾフィルムは内部導体A11の外周形状に馴染み、圧電体A12は、厳密には図27に示す2点鎖線のように内側に入り込んだ形状になる。特に、本実施形態の線状センサA1では、内部導体A11の外周面にピエゾフィルムを強く巻き付けることができるため、ピエゾフィルムは図27に示す2点鎖線のように外側の隙間AS2に入り込んだ形状になりやすい。
以上説明した、内部導体A11は第1導体の一例に相当し、外部導体A13は第2導体の一例に相当する。
また、以上の説明では、図27に示す線状センサA1における内部導体A11は、複数本のステンレスワイヤを撚り合わせた撚り線が配置されたものである。また、内部導体A11が、自身も全体として撚られたものである。さらに、内部導体A11は、ステンレスワイヤを撚り合わせたステンレス撚り線と、銅線を撚り合わせた銅撚り線とが配置されたものであってもよい。また、内部導体A11が、ステンレス撚り線の周囲を銅撚り線で取り囲んだものであってもよい。
また、内部導体A11が、図25に示す差動増幅器551と同じ差動増幅器の非反転入力端子(+)に接続され、外部導体A13が、その反転入力端子(−)5512に接続され、圧電体A12が振動等の外力によって変形したときに内部導体A11と外部導体A13の間に誘起される電圧の大きさ(電位差)が、その差動増幅器によって正確に増幅される。
[第五実施形態の線状センサ]
図28は、2種類の線状センサの断面図である。
この図28に示す2種類の線状センサC1はいずれも、内部導体C11と、圧電体C12と、外部導体C13と、シースC14から構成されている。
内部導体C11は、中心を通る中心導体線C1112と、その中心導体線C1112を取り囲む外側導体線C1111を有する。
図28(A)に示す線状センサC1は、撚り線構造をもたない線状センサである。すなわち、中心導体線C1112にしても、外側導体線C1111にしても撚り線ではなく、1本の導体線である。図28(A)に示す中心導体線C1112は、ステンレンス製の導体線であり、図28(A)に示す外側導体線C1111は、銅製の導体線である。図28(A)に示す中心導体線C1112は、図28(A)に示す外側導体線C1111よりも太く、例えば、外側導体線C1111の2倍以上太い。なお、図28(A)に示す外側導体線C1111は、20μm弱程度の太さであり、図28(A)に示す中心導体線C1112は、その外側導体線C1111よりも5倍程度太い。中心導体線C1112の太さは、線状センサC1に要求される機械的強度によって決められる。図28(A)に示す線状センサC1では、外側導体線C1111が19本設けられている。なお、外側導体線C1111の本数は19本に限定されない。銅は、ステンレンスよりも電気抵抗値が低く、導電性に優れており、この例では、中心側で機械的強度を確保し、電流が流れやすい外側で導電性を確保している。中心導体線C1112は間隔をあけることなく、隣り合う中心導体線C1112どうしは接触した状態で配置されている。1本の中心導体線C1112と、19本の外側導体線C1111は、直線状に束になったものであり、図28(A)に示す内部導体C11は、撚り線構造ではない。
なお、ステンレスの代わりに、タングステン、あるいはチタンを用いてもよく、さらには、金属に限らず、導電性を有する高張力繊維(例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミドや、アラミド繊維等)を用いてもよい。このことは、中心導体線C1112に限らず、ステンレス製のものであれば同じことであり、図1からこれまでの説明においても同じであり、以下の説明においても同じである。また、19本の外側導体線C1111は、中心導体線C1112と同じ方向を向いて束ねられていたが、中心導体線C1112に1本の外側導体線C1111を1列に螺旋状に巻き付けてもよい。すなわち、外側導体線C1111を横巻きに配置してもよい。外側導体線C1111を横巻きに配置する構造の場合、外側導体線C1111は15μm以上40μm以下(例えば、30μm)の太さのものを用い、中心導体線C1112は、その外側導体線C1111よりも2倍以上4倍以下(例えば、3倍)の太さのものを用いてもよい。また、外側導体線C1111を銅製のものから、チタン製、白金製、あるいは銀製のものに代えてもよいし、カーボンナノファイバーを含有した高分子材料のものに代えてもよいし、導電性高分子のものに代えてもよい。このことは、外側導体線C1111に限らず、銅製のものであれば同じことであり、図1からこれまでの説明においても同じであり、以下の説明においても同じである。また、図28(A)に示す線状センサC1では、内部導体C11は撚り線構造ではなかったが、中心導体線C1112を中心に外側導体線C1111を撚ってもよい。さらに、外側導体線C1111をなくし、中心導体線C1112の外周面に、窒素含有ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の硬質膜を設けてもよい。窒素含有ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、導電性が良好であり、中心導体線C1112の外周面にプラズマ蒸着によって設けることができる。あるいは、外側導体線C1111をなくし、中心導体線C1112の外周面に、銅メッキや銅蒸着を施してもよいし、銅箔を担持させてもよい。
また、図28(A)に示す中心導体線C1112を銅線にしてもよいし、図28(A)に示す外側導体線C1111をステンレス製の導体線にしてもよい。
図28(B)に示す線状センサC1は、撚り線構造をもった線状センサである。すなわち、中心導体線C1112は、ステンレンス製の1本の導体線であるが、外側導体線C1111は、7本の銅製の導体線C1111cを撚り合わせたものである。1本の導体線C1111cは直径15μmである。7本の導体線C1111cは、正六角形の各頂点およびその正六角形の中心に配置した状態で撚り合わせたものである。すなわち、外側導体線C1111は、7本の導体線C1111cを最密構造に配置した上で撚り合わせたものである。複数本の導体線C1111cを甘撚、あるいは中撚程度に撚っておくことで、撚りの方向とは逆方向の緩みを許容し、この緩みが柔軟性を与えることができる。図28(B)に示す外側導体線C1111の直径は45μmになる。また、図28(B)に示す中心導体線C1112も、直径が45μmである。
図28(B)に示す1本の中心導体線C1112と、図28(B)に示す外側導体線C1111は、直線状に束になったものであり、撚り線構造ではない。ただし、図28(B)に示す中心導体線C1112を中心に図28(B)に示す外側導体線C1111を撚ってもよい。
なお、外側導体線C1111を構成する導体線C1111cの本数は、7本に限らない。また、7本の銅製の導体線C1111cのうち、少なくとも外側の6本の導体線として、銅以外の材質、好ましくは、ステンレスよりも柔らかい材質の表面に、窒素含有ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の硬質膜を設けたもの、あるいは、銅メッキや銅蒸着を施したものや銅箔を担持させたものを用いてもよい。また、少なくとも外側の6本の導体線として、カーボンナノファイバーを含有した高分子材料の導体線に代えてもよいし、導電性高分子の導体線に代えてもよい。
また、図28(B)に示す中心導体線C1112を銅線にしてもよいし、図28(B)に示す外側導体線C1111をステンレスワイヤの撚り線にしてもよい。
以上の説明では、図28(B)に示す線状センサC1における内部導体C11は、1本の導体線が中心に配置され、該導体線の周囲を該導体線よりも細い複数本の導線を撚り合わせた撚り線で取り囲んだものである。また、前記導体線が、前記導線よりも機械的強度が高いものであり、前記導線が、前記導体線よりも電気抵抗が低いものである。さらに、内部導体C11は、ステンレスワイヤを撚り合わせたステンレス撚り線と、銅線を撚り合わせた銅撚り線とが配置されたものであってもよい。また、内部導体C11が、自身も全体として撚られたものであってもよい。
以上説明したように、中心導体線C1112は撚り線ではなく、1本の導体線であってもよく、このことは、図1からこれまで説明した線状センサでも言えることである。また、その1本の導体線は、ステンレス製のものであってもよいし、タングステン製のものであってもよいし、さらには、金属に限らず、導電性を有する高張力繊維(例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミドや、アラミド繊維等)製のものであってもよい。
図28に示す2種類の内部導体のうち、同図(A)に示す内部導体C11は、ステンレスの占める割合が、銅の占める割合よりも高く、同図(B)に示す内部導体C11は、反対に、ステンレスの占める割合が、銅の占める割合よりも低い。ここにいう割合とは、断面積の割合になる。機械的強度の高さや、曲げ回数が多い場合には、ステンレスの占める割合を高くし、柔軟性や導電性を優先する場合には、銅の占める割合を高くする。
圧電体C12は、図27を用いて説明した圧電体A12と同じであり、幅3mmの帯状のピエゾフィルムから構成されたものである。内部導体C11の外周面にピエゾフィルムを螺旋状に巻き付けると、ピエゾフィルムは内部導体C11の外周形状に馴染み、図28(B)に示す圧電体C12は、厳密には2点鎖線のように内側に入り込んだ形状になる。
外部導体C13は、図27を用いて説明した外部導体A13と同じであり、圧電体C12の外周面に、1本の銅線を1列に螺旋状に巻き付けたものである。すなわち、横巻きシールドの構成である。銅線としては、直径50μmのスズメッキ軟銅線を用いる。なお、外部導体C13は、銅線に限らず、ステンレスワイヤの撚り線であってもよい。また、外部導体C13の厚さは、10μm以上120μm以下であればよく、25μm以上90μm以下であることが好ましい。すなわち、内部導体C11の直径よりも薄い。さらに、この外部導体C13は、圧電体C12の外周面に、導線をクロスして編み上げた編組シールドであってもよいし、テープ状の導体を螺旋状に巻き付けていったテープシールドであってもよい。またさらに、外部導体C13は、複数本の導線を螺旋状に巻き付けていったものであってもよいし、複数本のテープ状の導体を螺旋状に巻き付けていったものであってもよい。
ここで、内部導体C11は、外部導体C13よりも機械的強度が高いものである。
なお、外部導体C13を銅線から、カーボンナノファイバーを含有した高分子材料のものに代えてもよいし、導電性高分子のものに代えてもよい。また、圧電体C12の外周面に、窒素含有ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の硬質膜を設けて外部導体C13としてもよいし、銅メッキや銅蒸着を施して外部導体C13としてもよいし、銅箔を担持させて外部導体C13としてもよい。
シースC14は、図27を用いて説明したシースA14と同じであり、外部導体C13を覆うものであり、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高めるためのものである。シースC14は、ポリエステルテープであってもよく、その厚みは、20μm以上40μm以下であればよい。なお、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高める必要がなければ、シースC14を設けなくてもよい。
図28に示すシースC14は厚さが30μmの単層構造であるが、複層構造であってもよい。例えば、内層と外層とからなる2層構造であってもよく、内層は、外装に比べて柔らかい材質(例えば、ポリアミド合成樹脂やポリ塩化ビニル樹脂)で形成されており、外層は、内層に比べて耐摩耗性が高い材質(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)で形成されている。また、外層は、内層よりも厚くてもよい。さらに、内層は、可燃性材料で形成されていてもよいが、外層は、難燃性材料、不燃性材料、耐炎性材料で形成されていることが好ましい。
またさらに、導電材料を担持した材料と耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高める材料との2層構造であってもよい。例えば、銅メッキや銅蒸着を施した帯状のPETフィルムを外部導体C13の外周面に、上述したピエゾフィルムCFと同じように重ね合わせながら巻き付けていき、さらにその上から帯状のポリエステルテープを同じく重ね合わせながら巻き付けていってもよい。銅を担持したフィルムによってシールド効果が得られる。
以上説明した、内部導体C11は第1導体の一例に相当し、外部導体C13は第2導体の一例に相当する。
また、内部導体C11が、図25に示す差動増幅器551と同じ差動増幅器の非反転入力端子(+)に接続され、外部導体C13が、その反転入力端子(−)5512に接続され、圧電体C12が振動等の外力によって変形したときに内部導体C11と外部導体C13の間に誘起される電圧の大きさ(電位差)が、その差動増幅器によって正確に増幅される。
以上、図1〜図28を用いて説明した各種の線状センサ10〜17,40,40’,A1,C1は、断面形状が丸型のものであったが、扁平なものであってもよい。例えば、帯状のピエゾフィルム(例えば、PVDF)のおもて面と裏面それぞれに導電層を設けた線状センサであってもよい。すなわち、一方の面の導電層が第1導体の一例に相当し、他方の面の導電層が第2導体の一例に相当する。導電層は、銅、アルミニウム、又はスズの蒸着やスパッタリングや、EBD、無電解メッキ等で形成することができる。両面に導電層が設けられたこの帯状のピエゾフィルムは、一対のフィルムによって挟まれている。すなわち、帯状のピエゾフィルムのおもて面側と裏側それぞれを覆うように、フィルムが配置され、一対のフィルムは接着剤や熱圧着、超音波接着等によって、間に帯状のピエゾフィルムを挟んだ状態で貼り付けられる。一対のフィルムにおける、ピエゾフィルム側とは反対側の外側にも導電層が形成されており、この導電層はシールド層になる。なお、一対のPETフィルムにおけるピエゾフィルム側に導電層を設けても、シールド層を形成することができる。ここでの一対のフィルムとしては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合 フッ素樹脂(PFA)フィルム等が用いられる。
ピエゾフィルムの厚さや、導電層が形成されたフィルムの厚さを調整することで、線状センサ全体の柔らかさを調整することができる。
さらに、貼り付けられた一対のフィルムの外側に、外部シース層を設けてもよい。外部シース層としては、PETフィルムや、4フッ化・6フッ化プロピレン フッ素樹脂(FEP)フィルム、PFAフィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムを用いて、シールド層が形成されたフィルムを外側から覆ってもよい。なお、外部シース層も、一対のフィルムを、接着剤や熱圧着、超音波接着等によって貼り付けたものであってもよい。外部シース層を設けておくことで、シールド層を外部から絶縁することができる。
以上、各種のセンサについて説明したが、続いて、これらのセンサを身体に接触して配置する例について説明する。
図29は、センサを気管の上に配置した例を示す図である。
この図29には、人体Hにおける唇L、舌T、鼻腔N、食道E、および気管Kが示されている。
気管Kの入口に声帯Vが位置している。声帯Vには開閉する一対のヒダがあり、この一対のヒダの間の隙間に肺から排出される空気を通過させ、振動を引き起こすことで音声(特に母音)が発せられる。したがって、声帯によって振動させられた空気の振動とは、気管を通る空気の振動に相当し、気管のうち、声帯以外を通る空気の振動も、気管を通る空気の振動に相当する。人間の声は、200Hz程度から2000Hz程度までが一般的である。なお、声帯Vは、甲状軟骨(いわゆる喉仏)Cによって守られている。
以下、これまで説明したセンサを総称してセンサ60と称する。図29では、センサ60は、気管Kの上に配置されている。ここにいう「上に配置」とは、皮膚等を挟んで配置されていることをいう(以下、同じ。)より具体的には、声帯Vよりも下方の位置に配置されている。すなわち、甲状軟骨Bよりも下方の位置に配置されている。声帯Vは甲状軟骨Bとともに、嚥下の際に上下運動するため、声帯V(甲状軟骨B)の位置にセンサ60を配置してしまうと、嚥下における上下運動の振動を検出してしまう恐れがある。また、図29では、センサ60はテープtによって固定されているが、声帯Vの真上にセンサ60を固定しても、嚥下によってセンサ60がズレてしまう恐れもある。これらの理由から、センサ60は、声帯Vよりも下方の位置に配置されることが好ましい。センサ60は、首を1周するように配置されてもよいし、半周分でもよいし、1/3周分でもよいし、1/4周分でもよいが、センサ60の長さがあまり短いと振動の検出感度が低下するため、1/3周以上が好ましい。また、この例では、センサ60を横方向に配置しているが、縦方向であってもよく、斜め方向であってもよい。さらには、センサ60を渦巻き状にして配置してもよい。また、センサ60の固定方法は、テープtによるものであるが、例えば、キネシオテープで固定してもよく、センサ全長にわたってテープtで固定してもよいし、間隔をあけて複数箇所で固定してもよい(以下においても同じ)。なお、テープtによらずに、センサ60の両端を手で持って押しつけてもよい(以下においても同じ)。また、テープtの代わりに包帯によって固定してもよい。さらには、ネックレスのチェーンの一部又は全部をセンサ60で構成したり、首周りの装飾品(首輪やチョーカー等)にセンサ60を設けてもよい。こうすることで、目立たずに美的にセンサ60を配置することができる。
さらに、テープtの接着面とは反対側の面に、フェルトやスポンジ、あるいは起毛の布等の柔らかなものを貼り付けておくことで、擦れや当たりの雑音を減らすことが可能になる。なお、テープtに限らず固定手段を覆うように、またはセンサ60自体を直接覆うようにフェルトやスポンジ、あるいは起毛の布等の柔らかなものを設けておいてもよい。ここにいう柔らかなものとは、センサ60よりも柔らかなものであればよく、より具体的には、導体部分よりも柔らかなものであることが好ましい。すなわち、身体に接触して配置されたセンサ60は、第1導体よりも柔らかなもので覆われたものであることが好ましい。
図30は、センサを骨の上に配置した例を示す図である。
この図30には、人体Hにおける下顎骨B1、上顎骨B2、側頭骨B3、および外耳孔B4が示されている。
図30では、センサ60が下顎骨B1に配置されているように見えるが、実際にはセンサ60は、皮膚等を挟んで下顎骨B1上に配置される。また、側頭骨B3のうち、耳の裏側の部分になる乳様突起B31上にもセンサ60が配置されている。ここでもセンサ60は、テープによって固定されている。さらに、センサ60は、鎖骨の上や胸部に配置されていてもよいし、額部分に配置されていてもよい。なお、センサ60は、いずれか1箇所に配置されていれば、気管を通る空気の振動を検出することができるが、複数箇所配置してもよい。
また、外耳孔B4は、いわゆる耳の穴である。耳の穴に装着するイヤホンに、耳の穴の皮膚と接触するようにセンサ60を設けておいてもよい。イヤホンからは音が出力されるが、音出力を止めた状態であれば、イヤホンに設けられたセンサ60は、気管を通る空気の振動を検出することができる。
次いで、センサ60を備えた音声再生システムについて説明する。
図31は、音声再生システムの一実施形態を示す図である。
図31に示す音声再生システム7は、センサ60と、アンプ80と、ノート型のパーソナルコンピュータ(以下、ノートパソコンと称する)70と、マイクロフォン79で構成されいる。図31に示すアンプ80は、これまで説明した図3に示す差動増幅器150や図11に示す差動増幅器250を備えたものである。また、アンプ80は、差動増幅器150,250によって増幅された信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路等も備えている。
図31に示すノートパソコン70は、外観構成上、本体部71と、画像表示部72とからなるものであり、画像表示部72は、本体部71の上面71aを覆うように折り畳たまれる。図31には、画像表示部72を開いた状態が示されている。この画像表示部72には、本体部71からの指示に応じて表示画面721上に画像を表示する液晶表示装置が内蔵されている。また、画像表示部72の、図31のように開いた状態における上部中央には、内蔵カメラによる撮影用の窓7570が設けられている。
本体部71の上面71aには、キー操作に応じた各種の情報を入力するキーボード73、および、表示画面721上の任意の位置を指定することにより、その位置に表示されたポインタやアイコン等に応じた指示を入力するポインティングデバイス74が設けられている。また、本体部71の前面71bの左右それぞれには、スピーカ751,752が設けられるとともに、これらのスピーカ751,752の間には、スピーカ751,752の音量を調整するボリューム調整操作子753が設けられている。また、外部接続されるマイクロフォンからの音声信号が入力されるマイクロフォンジャック754や、同じく外部接続されるヘッドフォンに音声信号を出力するヘッドフォンジャック755も設けられており、図31に示すマイクロフォン79は、マイクロフォンジャック754に接続されている。また、アンプ80は、ノートパソコン70の本体部71の左側面71cに設けられた、ユニバーサル・シリアル・バス(以下、USBと称する)規格に準拠したUSBポート7101(図2参照)に接続されている。さらに、その左側面71cには、CD−ROMやDVD−ROMを装填するためのCD/DVD−ROMディスク装填口や、映像信号用コネクタ7111(図32参照)が設けられている。
一方、本体部71の右側面71dには、SDカード(登録商標)(以下、記録カードと称する)が取出し自在に挿入される記録メディア挿入口7081が設けられている。この記録メディア挿入口7081に記録カード910を挿入すれば、記録カード910に記録されたデータを、ノートパソコン70に取り込むことができるようになる。
さらに、本体部71の右側面71dには、商用電源から電力を供給するACアダプタ(図示せず)のコネクタが差し込まれるDC電源接続端子756が設けられている。なお、図31に示すノートパソコン70にはバッテリ(図示せず)が内蔵されており、このノートパソコン70は、そのバッテリによっても動作するが、ACアダプタのコネクタをDC電源接続端子756に差し込むことにより商用電源から供給された電力によって動作する。
また、本体部71の後面71eには、いずれも図示されていないが、IEEE1394ポート、RJ45イーサネット(登録商標)ポート、および左側面71cに設けられたUSBポート7101とは別に2つのUSBポート7102,7103(図32参照)が設けられている。
図32は、図31に外観を示すノートパソコンのハードウェア構成図である。
図31に示すノートパソコン70の内部には、図32に示すように、CPU701、RAM702、ハードディスクコントローラ703、ディスプレイコントローラ704、サウンドコントローラ705、キーボードコントローラ706、ポインティングデバイスコントローラ707、カメラコントローラ712、CD/DVD−ROMドライバ708、記録メディアドライバ709、USBホストコントローラ710、および各種通信ボード711がバス700で相互に接続されている。
CPU701は、各種プログラムを実行するものである。ハードディスクコントローラ703は、ハードディスク7031をアクセスするものである。ハードディスク7031には、各種プログラムやデータが記憶されており、RAM702には、そのハードディスク7031に格納されたプログラムやデータが読み出されCPU701での実行のために展開される。ハードディスク7031には、OS(Operating System)としてマイクロソフト社のWindows(登録商標)がインストールされている。
ディスプレイコントローラ704は、図31に示す画像表示部72に内蔵された液晶表示装置720を制御するものである。サウンドコントローラ705は、図31に示すスピーカ751,752に音声信号を出力する。また、このサウンドコントローラ705には、図31に示すマイクロフォンジャック754や、ヘッドフォンジャック755が接続されており、音声信号の入出力が行われる。キーボードコントローラ706は、図31に示すキーボード73からの入力を受け付けるものであり、ポインティングデバイスコントローラ707は、同じく図31に示すポインティングデバイス74からの入力を受け付けるものである。
カメラコントローラ712は、図31に示す撮影用の窓7570の奥に設けられたカメラモジュール757を制御するものであり、カメラモジュール757によって、静止画や動画の撮影が行われる。
CD/DVD−ROMドライバ708は、CD/DVD−ROMディスク装填口に装填されたCD−ROM911やDVD−ROM912をアクセスするものである。記録メディアドライバ709は、図31に示す記録メディア挿入口7081に挿入された記録カード910をアクセスするものである。
図31に示す本体部71の左側面71cに設けられたUSBポート7101や、本体部71の後面71eに設けられたUSBポート7102,7103は、USBホストコントローラ710につながっている。これらのUSBポート7101,7102,7103に接続されたUSBデバイス(例えば、図31に示すアンプ80)には、デバイスを識別するための識別情報が用意されている。USBデバイスとノートパソコン70の接続の際には、ノートパソコン70内のOSが、この識別情報を読み取り、その識別情報に対応した情報ファイルを検索し、その情報ファイルで指定されたデバイスドライバ(周辺機器を管理制御するドライバ・ソフトウェア)をインストールし、ロードすることによってそのUSBデバイスがノートパソコン70の周辺装置として動作するようになる。
各種通信ボード711には、映像信号用コネクタ7111、IEEE1394ポート7112、およびRJ45イーサネット(登録商標)ポート7113が接続している。
図33は、図31に示す音声再生システムの機能ブロック図である。
音声再生システム7は、センサ60、アンプ80、カメラモジュール757、マイクロフォン79、処理部7000、スピーカ751,752の機能構成を備えている。処理部7000は、制御手段7010と記憶手段7030を有し、この処理部7000は、図31に示すノートパソコン70の本体部71により実現される機能構成であり、制御手段7010は、図32に示すCPU701により実現される機能構成であるとともに、記憶手段7030は、図32に示すハードディスク7031により実現される機能構成である。
制御手段7010には、記憶手段制御部7011、選択手段7012、および再生手段7013が設けられている。
センサ60からは、気管を通る空気の振動を検出した検出信号が出力される。その検出信号は、アンプ80によって増幅された後、デジタル信号に変換され、センサ60からの検出信号に基づく情報(増幅信号)としてノートパソコン70に取り込まれる。なお、アンプ80を省略し、センサ60からの検出信号をノートパソコン70に取り込み、ノートパソコン70内で検出信号を増幅した上でデジタル信号に変換してもよい。
ノートパソコン70に内蔵されたカメラモジュール757は、口の動き方を撮影する。例えば、唇と舌の動きを動画撮影したり、下顎の動きを動画撮影し、動画データは制御手段7010に送られる。
ノートパソコン70に接続されたマイクロフォン79は、音声を電気信号に変換し、音声信号はノートパソコン70に取り込まれる。音声信号は、処理部7000内で音声データに変換され、制御手段7010における記憶手段制御部7011に送られる。
制御手段7010では、登録処理と、選択処理が実行される。登録処理では、記憶手段制御部7011が、センサ60からの検出信号に基づく情報である増幅信号を取得するとともに、動画データと音声データも取得する。動画データは、センサ60から検出信号が出力されたときの口の動き方を撮影したデータであり、音声データは、センサ60から検出信号が出力されたときの音声を表すデータである。すなわち、センサ60からの検出信号と、口の動き方を撮影した動画データと、音声データは互いに同期したものである。
記憶手段制御部7011では、口の動き方を撮影した動画データから、下顎の動きや唇と舌の動きをパターン化したデータを生成する。例えば、唇領域と舌領域を抽出し、唇領域および舌領域それぞれにおける特徴点を設定し、時間経過に伴う特徴点の座標変化を、口の動き方を表すデータとして生成する。このデータも、センサ60からの検出信号と、音声データに同期している。なお、舌の動きをパターン化したデータは省略することもできる。
記憶手段制御部7011は、互いに同期したこれら3つの情報(センサ60からの検出信号、口の動き方を表すデータ、音声データ)を対応づけた組を記憶手段7030に複数組記憶させる。
図34は、記憶手段に対応づけて記憶される3つの情報を示す図である。
図34では、一番上が、気管を通る空気の振動を検出した検出信号を表し、一番下が、音声データを表し、真ん中が口の動き方を表すパターン化したデータを、わかりやすいように唇の形で示している。
この図34では、母音の組しか示していないが、登録処理では、子音についてもそれぞれ、3つの情報を対応づけて登録しておく。50音全てについて3つの情報を対応づけて登録しておくことで、後述する音声再生の精度はかなり向上する。さらに、濁音、半濁音、長音、促音、撥音、拗音についても、3つの情報を対応づけて登録しておくことで、音声再生の精度は一段と向上する。
選択処理では、選択手段7012が、センサ60から実際に出力された検出信号に基づく情報である増幅信号を取得するとともに、動画データも取得する。動画データは、センサ60から検出信号が出力されたときの実際の口の動き方を撮影したデータである。この選択処理でも、登録処理と同様に、口の動き方を撮影した動画データから、下顎の動きや唇と舌の動きをパターン化したデータを生成する。なお、舌の動きをパターン化したデータは省略することもできる。
病気等で声帯の機能が徐々に低下していき、最終的にはうまく発声することができなくなる恐れがある者であっても、事前にその者の音声データを取得しておくことができれば、図31に示す音声再生システム7は役立つ。センサ60を、その者の体に接触して配置しておけば、気管を通過する際の空気の振動を検出することができる。母音については、声帯の機能が低下してくると、検出信号の波形は、声帯の機能が正常であったときの波形と一致はしないが、口の動き方を表すデータも用いることで、選択手段7012は、登録されている複数の組の中から、最も近いデータからなる組を選び出すことができる。また、子音については、声帯の機能が低下してしまっても、検出信号の波形は、声帯の機能が正常であったときの波形とほぼ一致し、口の動き方を表すデータも用いることで、選択手段7012によって、登録されている複数の組の中から、最も近いデータからなる組が選択される。再生手段7013は、こうして選択手段7012が選択した組における音声データを再生し、再生された音声は、スピーカ751,752から出力される。この結果、音声再生システム7では、声帯の機能が低下してしまってうまく発声することができなくなってしまっても、発声しようとするタイミングに合わせて、その者の、声帯の機能が正常であったときの音声を再生することができる。
以上説明した音声再生システム7は、図31に示すようにノートパソコン70を備えたものであったが、ノートパソコン70の代わりにスマートフォン等の通信機器端末を用いてもよい。例えば、記憶手段、記憶手段制御部、および選択手段は、サーバ上にあり、カメラ機能と再生手段を備えた通信機器端末で、そのサーバと通信しながら、通信機器端末の再生手段で音声を再生するシステムであってもよい。
ここで説明した音声再生システム7は、口の動き方を表すデータと、音声を表す音声データとが入力される音声再生システムであって、身体に接触して配置され、気管を通る空気の振動を検出するセンサ60、記憶手段7030、センサ60からの検出信号に基づく情報と、その検出信号が出力されたときの口の動き方を表すデータと、その検出信号が出力されたときの音声を表す音声データとを対応づけた組を記憶手段7030に複数記憶させる記憶手段制御部7011、記憶手段7030に記憶されている複数の組の中から、センサ60から実際に出力された検出信号に基づく情報と、その検出信号が出力されたときの実際の口の動き方を表すデータとに基づいて、一つの組を選択する選択手段7012、および選択手段7012によって選択された組における音声データを再生する再生手段7013を備えたことを特徴とする。なお、ここにいう「センサ60からの検出信号に基づく情報」は、アンプ80で増幅される前の検出信号の情報であってもよいし、アンプ80で増幅された後の検出信号の情報(増幅信号)であってもよいし、センサ60からの検出信号に何らかの信号処理を施した後の情報であってもよい。また、口の動き方を表すデータは、下顎の動きや、唇と舌の動きを撮影した動画データから、下顎の動きや唇と舌の動きをパターン化したデータになる。
続いて、図33等に示す音声再生システム7の変形例について説明する。
声帯を切除してしまった者は、声帯があった位置より下の部分に気管孔が設けられる。センサ60を2つ用意して、一つのセンサ60で、気管孔につながる気管を通る空気の振動を検出したり、あるいは気管孔から吐き出される空気の振動を検出する。残りのセンサ60では、下顎の動きや舌の動きによって生じた振動を検出する。登録処理では、記憶手段制御部7011が、声帯を切除する前の母音や子音の音声データと、各音発声時の2つのセンサ60それぞれからの検出信号に基づく情報と、その検出信号が出力されたときの口の動き方を表すデータとを対応づけた組を記憶手段7030に複数音分記憶させる。
選択処理では、選択手段7012が、2つのセンサ60それぞれから実際に出力された検出信号に基づく情報を取得するとともに、口の動き方を表すデータも取得し、取得した情報とデータに基づいて、記憶手段7030に記憶されている複数の組の中から、最も近い情報とデータが含まれている組を選び出す。再生手段7013は、こうして選択手段7012が選び出した組に含まれている音声データを再生し、再生された音声は、スピーカ751,752から出力される。この結果、声帯を失った者が発声しようとするタイミングに合わせて、その者の、声帯を失う前の音声を再生することができる。なお、この変形例では、センサ60で下顎の動きや舌の動きによって生じた振動を検出しているため、口の動き方を表すデータは必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
図35は、これまで説明したセンサをマスクに取り付けた例を示す図である。
図35に示すマスクMは、略矩形の不織布m1と、不織布m1の左右方向両端それぞれに設けられた耳掛け用の紐m2を有する。不織布m1の上端には左右方向に延びたノーズワイヤnwが縫い込まれており、上下方向中央部分にも左右方向に延びたセンターワイヤcwが縫い込まれている。図35では、ノーズワイヤnwもセンターワイヤcwも、太い点線で示している。
ノーズワイヤnwは、このマスクMの装着者の鼻の形状に沿うように変形させられるものである。センターワイヤcwは、このマスクMの装着者の口と不織布m1の間に空間を維持する機能を担っている。これまで説明したセンサ60は、センターワイヤcwに沿って配置されている。すなわち、図35に示すように、マスクMの左右方向一端側から他端側に向かって延在し、さらに他端側から一端側に向かって戻ってきている。センサ60は、センターワイヤcwに沿って配置されることで、ピンと張った状態で配置されていることになり、マスクMの装着者が発音することで空気振動を受け、その振動に応じた検出信号を出力する。したがって、マイクロフォンとして機能している。
なお、これまでの説明では、センサ60は線状であったが、センサユニットや音声再生システムや図35に示すマスクMに用いるセンサとして、線状のセンサ60を用いた他の形状のセンサを用いてもよい。例えば、延在する線状のセンサ60を幅方向に複数本並べた帯状のセンサであってもよいし、面状のセンサであってもよい。
図36は、センサ60を用いた面状センサの分解斜視図である。
この面状センサC3は、メッシュ生地C30を基材として有する。このメッシュ生地C30は、面状体の一例に相当する。図36に示すセンサ60は、そのセンサ60の幅方向(Y軸方向)に間隔をあけてメッシュ生地C30になみ縫いされている。図36では、7本のセンサ60がなみ縫いされており、灰色で示されている。以下、灰色で示されたこれら7本のセンサ60を第1センサ61と称する。また、メッシュ生地C30には、これらの第1センサ61の延在方向(X軸方向)に間隔をあけてセンサ60がなみ縫いされている。図36では、9本のセンサ60がなみ縫いされており、黒色で示されている。以下、黒色で示されたこれら9本のセンサ60を第2センサ62と称する。
すなわち、図36に示す面状センサC3は、面状体と、線状の複数の第1センサと、線状の複数の第2センサとを備え、前記複数の第1センサが、該第1センサの幅方向に間隔をあけてその面状体になみ縫いされたものであり、複数の第2センサが、第1センサの延在方向に間隔をあけてその面状体になみ縫いされたものである。
メッシュ生地は、網の目が粗く、第1センサ61および第2センサ62を網の目に通しやすく縫いやすい。第1センサ61と第2センサ62の関係は、メッシュ生地C30の、第1センサ61がメッシュ生地C30の裏側を通っている部分では、第2センサ62がメッシュ生地C30の表側を通っており、メッシュ生地C30の、第2センサ62がメッシュ生地C30の裏側を通っている部分では、第1センサ61がメッシュ生地C30の表側を通っている。また、第1センサ61の、メッシュ生地C30の表側を通っている部分と、その第1センサ61に隣り合う第1センサ61の、メッシュ生地C30の表側を通っている部分との間では、第2センサ62がメッシュ生地C30の表側を通っており、第2センサ62の、メッシュ生地C30の表側を通っている部分と、その第2センサ62に隣り合う第2センサ62の、メッシュ生地C30の表側を通っている部分との間では、第1センサ61がメッシュ生地C30の表側を通っている。これの関係によって、メッシュ生地C30を挟んで、第1センサ61と第2センサ62が重なっている点が形成されている。
さらに、図36に示す面状センサC3は、メッシュ生地C30を表側から覆う表側シート体C33と、メッシュ生地C30を裏側から覆う裏側シート体C34を有する。表側シート体C33も裏側シート体C34も、綿布であり、メッシュ生地C30とは異なる材質である。綿布はメッシュ生地よりも肌触りが良い材質であるのに対して、メッシュ生地は綿布より目が粗い材質である。ただし、表側シート体C33も裏側シート体C34もメッシュ生地であってもよい。
図36では、メッシュ生地C30と、表側シート体C33と、裏側シート体C34とをバラバラに示しているが、完成した面状センサC3では、表側シート体C33と裏側シート体C34の間にメッシュ生地C30が挟み込まれ、これら3つ(C30,C33,C34)が一体になっている。例えば、表側シート体C33と裏側シート体C34の方が、メッシュ生地C30よりも大きく、表側シート体C33の外周部分と裏側シート体C34の外周部分を縫い合わせてもよい。さらに、表側シート体C33と裏側シート体C34の間でメッシュ生地C30がズレないように、表側シート体C33とメッシュ生地C30と裏側シート体C34を中央部分で綴じてもよい。
なお、メッシュ生地C30に代えて、綿布、サテン生地、あるいは不織布であるフェルトを基材として用いてもよい。また、センサ60として具体的に、図28(a)に示す線状センサC1や、同図(b)に示す線状センサC1を用いてもよい。
以上説明した面状センサC3であれば、図35に示すマスクMの不織布m1の代わりに用いることもできる。
また、帯状のピエゾフィルムのおもて面と裏面それぞれに導電層を設けた、断面形状が扁平な線状センサであれば、線状センサどうしを直接編むことで、面状センサを形成することができる。