ハイブリッド自動車又は電気自動車に配索される高圧の太物電線である本発明の電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の複数本の素線からなる導体と、押出成型により導体を覆う絶縁性の絶縁体とを備える。導体は、複数本の素線を撚り合わせて撚り線を形成するとともに、この撚り線を複数本束ねて束状撚り線を形成し、且つこの形成後に束状撚り線を圧縮し、中心側から2層目の撚り線の外周面が、中心側から3層目の撚り線の3つの内周面に当接している。この他、導体に対する絶縁体の密着力は10N〜50Nであり、曲げR80mmから曲げR40mmにする時の電線柔軟性は50N以下である。
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明の電線の配索先となるハイブリッド自動車の模式図である。また、図2は本発明の電線を示す正面図、図3は図2のA−A線断面図、図4は絶縁体の入り込み状態を示す拡大断面図である。
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスの一構成部材として本発明を採用するものとする。
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索される。また、車体床下11に沿って略平行に配索される。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通される。
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続される。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続される。
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含むものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含むものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
ワイヤハーネス9は、上記の如くインバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するための高圧の部材であって、本発明に係る複数本の高圧電線15(電線)と、この高圧電線15を覆うシールド部材16と、シールド部材16の外側に設けられる外装部材17とを備えて構成される。
図2及び図3において、高圧電線15は、導体18と、この導体18を覆う絶縁体19とを備えて構成される。
導体18は、例えば15sqとなるサイズに形成される(サイズは一例であるものとする。15sqよりも大きなサイズ、或いは小さなサイズであってもよいものとする)。導体18は、複数本の素線18aを撚り合わせて撚り線18bを形成するとともに、撚り線18bを複数本束ねて束状撚り線18cを形成し、且つこの形成後に束状撚り線18cを圧縮してなる圧縮導体である。
素線18aは、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、極細のものが用いられる。アルミニウム又はアルミニウム合金製の素線18aは、他の材質のものと比べて軽量である。アルミニウム又はアルミニウム合金は、不可避不純物を含むものとする。尚、素線18aは、導電性を有するのであれば特に材質は限定されないものとする。
束状撚り線18cは、所謂ロープ撚りと呼ばれる撚り合わせにて形成される。本実施例においては、複数本の撚り線18bを並列に配置し、そして、この外側に複数本の撚り線18bを更に撚り合わせて束状にすることにより形成される。
導体18は、束状撚り線18cを図示しないダイスに通して圧縮することによりなる。導体18は、圧縮後の径を圧縮前の径で割って得る圧縮率が90%〜93%となるように圧縮形成される。本実施例においては、所定径の第一ダイスにて先ず93%に圧縮し、この後に材質がダイヤモンドの第二ダイスにて圧縮率が90%になるまで圧縮することにより形成される。
圧縮率を90%〜93%に設定する理由としては、80%台であると圧縮自体が困難になるからである。また、93%を超えると絶縁体19の例えば端末部分19aを除去する皮むき作業の際に入り込み部分19b(図4参照)が切れて残ってしまう虞があるからである。圧縮率は90%が好適である。
圧縮率を90%〜93%に設定することで、図4(a)に示す如く撚り線18b同士の隙間18dを小さくすることができる(従来例における素線104同士の間に相当する部分を小さくすることができる)。すなわち、絶縁体19の入り込み部分19bを小さくすることができる。入り込み部分19bを小さくすることができれば、皮むき作業の際の残りカスの発生を抑制することもできる。また、皮むき作業の際に掛ける力を小さくすることもできる。すなわち、作業者への負担を軽減することもできる。
図4(a)と図4(b)とを比べると、入り込み部分19bは従来例の入り込み部分105よりも小さくなることが分かる。
導体18に対する絶縁体19の密着力は、入り込み部分19bが小さいことから、従来例よりも低く設定することができる。具体的には、10N〜50Nに設定することができる。尚、密着力の測定方法は次の通りである。すなわち、残し部分として絶縁体19を50mm残し、そして、下方より導体18のみを250mm/分の速度で引っ張った時の、引き抜くために要した荷重の測定が密着力の測定方法である。
密着力を10N〜50Nに設定することにより、言い換えれば従来例よりも低く設定できることにより、皮むき作業をし易くすることができる。
上限を50Nに設定して低い密着力にすることにより、皮むき作業の際、残りカスの発生防止に寄与することができる。一方、下限を10Nに設定することにより、簡単に皮むき部分(ここでは端末部分19a)を脱落させないように(すぐ抜けないように)することができる。
圧縮率を90%(90%〜93%)に設定することで、また、密着力を10N〜50Nに設定することで、皮むき作業を良好にすることができる。
図2及び図3において、絶縁体19は、絶縁性を有する樹脂材料を用い、これを導体18に対し押出成型することによりなる。本実施例の絶縁体19は、従来例の絶縁体102と同じ樹脂材料が用いられる(同じでなくてもよいものとする)。
上記構成及び構造の高圧電線15は、長さ400mmにおいて、曲げR80mmから100mm/分の速度で曲げR40mmにする時の電線柔軟性が50N以下に設定される(50N〜0N)。電線柔軟性が50N以下に設定されれば、ハイブリッド自動車1用として好適に配索することができる。
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。