JP2020110066A - コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤およびそれを含有する食品組成物 - Google Patents

コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤およびそれを含有する食品組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】経口摂取することで血圧上昇抑制が可能な血圧上昇抑制剤、およびそれを含む食品組成物を提供する。【解決手段】コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を有効成分として含む血圧上昇抑制剤、およびその血圧上昇抑制剤を含む血圧上昇抑制用食品組成物。【選択図】なし

Description

本発明はコンドロイチン硫酸を含有するブタ軟骨抽出物の用途、ならびに血圧上昇抑制剤およびそれを含有する血圧上昇抑制用食品組成物に関する。
高血圧治療薬は高血圧症が重度の場合もしくは生活習慣の改善では効果が認められない場合に処方されるものであり、軽度もしくは中程度のいわゆる高血圧症予備軍の人がその血圧の状態を改善する目的では使用されない。一方、高血圧症予備軍の人が生活習慣の改善とともに血圧の状態を改善する目的で食する、血圧上昇抑制を目的とした食品の開発も進められている。
サメ、サケ、ウシ、ブタ、ニワトリ、イカなどの軟骨から得られるコンドロイチン硫酸は、経口摂取することで変形性関節炎など関節の動きをサポートする成分として活用されている。しかしながら、コンドロイチン硫酸を経口摂取することで血圧上昇を抑制できるという効果を謳ったコンドロイチン硫酸含有食品はまだ具現化されていない。
特許文献1には、高血圧の治療を必要とする患者に対し、抗高血圧に有効な量のサメ軟骨抽出物を投与する高血圧の治療方法や、抗上皮小体高血圧性因子(PHF)活性を有するサメ軟骨抽出物と、薬学的に許容される担体とを含有する薬品組成物などが記載されている。特許文献1の実施例では、サメ軟骨抽出物が抗上皮小体高血圧性因子(PHF)活性を有することや、マウスにサメ軟骨抽出物を静脈ボーラス注射するまたは経胃投与することにより血圧を降下させることができることが開示されている。また、特許文献1には、特定の工程により得られるサメ軟骨抽出物が、5〜30%のタンパク質、15〜80%のムコ多糖および1〜20%のコンドロイチン硫酸Cを含有することも開示されている。
特許文献2には、ε−ビニフェリンまたはそれを含む植物抽出物を有効成分として含有し、さらにコラーゲンペプチド、鶏軟骨抽出物(典型的には、鶏軟骨をタンパク質分解酵素で加水分解したものであり、II型コラーゲン由来ペプチド、コンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸を含む。)、チオクト酸類または酵母加水分解物を含有していてもよい血圧降下剤や、その血圧降下剤を含有する経口用(飲食品)組成物が記載されている。特許文献2の実施例では、高血圧自然発症ラットに対して、ε−ビニフェリンと鶏軟骨抽出物等とを併用して経口的に投与することにより、ε−ビニフェリンを単独で経口的に投与することに比べて、収縮期血圧(SBP)の降圧効果が相乗効果的に増強されることが開示されている。
特表2001−509513号公報 特開2013−043887号公報
本発明は、経口摂取することで血圧上昇抑制が可能な血圧上昇抑制剤、およびそれを含有する食品組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、コンドロイチン硫酸を含有するブタ軟骨抽出物を経口摂取することにより血圧の上昇を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明には以下の事項が包含される。
[1]
コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を有効成分として含む血圧上昇抑制剤。
[2]
前記ブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の含有率が、HPLC法による測定値として50重量%以上75重量%以下である、項1に記載の血圧上昇抑制剤。
[3]
項1または2に記載の血圧上昇抑制剤を含む、血圧上昇抑制用食品組成物。
なお、本発明は一つの側面において、高血圧症を発症している、または発症のおそれのある、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物に、本発明の血圧上昇抑制剤を有効量投与することを含む、血圧上昇の抑制方法が提供される。さらに、本発明は一つの側面において、高血圧症を発症している、または発症のおそれのある、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物に、本発明の血圧上昇抑制剤を含有する食品組成物を有効量摂取させることを含む、血圧上昇の抑制方法が提供される。産業上の利用可能性の観点から、上記の血圧上昇の抑制方法からは、医療的効果を除くことができる。
本発明の血圧上昇抑制剤を含有する食品組成物を高血圧症予備軍の人などが経口摂取することにより、血圧上昇を抑制できるものと期待される。
また、従来の血圧上昇抑止を目的とした食品はペプチドやアミノ酸を主体としたものであるため、タンパク質の摂取を制限しなければならない、腎機能障害のある人は摂取することができなかった。本発明の好ましい血圧上昇抑制剤には、精製によりコンドロイチン硫酸が主成分となっており(例えば含有率が50重量%以上75重量%以下)、タンパク質またはペプチドの含有量が相対的に低くなっている(例えば、最大でも上記コンドロイチン硫酸の残部である)ブタ軟骨抽出物が用いられるので、タンパク質の摂取を制限しなければならない人でも問題なく摂取することができる。
なお、「血圧上昇の抑制」という作用効果は、本発明の血圧上昇抑制剤またはそれを含有する食品組成物を一定期間摂取した群(被験者または実験動物)と摂取しない群とを比較し、摂取した群の血圧(特に拡張期血圧)が統計学的に有意に低下していることによって確認することができる。
−血圧上昇抑制剤−
本発明の血圧上昇抑制剤は、少なくともコンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を有効成分として含み、必要に応じてその他の成分をさらに含んでいてもよい。すなわち、血圧上昇抑制剤は、コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物のみからなるものであってもよいし、それと同様に血圧上昇抑制の作用効果を有する他の物質をさらに含有するものであってもよい。また、本発明の血圧上昇抑制剤は、水、緩衝液等の適切な溶媒に溶解した溶液の形態であってもよいし、乾燥粉末化された形態であってもよい。
(ブタ軟骨抽出物)
コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物は、ブタ軟骨組織に水、アルカリまたは酵素を加えて処理した後、抽出物を分離および精製して、コンドロイチン硫酸の含有率を高めたものである。例えば、商品名「P−コンドロイチンNHZ」、「P−コンドロイチン」(どちらも日本ハム株式会社)またはこれに類する商品を、本発明におけるブタ軟骨抽出物として使用することができる。
上記のような製造方法によって得られる一般的なブタ軟骨抽出物は自ずと、少なくともコンドロイチン硫酸を含有している。本明細書において、単に「ブタ軟骨抽出物」と記載した場合も、そのブタ軟骨抽出物は(他に断り書きがない限り)コンドロイチン硫酸を含有するものである。ただし、本発明における血圧上昇抑制の作用効果は、コンドロイチン硫酸によってもたらされると断定されるわけではなく、ブタ軟骨抽出物に含まれるコンドロイチン硫酸以外の成分が血圧上昇抑制の作用効果に貢献している可能性は何ら排除されるものではない。本発明における、血圧上昇抑制のための有効成分は、あくまでもコンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物である。
ブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の含有率は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会(JHFA)規格「コンドロイチン硫酸食品品質規格基準」の原材料規格に準じた場合、乾燥物換算で、HPLC法またはカルバゾール硫酸法(コンドロイチン硫酸の含有率が50重量%以上の場合)による測定値として、20重量%以上85重量%以下である。本発明の好ましい実施形態において、ブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の含有率は、HPLC法による測定値として50重量%以上75重量%以下である。なお、カルバゾール硫酸法による測定値は、HPLC法による測定値よりも高めになる(例えば「重量%」の数値が約5〜15高くなる)傾向がある。そのため、上記の本発明の好ましい実施形態における、HPLC法による測定値の数値範囲として示したブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の含有率は、カルバゾール硫酸法による測定値の数値範囲として示せば、広く見積もって55重量%以上90重量%以下、大抵は60重量%以上80重量%以下と換算することができる。
なお、ブタ軟骨抽出物は、上記の通常または好ましいコンドロイチン硫酸の含有率の残部として、コンドロイチン硫酸以外の成分を含む。例えば、ブタ軟骨抽出物は、10重量%以下の水分(常圧加熱乾燥法)、30重量%以下の灰分(直接灰化法)、1重量%以下または0.5重量%以下の脂質(エーテル抽出法)などを含んでいてもよい。
(コンドロイチン硫酸)
コンドロイチン硫酸は、ムコ多糖類(糖質とアミノ酸、ウロン酸またはその硫酸エステルとが結合したアミノ糖を含む、粘液質の複合多糖)の一種であり、タンパク質と結合してプロテオグリカンを形成した状態で、動物の軟骨に多く存在する。コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸とN−アセチルガラクトサミンの二糖単位の繰り返し構造を有し、一部の水酸基が硫酸基となった直鎖状の糖鎖で、分子量は10,000〜100,000である。その構造単位(ユニット)中の硫酸基の結合様式によってA、C、D、Eなどの二糖ユニットがあることが知られている(下記構造式参照)。なお、構造単位が硫酸基を有しない(水酸基が全く硫酸化されていない)コンドロイチン硫酸Oもある。また、コンドロイチン硫酸(その硫酸基)は、ナトリウム塩またはその他の塩の形態であってもよい。
Figure 2020110066
動物の軟骨に含まれるコンドロイチン硫酸は、コンドロイチン硫酸A、Cおよびその他の二糖ユニット構成比率(コンドロイチン硫酸に含まれる全ユニット構成数に対して、特定の二糖ユニット構成数が占める割合)が変動する。ヒト、ブタなどの哺乳類や、ニワトリなどの鳥類の軟骨に由来するコンドロイチン硫酸は、主にコンドロイチン硫酸Aによって構成されており、コンドロイチン硫酸Cも含まれている。これに対してサメなどの軟骨魚類の軟骨に由来するコンドロイチン硫酸は、主にコンドロイチン硫酸Cによって構成されており、コンドロイチン硫酸Dも含まれている。ソデイカなどの軟体動物の軟骨に由来するコンドロイチン硫酸は主にコンドロイチン硫酸Eによって構成されている。ブタ軟骨抽出物に含まれるコンドロイチン硫酸の二糖ユニット構成比率は、例えば、コンドロイチン硫酸A:コンドロイチン硫酸C=60〜100:0〜40であり、その他にも微量のコンドロイチン硫酸D、Eなども含まれている。このようなユニット構成比率は、前述したコンドロイチン硫酸の含有率を測定するためのHPLC法を応用することによって、すなわちコンドロイチン硫酸をコンドロイチナーゼで処理して不飽和二糖を生成させ、HPLCで分離し、コンドロイチン硫酸の各二糖ユニット(A、C等)に対応するピークを検出することによって、定量することが可能である(JHFA品解説書:コンドロイチン硫酸食品、平成27年8月20日発行、公益財団法人日本健康・栄養食品協会、p13〜18参照)。また、コンドロイチン硫酸がどの動物に由来するものであるかは、コンドロイチン硫酸中に残存しているDNAまたはタンパク質に基づく「動物由来DNA検査」または「動物由来たんぱく質検査」(例えば、一般財団法人日本食品分析センター、http://www.jfrl.or.jp/item/allergens/post-62.html参照)により鑑別することができる。
コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物の調製方法は特に限定されるものではなく、公知の様々な技術を用いることができる。コンドロイチン硫酸の調製方法としては、例えば、軟骨等の原料をアルカリ液で分解し、ムコ多糖を抽出するアルカリ処理法;中性塩液で抽出する中性塩処理法;プロテアーゼ、プロナーゼ等のタンパク質分解酵素で処理する酵素法などが知られている。これらの方法における各種の処理条件も当業者であれば適宜調整することができる。例えば、ブタ軟骨抽出物は、ブタ軟骨(気管、鼻等、凍結乾燥物であってもよい)を原料とし、代表的には下記(1)〜(3)のいずれかの工程(処理)の一部または全部を含む方法により調製される。
(1)粉砕工程、酵素分解工程、濾過工程、限外濾過工程、濃縮工程、加熱殺菌工程、および乾燥工程
(2)酵素分解工程、固液分離工程、濃縮工程、加熱殺菌工程、および乾燥工程
(3)アルカリ可溶化工程、中和工程、濾過工程、脱塩工程、濃縮工程、加熱殺菌工程、および乾燥工程
「酵素分解工程」および「アルカリ可溶化工程」では、コンドロイチン硫酸が共有結合しているコアタンパク質を切断することによって、原料からコンドロイチン硫酸を遊離させる(抽出する)。このような処理により得られる抽出物中には、タンパク質やその分解物が多量に含まれているので、それらを除去してコンドロイチン硫酸の高純度化を図るための精製工程、前述した代表的な工程(処理)で言えば「濾過工程」および「限外濾過工程」や、エタノール分画処理、イオン交換クロマトグラフィー処理またはこれらの組み合わせによる「固液分離工程」を行うことが好ましい。
(用途)
本発明の血圧上昇抑制剤の代表的な用途としては、血圧上昇を抑制するための有効成分として食品組成物に配合することが挙げられる。しかしながら、本発明の血圧上昇抑制剤の用途はこれに限定されるものではなく、動物の血圧に関係する、特に血圧の上昇の抑制という効果に関係する、様々な用途を有する。
血圧上昇抑制効果を評価する方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、ある実施形態のコンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を含む血圧上昇抑制剤(またはそれを含む食品組成物)をヒトまたはヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、スナネズミ、ハムスター、フェレット、イヌ、ミニブタ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジなど)に摂取させた後、血圧値を測定し、対照と比較することにより、その実施形態の血圧上昇抑制剤等の血圧上昇抑制効果を評価する方法である。その実施形態の血圧上昇抑制剤等の血圧値を対照の血圧値と比較して、また様々な実施形態の血圧上昇抑制剤等の血圧値同士を比較して、統計学的有意差の有無や有意水準等を考慮することにより、より好ましい実施形態の血圧上昇抑制剤(またはそれを含む食品組成物)を開発することが可能となる。このような血圧上昇抑制剤等の評価方法において、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物に対する摂取のさせ方、すなわち1回あたりの量、期間などは、評価の目的に応じて、後述する本発明の食品組成物の摂取のさせ方に準じたもの、あるいは試験系を設計するためにそれらを改変したものとすることができる。
−食品組成物−
本発明の血圧上昇抑制用食品組成物は、少なくとも本発明の血圧上昇抑制剤を含有し、さらに食品組成物および飲料組成物それぞれの形態に適合したその他の成分を含有する。言い換えれば、本発明の血圧上昇抑制用食品組成物は、血圧上昇を抑制するという作用効果を賦与するための成分(添加物質)として本発明の血圧上昇抑制剤が添加されている、食品組成物である。
なお、食品組成物は、血圧上昇抑制剤の有効成分であるブタ軟骨抽出物の主成分であるコンドロイチン硫酸を含有するが、組成物として製造されていない天然の素材またはその加工品、例えば調理用のブタ軟骨自体は、本発明の食品組成物には該当しない。調製されたブタ軟骨抽出物が添加(トッピング等)された食肉加工品、惣菜、その他の飲食品であれば、本発明の食品組成物に該当する。
本発明の食品組成物は、高血圧症を現に発症している、または発症のおそれのある(予備軍である)、ヒト(患者)またはヒト以外の哺乳動物(実験動物、ペット等)に摂取させることができる。本発明の好ましい実施形態において、本発明の血圧上昇抑制用食品組成物は、高血圧症の発症のおそれのある(予備軍である)ヒト、例えば血圧値がI度高血圧(収縮期血圧が140〜159mmHg、かつ/または拡張期血圧が90〜99mmHg)、あるいは正常高値血圧(収縮期血圧が130〜139mmHg、かつ/または拡張期血圧が85〜89mmHg)であるヒトに摂取させることにより、高血圧症の予防または症状の改善を期待するためのものである。本発明の血圧上昇抑制用食品組成物は、血圧値がIII度高血圧(収縮期血圧が180mmHg以上、かつ/または拡張期血圧が110mmHg以上)、II度高血圧(収縮期血圧が160〜179mmHg、かつ/または拡張期血圧が100〜109mmHg)、あるいは孤立性収縮期高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上、かつ拡張期血圧が90mmHg未満)であるヒトが摂取してもよく、高血圧症の症状の改善や悪化の防止を期待することができる。
食品組成物の形態は特に限定されるものではなく、本発明の血圧上昇抑制剤を配合することのできる公知の各種の飲食品やサプリメントと同様に、粉状、顆粒状、固形状、粒状、ゼリー状、液状、油状、錠剤などにすることができる。本発明の食品組成物の形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤(顆粒剤)、その他の剤型のサプリメント(栄養補助食品);清涼飲料(炭酸飲料、ノンアルコール飲料、ジュース、コーヒー飲料、茶系飲料、ミネラルウォーター、スポーツ飲料など)、乳飲料、豆乳飲料、発酵乳、乳酸菌飲料、ココア、アルコール飲料(ビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュール、日本酒、甘酒、ワイン、焼酎など)、インスタント粉末から調製される飲料、その他の飲料;ゼリー、菓子類(ビスケット、クッキー、チョコレートなど)、パン、シリアル、惣菜、調味料(ドレッシングなど)、その他の食品が挙げられる。
食品組成物中の本発明の血圧上昇抑制剤の含有量、またはその有効成分としてのブタ軟骨抽出物(特にそこに含まれるコンドロイチン硫酸)の含有量は、本発明の血圧上昇抑制剤によって血圧上昇を抑制する作用効果が奏される範囲にある限り、特に限定されるものではない。それらの含有量は、食品組成物の形態や製造方法などを考慮して、また必要に応じて一食または一日あたりの有効成分量または摂取される食品組成物の重量などを考慮して、適宜設定することができる。
本発明の食品組成物がタブレット(錠剤、カプセル、粒状等)または固形状の食品の形態をとる場合、本発明の血圧上昇抑制剤に加えて、一般的または公知のサプリメントまたは固形状の食品が含有する各種の成分、例えば賦形剤、甘味料、着色料、香料およびその他の成分(各種の食材等)から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。タブレットまたは固形状の食品中の、本発明の血圧上昇抑制剤(ブタ軟骨抽出物)またはその有効成分であるコンドロイチン硫酸の含有量は特に限定されるものではなく、適宜設定することができるが、例えば、ブタ軟骨抽出物の含有量は、その中のコンドロイチン硫酸が、タブレットまたは固形状の食品の全質量に対して、HPLC法に基づく測定値として、0.1重量%以上または10重量%以上(通常は90重量%以下)となる範囲で調節することができる。
なお、例えば食品組成物がコンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物および賦形剤からなるタブレットであると仮定した場合、当該食品組成物の重量から(成分分析等により定量した)賦形剤の重量を除外することによりコンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物の重量を求めることができ、また賦形剤中にコンドロイチン硫酸は存在しないので当該食品組成物中のコンドロイチン硫酸は全てブタ軟骨抽出物に由来するとみなすことができるから、当該食品組成物の製造に用いられたブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の含有率を推定することが可能である。この際、ブタ軟骨抽出物を含む食品組成物を試料としたときのコンドロイチン硫酸の含有量の測定値は、(食品組成物に配合されていない)ブタ軟骨抽出物自体を試料としたときの含有量の測定値よりも低くなる傾向にある(おそらく食品組成物を試料とする際に必要となる酵素処理による影響と思われる)ことから、その傾向を上記の推定に反映させることもできる。
なお、サプリメントは、ブタ軟骨抽出物100%、すなわち本発明の血圧上昇抑制剤100%の形態としてもよい。このような実施形態における「サプリメント」は、本発明の血圧上昇抑制剤しか含有しない、つまり本発明の血圧上昇抑制剤のみからなる物質であるため「食品組成物」には該当しないが、本発明の「血圧上昇抑制剤」の実施形態の一つであって、食品組成物に配合されるのではなく、そのまま摂取されるという使用が想定されているもの、とみなすことができる。
本発明の食品組成物が液状またはゼリー状の食品(飲料)の形態をとる場合、本発明の血圧上昇抑制剤に加えて、一般的または公知の液状またはゼリー状の食品(飲料)が含有する各種の成分、例えば水(又は炭酸水)、コーヒー抽出物、茶葉抽出物、果汁、その他の植物原料抽出物、乳、豆乳、発酵乳、甘味料、酸味料、着色料、香料、増粘剤(増粘多糖類)およびゲル化剤から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。液状またはゼリー状の食品(飲料)中の本発明の血圧上昇抑制剤の含有量は特に限定されるものではなく、適宜設定することができるが、例えば、ブタ軟骨抽出物の含有量は、その中のコンドロイチン硫酸が、液状またはゼリー状の食品(飲料)の全質量に対して、HPLC法に基づく測定値として、0.1重量%以上または10重量%以上(通常は90重量%以下)となる範囲で調節することができる。
本発明の食品組成物は、成分の一つとして本発明の血圧上昇抑制剤を加える工程をさらに含むこと以外は、従来の食品組成物と同様の方法により製造することができる。血圧上昇抑制剤としてのブタ軟骨抽出物は、前述したような方法によりあらかじめ調製しておく、または製品として購入しておくなどして、食品組成物の製造の前にあらかじめ用意しておけばよい。
本発明の食品組成物は、保健機能食品(すなわち、栄養機能食品、特定保健用食品および機能性表示食品)として、また治療食(すなわち、治療の目的を果たすもの、又は、医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、又は、介護食等として、製造することもできる。
本発明の食品組成物の一食分または一日あたりの摂取目安量は、食品組成物の形態や、本発明の血圧上昇抑制剤の作用効果が奏されることを期待する対象の年齢、体重、性別や、摂取前の指標値(血圧)などに応じて、また非臨床的または臨床的な試験結果等に基づいて、適宜設定することができる。本発明の一つの側面において、本発明の食品組成物は、ブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の摂取量が、通常100mg/日以上、好ましくは300mg/日以上(例えば、HPLC法に基づくコンドロイチン硫酸の含有率が60重量%だとすれば、ブタ軟骨抽出物として500mg/日以上)、通常は2000mg/日未満となるよう摂取されるものである。
本発明の食品組成物の摂取期間も適宜設定することができ、長期間に亘って繰り返し、また日常的に、摂取することが好ましい。本発明の一つの側面において、本発明の食品組成物は、4週間以上、8週間以上または12週間以上にわたって摂取されるものである。
本発明の食品組成物の用途、すなわち本発明の食品組成物が血圧上昇抑制用であることは、直接的にまたは間接的に表示することができる。直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所または手段による、広告・宣伝活動である。本発明の食品組成物を機能性表示食品として製造する場合は、例えば「本品にはブタ軟骨抽出物が含まれます。ブタ軟骨抽出物には、血圧の上昇を抑制する機能があることが報告されており、血圧が上昇しがちな方に適しています。」などのように、機能性成分として含まれるブタ軟骨抽出物の作用効果(血圧上昇抑制効果)に基づく機能性を表示することができる。
(1)被験食および対照食の製造
コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物として、市販されている商品「P−コンドロイチンNHZ」(日本ハム株式会社)を用いた。常法に従って、この商品と賦形剤とを混合して錠剤を製造し、被験食とした。また対照食(プラセボ)として、上記コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を含まない錠剤も製造した。被験食および対照食はアルミ袋で包装されており、互いに外観および味で識別できないことを確認した。被験食および対照食の栄養成分を表1に示す。
なお、表中の「コンドロイチン硫酸」の配合量(350mg)は、「P−コンドロイチンNHZ」に含まれている「コンドロイチン硫酸」の被験食への配合量を表している。被験食に使用した「P−コンドロイチンNHZ」中のコンドロイチン硫酸の含有率をHPLC法で測定したところ62.2重量%であった。この測定値を参考に、製品により含有率に多少の(品質上許容される)バラツキがでることや、「P−コンドロイチンNHZ」(コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物、本発明の剤)についての測定値よりも被験食についての測定値の方が(HPLC法での測定値同士を比較したとしても)低くなる傾向にあることを考慮し、被験食(1日摂取量あたり)への「コンドロイチン硫酸」の配合量の測定値が概ね350mg以上となるようにするために、604mgの「P−コンドロイチンNHZ」を配合した(604×62.2%≒376であり、各被験食について概ね350mg以上の配合量(測定値)を確保するために十分と考えられる)。
また、被験食に使用した「P−コンドロイチンNHZ」中のコンドロイチン硫酸の含有率を、カルバゾール硫酸法により別途測定したところ、67.4重量%であった。この含有率は、「P−コンドロイチンNHZ」の製品規格における、カルバゾール硫酸法に基づくコンドロイチン硫酸の含有率「65重量%以上80重量%以下」を満たしている。表1中のHPLC法に基づくコンドロイチン硫酸の配合量「350mg」(概ね350mg以上)は、カルバゾール硫酸法に基づけば「400mg」(概ね400mg以上)と表すことができる(604×67.4%≒407であり、各被験食について概ね400mg以上の配合量(測定値)を確保するために十分と考えられる)。
Figure 2020110066
「P−コンドロイチンNHZ」の製造工程の概略は次の通りである。原料(凍結豚軟骨)を粉砕し、タンパク質分解酵素で処理する。固形物および脂肪を分離し、精製する。精製物を加熱殺菌処理し、減圧濃縮した後、凍結乾燥する。凍結乾燥物を粉砕し、篩にかけ、容器に充填し、製品とする。
(2)血圧上昇の抑制効果の評価試験
上記のようにして製造したコンドロイチン硫酸含有食品(被験食、1日あたり錠剤4粒1000mg中に350mg(HPLC測定法)のコンドロイチン硫酸を含有)摂取群と、対照食(プラセボ、1日あたりコンドロイチン硫酸を含有しない錠剤4粒1000mg)摂取群で、12週間の摂取試験を行った。
摂取開始日から一定期間後の血圧の結果を表2に示す。被験食群はプラセボ群と比較して、拡張期血圧は摂取4週間後、8週間後および12週間後のいずれでも変化値として有意な低下がみられた。
Figure 2020110066
さらに、拡張期血圧の低下効果について確認するため、摂取開始日の血圧が高め(I度
高血圧または正常高値血圧)の被験者によるサブグループ解析を実施したところ、被験食群の拡張期血圧の絶対値は、摂取開始日(89±4 mmHg)と比較して、摂取12週間後(80±8 mmHg)で有意な低下がみられた(反復測定分散分析後の、Dunnettの多重比較検定、p<0.05)。
これらの結果から、コンドロイチン硫酸含有食品が血圧の上昇を抑制する効果を有していること、特に血圧が高めの方の血圧コントロールに有用であることが示唆された。

Claims (3)

  1. コンドロイチン硫酸含有ブタ軟骨抽出物を有効成分として含むことを特徴とする血圧上昇抑制剤。
  2. 前記ブタ軟骨抽出物中のコンドロイチン硫酸の含有率が、HPLC法による測定値として50重量%以上75重量%以下である、請求項1に記載の血圧上昇抑制剤。
  3. 請求項1または2に記載の血圧上昇抑制剤を含む、血圧上昇抑制用食品組成物。
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