JP2020094169A - 付着防止塗料用樹脂組成物、付着防止塗料、及び部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗膜表面に凹凸構造を付与せずに、高親水性物質の付着防止性に優れ、基材との密着性に優れる付着防止塗料用組成物、又は付着防止塗料用組成物から得られる塗膜と、基材と、を有する部材を提供する。【解決手段】エチレンオキシド基を含む(メタ)アクリル樹脂を使用することでエチレンオキシド基と水の高い親和性、大きい排除体積効果、高い運動性を有する。当該(メタ)アクリル樹脂は、硬化したときに、高親水性物質の付着を防止できる。【選択図】なし
Description
本発明は、付着防止塗料用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは親水性が高い物質(例えば、雪氷、又は、藻類などの水生生物等)の付着物の付着を防止するために好適な樹脂組成物に関する。
塗料には様々な機能が要求される。例えば、基材の外観を保護するために、付着防止性は塗料に求められる機能の一例である。付着物としては様々な物質があるが、近年、親水性が高い物質(以降、高親水性物質ともいう)の付着防止への関心が高まっている。例えば、雪氷の付着防止、及び藻類、貝類、甲殻類等の水生生物等の付着防止である。
雪氷の付着は、信号機や道路標識への積雪による交通障害や、鉄塔や電線への着雪による建造物の倒壊等様々な被害や障害をもたらす。これらの雪氷の除去のために、現在、人力による物理的な除去や、ヒーターによる溶雪等の方法がとられているが、メンテナンスコストやエネルギーコストが課題である。着雪氷防止塗料は、メンテナンスフリーで、エネルギーもかからないことから、近年注目を集めている(非特許文献1)。
従来の着雪氷防止塗料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系の撥水性材料を使用して、水又は氷と基材間の分子間力を低減させる方法や、塗膜表面に凹凸構造を作製し、水又は氷との接触面を低減する方法、さらにはこれらを組み合わせた方法で雪氷の付着を防止していた(特許文献1〜3)。
また、水生生物の付着は、船舶等の船底、原子力・火力発電所等の冷却水を取り込む送水設備、養殖網、漁具、桟橋、ドック等の水中構造物の機能低下や機能障害をもたらす。しかしながら、水中構造物に付着した水生生物を定期的に物理的に除去することは一般に容易ではない。付着した水生生物を定期的に掻き落とすなどの機械的な除去方法も一般的であったが、近年は水生生物の付着防止に使用できる防染塗料が求められている。
吉田光則、外12名、「着雪氷防止技術に関する研究(第1報)」、北海道立工業試験場報告No.292、1993
しかし、例えば、雪氷の付着防止に用いるPTFE等のフッ素系の撥水材料は一般的に高価であり、有機溶剤への溶解性が低い。そのため、塗料用フッ素樹脂として、フルオロオレフィンと種々の炭化水素を共重合した素材が用いられているが、PTFEと比較して雪氷に対する付着防止効果が低い。
また、表面に凹凸構造を作製した塗膜では、凹凸内部に雪氷が入った状態で固着されると、アンカー効果によって雪氷が塗膜に強く付着する。
本発明は上記現状に鑑み、なされたものであり、塗膜表面に凹凸構造を付与せずに、雪氷及び水生生物等の高親水性物質の付着防止性に優れ基材との密着性に優れる付着防止塗料用組成物、又は付着防止塗料用組成物から得られる塗膜と、基材と、を有する部材を提供するものである。
本発明は、次のものに関する。
[1]下記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂を含む、付着防止塗料用樹脂組成物。
(一般式(I)中、R1はメチル基又は水素を表し、R2は、水酸基又は置換基を有してもよい炭素数1〜60の炭化水素基を表す。mは1〜100の整数を表す。)
[2]前記一般式(I)で表される構造単位が前記(メタ)アクリル樹脂の構造単位中、単量体基準で1〜60質量部である、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[3]前記(メタ)アクリル樹脂のエチレンオキシド基価が0.9以上である、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[4]前記(メタ)アクリル樹脂は、水の静的接触角が80°以下となる親水性を有する、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[5]前記(メタ)アクリル樹脂が、さらに下記一般式(II)で表される構造単位を含む、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
(一般式(II)中、R3はメチル基又は水素を表し、R4は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、同一又は相異なってもよく、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基からなる群か
ら選ばれる置換基を表し、少なくとも1つ以上が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を表す。)
[6]さらに溶媒を含む、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[7]上記付着防止塗料用樹脂組成物を含む、付着防止塗料。
[8]上記付着防止塗料が着雪氷防止用又は水生生物付着防止用である付着防止塗料。
[9]上記付着防止塗料用樹脂組成物から得られる塗膜と、基材と、を備える部材。
[1]下記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂を含む、付着防止塗料用樹脂組成物。
[2]前記一般式(I)で表される構造単位が前記(メタ)アクリル樹脂の構造単位中、単量体基準で1〜60質量部である、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[3]前記(メタ)アクリル樹脂のエチレンオキシド基価が0.9以上である、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[4]前記(メタ)アクリル樹脂は、水の静的接触角が80°以下となる親水性を有する、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[5]前記(メタ)アクリル樹脂が、さらに下記一般式(II)で表される構造単位を含む、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
ら選ばれる置換基を表し、少なくとも1つ以上が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を表す。)
[6]さらに溶媒を含む、上記付着防止塗料用樹脂組成物。
[7]上記付着防止塗料用樹脂組成物を含む、付着防止塗料。
[8]上記付着防止塗料が着雪氷防止用又は水生生物付着防止用である付着防止塗料。
[9]上記付着防止塗料用樹脂組成物から得られる塗膜と、基材と、を備える部材。
本発明によれば、硬化したときに付着防止性及び基材との密着性に優れる付着防止塗料用樹脂組成物及び付着防止塗料用樹脂硬化物、ならびに付着防止塗料用樹脂から得られる塗膜と、基材と、を備える部材を提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書等において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書等中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書等中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書等において組成物中の各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書等において「透明性に優れる」とは、可視光の透過性が90%以上(膜厚30μm換算)であることを意味する。
本明細書等において「密着性に優れる」とは、クロスカット試験後に残存する塗膜が80%以上であることを意味する。
<付着防止塗料用樹脂組成物>
本実施形態の付着防止塗料用樹脂組成物は、下記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂を含む。
本実施形態の付着防止塗料用樹脂組成物は、下記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂を含む。
本実施形態のアクリル樹脂は、一般式(I)中のエチレンオキシド(EO)基が水との高い親和性、大きい排除体積効果、及び高い運動性を有する。これらの特性によって高親水性物質の付着を抑制することができる。このため、本実施形態のアクリル樹脂は、上記構成とすることで、硬化したときに、高親水性物質の付着防止性、及び基材との密着性に優れる。
さらに、高親水性物質が雪氷の場合、本実施形態のアクリル樹脂の一般式(I)中のEO基が水と親和することによって氷点下で凍結しない不凍水層が形成される。この不凍水層が塗膜と雪氷の間に潤滑層として存在することで、付着した雪氷が滑落しやすくなり、その結果、塗膜への雪氷等の付着を阻害し、抑制すると推察される。また、PTFEは高価であることに加え、塗膜の透明性に劣るものであるところ、本実施形態のアクリル樹脂は、PTFEのような微粒子等を添加しないため安価で汎用性が高く、透明性に優れる。したがって、本実施形態のアクリル樹脂は、雪氷の付着防止性及び透明性に優れた付着防止塗料用樹脂組成物として機能する。この結果、視認性を確保しつつ、着雪等による様々な被害や障害を抑制することができる。
本明細書等において、「雪氷の付着防止性に優れる」とは、−4〜−20℃の範囲で、着氷力が後述する実施例における比較例1のメタクリル酸メチルポリマーより低いことを意味する。
また、さらに、高親水性物質が生体分子の場合、本実施形態のアクリル樹脂は、生体分子の付着を抑制することができる。そのため、本実施形態のアクリル樹脂は、藻類、イガイ等の貝類、フジツボ等の甲殻類などの水生生物の付着防止塗料用樹脂組成物としても用いることができる。
本実施形態のアクリル樹脂は、環境に配慮した水生生物の付着防止塗料用樹脂組成物を得ることができる。
なお、付着防止塗料用樹脂組成物の用途はこれらに限定されず、例えば、カビ、タンパク質、バクテリア等の付着防止塗料用樹脂組成物としても用いることができる。
以下、一般式(I)中の各成分について説明する。
一般式(I)中、R1はメチル基又は水素を表し、R2は水酸基又は置換基を有してもよい炭素数1〜60の炭化水素基を表す。炭素数1〜60の炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
一般式(I)中、mは特に限定されないが、単量体の入手容易性の観点から、1〜100であることが好ましく、1〜60であることがより好ましい。
前記一般式(I)で表される構造単位は、1〜1500個が結合してもよく、前記(メタ)アクリル樹脂の構造単位中、単量体で1〜60質量部であり、10〜40質量部であることがより好ましい。前記一般式(I)で表される構造単位を前述した範囲内である場合、塗膜の鉛筆硬度を確保でき、塗膜として好適であり、高親水性物質に対する付着抑制効果も高い。
前記下記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂のEO基価は0.9mmol/g以上であり、0.9〜10mmol/gの範囲が好ましく、2.5〜8mmol/gの範囲がより好ましく、4.5〜8mmol/gの範囲がことさら好ましい。EO基価が前述した範囲内である場合、高親水性物質に対する付着抑制効果が高く、塗膜の耐水性も高い。
ここでEO基価とは、単位重量の乾燥樹脂に対するEO基のモル数を示したものである。
前記一般式(I)で表される構造単位から誘導される化合物としては、例えば、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、メトキシポリエチレングリコール−アクリレート、メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル樹脂は、さらに下記一般式(II)で表される構造単位を含んでもよい。前記一般式(II)で表される構造単位を有することで、ガラス基板やポリ塩化ビニル板等の基材への密着性がさらに向上するため好ましい。
一般式(II)中、R3はメチル基又は水素を表し、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、同一又は相異なってもよく、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基からなる群から選
ばれる置換基を表し、少なくとも1つ以上が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有する。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。R5、R6、及びR7で表される置換基としては、例えば、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フッ素
原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
ばれる置換基を表し、少なくとも1つ以上が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有する。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。R5、R6、及びR7で表される置換基としては、例えば、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フッ素
原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
前記一般式(II)で表される構造単位は、1〜1500個が結合してもよく、前記(メタ)アクリル樹脂の構造単位中、単量体で1〜80質量部であり、5〜50質量部であることがより好ましい。
前記一般式(II)で表される構造単位から誘導される化合物としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、本実施形態のアクリル樹脂は、水の静的接触角が80°以下であることが好ましく、70°以下であることがより好ましい。本実施形態のアクリル樹脂が、水の静的接触角が80°以下となる親水性を有する場合、基材と容易になじむことができ、基材表面を保護することができる。本明細書等における「水の静的接触角」とは、実施例に記載の方法により測定したもののことを示す。
前記(メタ)アクリル樹脂は塗工を容易にするために、さらに溶媒を含んでもよい。溶媒としては特に限定されないが、環境適合性、及び基材を侵さない観点から、アルコール系溶媒又は水、もしくはこれらの混合溶媒が好ましい。
アルコール系溶媒としては、塗料に含まれる成分を溶解させることができる溶媒が好ましく用いられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記付着防止塗料用樹脂組成物を塗工する基材は特に限定されず、ガラス、ポリカーボネート、アルミ等を例示することができる。基材の形状は特に限定されず、平滑であっても凹凸処理が施されてよい。
着雪氷防止用塗料や水生生物付着防止用塗料等の付着防止塗料は、前記付着防止塗料用樹脂組成物を含むことが好ましい。前記付着防止塗料用樹脂組成物の機能を付着防止塗料に付与することができる。
また、部材は、前記付着防止塗料用樹脂組成物から得られる塗膜と基材を備えている。
前記付着防止塗料用樹脂組成物の機能を部材に付与することができる。
前記付着防止塗料用樹脂組成物の機能を部材に付与することができる。
前記付着防止塗料用樹脂組成物の塗工方法は特に制限されず、スプレー塗工、バーコート法、刷毛塗等が例示できる。また、乾燥する際の雰囲気は大気中、窒素等の不活性雰囲気中等のいずれを選択してもよい。また、組成条件、作業効率等を鑑みて加熱をしてもよい。
本実施形態の付着防止塗料用樹脂組成物が硬化した付着防止塗料用樹脂硬化物は、基材を付けたまま付着防止塗料硬化物付基材として用いることもでき、必要に応じて、基材から剥がして用いることもできる。
また、付着防止塗料用樹脂硬化物付基材において、付着防止塗料用樹脂硬化物は、基材の表面の少なくとも一部に設けられていればよく、基材の一方の面のみに設けられても、両面に設けられてもよい。また、付着防止塗料用樹脂硬化物は、1層でも、2層以上が積層された複数層構造であってもよい。
以上のように、上述の付着防止塗料用樹脂組成物を使用することにより、付着防止塗料用樹脂組成物から得られる塗膜に高親水性物質が付着したとしても、高親水性物質が塗膜から滑落しやすくなり、その結果、塗膜への高親水性物質の付着を阻害し、抑制することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
まず、下記合成例に記載の方法で付着防止用樹脂組成物を準備した。
(合成例1)
撹拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、表1に示す配合比(単位:質量部)で水、2−プロパノール(IPA)、メタクリル酸メチル(MMA)、EO変性アクリルモノマーとして、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル(以下、短鎖EOと記載)を混合し、室温(25℃)で0.5時間窒素バブリングした。その後、反応液の温度を60℃に昇温し、さらに0.5時間窒素バブリングを続けた。ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃で6時間撹拌して、実施例1〜3の付着防止用樹脂組成物を作製した。
(合成例1)
撹拌機、温度計、冷却器を備えた500mL反応容器に、表1に示す配合比(単位:質量部)で水、2−プロパノール(IPA)、メタクリル酸メチル(MMA)、EO変性アクリルモノマーとして、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル(以下、短鎖EOと記載)を混合し、室温(25℃)で0.5時間窒素バブリングした。その後、反応液の温度を60℃に昇温し、さらに0.5時間窒素バブリングを続けた。ラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃で6時間撹拌して、実施例1〜3の付着防止用樹脂組成物を作製した。
(合成例2)
上記合成例1のEO変性アクリルモノマーの代わりにブレンマーPME−1000(日油株式会社製、メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート、以下、長鎖EOと記載)を使用した以外は、上記合成例1と同様の手順を経て、実施例4〜7の付着防止用樹脂組成物を作製した。
上記合成例1のEO変性アクリルモノマーの代わりにブレンマーPME−1000(日油株式会社製、メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート、以下、長鎖EOと記載)を使用した以外は、上記合成例1と同様の手順を経て、実施例4〜7の付着防止用樹脂組成物を作製した。
(合成例3)
溶媒としてIPAの代わりにn−プロパノールを使用し、水を使用しなかった。また、KBM−503(信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を添加した以外は、上記合成例1と同様の手順を経て、実施例8の付着防止用樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を室温まで冷却すると、ワックス状の固体となった。
溶媒としてIPAの代わりにn−プロパノールを使用し、水を使用しなかった。また、KBM−503(信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を添加した以外は、上記合成例1と同様の手順を経て、実施例8の付着防止用樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を室温まで冷却すると、ワックス状の固体となった。
(合成例4)メタクリル酸メチル樹脂の合成
EO変性アクリルモノマーを混合しなかった以外は合成例1と同様に合成し、比較例1の付着防止用樹脂組成物を作製した。
EO変性アクリルモノマーを混合しなかった以外は合成例1と同様に合成し、比較例1の付着防止用樹脂組成物を作製した。
次に、下記塗工例に記載の方法で各部材を準備した。
(塗工例1)
前記合成例1、2、及び4の付着防止用樹脂組成物を、厚さ1.2〜1.5mmのガラス基板上又はポリカーボネート(以下、PCと記載)上に、ギャップ200μmでバーコート法により塗布し、室温(25℃)で2時間程度乾燥させることで厚さ30μmの付着防止用樹脂組成物が塗工された実施例1〜7及び比較例1の部材を作製した。
(塗工例1)
前記合成例1、2、及び4の付着防止用樹脂組成物を、厚さ1.2〜1.5mmのガラス基板上又はポリカーボネート(以下、PCと記載)上に、ギャップ200μmでバーコート法により塗布し、室温(25℃)で2時間程度乾燥させることで厚さ30μmの付着防止用樹脂組成物が塗工された実施例1〜7及び比較例1の部材を作製した。
(塗工例2)
前記合成例3の付着防止用樹脂組成物に塗工前ワニスの不揮発分(NV)が30%、溶媒比がn−プロパノール:純水=4:1の質量比となるように、純水とn−プロパノールで希釈した。希釈後、しばらく撹拌してワックス状固体を溶解させた。その後、n−プロパノールで10wt%に希釈した硬化触媒(ビス(エチルアセトアセタト)(2、4−ペンタンジオナト)アルミニウム 2−プロパノール溶液)を塗料100質量部に対して、0.3質量部添加した以外は、塗工例1と同様の手順で、付着防止用樹脂組成物が塗工された実施例8の部材を作製した。
前記合成例3の付着防止用樹脂組成物に塗工前ワニスの不揮発分(NV)が30%、溶媒比がn−プロパノール:純水=4:1の質量比となるように、純水とn−プロパノールで希釈した。希釈後、しばらく撹拌してワックス状固体を溶解させた。その後、n−プロパノールで10wt%に希釈した硬化触媒(ビス(エチルアセトアセタト)(2、4−ペンタンジオナト)アルミニウム 2−プロパノール溶液)を塗料100質量部に対して、0.3質量部添加した以外は、塗工例1と同様の手順で、付着防止用樹脂組成物が塗工された実施例8の部材を作製した。
<鉛筆硬度>
前記PC上に付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、塗膜の鉛筆硬度をJISK5600−5−4に則って、安田精機製作所No.553−M鉛筆引っかき硬度試験機を用いて測定した。きず跡が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を塗膜の鉛筆硬度とした。
前記PC上に付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、塗膜の鉛筆硬度をJISK5600−5−4に則って、安田精機製作所No.553−M鉛筆引っかき硬度試験機を用いて測定した。きず跡が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を塗膜の鉛筆硬度とした。
<着氷力測定>
前記PC上に付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、着氷力を測定した。塗膜上に、外径3.0cm、内径2.5cm、高さ1.5cmのSUSリングを乗せ、リング内を約4mLの純水で満たした後に、−4℃、−9℃、−20℃の恒温槽中に少なくとも1時間静置して塗膜表面に氷柱を作製した。作製した氷柱に水平方向から荷重を加えていき、付着した氷が剪断はく離するまでの最大応力を測定した。測定した最大応力値を氷の付着面積で除した値を算出し、着氷力として定義した。上記の測定を少なくとも5回繰り返して得られた着氷力の平均値を求めた。
前記PC上に付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、着氷力を測定した。塗膜上に、外径3.0cm、内径2.5cm、高さ1.5cmのSUSリングを乗せ、リング内を約4mLの純水で満たした後に、−4℃、−9℃、−20℃の恒温槽中に少なくとも1時間静置して塗膜表面に氷柱を作製した。作製した氷柱に水平方向から荷重を加えていき、付着した氷が剪断はく離するまでの最大応力を測定した。測定した最大応力値を氷の付着面積で除した値を算出し、着氷力として定義した。上記の測定を少なくとも5回繰り返して得られた着氷力の平均値を求めた。
<水の接触角測定>
前記PC上に付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、塗膜表面の水の静的接触角を、JISR3257に則って静滴法によって測定した。水滴の容量は2.0μLとした。静的接触角は着滴から液滴の安定する1秒後の値を測定した。10か所で測定して得られた静的接触角の平均値を求めた。
前記PC上に付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、塗膜表面の水の静的接触角を、JISR3257に則って静滴法によって測定した。水滴の容量は2.0μLとした。静的接触角は着滴から液滴の安定する1秒後の値を測定した。10か所で測定して得られた静的接触角の平均値を求めた。
<付着性試験>
前記付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、塗膜の付着性をJISK5600−5−6に則ってクロスカット法によって測定した。カッターナイフを用いて1mm間隔に直行する11本の切り込みを部材に入れ、部材からテープを引きはがした後に残存するクロスカット部分の数を記録した。
前記付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を用いて、塗膜の付着性をJISK5600−5−6に則ってクロスカット法によって測定した。カッターナイフを用いて1mm間隔に直行する11本の切り込みを部材に入れ、部材からテープを引きはがした後に残存するクロスカット部分の数を記録した。
<EO基価の計算>
乾燥樹脂1gに対するエチレンオキシド基のモル数をEO基価として定義した。EO基価は次式に従って算出した。
乾燥樹脂1gに対するエチレンオキシド基のモル数をEO基価として定義した。EO基価は次式に従って算出した。
EO基価(mmol/g)=1000×(m×y)/(Mnx×x+Mny×y)
ここでmは前記一般式(I)で表される構造単位中のEO基の鎖長、yは(メタ)アクリル樹脂の構造単位中の前記一般式(I)で表される構造単位の単量体基準でのモル比、xは(メタ)アクリル樹脂の構造単位中の前記一般式(I)で表される構造単位以外の構造単位の単量体基準でのモル比を示す。また、Mnyは、前記一般式(I)で表される構造単位の分子量、Mnxは、前記一般式(I)で表される構造単位以外の構造単位の分子量を示す。式中(m×y)は(メタ)アクリル樹脂1mol中のEO基のモル数を表し、(Mnx×x+Mny×y)は(メタ)アクリル樹脂1molの乾燥重量を示す。
表2に、実施例1〜8の部材、比較例1の部材、PTFEを使用した比較例2の部材、及びガラスを使用した比較例3の部材の上記測定結果をまとめて示す。
表2より、実施例1〜8の前記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂からなる付着防止塗料用樹脂組成物は、比較例1の前記一般式(I)で表される構造単位を有さない(メタ)アクリル樹脂からなる付着防止塗料用樹脂組成物(比較例1)と比較して、−4〜−20℃の全温度域で着氷力が低減した。
実施例1〜3の測定結果に示すように、短鎖EOの導入量を増加させると着氷力が低減した。また、実施例4〜7の測定結果に示すように長鎖EOの導入量を増加させた場合も、同様に着氷力が低減した。
実施例1〜3と実施例4〜7を比較すると、EO基の鎖長の違いは着氷力へ影響せず、EO基価が増加することによって付着防止塗料用樹脂組成物の鉛筆硬度は低下して軟質になり、軟質のものが硬質のものに比べて着氷力が小さい傾向が確認できた。
実施例3、6、7、8の部材は撥水材料である比較例2のPTFEに比べて、−4℃、−9℃での着氷力が小さい。このため、少なくとも−4〜−9℃の温度域では、本実施例の付着防止塗料用樹脂組成物がPTFEに比べて優れた着雪氷防止材料であることが明らかである。
実施例1〜8の前記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂からなる付着防止塗料用樹脂組成物は、静的接触角が80°以下であり、比較例2のPTFEに比べて基材となじみやすいことが確認できた。
実施例8の測定結果に示すように前記一般式(II)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂を含む付着防止塗料用樹脂組成物は、ガラス基材への優れた密着性を有することが確認できた。
<藻の付着試験>
前記(塗工例1)または(塗工例2)と同様の手順でポリ塩化ビニル板(アズワン株式会社製、品番:3−3238−02)上に実施例6、8の樹脂を塗工し、付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を作製した。実施例6の樹脂を塗工した部材を実施例9とし、実施例8の樹脂を塗工した部材を実施例10とした。前記部材を、自然池で採取した水を満たした18L水槽中に、塗工面を上にして静置し、屋内の窓際に1ヶ月間放置した。水温はヒーター(GEX株式会社製、オートヒーターSH55)を用いて、23℃に保持した。1ヶ月後、部材を取出し、流水ですすぎ、藻の付着具合を目視によって以下の基準で評価した。
A:藻が全く付着していない。
B:一部、藻が付着している。
C:全体的に藻が付着している。
前記(塗工例1)または(塗工例2)と同様の手順でポリ塩化ビニル板(アズワン株式会社製、品番:3−3238−02)上に実施例6、8の樹脂を塗工し、付着防止用樹脂組成物が塗工された部材を作製した。実施例6の樹脂を塗工した部材を実施例9とし、実施例8の樹脂を塗工した部材を実施例10とした。前記部材を、自然池で採取した水を満たした18L水槽中に、塗工面を上にして静置し、屋内の窓際に1ヶ月間放置した。水温はヒーター(GEX株式会社製、オートヒーターSH55)を用いて、23℃に保持した。1ヶ月後、部材を取出し、流水ですすぎ、藻の付着具合を目視によって以下の基準で評価した。
A:藻が全く付着していない。
B:一部、藻が付着している。
C:全体的に藻が付着している。
藻の付着試験後の塗膜の基材付着性は、前記<付着性試験>と同様の手順で確認した。
表3に、実施例9、10の部材、及び無塗工のポリ塩化ビニル板を使用した比較例4の部材の、上記藻の付着試験の結果を示す。
表3より、実施例9、10の前記一般式(I)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂からなる付着防止塗料用樹脂組成物は、比較例4の無塗装のポリ塩化ビニル板と比較して、藻の付着を抑制することができた。
実施例10の測定結果に示すように前記一般式(II)で表される構造単位を有する(メタ)アクリル樹脂を含む付着防止塗料用樹脂組成物は、藻の付着試験後においても、ポリ塩化ビニル板への優れた付着性を有することが確認できた。
Claims (9)
- 前記一般式(I)で表される構造単位が前記(メタ)アクリル樹脂の構造単位中、単量体基準で1〜60質量部である、請求項1に記載の付着防止塗料用樹脂組成物。
- 前記(メタ)アクリル樹脂のエチレンオキシド基価が0.9以上である、請求項1又は2に記載の付着防止塗料用樹脂組成物。
- 前記(メタ)アクリル樹脂は、水の静的接触角が80°以下となる親水性を有する、請求項1から3のいずれかに記載の付着防止塗料用樹脂組成物。
- さらに溶媒を含む、請求項1から5のいずれかに記載の付着防止塗料用樹脂組成物。
- 請求項1から6のいずれかに記載の付着防止塗料用樹脂組成物を含む、付着防止塗料。
- 請求項7に記載の付着防止塗料が着雪氷防止用又は水生生物付着防止用である付着防止塗料。
- 請求項1から6のいずれかに記載の付着防止塗料用樹脂組成物から得られる塗膜と、基材と、を備える部材。
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