以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る開閉装置を備えた車両の側面図を、図2は図1のプーリユニットの詳細を示す側面図を、図3はプーリユニットを斜め上方から見た斜視図を、図4はプーリユニットの内部構造を説明する説明図を、図5(a),(b)はガイド板およびケーブルセパレータの構造を説明する斜視図を、図6はプーリケースおよびシールカバーの構造を説明する斜視図を、図7はシールカバーの内側の構造を説明する斜視図を、図8は閉側ケーブル挿通孔の形状を説明する断面図を、図9は閉側ケーブルおよび開側ケーブルの引き出し角度の変化を説明する説明図を、図10はプーリユニットとケーブルガイドとの位置関係を説明する説明図をそれぞれ示している。
図1に示される車両10は、軽自動車規格のワゴンタイプの乗用車である。車両10は車体11を備え、車体11の側部には、乗員等が容易に乗り降り可能な開口部12が形成されている。開口部12は、車両10の前後方向(図中左右方向)に移動されるスライドドア(開閉体)13により、開閉自在となっている。
スライドドア13は、車両用開閉装置(開閉装置)14の駆動により移動される。すなわち、車両用開閉装置14は、スライドドア13を開閉させる。車両用開閉装置14はローラユニット15を備え、当該ローラユニット15は、スライドドア13の車両後方側(図中右側)の端部で、かつ上下方向の略中間部分に配置されている。一方、車体11の開口部12よりも車両後方側で、かつ上下方向の略中間部分には、センターレール(ガイドレール)16が固定されている。
図2に示されるように、ローラユニット15は、本体ブラケット15aを備えている。本体ブラケット15aには、複数のローラ(図示せず)が回転自在に設けられている。また、本体ブラケット15aは、スライドドア13に固定された支持ブラケット(図示せず)に対して、揺動自在に支持されている。具体的には、本体ブラケット15aは、スライドドア13に対して水平方向に揺動自在となっている。
センターレール16は、ステンレス鋼板等をプレス成形することで、断面が略U字形状の棒状に形成されている。そして、センターレール16の車両前方側(図中左側)は、車室内側(図中奥側)に湾曲されている。これにより、ローラユニット15の各ローラがセンターレール16上を走行し、スライドドア13が車体11の側部に沿って車両10の前後方向に移動され、開口部12が開閉される。このとき、ローラユニット15がセンターレール16の車両前方に案内され、スライドドア13の車両後方側が車室内側に引き込まれることで、スライドドア13は車体11の側面に対して面一となる。
なお、スライドドア13の車両前方側の上下部分には、アッパーローラユニットおよびロワーローラユニット(いずれも図示せず)が設けられている。これに対応して、車体11の開口部12の上下部分には、アッパーレールおよびロワーレール(いずれも図示せず)が設けられている。このように、スライドドア13は、車体11に対して、3つのレールおよび3つのローラユニットにより、安定した状態で移動自在に支持されている。
図1に示されるように、車両用開閉装置14は、駆動装置17を備えている。駆動装置17は、スライドドア13の内部に設けられ、正逆回転される回転軸(図示せず)を備えた電動モータ17aと、電動モータ17aにより正逆回転されるドラム17bを収容したドラム部17cと、を備えている。
そして、ドラム17bには、閉側ケーブル18(図3参照)の基端側および開側ケーブル19(図3参照)の基端側がそれぞれ巻き掛けられている。具体的には、閉側ケーブル18が巻き取られると開側ケーブル19が繰り出され、開側ケーブル19が巻き取られると閉側ケーブル18が繰り出されるように、各ケーブル18,19の基端側がドラム17bに巻き掛けられている。
これにより、電動モータ17aを正逆回転させることで、各ケーブル18,19が互いに逆向きに駆動(移動)される。すなわち、各ケーブル18,19は、駆動装置17によって駆動され、閉側ケーブル18が巻き取られると、スライドドア13は開口部12を閉じる方向に移動する。これとは逆に、開側ケーブル19が巻き取られると、スライドドア13は開口部12を開く方向に移動する。
図1ないし図4に示されるように、車両用開閉装置14は、プーリユニット20を備えている。プーリユニット20は、駆動装置17とローラユニット15との間に設けられ、ドラム17bから引き出された閉側ケーブル18および開側ケーブル19を、ローラユニット15の近傍に引き出している。そして、プーリユニット20により、閉側ケーブル18の先端側が車体11の前方側に配策され、開側ケーブル19の先端側が車体11の後方側に配策されている。つまり、プーリユニット20は、各ケーブル18,19を、それぞれ車体11の前後に振り分ける機能を備えている。
ここで、閉側ケーブル18の先端側は、ケーブルガイド50(図1および図2参照)の車両前方側に固定され、開側ケーブル19の先端側は、ケーブルガイド50の車両後方側に固定されている。
図2ないし図4に示されるように、プーリユニット20は、スライドドア13に固定される第1ユニット部材30と、本体ブラケット15aに固定される第2ユニット部材40と、から構成されている。
第1ユニット部材30は、プラスチック等の樹脂材料よりなる本体部31を備えている。本体部31の内部には、図4に示されるように、中空部31aが形成され、当該中空部31aの内部には、閉側ケーブル18および開側ケーブル19が、互いに非接触の状態でそれぞれ挿通されている。
また、第1ユニット部材30は、プラスチック等の樹脂材料よりなるカバー部材32を備えている。カバー部材32は、本体部31の本体開口部31bを閉塞している。これにより、第1ユニット部材30の内部、つまり中空部31aに挿通された各ケーブル18,19に雨水や埃等が付着することが抑えられる。
なお、図4においては、第1ユニット部材30の内部構造を判り易くするために、本体部31のみを示し、それに装着されるカバー部材32の図示を省略している。さらに、第2ユニット部材40の内部構造を判り易くするために、プーリケース41のみを示し、それに装着されるケーブルセパレータ43およびシールカバー46の図示を省略している。
本体部31とカバー部材32との間には、キャップ部材33が装着されている。キャップ部材33には、一対のケーブル穴33a,33bが所定の間隔で設けられ、これらのケーブル穴33a,33bには、各ケーブル18,19がそれぞれ挿通されている。これにより、中空部31aにおいて、各ケーブル18,19が互いに接触することが防止される。
ここで、閉側ケーブル18および開側ケーブル19は、複数の金属細線を撚って形成され、かつその外周を覆うように樹脂製の外皮(図示せず)が設けられている。中空部31aにおいては、上述のように各ケーブル18,19が互いに接触することが防止されている。したがって、中空部31aにおいて、各ケーブル18,19の外皮に傷が付くことはない。
なお、キャップ部材33は、本体部31およびカバー部材32の双方に対して、段差部DS(図4では本体部31側の段差部DSのみ示す)によって、抜け止めされている。
本体部31およびカバー部材32の長手方向に沿うキャップ部材33寄りの部分(図2および図3中左側)には、スライドドア13に固定される一対の固定脚31c,32aが一体に設けられている。一対の固定脚31c,32aには、金属製のカラー部材31d,32bが装着され、これらのカラー部材31d,32bには、固定ボルト(図示せず)が挿通される。これにより、第1ユニット部材30は、スライドドア13に対して強固に固定される。
なお、カバー部材32は、本体部31に対して、合計4つの固定ねじS(図2では1つのみ示し、図3では2つのみ示す)によって、取り付けられている。
図4に示されるように、本体部31およびカバー部材32の長手方向に沿うキャップ部材33側とは反対側(図中上側)には、第2ユニット部材40のプーリケース41を揺動自在に支持する支持軸34が設けられている。この支持軸34は、本体部31とカバー部材32との間に挟まれるようにして設けられている。そして、支持軸34には、プーリケース41の揺動腕41dが揺動自在に支持されている。
ここで、本体部31およびカバー部材32における支持軸34の周囲には、揺動腕41dの揺動動作をスムーズにするための複数の第1摺接リブ35が設けられている。なお、図4においては、本体部31側の第1摺接リブ35のみが示されている。また、揺動腕41dには、ケーブルセパレータ43(図5(b)参照)が装着されている。これにより、ケーブルセパレータ43は、本体部31およびカバー部材32に対して全面で摺接せずに、それぞれの第1摺接リブ35に摺接される。よって、揺動腕41dは、スムーズに揺動することができる。
さらに、本体部31にカバー部材32を装着した状態で、第1ユニット部材30の支持軸34の近傍には、ユニット開口部30aが形成されている。このユニット開口部30aは、第1ユニット部材30の長手方向で、かつ第2ユニット部材40側に向けて大きく開口され、これにより、第2ユニット部材40は第1ユニット部材30に対して大きく揺動可能となっている。具体的には、図4の矢印SWに示されるように、第2ユニット部材40は、第1ユニット部材30に対して、例えば45°の角度範囲で揺動自在となっている。
このように、第2ユニット部材40を、第1ユニット部材30に対して、支持軸34を中心に揺動自在とすることで、スライドドア13の車体11への引き込み時において、第2ユニット部材40は、ケーブルガイド50(図1および図2参照)の車両前方側の車室内側に湾曲された部分に倣って揺動される。
図2ないし図4に示されるように、第2ユニット部材40は、プラスチック等の樹脂材料よりなるプーリケース41を備え、当該プーリケース41は、本体ブラケット15aに固定されるケース本体41aを有している。ケース本体41aは中空となっており、その内部には、閉側ケーブル18および開側ケーブル19が挿通されている。
そして、ケース本体41aには、金属製の金属カラー41bがそれぞれ装着された一対のボルト挿通孔41cが設けられている。これらのボルト挿通孔41cは、図4に示されるように、ケース本体41aの内部を通る各ケーブル18,19を避けた位置に配置されている。
プーリケース41の長手方向に沿う第1ユニット部材30側には、揺動腕41dが設けられている。揺動腕41dの基端側はケース本体41aに連結され、揺動腕41dはケース本体41aよりも幅狭に形成されている。そして、揺動腕41dの先端側は、第1ユニット部材30のユニット開口部30aから中空部31aに入り込んでおり、支持軸34に揺動自在に支持されている。これにより、プーリケース41は、図中矢印SWに示されるように揺動される。
図4および図5に示されるように、揺動腕41dの先端側で、かつ支持軸34の近傍には、支持軸34の軸方向と交差する方向の断面形状が略円弧形状に形成されたガイド板装着部41eが設けられている。このガイド板装着部41eの曲率半径は、ガイド板42(図中網掛け部分)の径方向内側の曲率半径よりも若干大きい曲率半径となっている。これにより、ガイド板42のガイド板装着部41eに対するがたつきが確実に抑えられる。また、ガイド板装着部41eの長手方向両側には、ガイド板42に設けられた一対の係合爪42aがそれぞれ係合される係合凹部41fが設けられている。
なお、ガイド板装着部41eは、支持軸34の径方向外側に設けられている。これにより、第1ユニット部材30に対する第2ユニット部材40の揺動時に、ガイド板装着部41eに装着されたガイド板42は、支持軸34の径方向外側で揺動される。よって、ガイド板42のサイズを大きくすることなく、各ケーブル18,19を、ガイド板42の摺接曲面SFに常時摺接させることができる。
ここで、ガイド板装着部41eに装着されるガイド板42は、例えばステンレス鋼板をプレス加工等することで略円弧形状に形成されている。また、ガイド板42の長手方向両側には、ガイド板42の径方向内側に屈曲して形成された係合爪42aがそれぞれ設けられている。そして、ガイド板42の径方向外側に形成された円弧形状の摺接曲面SFには、車両用開閉装置14(図1参照)の作動時において、各ケーブル18,19が摺接するようになっている。
なお、各ケーブル18,19は、摺接曲面SFに対して、ある程度の摺動抵抗を持って摺接されるが、各ケーブル18,19の外周には樹脂製の外皮が設けられている。そのため、各ケーブル18,19の摺接曲面SFに対する摺動抵抗は、それほど大きくならずに済み、スライドドア13の移動に悪影響を与えることはない。ただし、各ケーブル18,19の摺接曲面SFに対する摺動抵抗をより小さくする場合には、ガイド板42の摺接曲面SFに、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)等の被膜を設ければ良い。
また、ガイド板42は、駆動装置17のドラム17bと、プーリ収容部41hに収容されたプーリ45と、の間に設けられている。すなわち、ガイド板42は、ドラム17bから引き出されて、第1ユニット部材30の中空部31aに挿通された各ケーブル18,19の向きを、プーリ45に向ける機能を備えている。
図5に示されるように、揺動腕41dのガイド板装着部41eの近傍には、ガイド板42に摺接される閉側ケーブル18および開側ケーブル19が、互いに接触するのを防止する突起部41gが設けられている。具体的には、突起部41gは、支持軸34の軸方向と交差する方向に沿うガイド板42との対向部分に配置されている。
そして、突起部41gの突出高さは、突起部41gの先端部分が、ガイド板42の摺接曲面SFに対して殆ど隙間なく近接する高さに設定されている。これにより、ガイド板42に摺接される各ケーブル18,19は、突起部41gによって互いに分離されて、互いに接触することが防止される。
ここで、各ケーブル18,19同士の接触は、特に、ガイド板42の部分において確実に防止しておく必要がある。つまり、ガイド板42の部分の各ケーブル18,19が挿通される部分は幅狭であり、しかも車両用開閉装置14の作動時にはガイド板42の部分で各ケーブル18,19は互いに逆向きに移動されるため、当該部分での各ケーブル18,19の相対速度は高速となる。
よって、各ケーブル18,19を分離しておかないと、各ケーブル18,19同士が容易に接触されて、ひいては各ケーブル18,19の外皮が早期に損傷することが起こり得る。この不具合をより確実に防止するためにも、本実施の形態では突起部41gを設けて各ケーブル18,19を分離している。
さらに、図5(b)に示されるように、揺動腕41dには、ケーブルセパレータ43が装着されている。ケーブルセパレータ43は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、突起部41gと同様に、各ケーブル18,19同士の接触を防止すべく、各ケーブル18,19を確実に分離させる機能を有している。
具体的には、ケーブルセパレータ43の第1ユニット部材30側には、ケーブルセパレータ43の開口部分を2つに分ける橋渡し部43aが設けられている。これにより、ガイド板42に向かう各ケーブル18,19を分離させて、各ケーブル18,19同士の接触が確実に防止される。
さらに、支持軸34の軸方向に沿うケーブルセパレータ43の両側には、複数の第2摺接リブ43bがそれぞれ設けられている。これらの第2摺接リブ43bは、本体部31およびカバー部材32に設けられた複数の第1摺接リブ35(図4参照)と同様の機能を有し、揺動腕41dの揺動動作をスムーズにするものである。
図4に示されるように、プーリケース41の長手方向に沿う揺動腕41d側とは反対側には、プーリ収容部41hが設けられている。さらに、図6に示されるように、プーリ収容部41hのケース本体41a側とは反対側(図中下側)には、プーリ装着用開口部41kが設けられている。そして、プーリ装着用開口部41kから、プーリ45が装着されるようになっている。
また、プーリ収容部41hには、当該プーリ収容部41hをその厚み方向に横切るようにしてプーリ軸44が装着されている。このプーリ軸44は、鋼材により略円柱形状に形成され、プーリ軸44には、プーリ45が回転自在に装着されている。これにより、プーリ45は、プーリ収容部41hに回転自在に収容されている。
ここで、プーリ収容部41hにプーリ45を組み付けるには、まず、プーリ装着用開口部41kからプーリ収容部41hにプーリ45を差し込み、その後、図中矢印M1に示されるように、プーリ収容部41hにプーリ軸44を固定する。これにより、プーリ軸44にプーリ45が回転自在に支持される。
プーリ45は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで略円板状に形成され、その外周部分には、閉側プーリ溝45aおよび開側プーリ溝45bが設けられている。これらのプーリ溝45a,45bは、プーリ軸44(プーリ45)の軸方向に並んで配置されている。そして、閉側プーリ溝45aには閉側ケーブル18が配策され、開側プーリ溝45bには開側ケーブル19が配策されている。
ここで、各プーリ溝45a,45bに対する各ケーブル18,19の配策方向は、図6に示されるように互いに逆向きとなっている。具体的には、閉側プーリ溝45aに配策された閉側ケーブル18は、車両前方側(図中右側)に引き出されている。一方、開側プーリ溝45bに配策された開側ケーブル19は、車両後方側(図中左側)に引き出されている。ここで、各ケーブル18,19の直径寸法D(線径)は、略3.0mm程度となっている。
また、図2に示されるように、プーリケース41のプーリ収容部41hは、センターレール16の近傍に配置されている。つまり、プーリ収容部41hに収容されたプーリ45においても、センターレール16の近傍に配置されている。そして、プーリ45は、閉側ケーブル18および開側ケーブル19の向きを、センターレール16の延在方向、つまり車両前後方向にそれぞれ向けている。
図6に示されるように、プーリ軸44の軸方向に沿うプーリ収容部41hの両側でかつ外側には、シール用位置決め突起41m(図示では一方側のみ示す)がそれぞれ設けられている。これらのシール用位置決め突起41mは、プーリケース41の長手方向と交差する方向に直線状に延びており、シールカバー46のシール本体46aにおける縁部EDが装着される(図9参照)。これにより、シールカバー46がプーリ収容部41hの正規の位置に位置決めされる。
また、プーリ収容部41hの外側には、断面が略U字形状に形成された一対の引っ掛け部41nが一体に設けられている。具体的には、一対の引っ掛け部41nは、プーリ収容部41hの外側かつプーリ45の径方向外側において、互いに対向配置されている。これにより、プーリ軸44の軸方向に沿ってプーリ収容部41hの厚み寸法が増大するのを防止している。なお、一対の引っ掛け部41nには、シールカバー46の掛止片46bがそれぞれ引っ掛けられている。
図6ないし図10に示されるように、プーリ収容部41hには、シールカバー46が装着されている。このシールカバー46は、ゴム等の弾性材料により所定形状に形成され、プーリ収容部41hの内部に雨水等(異物)が侵入するのを抑えるものである。
具体的には、シールカバー46は、略カップ形状に形成されたシール本体46aを備えている。そして、シール本体46aは、プーリ収容部41hのプーリ装着用開口部41kを閉塞し、かつプーリ収容部41hのプーリ軸44の部分を覆っている。これにより、プーリ装着用開口部41kの部分、およびプーリ収容部41hのプーリ軸44の部分から、プーリ収容部41hの内部に雨水等が侵入することが抑えられる。
また、シール本体46aの開口側(図6中上側,図7中手前側および図8中左側)には、一対の掛止片46bが一体に設けられている。これらの掛止片46bは、プーリ収容部41hに設けられた一対の引っ掛け部41nに引っ掛けられるようになっている。
ここで、シールカバー46をプーリ収容部41hに装着するには、図6の矢印M2に示されるように、まず、シールカバー46の開口側をプーリ収容部41hに臨ませて、一対の掛止片46bの先端側を一対の引っ掛け部41nにそれぞれ差し込む。次いで、一対の掛止片46bの先端側を引っ張り、それぞれの掛止片46bをそれぞれの引っ掛け部41nに引っ掛ける。これにより、シール本体46aの開口側にある縁部EDが、プーリ収容部41hに設けられたシール用位置決め突起41mに装着されて、シールカバー46がプーリ収容部41hの正規の位置に装着される(図9参照)。
さらに、シール本体46aの開口側とは反対側(図6中下側,図7中奥側および図8中右側)には、閉側ケーブル挿通孔46cおよび開側ケーブル挿通孔46dが設けられている。これらのケーブル挿通孔46c,46dは、シール本体46aの底部BTの部分に、その長手方向(図6中左右方向)に沿うようにして切り込みを入れることで、スリット状に形成されている。そして、一対のケーブル挿通孔46c,46dは、プーリ収容部41h(プーリケース41)の内外を連通している。
閉側ケーブル挿通孔46cおよび開側ケーブル挿通孔46dは、プーリ軸44(プーリ45)の軸方向に対して、互いに所定量ずれた位置に配置されている。これにより、プーリ45をその軸方向と直交する方向から見たときに、閉側ケーブル挿通孔46cは閉側プーリ溝45aと対向し、開側ケーブル挿通孔46dは開側プーリ溝45bと対向する。
ここで、上述のように各ケーブル挿通孔46c,46dは、プーリ軸44の軸方向に対して、互いに所定量ずれた位置に配置されるが、図9においては、説明の便宜上、各ケーブル挿通孔46c,46dがそれぞれ現れた断面図となっている。
このように、閉側ケーブル挿通孔46cを閉側プーリ溝45aと対向させることで、閉側ケーブル18を閉側ケーブル挿通孔46cから容易に引き出せるようになっている。また、開側ケーブル挿通孔46dを開側プーリ溝45bと対向させることで、開側ケーブル19を開側ケーブル挿通孔46dから容易に引き出せるようになっている。
ここで、図7に示されるように、閉側ケーブル挿通孔46cの長手方向に沿う長さ寸法L1(約25.0mm)は、開側ケーブル挿通孔46dの長手方向に沿う長さ寸法L2(約20.0mm)よりも大きくなっている(L1>L2)。これは、図9に示されるように、閉側ケーブル18のプーリ収容部41hに対する引き出し角度の最大変化量α°(約20°)と、開側ケーブル19のプーリ収容部41hに対する引き出し角度の最大変化量β°(約10°)とが、それぞれ異なるためである。
具体的には、スライドドア13が完全に閉じる間際では、ローラユニット15はセンターレール16の湾曲された部分を通過する。すると、第2ユニット部材40は、支持軸34を中心に第1ユニット部材30に対して揺動する。その際に、閉側ケーブル18のプーリ収容部41hに対する引き出し角度の最大変化量α°の方が、開側ケーブル19のプーリ収容部41hに対する引き出し角度の最大変化量β°よりも大きくなる(α°>β°)。
したがって、各ケーブル18,19のプーリ収容部41h(プーリケース41)に対する引き出し角度の変化を許容可能とするために、閉側ケーブル挿通孔46cの長手方向に沿う長さ寸法L1を、開側ケーブル挿通孔46dの長手方向に沿う長さ寸法L2よりも大きくしている。つまり、閉側ケーブル挿通孔46cの長手方向に沿う長さ寸法L1および開側ケーブル挿通孔46dの長手方向に沿う長さ寸法L2は、それぞれ各ケーブル18,19のプーリケース41に対する引き出し角度の変化を許容する長さ寸法に設定されている。
また、図7および図8に示されるように、シールカバー46の内側で、かつ各ケーブル挿通孔46c,46dの周囲には、各ケーブル18,19の外周の一部が摺接する閉側摺接壁部46eおよび開側摺接壁部46fが、それぞれ設けられている。これらの摺接壁部46e,46fは、シールカバー46の内側に突出して設けられ、その突出高さH(約4.0mm)は、シールカバー46の他の部分(例えば底部BTの部分)の肉厚寸法T(約2.0mm)よりも大きくなっている(H>T)。ここで、図8は、閉側ケーブル挿通孔46dの部分の断面図を示している。
これにより、各ケーブル挿通孔46c,46dに挿通される各ケーブル18,19は、シールカバー46に対して比較的多くの部分で接触可能となっている。具体的には、図9に示されるように、各ケーブル18,19の引き出し角度の変化に伴って、閉側ケーブル18は閉側摺接壁部46eに対してスライドするようにして摺接し、開側ケーブル19は開側摺接壁部46fに対してスライドするようにして摺接する。したがって、各ケーブル18,19がプーリ収容部41hの内部に移動する(引き込まれていく)際に、各ケーブル18,19の表面に付着した雨水や埃等が、各摺接壁部46e,46fによって効果的に除去される。よって、プーリケース41の内部に雨水や埃等が侵入し難くなっている。
また、各ケーブル18,19の直径寸法Dは、略3.0mm程度に設定され、各ケーブル挿通孔46c,46dの短手方向に沿う幅寸法Wは、略1.5mm程度に設定されている(W<D)。これにより、図10に示されるように、各ケーブル18,19は、各ケーブル挿通孔46c,46d(各摺接壁部46e,46f)を弾性変形させつつ、それぞれ摺動することになる。つまり、各ケーブル18,19の直径寸法Dは、各ケーブル挿通孔46c,46dを弾性変形させる大きさとなっている。なお、図10は、開側ケーブル19および開側ケーブル挿通孔46d側を示している。
このように、各ケーブル18,19は、プーリ収容部41hに対する引き出し角度の変化に伴って、各摺接壁部46e,46fに対してスライドするようにして摺接し、かつ各ケーブル挿通孔46c,46dを弾性変形させつつ摺動する。そのため、各ケーブル18,19とシールカバー46との接触面積が十分に大きくなっている。これにより本実施の形態においては、各ケーブル18,19の外周の一部を各ケーブル挿通孔46c,46dに摺接させているにも関わらず、各ケーブル18,19の表面に付着した雨水や埃等を効率良く除去することが可能となっている。
したがって、プーリケース41の内部に雨水や埃等が十分に侵入し難くなっているため、例えば、可撓性を有しかつシール機能を備えた管状のシール機構等を、シールカバーの外側に突出するようにして設ける必要がなく、シールカバー46を含むプーリユニット20の大型化を避けることができる。
さらに、図6,図8,図10に示されるように、シール本体46aの底部BTの部分には、一対の傾斜面46gが設けられている。具体的には、一対の傾斜面46gは、シール本体46aの掛止片46b側とは反対側の各ケーブル挿通孔46c,46dの近傍に設けられている。そして、図10に示されるように、一対の傾斜面46gは、シールカバー46を、ケーブルガイド50に向けて先細り形状としている。
ここで、ケーブルガイド50は、プラスチック等の樹脂材料により、センターレール16の形状と略同様の形状に形成され、センターレール16の真下(図1および図2参照)に配置されている。つまり、ケーブルガイド50は、センターレール16に対して平行に設けられている。
また、図2および図10に示されるように、ケーブルガイド50には、閉側ケーブル18および開側ケーブル19を保持するケーブル保持溝51が設けられている。ケーブル保持溝51は、車室内側に窪んで設けられ、これにより外部に露出される各ケーブル18,19に、洗車時等において作業者が触れることが防止される。
そして、図10に示されるように、シールカバー46のケーブルガイド50側は、一対の傾斜面46gによって先細り形状とされ、かつケーブル保持溝51と対向しており、さらには一対の傾斜面46gの一部がケーブル保持溝51の内部に入り込んでいる。このように、シールカバー46に先細り形状となる一対の傾斜面46gを、シールカバー46のケーブルガイド50との対向部分に設けることにより、シールカバー46を含むプーリユニット20を、ケーブルガイド50に対して、より近接配置できるようにしている。
また、一対の傾斜面46gは、プーリユニット20をケーブルガイド50に対して近接配置可能とする機能に加えて、以下のような機能も有している。すなわち、図6の破線矢印に示されるように、シールカバー46のシール本体46a上に落ちてきた雨水WAを、プーリユニット20の先端部分に集約して、その下方に速やかに滴下させる機能を有している。これにより、シールカバー46が汚れたり早期に劣化したりすることが抑制される。
以上詳述したように、本実施の形態に係る車両用開閉装置14によれば、プーリケース41には、プーリケース41の内部への異物の侵入を抑えるシールカバー46が設けられ、シールカバー46には、プーリケース41の内外を連通するとともに、閉側ケーブル18および開側ケーブル19の外周の一部が摺接するスリット状の閉側ケーブル挿通孔46cおよび開側ケーブル挿通孔46dが設けられている。
これにより、ケーブルに付着した雨水や埃等を除去する管状のシール機構等を、シールカバーの外側に突出させて設ける必要がなく、シールカバー46にスリット状の各ケーブル挿通孔46c,46dを設けるだけで済む。したがって、シールカバー46を含む装置全体の大型化を招くことなく、各ケーブル18,19に付着した雨水や埃等を効果的に除去することができ、ひいては装置の長寿命化を図ることが可能となる。
また、本実施の形態に係る車両用開閉装置14によれば、各ケーブル挿通孔46c,46dの長手方向に沿う長さ寸法L1,L2が、それぞれ各ケーブル18,19のプーリケース41に対する引き出し角度の変化を許容する長さ寸法となっている。
これにより、各ケーブル18,19のプーリケース41に対する引き出し角度の変化を、シールカバー46を大きく弾性変形させることなく容易に許容可能となる。よって、車両用開閉装置14のスムーズな動作を可能としつつ、シールカバー46の早期劣化を抑制することができる。
さらに、本実施の形態に係る車両用開閉装置14によれば、各ケーブル18,19の直径寸法Dが、各ケーブル挿通孔46c,46dを弾性変形させる大きさとなっている。
これにより、各ケーブル18,19は、各ケーブル挿通孔46c,46dを弾性変形させつつ摺動するため、各ケーブル18,19とシールカバー46との接触面積を十分に大きくできる。よって、各ケーブル18,19の外周の一部を各ケーブル挿通孔46c,46dに摺接させつつも、各ケーブル18,19の表面に付着した雨水や埃等を効率良く除去することができる。
また、本実施の形態に係る車両用開閉装置14によれば、シールカバー46の内側でかつ各ケーブル挿通孔46c,46dの周囲に、シールカバー46の内側に突出し、各ケーブル18,19の外周の一部が摺接する各摺接壁部46e,46fが設けられ、各摺接壁部46e,46fの突出高さHが、シールカバー46の例えば底部BTの部分の肉厚寸法Tよりも大きくなっている。
これにより、各ケーブル18,19が、プーリ収容部41hに対する引き出し角度の変化に伴って、各摺接壁部46e,46fに対してスライドするため、各ケーブル18,19とシールカバー46との接触面積を十分に大きくできる。したがって、これによっても各ケーブル18,19の表面に付着した雨水や埃等を効率良く除去することができる。
また、本実施の形態に係る車両用開閉装置14によれば、閉側ケーブル挿通孔46cの長手方向に沿う長さ寸法L1が、開側ケーブル挿通孔46dの長手方向に沿う長さ寸法L2よりも大きくなっている(L1>L2)。
これにより、開側ケーブル19のプーリ収容部41hに対する引き出し角度の最大変化量β°よりも大きい、閉側ケーブル18のプーリ収容部41hに対する引き出し角度の最大変化量α°に、容易に対応することができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態では、シールカバー46の内側でかつ各ケーブル挿通孔46c,46dの周囲に、それぞれ摺接壁部46e,46fを設けたものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、車両用開閉装置14の仕様(被水し難い等)によっては、各摺接壁部46e,46fを省略しても良い。この場合、シールカバー46を含む装置全体を、より小型軽量化することが可能となる。
また、上記実施の形態では、センターレール16の真下に設けられたケーブルガイド50の長手方向両側に、各ケーブル18,19の先端側をそれぞれ固定した構造、つまり「センター駆動方式」としたものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、本発明は、ロワーレールの近傍にケーブルガイド50を設け、このケーブルガイド50の長手方向両側に、各ケーブル18,19の先端側を固定した構造、つまり「ロワー駆動方式」の開閉装置にも適用できる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。