JP2020080745A - 高リコピンケチャップの製造方法、高リコピンケチャップ、及びリコピンの高濃度化と、粘度の上昇抑制を両立する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の実施に係るケチャップ(以下、「本ケチャップ」という。)の製造において、トマト加工品とは、加工されたトマトであり、例示すると、ダイストマト、トマト搾汁、トマト濃縮汁、トマトパルプ等である。
トマト加工品を製造する上で、トマトを破砕した後、搾汁前に、予熱工程を経る。その目的は、トマト組織を破壊軟化させ、搾汁を容易にするためである。この工程には、ホットブレイク処理とコールドブレイク処理がある。ホットブレイク処理は破砕後、予熱工程において70℃以上に加熱するか、トマトそのままを加熱後破砕することによって、トマト細胞破壊と同時に働くペクチナーゼによる、トマト中ペクチンの分解を抑制するため、酵素失活を行う方法である。コールドブレイク処理は、破砕後加熱しないか、しても70℃未満の比較的低温で行なう方法であって、トマト中のペクチナーゼが働き、ペクチンが分解される。上記作用により、ホットブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が高く、離しょうが少ないという特徴がある。一方、コールドブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が低く、離しょうが多いという特徴がある。
本発明に係る除パルプトマト汁の製造方法を主に構成するのは、除パルプ工程、殺菌工程、及び冷却工程である。好ましくは、除パルプ工程の前にpH調整工程を有することである。また好ましくは、除パルプ工程の後に濃縮工程を有することである。
除パルプは、対象物(例えば、トマト加工品など)に含まれる不溶性固形部(パルプ)の一部又は全部を除去することである。その目的は、トマト加工品の粘度を低くするためである。一般的なトマト加工品のpHは、3.8〜4.2程度である。本発明において使用されるトマト加工品は、pHが4.35以上、好ましくは、4.41以上のものである。除パルプ時のトマト加工品のBrixは、特に限定されないが、除パルプのしやすさや、除パルプトマト汁中のリコピン濃度を高める観点から、Brix15.0以下であることが好ましい。より好ましくは、Brix10.0以下、さらに好ましくは、Brix4.0以上6.0以下である。水による希釈によりBrixが低くなりすぎると、容量が大きくなりすぎて、ハンドリングが悪くなる。
pH調整は、除パルプトマト汁の製造において原料となるトマト加工品を、所望のpHとなるように調整することである。その目的は、除パルプトマト汁のリコピン濃度を高めるためである。調整後のトマト加工品のpHは、4.35以上、好ましくは4.41以上である。より好ましくは、5.0以上、さらに好ましくは6.0以上8.0以下である。
濃縮は、除パルプトマト汁を濃縮することである。その目的は、除パルプトマト汁の容量を少なくしてハンドリングをよくすること、及び製品に使用する際に、多くの量を配合しやすくすることを可能とすること等である。その方法は公知の方法であれば特に限定されず、加熱蒸発濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、及び乾燥等である。
本発明の実施の形態に係るトマト加工品のリコピン濃度は、市場に流通しているものであれば特に限定されないが、ホットブレイクトマトペースト、又はピューレの1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満であることが好ましい。より好ましくは、2.0mg/100g以上2.4mg/100g未満である。また、コールドブレイクトマトペースト、又はピューレの1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満であることが好ましい。より好ましくは、2.0mg/100g以上2.4mg/100g未満である。
本発明の実施の形態に係るトマト量とは、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量である。具体的には、100kgのケチャップにおいてBrix27.0のトマト加工品が10kg使用されていた場合、10kg×27.0/4.5=60kgより、トマト量で60kgが100kgのケチャップに含まれることとする。
野菜加工品とは、加工された野菜(トマトを除く。)である。その原料を例示すると、タマネギ、ニンジン、セロリ等である。これらのうち一種または二種以上は、組み合わせて調合される。
調味料とは、原料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食酢、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス、野菜エキス等である。
本ケチャップに含有されるのは、糖類である。糖類は、ケチャップに甘味を付与する原料である。糖類を例示すると、砂糖、ブドウ糖、ブドウ糖果糖液糖、等である。
本ケチャップに含有されるのは、食酢である。食酢は、ケチャップに酸味を付与する原料である。食酢を例示すると、合成酢、及び穀物酢、果実酢等の醸造酢、等である。
香辛料とは、調味料であって、辛味又は香気を付与するものをいう。香辛料を例示すると、ニンニク、コショウ、シナモン、ナツメグ、サフラン、パセリ、ローズマリー、オレガノ、山椒等、又はこれらの抽出物である。
本発明が排除しないのは、食品添加物の使用である。当該食品添加物を例示すると、甘味料、酸味料、核酸類、香辛料抽出物、着色料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、栄養強化剤、増粘剤等である。もっとも、不自然な甘味を回避するため、高甘味度甘味料(例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等)及び糖アルコールは、極力、使用しない。また、本発明の具現化にあたり、その他の食品添加物の使用を極力控えるのが好ましい。
本ケチャップの製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、調合工程、均質化工程、殺菌工程、充填工程、密封工程、冷却工程である。これらの工程の一般的な説明のために本願明細書が取り込むのは、「地域資源活用 食品加工総覧 第7巻 加工品編(社団法人 農山漁村文化協会 発行)」の内容である。
調整は、後述する調合工程において、調合する原材料の量を適切な量となるように調えることである。その目的は、本ケチャップの呈味、性状、色調、栄養成分濃度、リコピンその他機能性成分濃度等を目標のものとするためである。当該調整は、調合工程の前、又は調合工程と同時に行われる。
調合工程は、複数の原材料を調合することで、ケチャップの基となる混合物質を製造する工程である。本ケチャップ製造における調合工程では、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品が調合される。コールドブレイクトマト加工品を調合する目的は、ケチャップのリコピン濃度の高濃度化と粘度の適正化である。より好ましくは、上記コールドブレイクトマト加工品に加えて、ホットブレイクトマト加工品も調合する。ホットブレイクトマト加工品を調合する目的は、ケチャップの粘度適正化と離しょう抑制である。上記に加え、必要に応じて調合される原材料は、野菜加工品、調味料、香辛料である。
本実施の形態に係るpH調整剤は、pHを上げるために使用されるものであり、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重曹ともいう)、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム等である。使いやすさの観点から、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
ケチャップは、必要に応じて均質化される。ケチャップを均質化する目的は、ケチャップの粒子を均一化し、滑らかな性状を得ることである。均質化する方法は、公知の方法で良く、均質化は複数回行っても良い。均質化を行う機器は、例えば、ホモジナイザー等である。ホモジナイザーを用いる際の圧力は、0〜300kgf/uであることが好ましい。
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、殺菌、充填及び冷却である。殺菌方法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、チューブラー式殺菌方法等がある。冷却方法は、公知の方法で良い。充填方法は、公知の方法でよい。ケチャップが充填される(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、瓶、ポリエチレン製容器等である。
本実施の形態に係るケチャップ(以下、「本ケチャップ」という。)が実現するのは、リコピンの高濃度化と、粘度の上昇抑制の両立である。さらには、好ましくは離しょうの減少である。その具体的な方法は、除パルプトマト汁を調合することである。当該除パルプトマト汁は、原料として用いられるトマト加工品の、Brix5.0のときのpHが4.41以上のものである。好ましくは、前記トマト加工品は、pH調整されたものである。
本ケチャップとは、トマト加工品を主な原料として用い、これに糖類、食酢、及び食塩、を加えて必要により加水して調整した物であって、必要に応じて、香辛料、その他調味料、タマネギ、ニンニク等を加えてもよい。また他の野菜又は果物の加工品、食品添加物などを加えてもよい。本ケチャップの中には、トマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)において定められる、トマトケチャップ、トマトソース、チリソース、が含まれる。好ましくは、本ケチャップはトマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)において定められるトマトケチャップ、又はトマトソースである。
本ケチャップのBrixは、特に限定されないが、好ましくは、30.0以上40.0以下である。また、Brixの測定方法は、公知の方法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR−3T ATAGO社製)である。
本発明の実施の形態に係る、リコピンとは、化学式C40H50で表されるカロテノイドの一種である。自然界には、トマトやスイカ、ニンジン等に多く含まれている。リコピンを工業的に濃縮や精製したリコピン製剤も市場において販売されている。一般的なケチャップにおいては、リコピンは10mg/100gから20mg/100g程度含まれている。本実施の形態におけるケチャップにおいて、リコピン濃度は25mg/100g以上50mg/100gであることが好ましい。より好ましくは30mg/100g以上40mg/100g以下である。食品添加物不使用の観点から、本実施の形態におけるケチャップは、食品添加物としてリコピンを使用しないことが好ましい。
本ケチャップの粘度は、特に限定されないが、B型粘度で10,000〜20,000mPa・s程度であることが好ましい。これより粘度が低いと、調味料としての保形性が悪くなり、これより粘度が高いと、重たい呈味となる。一般に市場にトマトソース、トマトケチャップとして販売されているケチャップの粘度もこの程度である。B型粘度の測定方法は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB−10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
ケチャップは調味料であるために一定期間保管することが考えられるが、保管中の経時変化によって、「離しょう」が生じる。離しょうとは、固形分から分離した漿液のことであるが、見た目や、使用に影響を与える。そのため、「離しょう」はケチャップを作る上で留意すべき事項である。
本実施例で用いたトマト加工品は、HBペースト、CBペースト、酵素処理ピューレ、CB除パルプトマト汁である。
本測定で採用したリコピンの測定方法は、HPLC法である。試料は公知の方法に基づいて、溶媒抽出を行い、フィルター濾過したものを検体とした。詳細な測定条件は、以下のとおりである。
オートサンプラー :SIL−10ADvp(SHIMADZU)
ポンプ :LC−10ADvp(SHIMADZU)
カラムオーブン :CTO−10Avp(SHIMADZU)
検出器 :SPD−10AVvp(SHIMADZU)
<測定条件>
カラム :ODS(REVERSE−PHASE C18)
(化学物質評価研究機構 L−Column
4.6mm×150mm)
移動相 :アセトニトリル:メタノール:テトラヒドロフラン混液
(55:40:5(v/v)
(α−トコフェロール50ppm含有)
流速 :1.5mL/min
検出波長 :453nm
カラム温度 :40℃
試料注入量 :10μL
分析時間 :20min
<B型粘度の測定>
TVB−10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件で、粘度を測定した。使用したローターはM4で、測定時の温度は20℃であった。
本測定で採用した糖度(Brix)の測定器は、デジタル屈折計RX5000i(ATAGO社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
No.65のろ紙(ADVANTEC社製)の中心に5.0gのケチャップを秤量した。10分後、ケチャップの外周部分から、試験紙に水が滲み出した外周部分までの距離(mm)を測定した。測定は4方向において行い、4数字の平均をもって測定値とした。
トマト量は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量とした。ケチャップに含まれる、除パルプトマト汁由来のトマト量を[A](kg/100kg)とし、トマトペースト又はトマトピューレ由来のトマト量を[B](kg/100kg)とした。
比較例1、及び2では、調合工程において、前記HBペースト、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
試験例1では、調合工程において、前記HBペースト、前記酵素処理ピューレ、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
試験例2では、調合工程において、前記HBペースト、前記CB除パルプトマト汁A、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
試験例3では、調合工程において、前記HBペースト、前記CB除パルプトマト汁C、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
本試験の試験例2及び試験例3において、リコピン濃度を25mg/100g以上にするために、使用する除パルプトマト汁の量が、少なくてすむ方の区分を、リコピン濃度評価「○」とした。
本試験において、比較例2と比較してB型粘度の値が低下した区分について、粘度評価「○」とした。また、比較例2と比較してB型粘度の値が低下し、かつ、比較例1と比較してB型粘度の値が同等(数値で10%以内の増加)の区分について、粘度評価「◎」とした。それ以外の区分について、粘度評価「×」とした。
本試験において、比較例1と比較して離しょうが増加した区分について、離しょう評価「×」とした。一方、比較例1と比較して離しょうが低下した区分について、離しょう評価「○」とした。
以上の試験結果を考慮した結果、リコピン濃度を上げるために、単純にトマトペースト含量を増加させると、粘度が大きく上昇することがわかった。粘度上昇を抑制するため、トマトペーストの一部を酵素処理により粘度低下させたものは、リコピン濃度を高めつつ、粘度上昇の抑制を行うことができた。さらに粘度上昇を抑制するためにCB除パルプトマト汁を用いた場合、粘度の上昇は抑制されるが、リコピン濃度が十分に高まらなかった。一方、CB除パルプトマト汁製造する際、除パルプ前のpHが高いことで、除パルプトマト汁のリコピン濃度を高めることができることがわかった。そして、これを用いることで、高リコピン濃度で、粘度の上昇を抑制したケチャップを作製することができることがわかった。除パルプ前のトマト加工品のpHは高くなるにつれて、除パルプトマト汁のリコピン濃度も高くなることがわかった。
Claims (11)
- 除パルプトマト汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
除パルプ:ここで除パルプされるのは、トマト加工品であり、当該トマト加工品のBrix5.0におけるpHは、4.35以上である。 - 請求項1の製造方法であって、それを更に構成するのは、以下の工程である:
pH調整:ここでpH調整されるのは、前記トマト加工品であり、当該工程を行うのは、前記除パルプ工程の前である。 - 請求項2の製造方法であって、
前記pH調整工程において用いられるのは、pH調整剤である。 - 請求項1〜3の何れかの製造方法であって、それを更に構成するのは、以下の工程である:
濃縮:ここで濃縮されるのは、前記除パルプトマト汁であり、当該工程を行うのは、前記除パルプ工程の後である。 - リコピン濃度25mg/100g以上のケチャップの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、請求項1に記載の製造方法により製造された除パルプトマト汁である。 - 請求項5の製造方法であって、
前記調合工程において調合されるのは、さらにトマトペースト、又はトマトピューレである。 - 請求項6の製造方法であって、
前記調合する除パルプトマト汁のトマト量[A](kg/100kg)と、前記調合するトマトペースト、及びトマトピューレのトマト量[B](kg/100kg)との関係は、
0.20≦[A]/([A]+[B])≦0.50であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量である。 - 請求項5〜7の何れかのケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合する、トマトペースト、及びトマトピューレの1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。 - 請求項5〜8の何れかのケチャップの製造方法であって、
当該ケチャップに調合する前記除パルプトマト汁のトマト量[A](kg/100kg)と当該ケチャップに調合するトマトペースト、及びトマトピューレのトマト量[B](kg/100kg)との関係は、
250≦[A]+[B]≦500
であり、
当該トマト量の換算方法は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量である。 - ケチャップにおけるリコピンの高濃度化と粘度上昇の抑制を両立する方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、請求項1に記載の製造方法により製造された除パルプトマト汁である。 - 請求項10の方法であって、前記調合において調合されるのは、さらにトマトペースト、又はトマトピューレである。
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