JP2012143190A - 調味料 - Google Patents

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Abstract

【課題】酢酸の刺激臭低減効果を向上した調味料を提供すること。
【解決手段】β−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを増加させることで、酢酸の刺激臭低減効果を向上した調味料を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、酢酸の刺激臭を低減させる調味料に関する。
日本の家庭では酸味を生かした調味料として主に食酢が用いられている。近年では食酢の有する食欲増進効果、減塩効果、疲労回復効果などの健康機能性が脚光を浴び、食酢を含有する飲料や調味料が販売されている。酸味を生かした代表的な調味料として、土佐酢、三杯酢、甘酢などの合わせ酢(以下、「調味酢」という)の他、ぽん酢やドレッシング等が知られており、これらは醤油と組み合わせて使用されている。食酢としては穀物酢、米酢、玄米酢、粕酢、黒酢等の他、リンゴ酢やワイン酢、バルサミコ酢等が市販されており、好みや用途に応じて市場で入手可能である。しかし、一般的な食酢は揮発性有機酸である酢酸の刺激臭(以下、「酢酸臭」という)を有し、食酢が苦手な消費者も依然として多く、酢酸臭の低減が求められている。
酢酸臭を低減する方法として、調味料においては、食用有機酸にソトロンを含有させる方法(例えば、特許文献1参照)、黒酢入りぽん酢に昆布のだし汁を含有させる方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。これらの方法では、ソトロンまたはソトロンを含有する原料を食酢に含有させることで独特の香りや色が付与される、黒酢に対してのみ効果がある等、適用範囲が限られてしまう課題が残され、刺激臭の低減効果も未だ不十分であった。
また、酢酸0.1〜10%を飲食品に含有させる際に、香気成分としてヘキサナールを添加することにより酢酸臭を低減させる方法(例えば、特許文献3参照)も報告されているが、オフフレーバーであるヘキサナールを使用するため独特の異臭を呈することがあり、また強い香りを有する醤油を同時に用いる調味酢、ドレッシングの用途では、より酢酸臭が際立つことがあるため低減効果が不十分であった。
また防腐目的として、穀物加工食品に酢酸0.01〜0.06%と共にα−エチルグルコシドを0.00001〜0.001%含有させることにより酢酸の酸臭を低減する方法(例えば、特許文献4参照)が開示されている。飲料においては、黒酢と共にスクラロースを含有させる方法(例えば、特許文献5参照)、酸味料と共にグルカンを含有させる方法(例えば、特許文献6参照)が開示されているが、飲料であるため含有される酢酸濃度が低く、より高い配合量で酢酸を含有させる調味料においては刺激臭の低減効果は不十分であった。
最近になって、糖類や柑橘果汁を添加することで酢酸の刺激を緩和させた調味酢や、とろみ状・ゼリー状にすることで酢酸の刺激を緩和させた調味酢も販売され、従来品に比べ酢酸臭は改善されていると考えられるが、食品として摂取できる酢酸の量・濃度も低下している他、粘度が高いなど一般の食品と物性が異なる等の課題が残されており、刺激臭の低減効果もなお改良の余地があった。
一方、トマトやワイン等に含有され、β−カロテンやリコペンを前駆体として生じる香気成分としてβ−ダマセノン、β―イオノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
近年、調味料の風味を向上させる目的で、β−ダマセノンを節類抽出物入り調味料に含有させる方法(例えば、特許文献7参照)が開示されている他、β−イオノンを染毛剤のナフトール臭マスキング剤として使用する方法(例えば、特許文献8参照)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オール(別名:スルカトール)を殺真菌組成物として使用する方法(例えば、特許文献9参照)が開示されているが、酢酸臭を低減させる目的で検討されたことは無かった。
特開2001−69940号公報 特開2004−49104号公報 特開2010−124696号公報 特開2008−263793号公報 特開2002−335924号公報 特開2003−289837号公報 特開2010−130978号公報 特開2008−69106号公報 特表2008−515835号公報
Science,Vol.311,No.5762,815〜819(2006)
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、酢酸臭を低減する調味料および該調味料を含有する配合調味料(酢酸含有調味料)を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、例えば調味酢やドレッシング等の、食酢と醤油を共に含有する調味料において、醤油の香りが酢酸の刺激臭を強めていることを見出した。そこで醤油の香りをマスキングする成分を探索した結果、驚くべきことにβ−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを一定濃度以上含有する際に、醤油の香りをマスキング可能であり、さらに前記成分を含有する調味料が、酢酸臭を低減することを見出した。
また、上記成分を含有する果汁や野菜汁を醤油に添加することで得られた調味料であっても、同様の酢酸臭低減効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
1)β−ダマセノンを5〜1300ppbおよび/またはβ−イオノンを5〜1000ppbおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを1000〜5000ppbの濃度で含有する調味料。
2)β−ダマセノン、β−イオノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールが、野菜汁または果汁に由来することを特徴とする上記1)記載の調味料
3)野菜汁または果汁が、トマトに由来するものを含む、上記2)記載の調味料。
4)上記1)〜3)のいずれかに記載の調味料を含有し、β−ダマセノンを1〜280ppbおよび/またはβ−イオノンを1〜220ppbの濃度で含有することを特徴とする配合調味料。
に関する。
本発明によれば、消費者は食酢と醤油からなる調味料を使用する際に、従来までと同じ食酢量の配合で、従来の醤油では得られなかった酢酸臭に対する低減効果が得られる。本発明の調味料を配合した調味酢やドレッシングを用いることで、つけかけ用途、和え物など様々な食事の場面で、酢酸臭に咽ることなく酢酸含有調味料を使用することが可能となる。また本発明品は、醤油の強い香りが低減されているため、食酢を含有する調味料だけでなく、洋風のスープなどに添加すれば、醤油風味を感じさせることなく風味を向上させることが可能であり、洋風用途に適した調味料としても非常に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、酢酸臭を低減する調味料を得ることを目的とし、該調味料中にβ−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールの各成分を特定濃度(ppb)含有させることを特徴とする。ここで、本発明における各成分の濃度(ppb)は、マイクログラム毎リットル(μg/l)である。
本発明は、簡便には醤油に、β−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを添加することで得られる。一方で、醤油へ、上記の各成分を含有する果汁および/または野菜汁を添加することにより、各成分を所望の量含有させた調味料とすることもできる。例えば、生醤油または火入れ醤油に、β−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを本発明の濃度(ppb)範囲になるまで果汁および/または野菜汁を添加することで、本発明の調味料を得ることができる。
本発明における「果汁」とは、果実を破砕して搾汁または裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものをいう。果汁は、濃縮していないストレート果汁だけでなく、2〜10倍になるまで水分を除去して濃縮したもの(以下、「濃縮果汁」という)も好適に用いることができ、3〜8倍に濃縮したものがより好ましい。糖度計や屈折計によって測定されるBrix(糖度)は6〜80%(w/w)であることが好ましく、20〜70%(w/w)であることが特に好ましい。果汁の濃度が薄すぎると、上記香気成分の含有量が低下するため好ましくない。
本発明における「野菜汁」とは、野菜を搾汁したもの、または破砕後裏ごし等したものをいう。野菜汁は、濃縮していないストレートタイプだけでなく、2〜10倍になるまで水分を除去して濃縮したもの(以下、「濃縮野菜汁」という)も好適に用いることができる。果汁と同様に、糖度計や屈折計によって測定されるBrix(糖度)は6〜80%(w/w)であることが好ましく、20〜70%(w/w)であることが特に好ましい。
果汁・野菜汁の濃縮方法としては、制限無く公知の加熱による濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮などが用いられる。
濃縮した果汁・野菜汁を適宜希釈し、色素やパルプ分を除く遠心分離や精密膜ろ過などを実施して得られた透過液を、さらに濃縮して得られる搾汁濃縮液は、酢酸臭を低減する前記各香気成分を多く含有するため特に好ましい。
生醤油または火入れ醤油に対する果汁および/または野菜汁および/または濃縮果汁および/または濃縮野菜汁の添加量は10〜80%(w/w)であることが好ましく、20〜70%(w/w)であることが特に好ましい。10%未満であれば通常の醤油と品質に差がなく、酢酸臭低減効果が向上せず好ましくない。また80%を超えると果実感が強くなり、調味料としての風味のバランスが損なわれるため好ましくない。
果汁の原料となる「果実」としては、例えばトマト、ブドウ、柑橘類、スイカ等が挙げられるが、好ましくはトマトである。これらの果実は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、塩類、糖類、香料、酸味料等を添加したものでもよい。
野菜汁の原料となる「野菜」としては、カボチャ、にんじん、ほうれん草、ピーマン、キャベツ、アスパラガス等が挙げられる。これらの野菜は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、塩類、糖類、香料、酸味料等を添加したものでもよい。
果実と野菜には、β−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールが含有されていることが好ましい。または前駆物質であるβ−カロテンが含有されていてもよい。
β−ダマセノンの調味料中の濃度は、5〜1300ppbであることが好ましく、55〜1300ppbの範囲であることが特に好ましい。調味料中のβ−ダマセノン濃度が1ppb未満の場合は、酢酸臭低減効果は十分ではない。5ppb以上の場合に、濃口醤油と比較して酢酸臭低減効果が向上し、54ppbを超えると、調味料に使用した原料の影響を受けずに、顕著な酢酸臭低減効果の向上が見られる。1300ppbを超えると成分の香りが強くなり、香りのバランスを損なうため好ましくない。β−ダマセノンを添加する際には、市販の純品のほか、β−ダマセノンを含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、香料、香辛料等)を用いてもよい。
β−イオノンの調味料中の濃度は、5〜1000ppbであることが好ましい。調味料中のβ−イオノン濃度が1ppb未満の場合は、酢酸臭低減効果は十分ではない。1ppb以上の場合に、濃口醤油と比較して顕著に酢酸臭低減効果が向上し、5ppb以上ではさらに顕著な酢酸臭低減効果の向上が見られる。1000ppbを超えると成分の香りが強くなり、香りのバランスを損なうため好ましくない。β−イオノンを添加する際には、市販の純品のほか、β−イオノンを含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、香料、香辛料等)を用いてもよい。
6−メチル−5−ヘプテン−2−オールの調味料中の濃度は、1000〜5000ppbであることが好ましい。6−メチル−5−ヘプテン−2−オール濃度が1000ppb未満の場合は、酢酸臭低減効果は十分ではない。1000ppb以上の場合に、濃口醤油と比較して顕著に酢酸臭低減効果が向上する。5000ppbを超えると成分の香りが強くなり、香りのバランスを損なうため好ましくない。6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを添加する際には、市販の純品のほか、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、香料、香辛料等)を用いてもよい。
生醤油および火入れ醤油は、制限無く日本農林規格で定められる「しょうゆ」を用いればよい。例えば、日本農林規格で定められる、こいくちしょうゆ、うすくちしょうゆ、たまりしょうゆ、しろしょうゆ等で用いられている原料の配合比率により得られた醤油麹を食塩水と共に仕込み、発酵・熟成・圧搾を経て、生醤油が得られる。この生醤油は加熱殺菌を行っていないため、麹菌由来の酵素や、醤油酵母、醤油乳酸菌などが含有されている。生醤油は、火入れと呼ばれる加熱殺菌工程を経る。火入れは公知の醤油製成過程で行なわれている加熱条件を用いればよい。加熱によって澱が生じることがあるため、数日間静置した後、澱から上清を分離して火入れ醤油が得られる。
生醤油または火入れ醤油に果汁を添加して得られる調味料は、果汁由来のβ−ダマセノンおよび/またはβ−イオノンおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールの各成分がバランスよく配合され、酢酸臭低減効果が高く、風味のバランスに優れ、果汁由来の香りや酸味、甘味の感じられる調味料となりうる。これらの成分が含有されているかは、定法に従ってガスクロマトグラフ法により定量することで確認することができる。
果汁を添加した生醤油または火入れ醤油は、定法に従って圧搾濾過され、一般成分分析、香気成分分析を行い、成分を調整する。この際pHや塩分、エタノール濃度、グルタミン酸濃度、クエン酸濃度、香気成分濃度を適宜調整してもよい。好ましくはpHが3.5〜5.0、塩分が8.0〜18.0%となるように調整する。
成分調整後は、殺菌または除菌を行う。殺菌の場合は、75〜120℃で5秒〜60分の加熱を行い、澱を沈めた後、上清を調味料として得る。除菌の場合は公知のMF膜によるろ過等を行い、ろ過物を調味料として得る。
本発明の調味料は、日本農林規格の「しょうゆ」と同様の使い方ができ、また任意の飲食品に配合することができる。例えば、調味酢、ドレッシング、つゆ、たれ、和風だし、洋風だし、中華だし、ソース等の配合調味料や、スープ等に添加して用いることができる。
本明細書における調味酢とは、主たる原料として食酢および砂糖類を用い、果汁、醤油、食塩、その他の調味料を加えたものであって、主として寿司、酢の物および漬物に用いるものをいう。例えば、二杯酢、三杯酢、土佐酢、甘酢、ぽん酢等が挙げられる。
調味酢に用いる食酢としては、例えば穀物酢、米酢、玄米酢、粕酢、黒酢等の他、リンゴ酢やワイン酢、バルサミコ酢等が挙げられる。
本明細書におけるドレッシングとは、食用植物油脂と醸造酢または柑橘類の果汁を主原料として、食塩、砂糖類、香辛料、醤油などを加えて調製し、水中油滴型に乳化するか、または分離した状態の調味料、さらにこれに酢漬け野菜等を加えたものであり、日本農林規格で定められたドレッシングおよびドレッシングタイプ調味料(ノンオイルドレッシング)と同一の概念である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
<各種成分の火入れ醤油への添加>
火入れ醤油として、市販の濃口醤油(キッコーマン社製、丸大豆使用)を用いた(対照品)。この醤油(対照品)にβ−ダマセノン、β−イオノン、6−メチルー5−ヘプテン−2−オールをそれぞれ添加・混合し、試験品1−1〜1−18を調製した。
<各種成分を添加した火入れ醤油の官能評価>
酢酸臭低減効果を評価するため、三杯酢を調製し、官能評価に用いた。三杯酢は下記の材料を混合し用意した。

材料:
対照品または試験品 10ml
穀物酢(酸度4.2%) 30ml
砂糖 12g

上記材料を混合し終えた時点での容量は47.5mlであった。
官能評価は、訓練され識別能力を有するパネル5名による評点法で行った。酢酸臭低減効果および香りの総合評価について、上記のように用意した対照品と試験品を含有する三杯酢の香りを嗅ぎ、比較を行った。評点は下記の基準に従った。

(酢酸臭低減効果)
1:対照品のほうが、かなり効果が高い
2:対照品のほうが、やや効果が高い
3:効果は同等
4:試験品のほうが、やや効果が高い
5:試験品のほうが、かなり効果が高い

(香りの総合評価)
1:対照品のほうが、とても好ましい
2:対照品のほうが、やや好ましい
3:同等
4:試験品のほうが、やや好ましい
5:試験品のほうが、とても好ましい
Figure 2012143190
表1の官能評価結果より、火入れ醤油において、β−ダマセノンは5ppb以上、β−イオノンは5ppb以上、6−メチルー5−ヘプテン−2−オールは1000ppb以上を含有させることで、酢酸臭低減効果の向上が見られた(試験品1−2〜6、1−8〜14)。β−ダマセノンが1ppb、または、β−イオノンが1ppbの添加時には、酢酸臭低減効果の顕著な向上は見られなかった(試験品1−1、1−7)。試験品を配合した三杯酢においては、β−ダマセノンは1.1ppb以上、β−イオノンは1.1ppb以上、6−メチルー5−ヘプテン−2−オールは211ppb以上の濃度が含有されていれば、酢酸臭が低減されることが示された。
また、β−ダマセノンとβ−イオノンが共に含有されるときには、さらに酢酸臭低減効果が高まった(試験品1−15〜18)。β−ダマセノンが1000ppb含有される際に、β−イオノン濃度が200ppb以上になると、成分由来の香りの相乗効果により成分由来の香りが強くなり、酢酸臭低減効果の向上はみられるものの、香りの総合評価において評価が減少傾向となった(試験品1−17〜18)。
β−ダマセノンは1000ppb、β−イオノンは1000ppbを超えて含有させると、成分由来の香りが強くなり、酢酸臭低減効果の向上はみられるものの、香りの総合評価において評価が減少傾向となった。それぞれ5000ppb以上を含有させると、香りの総合評価が下がった(試験品1−5〜6、1−11〜12)。
<醤油麹の調製>
大豆10kgは温水中に浸漬し、吸水させた後、加圧条件下で蒸煮した。小麦10kgは炒熬した後、割砕した。大豆・小麦を混合後、麹菌を接種し、通風製麹装置によって製麹を行い、3日後に醤油麹を得た。
<生醤油の調製>
醤油諸味は、発酵・熟成後の食塩濃度が16.0%となるように食塩水と水を加え、定法に従い醤油乳酸菌を加えよく混合し、乳酸発酵を行った。続いて定法に従い耐塩性の醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxii)を添加し、諸味品温を25℃に保持しながら酵母発酵を行った後、3ヶ月間発酵・熟成させた。諸味を圧搾・ろ過して「生醤油」を得た。
<比率を変えた果汁混合醤油の調製>
火入れ醤油である市販の濃口醤油(キッコーマン社製、丸大豆使用)に対して、果汁としてトマト搾汁濃縮液(日本デルモンテ社製、イスラエル産、Brix60%)を、醤油:果汁の比が95:5、80:20、60:40、40:60、20:80(いずれも体積比)となるようにそれぞれ混合し果汁混合醤油を調製した。同様にして、上記生醤油に対して、トマト搾汁濃縮液を醤油:果汁の比が80:20、60:40(いずれも体積比)となるようにそれぞれ混合し果汁混合生醤油を調製した。
<果汁混合醤油、果汁混合生醤油の火入れおよびろ過>
果汁混合醤油および果汁混合生醤油は、火入れを80℃達温30分間行い、1〜2日間、4℃にて静置した。沈殿が生じた場合は上清を回収し、試験品2−1〜2−7を得た。
<成分調整>
各種試験品の調製終了時点での食塩濃度はそれぞれ試験品2−1:15.7%、試験品2−2:15.1% 、試験品2−3:13.1%、試験品2−4:10.9%、試験品2−5:8.6%、試験品2−6:14.8% 、試験品2−7:13.2%(いずれもw/v)であった。官能評価時には、対照品と同じ食塩濃度16.0%(w/v)となるように食塩を添加した。
<成分分析>
醤油の一般成分は、しょうゆ試験法(財団法人、日本醤油研究所編、昭和60年(1985年)3月1日発行)記載の方法に従い分析を行った。
<香気成分分析>
β−ダマセノン、β−イオノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールはヘッドスペースGC−MSを用いた標準添加法にて分析定量した。試料として対照品または試験品10mlをバイアル瓶に2本ずつ入れた。既知濃度の上記成分を1本の試料入りバイアル瓶に入れ、上記成分未添加の試料入りバイアル瓶と合わせて用意した。ヘッドスペースサンプラ(Agilent Technologies社製、G1888)にそれぞれセットし、分析を行った。
分析条件は下記のようにして行った。
測定機器:Agilent Technologies社製、6890N GC + 5973MSD
カラム: DB−WAX(Agilent Technologies社製、60m×内径0.25mm×膜厚0.5μm)
昇温条件: 40℃、3分保持後、3℃/分の速度で220℃まで昇温
注入モード: スプリットレスモード
キャリアガス: ヘリウム、流速1.5ml/分
測定モード: SIMモード
検出された標品ピークの面積値から検量線を作成し、濃度を算出した。前記3成分の検出下限濃度は1ppb以下であった。対照品は、いずれの成分も検出下限以下であった。
対照品および試験品の一般成分分析結果、香気成分含量を表4に示す。食塩濃度は成分調整後の値を示した。
<官能評価>
官能評価は、訓練され識別能力を有するパネル5名による評点法で行った。対照品または試験品を用いて調製した三杯酢、ドレッシングについて比較を行った。評点は下記の基準に従った。

(酢酸臭低減効果)
1:対照品のほうが、かなり効果が高い
2:対照品のほうが、やや効果が高い
3:効果は同等
4:試験品のほうが、やや効果が高い
5:試験品のほうが、かなり効果が高い

(風味の総合評価)
1:対照品のほうが、とても好ましい
2:対照品のほうが、やや好ましい
3:同等
4:試験品のほうが、やや好ましい
5:試験品のほうが、とても好ましい
<三杯酢の官能評価>
三杯酢は、トマト搾汁濃縮液に由来する糖分を算出し、砂糖の配合量を変えることで糖分が同濃度となるように、表2に示す配合で調製した。調製した三杯酢の香りや、直接喫食した際の、酢酸臭低減効果および風味について評価した。
Figure 2012143190
<ドレッシングの官能評価>
ドレッシングも、トマト搾汁濃縮液に由来する糖分を算出し、砂糖の配合量を変えることで糖分が同濃度となるように、表3に示す配合で調製した。レタスを3cm間隔に切ったものを20g用意し、調製したドレッシングを5ml添加した。ドレッシング自体の香りや、サラダとして直接喫食した際の、酢酸臭低減効果および風味について評価した。
Figure 2012143190
Figure 2012143190
表4に示す結果より、果汁であるトマト搾汁濃縮液の混合比率が高い程、一般成分ではグルタミン酸値が上昇した。香気成分では、β−ダマセノンが54〜1299ppb、β−イオノンが3〜95ppb、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールが8〜112ppbとなり、果汁比率の増加に応じて香気成分が増加していることが分かる。
表4の官能評価結果より、対照品と比較して試験品2−2〜2−7を使用した際に、三杯酢の酢酸臭を顕著に低減し、風味の好ましさが向上していることが分かる。このとき、三杯酢中のβ−ダマセノンは57〜273ppb、β−イオノンは6〜20ppb、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールは6〜24ppbとなった。
ドレッシングでも、対照品と比較して試験品2−2〜2−7を使用した際に、酢酸臭を顕著に低減し、風味の好ましさが向上していることが分かる。このとき、三杯酢中のβ−ダマセノンは47〜228ppb、β−イオノンは5〜17ppb、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールは5〜20ppbとなった。
試験品2−1は、β−ダマセノンを54ppb、β−イオノンを3ppb、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを8ppb含有していたが、酢酸臭低減効果は見られたものの、顕著な風味の好ましさの向上は見られなかった。これは上記3香気成分以外の、トマト果汁由来成分の影響であると考えられる。
以上の結果より、トマト搾汁濃縮液を醤油に添加することにより、β−ダマセノン、β−イオノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールの濃度が増加し、酢酸臭低減効果を向上した調味料が得られた。このような調味料は、調味酢やドレッシングに配合することで酢酸臭低減効果を示し、風味も優れていることが示された。

Claims (4)

  1. β−ダマセノンを5〜1300ppbおよび/またはβ−イオノンを5〜1000ppbおよび/または6−メチル−5−ヘプテン−2−オールを1000〜5000ppbの濃度で含有する調味料。
  2. β−ダマセノン、β−イオノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オールが、野菜汁または果汁に由来することを特徴とする請求項1記載の調味料
  3. 野菜汁または果汁が、トマトに由来するものを含む、請求項2記載の調味料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の調味料を含有し、β−ダマセノンを1〜280ppbおよび/またはβ−イオノンを1〜220ppbの濃度で含有することを特徴とする配合調味料。
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