以下、添付図面を参照して本願の開示する苗移植機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<苗移植機1の概要>
まず、図1および図2を参照して実施形態に係る苗移植機1の概要について説明する。図1は、実施形態に係る苗移植機1を示す左側面図である。図2は、実施形態に係る苗移植機1を示す平面図である。
なお、以下において、前後方向とは、苗移植機1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。苗移植機1の進行方向とは、直進時において、操縦席28からハンドル32へ向かう方向である(図1および図2参照)。
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(「作業者」ともいう)が操縦席28に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、苗移植機1を指して「機体」という場合がある。
図1および図2に示すように、苗移植機1は、圃場内を走行する走行車体2を備える。走行車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5とを備える。また、苗移植機1は、苗植付部昇降機構50によって昇降可能な苗植付部40を、走行車体2の後部に備える。
走行車体2は、メインフレーム7と、メインフレーム7上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の駆動力を前輪4および後輪5(駆動輪)や苗植付部40へ伝達する動力伝達機構15とを備える。すなわち、苗移植機1では、エンジン10の動力によって走行車体2を前後進させるとともに苗植付部40を駆動させる。
エンジン10は、機体の左右方向における略中央に配置される。エンジン10は、エンジンカバー11に覆われ、操縦者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方へ突出させた状態でメインフレーム7上に搭載される。
フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間にわたって設けられ、メインフレーム7上に取り付けられる。フロアステップ26の一部は、格子状であり(図2参照)、操縦者の靴に付着した泥などを圃場に落とすことができる。
フロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねるリアステップ27が設けられる。リアステップ27は、後方へ向かうにつれて上方へ傾斜した傾斜面を有する。リアステップ27は、エンジン10の左右それぞれの側方に配置される。
また、苗移植機1は、操縦席28と、操縦部30とを備える。操縦席28は、エンジンカバー11の上方に配置される。操縦部30は、操縦席28の前方であり機体の左右方向における略中央に配置される。操縦部30は、フロアステップ26から上方へ突出した状態で配置され、フロアステップ26の前部を左右に分ける。
なお、操縦部30には、各種操作装置や燃料タンクなどが設けられ、操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられる。また、操縦部30の上部パネル33には、操作装置を作動させる操作レバーや各種計器類、操舵用のハンドル32、報知装置などが設けられる。
また、操作レバーとしては、たとえば、機体の前進および走行速度を操作する走行操作部材である変速レバー35、苗植付部40の動作を少なくとも苗植付部昇降機構50による上昇状態を含んで切り替える植付操作部材である植付昇降レバー36がある。植付昇降レバー36は、苗植付部40の作動状態を切り替えることができ、たとえば、「上昇」、「下降」、「植付」などの各モードを設定することができる。
なお、フロアステップ26における操縦部30の左右の側方のうち、たとえば、右側方には、苗(マット苗)を後方の苗植付部40に向けて送るための苗レールが設けられてもよい。また、操縦部30の左右の側方のうち、たとえば、左側方には、補給用の苗(予備苗)を載せる予備苗台が設けられてもよい。
また、機体の左右それぞれの側方には、次の植付条の目安になる線を圃場面に形成する線引きマーカが設けられてもよい。なお、線引きマーカは、機体が旋回するごとに、左右の線引きマーカが交互に作動する。
動力伝達機構15は、主変速機としての油圧式無段変速機16と、エンジン10からの動力を油圧式無段変速機16へ伝達するベルト式動力伝達機構17とを備える。油圧式無段変速機16は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。油圧式無段変速機16は、たとえば、エンジン10の前方、フロアステップ26の下方に配置される。
ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けられたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けられたプーリと、これらのプーリに巻き付けられたベルトと、ベルトの張力を調整するテンションプーリとを備え、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16へ伝達する。
また、動力伝達機構15は、エンジン10からの動力が、ベルト式動力伝達機構17および油圧式無段変速機16を介して伝達されるトランスミッションを収容するミッションケース18を備える。ミッションケース18内のトランスミッションは、ベルト式動力伝達機構17および油圧式無段変速機16を介して伝達された動力を、副変速機で変速して、走行用動力および苗植付部40の駆動用動力に分ける。
また、操縦席28の後方には、施肥装置90が配置される。施肥装置90は、肥料を貯留する肥料ホッパ91を備え、肥料ホッパ91内の肥料を一定量ずつ繰り出し、繰り出された肥料を、たとえば、ブロアの送風によって苗植付部40側へ移送する。
<苗植付部40>
ここで、苗植付部40について説明する。図1および図2に示すように、苗植付部40は、苗植付部昇降機構50を介して走行車体2の後部に昇降自在に連結される。
苗植付部昇降機構50は、昇降リンク51を有する。昇降リンク51は、走行車体2の後部と苗植付部40とを連結する平行リンク機構であるリンク部材を有する。リンク部材は、前後方向に延在する2つの部材を有する。2つの部材は、上側に位置する上部リンク部材であるアッパーリンク53、アッパーリンク53の下側に位置するロアリンク54である。アッパーリンク53およびロアリンク54は共に、左右一対で設けられる。
アッパーリンク53およびロアリンク54は、メインフレーム7の後部に立設された背面視門型の後部フレームであるリンクベースフレーム55に回動自在に連結され、また、アッパーリンク53およびロアリンク54の他端側が苗植付部40に回動自在に連結され、苗植付部40を、走行車体2に対して昇降可能に連結する。
苗植付部昇降機構50は、油圧によって伸縮する昇降シリンダ56を有する。苗植付部昇降機構50は、昇降シリンダ56の伸縮動作によって、苗植付部40を昇降させる。苗植付部昇降機構50は、苗植付部40を非作業位置まで上昇させる。また、苗植付部昇降機構50は、苗植付部40を対地作業位置(対地植付位置)まで下降させる。
苗植付部40は、苗を植え付ける範囲を複数の条で植え付ける。本実施形態においては、苗植付部40は、苗を8つの条で植え付ける、いわゆる8条植えである。
また、苗植付部40は、植付装置41と、積載部45と、圃場面を均す均平装置を構成するセンターフロート61およびサイドフロート62とを有する。植付装置41は、2条ごとに1つずつ配置され、それぞれ2条分の植付爪42を有する。なお、苗植付部40に向けた駆動用動力は、エンジン10からシャフト(図示せず)を介して伝達される。植付装置41においては、機体の左右方向に延在するパイプ内部に配設された駆動軸の回転によって植付爪42が駆動される。
積載部45は、機体の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面を有する。積載部45は、それぞれの苗載せ面に土付きのマット状苗が載せられる。これにより、積載部45の苗載せ面に乗せられた苗が植え付けられて無くなるたびに、たとえば、作業者が圃場外に苗を取りに戻る必要がなく、連続的に作業を行うことができ、作業能率が向上する。
また、図1および図2に示すように、積載部45の前方、すなわち、苗載せ面の裏面には、植付装置41を操作するための後述する入切機構80が設けられる。なお、入切機構80の詳細な構成については、図4を用いて後述する。
<部分条クラッチ70>
次に、図3を参照して部分条クラッチ70について説明する。図3は、部分条クラッチ70の接続構成を示すブロック図である。なお、図3は、植付装置41を後方から見た模式図であり、植付装置41に対する動力伝達の入切を2条ごとに行う部分条クラッチ70を示す図である。苗移植機1(図1および図2参照)は、図3に示すように、指示部21と、部分条クラッチ70と、入切機構80と、制御部100と、駆動部150とを備える。
図3に示すように、植付装置41は、3つ以上の複数であり、走行車体2(図1および図2参照)の左右方向に並んでいる。本実施形態では、植付装置41は、左から第1植付装置41a、第2植付装置41b、第3植付装置41cおよび第4植付装置41dの4つが順に並んでいる。
なお、苗植付部40(図1および図2参照)は、上記したように、8条植えであり、フレームを兼ねる植付伝動ケース46を備える。植付伝動ケース46は、後部が4つに分岐され、分岐したそれぞれの後端部には、植付装置41を構成する、ロータリケース47と、植付爪42とが設けられる。
すなわち、植付装置41は、第1植付装置41aにより1、2条の植え付けを行い、第2植付装置41bにより3、4条の植え付けを行い、第3植付装置41cにより5、6条の植え付けを行い、第4植付装置41dにより7、8条の植え付けを行う。
部分条クラッチ70は、第1植付装置41a〜第4植付装置41dに対応して複数(4つ)であり、左右方向に並んでいる。本実施形態では、部分条クラッチ70は、左から第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dの4つが順に並んでいる。第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dは、それぞれ対応する第1植付装置41a〜第4植付装置41dに対する動力伝達の入切を行う。
すなわち、部分条クラッチ70は、第1部分条クラッチ70aにより第1植付装置41aに対する動力伝達の入切を行い、第2部分条クラッチ70bにより第2植付装置41bに対する動力伝達の入切を行い、第3部分条クラッチ70cにより第3植付装置41cに対する動力伝達の入切を行い、第4部分条クラッチ70dにより第4植付装置41dに対する動力伝達の入切を行う。
指示部21は、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dに対応して複数(4つ)であり、たとえば、左右方向に並んでいる。本実施形態では、指示部21は、左から第1指示部21a、第2指示部21b、第3指示部21cおよび第4指示部21dの4つが順に並んでいる。第1指示部21a〜第4指示部21dは、後述する入切機構80を操作することで、それぞれ対応する第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dに対する入切指示を行う。
すなわち、指示部21は、操縦者によって、第1指示部21aが押されると第1部分条クラッチ70aの入切指示を行い、第2指示部21bが押されると第2部分条クラッチ70bの入切指示を行い、第3指示部21cが押されると第3部分条クラッチ70cの入切指示を行い、第4指示部21dが押されると第4部分条クラッチ70dの入切指示を行う。
また、指示部21(第1指示部21a〜第4指示部21d)は、押しボタンスイッチであり、好ましくは、押し操作で点灯し、再度の押し操作で消灯するランプスイッチである。なお、指示部21がランプスイッチの場合、たとえば、部分条クラッチ70に対する「入」指示の場合には点灯し、部分条クラッチ70に対する「切」指示の場合には消灯する。
制御部100は、苗移植機1全体を制御し、たとえば、演算処理および各種装置の動作を制御する処理装置(CPU)のようなプロセッサ、プログラムおよびデータを記憶する記憶装置(メモリ)、および入出力インターフェースを含むコンピュータである。
制御部100は、指示部21(第1指示部21a〜第4指示部21d)による部分条クラッチ70(第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70d)に対する入切指示を受け付ける。制御部100は、受け付けた入切指示を、植付装置41(第1植付装置41a〜第4植付装置41d)に実行させる。
制御部100には、苗植付部40の昇降検知手段であるリンクセンサ511と、操舵検知手段であるハンドルセンサ321とが電気的に接続され、それぞれの検知信号が入力されるとともに制御信号を出力する。なお、リンクセンサ511は、昇降リンク51の上昇高さ(回動角)、ハンドルセンサ321は、ハンドル32の切れ角を検知する。
駆動部150は、第1駆動部151と、第2駆動部152とを備える。第1駆動部151は、たとえば、電動モータであり、後述する作動部81のうちの一方の作動部81aを駆動する。第2駆動部152は、第1駆動部151と同様、たとえば、電動モータであり、後述する作動部81のうちの他方の作動部81bを駆動する。駆動部150(第1駆動部151および第2駆動部152)は、制御部100によって動作制御される。
入切機構80は、複数(4つ)の部分条クラッチ70(第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70d)を個別に作動させる。入切機構80は、部分条クラッチ70
を作動させる作動部81を備える。作動部81は、一方の作動部81aと、他方の作動部81bとを備える。
一方の作動部81aは、植付装置41のうち、走行車体2の左部(左右方向の中心よりも左方)に配置された第1植付装置41aおよび第2植付装置41bに対応する第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bを作動させる。すなわち、一方の作動部(以下、「左作動部」という)81aは、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bに対する動力伝達の入切を操作する。
他方の作動部81bは、植付装置41のうち、走行車体2の右部(左右方向の中心よりも右方)に配置された第3植付装置41cおよび第4植付装置41dに対応する第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dを作動させる。すなわち、他方の作動部(以下、「右作動部」という)81bは、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dに対する動力伝達の入切を操作する。なお、左右の作動部81a,81bの具体的な構成については、図4を用いて後述する。
このように、左右の作動部81a,81bを備え、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dを個別に作動させるため、たとえば、作動部81が1つの場合と比べて各作動部81a,81bのそれぞれのずれ量が少なくなり、部分条クラッチ70の動作を安定させることができる。
また、左作動部81aおよび右作動部81bは、4つの部分条クラッチ70のうち、互いに隣接しない部分条クラッチ70を同時に作動させることができる。たとえば、左作動部81aによって、左端に配置された第1植付装置41aに対応する第1部分条クラッチ70a、右作動部81bによって、右端に配置された第4植付装置41dに対応する第4部分条クラッチ70dを同時に作動させることができるなど、操作自由度が向上する。
また、図3に示すように、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dはそれぞれ、クラッチワイヤ71(第1クラッチワイヤ71a〜第4クラッチワイヤ71d)によって入切機構80に接続される。
第1クラッチワイヤ71a、第2クラッチワイヤ71b、第3クラッチワイヤ71cおよび第4クラッチワイヤ71dが入切機構80に引っ張られることで、これらに対応する、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dが「切」となり、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dに対応する、第1植付装置41a、第2植付装置41b、第3植付装置41cおよび第4植付装置41dに対する動力伝達が切れる。
<入切機構80および作動部81>
次に、図4、図5および図6を参照して入切機構80および作動部81について説明する。図4は、入切機構80の説明図であり、入切機構80の正面図である。図5および図6は、左右の作動部81a,81bの各動作パターンの説明図であり、左右の作動部81a,81bの正面図である。
図4に示し、かつ、上記したように、入切機構80は、部分条クラッチ70を作動させる作動部81を備える。作動部81は、回動カム811と、一対のアーム部812,813を有する。回動カム811は、支点814を中心に回動可能な円板カムである。回動カム811は、後述する摺動ピン817が摺動するカム溝815を有する。カム溝815は、回動カム811の外周形状にならって外側に向けて膨らむように湾曲している一対の溝であり、また、一対が対向するように形成される。
一対のアーム部812,813はそれぞれ、回動支点816を中心に回動可能であり、基端部にカム溝815に挿入される摺動ピン817を有する。また、一対のアーム部812,813のそれぞれの基端部には、クラッチワイヤ71が接続される。また、一対のアーム部812,813のそれぞれの先端部には、苗植付部40において苗を載せる積載部45(図1および図2参照)の苗送りベルト43(図2参照)の駆動部に接続されたワイヤ72、および施肥装置90(図1および図2参照)の駆動部に接続されたワイヤ73が接続される。
たとえば、図4のA部に示すように、作動部81は、回動カム811が回動することで、摺動ピン817が回動するカム溝815内を摺動して変位する。これに伴い、基端部がクラッチワイヤ71を引っ張り、対応する部分条クラッチ70(図3参照)を「入」状態とする。また、作動部81は、回動カム811がさらに回動することで、摺動ピン817が回動するカム溝815内を摺動して変位し、先端部が引かれてクラッチワイヤ71を緩め、対応する部分条クラッチ70を「切」状態とする。
また、作動部81は、アーム部812,813の先端部によってワイヤ72,73が引かれることで、苗送りベルト43の駆動および施肥装置90の駆動を「切」状態とし、ワイヤ72,73が緩められることで、苗送りベルト43の駆動および施肥装置90の駆動を「切」状態とする。苗送りベルト43は、苗を送っても植付爪42(図1参照)が作動していないため、「切」状態の部分条クラッチ70に対応する苗送りベルト43の駆動を「切」状態とする。また、施肥装置901は、苗の植え付けが行われない場合には肥料を散布する必要がないため、「切」状態の部分条クラッチ70に対応する施肥装置90の駆動を「切」状態とする。
このように、部分条クラッチ70が「入」状態の場合には苗送りベルト43および施肥装置90の駆動も「入」状態となり、部分条クラッチ70が「切」状態の場合には苗送りベルト43および施肥装置90の駆動も「切」状態となるため、苗が植え付けられた場合には苗送りや肥料の散布を行い、苗が植え付けられない場合には苗送りや肥料の散布を行わないなど、作業内容に適した駆動が可能となる。
また、入切機構80は、ベース部82を備える。ベース部82の取付面821には作動部81が取り付けられる。なお、図4には、紙面右側に左作動部81a、紙面左側に右作動部81bを示している。作動部81である左右の作動部81a,81bは、ベース部82上において左右方向に対称に並んで配置される。すなわち、左右の作動部81a,81bにおける左右の回動カム811a,811bおよび左右の(一対の)アーム部812a,812b,813a,813bは、左右方向に対称に並んで配置される。
ここで、図5および図6を参照して左右の作動部81a,81bの各動作パターンを説明する。なお、図5には、第1部分条クラッチ70aから第4部分条クラッチ70dまでを左から順に切り操作する場合の左右の回動カム811a,811bおよび一対のアーム部812a,812b,813a,813bの動作を示している。また、図6には、第4部分条クラッチ70dから第1部分条クラッチ70aまでを逆順に切り操作する場合の左右の回動カム811a,811bおよび一対のアーム部812a,812b,813a,813bの動作を示している。
また、図5および図6において破線で囲んだ状態(図5(a)および図6(a)に示す状態)は、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dの全てが「入」状態のいわゆる「全条入」状態である。
図5(a)に示すように、「全条入」の場合、左右の一対のアーム部812a,812b,813a,813bはそれぞれ、クラッチワイヤ71(第1クラッチワイヤ71a〜第4クラッチワイヤ71d)を引っ張る。なお、図5(a)示す状態は、左右の作動部81a,81bが共に「全条入」の位置にある。
図5(b)に示すように、第1部分条クラッチ70aのみが「切」の場合、第1指示部21a(図3参照)が押し操作されることで(第1指示部21aが押されて第1部分条クラッチ70aが「入」状態であるときに、第1指示部21aが再度押されることで)左回動カム811aが回動し、左アーム部812aは、基端部が変位して第1クラッチワイヤ71aのみを緩める。
また、図5(c)に示すように、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bが「切」の場合、第2指示部21b(図3参照)が押されることで左回動カム811aがさらに回動し、左アーム部813aは、基端部が変位して第1クラッチワイヤ71aに加えて第2クラッチワイヤ71bを緩める。
また、図5(d)に示すように、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70bおよび第3部分条クラッチ70cが「切」の場合、第3指示部21c(図3参照)が押されることで右回動カム811bが回動し、右アーム部812bは、基端部が変位して第3クラッチワイヤ71cを緩める。
さらに、図5(e)に示すように、第1部分条クラッチ70a、第2部分条クラッチ70b、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dが「切」のいわゆる「全条切」の場合、第4指示部21d(図3参照)が押されることで右回動カム811bがさらに回動し、右アーム部813bは、基端部が変位して第4クラッチワイヤ71dを緩める。
図6(a)に示すように、「全条入」の場合、左右の一対のアーム部812a,812b,813a,813bはそれぞれ、クラッチワイヤ71(第1クラッチワイヤ71a〜第4クラッチワイヤ71d)を引っ張る。なお、図6(a)示す状態は、左右の作動部81a,81bが共に「全条入」の位置にある。
また、図6(b)に示すように、第4部分条クラッチ70dのみが「切」の場合、第4指示部21d(図3参照)が押されることで(第4指示部21dが押されて第4部分条クラッチ70dが「入」状態であるときに、第4指示部21dが再度押されることで)右回動カム811bが回動し、右アーム部813bは、基端部が変位して第4クラッチワイヤ71dのみを緩める。
また、図6(c)に示すように、第4部分条クラッチ70dおよび第3部分条クラッチ70cが「切」の場合、第3指示部21c(図3参照)が押されることで右回動カム811bがさらに回動し、右アーム部812bは、基端部が変位して第4クラッチワイヤ71dに加えて第3クラッチワイヤ71cを緩める。
また、図6(d)に示すように、第4部分条クラッチ70d、第3部分条クラッチ70cおよび第2部分条クラッチ70bが「切」の場合、第2指示部21b(図3参照)が押されることで左回動カム811aが回動し、左アーム部812aは、基端部が変位して第2クラッチワイヤ71bを緩める。
さらに、図6(e)に示すように、「全条切」の場合、第1指示部21a(図3参照)が押されることで左回動カム811aがさらに回動し、左アーム部812aは、基端部が変位して第1クラッチワイヤ71aを緩める。
このように、入切機構80が一方の作動部(左作動部)81aおよび他方の作動部(右作動部)81bを備えることで、たとえば、走行車体2(図1および図2参照)左部の部分条クラッチ70である第1部分条クラッチ70aや第2部分条クラッチ70b、走行車体2右部の部分条クラッチ70である第3部分条クラッチ70cや第4部分条クラッチ70dを左右でそれぞれ個別に作動させることができ、複数の部分条クラッチ70の入切の順番などの制約が少なくなり、部分条クラッチ70の操作自由度が向上する。
本実施形態においては、制御部100は、指示部21によって左右いずれか一方の端、たとえば、左端に配置された第1植付装置41aに対応する第1部分条クラッチ70aから、左右いずれか他方の端、たとえば、右端に配置された第4植付装置41dに対応する第4部分条クラッチ70dまで順に入切指示が行われた場合には、他方の端(右端)から一方の端(左端)までの逆順の入切指示のみを受け付ける。制御部100は、たとえば、左から順に1,2条→3,4条→5,6条→7,8条切の順に作動させた後に「全条入」に復帰させる場合、右ユニットが全条入の位置に到達するまでは左ユニットを1,2条→3,4条切の状態で待機させる。
このような構成によれば、たとえば、左端から右端まで順に入切指示が行われた場合には右端から左端まで逆順の入切指示のみを受け付けるため、入切指示による、間を飛ばした部分条クラッチ70の入切操作、すなわち、誤操作を防止することができる。これにより、たとえば、条を飛ばすような通常行わない苗の植え付けを防止することができる。
また、制御部100は、第1駆動部151の作動中を避けて第2駆動部152を作動させるとともに、第2駆動部152の作動中を避けて第1駆動部151を作動させる。このような構成によれば、第1駆動部151の作動中には第2駆動部152が作動しない、第2駆動部152の作動中には第1駆動部151が作動しないため、すなわち、第1駆動部151および第2駆動部152が同時に作動しないため、左端から右端(または右端から左端)まで順に部分条クラッチ70を作動させる場合に、順番どおりに作動させることができる。
また、制御部100は、指示部21によって左右いずれか一方の端、たとえば、左端に配置された第1植付装置41aに対応する第1部分条クラッチ70aから、左右いずれか他方の端、たとえば、右端に配置された第4植付装置41dに対応する第4部分条クラッチ70dまで順に入切指示が行われた後、同時に複数の入切指示が行われた場合、右端から左端までの逆順の入切指示を、たとえば、所定の時間差を設けて第1駆動部151および第2駆動部152を作動させることで、植付装置41に実行させる。このような構成によれば、たとえば、左端から右端まで順に入切指示が行われた場合、その後の部分条クラッチ70の誤操作を防止することができる。
また、制御部100は、第1部分条クラッチ70aに対応する第1指示部21aによる入切指示が行われた後、第1指示部21aと隣接しない、2つ隣の第3指示部21cによる入切指示が行われると、第3指示部21cによる入切指示を受け付けない。すなわち、制御部100は、たとえば、1,2条→5,6条切の順に作動する制御を行わない。このような構成によれば、左端の入切指示が行われた後に左端から2つ隣の入切指示を受け付けないため、左端から右端まで順に部分条クラッチ70を作動させる場合に、順番どおりに作動させることができる。
また、制御部100は、第4部分条クラッチ70dに対応する第4指示部21dによる入切指示が行われた後、第4指示部21dと隣接しない、2つ隣の第2指示部21bによる入切指示が行われると、第2指示部21bによる入切指示を受け付けない。すなわち、制御部100は、たとえば、7,8条→3,4条切の順に作動する制御を行わない。このような構成によれば、右端の入切指示が行われた後に右端から2つ隣の入切指示を受け付けないため、右端から左端まで順に部分条クラッチ70を作動させる場合に、順番どおりに作動させることができる。
また、左作動部81aは、制御部100に制御される第1駆動部151によって駆動されることで、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bを作動させる。また、右作動部81bは、制御部100に制御される第2駆動部152によって駆動されることで、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dを作動させる。このような構成によれば、第1部分条クラッチ70aから第4部分条クラッチ70dまでを作動させる場合に、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bの作動、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dの作動をそれぞれ個別に行うことができる。これにより、たとえば、作動部が1つの場合と比べて各作動部、すなわち、左作動部81aおよび右作動部81bのそれぞれのずれ量は少なくなり、第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70dの動作を安定させることができる。
また、制御部100は、第1指示部21a、第2指示部21b、第3指示部21cおよび第4指示部21dの順に連続で入切指示が行われた場合、第1駆動部151を作動させ、第1駆動部151による第2部分条クラッチ70bの入切が完了した後、第2駆動部152を駆動させる。このような構成によれば、第1部分条クラッチ70aから第4部分条クラッチ70dの順で作動させる場合に、第1部分条クラッチ70aおよび第2部分条クラッチ70bの作動、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dの作動をそれぞれ個別に行うことができ、かつ、第1部分条クラッチ70aから第4部分条クラッチ70dまでを順番どおりに作動させることができる。
また、制御部100は、第4指示部21d、第3指示部21c、第2指示部21bおよび第1指示部21aの順に連続で入切指示が行われた場合、第2駆動部152を作動させ、第2駆動部152による第3部分条クラッチ70cの入切が完了した後、第1駆動部151を駆動させる。このような構成によれば、第4部分条クラッチ70dから第1部分条クラッチ70aの順(逆順)で作動させる場合に、第3部分条クラッチ70cおよび第4部分条クラッチ70dの作動、第2部分条クラッチ70bおよび第1部分条クラッチ70aの作動をそれぞれ個別に行うことができ、かつ、第4部分条クラッチ70dから第1部分条クラッチ70aまでを順番どおりに作動させることができる。
<左右の作動部81a,81bの各目標動作の具体例>
次に、図7〜図11を参照して、部分条クラッチ70による動力伝達の入切における制御部100(図3参照)の制御による左右の作動部81a,81bの各目標動作の具体例について説明する。図7〜図11は、条切パターンおよび左右の作動部81a,81bの各目標動作の関係を示す図であり、図7(a)は、「右1〜8切」における左右の作動部81a,81bの目標動作、図7(b)は、「右1〜6切」における左右の作動部81a,81bの目標動作である。
また、図8(a)は、「右1〜4切」における左右の作動部81a,81bの目標動作、図8(b)は、「右1,2切」における左右の作動部81a,81bの目標動作である。図9は、「全条入」における左右の作動部81a,81bの目標動作である。
また、図10(a)は、「左1,2切」における左右の作動部81a,81bの目標動作、図10(b)は、「左1〜4切」における左右の作動部81a,81bの目標動作である。図11(a)は、「左1〜6切」における左右の作動部81a,81bの目標動作、図11(b)は、「左1〜8切」における左右の作動部81a,81bの目標動作である。
なお、図7〜図11において、たとえば、「右1〜8切」とは、8条植えの場合に部分条クラッチ70を右から全条(1〜8条)切るパターンであり、たとえば、「右1〜6切」とは、部分条クラッチ70を右から1〜6条切るパターンである。また、たとえば、「左1〜8切」とは、8条植えの場合に部分条クラッチ70を左から全条(1〜8条)切るパターンであり、たとえば、「左1〜6切」とは、部分条クラッチ70を左から1〜6条切るパターンである。
また、図7〜図11において、「左ユニット」とは、左作動部81a(図4参照)を含む、部分条クラッチ70の切り替え操作ユニットであり、「右ユニット」とは、右作動部81b(図4参照)を含む、部分条クラッチ70の切り替え操作ユニットである。
また、図7〜図11において、左ユニットにおける「B,A」の表示は、「左3,4条→1,2条の順に切る位置(図5(c)〜(e)の左作動部81a参照)」であり、左ユニットにおける「B」の表示は、「左3,4条切の位置(図6(d)の左作動部81a参照)」であり、左ユニットにおける「A」の表示は、左1,2条切の位置(図5(b)の左作動部81a参照)」であり、左ユニットにおける「A,B」の表示は、「左1,2条→3,4条の順に切る位置(図6(e)の左作動部81a参照)」である。
また、図7〜図11において、右ユニットにおける「D,C」の表示は、「右1,2条→3,4条の順に切る位置(図6(c)の右作動部81b参照)」であり、右ユニットにおける「D」の表示は、「右1,2条切の位置(図6(b)の右作動部81b参照)」であり、右ユニットにおける「C」の表示は、右3,4条切の位置(図5(d)の右作動部81b参照)」であり、右ユニットにおける「C,D」の表示は、「右3,4条→1,2条の順に切る位置(図5(e)の右作動部81b参照)」である。
たとえば、図4に示す左右の作動部81a,81bを含む2つのユニット(左ユニットおよび右ユニット)によって複数(4つ)の部分条クラッチ70(第1部分条クラッチ70a〜第4部分条クラッチ70d)を作動させる場合、1つのユニットで4条分の部分条クラッチ70を作動させる。このため、部分条クラッチ70を、たとえば、左から順に1,2条(第1部分条クラッチ70a)、3,4条(第2部分条クラッチ70b)、5,6条(第3部分条クラッチ70c)、7,8条(第4部分条クラッチ70d)の順に作動させた後に「全条入」に復帰させる場合、2つのユニットが同時に「全条入」の位置を目標として作動するため、部分条クラッチ70は、1,2条→3,4条→5,6条→7,8条切(全条切)、1,2条→5,6条切、全条入の順で植付装置41に対する動力伝達の入切を行う。このような順番で植付装置41に対する動力伝達の入切が行われると、苗の植え付けに条を飛ばすなどのばらつきが発生してしまう。このため、部分条クラッチ70を、上記したように、左から順または右から順に作動させることが好ましい。
ここから、制御部100の制御による条切パターンおよび左右のユニット(左右の作動部81a,81b)の各目標動作の関係について説明する。
図7(a)は、左右のユニットの両方による全体の目標が「右1〜8切」の場合の条切パターンである。図7(a)に示すように、「右1〜8切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「右1,2切」、「全条入」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。また、左ユニットは、「左1〜6切」、「左1〜8切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「A,B」で待機するよう制御される。右ユニットは、「左1,2切」、「左1〜4切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。
図7(b)は、全体の目標が「右1〜6切」の場合の条切パターンである。図7(b)に示すように、「右1〜6切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「右1,2切」、「全条入」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。また、左ユニットは、「左1〜6切」、「左1〜8切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「A,B」で待機するよう制御される。右ユニットは、「左1,2切」、「左1〜4切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。
図8(a)は、全体の目標が「右1〜4切」の場合の条切パターンである。図8(a)に示すように、「右1〜4切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「左1〜6切」、「左1〜8切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「A,B」で待機するよう制御される。右ユニットは、「左1,2切」、「左1〜4切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。
図8(b)は、全体の目標が「右1,2切」の場合の条切パターンである。図8(b)に示すように、「右1,2切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「左1〜6切」、「左1〜8切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「A,B」で待機するよう制御される。右ユニットは、「右1〜8切」、「右1〜6切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「D,C」で待機するよう制御される。また、右ユニットは、「左1,2切」、「左1〜4切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。
図9は、全体の目標が「全条入」の場合の条切パターンである。図9に示すように、「全条入」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「左1〜6切」、「左1〜8切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「A,B」で待機するよう制御される。右ユニットは、全体が「右1〜8切」、「右1〜6切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「D,C」で待機するよう制御される。
図10(a)は、全体の目標が「左1,2切」の場合の条切パターンである。図10(a)に示すように、「左1,2切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「右1〜4切」、「右1,2切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。また、左ユニットは、全体が「左1〜6切」、「左1〜8切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「A,B」で待機するよう制御される。右ユニットは、全体が「右1〜8切」、「右1〜6切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「D,C」で待機するよう制御される。
図10(b)は、全体の目標が「左1〜4切」の場合の条切パターンである。図10(b)に示すように、「左1〜4切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「右1,2切」、「全条入」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。右ユニットは、全体が「右1〜8切」、「右1〜6切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「D,C」で待機するよう制御される。
図11(a)は、全体の目標が「左1〜6切」の場合の条切パターンである。図11(a)に示すように、「左1〜6切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「右1〜4切」、「右1,2切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。右ユニットは、全体が「右1〜8切」、「右1〜6切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「D,C」で待機するよう制御される。また、右ユニットは、全体が「全条入」、「左1,2切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。
図11(b)は、全体の目標が「左1,2切」の場合の条切パターンである。図11(b)に示すように、「左1,2切」の条切パターンでは、左ユニットは、全体が「右1〜4切」、「右1,2切」の場合に、右ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。右ユニットは、全体が「右1〜8切」、「右1〜6切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「D,C」で待機するよう制御される。また、右ユニットは、全体が「全条入」、「左1,2切」の場合に、左ユニットが作動完了するまで「全条入」で待機するよう制御される。
ここで、図12を参照して部分条クラッチ70の構成について説明する。図12は、部分条クラッチ70の構成の説明図であり、(a)は、部分条クラッチ70の右側面図、(b)は、部分条クラッチ70の背面図である。苗移植機1(図1参照)においては、エンジン10(図1参照)から伝達される動力、すなわち、植付装置41(図1参照)へ伝達される動力の伝動量が低下する位置で部分条クラッチ70を作動させる。
図12に示すように、苗移植機1は、動力伝達部120と、減速部130とをさらに備える。動力伝達部120は、植付装置41へ動力を伝達する。動力伝達部12は、ベルト(たとえば、チェーンベルト)121によって動力を伝達する。減速部130は、植付装置41の動力伝達上流側に設けられ、動力伝達部120の動力伝達下流側において伝動量を低下させる。減速部130は、減速プーリ131を備える。減速部130は、動力伝達部120の動力伝達下流側においてベルト121による動力の伝達回転数を低下させる。
このような構成によれば、伝動量が低くなる位置で部分条クラッチ70を作動させるため、部分条クラッチ70に関係する部品に加わる負荷が低減されて部分条クラッチ70の入り切り動作が安定する。
<直進アシストにおける距離更新制御>
苗移植機1は、ハンドル32(図1参照)の切れ角と、機体の位置情報とに基づいて、制御部100がハンドル32を制御することで、圃場Fにおける機体の自動直進を補助(直進アシスト)する機能を有する。なお、ハンドル32の切れ角に代えて、たとえば、前輪4(図1参照)の切れ角を舵角として検知してもよい。また、機体(苗移植機1)の位置情報は、たとえば、走行車体2(図1参照)に設けられた、位置情報取得装置としてのGNSSユニットにより取得される。
次に、図13を参照して、制御部100(図3参照)による、直進アシストにおける距離更新制御について説明する。図13は、直進アシストにおける距離更新制御の説明図である。図13に示すように、苗移植機1は、圃場F内を往復しながら、所定の作業幅で苗を植え付ける。このとき、直進アシストが実行されることで、ハンドル32を用いた操縦者のマニュアル操作としては、枕地近傍で行う旋回操作だけでよく、直進走行については、苗移植機1は自動直進ラインL1に沿って自動走行する。なお、図13中、符号L2は、枕地における苗移植機1のマニュアル操作による旋回ラインである。また、符号Eは、圃場Fの出入口である。
直進アシストにおける苗移植機1の自動直進ラインL1は、基準ラインL3に対して平行となる。基準ラインL3は、苗の植え付け方向にあわせて、圃場内に予め設定される。すなわち、直進アシストの開始位置および終了位置をそれぞれ基準始点P1および基準終点P2として、制御部100において取得し、取得した基準始点P1および基準終点P2を結ぶ線分を、基準ラインL3として登録(設定)する。
これまでは、基準始点P1を取得した後は、基準終点P2を取り忘れて苗植付部40を上昇されると、基準終点P2の再取得するために、たとえば、基準終点P2の取得予定位置まで戻り、苗植付部40を下降させて基準終点P2を取得し、基準終点P2取得後に苗植付部40を再度上昇させた場合、最後に苗植付部を下げ上げ操作した短い直進距離が基準ラインL3として設定されるおそれがある。
本実施形態では、制御部100は、基準始点P1および基準終点P2を取得する場合、基準始点P1を取得した後は基準終点P2を取得するまで苗植付部40を上昇させても直進距離(基準ラインL3)を更新しない。これにより、基準終点P2を取り忘れて再取得のために苗移植機1を戻した場合でも、基準ラインL3を適切に設定することができる。
<ポット苗用の箱送り制御>
次に、図14および図15を参照して、変形例(苗移植機1A)について説明する。図14は、変形例に係る苗移植機1Aを示す左側面図である。図15は、変形例に係る苗移植機1Aにおける苗植付部40Aを示す左側面図である。
図14に示すように、苗移植機1Aは、育苗されたポット苗が複数配列された樹脂製の苗トレイが供給され、供給された苗トレイからポット苗を取り出して圃場に植え付ける苗植付部40Aを、走行車体2の後部に備える。
苗移植機1Aにおいては、作業者が、苗の植え付け作業中に苗トレイを取り出しながら、取り出した苗トレイを苗植付部40Aの苗トレイ搬送部140へ運び、搬送路141の始端部から順次補給する。なお、搬送路141は、たとえば、植え付け条(2条)あたり1枚の苗トレイを順次搬送し、複数(4つ)の植付装置41Aごとにポット苗を供給する。
図14および図15に示すように、苗移植機1Aは、上段の搬送路141aに2枚、下段の搬送路141bに2枚、それぞれ苗の供給口142a,142bに苗を載せることができる。このように、上段および下段の先端部に苗を載せた方から優先的に植付装置41Aまで苗トレイを搬送するが、連続で(絶え間なく)苗を供給すると、上段および下段のいずれか一方の段の苗のみが供給され、他方の段には苗が載ったままとなり、他方の段に載ったままの苗が乾燥してしまうことがある。
この場合、作業補助者は、たとえば、上段の2枚の苗が植付装置41Aに供給された後、上段が空になると下段の苗が供給されるため、ユニット分(8条植えの場合は全8条分、すなわち、4ユニット分)の苗を供給せずに待つ必要がある。
また、苗を供給するタイミングが来た状態は、4ユニット分の苗が少なくなっている状態であり、作業補助者は、迅速に苗の供給作業を行わなければ、苗が植え付けられない欠株が発生してしまう。また、ポット苗を取り出した苗トレイ(空箱)を回収する空箱回収装置が一時的にストックすることができる数量にも限りがあるため、作業補助者は、空箱が溜まり過ぎないように、空箱を回収しなければならない。ところが、ポット苗用の苗移植機1Aでは、作業者(操縦者)が機体の操作を行い、作業補助者が機体走行中にポット苗の供給および空箱の回収を行う作業形態であるため、ユニット数(条数)が多いほど、作業補助者には多大な労力を強いることになる。
本例では、苗移植機1Aの制御部によって、上段および下段共に苗トレイが載っている場合は、先に供給された一方の段(たとえば、上段)から連続供給が所定回数(最大で2〜3回程度)行われると、他方の段(下段)から供給するよう制御される。このような構成によれば、苗供給する段が自動で切り替わるため、作業補助者は苗トレイを供給するのが上段であるか、または下段であるかを気にすることなく、いずれかの供給口142a,142bに苗トレイを載せればよい。これにより、作業補助者の労力が軽減される。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。