以下に、本発明に係る苗移植機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る苗移植機の側面図である。図2は、実施形態1に係る苗移植機の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、操縦席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。同図に示す苗移植機1の走行車体2は、左右一対の前輪4と、同様に左右一対の後輪5とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。これにより、走行車体2は、圃場を走行することが可能になっている。また、走行車体2の後部には、苗を積載すると共に、積載した苗を植え付けることができ、苗植付部昇降機構50によって昇降可能な苗植付部40が備えられている。
この走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の動力を駆動輪と苗植付部40とに伝える動力伝達装置15と、を備えている。つまり、本実施形態1に係るこの苗移植機1では、エンジン10の動力が走行車体2を前進や後進させるためのみに用いるのみでなく、苗植付部40を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
また、エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置されている。また、フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に渡って設けられており、メインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場に落とせるようになっている。また、このフロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられている。このリアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン10の左右それぞれの側方に配置されている。
エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設されている。即ち、エンジンカバー11は、フロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出した状態で、エンジン10を覆っている。
また、走行車体2には、エンジンカバー11の上部に操縦席28が設置されており、操縦席28の前方で、且つ、走行車体2の前側中央部には、操縦部30が配設されている。この操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。
この操縦部30の内部には、各種の操作装置やエンジン用燃料の燃料タンク等が配設されており、操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられている。また、操縦部30の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル32が配設されている。このハンドル32は、作業者が前輪4を操舵操作することにより走行車体2を操舵する操舵部材として設けられており、操縦部30内の操作装置等を介して前輪4を転舵させることが可能になっている。また、操作レバーとしては、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である主変速レバー35と、走行車体2の走行速度を、走行する場所に応じた速度に切り替える副走行操作部材である副変速レバー36とが、機体右側と左側に配設されている。
また、フロアステップ26における操縦部30の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗を載せておく予備苗載台80が配置されている。この予備苗載台80は、フロアステップ26の床面から突出した支持軸(鉛直軸)によって回転自在に支持されており、作業者の手によって回動させることが可能になっている。
また、動力伝達装置15は、主変速機としての油圧式無段変速機16と、この油圧式無段変速機16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17と、を有している。このうち、油圧式無段変速機16とは、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式の無段変速機として構成されている。このため、油圧式無段変速機16は、エンジン10からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。
この油圧式無段変速機16は、エンジン10よりも前方で、且つ、フロアステップ26の床面よりも下方に配置されており、本実施形態1に係る苗移植機1では、走行車体2の上面から見て、エンジン10の前方に配置されている。
また、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けたベルトと、さらに、このベルトの張力を調整するテンションプーリと、を備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16に伝達可能になっている。
さらに、動力伝達装置15は、エンジン10からの動力がベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されるミッションケース18を有している。このミッションケース18は、メインフレーム7の前部に取り付けられている。ミッションケース18は、ベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されたエンジン10からの動力を、当該ミッションケース18内の副変速機で変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部40への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース21を介して前輪4に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース21は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪4は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース21に連結されている。また、この前輪ファイナルケース21は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸を介して後輪5が連結されている。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部40へ伝達される。
また、走行車体2の後部に備えられる苗植付部40を走行車体2に対して昇降させる苗植付部昇降機構50は、昇降リンク機構51を有しており、苗植付部40は、この昇降リンク機構51を介して走行車体2に取り付けられている。この昇降リンク機構51は、走行車体2の後部と苗植付部40とを連結させる平行リンク機構52を備えている。この平行リンク機構52は、上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム53に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部40に回転自在に連結されることにより、苗植付部40を昇降可能に走行車体2に連結している。
また、苗植付部昇降機構50は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ54を有しており、油圧昇降シリンダ54の伸縮動作によって、苗植付部40を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構50は、その昇降動作によって、苗植付部40を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
また、苗植付部40は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができ、本実施形態1に係る苗移植機1では、苗を4つの区画で植え付ける、いわゆる4条植の苗植付部40になっている。この苗植付部40は、苗植付装置41と、苗載置台45及びフロート61を備えている。このうち、苗載置台45は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、1または複数条の苗を積載する苗タンク100を有し、それぞれの苗タンク100に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載置台45に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を圃場の端(圃場の外)まで取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
また、苗植付装置41は、苗載置台45の機体下方側に配設され、苗載置台45に載置された苗を苗載置台45から取って圃場に植え付ける装置になっており、植付伝動ケース44と、ロータリケース43と、植込杆42と、を有している。このうち、植込杆42は、ロータリケース43に、回転可能に取り付けられており、ロータリケース43は、植付伝動ケース44に回転可能に取り付けられている。植付伝動ケース44は、苗タンク100の下部に配設されると共に、エンジン10から伝達される駆動力をロータリケース43に伝達することが可能になっている。これにより植付伝動ケース44は、苗植付装置41に駆動力を伝動することが可能になっている。ロータリケース43に取り付けられる植込杆42は、ロータリケース43を介して植付伝動ケース44から伝達される駆動力によって回転駆動し、これにより植込杆42は、苗載置台45に載置された苗を苗載置台45から取って圃場に植え付けることが可能になっている。
このように構成される苗植付装置41は、2条毎に1つずつ配設されており、即ち、複数の苗植付装置41は、それぞれ植付条が割り当てられている。また、各植付伝動ケース44は、2条分のロータリケース43及び植込杆42を回転可能に備えており、つまり、1つの植付伝動ケース44には、2つのロータリケース43が、機体左右方向の両側に連結されている。本実施形態1に係る苗移植機1は、この植付伝動ケース44を2つ備えており、これにより苗移植機1は、4条分のロータリケース43及び植込杆42を備えている。
また、フロート61は、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部40の中央に位置するセンターフロート62と、左右方向における苗植付部40の両側に位置するサイドフロート63と、を有している。これらのセンターフロート62とサイドフロート63とは、センターフロート62の前端部がサイドフロート63の前端部よりも前方に位置して形成されている。
また、フロート61は、苗植付部40で植え付ける苗の植付深さを調節する植付深さ調節装置60を構成しており、換言すると、フロート61は植付深さ調節装置60が有している。植付深さ調節装置60は、圃場に対する苗植付部40の上下方向における位置を調節することにより、苗の植付深さを調節することが可能になっており、上下方向におけるフロート61と苗植付部40との相対的な位置を調節することにより、圃場に対する苗植付部40の上下位置を調節可能になっている。
また、苗植付部40の下方側の位置における前側には、苗が植え付けられる圃場面を均し、圃場の整地を行う整地装置である整地ロータ70が設けられている。この整地ロータ70は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって、走行車体2の左右方向に延在する回転軸を中心として回転可能に構成されている。
また、整地ロータ70もフロート61と同様に、走行車体2の左右方向における苗植付部40の中央に位置するセンターロータ71と、左右方向における苗植付部40の両側に位置するサイドロータ72と、を有している。このうち、センターロータ71は、センターフロート62の前方に配設され、サイドロータ72は、サイドフロート63の前方に配設されている。即ち、左右のサイドロータ72は、センターロータ71の左右両側で、且つ、センターロータ71の機体後側に設けられている。
これらのセンターロータ71と左右のサイドロータ72とは、動力伝達機構を備える伝動ケース75によって連結されており、エンジン10からの出力は、伝動ケース75によってセンターロータ71とサイドロータ72との間で伝達される。これにより、センターロータ71とサイドロータ72とは、共にエンジン10からの出力によって回転可能になっている。
また、苗植付部40の左右両側には、次の植付条に植付方向の目安になる線を形成する線引きマーカ85が備えられている。即ち、線引きマーカ85は、苗移植機1が圃場内における植付方向に沿った前進時に、圃場の畦際で転回した後における植付方向に沿って前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ85は、マーカモータ(図示省略)によって作動し、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ85が入れ替わって作動することができるように構成されている。
また、走行車体2における操縦席28の後方には、施肥装置90が搭載されている。この施肥装置90は、肥料を貯蔵する肥料タンク91と、肥料タンク91内の肥料を一定量ずつ下方に繰り出す肥料繰出部92と、繰り出された肥料を施肥ホース94によって苗植付部40側に移送するブロア93と、を有している。さらに、施肥装置90は、苗植付部40の下方に配設されると共に、施肥ホース94によって肥料が移送される施肥ガイド95と、施肥ガイド95の前側に設けられると共に、施肥ホース94によって移送された肥料を、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器96と、を有している。
また、苗植付部40には、苗植付装置41に対して駆動力の伝達と遮断とを切り替えると共に、一部の作業場の植付を停止させることができる部分条クラッチ機構である畦クラッチ機構(図示省略)が設けられており、操縦席28の側方には、畦クラッチ機構を入切する部分条切替レバーである畦クラッチレバー38が配設されている。詳しくは、畦クラッチ機構は、それぞれ植付条が割り当てられている苗植付装置41のうち、一部の苗植付装置41に対して駆動力の伝達と遮断とを切り替えることが可能になっている。畦クラッチレバー38は、この畦クラッチ機構を入切することにより、一部の苗植付装置41を駆動させたり停止させたりすることができる。
図3は、図1に示す苗植付部の側面図である。図4は、図3のA−A矢視図である。苗載置台45が有する苗タンク100は、機体左右方向における両側に配設されている。つまり、苗タンク100は、機体左右方向に2つに分かれており、苗載置台45は、2つの苗タンク100を、機体左右方向における両側に備えている。これらの苗タンク100は、それぞれ2条分の苗を積載可能になっており、2条分の苗タンク100が2つ設けられることにより、苗載置台45は、4条分の苗を積載可能になっている。また、これらのように設けられる2つの苗タンク100は、それぞれ独立して機体左右方向に移動可能になっている。
機体左右方向における苗タンク100同士の間の位置には、非苗載部材であるスペーサ110が配設されている。このスペーサ110は、1条分の条間と同じ左右幅で、機体上下方向における高さが苗タンク100と同程度の高さになる板状の形状で形成されており、機体前後方向における位置が、苗タンク100よりも前方側に位置している。このため、スペーサ110は、苗タンク100が機体左右方向に移動した場合でも、苗タンク100とは干渉せず、苗タンク100とスペーサ110との機体左右方向における位置が同じ位置になった場合でも、苗タンク100とスペーサ110とは機体前後方向に重なるようになっている。
また、苗載置台45の下部には、苗植付装置41が苗タンク100から苗を取った際に、苗の姿勢を整える苗案内部材である苗ガイド115が配設されている。この苗ガイド115は、1つのロータリケース43について1組が配設されており、1組の苗ガイド115は、苗載置台45の下端から下方に延びる左右一対の部材から構成されている。苗植付装置41の駆動時には、ロータリケース43に備えられる植込杆42が、苗ガイド115を構成する一対の部材間を通過しながら駆動する。これにより、苗ガイド115は、苗植付装置41が苗載置台45から苗を取った状態で当該苗ガイド115を通過する際に、植込杆42で取った苗の姿勢を整えることが可能になっている。
このように構成される苗ガイド115は、2つの苗タンク100同士が機体左右方向に1条分の間隔が空いている場合における、それぞれの苗タンク100の各条に対応する部分の機体左右方向の中央付近に設けられている。つまり、苗ガイド115は、苗載置台45の下部に、5条分の苗ガイド115として機体左右方向に等間隔で5つの苗ガイド115を設置した場合における、中央の苗ガイド115を取り除いた状態の4つの苗ガイド115として配設されている。このように配設される苗ガイド115は、苗タンク100の各条に対応して設けられている。
図5は、苗植付装置が取り付けられる苗植付体の平面図である。苗植付部40が有する複数の苗植付装置41は、植付伝動ケース44を支持すると共に、苗植付装置41に駆動力を伝動可能に一体に構成される、苗植付体120に備えられている。この苗植付体120は、苗植付部40のフレームに支持されており、これにより、苗植付装置41が有する複数の植付伝動ケース44は、苗植付部40に取り付けられている。苗植付体120は、内部に植付伝動機構125を有するメインケース121を有しており、メインケース121内の植付伝動機構125には、エンジン10で発生した駆動力をミッションケース18から苗植付装置41に対して伝動する植付ドライブシャフト128が連結されている。これにより、メインケース121内には、ミッションケース18から出力された駆動力が、植付ドライブシャフト128によって伝達可能になっている。また、メインケース121は、植付ドライブシャフト128から伝達された駆動力を複数の植付伝動ケース44に供給する植付伝動軸122を支持しており、植付伝動軸122は、機体左右方向に延在している。
複数の植付伝動ケース44は、メインケース121からの出力軸である植付伝動軸122にそれぞれ前端側が連結されており、これにより、植付伝動ケース44は、植付伝動軸122から駆動力を受けることが可能になっている。各植付伝動ケース44は、内部にチェーン駆動機構48を備えており、それぞれの植付伝動ケース44の後端側には、駆動力をロータリケース43に伝達する植付軸123が、機体左右方向両側に突出している。植付伝動軸122から植付伝動ケース44に入力された駆動力は、内部のチェーン駆動機構48によって植付軸123に伝達され、植付軸123によって出力される。植付軸123には、苗植付装置41のロータリケース43が連結されており、ロータリケース43及び植込杆42は、この植付軸123から出力される駆動力により駆動する。即ち、植付軸123は、ロータリケース43に駆動力を出力することにより、ロータリケース43と共に植込杆42を回転させる。
また、メインケース121には、植付ドライブシャフト128から駆動力を受けて作動し、苗載置台45を機体左右方向に往復摺動させる摺動機構であるリードカム機構130が備えられている。このリードカム機構130は、リードカム軸131と、リードメタル135とを備えている。リードカム軸131は、長手方向が左右方向と平行な状態で、左右方向の移動が規制され、且つ、軸心回りの回転が許容されて、メインケース121に支持されている。リードカム軸131は、エンジン10の駆動力が植付ドライブシャフト128によって伝動されて、エンジン10からの駆動力により軸心回りに回転する。即ち、植付ドライブシャフト128は、リードカム軸131に、エンジン10からの駆動力を伝動する。
リードカム軸131には、リードメタル135を機体左右方向に移動させるための溝部である摺動溝部132が形成されている。この摺動溝部132は、リードカム軸131の長さ方向に向かいつつ、リードカム軸131の周方向に向かう、いわゆる螺旋状の形状で形成されている。螺旋状に形成される摺動溝部132は、螺旋の方向が対称となる2方向の溝を有して形成されている。つまり、摺動溝部132は、周方向における一方向に向かいながら、機体左方向に向かう溝と、周方向において同一方向に向かいつつ、機体右方向に向かう溝とを有しており、これらの溝は、異なる方向に向かう溝同士で交差して形成されている。
また、これらのように異なる方向に向かう溝部は、リードカム軸131の長さ方向における所定の位置で、リードカム軸131の長さ方向には向かわず、リードカム軸131の周方向に向かって形成される。異なる方向に向かう溝部は、このリードカム軸131の長さ方向には向かわずに周方向に向かう部分で繋がり、この部分は、摺動溝部132における折り返し部133として形成される。摺動溝部132は、この折り返し部133が、1つの摺動溝部132の機体左右方向における両端に形成されている。
このため、摺動溝部132を構成し、異なる方向に向かう溝部同士は、連続する1本の溝部として形成されており、1つの摺動溝部132の一部分では、周方向における一方向に向かいながら機体左方向に向かい、別の部分では、周方向における一方向に向かいながら機体右方向に向かって形成されている。摺動溝部132は、機体左右方向における両端に折り返し部133を有することにより、形成方向が異なる溝部が、1本の溝部として連続し、端部が無い状態で形成されている。
リードカム軸131には、このように形成される摺動溝部132が2つ形成されており、一方の摺動溝部132は、リードカム軸131の長さ方向における中央付近よりも機体左側に形成され、他方の摺動溝部132は、リードカム軸131の長さ方向における中央付近よりも機体右側に形成されている。また、これらの摺動溝部132は、共にそれぞれの摺動溝部132における機体左右方向の両端の位置に、折り返し部133を有している。即ち、摺動溝部132は、リードカム軸131の2か所に左右対称となって形成されている。
このように、機体左右方向における両側それぞれに摺動溝部132が形成されるリードカム軸131には、摺動溝部132と同様に機体左右方向における両側それぞれに、リードメタル135が配設されている。この2つのリードメタル135は、それぞれ摺動溝部132が形成される範囲内で、機体左右方向に移動可能になっている。
また、このように2つずつ設けられるリードメタル135と摺動溝部132とは、苗載置台45が有する2つの苗タンク100に対して一対一の関係で設けられている。つまり、機体左側に位置するリードメタル135と摺動溝部132とは、機体左側に位置する苗タンク100に対応し、機体右側に位置するリードメタル135と摺動溝部132とは、機体右側に位置する苗タンク100に対応して設けられている。さらに、リードメタル135には、苗タンク100と連結する苗タンク連結部136が設けられている。このため、機体左側に位置するリードメタル135は、機体左側に位置する苗タンク100に連結され、機体右側に位置するリードメタル135は、機体右側に位置する苗タンク100に連結される。
これらのように形成されるリードカム軸131は、植付ドライブシャフト128によって伝動されるエンジン10からの駆動力が、植付伝動機構125を介してリードカム軸131に伝動されることにより、回転することが可能になっている。リードカム軸131に駆動力を伝動することができる植付伝動機構125は、リードカム軸131に伝動する駆動力の伝達と遮断とを切り替えるクラッチや、駆動力をリードカム軸131に伝達する際の変速比を切り替える変速機構を備えている。
図6は、図5に示すリードメタルの断面図である。リードメタル135には、リードカム軸131の外径よりも若干大きい内径の孔からなる挿通部137が形成されている。リードメタル135は、この挿通部137にリードカム軸131が通されることにより、リードカム軸131に取り付けられる。また、リードメタル135には、挿通部137内に突出するリード爪138を有している。挿通部137にリードカム軸131が通されて、リードメタル135がリードカム軸131に装着される状態では、リード爪138は、リードカム軸131の摺動溝部132に入り込む。このように、リードメタル135が有するリード爪138は、リードカム軸131の摺動溝部132に入り込むことにより、左右の摺動溝部132に接触して、左右の苗タンク100を左右対称となる方向に移動させることができるように設けられている。また、左右2か所の摺動溝部132は、機体左右方向における長さが、苗タンク100を機体左右方向に移動させてもリード爪138と噛み合う長さでそれぞれ形成されている。
図7は、図6に示すリード爪が摺動溝部に入り込む状態の説明図である。リードメタル135が有するリード爪138は、先端に向かうに従って厚さが薄くなる板状の形状で形成されており、その厚さは、摺動溝部132の溝幅よりも薄くなっている。このため、リードメタル135がリードカム軸131に装着される状態では、リード爪138は、リードカム軸131の摺動溝部132に入り込むことが可能になっている。
また、リード爪138は、当該リード爪138の厚さ方向と直交する方向における長さが、摺動溝部132の溝幅よりも大きくなっている。このため、異なる方向に向かう溝同士で交差して形成される摺動溝部132に入り込んだリード爪138が、この交差部分に位置する場合は、リード爪138は、摺動溝部132が有する溝のうち、リード爪138の長さ方向に平行な方向の溝に沿った方向にのみ、摺動溝部132に対して相対移動が可能になっている。
リード爪138は、摺動溝部132に入り込んだ状態のリード爪138の摺動溝部132の深さ方向に見た場合におけるリード爪138の長さ方向の向きが、変化することができるように、リードメタル135に設けられている。つまり、リード爪138は、挿通部137の径方向に延びる回転軸を中心として回転可能になっており、これにより、リード爪138は、回転軸を中心として回転し、摺動溝部132の向きに合わせて向きが変化することが可能になっている。
本実施形態1に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。苗移植機1の運転時は、エンジン10で発生する動力によって、走行車体2の走行と、苗載置台45に載せた苗の植付作業を行う。この植付作業は、苗植付装置41の植付軸123が左右方向になる向きでロータリケース43が回転しながら、植込杆42も回転することにより、苗載置台45に載せられた苗を順次植込杆42で取り、取った苗を徐々に圃場に植え付ける。
また、走行車体2の走行時には、エンジン10で発生した動力はベルト式動力伝達機構17に伝達され、ベルト式動力伝達機構17から油圧式無段変速機16に伝達されて、油圧式無段変速機16で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速機16から出力された動力は、ミッションケース18に伝達され、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植え付け時の走行速度に適した回転速度にミッションケース18内で変速されて、前輪4側や後輪5側に出力される。
また、ミッションケース18から出力される動力の一部は、ミッションケース18内で変速された後、植付ドライブシャフト128によって苗植付部40側にも伝達され、苗植付部40での植付作業にも用いられる。苗植付体120では、植付ドライブシャフト128によって伝達された駆動力が、植付伝動軸122によって各植付伝動ケース44に伝達される。各植付伝動ケース44は、植付伝動軸122によって伝達された駆動力を、植付伝動ケース44に内設されているチェーン駆動機構48によって植付軸123に伝達する。植付軸123は、このように伝達された駆動力によって回転し、植付軸123に連結されているロータリケース43は、植付軸123から駆動力が伝達されることにより、回転駆動する。さらに、ロータリケース43に取り付けられる植込杆42は、ロータリケース43が回転することに伴い、ロータリケース43に対して相対回転をする。これにより、植込杆42は、苗載置台45に載せられた苗を順次取り、徐々に圃場に植え付ける。
これらのように、苗植付装置41を駆動させることにより苗の植付作業を行う際には、苗載置台45の苗タンク100を所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させながら行う。これにより、苗植付装置41は、植込杆42によって苗タンク100から苗を取り出す際における苗タンク100に対して、苗の取り出し時に機体左右方向において植込杆42が位置する部分から苗を取り出し、圃場に植え付ける。即ち、苗植付装置41は、苗載置台45における所定の条に対応する部分から苗を取り出して、圃場上の所定の条に苗を植え付ける。植付作業時は、このように苗植付装置41を作動させながら圃場内を走行車体2で走行することにより、複数の列状に苗を植え付ける。
苗の植付作業時には、このように苗タンク100を機体左右方向に往復移動させるが、機体左右方向への苗タンク100の移動は、リードカム機構130によって行う。詳しくは、エンジン10からの駆動力が植付ドライブシャフト128によって苗植付体120に伝達された際には、この駆動力は、植付伝動機構125を介してリードカム軸131に伝達される。これにより、リードカム軸131は、回転駆動する。リードカム軸131には、リードメタル135が取り付けられており、リードメタル135は、当該リードメタル135が有するリード爪138が、リードカム軸131に形成される摺動溝部132に入り込んだ状態で取り付けられている。また、リードメタル135は、苗タンク連結部136によって苗タンク100に連結されており、リードカム軸131の回転軸を中心とする周方向には回転せず、リードカム軸131の長さ方向には、苗タンク100と共に移動可能に設けられている。
一方、リードカム軸131に形成される摺動溝部132は、リードカム軸131の長さ方向に向かいつつ、リードカム軸131の周方向に向かう溝によって形成されている。このため、リードカム軸131が回転した際には、リードメタル135は、摺動溝部132に入り込んでいるリード爪138が摺動溝部132に沿って、リードカム軸131の長さ方向、即ち、機体左右方向に移動することにより、機体左右方向に移動する。これにより、リードメタル135に取り付けられる苗タンク100は、リードメタル135と共に機体左右方向に移動する。
また、摺動溝部132には、機体左右方向における両端に折り返し部133が形成されており、リードメタル135のリード爪138は、挿通部137の径方向に延びる回転軸を中心として回転することにより、摺動溝部132の向きに合わせて向きが変わるようになっている。このため、リードメタル135が機体左右方向に移動し、リード爪138が折り返し部133に到達した場合は、摺動溝部132の形成方向が折り返し部133で変化することに伴い、リード爪138の向きが変わる。
つまり、摺動溝部132は、周方向に対して機体左右方向に向かう向きが、折り返し部133で変化しており、リードカム軸131が回転することによって機体左右方向に移動して折り返し部133に近付き、折り返し部133に到達したリード爪138は、機体左右方向における移動方向が折り返し部133で変化する。これにより、リード爪138は、リードカム軸131の回転方向が一方向のまま、機体左右方向における移動方向が変化する。その際に、リード爪138は、摺動溝部132の形成方向に沿った向きに回転し、摺動溝部132が有する溝部同士の交差部で、交差する側の溝部にリード爪138が入り込まないようになっている。
リードメタル135は、リードカム軸131の回転に伴って、リード爪138が摺動溝部132の折り返し部133間で機体左右方向に往復移動することにより、リードメタル135全体が機体左右方向に往復移動する。これにより、苗タンク連結部136に連結されている苗タンク100も、リードメタル135と共に機体左右方向に往復移動する。その際に、機体左右方向における両側に設けられているリードメタル135は、左右対称となる方向に移動し、このため、機体左右方向の両側に設けられる苗タンク100も、左右対称となる方向に移動する。
つまり、リードカム機構130を作動させると、左右の苗タンク100が左右対称となる方向に機体左右方向に移動する。また、リードメタル135は、摺動溝部132の折り返し部133間で往復移動するため、リードメタル135と一体となって移動する苗タンク100は、スペーサ110上で接触する状態から、左右の苗タンク100が離間してスペーサ110の全幅が現れる範囲に亘って移動する。
図8は、図4に示す苗タンクが機体左右方向に移動する際の説明図である。リードカム機構130の作動時における左右の苗タンク100の移動について説明すると、例えば、機体左右方向における左側に位置する苗タンク100が機体右方向に移動すると、機体左右方向における右側に位置する苗タンク100は、機体左方向に移動する。つまり、機体左右方向における両側に位置する苗タンク100は、共に機体左右方向における内側方向に移動する。その際に、スペーサ110は、苗タンク100とは機体前後方向における位置が異なる位置になっているため、苗タンク100はスペーサ110に干渉することなく、スペーサ110の機体後方側の位置で機体左右方向に移動する。
図9は、図8に示す苗タンクが機体左右方向における内側方向に移動する際の説明図である。左右の苗タンク100が機体左右方向における内側方向に移動する場合、苗タンク100は、リードメタル135のリード爪138が、リードカム軸131が有する摺動溝部132における機体左右方向内側に位置する折り返し部133に到達するまで移動する。リードカム機構130が作動することにより、左右の苗タンク100が機体左右方向における内側方向に移動する際には、機体左右方向の両側に位置するリードメタル135は、双方のリードメタル135のリード爪138が、摺動溝部132における機体左右方向内側の折り返し部133に、ほぼ同じタイミングで到達する。
リードメタル135のリード爪138が、摺動溝部132における機体左右方向内側の折り返し部133に到達した際には、左右のリードメタル135に連結される左右の苗タンク100は、スペーサ110の機体後方側で接触する。即ち、左右の苗タンク100は、機体左右方向における内側端部が、スペーサ110上で接触する。このように、左右の苗タンク100がスペーサ110上で接触する状態では、各苗タンク100は、それぞれの苗タンク100が有する各条における機体左右方向の外側端部寄りの位置が、機体左右方向において、各条に対応する苗ガイド115が配設されている位置近傍に位置する状態になる。
図10は、図9に示す苗タンクが機体左右方向における外側方向に移動する際の説明図である。リードカム機構130の作動時には、リードメタル135のリード爪138が、摺動溝部132における機体左右方向内側の折り返し部133に到達した後も、リードカム軸131の回転が継続することにより、リード爪138は、機体左右方向における移動方向が折り返される。つまり、摺動溝部132における機体左右方向内側の折り返し部133に向かって移動していたリード爪138は、機体左右方向における移動方向が折り返し部133で変化し、機体左右方向における外側方向に向かって移動する。これにより、左右のリードメタル135は、共に機体左右方向における外側方向に向かって移動し、リードメタル135に連結される左右の苗タンク100も、共に機体左右方向における外側方向に向かって移動する。このように、左右のリードメタル135が、共に機体左右方向における外側方向に移動する際には、リードメタル135に連結される左右の苗タンク100も、共に機体左右方向における外側方向に移動する。
左右の苗タンク100が機体左右方向における外側方向に移動する場合、苗タンク100は、リードメタル135のリード爪138が、リードカム軸131が有する摺動溝部132における機体左右方向外側に位置する折り返し部133に到達するまで移動する。リードカム機構130が作動することにより、左右の苗タンク100が機体左右方向における外側方向に移動する際には、機体左右方向の両側に位置するリードメタル135は、双方のリードメタル135のリード爪138が、摺動溝部132における機体左右方向外側の折り返し部133に、ほぼ同じタイミングで到達する。
リードメタル135のリード爪138が、摺動溝部132における機体左右方向外側の折り返し部133に到達した際には、左右のリードメタル135に連結される左右の苗タンク100は、機体左右方向における内側端部が、機体左右方向におけるスペーサ110の外側端部近傍に位置する状態になる。即ち、左右の苗タンク100が機体左右方向に離間して、スペーサ110の全幅が現れる。このように、左右の苗タンク100が離間してスペーサ110の全幅が現れる状態では、各苗タンク100は、それぞれの苗タンク100が有する各条における機体左右方向の内側端部寄りの位置が、機体左右方向において、各条に対応する苗ガイド115が配設されている位置近傍に位置する状態になる。
苗の植付作業時は、リードカム機構130が作動することにより、左右対称となる方向に機体左右方向に移動する苗タンク100は、これらのように、スペーサ110上で接触する状態から、左右の苗タンク100が離間してスペーサ110の全幅が現れる範囲に亘って移動する。
さらに、左右の苗タンク100は、それぞれの苗タンク100が有する各条に対応する苗ガイド115に対する機体左右方向における相対的な位置が、各条の機体左右方向における一端側から他端側にかけて変化しながら、機体左右方向に往復移動する。これにより、苗タンク100で積載する苗を植込杆42で取る際には、苗タンク100の各条の機体左右方向における端から端にかけて順次苗を取ることができ、植込杆42は、このように取った苗を圃場に植え付ける。その際に、苗植付部40には、1条分の条間と同じ左右幅のスペーサ110が設けられているため、圃場には、機体左右方向においてスペーサ110が位置する部分には苗が植え付けられずに、1条分の間隔が空いた状態で苗が植え付けられる。
以上の実施形態1に係る苗移植機1は、機体左右方向における両側に配設される苗タンク100を苗載置台45に設け、左右の苗タンク100は、リードカム機構130を作動させることにより左右対称となる方向に機体左右方向に移動するように構成している。さらに、苗タンク100は、機体左右方向に往復移動する際には、1条分の条間と同じ左右幅で形成されるスペーサ110上で接触する状態から、左右の苗タンク100が離間してスペーサ110の全幅が現れる範囲に亘って移動可能としている。これにより、圃場には、機体左右方向における中央付近に1条分の間隔を空けて、苗を植え付けることができる。この結果、苗を圃場に植え付けつつ、苗同士の間に作業者の移動空間を形成することができる。また、苗同士の間に作業者の移動空間を形成することにより、作業者が圃場内を歩いて作業する際に苗を踏み難くすることができ、作業能率が向上すると共に、生育しなくなる苗の発生を防止することができる。
また、左右の苗タンク100は、左右対称となる方向に機体左右方向に移動するため、機体左右方向に苗タンク100を移動させながら植付作業を行う際に、苗タンク100の移動に伴って機体左右方向のバランスがくずれることを抑制することができる。この結果、走行車体2を安定させた状態で苗の植付作業を行うことができる。
また、リードカム軸131の2か所に左右対称に摺動溝部132を形成したことにより、部品点数の増加量を抑えることができる。この結果、機体重量の増加や、メンテナンス性の低下を防止することができる。また、リードカム軸131の2か所に左右対称に摺動溝部132を形成したことにより、左右の苗タンク100の左右幅を変更しても左右対称に移動させることができ、汎用性を向上させることができる。
〔実施形態2〕
実施形態2に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と略同様の構成であるが、リードカム軸が複数設けられている点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図11は、実施形態2に係る苗移植機が有する苗植付体の平面図である。本実施形態2に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と同様に、苗載置台45は、機体左右方向における両側に2つの苗タンク100を備えている。また、本実施形態2に係る苗移植機1では、苗植付体120に備えられる摺動機構であるリードカム機構140は、第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とを有しており、第1リードカム軸141に取り付けられる第1リードメタル145と、第2リードカム軸151に取り付けられる第2リードメタル155と、を有している。
このうち、第1リードカム軸141は、左右の苗タンク100のうち、右側の苗タンク100を左右摺動させることが可能になっており、第2リードカム軸151は、左右の苗タンク100のうち、左側の苗タンク100を左右摺動させることが可能になっている。これらの第1リードカム軸141や第2リードカム軸151に対して駆動力を伝動する植付伝動機構125は、機体左右方向における第1リードカム軸141や第2リードカム軸151の右端側に位置している。このため、植付伝動機構125は、第1リードカム軸141や第2リードカム軸151に対して、右端側から駆動力を伝動することが可能になっている。
また、第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とでは、長さが異なっている。具体的には、右側の苗タンク100を左右摺動させることができる第1リードカム軸141は、機体左右方向において、実施形態1に係る苗移植機1のリードカム軸131の摺動溝部132のうち右側の摺動溝部132が形成される領域を満たすことができる程度の長さで、植付伝動機構125から機体左側に向けて延びている。これに対し、左側の苗タンク100を左右摺動させることができる第2リードカム軸151は、機体左右方向において、実施形態1に係る苗移植機1のリードカム軸131の摺動溝部132のうち左側の摺動溝部132が形成される領域を満たすことができるように、第1リードカム軸141よりも長い長さで、植付伝動機構125から機体左側に向けて延びている。
これらのように形成される第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とには、実施形態1に係る苗移植機1のリードカム軸131に形成される摺動溝部132と同様な形状の第1摺動溝部142または第2摺動溝部152が形成されている。具体的には、第1摺動溝部142は、実施形態1に係る苗移植機1のリードカム軸131の摺動溝部132のうち右側の摺動溝部132が形成される位置と同等な位置に、摺動溝部132と同等の長さで、第1リードカム軸141に形成されている。また、第2摺動溝部152は、実施形態1に係る苗移植機1のリードカム軸131の摺動溝部132のうち左側の摺動溝部132が形成される位置と同等な位置に、摺動溝部132と同等の長さで、第2リードカム軸151に形成されている。
また、第1リードカム軸141には、第1摺動溝部142に第1リード爪148が入り込むことにより、第1リードカム軸141に接触する第1リードメタル145が取り付けられており、右側の苗タンク100は、この第1リードメタル145に連結される。同様に、第2リードカム軸151には、第2摺動溝部152に第2リード爪158が入り込むことにより、第2リードカム軸151に接触する第2リードメタル155が取り付けられており、左側の苗タンク100は、この第2リードメタル155に連結される。
さらに、第1リードカム軸141には、畦クラッチレバー38の操作に連動して第1リードカム軸141の回転を入切する第1クラッチ爪161が設けられている。この第1クラッチ爪161は、畦クラッチレバー38の操作に連動して作動することにより、植付伝動機構125から伝達される駆動力によって回転する第1リードカム軸141を回転させたり停止させたりすることが可能になっている。同様に、第2リードカム軸151には、畦クラッチレバー38の操作に連動して第2リードカム軸151の回転を入切する第2クラッチ爪162が設けられており、第2クラッチ爪162は、畦クラッチレバー38の操作に連動して作動することにより、第2リードカム軸151を回転させたり停止させたりすることが可能になっている。
本実施形態2に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態2に係る苗移植機1においても、苗の植付作業を行う際には、苗載置台45の苗タンク100を所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させながら行う。その際に、本実施形態2に係る苗移植機1では、リードカム機構140は、第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とを有しており、苗の植付作業時には、この第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とが回転駆動することにより、苗タンク100は機体左右方向に移動する。
詳しくは、エンジン10からの駆動力が植付ドライブシャフト128によって苗植付体120に伝達された際には、この駆動力は、植付伝動機構125を介して第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とに伝達される。これにより、第1リードカム軸141と第2リードカム軸151とは、共に回転駆動する。このうち、第1リードカム軸141には、第1リードメタル145が取り付けられており、第1リードメタル145は、第1リード爪148が、第1リードカム軸141に形成される第1摺動溝部142に入り込んだ状態で取り付けられている。また、第1リードメタル145は、右側の苗タンク100に連結されている。
このため、第1リードカム軸141が回転した際には、第1リードメタル145は、第1摺動溝部142に入り込んでいる第1リード爪148が第1摺動溝部142に沿って機体左右方向に移動することにより、機体左右方向に移動する。その際に、第1リードメタル145は、第1リードカム軸141が回転し続けることにより機体左右方向に往復移動する。これにより、第1リードメタル145に取り付けられる右側の苗タンク100は、第1リードメタル145と共に、機体左右方向に往復移動する。
また、第2リードカム軸151には、第2リードメタル155が取り付けられており、第2リードメタル155は、第2リード爪158が、第2リードカム軸151に形成される第2摺動溝部152に入り込んだ状態で取り付けられている。また、第2リードメタル155は、左側の苗タンク100に連結されている。このため、第2リードカム軸151が回転した際には、第2リードメタル155は、第2摺動溝部152に入り込んでいる第2リード爪158が第2摺動溝部152に沿って機体左右方向に移動することにより、機体左右方向に往復移動する。これにより、第2リードメタル155に取り付けられる左側の苗タンク100は、第2リードメタル155と共に、機体左右方向に往復移動する。
これらのように、左右の苗タンク100のうち、右側の苗タンク100は、第1リードカム軸141と第1リードメタル145との作用により、機体左右方向に往復移動し、左側の苗タンク100は、第2リードカム軸151と第2リードメタル155との作用により機体左右方向に往復移動するが、この移動は、左右対称となって移動する。つまり、右側の苗タンク100が機体左右方向外側に移動する際には、左側の苗タンク100も機体左右方向外側に移動し、右側の苗タンク100が機体左右方向内側に移動する際には、左側の苗タンク100も機体左右方向内側に移動する。これらのように、機体左右方向に往復移動する苗タンク100は、スペーサ110上で接触する状態から、左右の苗タンク100が離間してスペーサ110の全幅が現れる範囲に亘って移動する。
また、作業者が畦クラッチレバー38を操作することにより、畦クラッチ機構の切替操作を行った場合には、第1クラッチ爪161と第2クラッチ爪162とが畦クラッチレバー38の操作に連動し、第1リードカム軸141や第2リードカム軸151は、第1クラッチ爪161と第2クラッチ爪162によって、回転状態が切り替えられる。
例えば、作業者が、右側の苗タンク100に対応する苗植付装置41への駆動力の伝達を遮断するように畦クラッチレバー38を操作した場合には、この苗植付装置41の動作が停止すると共に、第1クラッチ爪161が連動し、第1クラッチ爪161は、第1リードカム軸141への駆動力の伝達を遮断する。これにより、右側の苗タンク100に対応する苗植付装置41での苗の植え付け動作が停止すると共に、右側の苗タンク100の機体左右方向における移動も停止する。これらの状態で、右側の苗タンク100に対応する苗植付装置41に対して駆動力を伝達するように畦クラッチレバー38を操作した場合には、この苗植付装置41の動作が再開すると共に、第1クラッチ爪161が連動し、第1リードカム軸141への駆動力の伝達を再開する。これにより、右側の苗タンク100に対応する苗植付装置41での苗の植え付け動作が再開すると共に、右側の苗タンク100の機体左右方向における往復移動も再開する。
これと同様に、左側の苗タンク100に対応する苗植付装置41への駆動力の伝達を切り替える畦クラッチレバー38を操作した場合には、畦クラッチレバー38の操作に応じて、左側の苗タンク100に対応する苗植付装置41の動作が切り替えられると共に、左側の苗タンク100の機体左右方向における移動状態も切り替えられる。これらのように、畦クラッチレバー38を操作した際には、苗植付装置41の動作状態が切り替えられると共に、左右の苗タンク100のうち、苗植付装置41に対応する苗タンク100の機体左右方向の移動状態も切り替えられる。
以上の実施形態2に係る苗移植機1は、畦クラッチレバー38の切操作に連動して、対応する第1リードカム軸141または第2リードカム軸151の回転が停止することにより、一部の苗植付装置41を停止させる際に、対応する側の苗タンク100が移動しないようにすることができる。これにより、畦クラッチレバー38を入操作した際に、苗タンク100における苗を取る位置を、前回の続きの位置からにすることができる。この結果、苗が偏って取られることや、空間部を苗植付装置41が通過し、欠株が生じることが防止することができる。
〔実施形態3〕
実施形態3に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と略同様の構成であるが、左右の苗タンクが機体前後方向に偏倚している点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図12は、実施形態3に係る苗移植機の平面図である。図13は、実施形態3に係る苗移植機の側面図である。本実施形態3に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と同様に、苗載置台45は、機体左右方向における両側に2つの苗タンク100を備えている。また、本実施形態3に係る苗移植機1では、左右の苗タンク100は、機体前後方向に偏倚させて配置されている。例えば、図12に示すように、左右の苗タンク100のうち、右側に位置する苗タンク100が、左側に位置する苗タンク100よりも機体前側に位置している。
また、苗植付部40は、実施形態1に係る苗移植機1の苗植付部40と同様にスペーサ110を有しており、機体前後方向に偏倚している左右の苗タンク100は、いずれもスペーサ110よりも機体後方側に配設されている。また、これらの左右の苗タンク100は、実施形態1に係る苗移植機1と同様に、苗の植付作業時には、スペーサ110上で接触する状態から、左右の苗タンク100が離間してスペーサ110の全幅が現れる範囲に亘って、左右対称となる方向に機体左右方向に移動可能になっている。
また、苗タンク100の下部には、左右の苗タンク100に対応する左右の苗植付装置41に駆動力を伝動する植付伝動ケース44が各々配設されている。即ち、左側の苗タンク100の下部には、左側の苗タンク100に対応する苗植付装置41に駆動力を伝動する植付伝動ケース44が配設されており、右側の苗タンク100の下部には、右側の苗タンク100に対応する苗植付装置41に駆動力を伝動する植付伝動ケース44が配設されている。
これらの植付伝動ケース44から伝達される駆動力によって駆動する苗植付装置41は、機体前後方向における位置が異なる、左右の苗タンク100から取った苗を、機体前後方向において同じ位置に植え付けることができるようになっている。具体的には、苗植付装置41は、機体前側に位置する苗タンク100に対応する植付伝動ケース44による苗植付装置41の植付軌跡Tpと、機体後側に位置する苗タンク100に対応する植付伝動ケース44による苗植付装置41の植付軌跡Tpと、が異なるように構成されている。この苗植付装置41の植付軌跡Tpは、ロータリケース43内の伝動ギヤ(図示省略)の形態を苗植付装置41に応じて異ならせることにより、植付軌跡Tpが所望の軌跡になるようになっている。これにより、機体前側に位置する苗タンク100から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置41と、機体後側に位置する苗タンク100から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置41とで、取った苗を圃場に植え付ける際の前後方向における位置が、同じ位置になるようになっている。
また、本実施形態3に係る苗移植機1では、実施形態2に係る苗移植機1と同様に、苗タンク100の移動状態を畦クラッチレバー38の操作に連動させることが可能になっている。つまり、苗の植付作業時に畦クラッチレバー38を切操作した際には、この操作によって停止した苗植付装置41に対応する苗タンク100の移動を停止させることが可能になっている。
本実施形態3に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態3に係る苗移植機1においても、苗の植付作業を行う際には、苗載置台45の苗タンク100を所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させながら行う。その際に、左右の苗タンク100は、前後に偏倚させて配置されているため、それぞれの苗タンク100は、機体左右方向におけるいずれの位置に移動する場合でも、苗タンク100同士が干渉することなく、移動することができる。
また、畦クラッチレバー38を操作することにより、一部の苗植付装置41の植え付け動作を停止させる際には、停止する苗植付装置41に対応する苗タンク100の機体左右方向の移動も停止する。左右の苗タンク100は、前後に偏倚させて配置されているため、このように、左右の苗タンク100のうち一方の苗タンク100が停止した場合でも、他方の苗タンク100の機体左右方向の移動時に苗タンク100同士が干渉することなく、往復移動することができる。苗の植付作業時には、このように、確実に機体左右方向に往復移動する苗タンク100から、苗植付装置41で苗を取って圃場に植え付けることができる。
また、苗植付装置41は、機体前側に位置する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、機体後側に位置する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、で異なるように形成されており、双方の苗植付装置41は、取った苗を圃場に植え付ける際の前後方向における位置が、同じ位置になるようになっている。これにより、苗植付装置41は、苗を取り出す部分の前後方向における位置が、左右の苗タンク100で異なっているにも関わらず、圃場への植え付け位置は、左右の苗タンク100で、機体前後方向の位置を揃えることができる。
以上の実施形態3に係る苗移植機1は、左右の苗タンク100を前後に偏倚させて配置したことにより、左右どちらかの苗タンク100の移動を停止させている際に、他方の苗タンク100の移動を妨げないようにすることができる。この結果、各苗タンク100の移動幅を十分に確保することができ、苗タンク100に積載されている苗を、苗植付装置41で適切に取ることができる。
また、苗植付装置41は、左右の苗タンク100の苗植付装置41で植付軌跡Tpが異なっているため、前後方向に偏倚して配置される左右の苗タンク100から苗を取って圃場に植え付ける際に、苗の植付位置を左右方向で揃えることができる。この結果、苗を適切な位置に植え付けることができる。
〔実施形態4〕
実施形態4に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と略同様の構成であるが、左右の苗タンクの間に中央苗タンクを有している点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図14は、実施形態4に係る苗移植機が有する苗タンクの概略図である。本実施形態4に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と同様に、苗載置台45は、機体左右方向における両側に2つの苗タンク100を備えている。また、本実施形態4に係る苗移植機1では、苗載置台45は、左右の苗タンク100の左右間に位置する苗タンク100である中央苗タンク103を有している。この中央苗タンク103は、左右の苗タンク100から機体前側または機体後側に偏倚させて配置されており、例えば、中央苗タンク103は、左右の苗タンク100よりも機体後側に偏倚させて配置されている。この中央苗タンク103は、左右の苗タンク100と同様に、1または複数条の苗を積載することが可能になっており、本実施形態4に係る苗移植機1では、中央苗タンク103は、2条の苗を積載することが可能になっている。
図15は、実施形態4に係る苗移植機が有する苗植付体の平面図である。本実施形態4に係る苗移植機1では、苗植付体120に備えられる摺動機構であるリードカム機構170は、左右の苗タンク100を摺動させるリードカム軸131に加え、中央苗タンク103を摺動させる中央リードカム軸171を有している。また、リードカム機構170は、中央リードカム軸171に取り付けられる中央リードメタル175を有している。これらのリードカム軸131や中央リードカム軸171に対して駆動力を伝動する植付伝動機構125は、機体左右方向におけるリードカム軸131や中央リードカム軸171の右端側に位置している。このため、植付伝動機構125は、リードカム軸131や中央リードカム軸171に対して、右端側から駆動力を伝動することが可能になっている。
また、中央リードカム軸171には、リードカム軸131に形成される摺動溝部132と同様な形状の中央摺動溝部172が形成されている。また、中央リードカム軸171には、中央摺動溝部172に中央リード爪178が入り込むことにより、中央リードカム軸171に接触する中央リードメタル175が取り付けられており、中央苗タンク103は、この中央リードメタル175に連結される。
また、中央苗タンク103は、左右の苗タンク100とは機体前後方向の位置が異なっているが、苗植付装置41は、中央苗タンク103は左右の苗タンク100から取った苗を、機体前後方向において同じ位置に植え付けることができるようになっている。具体的には、中央苗タンク103に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpを、左右の苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと異ならせている。これにより、中央苗タンク103から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置41と、左右の苗タンク100から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置41とで、取った苗を圃場に植え付ける際の前後方向における位置が、同じ位置になるようになっている。
本実施形態4に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態4に係る苗移植機1においても、苗の植付作業を行う際には、苗載置台45の苗タンク100を所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させながら行うが、本実施形態4に係る苗移植機1では、左右の苗タンク100のみでなく、中央苗タンク103も、所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させる。その際に、中央苗タンク103は、左右の苗タンク100に対して機体前後方向の位置が偏倚しているため、中央苗タンク103は、機体左右方向におけるいずれの位置に移動する場合でも、左右の苗タンク100に干渉することなく移動することができる。
このように機体左右方向に往復移動する中央苗タンク103は、中央リードカム軸171が回転駆動することにより機体左右方向に移動する。詳しくは、エンジン10からの駆動力が植付ドライブシャフト128によって苗植付体120に伝達された際には、この駆動力の一部は、植付伝動機構125を介して中央リードカム軸171に伝達される。これにより、中央リードカム軸171は回転駆動する。この中央リードカム軸171には、中央リードメタル175が取り付けられており、中央リードメタル175は、中央リード爪178が、中央リードカム軸171に形成される中央摺動溝部172に入り込んだ状態で取り付けられている。また、中央リードメタル175は、中央苗タンク103に連結されている。
このため、中央リードカム軸171が回転した際には、中央リードメタル175は、中央摺動溝部172に入り込んでいる中央リード爪178が中央摺動溝部172に沿って機体左右方向に移動することにより、機体左右方向に移動する。その際に、中央リードメタル175は、中央リードカム軸171が回転し続けることにより機体左右方向に往復移動する。これにより、中央リードメタル175に取り付けられる中央苗タンク103は、中央リードメタル175と共に、機体左右方向に往復移動する。
また、苗植付装置41は、中央苗タンク103に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、左右の苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、で異なるように形成されており、これら苗植付装置41は、取った苗を圃場に植え付ける際の前後方向における位置が、同じ位置になるようになっている。これにより、苗植付装置41は、苗を取り出す部分の前後方向における位置が、中央苗タンク103と左右の苗タンク100とで異なっているにも関わらず、圃場への植え付け位置は、中央苗タンク103及び左右の苗タンク100で、機体前後方向の位置を揃えることができる。
以上の実施形態4に係る苗移植機1は、中央苗タンク103を独立して左右に移動させることができるので、苗の植え付け後の圃場における、中央苗タンク103と、左側または右側の苗タンク100との左右間に該当する位置に、作業者の移動部を形成することができる。これにより、作業者が圃場内を歩いて作業する際に、苗を踏み難くなり、作業能率が向上すると共に、生育しなくなる苗の発生を防止することができる。また、苗の植え付け後の圃場における、左右の苗タンク100と中央苗タンク103の左右間に該当する位置に、細い作業通路を2か所形成することができるので、苗の植え付け後の圃場を、様々な作業条件に対応可能にすることができる。これらの結果、苗の植え付け後の圃場を、作業性が高い状態にすることができると共に、苗の生育性を確保することができる。
また、中央の苗植付装置41と左右の苗植付装置41の植付軌跡Tpを異ならせたことにより、中央苗タンク103を左右の苗タンク100から前後方向に偏倚させて配置した状態においても、圃場に対する苗の植付位置を、左右方向で揃えることができる。この結果、苗を適切な位置に植え付けることができる。
〔実施形態5〕
実施形態5に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と略同様の構成であるが、左右の苗タンクの間に、左右の内側苗タンクを有している点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図16は、実施形態5に係る苗移植機が有する苗タンクの概略図である。本実施形態5に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と同様に、苗載置台45は、機体左右方向における両側に2つの苗タンク100を備えている。また、本実施形態5に係る苗移植機1では、苗載置台45は、左右の苗タンク100の左右間に位置すると共に、機体左右方向における位置が異なる苗タンク100である左右の内側苗タンク105を有している。即ち、苗載置台45には、左右2つの内側苗タンク105を含めて4つの苗タンク100が設けられている。また、2つの内側苗タンク105は、左右の苗タンク100と同様に、それぞれ1または複数条の苗を積載することが可能になっており、本実施形態5に係る苗移植機1では、2つの内側苗タンク105は、共に2条の苗を積載することが可能になっている。
また、これらの4つの苗タンク100は、機体前後方向の位置が異なって配設されている。具体的には、左右の内側苗タンク105のうち、相対的に機体右側に位置する内側苗タンク105である右内側苗タンク106と、左側の苗タンク100は、機体前後方向で同じ位置に配置する。また、左右の内側苗タンク105のうち、相対的に機体左側に位置する内側苗タンク105である左内側苗タンク107と、右側の苗タンク100は、機体前後方向で同じ位置に配置する。一方、右内側苗タンク106及び左側の苗タンク100と、左内側苗タンク107及び右側の苗タンク100とは、機体前後方向で異なる位置に配置する。これにより、苗載置台45に備えられる4つの苗タンク100は、隣接する苗タンク100を、機体前後方向に偏倚させて配置する。
図17は、実施形態5に係る苗移植機が有する苗植付体の平面図である。本実施形態5に係る苗移植機1では、苗植付体120に備えられる摺動機構であるリードカム機構180は、左右の苗タンク100を摺動させるリードカム軸131に加え、左右の内側苗タンク105を各々摺動させる内側リードカム軸181を有している。また、リードカム機構180は、内側リードカム軸181に取り付けられる内側リードメタル185を有している。この内側リードメタル185は、内側苗タンク105として右内側苗タンク106と左内側苗タンク107との2つが設けられているのに伴い、内側リードメタル185も2つの内側苗タンク105に対応して2つが内側リードカム軸181に取り付けられている。
これらのリードカム軸131や内側リードカム軸181に対して駆動力を伝動する植付伝動機構125は、機体左右方向におけるリードカム軸131や内側リードカム軸181の右端側に位置している。このため、植付伝動機構125は、リードカム軸131や内側リードカム軸181に対して、右端側から駆動力を伝動することが可能になっている。
また、内側リードカム軸181には、リードカム軸131に形成される摺動溝部132と同様な形状の内側摺動溝部182が形成されている。内側リードメタル185は、この内側摺動溝部182に内側リード爪188が入り込むことにより、内側リードカム軸181に接触し、内側リードカム軸181に取り付けられている。内側リードメタル185は2つ設けられているので、内側リードメタル185の内側リード爪188が入り込む内側摺動溝部182も、内側リードカム軸181の2か所に形成されている。左右の内側苗タンク105は、内側リードカム軸181に取り付けられる2つの内側リードメタル185に、それぞれ連結される。
また、苗載置台45が有する4つの苗タンク100は、隣接する苗タンク100が機体前後方向に偏倚しているが、苗植付装置41は、それぞれ対応する苗タンク100から取った苗を、機体前後方向において同じ位置に植え付けることができるようになっている。具体的には、機体前側に位置する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、機体後側に位置する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpとを異ならせている。これにより、機体前側に位置する苗タンク100から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置41と、機体後側に位置する苗タンク100から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置41とで、取った苗を圃場に植え付ける際の前後方向における位置が、同じ位置になるようになっている。
本実施形態5に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態5に係る苗移植機1においても、苗の植付作業を行う際には、苗載置台45の苗タンク100を所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させながら行うが、本実施形態5に係る苗移植機1では、左右の苗タンク100のみでなく、左右の内側苗タンク105も、所定の範囲内で機体左右方向に往復移動させる。その際に、4つの苗タンク100は、隣接する苗タンク100が機体前後方向に偏倚しているため、4つの苗タンク100がそれぞれ所定の範囲内で機体左右方向に移動する場合には、隣接する苗タンク100に干渉することなく移動することができる。
このように機体左右方向に往復移動する苗タンク100のうち、内側苗タンク105は、内側リードカム軸181が回転駆動することにより機体左右方向に移動する。詳しくは、エンジン10からの駆動力が植付ドライブシャフト128によって苗植付体120に伝達された際には、この駆動力の一部は、植付伝動機構125を介して内側リードカム軸181に伝達される。これにより、内側リードカム軸181は回転駆動する。この内側リードカム軸181には、内側リードメタル185が取り付けられており、内側リードメタル185は、内側リード爪188が、内側リードカム軸181に形成される内側摺動溝部182に入り込んだ状態で取り付けられている。また、内側リードカム軸181には、2つ内側リードメタル185が取り付けられており、2つの内側リードメタル185は、2つの内側苗タンク105に連結されている。
このため、内側リードカム軸181が回転した際には、2つの内側リードメタル185は、内側摺動溝部182に入り込んでいる内側リード爪188が、それぞれ内側摺動溝部182に沿って機体左右方向に移動することにより、共に機体左右方向に移動する。その際に、2つの内側リードメタル185は、内側リードカム軸181が回転し続けることにより共に機体左右方向に往復移動する。これにより、2つの内側リードメタル185に取り付けられる2つの内側苗タンク105は、内側リードメタル185と共に、機体左右方向に共に往復移動する。2つの内側苗タンク105の往復移動の方向は、例えば、左右対称となる方向に往復移動する。
また、苗植付装置41は、機体前側に位置する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、機体後側に位置する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpと、で異なるように形成されており、これら苗植付装置41は、取った苗を圃場に植え付ける際の前後方向における位置が、同じ位置になるようになっている。これにより、苗植付装置41は、苗を取り出す部分の前後方向における位置が、隣接する苗タンク100で異なっているにも関わらず、圃場への植え付け位置は、4つの苗タンク100で、機体前後方向の位置を揃えることができる。
以上の実施形態5に係る苗移植機1は、隣接する苗タンク100を前後方向に偏倚させて配置したことにより、全ての苗タンク100の位置を左右方向に調節することができるので、圃場における必要な位置に、作業用通路である作業者の移動部を形成して、苗を植え付けることができる。この結果、作業者が圃場内を歩いて作業する際に、苗を踏み難くなり、作業能率が向上すると共に、生育しなくなる苗の発生を防止することができる。また、隣接する苗タンク100に対応する苗植付装置41の植付軌跡Tpを異ならせたことにより、苗タンク100同士が機体前後方向に偏倚する場合でも、圃場に対する苗の植付位置を、左右方向で揃えることができる。この結果、苗を適切な位置に植え付けることができる。
〔変形例〕
なお、上述した苗移植機1では、リードカム軸131等にリードメタル135等が複数設けられる場合でも、リードカム軸131等は1本で形成されているが、リードメタル135等が複数設けられる場合には、リードカム軸131等は、長さ方向に分割されていてもよい。図18は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、苗移植機が有する苗植付体の平面図である。リードカム軸131の長さ方向に、リードメタル135が複数設けられる場合は、図18に示すように、リードカム軸131を長さ方向、即ち、機体左右方向に分割し、複数のリードメタル135を、それぞれのリードカム軸131に取り付けてもよい。
この場合、左右のリードカム軸131における、他方のリードカム軸131側の端部は、支持部190によって回転自在に支持する。また、リードカム軸131を分割する場合には、植付伝動機構125は、機体左右方向における苗植付体120の両側に配設し、分割したリードカム軸131を、左右の植付伝動機構125によってそれぞれ回転させることができるようにする。
これにより、リードカム軸131の長さが長くなり過ぎることに起因するリードカム軸131の剛性の低下を抑制でき、苗タンク100を適切に移動させることができる。また、リードメタル135を複数備える場合でも、2つのリードカム軸131は一直線上に配置されるため、リードカム機構130をコンパクトなものにすることができる。また、2つのリードカム軸131を、独立して回転可能にすることにより、それぞれのリードカム軸131に取り付けられるリードメタル135に連結される苗タンク100を、独立して移動させることができる。
また、実施形態1に係る苗移植機1では、2つの苗タンク100を左右対称に移動させることにより、苗タンク100が移動する際における機体左右方向のバランスを確保しているが、機体左右方向のバランスの確保は、2つの苗タンク100を左右対称に移動させること以外によって行ってもよい。図19は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、苗移植機が有する苗植付体の平面図である。苗タンク100の移動時における機体左右方向のバランスの確保は、例えば、図19に示すように、リードカム機構130にウエイト195を用いることによって行ってもよい。この場合、リードカム軸131には、長さ方向における2か所に摺動溝部132を設け、その一方に、リードメタル135を取り付け、苗載置台45が有する苗タンク100は、このリードメタル135に取り付ける。
また、他方の摺動溝部132にはウエイト195を取り付け、リードカム軸131の回転時には、リードメタル135とウエイト195とが左右対称となる方向に機体左右方向に往復移動するようにする。これにより、苗の植付作業時において、苗タンク100が機体左右方向に往復移動する場合の重量バランスの変化を、ウエイト195の移動によって吸収することができ、機体左右方向のバランスを確保することができる。
また、実施形態2に係る苗移植機1では、畦クラッチレバー38を操作すると、苗植付装置41の動作と苗タンク100の移動との双方が切り替えられるが、畦クラッチレバー38の操作時は、いずれか一方の状態が切り替えられるだけでもよい。例えば、畦クラッチレバー38を切操作した場合には、苗植付装置41は動作を続け、苗タンク100の移動のみが停止するようにしてもよい。苗植付装置41が動作を続けても、苗タンク100の移動が停止することにより、苗植付装置41が苗タンク100から苗を取る際に、苗タンク100において既に苗が取られた位置から取ることになるため、苗植付装置41の植込杆42は、空振りの状態になる。これにより、圃場には苗が植え付けられなくなる。また、苗植付装置41を停止させる機構が不要になるため、装置を簡略化することができる。
また、実施形態に係る苗移植機1では、苗タンク100は、1つのリードメタル135に連結され、リードメタル135がリードカム軸131の長さ方向に移動することにより、苗タンク100も機体左右方向に移動しているが、苗タンク100は、複数のリードメタル135に連結されていてもよい。例えば、1つの苗タンク100が10条分の苗を積載することができる苗タンク100である場合には、この苗タンク100は、リードカム軸131の回転時に、同じ方向に移動する2つのリードメタル135に連結してもよい。これにより、苗タンク100を移動させる際におけるリード爪138や摺動溝部132への負荷を低減することができるので、苗タンク100の重量が大きい場合でも、リード爪138や摺動溝部132の破損を抑制することができ、より確実に苗タンク100を機体左右方向へ往復移動させることができる。
また、苗タンク100同士の間の位置に配設されるスペーサ110は、着脱自在に配設してもよい。図20は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、苗移植機が有する苗載置台を機体後方側から見た場合の説明図である。苗載置台45は、スペーサ110を着脱自在に配設すると共に、スペーサ110の下方側に、作業者の足場になる後部搭乗ステップ198を配設し、スペーサ110を取り外した際には、図20に示すように、後部搭乗ステップ198に対して搭乗可能になるようにしてもよい。これにより、作業者は、苗植付部40から走行車体2に移動することができるので、作業者が乗り降りし易い位置に走行車体2を移動させる必要がなく、作業能率が向上する。
また、苗植付部40の機体後方側には、苗を植え付ける圃場面を確認する手段を設けてよい。図21は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、苗移植機が有する苗植付部の側面図である。図22は、図21のB−B矢視図である。苗植付部40には、例えば図21に示すように、圃場面を映す反射板200を設けてもよい。この場合、スペーサ110には、操縦席28に座った状態の作業者が後ろを振り返った際に、反射板200を視認することができる位置に開口部205を形成する。これにより、作業者は、圃場面を映す反射板200を、スペーサ110の開口部205から視認することが可能になる。このように、反射板200を設け、スペーサ110に開口部205を形成することにより、作業者は後ろを振り返ると苗の植付状態を確認することができるので、問題の確認を速やかに行うことができる。この結果、苗の植付精度を向上させることができる。
また、苗植付部40が備えるフロートは、苗の植付作業時に回転をするロータリケース43が当たらないように形成するのが好ましい。図23は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、苗移植機が有するフロートの平面図である。図24は、図23のC−C矢視図である。苗植付部40に設けられるフロート210は、周囲に鍔部211が形成されているが、この鍔部211における、ロータリケース43が接近する位置に、図23、図24に示すように、円弧状の形状で下方に凸になる凸部215を形成してもよい。つまり、苗植付装置41は、フロート210の上方に位置しており、苗の植付作業時には、苗植付装置41はロータリケース43が、フロート210の鍔部211の上面側における鍔部211の近傍の位置で、回転しながら植付作業を行う。
このため、フロート210には、鍔部211におけるロータリケース43の下方側に位置する部分に、下方側に凸になり、フロート210の底面より下方側に突出する凸部215を形成するのが好ましい。鍔部211は、板状の形状で形成されているため、円弧状の形状で下方に凸になる凸部215は、上面側が下方に凹んだ状態になる。これにより、鍔部211はロータリケース43に接触し難くなるため、ロータリケース43とフロート210との機体上下方向の距離を極力近付けることが可能になる。この結果、植付深さを極力深くすることが可能になる。