JP2020075823A - 光ファイバ用母材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炉心管の内側への変形を十分に抑制できる光ファイバ用母材の製造方法を提供すること。【解決手段】多孔質ガラス体を炉心菅内で、鉛直方向に沿って炉心管を包囲するように配置された複数段のヒータで加熱して脱水処理する脱水工程と、多孔質ガラス体を、複数段のヒータで加熱して焼結し、焼結体を得る焼結工程と、焼結体を炉心管から取り出して光ファイバ用母材を得る取出工程とを含む光ファイバ用母材の製造方法であって、焼結工程において、複数段のヒータのうちの一部のヒータを多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温して残部のヒータを多孔質ガラス体の焼結温度より低い温度にする、光ファイバ用母材の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、光ファイバ用母材の製造方法に関する。
光ファイバ用母材は一般に、VAD(Vapor phase Axial Deposition)法等によって生成された多孔質ガラス体を炉心管内でヒータによって加熱して脱水処理した後、ヒータによって焼結して透明ガラス化処理することによって製造される。なお、炉心管には、光ファイバ用母材に炉心管の材料に起因する不純物が混入することを防止するため、石英が使用されることが多い。
このような光ファイバ用母材の製造方法として、従来、例えば下記特許文献1に記載される製造方法が知られている。同文献には、多孔質ガラス体を熱処理装置の石英製の炉心菅内に配置し、炉心菅内で脱水処理を行った後、炉心管の長手方向に沿って配置される複数段のヒータによって焼結を行い、光ファイバ用母材を製造することが開示されている。同文献ではさらに、炉心管とヒータとの間に均熱管を設けることが開示されており、均熱管の内面に形成された鍔部が、炉心管の外面に形成された鍔部を支持することによって、焼結時の炉心管の変形を抑制することが提案されている。
しかし、上記特許文献1に記載の光ファイバ用母材の製造方法は、以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1に記載の光ファイバ用母材の製造方法では、光ファイバ用母材を連続して製造していると、焼結時の熱によって、炉心管が軟化して内側に変形する場合があった。そのため、炉心管の交換頻度が多くなり、連続して製造できる光ファイバ用母材の本数が少なくなり、光ファイバ用母材を効率よく製造できなくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、炉心管の内側への変形を十分に抑制できる光ファイバ用母材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、多孔質ガラス体を炉心菅内で、鉛直方向に沿って前記炉心管を包囲するように配置された複数段のヒータで加熱して脱水処理する脱水工程と、前記多孔質ガラス体を、前記複数段のヒータで加熱して焼結し、焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を前記炉心管から取り出して光ファイバ用母材を得る取出工程とを含む光ファイバ用母材の製造方法であって、前記焼結工程において、前記複数段のヒータのうちの一部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温して残部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度より低い温度にする、光ファイバ用母材の製造方法である。
本発明の光ファイバ用母材の製造方法によれば、脱水工程において、多孔質ガラス体が炉心菅内で複数段のヒータで加熱されて脱水処理された後、焼結工程において、多孔質ガラス体が複数段のヒータによって加熱されて焼結され、焼結体が得られる。そして、焼結体が、取出工程において、炉心管から取り出されて光ファイバ用母材が得られる。このとき、複数段のヒータのうち一部のヒータが多孔質ガラス体の焼結温度以上に昇温され、残部のヒータが焼結温度より低い温度にされるため、複数段のヒータの全部が多孔質ガラス体の焼結温度以上にされる場合に比べて、炉心管が熱によって軟化されにくくなる。このため、多孔質ガラス体を連続して製造する場合に炉心管の内側への変形を十分に抑制することができる。その結果、炉心管の交換頻度を低減させることが可能となり、連続して製造できる光ファイバ用母材の本数を増加させることができ、光ファイバ用母材を効率よく製造することができる。
上記光ファイバ用母材の製造方法においては、前記焼結工程において、前記複数段のヒータのうち前記多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温する前記一部のヒータを、前記複数段のヒータの一端側から他端側に向かって順次切り替えることにより、前記多孔質ガラス体を加熱して焼結することが好ましい。
この場合、焼結工程において、多孔質ガラス体の全部を焼結させるために、多孔質ガラス体を移動させずに済む。
上記光ファイバ用母材の製造方法においては、前記焼結工程において、前記複数段のヒータのうちの一部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温して残部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度より低い温度にした後に、前記多孔質ガラス体を前記複数段のヒータに対して鉛直方向に沿って移動させることにより、前記多孔質ガラス体を加熱して焼結してもよい。
上記光ファイバ用母材の製造方法においては、前記焼結工程の前に、前記多孔質ガラス体を引き上げ、前記焼結工程において、前記一部のヒータが最上段のヒータを含み、前記多孔質ガラス体をその下端から下降させて前記複数段のヒータに挿入することにより、前記多孔質ガラス体を加熱して焼結することが好ましい。
この場合、焼結工程の前に、多孔質ガラス体を引き上げて複数段のヒータから抜き出しておき、焼結工程において、多孔質ガラス体をその下端から下降させて複数段のヒータに挿入する。このとき、焼結温度以上まで昇温する一部のヒータが最上段のヒータを含む。このため、焼結工程において、多孔質ガラス体の全部を焼結させるために、多孔質ガラス体は、その上端が、最上段のヒータを通過するまで挿入すればよく、それ以上に挿入しなくて済む。このため、上記一部のヒータが最上段のヒータを含まない場合に比べて、焼結工程において、多孔質ガラス体の移動距離(ストローク長)を短くすることができる。
上記光ファイバ用母材の製造方法では、前記焼結工程において、前記多孔質ガラス体の上端は支持棒と接続されている。
上記光ファイバ用母材の製造方法においては、前記焼結工程において、不活性ガスを含む焼結処理用ガスを前記多孔質ガラス体の挿入方向と反対方向に向かって供給することが好ましい。
この場合、多孔質ガラス体は、その下端側から焼結されて焼結体となる。焼結体は非多孔質であるため、焼結処理用ガスを通過させることができない。これに対して、多孔質ガラス体のうち未焼結の部分は多孔質であるため、未焼結の部分は焼結処理用ガスを通過させることができる。このため、焼結処理用ガスが多孔質ガラス体の挿入方向と反対方向に向かって供給されると、多孔質ガラス体の焼結の途中で生成される不要な生成物が未焼結の部分を通過する焼結処理用ガスによって上方に逃がされる。このため、得られる焼結体中に不純物が残りにくくなる。
上記光ファイバ用母材の製造方法は、前記取出工程が、前記炉心管内で前記焼結体を引き上げて前記複数段のヒータから抜き出した後、保持する保持工程を含むことが好ましい。
この場合、取出工程に含まれる保持工程において、炉心管内で焼結体が引き上げられて複数段のヒータから抜き出されてから保持されるため、保持工程を省略して、焼結体をいきなり炉心管外に取り出す場合に比べて、焼結体が急冷されにくくなり、得られる光ファイバ用母材の損傷をより十分に抑制することができる。
上記光ファイバ用母材の製造方法は、前記焼結工程の前に、前記多孔質ガラス体にドーパントを拡散させるドーパント拡散工程をさらに含むことが好ましい。
この場合、ドーパント拡散工程によって、多孔質ガラス体中にドーパントが拡散されるため、多孔質ガラス体の焼結温度を低下させることができる。このため、ドーパント拡散工程がない場合に比べて、焼結工程において、多孔質ガラス体の焼結温度以上に昇温するヒータにおいて、ヒータの設定温度を低くすることができる。このため、焼結工程において、炉心管が熱によってより軟化しにくくなり、炉心管の内側への変形がより十分に抑制される。
なお、本発明において、「焼結温度」とは、多孔質ガラス体を透明ガラス化させることが可能なヒータ温度の最低値をいう。
本発明によれば、炉心管の内側への変形を十分に抑制できる光ファイバ用母材の製造方法が提供される。
以下、本発明の光ファイバ用母材の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の光ファイバ用母材の製造方法の実施形態の説明に先立ち、本発明の光ファイバ用母材の製造方法を実施するための脱水焼結装置の一例について図1を用いて説明する。図1は、本発明の光ファイバ用母材の製造方法を実施するための脱水焼結装置の一例を示す概略切断面端面図である。
図1に示すように、脱水焼結装置100は、多孔質ガラス体Pを収容するための炉心管1と、炉心管1の下部を収容し、炉心管1内の多孔質ガラス体Pを加熱する加熱炉3とを備えている。炉心管1の上部は加熱炉3から突出している。
炉心管1は、炉心管本体1aと、炉心管本体1aの上端開口1bを塞ぐ蓋部1cとを備えている。炉心管1の下端には、ガスを供給するためのガス供給部1dが設けられ、炉心管本体1aの上端には、炉心管1内のガスを排気するための排気部1eが設けられている。排気部1eには排ガス処理装置(図示せず)が接続されている。炉心管1の上端には、多孔質ガラス体Pを吊り下げるための支持棒4を挿入する挿入孔1fが形成されている。支持棒4の下端には多孔質ガラス体Pを吊り下げるための接続部5が取り付けられ、接続部5は多孔質ガラス体Pに接続されている。炉心管1は本実施形態では石英で構成されている。
加熱炉3は、外壁部3aと、外壁部3aと炉心管1との間に形成されるヒータ室3bとを有しており、ヒータ室3bには、複数段のヒータ2a〜2eが鉛直方向に沿って炉心管1を包囲するように配置されている。炉心管1のガス供給部1dは、外壁部3aの底部を貫通している。
なお、炉心管1のうち最上段のヒータ2aの上端と蓋部1cとの間の長さは、多孔質ガラス体Pの長さ以上となっており、これにより、多孔質ガラス体Pが複数段のヒータ2a〜2eから抜き出されるときに、多孔質ガラス体P全体を炉心管1内で冷却することが可能となっている。
次に、上記脱水焼結装置100を用いた光ファイバ用母材の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法においては、まず、多孔質ガラス体Pを用意する。なお、多孔質ガラス体Pは、例えば有効部と、その両端のテーパ部と、そのテーパ部の両端から延びる、ダミーとなるガラスロッドとを含んでいる。そして、支持棒4を、多孔質ガラス体Pを取り付け可能な位置(図示せず)まで引き上げた後に、用意した多孔質ガラス体Pを、接続部5を介して支持棒4に吊り下げる。そして支持棒4を下方へと下げることで、炉心管1内に多孔質ガラス体Pを収容し、蓋部1cで炉心管本体1aの上端開口1bを塞ぐ。
次に、図1に示すように、多孔質ガラス体Pを炉心菅1内で、複数段のヒータ2a〜2eで加熱して脱水処理を行う(脱水工程)。
次に、多孔質ガラス体Pにドーパントを拡散させる(ドーパント拡散工程)。
その後、図2に示すように、多孔質ガラス体Pを引き上げる。
次に、複数段のヒータ2a〜2eのうちの一部のヒータである最上段のヒータ2aを多孔質ガラス体Pの焼結温度以上に昇温し、残りのヒータ2b〜2eを多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度にする。その後、図3に示すように、多孔質ガラス体Pをその下端から下降させ、複数段のヒータ2a〜2eに順次挿入し、複数段のヒータ2a〜2eで順次加熱する。すると、多孔質ガラス体Pは、ヒータ2aを通過する時に焼結される。こうして、図4に示す焼結体Fを得る(焼結工程)。
最後に、焼結体Fを引き上げて炉心管1から取り出し、光ファイバ用母材を得る(取出工程)。
本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、焼結工程において、複数段のヒータ2a〜2eのうち一部のヒータである最上段のヒータ2aが多孔質ガラス体Pの焼結温度以上に昇温され、残部のヒータ2b〜2eが多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度にされるため、複数段のヒータ2a〜2eの全部を多孔質ガラス体Pの焼結温度以上に昇温する場合に比べて、炉心管1が熱によって軟化されにくくなる。このため、多孔質ガラス体Pを連続して製造する場合に炉心管1の内側への変形を十分に抑制することができる。その結果、炉心管1の交換頻度を低減させることが可能となり、連続して製造できる光ファイバ用母材の本数を増加させることができ、光ファイバ用母材を効率よく製造することができる。
また、上記光ファイバ用母材の製造方法においては、焼結工程の前に、多孔質ガラス体Pを引き上げ、焼結工程において、最上段のヒータ2aが焼結温度以上まで昇温され、多孔質ガラス体Pをその下端から下降させて複数段のヒータ2a〜2eに挿入する。
このため、焼結工程において、多孔質ガラス体Pの全部を焼結させるために、多孔質ガラス体Pは、その上端が、最上段のヒータ2aを通過するまで挿入すればよく、それ以上に挿入しなくて済む。このため、最上段のヒータ2aが焼結温度以上まで昇温されない場合に比べて、焼結工程において、多孔質ガラス体Pの移動距離(ストローク長)を短くすることができる。
さらにまた、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法は上記ドーパント拡散工程を含むため、ドーパント拡散工程によって、多孔質ガラス体P中にドーパントが拡散される。このため、多孔質ガラス体Pの焼結温度を低下させることができる。その結果、ドーパント拡散工程がない場合に比べて、焼結工程において、多孔質ガラス体Pの焼結温度以上に昇温するヒータ2aにおいて、ヒータ2aの設定温度を低くすることができる。このため、焼結工程において、炉心管1が熱によってより軟化しにくくなり、炉心管1の内側への変形がより十分に抑制される。
次に、上記脱水工程、ドーパント拡散工程、焼結工程及び取出工程について詳細に説明する。
(1)脱水工程
脱水工程は、多孔質ガラス体Pを炉心菅1内で、複数段のヒータ2a〜2eで加熱して脱水処理する工程である。脱水工程においては、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して静止されるようにしても移動されるようにしてもよいが、静止されるようにすることが好ましい(図1参照)。この場合、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して移動される場合に比べて、多孔質ガラス体P全体が一括して加熱されるため、脱水工程の時間を短縮することができる。
脱水工程は、多孔質ガラス体Pを炉心菅1内で、複数段のヒータ2a〜2eで加熱して脱水処理する工程である。脱水工程においては、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して静止されるようにしても移動されるようにしてもよいが、静止されるようにすることが好ましい(図1参照)。この場合、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して移動される場合に比べて、多孔質ガラス体P全体が一括して加熱されるため、脱水工程の時間を短縮することができる。
脱水工程においては、図1に示すように、ガス供給部1dから炉心管1内に脱水処理ガスを供給するとともに、炉心管1内のガスを、排気部1eを通して排ガス処理装置へ排気する。このため、脱水処理ガスは、炉心管1内で多孔質ガラス体Pの長手方向に沿って下から上に向かって供給される。
(多孔質ガラス体)
多孔質ガラス体Pは、VAD法や外付け法などのスート法によって得ることができる。スート法では以下のようにして多孔質ガラス体Pが得られる。すなわち、まず予め、支持棒4の下端の接続部5と接続可能な形状を持つダミーロッドと、ガラス微粒子を堆積させるガラスロッドとを溶着させておく。そして、バーナーを設置し、このバーナーに酸素ガス、水素ガス、不活性ガスを流して反応させた火炎中に、四塩化ケイ素(SiCl4)などのガラス原料ガスを供給し、回転するガラスロッドにガラス微粒子からなるスート部を形成する。こうして多孔質ガラス体Pが得られる。
多孔質ガラス体Pは、VAD法や外付け法などのスート法によって得ることができる。スート法では以下のようにして多孔質ガラス体Pが得られる。すなわち、まず予め、支持棒4の下端の接続部5と接続可能な形状を持つダミーロッドと、ガラス微粒子を堆積させるガラスロッドとを溶着させておく。そして、バーナーを設置し、このバーナーに酸素ガス、水素ガス、不活性ガスを流して反応させた火炎中に、四塩化ケイ素(SiCl4)などのガラス原料ガスを供給し、回転するガラスロッドにガラス微粒子からなるスート部を形成する。こうして多孔質ガラス体Pが得られる。
多孔質ガラス体Pにおいては、スート法としてVAD法を用いる場合には、スート部は、コア部を構成するか、又は、コア部及びクラッド部を構成し、スート法として外付け法を用いる場合には、スート部は、コア部の一部を構成するか、又はクラッド部を構成する。
多孔質ガラス体Pは、例えば純粋なシリカを含む。多孔質ガラス体Pは、多孔質ガラス体Pの製造時に使用されたガラス原料ガス由来のドーパントをさらに含んでいてもよい。
(脱水処理ガス)
脱水処理ガスは、例えば脱水剤としての塩素系ガスを含む。塩素系ガスとしては、例えば塩素、塩化チオニル(SOCl2)、四塩化ケイ素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)などを用いることができる。
脱水処理ガスは、例えば脱水剤としての塩素系ガスを含む。塩素系ガスとしては、例えば塩素、塩化チオニル(SOCl2)、四塩化ケイ素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)などを用いることができる。
脱水処理ガスは不活性ガスをさらに含んでもよい。不活性ガスとしては、例えばHe、Ar、N2などを用いることができる。脱水処理ガスは、さらに、必要に応じて一酸化炭素ガス(COガス)を含んでもよい。
脱水処理ガスの流量は特に制限されるものではないが、炉心管1内の圧力がヒータ室3b及び脱水焼結装置100の外部より陽圧になる流量となるようにすればよい。
脱水処理ガス中の塩素系ガスの濃度及び脱水工程の時間は、光ファイバ用母材において、1383nmにおける伝送損失値が最小となるように適宜決定される。
ヒータ2a〜2eの温度は、多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度で且つ多孔質ガラス体Pの表面におけるOH基や表面に付着した水分を脱水可能な温度であれば特に制限されるものではないが、1000℃以上であることが好ましい。この場合、ヒータ2a〜2eの温度を1000℃未満にする場合に比べて、多孔質ガラス体Pへの塩素系ガスの拡散をより促進させることができる。ヒータ2a〜2eの温度は1050℃以上であることがより好ましい。但し、ヒータ2a〜2eの温度は1300℃以下であることが好ましい。この場合、ヒータ2a〜2eの温度が1300℃を超える場合に比べて、多孔質ガラス体Pにおいてガラス微粒子同士の結合が進みにくくなるため、塩素系ガスの拡散がより十分に促進される。ヒータ2a〜2eの温度は1200℃以下であることがより好ましい。
ヒータ2a〜2eの温度は、同一でも異なってもよいが、通常は同一である。
(2)ドーパント拡散工程
ドーパント拡散工程は、多孔質ガラス体Pにドーパントを拡散させる工程である。ドーパント拡散工程においては、図1に示すように、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して静止されるようにしても移動されるようにしてもよいが、静止されるようにすることが好ましい(図1参照)。この場合、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して移動される場合に比べて、多孔質ガラス体P全体が一括して加熱されるため、ドーパント拡散工程の時間を短縮することができる。
ドーパント拡散工程は、多孔質ガラス体Pにドーパントを拡散させる工程である。ドーパント拡散工程においては、図1に示すように、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して静止されるようにしても移動されるようにしてもよいが、静止されるようにすることが好ましい(図1参照)。この場合、多孔質ガラス体P全体が、複数段のヒータ2a〜2eに対して移動される場合に比べて、多孔質ガラス体P全体が一括して加熱されるため、ドーパント拡散工程の時間を短縮することができる。
多孔質ガラス体Pにドーパントを拡散させるには、拡散処理用ガスを供給すればよい。拡散処理用ガスは、ドーパントを含有するドーパント含有ガスを含む。
ドーパントとしては、例えばフッ素、B、N、Al、P、Cl、Tiなどを用いることができる。ドーパントがフッ素である場合、ドーパント含有ガスとしては、フッ素系ガスが用いられる。フッ素系ガスとしては、例えば四フッ化ケイ素(SiF4)、四フッ化炭素(CF4)、六フッ化エタン(C2F6)、六フッ化硫黄(SF6)などを用いることができる。
拡散処理用ガスは不活性ガスをさらに含んでもよい。不活性ガスとしては、例えばHe、Ar、N2などを用いることができる。
拡散処理用ガスの流量は特に制限されるものではないが、炉心管1内の圧力がヒータ室3b及び脱水焼結装置100の外部より陽圧になる流量となるようにすればよい。
ドーパント含有ガスの濃度及びドーパント拡散工程の時間は、多孔質ガラス体Pの屈折率が所望の値となるように適宜調整される。
ヒータ2a〜2eの温度は、多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度で且つドーパントを多孔質ガラス体Pに拡散させることが可能な温度であれば特に制限されるものではないが、1000℃以上であることが好ましい。この場合、ヒータ2a〜2eの温度を1000℃未満にする場合に比べて、多孔質ガラス体Pへのドーパントの拡散をより促進させることができる。ヒータ2a〜2eの温度は1050℃以上であることがより好ましい。但し、ヒータ2a〜2eの温度は1300℃以下であることが好ましい。この場合、ヒータ2a〜2eの温度が1300℃を超える場合に比べて、多孔質ガラス体Pにおいてガラス微粒子同士の結合が進みにくくなるため、ドーパントの拡散がより十分に促進される。ヒータ2a〜2eの温度は1200℃以下であることがより好ましい。
ヒータ2a〜2eの温度は、脱水工程時のヒータ2a〜2eの温度と同一でも異なってもよいが、脱水工程とは独立に、光ファイバ用母材におけるドーパントの濃度分布の測定結果に基づき、所望のドーパント濃度分布が得られる温度とすることが好ましい。
拡散処理用ガスは、ガス供給部1dから炉心管1内に供給するとともに、炉心管1内のガスを、排気部1eを通して排ガス処理装置へ排気すればよい。このとき、拡散処理用ガスは、炉心管1内で多孔質ガラス体Pの長手方向に沿って下から上に向かって供給される。
(3)焼結工程
焼結工程は、多孔質ガラス体Pを複数段のヒータ2a〜2eで加熱して焼結し、焼結体Fを得る工程である。焼結工程においては、ガス供給部1dから炉心管1内に焼結処理用ガスを供給するとともに、炉心管1内のガスを、排気部1eを通して排ガス処理装置へ排気する。このため、焼結処理用ガスは、炉心管1内で多孔質ガラス体Pの長手方向に沿って下から上に向かって供給される。このとき、多孔質ガラス体Pをその下端から下降させ、複数段のヒータ2a〜2e内に順次挿入すると、不活性ガスを含む焼結処理用ガスは下から上に向かって供給される。すなわち、焼結処理用ガスは、多孔質ガラス体Pの挿入方向と反対方向に向かって供給されることになる。この場合、多孔質ガラス体Pは、その下端から焼結されて焼結体となる。焼結体は非多孔質であるため、焼結処理用ガスを通過させることができない。これに対して、多孔質ガラス体Pのうち未焼結の部分は多孔質であるため、未焼結の部分は焼結処理用ガスを通過させることができる。このため、焼結処理用ガスが多孔質ガラス体Pの挿入方向と反対方向に向かって供給されると、多孔質ガラス体Pの焼結の途中で生成される不要な生成物が焼結処理用ガスによって上方に逃がされる。このため、得られる焼結体F中に不純物が残りにくくなる。
焼結工程は、多孔質ガラス体Pを複数段のヒータ2a〜2eで加熱して焼結し、焼結体Fを得る工程である。焼結工程においては、ガス供給部1dから炉心管1内に焼結処理用ガスを供給するとともに、炉心管1内のガスを、排気部1eを通して排ガス処理装置へ排気する。このため、焼結処理用ガスは、炉心管1内で多孔質ガラス体Pの長手方向に沿って下から上に向かって供給される。このとき、多孔質ガラス体Pをその下端から下降させ、複数段のヒータ2a〜2e内に順次挿入すると、不活性ガスを含む焼結処理用ガスは下から上に向かって供給される。すなわち、焼結処理用ガスは、多孔質ガラス体Pの挿入方向と反対方向に向かって供給されることになる。この場合、多孔質ガラス体Pは、その下端から焼結されて焼結体となる。焼結体は非多孔質であるため、焼結処理用ガスを通過させることができない。これに対して、多孔質ガラス体Pのうち未焼結の部分は多孔質であるため、未焼結の部分は焼結処理用ガスを通過させることができる。このため、焼結処理用ガスが多孔質ガラス体Pの挿入方向と反対方向に向かって供給されると、多孔質ガラス体Pの焼結の途中で生成される不要な生成物が焼結処理用ガスによって上方に逃がされる。このため、得られる焼結体F中に不純物が残りにくくなる。
なお、焼結工程においては、焼結処理用ガスと同時に、ドーパント拡散工程で使用したドーパント含有ガスを炉心管1内に供給してもよい。
(焼結処理用ガス)
焼結処理用ガスは不活性ガスを含む。
焼結処理用ガスは不活性ガスを含む。
不活性ガスとしては、例えばHe、Ar又はN2などを用いることができる。不活性ガスは脱水工程及びドーパント拡散工程で使用される不活性ガスと同一でも異なるものでもよい。
焼結処理用ガスの流量は特に制限されるものではないが、炉心管1内の圧力がヒータ室3b及び脱水焼結装置100の外部より陽圧になる流量となるようにすればよい。
焼結工程においては、ヒータ2a〜2eのうち一部のヒータである最上段のヒータ2aを、多孔質ガラス体Pの焼結温度以上に昇温し、残りのヒータ2b〜2eを、多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度に設定する。このため、多孔質ガラス体Pは、ヒータ2aを通過する時に焼結される。
ここで、多孔質ガラス体Pの焼結温度は、多孔質ガラス体Pを透明ガラス化させることが可能なヒータ温度の最低値である。焼結温度は、具体的には、1300〜1650℃である。ヒータ2aの温度は、多孔質ガラス体Pの焼結温度以上の温度であればよいが、ヒータ2aの温度は、(焼結温度+20℃)以上とすることが好ましい。
一方、残りのヒータ2b〜2eの温度は、ヒータ2b〜2eは、多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度であれば特に制限されるものではないが、消費電力を低減する観点からは、脱水工程及びドーパント拡散工程におけるヒータ2a〜2eの温度よりも低い温度にすることが好ましい。但し、ヒータ2b〜2eは、ヒータ2aを通過した多孔質ガラス体Pの急冷によるクラック等の発生を抑制する観点からは、800℃以上とすることが好ましい。
ヒータ2b〜2eは互いに同一の温度である必要はなく、ヒータ2b〜2eの消費電力の低減や焼結時間の短縮の観点から適宜異なる温度としてもよい。
ヒータ2b〜2eの温度とヒータ2aの温度との差の絶対値(ΔT)は、0℃より大きければ特に制限されるものではないが、100℃以上であることが好ましい。但し、ΔTは850℃以下であることが好ましい。
(4)取出工程
取出工程は、焼結工程で得られた焼結体Fを引き上げて複数段のヒータ2a〜2eから抜き出した後、炉心管1から取り出して光ファイバ用母材を得る工程である。
取出工程は、焼結工程で得られた焼結体Fを引き上げて複数段のヒータ2a〜2eから抜き出した後、炉心管1から取り出して光ファイバ用母材を得る工程である。
取出工程は、炉心管1内で焼結体Fを引き上げて複数段のヒータ2a〜2eから抜き出した後、保持する保持工程を含んでいなくてもよいし、含んでいてもよいが、含んでいることが好ましい。
この場合、取出工程に含まれる保持工程において、炉心管1内で焼結体Fが複数段のヒータ2a〜2eから抜き出され、複数段のヒータ2a〜2eで包囲されていない炉心管1内で保持されるため、焼結体Fが適度に冷却される。すなわち、保持工程を省略して、焼結体Fをいきなり炉心管1外に取り出す場合に比べて、焼結体Fが急冷されにくくなる。このため、得られる光ファイバ用母材の損傷をより十分に抑制することができる。
保持工程の時間は、焼結体Fの直径にもよるため、一概には言えないが、通常は20分以上であればよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、炉心管1が石英で構成されているが、石英に代えて、ドーパントが添加された石英で構成されてもよい。
また、上記実施形態では、ヒータの数が5個であるが、ヒータの数は複数個であればよく、5個に限定されるものではない。例えばヒータは2〜4個でもよいし、6個以上でもよい。
さらに、上記脱水工程及びドーパント拡散工程は、多孔質ガラス体P全体が複数段のヒータ2a〜2e内で静止された状態で行われているが、多孔質ガラス体Pがヒータ2a〜2eに対して移動した状態で行われてもよい。
さらに、上記実施形態では、光ファイバ用母材の製造方法は、脱水工程と焼結工程との間にドーパント拡散工程を含んでいるが、ドーパント拡散工程は、脱水工程と同時に行ってもよい。この場合、脱水工程においてドーパントの拡散も行われるため、光ファイバ用母材を得るまでの時間が短縮される。このとき、脱水処理用ガスは、ドーパント含有ガスをさらに含むことが必要である。
さらにまた、上記実施形態では、光ファイバ用母材の製造方法はドーパント拡散工程を含んでいるが、ドーパント拡散工程は必ずしも必要な工程ではなく、省略可能である。
また、上記実施形態では、焼結工程において、ヒータ2aのみが多孔質ガラス体Pの焼結温度以上まで昇温されているが、ヒータ2aの代わりに、ヒータ2a〜2eのうちのいずれかのヒータが多孔質ガラス体Pの焼結温度以上まで昇温されてもよい。但し、焼結温度以上まで昇温されるヒータは、多孔質ガラス体Pの移動距離を短くする観点からは、複数段のヒータ2a〜2eのうち上段側に位置するヒータ(例えばヒータ2b)であることが好ましい。ここで、「上段側」とは、ヒータ2aの上端とヒータ2eの下端の中間位置よりも上側の位置をいい、「中間位置」とは、ヒータ2aの上端からヒータ2eの下端までの長さをLとした場合、ヒータ2aの上端又はヒータ2eの下端からL/2の長さの位置をいう。
また、焼結工程において、焼結温度以上まで昇温されるヒータの数は複数段のヒータ2a〜2eの一部であれば単数でも複数でもよい。ヒータの数が複数である場合には、焼結時間の短縮や焼結電力の削減のために、各ヒータの温度を異なる温度としてもよい。
さらに、上記実施形態では、焼結工程の前に、多孔質ガラス体Pを複数段のヒータ2a〜2eから引き上げた後、焼結工程において、多孔質ガラス体Pをその下端から下降させて挿入することによって多孔質ガラス体Pを加熱して焼結しているが、焼結工程の前に、多孔質ガラス体Pを複数段のヒータ2a〜2eから引き上げず、そのまま静止させた状態とし、複数段のヒータ2a〜2eのうち多孔質ガラス体Pの焼結温度以上まで昇温する一部のヒータを、複数段のヒータ2a〜2eの一端側から他端側に向かって順次切り替えることにより、多孔質ガラス体Pを加熱して焼結してもよい。この場合、焼結工程において、多孔質ガラス体Pの全部を焼結させるために、多孔質ガラス体Pを移動させずに済む。このとき、上記一部のヒータは、複数段のヒータ2a〜2eの下端側から上端側に向かって順次切り替えてもよく、複数段のヒータ2a〜2eの上端側から下端側に向かって順次切り替えてもよい。
あるいは、焼結工程の前に、多孔質ガラス体Pを複数段のヒータ2a〜2eから引き上げず、そのまま静止させた状態とし、複数段のヒータ2a〜2eのうちの一部のヒータを多孔質ガラス体Pの焼結温度以上まで昇温して残部のヒータを多孔質ガラス体Pの焼結温度より低い温度にした後に、複数段のヒータ2a〜2eの温度を変化させずに、多孔質ガラス体Pを複数段のヒータ2a〜2eに対して鉛直方向に沿って移動させることにより、多孔質ガラス体Pを加熱して焼結するようにしてもよい。このとき、多孔質ガラス体Pは、複数段のヒータ2a〜2eに対して鉛直方向に沿って引き上げてもよく、鉛直方向に沿って下降させてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まずVAD法にて作製した、Geを含む直径50mmのガラスロッドを直径20mmになるまで延伸加工し、延伸されたガラスロッドの両端に、ダミーとなるガラスロッドを溶着接続した後に外付け法にてガラス微粒子を堆積させ、有効部とその両端のテーパ部とを含む多孔質ガラス体を得た。得られた多孔質ガラス体については、有効部及びその両端のテーパ部の全長が1000mm、有効部の直径は180mmであった。そして、支持棒4を、多孔質ガラス体を取り付け可能な位置(図示せず)まで引き上げた後に、用意した多孔質ガラス体を、接続部5を介して支持棒4に吊り下げた。そして支持棒4を下方へと下げることで、炉心管1内に多孔質ガラス体を収容し、蓋部1cで炉心管本体1aの上端開口を塞いだ(図2参照)。
まずVAD法にて作製した、Geを含む直径50mmのガラスロッドを直径20mmになるまで延伸加工し、延伸されたガラスロッドの両端に、ダミーとなるガラスロッドを溶着接続した後に外付け法にてガラス微粒子を堆積させ、有効部とその両端のテーパ部とを含む多孔質ガラス体を得た。得られた多孔質ガラス体については、有効部及びその両端のテーパ部の全長が1000mm、有効部の直径は180mmであった。そして、支持棒4を、多孔質ガラス体を取り付け可能な位置(図示せず)まで引き上げた後に、用意した多孔質ガラス体を、接続部5を介して支持棒4に吊り下げた。そして支持棒4を下方へと下げることで、炉心管1内に多孔質ガラス体を収容し、蓋部1cで炉心管本体1aの上端開口を塞いだ(図2参照)。
次に、この多孔質ガラス体に対し、脱水焼結装置100にて脱水工程及び焼結工程を順次行った。このとき、脱水焼結装置100においては、加熱炉3のヒータ2a〜2eは、鉛直方向に20mmの隙間を空けて配置し、最上段の上端から最下段の下端までの鉛直方向に沿った長さは1400mmとした。また、炉心管1は石英で構成し、炉心管本体1aの長さは3800mm、その内径を250mm、厚さを5mmとした。
脱水工程は、具体的には以下のようにして行った。すなわち、まず炉心管1内で、多孔質ガラス全体を5段のヒータ2a〜2eの内側に配置し、多孔質ガラス体全体がヒータ2a〜2e内で静止(固定)されるようにした(図1参照)。そして、ヒータ2a〜2eの温度を1100℃に設定した(図5参照)。この状態で、ガス供給部1dから、Cl2ガス及びHeガスからなる脱水処理用ガスを供給する一方、炉心管1内のガスを排気部1eから排ガス処理装置へ排気した。このとき、Cl2ガス及びHeガスの流量はそれぞれ0.1SLM、3.0SLMとした。
焼結工程は、具体的には以下のようにして行った。すなわち、まず炉心管1内で、多孔質ガラス体を引き上げて5段のヒータ2a〜2eから抜き出した。そして、ヒータ2aの温度を図5に示すように1500℃まで昇温させる一方、ヒータ2b〜2eを900℃の温度に設定した(図5参照)。多孔質ガラス体の焼結温度は1460℃であった。そして、この状態で、ガス供給部1dから、Heガスからなる焼結処理用ガスを供給する一方、炉心管1内のガスを排気部1eから排ガス処理装置へ排気した。このとき、Heガスの流量は3.0SLMとした。そして、多孔質ガラス体をその下端から下方に移動させ、5段のヒータ2a〜2e内に順次挿入し、多孔質ガラス体をその下端から焼結させて焼結体を得た。
焼結体を得た後は、ヒータ2aの温度をヒータ2b〜2eと同一の900℃まで下降させた後(図5参照)、焼結体を引き上げて5段のヒータ2a〜2eから抜き出した。そして、1時間静止させて保持した後、炉心管1から取り出した。こうして、母材有効部の直径が73mm、母材有効部の長さが520cmである光ファイバ用母材を作製した。
(実施例2)
焼結工程において、ヒータ2aの温度及びヒータ2bの温度をそれぞれ1495℃及び1485℃まで昇温させる一方、ヒータ2c〜2eを900℃の温度に設定し(図6参照)、焼結体を得た後は、ヒータ2a及びヒータ2bの温度をヒータ2c〜2eと同一の900℃まで下降させたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。
焼結工程において、ヒータ2aの温度及びヒータ2bの温度をそれぞれ1495℃及び1485℃まで昇温させる一方、ヒータ2c〜2eを900℃の温度に設定し(図6参照)、焼結体を得た後は、ヒータ2a及びヒータ2bの温度をヒータ2c〜2eと同一の900℃まで下降させたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。
(比較例1)
焼結工程において、ヒータ2a〜2eの温度を1485℃まで昇温させ(図7参照)、焼結体を得た後は、ヒータ2a〜2eの温度を900℃まで下降させたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。
焼結工程において、ヒータ2a〜2eの温度を1485℃まで昇温させ(図7参照)、焼結体を得た後は、ヒータ2a〜2eの温度を900℃まで下降させたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。
(実施例3)
多孔質ガラス体として、有効部及びテーパ部の全長が950mm、有効部の直径が170mmのものを用い、脱水工程と焼結工程との間で、フッ素拡散工程をさらに行い、フッ素拡散工程の後、多孔質ガラス体を引き上げて5段のヒータ2a〜2eから抜き出した後、焼結工程において、ヒータ2aを図8に示すように1350℃に昇温させてから多孔質ガラス体をその下端から下方に移動させたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。なお、多孔質ガラス体の焼結温度は1330℃であった。
多孔質ガラス体として、有効部及びテーパ部の全長が950mm、有効部の直径が170mmのものを用い、脱水工程と焼結工程との間で、フッ素拡散工程をさらに行い、フッ素拡散工程の後、多孔質ガラス体を引き上げて5段のヒータ2a〜2eから抜き出した後、焼結工程において、ヒータ2aを図8に示すように1350℃に昇温させてから多孔質ガラス体をその下端から下方に移動させたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。なお、多孔質ガラス体の焼結温度は1330℃であった。
フッ素拡散工程は、具体的には以下のようにして行った。すなわち、まず炉心管1内で、脱水工程が完了した後、多孔質ガラス体を移動させずに多孔質ガラス体全体がそのまま5段のヒータ2a〜2eの内側に配置されたままとし、多孔質ガラス体全体がヒータ2a〜2e内で静止されるようにした。そして、ヒータ2a〜2eの温度を1085℃に設定した(図8参照)。この状態で、ガス供給部1dから、SiF4ガス及びHeガスからなるフッ素拡散処理用ガスを供給する一方、炉心管1内のガスを排気部1eから排ガス処理装置へ排気した。このとき、SiF4ガス及びHeガスの流量はそれぞれ0.15SLM、3.0SLMとした。
(比較例2)
フッ素拡散工程の後は、多孔質ガラス体を引き上げず、そのままの位置に固定し、焼結工程において、ヒータ2a〜2eを図9に示すようにして1350℃に昇温させ、多孔質ガラス体は移動させず、焼結工程を11時間行ったこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。
フッ素拡散工程の後は、多孔質ガラス体を引き上げず、そのままの位置に固定し、焼結工程において、ヒータ2a〜2eを図9に示すようにして1350℃に昇温させ、多孔質ガラス体は移動させず、焼結工程を11時間行ったこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用母材を作製した。
[評価]
実施例1〜3及び比較例1〜2について、脱水焼結時間(hr)、消費電力(kWh)、および炉心管の内側への変形を調べた。結果を表1に示す。
実施例1〜3及び比較例1〜2について、脱水焼結時間(hr)、消費電力(kWh)、および炉心管の内側への変形を調べた。結果を表1に示す。
なお、脱水焼結時間は、脱水工程のために昇温を開始してから、焼結が終了して全ヒータ2a〜2eの温度を900℃まで下降させるまでの時間とした。
また、炉心管の内側への変形については、多孔質ガラス体を連続して10本脱水焼結した後の炉心管において最も窪んだ箇所の内径の変化を調べ、その変化量(=250−10本脱水焼結した後の炉心管において最も窪んだ位置の内径(mm))を炉心管の内側への変形の指標とした。そして、炉心管の内径の変化量が5mm以下であることを合格基準とした。
表1に示す結果より、実施例1〜2の光ファイバ用母材の製造方法は、炉心管の内側への変形抑制効果の点で合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例1の光ファイバ用母材の製造方法は、炉心管の内側への変形抑制効果の点で合格基準を満たさないことが分かった。
また実施例3の光ファイバ用母材の製造方法は、炉心管の内側への変形抑制効果の点で合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例2の光ファイバ用母材の製造方法は、炉心管の内側への変形抑制効果の点で合格基準を満たさないことが分かった。
以上のことから、本発明の光ファイバ用母材の製造方法によれば、炉心管の内側への変形を十分に抑制できることが確認された。
1…炉心管
2a〜2e…ヒータ
2a…最上段のヒータ
4…支持棒
5…接続部
P…多孔質ガラス体
F…焼結体
2a〜2e…ヒータ
2a…最上段のヒータ
4…支持棒
5…接続部
P…多孔質ガラス体
F…焼結体
Claims (8)
- 多孔質ガラス体を炉心菅内で、鉛直方向に沿って前記炉心管を包囲するように配置された複数段のヒータで加熱して脱水処理する脱水工程と、
前記多孔質ガラス体を、前記複数段のヒータで加熱して焼結し、焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体を前記炉心管から取り出して光ファイバ用母材を得る取出工程とを含む光ファイバ用母材の製造方法であって、
前記焼結工程において、前記複数段のヒータのうちの一部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温して残部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度より低い温度にする、光ファイバ用母材の製造方法。 - 前記焼結工程において、前記複数段のヒータのうち前記多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温する前記一部のヒータを、前記複数段のヒータの一端側から他端側に向かって順次切り替えることにより、前記多孔質ガラス体を加熱して焼結する、請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記焼結工程において、前記複数段のヒータのうちの一部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度以上まで昇温して残部のヒータを前記多孔質ガラス体の焼結温度より低い温度にした後に、前記多孔質ガラス体を前記複数段のヒータに対して鉛直方向に沿って移動させることにより、前記多孔質ガラス体を加熱して焼結する、請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記焼結工程の前に、前記多孔質ガラス体を引き上げ、
前記焼結工程において、前記一部のヒータが最上段のヒータを含み、前記多孔質ガラス体をその下端から下降させて前記複数段のヒータに挿入することにより、前記多孔質ガラス体を加熱して焼結する、請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。 - 前記焼結工程において、前記多孔質ガラス体の上端が支持棒と接続されている、請求項4に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記焼結工程において、不活性ガスを含む焼結処理用ガスを前記多孔質ガラス体の挿入方向と反対方向に向かって供給する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記取出工程が、前記炉心管内で前記焼結体を引き上げて前記複数段のヒータから抜き出した後、保持する保持工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
- 前記焼結工程の前に、前記多孔質ガラス体にドーパントを拡散させるドーパント拡散工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
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