JP2004292195A - 光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法及び脱水焼結炉 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、光ファイバ用プリフォームの脱水と焼結を、1台の加熱炉により共用して行う脱水焼結方法を提供するものである。
【解決手段】かゝる本発明は、炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができる加熱炉200において、光ファイバ用プリフォーム10の脱水時には、光ファイバ用プリフォーム10の全体を、加熱炉中に入れ、加熱炉の全体を加熱する一方、光ファイバ用プリフォーム10の焼結時には、光ファイバ用プリフォームの一端側から、加熱炉中に入れ、加熱炉の一部を加熱する光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方にあり、これによって、最適な脱水と焼結が得られる。
【選択図】 図2
【解決手段】かゝる本発明は、炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができる加熱炉200において、光ファイバ用プリフォーム10の脱水時には、光ファイバ用プリフォーム10の全体を、加熱炉中に入れ、加熱炉の全体を加熱する一方、光ファイバ用プリフォーム10の焼結時には、光ファイバ用プリフォームの一端側から、加熱炉中に入れ、加熱炉の一部を加熱する光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方にあり、これによって、最適な脱水と焼結が得られる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光ファイバ用プリフォームの脱水と焼結を、1台の加熱炉により共用して行う脱水焼結方法とこれに用いる脱水焼結炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ用プリフォーム(多孔質母材)は、VAD法、OVD法などにより製造され、これを、高温電気炉などの加熱炉により、脱水、焼結して、透明ガラス化された透明ガラス母材を得ている。
【0003】
この脱水や焼結を行う際、炉の一部が発熱される加熱炉(以下傾斜炉という)を用いて、光ファイバ用プリフォームをトラバース(移動)させながら加熱する方法が行われている(例えば特許文献1参照)。一方、炉の全体が発熱される加熱炉(以下均熱炉という)を用いて、静止した状態の光ファイバ用プリフォーム全体を加熱する方法も提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−133766号 1〜4頁 図1
【0005】
上記した傾斜炉と均熱炉の概略構造を示すと、例えば、図10〜図11の如くである。つまり、傾斜炉100Aの場合には、炉心管110の一部にヒータ121と断熱材122などからなる加熱部120があって、トラバースする光ファイバ用プリフォーム10の一部を加熱するようになっている。一方、均熱炉100Bの場合には、炉心管110のほぼ全長に渡ってヒータ121と断熱材122などからなる加熱部120があって、静止した状態の光ファイバ用プリフォーム10の全体を加熱するようになっている。なお、図中、11は光ファイバ用プリフォーム10の把持用の棒状のガラスロッドであり、また、各炉の炉心管110中には、例えば、その下方から、必要に応じて不活性ガスや脱水ガスなどのガスが供給されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような傾斜炉100Aや均熱炉100Bによって、光ファイバ用プリフォーム10の脱水や焼結を行う場合、一長一短がある。
【0007】
先ず、脱水にあっては、均熱炉100Bの方の使用が望ましい。つまり、均熱炉100Bでは、光ファイバ用プリフォーム10の全体を加熱するため、短時間で十分な脱水が得られるからである。これに対して、傾斜炉100Aの場合には、光ファイバ用プリフォーム10の全体を脱水に適した温度に加熱することが難いからである。
【0008】
次に、焼結にあっては、傾斜炉100Aの方の使用が望ましい。つまり、傾斜炉100Aでは、その一部(例えば上部)のみを発熱させ、この部分に光ファイバ用プリフォーム10の一部をトラバースさせ、例えば、その下端側から徐々に加熱することができる。このため、確実にプリフォームの下端側から透明ガラス化が進み、仮にプリフォーム内部に不要なガスなどが含まれていても、このガスなどが上部側の未焼結部分に移動するなどしてスムーズに除去されるため、良好な焼結が可能となるからである。これに対して、均熱炉100Bの場合には、光ファイバ用プリフォーム10の全体が加熱されるため、透明ガラス化が全体的に進み、プリフォーム内部の不要なガスなどの除去がスムーズに行われない懸念があるからである。
【0009】
一方、近年母材サイズの大型化に伴い光ファイバ用プリフォーム中のガスや泡などを確実にかつ効果的に抜き取ることができる加熱炉として、炉内の真空化を図った真空均熱炉による方法も提案されているが(例えば特許文献2参照)、この炉の場合、炉自体の排気やシールなどの手段が複雑となる他、真空装置系も必要となるため、炉のトータルコストが上昇するという問題があった。
【0010】
【特許文献2】
特開平5−163038号 1〜4頁 図1
【0011】
そこで、本発明者等は、傾斜炉と均熱炉のそれぞれの利点に着目した新たな着想に基づく、光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法、及び脱水焼結炉を提案する一方、後述するように、種々の実験結果に基づき、新たな独自の要件を見い出した。
【0012】
本発明は、このような観点に立ってなされたもので、基本的には、傾斜炉と均熱炉のそれぞれの利点を生かした形であって、さらに、これに新たな独自の要件を付加した新規な光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法、及びこれに用いる脱水焼結炉を提供せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができる加熱炉において、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、当該光ファイバ用プリフォームの全体を、前記加熱炉中に入れ、当該加熱炉の全体を加熱する一方、光ファイバ用プリフォームの焼結時には、当該光ファイバ用プリフォームの一端側から、前記加熱炉中に入れ、当該加熱炉の一部を加熱することを特徴とする光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0014】
請求項2記載の本発明は、前記脱水時には、前記加熱炉の全体を、1100〜1300℃の範囲で加熱することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0015】
請求項3記載の本発明は、前記焼結時には、前記加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム外径の2倍以下になるように制御することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0016】
請求項4記載の本発明は、前記焼結時には、前記加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御することを特徴とする請求項1、又は2記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0017】
請求項5記載の本発明は、前記焼結時には、前記加熱炉の一部の加熱範囲が、当該加熱炉の上部に設定されていることを特徴とする請求項1、3又は4記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0018】
請求項6記載の本発明は、炉心の長手方向に複数の分割された加熱手段が多段に設置された加熱炉であって、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、前記複数の全加熱手段を加熱駆動させる一方、光ファイバ用プリフォームの焼結時には、前記複数の加熱手段の一部を加熱駆動させることを特徴とする光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉にある。
【0019】
請求項7記載の本発明は、前記複数の加熱手段において、焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、他の加熱手段と異なることを特徴とする請求項6記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉にある。
【0020】
請求項8記載の本発明は、前記焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、高加熱形のカーボン抵抗ヒータであることを特徴とする請求項7記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉にある。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉の一例を示したものである。この脱水焼結炉(加熱炉)200の場合、背高の炉心管210の中程から下方に掛けて、複数の分割された加熱手段(例えば6個の加熱ヒータ)221a、221b・・・とこれらの外周を囲む断熱材221とからなる加熱部220が設けてあり、さらに、この外周には炉外装230が設けてある。
【0022】
上記炉心管210の下端には、必要に応じて供給される不活性ガスや脱水ガス(不活性ガスと塩素ガスとの混合ガス)などのガスのための供給口211が設けてあり、また、上端側には、図示しない開閉部があって、内部に光ファイバ用プリフォームが搬入できるようになっており、その上端面には、光ファイバ用プリフォームのガラスロッドが通される挿通穴212が設けてある。
【0023】
上記複数の分割された加熱手段221a、221bは、特に限定されいなが、後述するように、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させて、炉内温度を約1100〜1300℃にする一方、焼結時には、最上段の加熱手段221aのみを加熱駆動させて、部分的に炉内温度を約1400℃以上にするものであるため、少なくとも最上段の加熱手段221aは、高価ではあるが、最高約1700℃程度までの加熱が可能なカーボン抵抗ヒータとすることが望ましい。他の加熱手段221bのヒータとしては、1300℃程度まで加熱可能な安価なタイプのものを用いればよい。
【0024】
このように脱水と焼結を1台の加熱炉で共用することで、大幅な設備コストの低減が図られ、さらに、上記した最上段の加熱手段221aと他の加熱手段221bを異にして、使い分けることで、炉自体の大幅な低コスト化が可能となる。例えば、全加熱手段221a、221bを高価なカーボン抵抗ヒータとする場合に比較して、上記のように、最上段の加熱手段221aのみを高価なカーボン抵抗ヒータし、他は安価なタイプのものとした場合、炉自体において30%程度のコストダウンが可能となる。
【0025】
次に、上記脱水焼結炉200を用いて、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法について、図2〜図3により説明する。
【0026】
図2は光ファイバ用プリフォーム10を脱水する場合で、プリフォーム10部分の全体を、上下方向に多段に配置された加熱手段221a、221b内に完全に入れて、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させて、炉内温度を約1100〜1300℃にする。なお、12は棒状のガラスロッド11に装着された円盤状のカバーで、背高の炉心管210内にあって、下方側の加熱領域内の熱が上方側へ移動するのを防ぐためのものである。また、必要により、炉心管210の下端からは、不活性ガスや脱水ガスなどのガスを供給する。
【0027】
このとき、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させるため、短時間で、炉内温度を約1100〜1300℃にすることができる。しかも、図2の炉側方に付した温度分布曲線Iのグラフから明らかなように、炉の長手方向(上下方向)に均一な温度分布が得られるため、プリフォーム10の全体に渡って偏ることなく、最適の脱水が得られる。つまり、迅速な脱水が最適な形で行われる。
【0028】
図3は脱水後の光ファイバ用プリフォーム10を焼結する場合で、プリフォーム10にあっては、その下端側からトラバースさせて徐々に下降させる。このとき、複数の多段に配置された加熱手段221a、221bのうち、最上段の加熱手段221aのみを加熱駆動させて、この加熱領域を中心にして、部分的に炉内温度を約1400℃以上にする。この際も、棒状のガラスロッド11には円盤状のカバー12を装着しておき、また、必要により、炉心管210の下端からは、不活性ガスなどを供給する。
【0029】
そうすると、図3の炉側方に付した温度分布曲線IIのグラフから明らかなように、炉の長手方向(上下方向)に山形の温度分布が得られるため、プリフォーム10にあっては、図4に示すように、下端側から徐々に透明ガラス化されて、所望のガラス母材10aが得られる。
【0030】
このようにプリフォーム10の下端側から透明ガラス化される場合、仮にプリフォーム10側に不要なガスなどが含まれていても、これらのガスはスート内に閉じ込められることなく、未焼結部分側などにスムーズに分散されるため、気泡などの残存を最小限に抑えた優れたガラス母材10aが得られる。
【0031】
この焼結時、後述する実験例から明らかなように、加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム外径(直径)の2倍以下になるように制御するこが好ましい。例えば、プリフォーム外径が300mm程度の場合には、その範囲は600mm以下が好ましい。また、加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御するこが好ましい。例えば、プリフォームの全長が1500mm程度の場合には、その範囲は500mm以下が好ましい。これらの理由は、約1400℃以上の加熱領域がこれらの値を越えるようになると、温度傾斜が緩くなって、結果的に均熱領域が長くなるため、プリフォーム中のガス拡散がスムーズに行われず、焼結後のガラス母材中に気泡が残存し易くなるからと考えられる。
【0032】
このことは、焼結時、本発明の脱水焼結炉200において、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させて、均熱炉型として用いた場合、図5に示すように、良好なガラス母材は得られないことからも判る。つまり、均熱炉型として、プリフォーム10の全体を加熱すると、その外周側から透明ガラス化が徐々に始まるため、プリフォーム10側に不要なガスなどが含まれていると、このガスは、全外周側の透明ガラス化により逃げ場がなくなり、最終的に気泡10bなどとしてガラス母材10a側に残存することになるからである。また、このことによって、均熱炉の場合、焼結には不向きであることも判る。
【0033】
本発明者等は、上記のような本発明の脱水焼結方法、及び脱水焼結炉の利点などをより明確にするため、種々の要件を変えたを実験を行ったところ、以下の如くであった。
【0034】
〈実験例〉
先ず、図6の図表に示した各要件のもとで、光ファイバ用プリフォームの脱水と焼結を行った。ここで、用いる光ファイバ用プリフォームは、VAD法により製造したSM光ファイバ用のもので、その全長は1500mm、その外径(直径)は300±10mmである。また、脱水焼結炉としては、図1と同構造のものを用いた。そして、脱水時には不活性ガス(He)に対して脱水ガスとして濃度1.5vol%の塩素ガス(Cl2 )を混合した混合ガスを用いた。焼結時には不活性ガスとしてHeを用いた。なお、各例a〜lについて実験は2回行った。また、同図表における脱水温度、焼結温度の測定は、炉心管の表面を炉外から、赤外放射温度計によりモニタして行った。また、脱水加熱領域、焼結加熱領域の測定にあたっては、プリフォーム近傍の側方に高純度アルミナ管に封入した熱電対を設置して測定した。そして、これらの脱水加熱領域、及び焼結加熱領域、即ち、その幅(mm)の特定にあたっては、最高温度部分から50℃低下した部分までの範囲とした。
【0035】
図7は上記図6の各実験により得られたガラス母材における、外観検査結果を示したものである。なお、ここでは、母材内部の気泡個数をカウントしてあり、また、大きな気泡については、寸法も併記してある。図8は上記図6の各実験により得られたガラス母材から紡糸(ファイバ化)した光ファイバにおける、伝送損失特性を示したものである。なお、ここで、ガラス母材の紡糸にあたっては、必要によりクラッド層を付与してから行った。また、同図表において実験例hの結果は除いてある。図9は図6の各実験例に対して、図7及び図8での結果を追加した総合特性結果を示したものである。
【0036】
上記各図表からすると、先ず、脱水効果については、実験例a、b、cの実験結果からプリフォーム全体を加熱する場合(均熱型)、脱水時間は3時間もあれば十分であることが判る。また、実験例b、d、e、fの実験結果から脱水温度が1000℃程度では不十分なことが判る。また、実験例i、jの実験結果からプリフォームの一部を加熱する場合(傾斜型)、トラバース速度が400mm/hでは脱水が不十分であることが判る。次に、焼結効果については、実験例b、g、hの実験結果からプリフォーム全体を加熱する(均熱型)、昇温速度が速すぎると、母材中に気泡が残留することが判る。また、実験例k、lの実験結果からプリフォームの一部を加熱する場合(傾斜型)、加熱領域が広すぎると、母材中に気泡が残留することが判る。
【0037】
特に、焼結時における1400℃以上になる加熱領域の幅は、上記実験例k、lの実験結果から、700mmでは広すぎてよい結果が得られず、400mm程度であれば、良好な結果が得られることが判る。これらの実験例k、lにおいて、上記したように、プリフォームの全長は1500mmで、その外径(直径)は300±10mmであるため、1400℃以上になる加熱領域の幅は、プリフォーム外径(直径)の2倍以下に制御され、また、プリフォーム全長の0.3倍以下に制御される必要があることが判る。
また、総合的に判断すると、脱水時には均熱炉型として加熱させ、焼結時には傾斜炉型として加熱させ、かつ、1400℃以上になる加熱領域が上記要件を満たす(400mm)、実験例kの場合が、トータルの製造時間も短く(13時間)、ガラス母材中に気泡などが残留されないことから、最も優れていることが判る。
【0038】
なお、本発明の適用できる、光ファイバ用プリフォームは、特に限定されず、VAD法によるものの他に、OVD法によるものであってもよい。また、クラッド層が後から付け加えられるOVD法のものであってもよい。また、加熱炉の一部の加熱手段としては、最上段の加熱手段221aのみに限定されない。炉の構造によっては、最上段と次の段などの複数段とすることなども可能である。さらに、これらの傾斜炉型として加熱する一部の加熱手段は、最上段のものに限定されない。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法によると、1台の加熱炉を用いて、炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができるため、脱水時には、光ファイバ用プリフォームの全体を加熱炉中に入れ、加熱炉の全体を加熱する一方、焼結時には、光ファイバ用プリフォームの一端側から加熱炉中に入れ、加熱炉の一部を加熱する脱水焼結方法が可能となり、大幅な設備コストの低減が得られると共に、最適な脱水と焼結も可能となる。
【0040】
また、上記方法において、脱水時に加熱炉の全体を、1100〜1300℃の範囲で加熱することで、脱水に最適な温度で、短時間での効率的な脱水が可能となる。
【0041】
また、上記方法において、焼結時に加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム径の2倍以下になるように制御することで、焼結後のガラス母材において気泡などの残留が最小限に抑えられた、最適な光ファイバ用プリフォームの焼結が得られる。
【0042】
また、上記方法において、焼結時に加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御することで、焼結後のガラス母材において気泡などの残留が最小限に抑えられた、最適な光ファイバ用プリフォームの焼結が得られる。
【0043】
また、上記方法において、焼結時に加熱炉の一部の加熱範囲が、加熱炉の上部に設定されていることにより、焼結後のガラス母材において気泡などの残留が最小限に抑えられた、最適な光ファイバ用プリフォームの焼結が可能となる。
【0044】
次に、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉によると、炉心の長手方向に複数の分割された加熱手段が多段に設置された加熱炉であって、脱水時には、複数の全加熱手段を加熱駆動させる一方、焼結時には、複数の加熱手段の一部を加熱駆動させる脱水焼結炉であるため、脱水と焼結が共用可能となり、上記したように、設備コストの大幅な低減が可能となる。
【0045】
また、上記炉の複数の加熱手段において、焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、他の加熱手段と異なることにより、例えば、焼結時の加熱手段のみを高価なカーボン抵抗ヒータとし、他の加熱手段を安価なものとするなどの対応が可能となるため、炉自体の低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉を一実施例を示した概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法における脱水時の工程を示した概略説明図である。
【図3】本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法における焼結時の工程を示した概略説明図である。
【図4】図3における焼結時の光ファイバ用プリフォームの焼結状態を示した概略説明図である。
【図5】光ファイバ用プリフォームを均熱炉型で加熱した場合における焼結状態を示した概略説明図である。
【図6】光ファイバ用プリフォームおける脱水と焼結を種々の条件下で行った各実験例を示した図表である。
【図7】図6の実験例により得られたガラス母材の外観検査結果を示した図表である。
【図8】図6の実験例により得られたガラス母材からの光ファイバの伝送損失特性を示した図表である。
【図9】図6の実験例による総合特性結果を示した図表である。
【図10】光ファイバ用プリフォームに対する傾斜炉を示した概略縦断面図である。
【図11】光ファイバ用プリフォームに対する均熱炉を示した概略縦断面図である。
【符号の説明】
10 光ファイバ用プリフォーム
11 ガラスロッド
200 脱水焼結炉(加熱炉)
210 炉心管
220 加熱部
221a 加熱手段
221b 加熱手段
222 断熱材
230 炉外装
【産業上の利用分野】
本発明は、光ファイバ用プリフォームの脱水と焼結を、1台の加熱炉により共用して行う脱水焼結方法とこれに用いる脱水焼結炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ用プリフォーム(多孔質母材)は、VAD法、OVD法などにより製造され、これを、高温電気炉などの加熱炉により、脱水、焼結して、透明ガラス化された透明ガラス母材を得ている。
【0003】
この脱水や焼結を行う際、炉の一部が発熱される加熱炉(以下傾斜炉という)を用いて、光ファイバ用プリフォームをトラバース(移動)させながら加熱する方法が行われている(例えば特許文献1参照)。一方、炉の全体が発熱される加熱炉(以下均熱炉という)を用いて、静止した状態の光ファイバ用プリフォーム全体を加熱する方法も提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−133766号 1〜4頁 図1
【0005】
上記した傾斜炉と均熱炉の概略構造を示すと、例えば、図10〜図11の如くである。つまり、傾斜炉100Aの場合には、炉心管110の一部にヒータ121と断熱材122などからなる加熱部120があって、トラバースする光ファイバ用プリフォーム10の一部を加熱するようになっている。一方、均熱炉100Bの場合には、炉心管110のほぼ全長に渡ってヒータ121と断熱材122などからなる加熱部120があって、静止した状態の光ファイバ用プリフォーム10の全体を加熱するようになっている。なお、図中、11は光ファイバ用プリフォーム10の把持用の棒状のガラスロッドであり、また、各炉の炉心管110中には、例えば、その下方から、必要に応じて不活性ガスや脱水ガスなどのガスが供給されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような傾斜炉100Aや均熱炉100Bによって、光ファイバ用プリフォーム10の脱水や焼結を行う場合、一長一短がある。
【0007】
先ず、脱水にあっては、均熱炉100Bの方の使用が望ましい。つまり、均熱炉100Bでは、光ファイバ用プリフォーム10の全体を加熱するため、短時間で十分な脱水が得られるからである。これに対して、傾斜炉100Aの場合には、光ファイバ用プリフォーム10の全体を脱水に適した温度に加熱することが難いからである。
【0008】
次に、焼結にあっては、傾斜炉100Aの方の使用が望ましい。つまり、傾斜炉100Aでは、その一部(例えば上部)のみを発熱させ、この部分に光ファイバ用プリフォーム10の一部をトラバースさせ、例えば、その下端側から徐々に加熱することができる。このため、確実にプリフォームの下端側から透明ガラス化が進み、仮にプリフォーム内部に不要なガスなどが含まれていても、このガスなどが上部側の未焼結部分に移動するなどしてスムーズに除去されるため、良好な焼結が可能となるからである。これに対して、均熱炉100Bの場合には、光ファイバ用プリフォーム10の全体が加熱されるため、透明ガラス化が全体的に進み、プリフォーム内部の不要なガスなどの除去がスムーズに行われない懸念があるからである。
【0009】
一方、近年母材サイズの大型化に伴い光ファイバ用プリフォーム中のガスや泡などを確実にかつ効果的に抜き取ることができる加熱炉として、炉内の真空化を図った真空均熱炉による方法も提案されているが(例えば特許文献2参照)、この炉の場合、炉自体の排気やシールなどの手段が複雑となる他、真空装置系も必要となるため、炉のトータルコストが上昇するという問題があった。
【0010】
【特許文献2】
特開平5−163038号 1〜4頁 図1
【0011】
そこで、本発明者等は、傾斜炉と均熱炉のそれぞれの利点に着目した新たな着想に基づく、光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法、及び脱水焼結炉を提案する一方、後述するように、種々の実験結果に基づき、新たな独自の要件を見い出した。
【0012】
本発明は、このような観点に立ってなされたもので、基本的には、傾斜炉と均熱炉のそれぞれの利点を生かした形であって、さらに、これに新たな独自の要件を付加した新規な光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法、及びこれに用いる脱水焼結炉を提供せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができる加熱炉において、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、当該光ファイバ用プリフォームの全体を、前記加熱炉中に入れ、当該加熱炉の全体を加熱する一方、光ファイバ用プリフォームの焼結時には、当該光ファイバ用プリフォームの一端側から、前記加熱炉中に入れ、当該加熱炉の一部を加熱することを特徴とする光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0014】
請求項2記載の本発明は、前記脱水時には、前記加熱炉の全体を、1100〜1300℃の範囲で加熱することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0015】
請求項3記載の本発明は、前記焼結時には、前記加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム外径の2倍以下になるように制御することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0016】
請求項4記載の本発明は、前記焼結時には、前記加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御することを特徴とする請求項1、又は2記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0017】
請求項5記載の本発明は、前記焼結時には、前記加熱炉の一部の加熱範囲が、当該加熱炉の上部に設定されていることを特徴とする請求項1、3又は4記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法にある。
【0018】
請求項6記載の本発明は、炉心の長手方向に複数の分割された加熱手段が多段に設置された加熱炉であって、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、前記複数の全加熱手段を加熱駆動させる一方、光ファイバ用プリフォームの焼結時には、前記複数の加熱手段の一部を加熱駆動させることを特徴とする光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉にある。
【0019】
請求項7記載の本発明は、前記複数の加熱手段において、焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、他の加熱手段と異なることを特徴とする請求項6記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉にある。
【0020】
請求項8記載の本発明は、前記焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、高加熱形のカーボン抵抗ヒータであることを特徴とする請求項7記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉にある。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉の一例を示したものである。この脱水焼結炉(加熱炉)200の場合、背高の炉心管210の中程から下方に掛けて、複数の分割された加熱手段(例えば6個の加熱ヒータ)221a、221b・・・とこれらの外周を囲む断熱材221とからなる加熱部220が設けてあり、さらに、この外周には炉外装230が設けてある。
【0022】
上記炉心管210の下端には、必要に応じて供給される不活性ガスや脱水ガス(不活性ガスと塩素ガスとの混合ガス)などのガスのための供給口211が設けてあり、また、上端側には、図示しない開閉部があって、内部に光ファイバ用プリフォームが搬入できるようになっており、その上端面には、光ファイバ用プリフォームのガラスロッドが通される挿通穴212が設けてある。
【0023】
上記複数の分割された加熱手段221a、221bは、特に限定されいなが、後述するように、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させて、炉内温度を約1100〜1300℃にする一方、焼結時には、最上段の加熱手段221aのみを加熱駆動させて、部分的に炉内温度を約1400℃以上にするものであるため、少なくとも最上段の加熱手段221aは、高価ではあるが、最高約1700℃程度までの加熱が可能なカーボン抵抗ヒータとすることが望ましい。他の加熱手段221bのヒータとしては、1300℃程度まで加熱可能な安価なタイプのものを用いればよい。
【0024】
このように脱水と焼結を1台の加熱炉で共用することで、大幅な設備コストの低減が図られ、さらに、上記した最上段の加熱手段221aと他の加熱手段221bを異にして、使い分けることで、炉自体の大幅な低コスト化が可能となる。例えば、全加熱手段221a、221bを高価なカーボン抵抗ヒータとする場合に比較して、上記のように、最上段の加熱手段221aのみを高価なカーボン抵抗ヒータし、他は安価なタイプのものとした場合、炉自体において30%程度のコストダウンが可能となる。
【0025】
次に、上記脱水焼結炉200を用いて、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法について、図2〜図3により説明する。
【0026】
図2は光ファイバ用プリフォーム10を脱水する場合で、プリフォーム10部分の全体を、上下方向に多段に配置された加熱手段221a、221b内に完全に入れて、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させて、炉内温度を約1100〜1300℃にする。なお、12は棒状のガラスロッド11に装着された円盤状のカバーで、背高の炉心管210内にあって、下方側の加熱領域内の熱が上方側へ移動するのを防ぐためのものである。また、必要により、炉心管210の下端からは、不活性ガスや脱水ガスなどのガスを供給する。
【0027】
このとき、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させるため、短時間で、炉内温度を約1100〜1300℃にすることができる。しかも、図2の炉側方に付した温度分布曲線Iのグラフから明らかなように、炉の長手方向(上下方向)に均一な温度分布が得られるため、プリフォーム10の全体に渡って偏ることなく、最適の脱水が得られる。つまり、迅速な脱水が最適な形で行われる。
【0028】
図3は脱水後の光ファイバ用プリフォーム10を焼結する場合で、プリフォーム10にあっては、その下端側からトラバースさせて徐々に下降させる。このとき、複数の多段に配置された加熱手段221a、221bのうち、最上段の加熱手段221aのみを加熱駆動させて、この加熱領域を中心にして、部分的に炉内温度を約1400℃以上にする。この際も、棒状のガラスロッド11には円盤状のカバー12を装着しておき、また、必要により、炉心管210の下端からは、不活性ガスなどを供給する。
【0029】
そうすると、図3の炉側方に付した温度分布曲線IIのグラフから明らかなように、炉の長手方向(上下方向)に山形の温度分布が得られるため、プリフォーム10にあっては、図4に示すように、下端側から徐々に透明ガラス化されて、所望のガラス母材10aが得られる。
【0030】
このようにプリフォーム10の下端側から透明ガラス化される場合、仮にプリフォーム10側に不要なガスなどが含まれていても、これらのガスはスート内に閉じ込められることなく、未焼結部分側などにスムーズに分散されるため、気泡などの残存を最小限に抑えた優れたガラス母材10aが得られる。
【0031】
この焼結時、後述する実験例から明らかなように、加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム外径(直径)の2倍以下になるように制御するこが好ましい。例えば、プリフォーム外径が300mm程度の場合には、その範囲は600mm以下が好ましい。また、加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御するこが好ましい。例えば、プリフォームの全長が1500mm程度の場合には、その範囲は500mm以下が好ましい。これらの理由は、約1400℃以上の加熱領域がこれらの値を越えるようになると、温度傾斜が緩くなって、結果的に均熱領域が長くなるため、プリフォーム中のガス拡散がスムーズに行われず、焼結後のガラス母材中に気泡が残存し易くなるからと考えられる。
【0032】
このことは、焼結時、本発明の脱水焼結炉200において、全加熱手段221a、221bを加熱駆動させて、均熱炉型として用いた場合、図5に示すように、良好なガラス母材は得られないことからも判る。つまり、均熱炉型として、プリフォーム10の全体を加熱すると、その外周側から透明ガラス化が徐々に始まるため、プリフォーム10側に不要なガスなどが含まれていると、このガスは、全外周側の透明ガラス化により逃げ場がなくなり、最終的に気泡10bなどとしてガラス母材10a側に残存することになるからである。また、このことによって、均熱炉の場合、焼結には不向きであることも判る。
【0033】
本発明者等は、上記のような本発明の脱水焼結方法、及び脱水焼結炉の利点などをより明確にするため、種々の要件を変えたを実験を行ったところ、以下の如くであった。
【0034】
〈実験例〉
先ず、図6の図表に示した各要件のもとで、光ファイバ用プリフォームの脱水と焼結を行った。ここで、用いる光ファイバ用プリフォームは、VAD法により製造したSM光ファイバ用のもので、その全長は1500mm、その外径(直径)は300±10mmである。また、脱水焼結炉としては、図1と同構造のものを用いた。そして、脱水時には不活性ガス(He)に対して脱水ガスとして濃度1.5vol%の塩素ガス(Cl2 )を混合した混合ガスを用いた。焼結時には不活性ガスとしてHeを用いた。なお、各例a〜lについて実験は2回行った。また、同図表における脱水温度、焼結温度の測定は、炉心管の表面を炉外から、赤外放射温度計によりモニタして行った。また、脱水加熱領域、焼結加熱領域の測定にあたっては、プリフォーム近傍の側方に高純度アルミナ管に封入した熱電対を設置して測定した。そして、これらの脱水加熱領域、及び焼結加熱領域、即ち、その幅(mm)の特定にあたっては、最高温度部分から50℃低下した部分までの範囲とした。
【0035】
図7は上記図6の各実験により得られたガラス母材における、外観検査結果を示したものである。なお、ここでは、母材内部の気泡個数をカウントしてあり、また、大きな気泡については、寸法も併記してある。図8は上記図6の各実験により得られたガラス母材から紡糸(ファイバ化)した光ファイバにおける、伝送損失特性を示したものである。なお、ここで、ガラス母材の紡糸にあたっては、必要によりクラッド層を付与してから行った。また、同図表において実験例hの結果は除いてある。図9は図6の各実験例に対して、図7及び図8での結果を追加した総合特性結果を示したものである。
【0036】
上記各図表からすると、先ず、脱水効果については、実験例a、b、cの実験結果からプリフォーム全体を加熱する場合(均熱型)、脱水時間は3時間もあれば十分であることが判る。また、実験例b、d、e、fの実験結果から脱水温度が1000℃程度では不十分なことが判る。また、実験例i、jの実験結果からプリフォームの一部を加熱する場合(傾斜型)、トラバース速度が400mm/hでは脱水が不十分であることが判る。次に、焼結効果については、実験例b、g、hの実験結果からプリフォーム全体を加熱する(均熱型)、昇温速度が速すぎると、母材中に気泡が残留することが判る。また、実験例k、lの実験結果からプリフォームの一部を加熱する場合(傾斜型)、加熱領域が広すぎると、母材中に気泡が残留することが判る。
【0037】
特に、焼結時における1400℃以上になる加熱領域の幅は、上記実験例k、lの実験結果から、700mmでは広すぎてよい結果が得られず、400mm程度であれば、良好な結果が得られることが判る。これらの実験例k、lにおいて、上記したように、プリフォームの全長は1500mmで、その外径(直径)は300±10mmであるため、1400℃以上になる加熱領域の幅は、プリフォーム外径(直径)の2倍以下に制御され、また、プリフォーム全長の0.3倍以下に制御される必要があることが判る。
また、総合的に判断すると、脱水時には均熱炉型として加熱させ、焼結時には傾斜炉型として加熱させ、かつ、1400℃以上になる加熱領域が上記要件を満たす(400mm)、実験例kの場合が、トータルの製造時間も短く(13時間)、ガラス母材中に気泡などが残留されないことから、最も優れていることが判る。
【0038】
なお、本発明の適用できる、光ファイバ用プリフォームは、特に限定されず、VAD法によるものの他に、OVD法によるものであってもよい。また、クラッド層が後から付け加えられるOVD法のものであってもよい。また、加熱炉の一部の加熱手段としては、最上段の加熱手段221aのみに限定されない。炉の構造によっては、最上段と次の段などの複数段とすることなども可能である。さらに、これらの傾斜炉型として加熱する一部の加熱手段は、最上段のものに限定されない。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法によると、1台の加熱炉を用いて、炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができるため、脱水時には、光ファイバ用プリフォームの全体を加熱炉中に入れ、加熱炉の全体を加熱する一方、焼結時には、光ファイバ用プリフォームの一端側から加熱炉中に入れ、加熱炉の一部を加熱する脱水焼結方法が可能となり、大幅な設備コストの低減が得られると共に、最適な脱水と焼結も可能となる。
【0040】
また、上記方法において、脱水時に加熱炉の全体を、1100〜1300℃の範囲で加熱することで、脱水に最適な温度で、短時間での効率的な脱水が可能となる。
【0041】
また、上記方法において、焼結時に加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム径の2倍以下になるように制御することで、焼結後のガラス母材において気泡などの残留が最小限に抑えられた、最適な光ファイバ用プリフォームの焼結が得られる。
【0042】
また、上記方法において、焼結時に加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御することで、焼結後のガラス母材において気泡などの残留が最小限に抑えられた、最適な光ファイバ用プリフォームの焼結が得られる。
【0043】
また、上記方法において、焼結時に加熱炉の一部の加熱範囲が、加熱炉の上部に設定されていることにより、焼結後のガラス母材において気泡などの残留が最小限に抑えられた、最適な光ファイバ用プリフォームの焼結が可能となる。
【0044】
次に、本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉によると、炉心の長手方向に複数の分割された加熱手段が多段に設置された加熱炉であって、脱水時には、複数の全加熱手段を加熱駆動させる一方、焼結時には、複数の加熱手段の一部を加熱駆動させる脱水焼結炉であるため、脱水と焼結が共用可能となり、上記したように、設備コストの大幅な低減が可能となる。
【0045】
また、上記炉の複数の加熱手段において、焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、他の加熱手段と異なることにより、例えば、焼結時の加熱手段のみを高価なカーボン抵抗ヒータとし、他の加熱手段を安価なものとするなどの対応が可能となるため、炉自体の低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉を一実施例を示した概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法における脱水時の工程を示した概略説明図である。
【図3】本発明に係る光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法における焼結時の工程を示した概略説明図である。
【図4】図3における焼結時の光ファイバ用プリフォームの焼結状態を示した概略説明図である。
【図5】光ファイバ用プリフォームを均熱炉型で加熱した場合における焼結状態を示した概略説明図である。
【図6】光ファイバ用プリフォームおける脱水と焼結を種々の条件下で行った各実験例を示した図表である。
【図7】図6の実験例により得られたガラス母材の外観検査結果を示した図表である。
【図8】図6の実験例により得られたガラス母材からの光ファイバの伝送損失特性を示した図表である。
【図9】図6の実験例による総合特性結果を示した図表である。
【図10】光ファイバ用プリフォームに対する傾斜炉を示した概略縦断面図である。
【図11】光ファイバ用プリフォームに対する均熱炉を示した概略縦断面図である。
【符号の説明】
10 光ファイバ用プリフォーム
11 ガラスロッド
200 脱水焼結炉(加熱炉)
210 炉心管
220 加熱部
221a 加熱手段
221b 加熱手段
222 断熱材
230 炉外装
Claims (8)
- 炉心の長手方向の全体又は一部を適宜加熱することができる加熱炉において、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、当該光ファイバ用プリフォームの全体を、前記加熱炉中に入れ、当該加熱炉の全体を加熱する一方、光ファイバ用プリフォームの焼結時には、当該光ファイバ用プリフォームの一端側から、前記加熱炉中に入れ、当該加熱炉の一部を加熱することを特徴とする光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法。
- 前記脱水時には、前記加熱炉の全体を、1100〜1300℃の範囲で加熱することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法。
- 前記焼結時には、前記加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム外径の2倍以下になるように制御することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法。
- 前記焼結時には、前記加熱炉の約1400℃以上になる範囲が、光ファイバ用プリフォーム全長の0.3倍以下になるように制御することを特徴とする請求項1、又は2記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法。
- 前記焼結時には、前記加熱炉の一部の加熱範囲が、当該加熱炉の上部に設定されていることを特徴とする請求項1、3又は4記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結方法。
- 炉心の長手方向に複数の分割された加熱手段が多段に設置された加熱炉であって、光ファイバ用プリフォームの脱水時には、前記複数の全加熱手段を加熱駆動させる一方、光ファイバ用プリフォームの焼結時には、前記複数の加熱手段の一部を加熱駆動させることを特徴とする光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉。
- 前記複数の加熱手段において、焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、他の加熱手段と異なることを特徴とする請求項6記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉。
- 前記焼結時に加熱駆動させる加熱手段が、高加熱形のカーボン抵抗ヒータであることを特徴とする請求項7記載の光ファイバ用プリフォームの脱水焼結炉。
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