JP4865232B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は光ファイバ用母材の製造方法に関する。特にフッ素を加圧状態で高濃度ドープする光ファイバ用母材の製造方法に関する。
光ファイバの製造方法としては、以下の方法がある。例えば、まずVAD(Vapour phase Axial Deposition)法やOVD(Outside Vapour Deposition)法で合成した光ファイバ用多孔質母材を、ガラス化装置で脱水及び透明ガラス化して透明な光ファイバ用ガラス母材を作製する。次に、その母材を例えば酸水素火炎やプラズマ火炎もしくは電気炉で加熱延伸し、コアまたはコアの一部、あるいはコアとクラッドの一部を備えたガラスロッドを作製する。
得られたガラスロッドに、さらにOVD法等によりシリカガラス粒子を堆積させてクラッドとなる多孔質母材を形成し、ガラス化装置で脱水および透明ガラス化を必要な回数だけ行って、光ファイバ用ガラス母材(以下、プリフォームと呼ぶ)を作製する。
光ファイバ用多孔質母材を加熱処理する工程では、雰囲気中のフッ素の分圧を高くすると、プリフォームにドープされるフッ素の量が多くなることが知られている。また、常圧ではフッ素系ガス濃度が100容量%雰囲気中で光ファイバ用多孔質母材を処理しても、純粋な石英ガラスに対する比屈折率差が−0.7%程度にしかフッ素をドープすることができない。ところが、フッ素含有雰囲気で1気圧以上に加圧した状態で加熱処理すると、前記の比屈折率差で−0.7%以上のフッ素をドープすることが可能であることも知られている。
前記加圧による高濃度フッ素ドープ方法としては、特開昭60−255638号公報、特開昭61−247633号公報、特開昭62−59535号公報、特開昭63−176325号公報に記載がある。
特開昭60−255638号公報 特開昭61−247633号公報 特開昭62−59535号公報 特開昭63−176325号公報
上記の特開昭60−255638号公報、特開昭61−247633号公報、特開昭63−176325号公報によれば、フッ素ドープ時の圧力が高く、処理温度が高温であればあるほど屈折率は低下し、純粋な石英ガラスに対する比屈折率差は大きくなる。ところが、圧力が20気圧を越えるか、処理温度が1400℃を越えると、透明化後のガラス体に気泡が残りやすいとの記載がある。また、フッ素をドープする際の温度が高いほど、ドープ量が多くなることも示されている。
しかし、フッ素をドープする際の温度が高い場合には、多孔質母材の収縮および焼結速度が速まり、多孔質母材の表面のみ焼結が進むことになる。その結果、多孔質母材内部に微小な気泡が多数残留し、透明なプリフォームが得られなくなる。また、温度が高い場合には、多孔質母材が自重により変形して、伸び、曲がり、及び非円化が生じることがある。この傾向は、フッ素分圧が高いほど顕著になり、特に、フッ素分圧が1気圧を越えると非常に顕著となる。
また、得られたプリフォームが全体としては透明であっても、気泡が多く残留することになる。また、ガラス化後は気泡がなくても、その後の延伸工程や、延伸後にさらにその表面にシリカガラス粒子を堆積させて製造した多孔質母材を焼結透明化した後、あるいはジャケット工程の後等の、さらに加熱処理を加える工程で、余分に固溶していた屈折率の変化に寄与していないフッ素系ガスが発泡して気泡になったり、線引中に発泡してそれが完成した光ファイバ中にエアラインの形で残留してしまうことがあった。
さらに、多孔質母材の加熱処理室内をフッ素を含有する雰囲気にする際に、温度が高すぎると、完全にガスが置換される前に反応や収縮が進み、多孔質母材の径方向や長手方向で均一にフッ素がドープされないという問題がある。同様に、前記加熱処理室内をフッ素を含有する雰囲気にする際に、既に1気圧以上に加圧されていると、ガスの置換効率が落ち、多孔質母材の径方向や長手方向で均一にフッ素がドープされないという問題がある。また、加圧状態で完全にガスを置換しようとすると時間が長くかかり、非効率である。しかしこれらの問題の解消方法については、前記の公知文献には全く開示されていない。
特開昭62−59535号公報においては、加熱処理の雰囲気中に含有されるドープ剤は5〜95容量%であり、圧力は2〜8気圧とし、多孔質母材の密度は0.1〜1.5g/cmとし、温度は1500〜1600℃程度まで100℃/時の昇温速度で昇温することが開示されている。しかし、多孔質母材の初期密度が0.5g/cmを越えると、母材中の空孔すなわち表面積が少なくなり、高濃度にフッ素をドープすることができない。仮にできたとしても、必要以上に雰囲気の圧力を高めなければならず、非効率である。
また特開昭62−59535号公報では、フッ素ドープ処理開始時の温度について全く開示していないが、多孔質母材を投入する都合上、室温に近いところから行っていると思われる。100℃/時で、室温の25℃から1500℃まで加熱する場合には14.8時間を要し、脱水工程や、母材を取り出すために室温まで下げる時間を含めると20時間以上もかかることになる。
この場合は、処理時間が長すぎで量産には不向きである。また、1400℃以上の高温に1時間以上さらすことになり、伸び、曲がり、及び非円のような母材の変形が生じる可能性がある。この傾向は、フッ素を高濃度にドープするほど顕著となる。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、下記記載の発明を提供することにある。
(1)高濃度のフッ素を含有する雰囲気中、又は高濃度のフッ素を含有する雰囲気でかつ1気圧以上の加圧下で発泡や気泡の残留を起こさず、高濃度にフッ素をドープする方法。
(2)光ファイバ用多孔質母材の径方向、及び長手方向にフッ素を均一にドープする方法。
(3)伸び、曲がり、及び非円の無い、又は、ほとんど無い高濃度にフッ素がドープされたプリフォームを製造する方法。
(4)後工程で加熱処理を施しても発泡しない、又は、ほとんど発泡しない高濃度にフッ素がドープされたプリフォームを製造する方法。
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、多孔質母材を用意する工程と、前記多孔質母材を加熱処理室に挿入する工程と、前記加熱処理室内の雰囲気をフッ素を含む雰囲気へ置換する置換工程と、前記加熱処理室内を1気圧以上の圧力に加圧する加圧工程と、加圧雰囲気下であってフッ素を含む雰囲気下で前記多孔質母材を加熱処理し前記多孔質母材にフッ素をドープするフッ素ドープ工程と、前記多孔質母材を透明ガラス化するガラス化工程と、を有し、前記フッ素ドープ工程を開始する直前の多孔質母材の密度は0.5g/cm以下であり、前記フッ素ドープ工程の前に、前記多孔質母材を前記多孔質母材の径方向の最高温度と最低温度の差が20℃以下となるように加熱処理する加熱工程をさらに含み、前記加熱工程は、前記加熱処理室の温度を、前記加熱処理を行う温度より低く、かつ、前記多孔質母材が焼結を起こさない温度まで一旦降温し、該降温した温度から前記加熱処理する温度まで、5℃/分以下の昇温速度で昇温するものであり、前記置換工程は前記加圧工程の前に行われ、前記加熱処理室内の雰囲気を不活性ガスで置換した後にフッ素を含む雰囲気へ置換することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
本発明の第2の態様は、前記置換工程は、前記加熱処理室の最高温度が1200℃以下の雰囲気下で行われることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
本発明の第3の態様は、前記ガラス化工程は、前記加熱処理室の温度を10℃/分以下の昇温速度で処理温度まで昇温することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
本発明の第4の態様は、前記ガラス化工程は、前記加熱処理室の最高温度が1350℃以下の雰囲気下で行われることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
本発明の第5の態様は、前記フッ素を含む雰囲気が、SF、CF、ClF、SiF、Siのフッ素系ガスの少なくとも1種のガスを含む雰囲気、又は前記SF、CF、ClF、SiF、Siのフッ素系ガスの少なくとも1種のガスと不活性ガスとを含む雰囲気であることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
本発明の第6の態様は、前記多孔質母材がシリカガラス粒子より構成され、密度が0.1〜0.5g/cmの範囲であることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
本発明の効果を以下に示した。
(1)本発明によれば、フッ素ドープを開始する直前の前記多孔質母材の密度が0.5g/cm3以下であり、前記密度に比べて20%より大きくならないように、かつ、フッ素ドープの直前に多孔質母材の少なくとも径方向の温度がほぼ均一となるように、多孔質母材を加熱する工程を有する。
そのため、多孔質母材中の気孔を大幅に減少させることがなく、少なくとも、径方向に気孔分布がほぼ均一な状態をつくることができる。そのため、必要以上にフッ素分圧を上げることなく、発泡や気泡の残留を起こさずに、高濃度にフッ素をドープすることが可能である。
(2)本発明によれば、フッ素ドープを行う際の雰囲気への置換を、前記加熱処理の前に行うことで、少なくとも径方向に均一にフッ素をドープする事ができる。
(3)本発明によれば、フッ素ドープ時の昇温速度を5℃/分以下とすることで、径方向の温度差がほとんどなく、均一にフッ素をドープする事ができる。さらに、径方向の温度差がないため、多孔質母材が径方向に均一に収縮し、内部に気泡が残留しない。
(4)本発明によれば、透明ガラス化の温度を1350℃以下とすることで、フッ素が高濃度にドープされた母材の軟化を防ぐことができ、伸び、曲がり、および非円の少ないプリフォームが得られる。
(5)本発明によれば、透明ガラス化の温度を1350℃以下とすることで、余分なフッ素系ガスがガラス中へ固溶することを防ぐことができるため、後工程で加熱処理を施しても発泡することがないプリフォームを作製できる。
本発明は、VAD法やOVD法で合成した多孔質母材を、ガラス化炉にて脱水、透明ガラス化等の加熱処理を行い、透明なプリフォームを形成する光ファイバの製造方法に関する。
本発明は、加熱処理の過程で、少なくともある一定時間、フッ素を含有する雰囲気中で1気圧より高い圧力下で加熱処理する工程を備えている。また、フッ素ドープを開始する前の密度が0.5g/cm3の多孔質母材を用いて、フッ素ドープを開始する前の密度に比べて20%より大きくならないように、かつ、前記フッ素ドープを開始する前に前記多孔質母材の少なくとも光ファイバとなる部分に相当する部分の径方向の温度分布がほぼ均一になるように加熱する工程を備えるものである。
この目的は、フッ素をドープするまでに多孔質母材の気孔を大幅に減少させず、さらに、均一にフッ素をドープするために少なくとも径方向にほぼ均一な密度状態をつくりだすことにある。
なお、フッ素ドープを開始する前の多孔質母材の密度が0.5g/cmを越えると、母材中の空孔すなわち表面積が少なくなり、高濃度にフッ素をドープすることができない。仮にできたとしても、必要以上に雰囲気の圧力を高めなければならず、非効率である。そのため、多孔質母材の密度は0.5g/cm以下とする。また、フッ素ドープを開始する直前の前記多孔質母材の密度が、製造された直後の密度に比べて20%より大きくなると、所望の濃度のフッ素をド−プできなくなる場合がある。
ここで、上記のほぼ均一な温度とは、好適には径方向の最高温度と最低温度の差が20℃以下、さらに好適には10℃以下とする。これにより、多孔質母材の密度を変化させないので、フッ素がドープされる量も増加する。また温度が均一になるため、フッ素と多孔質母材が部分的に反応することがなく、発泡や気泡の残留を防ぐことができる。
例えば、図1には、本発明の実施形態の一例を図示した。図1は、いわゆるヒートゾーンが短い炉を示したものである。炉は雰囲気ガスが漏れないように、耐圧性を有した密閉構造となっている。すなわち、炉体2の内側には、加熱処理室15を構成する炉心管1と、炉心管1の外側中央部に設けられた均熱管4と均熱管の外周に設けられたヒータ3と、ヒータ3の外側の断熱材5とで構成されている。
加熱処理室7の底部開口部、及び炉体6の底部には、ガス供給口6、7が設けられている。また、加熱処理室15の上部、および炉体2には、ガス排出口8.9が設けられている。多孔質母材10は、加熱処理室15内で回転させながら、また、加熱処理室15内を上下に移動させて加熱処理が行われる。
図2には、本発明の別の実施形態例を示した。図1の炉に比べて相異するところは、均熱管24、及びヒーター部が充分に長いことである。いわゆる、ヒートゾーンが長い炉を示したものである。
例えば、図1に示した、ヒートゾーンが多孔質母材よりも短く、多孔質母材を引き下げる、あるいは引き上げることで、ヒートゾーンを通過させて加熱処理する加熱炉を用いる場合は、昇温する速さは多孔質母材を引き下げる、あるいは引き上げる速度と炉内の温度分布の関係に基づく数値となる。
図2に示した炉の場合、多孔質母材全体の温度を均一にすることが容易で、処理時間も短くて済むという点で、本発明の実施にはより好適である。
本発明では、ガラス化炉の加熱処理室の雰囲気をフッ素を含む雰囲気に置換する際には、フッ素ドープを開始する直前の前記多孔質母材の密度が、製造された直後の密度に比べて20%より大きくならない温度、好適には1200℃以下、さらに好適には1200℃以下で、かつ脱水処理温度以下の温度で行うことが望ましい。
この目的は、まず、多孔質母材とフッ素との反応がほとんど進まず、多孔質母材の密度変化がほとんど起きない温度で雰囲気の置換を行うことである。また、その雰囲気で多孔質母材の少なくとも径方向に、好適には全体をほぼ均一に加熱することである。さらに、多孔質母材密度が低く(0.1〜0.5g/cmの範囲)多孔質母材の気孔が開気孔の状態で、フッ素を含む雰囲気ガスが多孔質母材の径方向と長手方向に渡り前記気孔の内部を均一に置換することである。
また、前記加熱処理は、好適には、フッ素を含む雰囲気中のフッ素分圧が高いほど低温で行うこととする。例えば、100容量%のフッ素系ガスを用いて1気圧で前記加熱処理を行う場合、温度は1200℃とする。2気圧の場合は、1150℃とする。3気圧の場合は、1100℃とする。4気圧の場合は、1000℃とする。
また、特に好適には、例えば、加圧する前に雰囲気をヘリウムなどの不活性ガスで満たし、次に所望の雰囲気になるまでフッ素を含有するガスを吹き流すことにより置換を行う。加圧状態でこのような雰囲気の置換を行なっても良いが、置換したガスを炉心管内より排出しにくく、置換時間が長くかかることから、現実的ではない。
本方法により、雰囲気の置換中に多孔質母材の収縮が進んで密度が高まり、多孔質母材内部までフッ素を含有するガスに置換することができずにフッ素ドープ量が減少したり、プリフォ−ムの径方向や長手方向のフッ素含有濃度の差が生じることを防止できる。また、フッ素系ガスの分圧が高くても透明ガラス化後の気泡の残留が起きず、さらに、効率良く高濃度のフッ素をドープすることが可能となる。
また、本発明では、好適には、フッ素をドープする際の加熱処理時に昇温速度を5℃/分以下とする。これは、フッ素ドープや透明ガラス化する際に、多孔質母材の径方向に温度差をつけないためである。光ファイバ用多孔質母材は熱伝導性が悪く、昇温速度が速いと径方向に温度差が生じる。すると、温度の高い表面部分のみ焼結が進み、内部に気泡が残留してしまうことがある。
また、加熱処理をする際には、加熱処理を行う温度より低く、かつ、多孔質母材が焼結を起こさない温度まで一旦温度を下げ、下げた温度から加熱処理する温度まで5℃/分以下の昇温速度で昇温することも望ましい。
さらに好適には、ドープする際のフッ素分圧が高いほど、また多孔質母材の径が大きいほど、昇温する速さを遅くすることが望ましい。ここで昇温する速さというのは、均熱温度部分の長さが多孔質母材よりも長い場合は単純に昇温する速さである。
また、焼結が進み、多孔質母材の密度が1.5〜1.8g/cmを越える(ガラス化時の理論密度の70%を越える)密度となると、多孔質母材の熱伝導率が向上するので、昇温速度を10℃/分程度まで上げても径方向にほぼ均一に加熱できるようになる。これにより、透明ガラス化するまでにかかる時間を短縮することができる。また、密度が石英ガラスの理論密度(2.2g/cm)となった後も、一部に気泡が残る場合があり、透明化を完全に行うためにはさらにしばらく高温に保持するか、昇温する必要がある。
しかし、あまり温度を上げすぎると、屈折率には寄与しない余分なフッ素系ガスがガラス中に固溶してしまい、後工程で加熱処理をする際にそれが発泡するので、例えばフッ素ドープされたガラス部分の純粋な石英ガラスに対する比屈折率差が−0.7%かそれより小さい場合では、1350℃程度が上限である。好適には、1350℃以下、さらに好適には1300℃以下とすると、後工程で加熱した際に発泡することがないか、あるいはほとんど発泡が起きなくなる。また、母材が変形して伸びたり、曲がったり、あるいは非円が生じたりすることがない。また、フッ素のドープ量が多いほど、透明化する際の温度を低くする方がより好適である。
本発明では、フッ素を含む雰囲気として、SF、CF、ClF、SiF、Si等のフッ素系ガスの少なくとも1種のガスを含む雰囲気とすることが望ましい。また、SF、CF、ClF、SiF、Si等のフッ素系ガスの少なくとも1種のガスと、Ar、He等の不活性ガスの少なくとも1種とを含む雰囲気であっても良い。
本発明では、多孔質母材がシリカガラス粒子より構成される。また、多孔質母材の密度は0.1〜0.5g/cmの範囲であることが望ましい。なお、多孔質母材の密度が0.5g/cmを越えると、母材中の空孔すなわち表面積が少なくなり、高濃度にフッ素をドープすることができない。また、0.1g/cmを下回ると多孔質母材の形状を保持するのが困難となるからである。
参考例1
図1に示したガラス化装置を用い、密度が0.4g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1150℃以下に保った状態で、SFを3SLM流して1.1気圧まで加圧した。その後、1250℃まで5℃/分の昇温速度で昇温してフッ素をドープした後、同一雰囲気のまま同一の昇温速度で1300℃まで昇温して透明ガラス化した。
この時得られたプリフォームに泡はなく、屈折率は純粋な石英ガラスとの比屈折率差で−0.78%であり、径方向および長手方向で±3%以内の均一さでフッ素がドープされていた。このプリフォームを酸水素火炎で加熱し延伸したが、発泡は起こらなかった。また、線引も行なったが、発泡は問題とならなかった。
(比較例1)
図1に示したガラス化装置を用い、密度が0.6g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1150℃以下に保った状態で、フッ素を含むガスとしてSFを3SLM流して1.1気圧まで加圧した。その後、1250℃まで5℃/分の昇温速度で昇温してフッ素をドープした後、同一雰囲気で同一の昇温速度で1300℃まで昇温して透明化を試みた。しかし、取り出したプリフォームは全体が白濁しており、これを酸水素火炎で加熱し延伸すると発泡が起こった。
図1に示したガラス化装置を用い、密度が0.3g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。脱水を塩素ガスとHeガスの混合雰囲気中で1200℃の温度で行なった。続いて、加熱処理室内をHeガスで置換後に、1100℃以下の温度で、炉心管内を常圧とし、SiFを5SLM、Heガスを0.25SLM流しながら40分間保持した後、1.4気圧まで加圧した。
その後、1200℃まで5℃/分の昇温速度で昇温してフッ素をドープした後、同一雰囲気で1300℃まで5℃/分の昇温速度で昇温した後、その温度で保持し透明化した。この時得られたプリフォームに泡はなく、屈折率は石英との比屈折率差で−0.78%であり、径方向および長手方向に均一にフッ素がドープされていた。このとき得られたプリフォームを酸水素火炎で加熱し延伸したが発泡は起こらなかった。また、線引も行なったが、発泡は問題とならなかった。
参考例2
図2に示したガラス化装置を用い、密度が0.3g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1070℃に保持した状態で、Siを2SLM流して1.5気圧まで加圧した。その後、1250℃まで4℃/分の昇温速度で昇温し、1250℃で60分間保持し、フッ素をドープした後、同一雰囲気で1290℃まで8℃/分の昇温速度で昇温し、その温度を保持し、透明化した。
この時得られたプリフォームに泡はなく、屈折率は石英との比屈折率差で−0.85%であり、径方向および長手方向に均一にフッ素がドープされていた。このとき得られたプリフォームを火炎で延伸したが発泡は起こらなかった。また、線引も行なったが、発泡は問題とならなかった。
(比較例2)
図2に示したガラス化装置を用い、密度が0.3g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1070℃に保持した状態で、Siを2SLM流して、1.5気圧まで加圧した。その後、1150℃まで8℃/分の昇温速度で昇温し、1150℃で60分間保持しフッ素をドープした後、同一雰囲気で1290℃まで8℃/分の昇温速度で昇温し、その温度を保持し透明化を試みた。この時得られたプリフォームは、径方向でフッ素のドープ量が不均一であった。
参考例3
図2に示したガラス化装置を用いて、密度が0.3g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1070℃に保持した状態で、Siを2SLM流して1.5気圧まで加圧した。その後、1290℃まで3℃/分の昇温速度で昇温してフッ素ドープと透明化を同時に行なった。
この時得られたプリフォームに泡はなく、屈折率は石英との比屈折率差で−0.85%であり、径方向および長手方向に均一にフッ素がドープされていた。このとき得られたプリフォームを酸水素火炎で加熱し延伸したが、発泡は起こらなかった。また、線引も行なったが、発泡は問題とならなかった。
参考例4
図2に示したガラス化装置を用い、密度が0.2g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1000℃に保持した状態で、Siを2SLMとSiFを2SLM、それぞれ混合して合計4SLMの混合ガスを流し、2.5気圧まで加圧し、1100℃まで1.5℃/分の昇温速度で昇温し、1100℃で保持してフッ素をドープした後、同一雰囲気で1270℃まで3℃/分の昇温速度で昇温し、その温度を保持し、透明化した。
この時得られたプリフォームに泡はなく、屈折率は石英との比屈折率差で−0.98%であり、径方向および長手方向に均一にフッ素がドープされていた。このとき得られたプリフォームを酸水素火炎で加熱し延伸したが発泡は起こらなかった。また、線引も行なったが、発泡は問題とならなかった。
(比較例3)
図2に示したガラス化装置を用いて、密度が0.3g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を1000℃に保持した状態で、Siを2SLMとSiFを2SLMそれぞれ混合して合計4SLMの混合ガスを流して、2.5気圧まで加圧した。その後、1100℃まで1.5℃/分の昇温速度で昇温し、1100℃を保持してフッ素をドープした後、同一雰囲気で1500℃まで3℃/分で昇温し、その温度で保持して透明化を行なった。この時得られたプリフォームは、長手方向に伸びてしまっており、径変動、非円、曲がりがあり、後工程で使用することができなかった。
参考例5
図2に示したガラス化装置を用いて、密度が0.2g/cmの多孔質母材を加熱処理室内に挿入した。加熱処理室内の温度を950℃に保持した状態で、Siを3SLM流して4気圧まで加圧した。その後、1070℃まで1.2℃/分の昇温速度で昇温し、1070℃を保持してフッ素をドープした後、同一雰囲気で同一の昇温速度で1240℃まで昇温し、その温度を保持し、透明化した。
この時得られたプリフォームに泡はなく、屈折率は石英との比屈折率差で−1.1%であり、径方向および長手方向に均一にフッ素がドープされていた。このとき得られたプリフォームを酸水素火炎で加熱し延伸したが、発泡は起こらなかった。また、線引も行なったが、発泡は問題とならなかった。
なお、本明細書において、多孔質母材の密度は、特に断らない限り多孔質母材の全体重量から、既にガラスとなっている部分の重量を差し引いたシリカガラス粒子の重量を多孔質母材の体積で割った平均密度とする。また、純粋な石英ガラスに対する比屈折率差は、純粋な石英ガラスの屈折率をn1、対象とするガラスの屈折率をn2とした場合、比屈折率差Δ=(n1−n2)/n1×100(%)で表される値とする。
多孔質母材中の気孔を大幅に減少させることがなく、少なくとも、径方向に気孔分布がほぼ均一な状態をつくることができる。そのため、必要以上にフッ素分圧を上げることなく、発泡や気泡の残留を起こさずに、高濃度にフッ素をドープすることが可能である。また、フッ素が高濃度にドープされた母材の軟化を防ぐことができ、伸び、曲がり、および非円の少ないプリフォームが得られるとともに、余分なフッ素系ガスがガラス中へ固溶することを防ぐことができるため、後工程で加熱処理を施しても発泡することがないプリフォームを作製できる。
光ファイバ母材のガラス化装置の概略構成図である。 光ファイバ母材のガラス化装置の別の概略構成図である。
1 炉心管
2 炉体
3 ヒータ
4 均熱管
5 断熱材
6ガス供給口
7 ガス供給口
8 ガス排気管
9 ガス排気
10 多孔質母材
11 支持棒
15 加熱処理室
23 ヒータ
24 均熱管
25 加熱処理室

Claims (6)

  1. 多孔質母材を用意する工程と、
    前記多孔質母材を加熱処理室に挿入する工程と、
    前記加熱処理室内の雰囲気をフッ素を含む雰囲気へ置換する置換工程と、
    前記加熱処理室内を1気圧以上の圧力に加圧する加圧工程と、
    加圧雰囲気下であってフッ素を含む雰囲気下で前記多孔質母材を加熱処理し前記多孔質母材にフッ素をドープするフッ素ドープ工程と、
    前記多孔質母材を透明ガラス化するガラス化工程と、を有し、
    前記フッ素ドープ工程を開始する直前の多孔質母材の密度は0.5g/cm以下であり、
    前記フッ素ドープ工程の前に、前記多孔質母材を前記多孔質母材の径方向の最高温度と最低温度の差が20℃以下となるように加熱処理する加熱工程をさらに含み、
    前記加熱工程は、前記加熱処理室の温度を、前記加熱処理を行う温度より低く、かつ、前記多孔質母材が焼結を起こさない温度まで一旦降温し、該降温した温度から前記加熱処理する温度まで、5℃/分以下の昇温速度で昇温するものであり、
    前記置換工程は前記加圧工程の前に行われ、前記加熱処理室内の雰囲気を不活性ガスで置換した後にフッ素を含む雰囲気へ置換することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
  2. 前記置換工程は、前記加熱処理室の最高温度が1200℃以下の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
  3. 前記ガラス化工程は、前記加熱処理室の温度を10℃/分以下の昇温速度で処理温度まで昇温することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
  4. 前記ガラス化工程は、前記加熱処理室の最高温度が1350℃以下の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
  5. 前記フッ素を含む雰囲気が、SF、CF、ClF、SiF、Siのフッ素系ガスの少なくとも1種のガスを含む雰囲気、又は前記SF、CF、ClF、SiF、Siのフッ素系ガスの少なくとも1種のガスと不活性ガスとを含む雰囲気であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
  6. 前記多孔質母材がシリカガラス粒子より構成され、密度が0.1〜0.5g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
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