JP2020070942A - 冷凍サイクル装置 - Google Patents

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俊二 板倉
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健治 小峰
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順也 田中
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将弘 近藤
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Abstract

【課題】冷媒回路の樹脂部材や樹脂材料の腐食を低コストで防止する冷凍サイクル装置を提供する。【解決手段】空気調和装置は、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、冷凍機油が内部を循環する冷媒回路を備える。冷媒回路に含まれる樹脂部材及び樹脂材料の少なくとも一方は、冷媒回路を形成する接続配管の管内表面積が0.6m2以上となる場合において、耐薬品性のある材料で形成する。【選択図】図3

Description

本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
冷媒を圧縮する圧縮機を含む空気調和装置では、冷媒としてハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒であるR410A冷媒が広く用いられているが、R410A冷媒は、地球温暖化係数(GWP)が大きい。そこで、GWPが比較的小さい冷媒として、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒を含む混合冷媒を用いる関連技術が知られている。また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)冷媒を含む混合冷媒を用いる関連技術も知られている。
HFO冷媒やHCFO冷媒等の、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」は、化学的に不安定である。また、炭素原子間の結合のみならず、炭素原子と、炭素原子の原子量より一定値を超える原子量の元素との結合を有する冷媒や、エーテル結合を持つ冷媒も、化学的に不安定となる事が知られている。具体的には、当該冷媒は水や酸素と反応する。一般的に、空気調和装置の冷媒回路内の水や酸素の残存量を減らすため、施工時に真空引きを実施する。真空引きでは、空気調和装置の室外機と室内機を配管で接続した後、配管内の圧力を真空に近い所定値以下にする。真空引きによって、冷媒回路内の水や酸素を外部へ排出して、冷媒回路における水や酸素の残存量を減らしている。真空引きを実施した後の冷媒回路内における水や酸素の残存量は、冷媒回路の容積の大きさに比例する。すなわち、冷媒回路の容積が大きい程、水や酸素の残存量は多くなる。水や酸素と反応した冷媒は、分解される。冷媒は、分解されることで酸を生成する。生成された酸は、冷媒回路に含まれる樹脂部材や樹脂材料、特に圧縮機が内部に有する電線の樹脂製の絶縁皮膜を腐食させる。絶縁皮膜の腐食によって、絶縁性が低下して、空気調和装置の信頼性を著しく低下させる。
これに対して、上記絶縁皮膜を酸に強い材料にすることが考えられる(例えば、特許文献1)。しかし、全ての機種に対して絶縁皮膜を酸に強い、すなわち、耐薬品性のある材料を用いると、高コストとなってしまう。
特開2001−115957号公報
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、冷媒回路に含まれる樹脂部材や樹脂材料の腐食を低コストで抑制する冷凍サイクル装置を提供することが目的である。
本発明の冷凍サイクル装置は上記目的を達成するものであって、「炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、冷凍機油が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、前記冷媒回路を形成する接続配管を有し、前記接続配管の管内表面積が0.6m以上となる場合において、前記冷媒回路に含まれる樹脂部材及び樹脂材料の少なくとも一方は、耐薬品性のある材料で形成することを特徴とする。
本発明によれば、冷媒回路の樹脂部材や樹脂材料の腐食を低コストで防止する冷凍サイクル装置を提供することができる。
図1は、実施形態の空気調和装置を示す冷媒回路図である。 図2は、実施形態のロータリ圧縮機を示す断面図である。 図3は、実施形態の冷媒回路内の水分残存量と、管内表面積の関係性を示す表である。
以下に、本願の開示する冷凍サイクル装置の実施例として空気調和装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する空気調和装置が限定されるものではない。
[空気調和装置の構成]
図1は、実施例の空気調和装置を示す冷媒回路図である。空気調和装置1は、図1に示すように、一つの室外機2と、一つの室内機5とを備えた、シングル機種と呼ばれる商品形態である。詳細な説明は省略するが、シングル機種の他に、一つの室外機に対して複数の室内機が接続された、マルチ機種やビルマルチ機種がある。室外機2と室内機5が液管6a及びガス管6bにより接続されて内部に冷媒が循環する冷媒回路1aを形成している。室外機2は、圧縮機21、四方弁22、室外熱交換器23、絞り装置24、液側閉鎖弁61、ガス側閉鎖弁62及び室外機制御部200を備えている。
圧縮機21は、室外機制御部200によって制御される。これにより、吸入管42及び四方弁22を介して供給される冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒は、吐出管41を介して四方弁22へ供給する。
四方弁22は、吐出管41及び吸入管42と接続されると共に、冷媒配管43を介して室外熱交換器23に、冷媒配管44、ガス側閉鎖弁62を介して室内機5にそれぞれ接続されている。室内機5と室外熱交換器23は、液側閉鎖弁61、冷媒配管45を介して接続されている。四方弁22は室外機制御部200に制御されることにより、空気調和装置1を暖房モードまたは冷房モードのどちらかに切り替える。冷房モードに切り替えられたとき四方弁22は、吐出管41を介して圧縮機21から吐出された冷媒を室外熱交換器23に供給し、室内機5から流出した冷媒を圧縮機21に吸入管42を介して供給する。暖房モードに切り替えられたとき四方弁22は、吐出管41を介して圧縮機21から吐出された冷媒を室内機5に供給し、室外熱交換器23から流出した冷媒を圧縮機21に吸入管42を介して供給する。
室外熱交換器23は、冷媒配管45を介して絞り装置24に接続されている。室外熱交換器23の近傍には、室外ファン27が配置されている。室外ファン27は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23によって冷媒と熱交換した外気を室外機2の外部へ放出する。室外熱交換器23は、冷房モードの場合、四方弁22から供給された冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させ、その熱交換された冷媒を絞り装置24に供給する。室外熱交換器23は、暖房モードの場合、絞り装置24から供給された冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させ、その熱交換された冷媒を四方弁22に供給する。
絞り装置24は、冷媒配管45、液側閉鎖弁6aを介して室内機5に接続されている。絞り装置24は、冷房モードの場合に、室外熱交換器23から供給された冷媒を断熱膨張させることにより減圧し、低温低圧となった二相冷媒を室内機5に供給する。
室内機5は、室内熱交換器51、室内ファン55及び室内機制御部500を有する。室内ファン55は、室内熱交換器51の近傍に配置されており、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、室内機5の内部へ室内空気を取り込み、室内熱交換器51によって冷媒と熱交換した室内空気を室内へ放出する。室内熱交換器51は、ガス側閉鎖弁6b、冷媒配管44を介して四方弁22に、冷媒配管45を介して室外機2の絞り装置24にそれぞれ接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房モードに切り替えられたときに蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房モードに切り替えられたときに凝縮器として機能する。すなわち、室内熱交換器51は、冷房モードの場合に、絞り装置24から供給された低温低圧となった二相冷媒と、室内機5の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させ、その熱交換された室内空気を室内へ放出し、その熱交換された冷媒を四方弁22に供給する。室内熱交換器51は、暖房モードの場合に、四方弁22から供給された冷媒と、室内機5の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させ、その熱交換された室内空気を室内へ放出し、その熱交換された冷媒を絞り装置24に供給する。
[圧縮機]
図2は、実施形態の圧縮機21を示す断面図である。圧縮機21は、図2に示されているように、圧縮機筐体10とシャフト15とモータ部11と圧縮機部12とを備えた高圧ドーム式のロータリ圧縮機である。圧縮機筐体10は、概ね円筒形に形成され、圧縮機21が設置された環境から密閉された内部空間16を形成している。内部空間16は、概ね円柱状に形成されている。圧縮機筐体10は、圧縮機筐体10を水平面上に垂直に置いたとき内部空間16の円柱の軸が鉛直方向に平行になるように、配置されている。圧縮機筐体10は、内部空間16の下部に油溜め17が形成されている。油溜め17には、圧縮機部12を潤滑させる冷凍機油が貯留される。圧縮機筐体10は、内部空間16が吸入管42と吐出管41とに接続されている。吸入管42は、第1吸入管421と第2吸入管422とを含んでいる。シャフト15は、棒状に形成され、圧縮機筐体10の内部空間16に配置されている。シャフト15は、内部空間16が形成する円柱の軸に平行である回転軸を中心に回転可能に圧縮機筐体10に支持されている。
[モータ部]
モータ部11は、内部空間16のうちの上部に配置されている。モータ部11は、ロータ112とステータ111とを備えている。ロータ112は、概ね円柱状に形成され、シャフト15に固定されている。ステータ111は、概ね円筒形に形成され、圧縮機筐体10に固定されている。ステータ111は、ロータ112を囲むように配置され、圧縮機筐体10に固定されている。ステータ111は、ステータコア113と複数の巻き線114を備えている。複数の巻き線114は、ステータコア113に形成される複数のティース部にそれぞれ巻かれている。また、シャフト15は、上端と下端がそれぞれ軸受140によって摺動自在に固定されている。ロータ112には、任意で金属製のバランスウエイト115が設けられている。
なお、モータ部11はブラシレスDCモータで構成されると共に、リラクタンストルクによって駆動するように構成されている。さらに、ロータ112の永久磁石が希土類磁石、若しくは、フェライト磁石で構成されている。
[圧縮機部]
圧縮機部12は、第1の圧縮部12Sと第2の圧縮部12Tとを備えている。第1の圧縮部12Sは、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sとを備え、図示されていない第1ベーンを備えている。第1シリンダ121Sは、第1シリンダ室130Sを形成している。第1環状ピストン125Sは、第1シリンダ室130Sに配置され、シャフト15に固定されている。第1ベーンは、移動可能に第1シリンダ室130Sに支持され、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sとの間に形成される作動室を吸入室と圧縮室とに区画している。吸入室は、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sと第1ベーンで区画され、且つ、吸入管42のうちの第1吸入管421に接続された空間である。圧縮室は、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sと第1ベーンで区画され、且つ、圧縮機筐体10の内部空間16に接続された空間である。吸入室は、シャフト15が回転することにより、容積が拡張し、所定の容積(排除容積)まで拡張する吸入工程の後に、圧縮室に遷移する。圧縮室は、シャフト15が回転することにより、容積が縮小し、所定の容積まで縮小した後に、吸入室に遷移する。
第2の圧縮部12Tは、第1の圧縮部12Sと概ね同様に形成され、第1の圧縮部12Sの上部に配置されている。第2の圧縮部12Tは、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tとを備え、図示されていない第2ベーンを備えている。第2シリンダ121Tは、第2シリンダ室130Tを形成している。第2環状ピストン125Tは、第2シリンダ室130Tに配置され、シャフト15に対して第2環状ピストン125Tと180°の位相差が形成されるように、シャフト15に固定されている。第2ベーンは、移動可能に第2シリンダ室130Tに支持され、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tとの間に形成される作動室を吸入室と圧縮室とに区画している。吸入室は、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tと第2ベーンで区画され、且つ、吸入管42のうちの第2吸入管422に接続された空間である。圧縮室は、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tと第2ベーンで区画され、且つ、圧縮機筐体10の内部空間16に接続された空間である。吸入室は、シャフト15が回転することにより、容積を拡張し、所定の容積まで拡張した後に、圧縮室に遷移する。圧縮室は、シャフト15が回転することにより、容積が縮小し、所定の容積まで縮小した後に、吸入室に遷移する。
[冷媒]
空気調和装置1は、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、例えば、炭素原子間の二重結合を有するHFO冷媒や、炭素原子間の三重結合を有するトリフルオロプロピンがある。また、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒としては、ヨウ化トリフルオロメタンがあり、エーテル結合(HFE冷媒とも言う)を持つ冷媒としてはHFE−143m等が挙げられる。これらの冷媒は、冷凍サイクル装置の中での安定性が低い。また、これらの冷媒は、大気中での安定性も低く、GWPが比較的低い傾向がある。その代わり、当該冷媒は、圧力が比較的低い。圧力の低い冷媒は、空気調和装置の作動流体として用いると、冷媒性能の指標の一つである体積能力(単位はkJ/m)が低くなる。そのため、空気調和装置の作動流体として用いる場合は、他の冷媒性能の高い冷媒(例えば、R32)と混合して用いることが考えられている。本実施例では、炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒の「GWPが低い」という、環境負荷が小さいという特性を十分に発揮するため、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒を少なくとも20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。
炭素原子間の結合として、単結合を持つ冷媒のうち、空気調和装置で使用された実績があり、不燃性、無毒、かつ、オゾン層破壊係数(ODP)=0の冷媒でGWPが一番低い単一冷媒はR134a(GWP:1430)である。本実施例の「低GWP冷媒」はR134aよりもGWPが低いものとする。
ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、塩素(原子量:35.5)と炭素との結合を有するR12を代表としたクロロフルオロカーボン、臭素(原子量:79.9)と炭素との結合を持つハロン1301、ヨウ素(原子量:126.9)と炭素との結合を持つヨウ化トリフルオロメタンがある。
塩素を含むR12は、GWPが10900である。臭素を含むハロン1301は、GWPが7140である。ヨウ素を含むヨウ化トリフルオロメタンは、GWPが1以下である。このことからわかるように、ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、ハロゲン族元素の原子量が少ない程、GWPが低い。なお、上記した各冷媒のGWPは、「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告等に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七等に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数(フロン類GWP告示)(平成28年経済産業省・環境省告示第2号)」において定められたものである。
ハロゲン族元素の原子量と、当該ハロゲン族元素を含む代表的な冷媒のGWPの関係は、以下の式で示すことができる。
(原子量)=−4.0×10−8×(GWP)−3.0×10−4×(GWP)+10.58
上記式から、GWPをR134a(GWP:1430)よりも低くするためには、炭素(原子量:12)の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒であることが必要だとわかる。
炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」は、化学的に不安定である。具体的には、水や酸素と反応し易い。そのため、空気調和装置1は、設置後において混合冷媒が充填される前に真空引きを実施する。具体的には、空気調和装置1は、屋外に設置した室外機2と、屋内に設置した室内機5とを液管6a及びガス管6bで接続して取り付けられる。取り付けられた空気調和装置1は、液管6a及びガス管6bの内部に残存した水や酸素を取り除くため、真空引きを実施する。
真空引きは、空気調和装置1の、例えば、図示しない真空ポンプをガス側閉鎖弁62に接続して実施する。真空引きは、冷媒回路1a内の圧力が所定圧力(例えば、−0.1MPaG)以下になるまで行う。
真空引きによって、冷媒回路1a内の水や酸素を外部へ排出することができる。しかし、水や酸素は、完全には排出されず、冷媒回路1a内に残存する。真空引きを実施した後の冷媒回路1a内における水や酸素の残存量は、冷媒回路1aの容積の大きさに比例する。そのため、冷媒回路1aの容積が大きい空気調和装置では、冷媒回路1a内の水や酸素の残存量が多くなる。冷媒回路1a内に残存した水や酸素と反応した冷媒は、分解して酸を生成する。生成された酸は、冷媒回路1aに含まれる樹脂部材や樹脂材料を腐食させる。特に、圧縮機21の摺動部(例えば、環状ピストン、ベーン等)が腐食すると、空気調和装置1の信頼性を著しく低下させる。
本実施例では、空気調和装置1の冷媒回路1aの管内表面積に基づいて、冷媒回路1aに含まれる樹脂部材や樹脂材料の材料に、酸に対して耐性のある材料を用いるか否かを選択している。当該水分量が所定量(酸による腐食の規模が空気調和装置1の信頼性を損ねない程度の量)以上となる機種に対してのみ、冷媒回路1aに含まれる樹脂部材や樹脂材料の材料に、酸に対して耐性のある材料を用いる。これによって、冷媒回路1aに含まれる樹脂部材や樹脂材料の腐食を低コストで防止できる。なお、本実施例における樹脂部材や樹脂材料とは、冷媒回路1aに含まれる樹脂部材や樹脂材料のうち、内部を循環する冷媒に直接晒される樹脂部材や樹脂材料を指している。例えば、圧縮機21の、ステータ111の図示しないインシュレータや巻き線114の絶縁被膜である。
図3は、冷媒回路1a内の水分残存量と、冷媒回路1aの管内表面積の関係性を説明する概略図であり、表を左に90度回転させている。
図3では、能力(右端から3番目の列に記載)の異なる6つの機種を例に記載している。図3は、冷媒回路1a内の水分残存量と冷媒回路1aの管内表面積を6つの機種毎に記載している。
図3の右端の列は、真空引き後の冷媒回路1aに残存する水分量を示す水分残存量の推定値(単位はg)を表している。水分残存量は、管内表面積(単位はm)から推定される。具体的には、水分残存量は、所定の条件(温度、湿度)の環境下の空気に含まれる水分の比率から推定される。
管内表面積は、図3の右端から2番目の列に記載しており、ここに表している値は室外熱交換器23及び室内熱交換器51の管内表面積を除いた接続配管の管内表面積である。また、管内表面積は、接続配管(液管6aとガス管6b)の長さが最大配管長(単位はm)の場合を想定した値である。なお、管内表面積は、図3の左端から3番目の列に記載されている接続配管(液管6aとガス管6b)の内径(単位はmm)を想定して算出している。
管内容積は、図3の右端から3番目の列に記載しており、ここに表している値は室外熱交換器23及び室内熱交換器51の管内容積を除いた接続配管の管内容積である。また、管内容積は、接続配管(液管6aとガス管6b)の長さが最大配管長(単位はm)の場合を想定した値である。なお、管内容積は、図3の左端から3番目の列に記載されている接続配管(液管6aとガス管6b)の内径(単位はmm)を想定して算出している。
最大配管長は、図3の左端から2番目の列に記載しており、機種毎に定められた値である。なお、ビルマルチの2機種は、主管(各室内機に接続される枝管に分岐する前の合流管)の最大配管長を示しており、枝管を含めると更に長くなる。
出願人が検証した結果、何れの機種でも水分残存量が0.5g以上だと、生成された酸が樹脂部材や樹脂材料を腐食させる規模が大きくなる。図3において、全ての商品形態が上記「水分量」が0.5g以上の機種に該当する。したがって、これらの機種については、酸が生成された場合に備えて、冷媒回路1aに含まれる樹脂材料を、酸に対して耐性のある材料(後述)とする必要がある。一方、接続配管の長さが最大配管長のときの管内表面積が0.6m未満なる機種(例えば、「ウインド型」等の一体型空気調和装置を含む小型空気調和装置)は水分残存量が0.5g未満であり、酸による腐食の程度が空気調和装置1の信頼性を損ねない程度の量である。そのため、冷媒回路1aをに含まれる樹脂部材や樹脂材料の材料を、酸に対して耐性のある材料(後述)としなくても酸が空気調和装置1の信頼性に与える影響は小さい。
一方、接続配管の長さが最大配管長のときの管内表面積が0.6m未満の機種は、上記のような制約を考慮することなく、冷媒回路1aをに含まれる樹脂部材や樹脂材料の材料を選定できる。したがって、冷媒回路1aをに含まれる樹脂部材や樹脂材料の腐食を低コストで防止できる。
酸に対して耐性のある材料には、高耐熱化させたポリイミドやフッ素樹脂が好ましい。冷凍・空調用の圧縮機に使用される電線の絶縁皮膜の材料を選定するにあたって、求められる性質は電気絶縁性、冷媒に対する耐性、及び可撓性である。また、絶縁皮膜は空気調和装置1の運転中は高温(圧縮部から吐出される冷媒の温度が最高で115〜125℃程度)の冷媒に曝されるため、耐熱性(150℃超)も求められる。フェノール樹脂やエポキシ樹脂は絶縁性と耐熱性については満足するが、可撓性が十分ではないため、樹脂材料には不適である。また、代表的なポリイミドとしてナイロン66(耐熱温度150℃)が挙げられるが、より耐熱性能の高いポリイミド(例えば、BPDA系ポリイミド:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物)を使用することが望ましい。
一方、接続配管の長さが最大配管長のときの管内表面積が0.6m未満の機種は、上記のような制約を考慮することなく、冷媒回路1aを形成する樹脂材料を選定できる。したがって、冷媒回路1aを形成する樹脂部材や樹脂材料の腐食を低コストで防止できる。
なお、本実施例では、空気調和装置1の冷媒回路1aの管内表面積に基づいて、冷媒回路1aをに含まれる樹脂部材や樹脂材料に、酸に対して耐性のある材料を用いるか否かを選択しているが、空気調和装置1の冷媒回路1aの管内容積に基づいて、酸に対して耐性のある材料を用いるか否かを選択しても良い。この場合、管内容積が1000cc以上の機種は、冷媒回路1aをに含まれる樹脂部材や樹脂材料を、酸に対して耐性のある材料とする。
1 空気調和装置
1a 冷媒回路
2 室外機
5 室内機
21 圧縮機
22 四方弁
23 室外熱交換器
24 絞り装置
27 室外ファン
41 吐出管
42 吸入管
43 冷媒配管
44 冷媒配管
45 冷媒配管
51 室内熱交換器
55 室内ファン
6a 液管
6b ガス管
61 液側閉鎖弁
62 ガス側閉鎖弁
200 室外機制御部
500 室内機制御部
本発明の冷凍サイクル装置は上記目的を達成するものであって、「炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、冷凍機油が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、前記冷媒回路を形成する接続配管を有し、前記接続配管の管内表面積が0.6m以上であり、かつ、前記接続配管のうちの前記混合冷媒に直接晒される樹脂部材及び樹脂材料の少なくとも一方は、高耐熱化させたポリイミド、または、フッ素樹脂で形成することを特徴とする。

Claims (2)

  1. 炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、
    冷凍機油が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、
    前記冷媒回路を形成する接続配管を有し、前記接続配管の管内表面積が0.6m以上となる場合において、前記冷媒回路をに含まれる樹脂部材及び樹脂材料の少なくとも一方を、耐薬品性のある材料で形成することを特徴とする冷凍サイクル装置。
  2. 前記接続配管の長さが最大配管長のときの管内表面積が0.6m以上となる場合において、前記冷媒回路をに含まれる樹脂部材及び樹脂材料の少なくとも一方を、耐薬品性のある材料で形成することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
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