JP2020003104A - 空気調和装置 - Google Patents

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板倉 俊二
Shunji Itakura
俊二 板倉
健治 小峰
Kenji Komine
健治 小峰
田中 順也
Junya Tanaka
順也 田中
将弘 近藤
Masahiro Kondo
将弘 近藤
和也 船田
Kazuya Funada
和也 船田
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Abstract

【課題】冷媒回路の金属部材の腐食を低コストで防止する冷凍サイクル装置を提供する。【解決手段】空気調和装置1は、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、冷凍機油が内部を循環する冷媒回路1aを備える。冷媒回路1aを形成する金属部材は、冷凍機油の質量を、当該冷凍機油の質量と前記冷媒の質量の和で除した値である油量比率に応じた素材である。これにより、酸が空気調和装置1の信頼性を低下させる影響が大きくなる機種に対して対応できる。【選択図】図1

Description

本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
冷媒を圧縮する圧縮機を含む空気調和装置では、冷媒としてハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒であるR410A冷媒が広く用いられているが、R410A冷媒は、地球温暖化係数(GWP)が大きい。そこで、GWPが比較的小さい冷媒として、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒を含む混合冷媒を用いる関連技術が知られている。また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)冷媒を含む混合冷媒を用いる関連技術も知られている。
HFO冷媒やHCFO冷媒等の、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」は、化学的に不安定である。また、炭素原子間の結合のみならず、炭素原子と、炭素原子の原子量より一定値を超える原子量の元素との結合を有する冷媒や、エーテル結合を持つ冷媒も、化学的に不安定となる事が知られている。具体的には、当該冷媒は水や酸素と反応する。一般的に、空気調和装置の冷媒回路内の水や酸素の残存量を減らすため、施工時に真空引きを実施する。真空引きでは、空気調和装置の室外機と室内機を配管で接続した後、配管内の圧力を真空に近い所定値以下にする。真空引きによって、冷媒回路内の水や酸素を外部へ排出して、冷媒回路における水や酸素の残存量を減らしている。真空引きを実施した後の冷媒回路内における水や酸素の残存量は、冷媒回路の容積の大きさに比例する。すなわち、冷媒回路の容積が大きい程、水や酸素の残存量は多くなる。水や酸素と反応した冷媒は、分解される。冷媒は、分解されることで酸を生成する。生成された酸は、冷媒回路を形成する金属部材を腐食させる。金属部材の腐食によって、圧縮機の摺動部の摩耗が促進され、空気調和装置の信頼性を著しく低下させる。
これに対して、冷媒回路を形成する金属部材の表面を被覆層で覆うことによって当該酸が金属部材に接触しないようにした冷凍サイクル装置が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、特定の成分が金属表面に付着して被覆層を形成する。特定の成分は、冷凍機油中に添加されている。しかし、全ての機種に対して冷凍機油に添加物を加えると、高コストとなってしまう。
特開2010−230243号公報
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、冷媒回路の金属部材の腐食を低コストで防止する冷凍サイクル装置を提供することが目的である。
本発明の冷凍サイクル装置は上記目的を達成するものであって、「炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、冷凍機油が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、前記冷媒回路を形成する金属部材は、前記冷凍機油の質量を、当該冷凍機油の質量と前記混合冷媒の質量の和で除した値である油量比率に応じた素材であることを特徴とする。
本発明の冷凍サイクル装置は上記目的を達成するものであって、「炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、前記冷媒回路を形成する金属部材は、前記冷媒回路の管内表面積の大きさに応じた素材であることを特徴とする。
本発明によれば、冷媒回路の金属部材の腐食を低コストで防止する冷凍サイクル装置を提供することができる。
図1は、実施形態の空気調和装置を示す冷媒回路図である。 図2は、実施形態のロータリ圧縮機を示す断面図である。 図3は、実施形態の冷媒回路内の水分残存量と、油量比率の関係性を示す表である。 図4は、実施形態の冷媒回路内の水分残存量と、管内表面積の関係性を示す表である。
以下に、本願の開示する冷凍サイクル装置の実施例として空気調和装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する空気調和装置が限定されるものではない。
[空気調和装置の構成]
図1は、実施例の空気調和装置を示す冷媒回路図である。空気調和装置1は、図1に示すように、一つの室外機2と、一つの室内機5とを備えた、シングル機種と呼ばれる商品形態である。詳細な説明は省略するが、シングル機種の他に、一つの室外機に対して複数の室内機が接続された、マルチ機種やビルマルチ機種がある。室外機2と室内機5が液管6a及びガス管6bにより接続されて内部に冷媒が循環する冷媒回路1aを形成している。室外機2は、圧縮機21、四方弁22、室外熱交換器23、絞り装置24、液側閉鎖弁61、ガス側閉鎖弁62及び室外機制御部200を備えている。
圧縮機21は、室外機制御部200によって制御される。これにより、吸入管42及び四方弁22を介して供給される冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒は、吐出管41を介して四方弁22へ供給する。
四方弁22は、吐出管41及び吸入管42と接続されると共に、冷媒配管43を介して室外熱交換器23に、冷媒配管44、ガス側閉鎖弁62を介して室内機5にそれぞれ接続されている。室内機5と室外熱交換器23は、液側閉鎖弁61、冷媒配管45を介して接続されている。四方弁22は室外機制御部200に制御されることにより、空気調和装置1を暖房モードまたは冷房モードのどちらかに切り替える。冷房モードに切り替えられたとき四方弁22は、吐出管41を介して圧縮機21から吐出された冷媒を室外熱交換器23に供給し、室内機5から流出した冷媒を圧縮機21に吸入管42を介して供給する。暖房モードに切り替えられたとき四方弁22は、吐出管41を介して圧縮機21から吐出された冷媒を室内機5に供給し、室外熱交換器23から流出した冷媒を圧縮機21に吸入管42を介して供給する。
室外熱交換器23は、冷媒配管45を介して絞り装置24に接続されている。室外熱交換器23の近傍には、室外ファン27が配置されている。室外ファン27は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23によって冷媒と熱交換した外気を室外機2の外部へ放出する。室外熱交換器23は、冷房モードの場合、四方弁22から供給された冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させ、その熱交換された冷媒を絞り装置24に供給する。室外熱交換器23は、暖房モードの場合、絞り装置24から供給された冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させ、その熱交換された冷媒を四方弁22に供給する。
絞り装置24は、冷媒配管45、液側閉鎖弁6aを介して室内機5に接続されている。絞り装置24は、冷房モードの場合に、室外熱交換器23から供給された冷媒を断熱膨張させることにより減圧し、低温低圧となった二相冷媒を室内機5に供給する。
室内機5は、室内熱交換器51、室内ファン55及び室内機制御部500を有する。室内ファン55は、室内熱交換器51の近傍に配置されており、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、室内機5の内部へ室内空気を取り込み、室内熱交換器51によって冷媒と熱交換した室内空気を室内へ放出する。室内熱交換器51は、ガス側閉鎖弁6b、冷媒配管44を介して四方弁22に、冷媒配管45を介して室外機2の絞り装置24にそれぞれ接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房モードに切り替えられたときに蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房モードに切り替えられたときに凝縮器として機能する。すなわち、室内熱交換器51は、冷房モードの場合に、絞り装置24から供給された低温低圧となった二相冷媒と、室内機5の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させ、その熱交換された室内空気を室内へ放出し、その熱交換された冷媒を四方弁22に供給する。室内熱交換器51は、暖房モードの場合に、四方弁22から供給された冷媒と、室内機5の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させ、その熱交換された室内空気を室内へ放出し、その熱交換された冷媒を絞り装置24に供給する。
[圧縮機]
図2は、実施形態の圧縮機21を示す断面図である。圧縮機21は、図2に示されているように、圧縮機筐体10とシャフト15とモータ部11と圧縮機部12とを備えた高圧ドーム式のロータリ圧縮機である。圧縮機筐体10は、概ね円筒形に形成され、圧縮機21が設置された環境から密閉された内部空間16を形成している。内部空間16は、概ね円柱状に形成されている。圧縮機筐体10は、圧縮機筐体10を水平面上に垂直に置いたとき内部空間16の円柱の軸が鉛直方向に平行になるように、配置されている。圧縮機筐体10は、内部空間16の下部に油溜め17が形成されている。油溜め17には、圧縮機部12を潤滑させる冷凍機油が貯留される。圧縮機筐体10は、内部空間16が吸入管42と吐出管41とに接続されている。吸入管42は、第1吸入管421と第2吸入管422とを含んでいる。シャフト15は、棒状に形成され、圧縮機筐体10の内部空間16に配置されている。シャフト15は、内部空間16が形成する円柱の軸に平行である回転軸を中心に回転可能に圧縮機筐体10に支持されている。
[モータ部]
モータ部11は、内部空間16のうちの上部に配置されている。モータ部11は、ロータ112とステータ111とを備えている。ロータ112は、概ね円柱状に形成され、シャフト15に固定されている。ステータ111は、概ね円筒形に形成され、圧縮機筐体10に固定されている。ステータ111は、ロータ112を囲むように配置され、圧縮機筐体10に固定されている。ステータ111は、ステータコア113と複数の巻き線114を備えている。複数の巻き線114は、ステータコア113に形成される複数のティース部にそれぞれ巻かれている。また、シャフト15は、上端と下端がそれぞれ軸受140によって摺動自在に固定されている。ロータ112には、任意で金属製のバランスウエイト115が設けられている。
なお、モータ部11はブラシレスDCモータで構成されると共に、リラクタンストルクによって駆動するように構成されている。さらに、ロータ112の永久磁石が希土類磁石、若しくは、フェライト磁石で構成されている。
[圧縮機部]
圧縮機部12は、第1の圧縮部12Sと第2の圧縮部12Tとを備えている。第1の圧縮部12Sは、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sとを備え、図示されていない第1ベーンを備えている。第1シリンダ121Sは、第1シリンダ室130Sを形成している。第1環状ピストン125Sは、第1シリンダ室130Sに配置され、シャフト15に固定されている。第1ベーンは、移動可能に第1シリンダ室130Sに支持され、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sとの間に形成される作動室を吸入室と圧縮室とに区画している。吸入室は、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sと第1ベーンで区画され、且つ、吸入管42のうちの第1吸入管421に接続された空間である。圧縮室は、第1シリンダ121Sと第1環状ピストン125Sと第1ベーンで区画され、且つ、圧縮機筐体10の内部空間16に接続された空間である。吸入室は、シャフト15が回転することにより、容積が拡張し、所定の容積(排除容積)まで拡張する吸入工程の後に、圧縮室に遷移する。圧縮室は、シャフト15が回転することにより、容積が縮小し、所定の容積まで縮小した後に、吸入室に遷移する。
第2の圧縮部12Tは、第1の圧縮部12Sと概ね同様に形成され、第1の圧縮部12Sの上部に配置されている。第2の圧縮部12Tは、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tとを備え、図示されていない第2ベーンを備えている。第2シリンダ121Tは、第2シリンダ室130Tを形成している。第2環状ピストン125Tは、第2シリンダ室130Tに配置され、シャフト15に対して第2環状ピストン125Tと180°の位相差が形成されるように、シャフト15に固定されている。第2ベーンは、移動可能に第2シリンダ室130Tに支持され、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tとの間に形成される作動室を吸入室と圧縮室とに区画している。吸入室は、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tと第2ベーンで区画され、且つ、吸入管42のうちの第2吸入管422に接続された空間である。圧縮室は、第2シリンダ121Tと第2環状ピストン125Tと第2ベーンで区画され、且つ、圧縮機筐体10の内部空間16に接続された空間である。吸入室は、シャフト15が回転することにより、容積を拡張し、所定の容積まで拡張した後に、圧縮室に遷移する。圧縮室は、シャフト15が回転することにより、容積が縮小し、所定の容積まで縮小した後に、吸入室に遷移する。
[冷媒]
空気調和装置1は、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、例えば、炭素原子間の二重結合を有するHFO冷媒や、炭素原子間の三重結合を有するトリフルオロプロピンがある。また、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒としては、ヨウ化トリフルオロメタンがあり、エーテル結合(HFE冷媒とも言う)を持つ冷媒としてはHFE−143m等が挙げられる。これらの冷媒は、冷凍サイクル装置の中での安定性が低い。また、これらの冷媒は、大気中での安定性も低く、GWPが比較的低い傾向がある。その代わり、当該冷媒は、圧力が比較的低い。圧力の低い冷媒は、空気調和装置の作動流体として用いると、冷媒性能の指標の一つである体積能力(単位はkJ/m)が低くなる。そのため、空気調和装置の作動流体として用いる場合は、他の冷媒性能の高い冷媒(例えば、R32)と混合して用いることが考えられている。本実施例では、炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒の「GWPが低い」という、環境負荷が小さいという特性を十分に発揮するため、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒を少なくとも20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。
炭素原子間の結合として、単結合を持つ冷媒のうち、空気調和装置で使用された実績があり、不燃性、無毒、かつ、オゾン層破壊係数(ODP)=0の冷媒でGWPが一番低い単一冷媒はR134a(GWP:1430)である。本実施例の「低GWP冷媒」はR134aよりもGWPが低いものとする。
ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、塩素(原子量:35.5)と炭素との結合を有するR12を代表としたクロロフルオロカーボン、臭素(原子量:79.9)と炭素との結合を持つハロン1301、ヨウ素(原子量:126.9)と炭素との結合を持つヨウ化トリフルオロメタンがある。
塩素を含むR12は、GWPが10900である。臭素を含むハロン1301は、GWPが7140である。ヨウ素を含むヨウ化トリフルオロメタンは、GWPが1以下である。このことからわかるように、ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、ハロゲン族元素の原子量が少ない程、GWPが低い。なお、上記した各冷媒のGWPは、「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告等に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七等に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数(フロン類GWP告示)(平成28年経済産業省・環境省告示第2号)」において定められたものである。
ハロゲン族元素の原子量と、当該ハロゲン族元素を含む代表的な冷媒のGWPの関係は、以下の式で示すことができる。
(原子量)=−4.0×10−8×(GWP)−3.0×10−4×(GWP)+10.58
上記式から、GWPをR134a(GWP:1430)よりも低くするためには、炭素(原子量:12)の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒であることが必要だとわかる。
炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、「炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」は、化学的に不安定である。具体的には、水や酸素と反応し易い。そのため、空気調和装置1は、設置後において混合冷媒が充填される前に真空引きを実施する。具体的には、空気調和装置1は、屋外に設置した室外機2と、屋内に設置した室内機5とを液管6a及びガス管6bで接続して取り付けられる。取り付けられた空気調和装置1は、液管6a及びガス管6bの内部に残存した水や酸素を取り除くため、真空引きを実施する。
真空引きは、空気調和装置1の、例えば、図示しない真空ポンプをガス側閉鎖弁62に接続して実施する。真空引きは、冷媒回路1a内の圧力が所定圧力(例えば、−0.1MPaG)以下になるまで行う。
真空引きによって、冷媒回路1a内の水や酸素を外部へ排出することができる。しかし、水や酸素は、完全には排出されず、冷媒回路1a内に残存する。真空引きを実施した後の冷媒回路1a内における水や酸素の残存量は、冷媒回路1aの容積の大きさに比例する。そのため、冷媒回路1aの容積が大きい空気調和装置では、冷媒回路1a内の水や酸素の残存量が多くなる。冷媒回路1a内に残存した水や酸素と反応した冷媒は、分解して酸を生成する。生成された酸は、冷媒回路1aを形成する金属部材を腐食させる。特に、圧縮機21の摺動部(例えば、環状ピストン、ベーン等)が腐食すると、空気調和装置1の信頼性を著しく低下させる。
本実施例では、「冷凍機油の質量を、冷凍機油の質量と混合冷媒の質量の和で除した値」である油量比率に基づいて、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材に、酸の腐食に対して耐性のある材料を用いるか否かを決定している。油量比率の大きさによって、真空引き後に冷媒回路1aに残存する水分の量を推定できる。当該水分量が所定量(酸による腐食の程度が空気調和装置1の信頼性を損ねない程度の量)以上となる空気調和装置1において、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材に、酸の腐食に対して耐性のある材料を用いる。これによって、冷媒回路1aを形成する金属部材の腐食を低コストで防止できる。なお、本実施例における金属部材とは、冷媒回路1aを形成する部材のうち、内部を循環する冷媒に直接晒される金属部材を指している。例えば、圧縮機21の、第1の圧縮部12Sと第2の圧縮部12T等に用いられる部材である。
図3は、冷媒回路1a内の水分残存量と、油量比率の関係性を説明する概略図であり、表を左に90度回転させている。
図3では、能力(左端から4番目の列に記載)の異なる6つの機種を例に記載している。図3は、冷媒回路1a内の水分残存量と油量比率を6つの機種毎に記載している。
図3の右端から4番目の列は、真空引き後の冷媒回路1aに残存する水分量を示す水分残存量の推定値(単位はg)を表している。水分残存量は、管内容積(単位はcc)から推定される。具体的には、水分残存量は、所定の条件(温度、湿度)の環境下の空気に含まれる水分の比率から推定される。
管内容積は、図3の左端から5番目の列に記載しており、ここに表している値は室外熱交換器23及び室内熱交換器51の管内容積を除いた接続配管の容積である。また、管内容積は、接続配管(液管6aとガス管6b)の長さが最大配管長(単位はm)の場合を想定した値である。なお、管内容積は、図3の左端から3番目の列に記載されている接続配管(液管6aとガス管6b)の内径(単位はmm)を想定して算出している。
最大配管長は、図3の左端から2番目の列に記載しており、機種毎に定められた値である。なお、ビルマルチの2機種は、主管(各室内機に接続される枝管に分岐する前の合流管)の最大配管長を示しており、枝管を含めると更に長くなる。
図3の右端から2番目の列には、空気調和装置1に充填される混合冷媒の質量の上限値を示す冷媒量上限B(単位はkg)を表している。冷媒量上限Bは、本発明の「空気調和装置1に充填される冷媒の質量」の最大値である。冷媒量上限Bは、接続配管の長さに比例した量となる。したがって、冷媒量上限Bは、接続配管の長さが最大配管長の場合を想定した値となる。
図3の右端から3番目の列には、空気調和装置1に充填される冷凍機油の質量を示す油量A(単位はkg)を表している。油量Aは、圧縮機21の大きさによって定められており、接続配管の長さには依存しない。
図3の右端の列には、油量比率(単位は%)を表している。油量比率は、油量Aを、油量Aと冷媒量上限Bの和で除した値である。油量比率が大きいと、冷媒量上限Bが多い。冷媒量上限Bが多いと、管内容積が大きい。管内容積が大きいと、残存水分量が多い。すなわち、油量比率が大きい程、水分残存量が多くなる。
出願人が検証した結果、何れの機種でも水分残存量が6.0gを超えると、生成された酸が空気調和装置1の信頼性の低下に与える影響が大きくなる。図3において、商品形態が「ビルマルチ」で、定格能力が「28.0kW」と「50.0kW」の機種が、上記「水分量」が6.0g以上の機種に該当する。したがって、この2機種については、酸が生成された場合に備えて、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材を、酸の腐食に対して耐性のある材料(後述)とする必要がある。一方、図3において接続配管の長さが最大配管長のときの油量比率が20%以上となる機種は水分残存量が6.0g未満であり、酸による腐食の程度が空気調和装置1の信頼性を損ねない程度の量である。そのため、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材を、酸の腐食に対して耐性のある材料(後述)としなくても酸が空気調和装置1の信頼性に与える影響は小さい。
酸の腐食に対して耐性のある材料を選択する際には、イオン化傾向が水素よりも大きく、表面に不動態膜が形成されにくい金属を含む素材を使用しないことが好ましい。例えば、亜鉛や錫は、イオン化傾向が水素よりも大きく、表面に不動態膜が形成されにくい。そのため、接続配管の長さが最大配管長のときの油量比率が20%を下回る機種の冷媒回路1aを形成する金属部材の素材には、亜鉛や錫を使用しないことが好ましい。なお、不動態膜とは、金属表面に形成された、腐食作用に抵抗する酸化被膜を指す。不動態膜は、化学的安定性を有しており、腐食に対して耐性がある。また、イオン化傾向が水素よりも大きく、表面に不動態膜が形成されにくい金属を含む素材を用いる場合において、イオン化傾向が水素よりも大きく、表面に不動態膜が形成されにくい金属の含有率を30%以下にすることが好ましい。例えば、銅と亜鉛の合金である真鍮は亜鉛を約35〜40%含んでいる。そのため、油量比率が20%を下回る機種の冷媒回路1aを形成する金属部材の素材には不適である。
一方、接続配管の長さが最大配管長のときの油量比率が20%以上の機種は、上記のような制約を考慮することなく、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材を選定できる。したがって、冷媒回路1aを形成する金属部材の腐食を低コストで防止できる。
次に、図4を用いて第2実施例を説明する。第1実施例では、「冷凍機油の質量を、冷凍機油の質量と混合冷媒の質量の和で除した値」である油量比率に基づいて、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材に、酸の腐食に対して耐性のある材料を用いるか否かを選択している。一方、本実施例では、空気調和装置1の冷媒回路1aの管内表面積に基づいて、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材に、酸の腐食に対して耐性のある材料を用いるか否かを選択している。当該水分量が所定量(酸による腐食の規模が空気調和装置1の信頼性を損ねない程度の量)以上となる機種に対してのみ、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材に、酸の腐食に対して耐性のある材料を用いる。これによって、冷媒回路1aを形成する金属部材の腐食を低コストで防止できる。
図4は、冷媒回路1a内の水分残存量と、冷媒回路1aの管内表面積の関係性を説明する概略図であり、表を左に90度回転させている。
図4では、能力(右端から3番目の列に記載)の異なる6つの機種を例に記載している。図4は、冷媒回路1a内の水分残存量と冷媒回路1aの管内表面積を6つの機種毎に記載している。
図4の右端の列は、真空引き後の冷媒回路1aに残存する水分量を示す水分残存量の推定値(単位はg)を表している。水分残存量は、管内表面積(単位はm)から推定される。具体的には、水分残存量は、所定の条件(温度、湿度)の環境下の空気に含まれる水分の比率から推定される。
管内表面積は、図4の右端から2番目の列に記載しており、ここに表している値は室外熱交換器23及び室内熱交換器51の管内表面積を除いた接続配管の管内表面積である。また、管内表面積は、接続配管(液管6aとガス管6b)の長さが最大配管長(単位はm)の場合を想定した値である。なお、管内表面積は、図4の左端から3番目の列に記載されている接続配管(液管6aとガス管6b)の内径(単位はmm)を想定して算出している。
最大配管長は、図4の左端から2番目の列に記載しており、機種毎に定められた値である。なお、ビルマルチの2機種は、主管(各室内機に接続される枝管に分岐する前の合流管)の最大配管長を示しており、枝管を含めると更に長くなる。
前述したように、何れの機種でも水分残存量が6.0gを超えると生成された酸が空気調和装置1の信頼性の低下に与える影響が大きくなる。図4において、商品形態が「ビルマルチ」で、定格能力が「28.0kW」と「50.0kW」の機種が、上記「水分量」が6.0g以上の機種に該当する。したがって、この2機種については、酸が生成された場合に備えて、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材を、酸の腐食に対して耐性のある材料(後述)とする必要がある。一方、図4において、接続配管の長さが最大配管長のときの管内表面積が10m以下なる機種は水分残存量が6.0g未満であり、酸による腐食の程度が空気調和装置1の信頼性を損ねない程度の量である。そのため、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材を、酸の腐食に対して耐性のある材料(後述)としなくても酸が空気調和装置1の信頼性に与える影響は小さい。
一方、接続配管の長さが最大配管長のときの管内表面積が10m超の機種は、上記のような制約を考慮することなく、冷媒回路1aを形成する金属部材の素材を選定できる。したがって、冷媒回路1aを形成する金属部材の腐食を低コストで防止できる。
1 空気調和装置
1a 冷媒回路
2 室外機
5 室内機
21 圧縮機
22 四方弁
23 室外熱交換器
24 絞り装置
27 室外ファン
41 吐出管
42 吸入管
43 冷媒配管
44 冷媒配管
45 冷媒配管
51 室内熱交換器
55 室内ファン
6a 液管
6b ガス管
61 液側閉鎖弁
62 ガス側閉鎖弁
200 室外機制御部
500 室内機制御部

Claims (4)

  1. 炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒と、
    冷凍機油が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、
    前記冷媒回路を形成する金属部材は、前記冷凍機油の質量を、当該冷凍機油の質量と前記混合冷媒の質量の和で除した値である油量比率に応じた素材であることを特徴とする冷凍サイクル装置。
  2. 前記冷媒回路を形成する接続配管を有し、
    前記接続配管の長さが最大配管長のときの前記油量比率が20%を下回っている場合において、前記冷媒回路を形成する金属部材として、イオン化傾向が水素よりも大きく、表面に不動態膜が形成されにくい金属を使用していないことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
  3. 炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超えた原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒が内部を循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であって、
    前記冷媒回路を形成する金属部材は、前記冷媒回路の管内表面積に応じた素材であることを特徴とする冷凍サイクル装置。
  4. 前記冷媒回路を形成する接続配管を有し、
    前記接続配管の長さが最大配管長のときの前記管内表面積が、10mを超えている場合において、前記冷媒回路を形成する金属部材として、イオン化傾向が水素よりも大きく、表面に不動態膜が形成されにくい金属を使用していないことを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
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