JP2020068235A - 有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置 Download PDF

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Abstract

【課題】塗布成膜可能でかつ電子注入性に優れた化合物を用いた、駆動電圧が低く、発光効率に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、陰極と発光層との間に、下記式(1)で表されるトリアジン構造を有する化合物からなる層を有し、式(1)中のXが、下記式(2)中のRと任意の位置で結合している、有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2020068235

【選択図】なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)素子、表示装置、及び照明装置に関する。
トリアジン含有化合物は、その電子的特性から機能性電子素子素材として注目されているものである。例えば、電子受容性などの特性が必要とされる有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の発光材料や電子輸送性の材料として期待されている。特に有機EL素子は、表示装置としての種々の優れた特性を有することから、より一層の高性能化を実現できる材料の開発が盛んに進められている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜12参照)。また、有機EL素子は、照明装置としての利用も期待されている。
有機EL素子の用途に利用が検討されたトリアジン含有化合物としては、これまで数例が知られているが、それらの多くは3つのアリール基がトリアジン環に結合し、さらにそのアリール基のメタ位にベンゼンやピリジンが置換したものである。これらの化合物は、優れた電子輸送性を示すことが知られているものの、分子間の相互作用が強くて、溶液に溶かすことができず、真空蒸着でのみ成膜が可能であった(例えば、非特許文献1参照)。
上述の有機EL素子は、陰極と陽極との間に、発光層を含む複数の層が積層された構造を有する。有機EL素子は、陰極と陽極との間に、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の複数の層が積層された構造を有しており、基板上に設置された陽極上にこのような積層構造が形成された、いわゆる順構造の有機EL素子と、基板上に設置された陰極上にこのような積層構造が形成された、いわゆる逆構造の有機EL素子とに分けられる。逆構造の有機EL素子の一部においては、有機EL素子を構成する層の一部が無機物からなる有機無機ハイブリッド型のもの(Hybrid Organic Inorganic LED:HOILED)が報告されている。このハイブリッド型素子の特徴は、電子注入層として無機の酸化物を用いており、アルカリ金属を用いず電子注入が可能であり、通常の有機EL素子に比べ酸素・水分耐性が高いという優位性がある。
前記逆構造の有機EL素子では、基板上に発光層を形成する前に、電子注入層を形成できる。したがって、例えば、スパッタ法を用いて無機酸化物等の電子注入層を形成しても発光層が損傷を受けることがなく、逆構造の有機EL素子は、前記ハイブリッド型の素子作製に好ましい。
この逆構造の有機EL素子の無機の酸化物層は、電子注入層として用いられるが(例えば、非特許文献3参照)、無機の酸化物層は、有機層への電子注入性が不十分である。そのため、無機の酸化物層の上に、さらに電子注入層を成膜することにより、有機EL素子の電子注入性を改善する技術が知られている。例えば、下記非特許文献11には、特定の電子輸送性化合物(トリアジン含有化合物)を塗布で成膜することで、良好な電子注入特性が得られることが報告されている。
特許第5124785号公報
シージャン スー(Shi−Jian Su)、外4名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、2010年、第22巻、p3311−3316 タエ ジン パク(Tae Jin Park)、外7名、「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」、第92巻、2008年、p113308 ウ シク ジェオン(Woo Sik Jeon)、外6名、「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」、第92巻、2008年、p113311 ヘンク J.ボリンク(Henk J.Bolink)、外3名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、2010年、第22巻、p2198−2201 ヘンク J.ボリンク(Henk J.Bolink)、外2名、「ケミストリー オブ マテリアルズ(Chemistry of Materials)」、2009年、第21巻、p439−441 ヒョサン チョイ(Hyosung Choi)、外8名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第23巻、2011年、p2759 ウィンファ チョウ(Yinhua Zho)、外21名、「サイエンス(Science)」、第336巻、2012年、p327 ヨンフーン キム(Young−Hoon Kim)、外5名、「アドバンスト ファンクショナル マテリアルズ(Advanced Functional Materials)」、2014年、DOI:10.1002/adfm.201304163 ステファン フォーフル、外4名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、2014年、DOI:10.1002/adma.201304666 ステファン フォーフル、外5名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第26巻、2014年、DOI:10.1002/adma.201400332 ペン ウェイ、外3名、「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)」、第132巻、2010年、p8852 深川 弘彦、外8名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、DOI:10.1002/adma.201706768
高い電子輸送性を有するトリアジン含有化合物も、前記逆構造有機EL素子の電子注入層への応用が期待できる。
しかしながら、先述の通り、トリアジン含有化合物の多くは、溶媒に溶かすことができず、塗布での成膜が困難である。塗布での成膜を可能にするためには、トリアジン含有化合物の基本的な設計を見直す必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塗布成膜可能でかつ電子注入性に優れた化合物を用いた、駆動電圧が低く、発光効率に優れた有機EL素子を提供することを課題とする。
本発明者らは、塗布成膜可能でかつ電子注入性に優れた化合物について種々検討したところ、トリアジン環にアリール基が結合した化合物の、アリール基のオルト位に電子供与性の弱い置換基を結合することにより、塗布成膜が可能となり、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陰極と前記発光層との間に、下記式(1):
Figure 2020068235
[式(1)中のXは、下記式(2):
Figure 2020068235
中のRと任意の位置で結合しており、
式(2)中の環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する、下記式(2a):
Figure 2020068235
で表される芳香環を表し、
式(2)中の環B及び環B’は、隣接環と任意の位置で縮合する、下記式(2b−1)、式(2b−2)、式(2b−3):
Figure 2020068235
のいずれかで表される環構造を表し、
式(1)、式(2a)、及び式(2b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよく、
式(2)中のRであって、式(1)中のXと結合していないRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基、ハロゲン基、及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよく、
式(2)中のnは、1以上4以下の整数を示す。]で表されるトリアジン構造を有する化合物からなる層を有することを特徴とする。
かかる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記トリアジン構造を有する化合物からなる層の塗布成膜可能であり、駆動電圧が低く、発光効率に優れる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好適例においては、前記トリアジン構造を有する化合物からなる層が、還元剤を含む。この場合、陰極から発光層への電子の供給が充分に行われるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧が更に低くなり、発光効率が更に向上する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の好適例においては、前記トリアジン構造を有する化合物からなる層が、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物を含む。この場合、トリアジン構造を有する化合物からなる層の電子注入性が向上するため、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧が更に低くなり、発光効率が更に向上する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記陰極と前記発光層との間に、金属酸化物からなる電子注入層を有することが好ましい。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の保存安定性が向上し、駆動安定性が向上する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の好適例においては、前記式(2)中の環B及び環B’は、一方が、隣接環と任意の位置で縮合する前記式(2b−1)で表される環構造を表し、もう一方が、隣接環と任意の位置で縮合する式(2b−2)で表される環構造を表す。この場合、トリアジン構造を有する化合物からなる層の電子輸送性が向上し、駆動電圧が更に低くなり、発光効率が更に向上する。
また、本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の表示装置は、駆動安定性に優れる。
また、本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の照明装置は、駆動安定性に優れる。
本発明によれば、基板上に陰極を有する、いわゆる逆構造の有機EL素子であって、塗布成膜可能でかつ電子注入性に優れた化合物を用いた、駆動電圧が低く、発光効率に優れた有機EL素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子の構造の一例を示した概略図である。 式(19)で表わされるでトリアジン構造を有する化合物のNMRスペクトルである。 式(20)で表わされるでベンゾチアゾール構造を有する化合物のNMRスペクトルである。 実施例1及び比較例1−2で製造した、各種有機EL素子の(a)輝度−電圧特性、(b)外部量子効率−電流密度特性を測定した結果を示すグラフである。
以下に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記陰極と前記発光層との間に、上記式(1)で表されるトリアジン構造を有する化合物からなる層を有することを特徴とする。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物のトリアジン構造が電子輸送性を有するため、前記トリアジン構造を有する化合物からなる層は、電子輸送性に優れる。そのため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、駆動電圧が低く、発光効率に優れる。
また、前記式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物は、トリアジン構造に結合したアリール基のオルト位(X)に、前記式(2)で表わされる電子供与性の弱い置換基が結合しているため、溶解性に優れる。そのため、前記式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物からなる層を形成する場合、塗布による成膜が可能であるという利点もある。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる、トリアジン構造を有する化合物は、下記式(1):
Figure 2020068235
で表される。式(1)で表わされる化合物は、トリアジン環にアリール基が結合してなる化合物である。式(1)において、トリアジン環に結合している2つのRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。
上記式(1)中のXは、トリアジン構造に結合したアリール基のオルト位に位置し、下記式(2):
Figure 2020068235
中のRと任意の位置で結合している。
上記式(2)中のnは、1以上4以下の整数を示す。ここで、nは1であることが好ましい。
上記式(2)中のRであって、式(1)中のXと結合していないRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基、ハロゲン基、及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。
また、上記式(2)中の環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する、下記式(2a):
Figure 2020068235
で表される芳香環を表す。ここで、2つのRの内の、一方のRは、もう一方のRに対して、パラ位に位置していても、メタ位に位置していても、オルト位に位置していてもよい。式(2a)中のRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。
また、上記式(2)中の環B及び環B’は、隣接環と任意の位置で縮合する、下記式(2b−1)、式(2b−2)、式(2b−3):
Figure 2020068235
のいずれかで表される環構造を表す。式(2b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。
ここで、式(2)中の環B及び環B’は、一方が、隣接環と任意の位置で縮合する上記式(2b−1)で表される環構造を表し、もう一方が、隣接環と任意の位置で縮合する上記式(2b−2)で表される環構造を表すことが好ましい。この場合、トリアジン構造を有する化合物からなる層の電子輸送性が向上し、駆動電圧が更に低くなり、発光効率が更に向上する。
上記式(1)、式(2a)、及び式(2b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよく、また、上記式(2)中のRであって、式(1)中のXと結合していないRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基、ハロゲン基、及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。
ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられ、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等のが挙げられ、炭素数1〜10のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜10のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基等が挙げられ、炭素数2〜10のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられ、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、2,6−キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、ピリジルフェニル基、フェナンスレニル基等が挙げられ、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。また、式(2)中のRに関して、ハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
上記式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物として、具体的には、以下の式(3−1)〜(3−10)の化合物が挙げられる。
Figure 2020068235
前記式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物は、公知の方法で合成して得ることができる。式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物の合成方法は、特に限定されるものではないが、その一例を以下に示す。
まず、式(2)で表わされ、いずれのRも式(1)中のXと結合していない化合物(以下、「式(2)で表わされる化合物」と記す場合がある。)を準備し、該化合物の目的の位置(R)に、ジヒドロキシボリル基[−B(OH)2基]を導入して、ボロン酸化合物を得る。ここで、ジヒドロキシボリル基を導入する反応は、式(2)で表わされる化合物と、ホウ酸トリイソプロピル[(iPrO)3B]等のホウ酸エステルとを、t−ブチルチチウム(t−BuLi)等の有機リチウム化合物の存在下で、反応させることで実施できる。
次に、上記のようにして得たボロン酸化合物と、1,2−ジブロモベンゼン等のジハロゲン化ベンゼンとを、Suzukiカップリングさせ、ボロン酸化合物のジヒドロキシボリル基をブロモフェニル基に置換する。ここで、ジヒドロキシボリル基をブロモフェニル基に置換する反応は、ジヒドロキシボリル基を有する化合物と、1,2−ジブロモベンゼン等のジハロゲン化ベンゼンとを、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライド[Pd(dppf)Cl2]やテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[Pd(Ph3P)4]等のパラジウム触媒と、炭酸ナトリウム等の塩基の存在下で、反応させることで実施できる。
次に、上記のようにして得たブロモフェニル基を有する化合物の、ブロモフェニル基の臭素をピナコラートボリル基等のボリル基に置換して、有機ホウ素化合物を得る。ここで、ブロモフェニル基の臭素をボリル基に置換する反応は、ブロモフェニル基を有する化合物と、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン[(iPrO)Bpin]等のピナコールエステルとを、n−ブチルチチウム(n−BuLi)等の有機リチウム化合物の存在下で、反応させることで実施できる。
次に、上記のようにして得た有機ホウ素化合物と、トリアジン構造を有しトリアジン環にハロゲン元素が結合している化合物とを、Suzukiカップリングさせることで、式(1)で表わされるトリアジン構造を有する化合物を製造することができる。ここで、トリアジン環にハロゲン元素が結合している化合物と、ボリル基を有する有機ホウ素化合物とのSuzukiカップリングは、トリアジン環にハロゲン元素が結合している化合物と、ボリル基を有する有機ホウ素化合物とを、Pd(dppf)Cl2等のパラジウム触媒と、炭酸ナトリウム等の塩基の存在下で、反応させることで実施できる。また、トリアジン構造を有しトリアジン環にハロゲン元素が結合している化合物としては、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の有機EL素子の構造の一例を示した概略図である。
図1に示す有機EL素子1は、基板2上に、陰極3と、発光層6と、陽極9と、がこの順に設けられており、陰極3と発光層6の間に、電子注入・輸送層5を有する。
ここで、図1に示す有機EL素子においては、電子注入・輸送層5が、上述のトリアジン構造を有する化合物を含み、即ち、上述のトリアジン構造を有する化合物からなる層である。上述したように、陰極3と発光層6の間に、前記トリアジン構造を有する化合物からなる電子注入・輸送層5設けることで、逆構造の有機EL素子の駆動電圧を低減して、発光効率を向上させることができる。
前記有機EL素子1を構成する層には、陽極9、陰極3の他、発光層6、電子注入・輸送層5、正孔輸送層7、正孔注入層8等があり、これらの層が適宜選択されて積層され、有機EL素子1が構成される。
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極9と、基板2上に形成された陰極3との間に複数の層が積層された構造を有するものである限り、積層される層の構成は特に制限されないが、陰極3、電子注入・輸送層5、発光層6、必要に応じて正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。
前記基板2の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。基板2に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板2の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機EL素子1が得られるため好ましい。一方、基板2に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
前記有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板を用いる。一方、前記有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
前記基板2の平均厚さは、基板2の材料等に応じて決定でき、0.1〜30mmであることが好ましく、0.1〜10mmであることがより好ましい。なお、基板2の平均厚さは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定できる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陰極3及び陽極9としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としては、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等が挙げられる。一方、不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金等が挙げられる。
陰極3としては、これらの中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極9としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
上記のように、一般に陽極9に用いられる金属を陰極3及び陽極9に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITO等である。
前記陰極3の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましく、100〜200nmであることが更に好ましい。なお、陰極3の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
前記陽極9の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましく、30〜150nmであることが更に好ましい。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば、平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極9として使用することができる。なお、陽極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極9と陰極3との間に金属酸化物層4を有することが好ましい。陽極9と陰極3との間の積層構造の材料として金属酸化物を用いると、金属酸化物からなる層を有さない有機EL素子に比べて連続駆動寿命や保存安定性に優れたものとなる。
金属酸化物層4は、陰極3の一部又は電子注入層として機能する層である。
金属酸化物層4は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
前記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウム等の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛等の三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの等が挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO7Al23も含まれる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから、本発明の金属酸化物層4を構成する一層に該当しない。
前記金属酸化物層4の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機EL素子とする点から、1〜1000nmであることが好ましく、2〜100nmであることが更に好ましい。金属酸化物層4の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記陰極3と前記発光層6との間に、金属酸化物からなる電子注入層(金属酸化物層4)を有することが更に好ましい。電子注入層は、陰極3から発光層6への電子の注入の速度・電子輸送性を改善するものであり、陰極3と発光層6との間に、電子注入層として、金属酸化物層4を有することで、有機EL素子の保存安定性が向上し、駆動安定性が更に向上する。
図1に示す有機EL素子は、陰極3と発光層6の間に形成する電子注入・輸送層5に上述のトリアジン構造を有する化合物を含むものである。該電子注入・輸送層5は、トリアジン構造を有する化合物を含む溶液を塗布して形成されることが好ましい。電子注入・輸送層5が、上述のトリアジン構造を有する化合物からなる層であることで、電子注入・輸送層5の電子注入性及び電子輸送性が向上し、陽極からの正孔の注入と、陰極からの電子の注入とがバランスされ、有機EL素子1の駆動電圧が低くなり、発光効率が向上する。
なお、図1においては、陰極3の上に金属酸化物層4が積層されており、更に、金属酸化物層4の上に電子注入・輸送層5が積層されているが、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、金属酸化物層4と電子注入・輸送層5との積層順序は逆でもよい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子注入・輸送層5(トリアジン構造を有する化合物からなる層)は、還元剤を含むことが好ましい。
ここで、還元剤は、n−ドーパントとして働くため、電子注入・輸送層5が還元剤を含むことで陰極3から発光層6への電子の供給が充分に行われるため、有機EL素子の駆動電圧が低くなり、発光効率が更に向上する。
前記還元剤としては、電子供与性の化合物が好ましく、例えば、1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1,3−ジメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、1,3,5−トリメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール化合物;ロイコクリスタルバイオレット(=トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン)、ロイコマラカイトグリーン(=ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン)、トリフェニルメタン等のトリフェニルメタン化合物;2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)等のジヒドロピリジン化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物や、ジヒドロピリジン化合物が好ましく、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、または2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)が特に好ましい。
前記還元剤の量は、電子注入・輸送層5を形成するトリアジン構造を有する化合物100質量%に対して、0.1〜15質量%であることが好ましい。還元剤をこのような割合で含むと、有機EL素子の発光効率を充分に高いものとすることができる。還元剤の量は、より好ましくは、トリアジン構造を有する化合物100質量%に対して、0.5〜10質量%であり、更に好ましくは、0.5〜5質量%である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子注入・輸送層5(トリアジン構造を有する化合物からなる層)は、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物を含むことが好ましい。該酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物としては、三級アミン、フォスファゼン化合物、グアニジン化合物、アミジン構造を含む複素環式化合物、環構造を有する炭化水素化合物、及びケトン化合物が好ましい。これら化合物は、1種でも、2種以上の組み合わせでもよい。
前記酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物は、トリアジン構造を有する化合物からプロトン(H+)を引き抜く能力を有する。該塩基性の化合物は、pKaが5以上であることが好ましく、11以上であることが更に好ましく、pKaが高い程、トリアジン構造を有する化合物からプロトンを引き抜く能力がより高いものとなる。その結果、電子注入・輸送層5の電子注入性がより向上する。また、前記塩基性の化合物は、無機化合物の欠損箇所に好適に配位することから、外部から侵入する酸素や水との界面での反応を妨げ、素子の大気安定性を高める効果もある。
なお、本発明において、「pKa」は通常は「水中における酸解離定数」を意味するが、水中で測定できないものは「ジメチルスルホキシド(DMSO)中における酸解離定数」を意味し、DMSO中でも測定できないものは、「アセトニトリル中の酸解離定数」を意味する。好ましくは「水中における酸解離定数」を意味する。
前記三級アミン(三級アミン誘導体)としては、鎖状や環状等のアミン化合物であっても良く、環状である場合には複素環式のアミン化合物であってもよく、脂肪族アミンや芳香族アミン等の複素環式のアミン化合物であってもよい。三級アミンは、アミノ基を1〜4個有していることが好ましく、1または2個有していることがより好ましい。また、アミン化合物としては、アルキル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を有する化合物であってもよい。具体的には、(モノ、ジ、トリ)アルキルアミン;アルキルアミノ基を1〜3つ有する芳香族アミン;アルコキシ基を1〜3つ有する芳香族アミン等が挙げられる。
前記三級アミンとしては、1級アミンおよび2級アミンを含まないものが好ましい。具体的には、該三級アミンとして、下記一般式(4−1)または(4−2)で示されるジメチルアミノピリジン(DMAP)等のジアルキルアミノピリジン、下記一般式(4−3)で示されるトリエチルアミン等のNR123で表される構造を有するアミン(ただし、R1、R2、R3は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)、下記一般式(4−4)で示されるアクリジンオレンジ(AOB)等が挙げられる。
Figure 2020068235
前記炭化水素基としては、炭素数1〜30のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが更に好ましく、炭素数1または2のものがより一層好ましい。炭化水素基が置換基を有する場合には、置換基も含めた全体として前記炭素数であることが好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示されるが、アルキル基が好ましい。置換基を有する炭化水素基における置換基としては、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基等が例示される。ジメチルアミノピリジンとしては、電子供与基であるジメチルアミノ基のピリジン環に結合している位置が、2位(2−DMAP)または4位(4−DMAP)であることが好ましい。特に、ピリジン環の4位にジメチルアミノ基が結合している4−ジメチルアミノピリジンは、pKaが高く、しかも、これを含む有機薄膜を有機EL素子の電子注入・輸送層5として用いた場合に長い寿命が得られるため好ましい。
前記三級アミンとしては、メトキシピリジン誘導体等のアルコキシピリジン誘導体も用いることができる。アルコキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基がさらに好ましく、1または2のアルコキシ基がより一層好ましい。アルコキシピリジン誘導体には、アルコキシピリジンの水素原子の1または2以上が、置換基で置換された構造の化合物も含まれる。置換基としては、上記の三級アミンの炭化水素基の置換基と同様のものが例示される。
メトキシピリジン誘導体としては、メトキシ基のピリジン環に結合している位置が4位である下記一般式(5−1)で示される4−メトキシピリジン(4−MeOP)または3位である下記一般式(5−2)で示される3−メトキシピリジン(3−MeOP)であることが好ましい。特に、ピリジン環の4位にメトキシ基が結合している4−メトキシピリジンは、pKaが高いため好ましい。
Figure 2020068235
前記三級アミンとしては、ジアルキルアミノ基および/またはアルコキシ基を有する複素環式芳香族アミン、トリアルキルアミンから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、ジアルキルアミノピリジン、トリアルキルアミン、アルコキシピリジン誘導体から選択される1種又は2種以上を用いることが、電子注入性、寿命の向上の観点から特に好ましい。
前記アミジン構造を含む複素環式化合物において、アミジン構造とは、R4−C(=NR5)−NR67で表される構造(ただし、R4〜R7は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を表す。)である。アミジン構造を含む複素環式化合物としては、ジアザビシクロノネン誘導体やジアザビシクロウンデセン誘導体等が挙げられる。
前記ジアザビシクロノネン誘導体としては、下記一般式(6−1)で示される1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)等が挙げられる。DBNは、これを含む有機薄膜を有機EL素子の電子注入・輸送層5として用いた場合に、長い寿命が得られるため好ましい。
前記ジアザビシクロウンデセン誘導体としては、下記一般式(6−2)で示される1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
Figure 2020068235
前記ジアザビシクロノネン誘導体には、ジアザビシクロノネンの水素原子の1または2以上が、置換基で置換された構造の化合物も含まれ、ジアザビシクロウンデセン誘導体には、ジアザビシクロウンデセン水素原子の1または2以上が、置換基で置換された構造の化合物も含まれる。置換基としては、上記の三級アミンの炭化水素基の置換基と同様のものが例示される。
前記フォスファゼン化合物(フォスファゼン塩基誘導体)とは、例えば、下記一般式(7)で表される構造を含む化合物である。
Figure 2020068235
上記式(7)において、R8は、水素原子又は炭化水素基を表し、R9〜R11は、水素原子、炭化水素基、−NR’R”ただし、R’、R”は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基を表す。)、又は下記式(8)で表される基を表し、nは1〜5の数を表す。
Figure 2020068235
上記式(8)において、R12〜R14は、水素原子、炭化水素基、又は−NR’R”(ただし、R’、R”は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基を表す。)を表し、mは1〜5の数を表す。
上記式(7)、(8)における炭化水素基としては、炭素数1〜8の基が好ましく、炭素数1〜4の基が好ましい。また、炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。上記R11としては、ターシャリーブチル基が特に好ましい。
前記フォスファゼン塩基誘導体としては、下記一般式(9)で示される化合物等が挙げられる。
Figure 2020068235
前記グアニジン化合物とは、下記一般式(10)で表される構造を含む化合物である。
Figure 2020068235
上記式(17)中、R15〜R19は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を表し、R15〜R19のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。
前記グアニジン化合物としては、グアニジン環状誘導体等を用いることができる。グアニジン環状誘導体としては、下記式(11−1)で示される7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、下記式(11−2)で示される1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)等が挙げられる。
Figure 2020068235
前記環構造を有する炭化水素化合物としては、環構造として5員環又は6員環を有する化合物が好ましく、5員環と6員環とが縮環した環構造や、複数の6員環が縮環した環構造を有する化合物も好ましい。5員環としては、シクロペンタン環やシクロペンタジエン環等が挙げられ、6員環としては、ベンゼン環等が挙げられる。
環構造を有する炭化水素化合物としては、環構造のみの化合物、環構造に炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5のアルキル基が結合した構造の化合物や、複数の環構造が直接又は炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の炭化水素の連結基を介して結合した構造の化合物が好ましい。環構造を有する炭化水素化合物の具体例としては、下記式(12−1)〜(12−14)の化合物が挙げられる。なお、式中のPhはフェニル基を表す。
Figure 2020068235
前記ケトン化合物としては、炭素数が2〜30のケトンが好ましく、環状構造を有していても良い。具体的には、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、3,5,5−トリメチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記トリアジン構造を有する化合物と、前記pKaが1以上の塩基性の化合物と、の質量比(トリアジン構造を有する化合物:pKaが1以上の塩基性の化合物)は、1:0.01〜1:10の範囲が好ましく、1:0.5〜1:5の範囲が更に好ましい。質量比がこの範囲であれば、トリアジン構造を有する化合物と、pKaが1以上の塩基性の化合物との効果が十分に発揮されて、電子輸送性及び電子注入性の向上効果が顕著となる。
前記電子注入・輸送層5は、前記トリアジン構造を有する化合物と複数の材料を積層させてもよい。用いることができるその他の材料としては、上述した、還元剤、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物の他に、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3”−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)等のピリジン誘導体、2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ)等のキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)等のピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)等のフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)等のトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)等のオキサジアゾール誘導体、2,2’,2”−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)等のイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)等に代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられる。
前記電子注入・輸送層5の平均厚さは、5〜100nmであることが好ましい。電子注入・輸送層5の平均厚さが5nm以上の場合、正孔をブロックする効果が大きく、有機EL素子の駆動安定性が更に向上する。電子注入・輸送層5の平均厚さが100nm以下の場合、駆動電圧が低く、実用上好ましい。前記電子注入・輸送層5の平均厚さは、より好ましくは10〜60nmである。また、本発明の有機EL素子の連続駆動寿命の点も考えると、前記電子注入・輸送層5の平均厚さは、10〜30nmであることが更に好ましい。なお、電子注入・輸送層5の平均厚さは触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
本発明の有機EL素子において、発光層6を形成する材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
前記発光層6を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)等のポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)等のポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)等のポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)等のポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)等のポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)等のポリシラン系化合物;更には特開2011−184430号、特開2012−151148号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
前記発光層6を形成する低分子材料としては、後述するホストとして機能する金属錯体、及び、リン光発光材料、熱活性化遅延蛍光材料等が挙げられる。発光層6を形成する低分子材料として、より具体的には、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq3)、8−ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq2)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)3(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィンプラチナム(II)等の各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)等のベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッド等のナフタレン系化合物、フェナントレン等のフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセン等のクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)等のペリレン系化合物、コロネン等のコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセン等のアントラセン系化合物、ピレン等のピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等のピラン系化合物、アクリジン等のアクリジン系化合物、スチルベン等のスチルベン系化合物、4,4’−ビス[9−ジカルバゾリル]−2,2’−ビフェニル(CBP)、4、4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)等のカルバゾール系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェン等のチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾール等のベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミド等のナフタルイミド系化合物、クマリン等のクマリン系化合物、ペリノン等のペリノン系化合物、オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)等のシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッド等のキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン等のピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物、フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン等の金属または無金属のフタロシアニン系化合物、さらには特開2009−155325号公報および特許第5660371号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、量子ドットやペロブスカイト材料も発光層6として用いることができる。
前記発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。なお、発光層6の平均厚さは、触針式段差計により測定してもよいし、水晶振動子膜厚計により発光層6の成膜時に測定してもよい。
前記正孔輸送層7の材料としては、正孔輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
また、これらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
前記p型の低分子材料としては、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等のアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4”−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTE等のアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)等のフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベン等のスチルベン系化合物、OxZ等のオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾール等のトリアゾール系化合物、イミダゾール等のイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノン等のフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロール等のピロール系化合物、フルオレン等のフルオレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン等のポルフィリン系化合物、キナクリドン等のキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニン等の金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニン等の金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、α−NPD、TPTE等のアリールアミン系化合物が好ましい。
本発明の有機EL素子が独立した層として正孔輸送層7を有する場合、正孔輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、40〜100nmであることが更に好ましい。正孔輸送層7の平均厚さは、低分子化合物の場合は、水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は、接触式段差計により測定することができる。
前記正孔注入層8としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V25)、酸化モリブテン(MoO3)、酸化ルテニウム(RuO2)等金属酸化物の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とすることが好ましい。正孔注入層8が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とする場合、正孔注入層8が陽極9から正孔を注入して発光層6又は正孔輸送層7へ輸送する正孔注入層8としての機能がより優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極9から発光層6又は正孔輸送層7への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止できる。正孔注入層8は、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンからなるものであることがより好ましい。
また、前記正孔注入層8として、正孔注入が促進可能なアクセプター材料である、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)、ヘキサフルオロテトラシアノナフトキノジメタン(F6−TNAP)等も用いることができる。
前記正孔注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは5〜50nmである。なお、正孔注入層8の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本発明の有機EL素子において、全ての層を形成する方法は、特に制限されず、気相成膜法であるプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法、そして液相成膜法である電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法、スプレー熱分解法、微粒子分散液を用いたドクターブレード法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーンプリンティング法等の印刷技術等を用いることができ、材料に応じた適切な方法を選択して用いることができる。
これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていてもよい。
本発明の有機EL素子は、発光層6の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。このため、本発明の有機EL素子は、表示装置や照明装置に好適に用いることができるものである。
<表示装置>
本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の表示装置は、上述した駆動電圧が低く、発光効率に優れた有機EL素子を具えるため、駆動電圧が低く、発光効率に優れる。本発明の表示装置は、上述した有機エレクトロルミネッセンス素子の他に、表示装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
<照明装置>
本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の照明装置は、上述した駆動電圧が低く、発光効率に優れた有機EL素子を具えるため、駆動電圧が低く、発光効率に優れる。本発明の照明装置は、上述した有機エレクトロルミネッセンス素子の他に、照明装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<NMRの測定方法>
JEOL社のAL400を用いた。なお、分光計はAL−Series分光計であり、プローブはTH5ATFG2プローブである。また、溶媒は、CDCl3である。
<トリアジン構造を有する化合物の合成>
200mLの反応器に、下記式(13)で表わされる化合物(4.0g、13.2mmol、1.0eq.)、脱水ジエチルエーテル(Et2O、40mL)を加えた。この溶液を−78℃に冷却し、CH3Li(1.12mol/LのEt2O溶液)(35.4mL、39.7mmol、3.0eq.)を約5分間かけて滴下後、同温で0.5時間撹拌後、冷却バスを外し室温まで昇温した。得られた褐色懸濁液を5%塩化アンモニウム水溶液(100mL)でクエンチし、ジエチルエーテル(100mL)を加え2層に分けた。水層をジエチルエーテル(30mL)で抽出し、有機層を併せて、市水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、ベージュ色の固体(4.68g)を得た。これをカラム精製(SiO2=120g、ヘキサン/トルエン=1/1→1/2→トルエンのみ)し、無色の固体である、下記式(14’)で表わされるケトン体(1.41g、4.92mmol、37%)と、下記式(14)で表わされる目的のアルコール体(2.38g、8.37mmol、63%)を得た。反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
200mLの反応器に、上記式(14)で表わされるアルコール体(2.3g、8.09mmol、1.0eq.)、70%ポリリン酸(PPA、92g)を加え、130℃に昇温した。同温で30分間撹拌後、150℃に昇温し、さらに15分間激しく撹拌した。得られた薄茶色溶液に、氷水(100mL)を加えてクエンチし、酢酸エチル(100mL)で抽出し、5%重曹水、市水、飽和食塩水で順次洗浄、乾燥、濃縮し、褐色の液体(2.56g)を得た。これをカラム精製(SiO2=80g、ヘキサン/トルエン=10/1)し、無色の固体である下記式(15)で表わされる化合物(2.17g、7.63mmol、94%)を得た。反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
100mLの反応器に、上記式(15)で表わされる化合物(1.35g、4.75mmol、1.0eq.)、無水ジエチルエーテル(Et2O、15mL)を加え、約−50℃に冷却した。この溶液にt−BuLi(1.64mol/Lのペンタン溶液)(4.34mL、7.12mmol、1.5eq.)を約3分かけて滴下し、同温から−15℃までゆっくり30分間かけて昇温させた後、−78℃に冷却し、生成した薄黄色溶液に、無水ジエチルエーテル(2mL)に希釈した(iPrO)3B(1.35g、13.0mmol、3.0eq.)を加えた。同温で15分間撹拌後、冷却バスを外して室温まで昇温させた。この溶液に0.5Nの塩酸(10mL)を加え、10分間撹拌後、酢酸エチル(20mL)で抽出し、市水、食塩水(50mL×3)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、薄褐色の粘帖な液体(1.56g)を得た。これをカラム精製(SiO2=60g、ヘキサン/酢酸エチル=3/1→2/1→1/1)し、原料の上記式(15)で表わされる化合物(0.39g)を回収すると共に、下記式(16)で表わされる化合物を含む混合物(0.39g)と、下記式(16)で表わされる化合物(0.73g)とを得た。反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
50mLの反応器に、上記式(16)で表わされる化合物を含む混合物(0.39g、1.18mmol、1.0eq.)、1,2−ジブロモベンゼン(1.4g、5.94mmol、5.0eq.)、Pd(dppf)Cl2(43mg、0.0594mmol、0.05eq.)、炭酸ナトリウム(0.38g、3.56mmol、3.0eq.)、脱気トルエン(4mL)、脱気水(4mL)、脱気エタノール(2mL)を加え、バス温95℃で3時間加熱撹拌した。得られた懸濁液に、5%塩化アンモニウム水(4mL)、トルエン(4mL)を加え、撹拌し、析出した固体を濾過し、濾液を2層に分け、有機層を濃縮して、褐色の液体(i)(2.1g)を得た。
一方、100mLの反応器に、上記式(16)で表わされる化合物(0.73g、2.22mmol、1.0eq.)、1,2−ジブロモベンゼン(2.62g、11.1mmol、5.0eq.)、Pd(dppf)Cl2(81mg、0.111mmol、0.05eq.)、炭酸ナトリウム(0.706g、6.66mmol、3.0eq.)、脱気トルエン(7mL)、脱気水(7mL)、脱気エタノール(3mL)を加え、バス温95℃で4時間加熱撹拌した。得られた懸濁液に、5%塩化アンモニウム水(10mL)、トルエン(10mL)を加え、撹拌し、析出した固体を濾過し、濾液を2層に分け、有機層を市水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、褐色の液体(ii)(3.55g)を得た。得られた液体(ii)を、上記のようにして得た液体(i)と合わせて、カラム精製(SiO2=60g、ヘキサン/トルエン=5/1)し、無色の固体である下記式(17)で表わされる化合物(1.06g、2.41mmol、70%)を得た。反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
100mLの反応器に、上記式(17)で表わされる化合物(1.0g、2.27mmol、1.0eq.)、THF(10mL)を加え、−78℃に冷却した。この溶液にn−BuLi(1.55mol/Lのヘキサン溶液)(1.76mL、2.73mmol、1.2eq.)を約5分かけて滴下し、同温で0.5時間撹拌後、得られた薄黄色溶液に(iPrO)Bpin(0.55g、2.97mmol、1.3eq.)を加えた。同温で30分間撹拌後、冷却バスを外して室温まで昇温させ、3時間撹拌した。この溶液に5%塩化アンモニウム水溶液(60mL)を加えた後、酢酸エチル(40mL)で抽出、市水、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、黒褐色の粘帖な液体(1.42g)を得た。これをカラム精製(SiO2=50g、ヘプタン/トルエン=2/1→1/1)し、無色のアモルファス体である下記式(18)で表わされる化合物(0.76g、1.56mmol、68%)を得た。反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
100mLの反応器に、上記式(18)で表わされる化合物(0.58g、1.19mmol、1.0eq.)、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(0.638g、2.38mmol、2.0eq.)、Pd(dppf)Cl2(26mg、0.0357mmol、0.03eq.)、炭酸ナトリウム(0.378g、3.57mmol、3.0eq.)、トルエン(6mL)、蒸留水(6mL)、エタノール(3mL)を加えた。得られた懸濁液を、バス温90℃に昇温し、同温で18時間撹拌した。この懸濁液に5%塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)を加え、析出した固体を濾別し、濾液を2層に分けた。水層をトルエン(10mL)で抽出し、有機層を合わせて市水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、褐色の液体(0.95g)を得た。これをカラム精製(SiO2=50g、ヘキサン/トルエン=2/1→1/1)し、無色の固体(0.66g)を得た。これをアセトニトリル(12mL)で加熱分散洗浄し、高真空下80℃で乾燥を行い、無色の粉末である下記式(19)で表わされるトリアジン構造を有する化合物(0.58g、0.980mmol、82%)を得た。生成物の1H−NMRスペクトルを図2に示す。また、反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
<ベンゾチアゾール構造を有する化合物の合成>
上記と同様にして、上記式(18)で表わされる化合物を準備した。50mLの反応器に、上記式(18)で表わされる化合物(0.96g、1.97mmol、1.0eq.)、5−ブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(0.85g、3.94mmol、2.0eq.)、Pd(dppf)Cl2(72mg、0.0985mmol、0.05eq.)、炭酸ナトリウム(0.626g、5.91mmol、3.0eq.)、トルエン(10mL)、蒸留水(10mL)、エタノール(5mL)を加えた。得られた懸濁液を、バス温95℃に昇温し、同温で24時間撹拌した。この懸濁液をセライト濾過し、濾液に5%塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加え、トルエン(20mL)にて抽出し、有機層を合わせて市水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、褐色の粘帖な液体(1.69g)を得た。これをカラム精製(SiO2=80g、ヘキサン/トルエン=1/1→1/2)し、無色の固体(1.16g)を得た。この固体をエタノール(15mL)で、バス温95℃で、加熱懸濁洗浄し、濾過し、高真空下で乾燥を行い、無色の粉末である下記式(20)で表わされるベンゾチアゾール構造を有する化合物(0.88g、1.78mmol、90%)を得た。生成物の1H−NMRスペクトルを図3に示す。また、反応スキームを以下に示す。
Figure 2020068235
<有機EL素子1の製造>
以下に示す方法により、有機EL素子1を製造した。
[工程1]
基板2として、ITOからなる厚み150nmのパターニングされた電極(陰極3)が形成されている平均厚さ0.7mmの市販されている透明ガラス基板を用意した。そして、陰極3を有する基板2を、アセトン中、イソプロパノール中で超音波洗浄し、その後、UVオゾン洗浄を20分間行った。
[工程2]
前記[工程1]で作製したITO電極(陰極3)上に、亜鉛金属をターゲットとし、反応ガスとして酸素をキャリアガスとしてアルゴンを用いたスパッタ法により、平均厚さ10nmの酸化亜鉛(ZnO)層を形成した。その後、イソプロパノール、アセトンで洗浄を行った。さらに、本基板をスピンコーターにセットし、1質量%の酢酸マグネシウム溶液(水/エタノール=1/3)を毎分1600回転で60秒スピンコートし、大気下でホットプレートにより、400℃で、1時間アニールを行った。続いて本基板を水で洗浄した後、大気下でホットプレートにより、250℃で、30分間乾燥させ、金属酸化物層4を形成した。
[工程3]
次に、以下に示す方法により、電子注入・輸送層5を形成した。
なお、実施例1、比較例1、比較例2は、電子注入・輸送層5が異なるのみで、その他の層は、同様である。以下に、実施例1、比較例1、比較例2における、電子注入・輸送層5の形成方法を示す。
(実施例1)
上記のようにして合成した、式(19)で表わされるトリアジン構造を有する化合物(1質量%)と、上記式(6−1)で表わされる1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN、2質量%)をシクロペンタノンに溶解し、混合溶液を得た。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、混合溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは30nmであった。
(比較例1)
上記のようにして合成した、式(20)で表わされるベンゾチアゾール構造を有する化合物(1質量%)と、上記式(6−1)で表わされる1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN、2質量%)をシクロペンタノンに溶解し、混合溶液を得た。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、混合溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは30nmであった。
(比較例2)
下記式(21):
Figure 2020068235
で表わされる化合物[2’−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−N,N−ジフェニルビフェニル−2−アミン、Luminescence Technology Corp.製、LT−N555 PA−ort−2Ph−TRZ](1質量%)と、上記式(6−1)で表わされる1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN、2質量%)をシクロペンタノンに溶解し、混合溶液を得た。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、混合溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは30nmであった。
[工程4]
次に、電子注入・輸送層5までの各層が形成された基板2を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
また、下記式(22)で示されるビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(Zn(BTZ)2)と、
下記式(23)で示されるトリス[1−フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq)3)と、
下記式(24)で示されるN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)と、
下記式(25)で示されるN4,N4’−ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)−N4,N4’−ジフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン(DBTPB)と、
Alとを、それぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。
Figure 2020068235
そして、真空蒸着装置内を約1×10-5Paの圧力となるまで減圧して、Zn(BTZ)2をホスト、Ir(piq)3をドーパントとして20nm共蒸着し、発光層6を成膜した。この時、ドープ濃度は、Ir(piq)3が発光層6全体に対して6質量%となるようにした。
次に、発光層6まで形成した基板2上に、DBTPBとα−NPDをそれぞれ10nmと30nmをそれぞれ蒸着することにより、正孔輸送層7を成膜した。
さらに、三酸化モリブデンMoO3を真空一貫で蒸着することにより成膜し、膜厚が10nmの正孔注入層8を形成した。
[工程5]
次に、正孔注入層8まで形成した基板2上に、アルミニウム(陽極9)を膜厚が100nmとなるように蒸着して、有機EL素子を得た。
(有機EL素子の発光特性測定)
全ての素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電圧を印加し、コニカミノルタ社製の「LS−100」を用いて輝度を測定した。その後、初期輝度を1000cd/m2として連続駆動し、経過時間に対する輝度の変化を調べた。
(逆構造有機EL素子におけるトリアジン構造を有する化合物からなる層の重要性)
図4(a)に実施例1、比較例1及び比較例2の輝度−電圧特性を示す。
式(19)で表わされるトリアジン構造を有する化合物の分子構造と、式(20)で表わされるベンゾチアゾール構造を有する化合物の分子構造と、の主な違いは、電子輸送部として、それぞれトリアジン構造又はベンゾチアゾール構造を持つことであるが、この違いがデバイス特性に現れている。即ち、電子注入・輸送層5がトリアジン構造を有する化合物から形成された実施例1は、低い電圧で駆動できているのに対し、比較例1の駆動電圧は高い。
さらに、図4(b)に示す外部量子効率にも、実施例1と比較例1との間で大きな差が観測された。実施例1では、15%程度の最大外部量子効率が得られているのに対し、比較例1では発光効率が極めて低い。このことから、トリアジン構造を有する化合物が電子注入・輸送に極めて有効であるといえる。
(トリアジン構造と組み合わせる置換基の重要性)
式(19)で表わされる化合物の分子構造と、式(21)で表わされる化合物の分子構造と、の主な違いは、トリアジン構造と組み合わせる置換基である。式(21)で表わされる化合物を用いた比較例2の特性は、実施例1に比べ駆動電圧も高く、発光効率も低い。この原因として、式(21)で表わされる化合物は、式(19)で表わされる化合物に比べ、イオン化エネルギーが小さいことが考えられる。表1に各材料のイオン化エネルギー・電子親和力を示す。
Figure 2020068235
式(21)で表わされる化合物は、電子供与性に優れるトリフェニルアミン骨格を有しており、このトリフェニルアミン骨格に局在化する最高占有軌道のエネルギーが小さくなり、素子においては正孔ブロック性が低下する。これにより、電子注入・輸送層5まで到達した正孔が陰極側に流れ込み、発光効率が低下したと考えられる。
一方、式(19)で表わされる化合物は、電子供与性が弱い置換基をトリアジン構造と組み合わせており、イオン化エネルギーが大きい。この大きなイオン化エネルギーが、素子内の効率的な正孔ブロックに繋がり、高い発光効率が得られたと考えられる。したがって、トリアジン構造と組み合わせるのは、式(19)で表わされる化合物のように電子供与性が弱い置換基が好適であることが分かる。
これらの結果から、図1に示す逆構造有機EL素子における電子注入・輸送層5に用いる材料として、トリアジン構造とその他の電子供与性が弱い置換基からなり、塗布成膜可能な材料が好適であることが分かる。
1:有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子
2:基板
3:陰極
4:金属酸化物層
5:電子注入・輸送層
6:発光層
7:正孔輸送層
8:正孔注入層
9:陽極

Claims (7)

  1. 基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記陰極と前記発光層との間に、下記式(1):
    Figure 2020068235
    [式(1)中のXは、下記式(2):
    Figure 2020068235
    中のRと任意の位置で結合しており、
    式(2)中の環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する、下記式(2a):
    Figure 2020068235
    で表される芳香環を表し、
    式(2)中の環B及び環B’は、隣接環と任意の位置で縮合する、下記式(2b−1)、式(2b−2)、式(2b−3):
    Figure 2020068235
    のいずれかで表される環構造を表し、
    式(1)、式(2a)、及び式(2b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよく、
    式(2)中のRであって、式(1)中のXと結合していないRは、独立に水素、又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数7〜20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族6員複素環基、ハロゲン基、及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよく、
    式(2)中のnは、1以上4以下の整数を示す。]で表されるトリアジン構造を有する化合物からなる層を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記トリアジン構造を有する化合物からなる層が、還元剤を含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記トリアジン構造を有する化合物からなる層が、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物を含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記陰極と前記発光層との間に、金属酸化物からなる電子注入層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記式(2)中の環B及び環B’は、一方が、隣接環と任意の位置で縮合する前記式(2b−1)で表される環構造を表し、もう一方が、隣接環と任意の位置で縮合する式(2b−2)で表される環構造を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、表示装置。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、照明装置。
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