以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
図1は、本実施形態のクレーン車10を示す。クレーン車10は、走行体11と、走行体11に搭載されたクレーン装置12及びキャビン13と、を主に備える。
キャビン13は、クレーン車10の運転を行う運転装置と、クレーン装置12の操縦を行う操縦装置15(図2)と、を有する。すなわち、クレーン車10は、クレーン車の運転とクレーン装置12の操縦とを1つのキャビン13で行うラフテレーンクレーンである。但し、クレーン車10は、運転装置を有するキャビンと、操縦装置15を有するキャビンとの2つのキャビンを備えたオールテレーンクレーンであってもよい。
また、キャビン13は、カメラ17及び不図示の制御ボックスを有する。制御ボックスは、不図示の制御基板を収容する。制御基板は、マイクロコンピュータや抵抗やコンデンサやダイオードや種々のICを実装されており、後述のコントローラ60(図2)を形成している。
カメラ17は、撮像素子を備えたデジタルカメラである。カメラ17は、撮像した画像の画像データを出力する。カメラ17は、コントローラ60と電気的に接続されており、コントローラ60からの指示によって撮像を行い、撮像によって得られた画像データをコントローラ60に入力する。
カメラ17は、保持装置14(図2)によって保持されている。保持装置14は、モータ23を有する。モータ23は、後述のコントローラ60から入力される駆動信号によって駆動され、カメラ17の撮像方向を変える。カメラ17は、向きを変えられることにより、後述のアウトリガ31、32に設けられた第1マーカ51(図3)及び後述のブーム44に設けられた第2マーカ52(図3)を撮像する。なお、保持装置14は、操縦者の手動によって、カメラ17の撮像方向を変えてもよい。
走行体11は、車体20を備える。車体20は、複数の車輪21を回転可能に保持している。車輪21は、車体20に搭載された不図示のエンジンによって回転駆動される。このエンジンは、油圧装置16(図2)が備える油圧ポンプを駆動する。油圧装置16は、車体20に搭載された旋回モータ33(図2)に作動油を供給し、旋回モータ33を駆動する。旋回モータ33は、後述のクレーン装置12の旋回台41を旋回させる。
また、走行体11は、車体20を安定に支持するアウトリガ31及びアウトリガ32を備える。アウトリガ31は、車体20の前部に設けられている。アウトリガ32は、車体20の後部に設けられている。アウトリガ31と、アウトリガ32とは、同構成である。
アウトリガ31、32は、外筒34、内筒35、油圧シリンダ36(図2)、及びジャッキシリンダ37を備える。外筒34及び内筒35は、車体20の幅方向(左右方向)に沿ってそれぞれ延びる角筒状である。内筒35は、外筒34の左右両側にそれぞれ配置されている。各内筒35は、外筒34の内側にそれぞれ配置されており、左右方向にスライド可能に外筒34に保持されている。内筒35は、スライドされることにより、外筒34に格納された格納位置と、外筒34から張り出した張出位置との間で変位する。
油圧シリンダ36は、油圧装置16から作動油を供給されて伸縮し、内筒35をスライドさせる。
ジャッキシリンダ37は、各内筒35の先端にそれぞれ設けられている。ジャッキシリンダ37は、油圧装置16から供給される作動油によって、地面から離間する離間位置と、地面に当接する接地位置との間で伸縮する。
図1は、アウトリガ31、32の各内筒35が張出位置であり、かつ、ジャッキシリンダ37が接地位置であって、アウトリガ31、32がクレーン車10を安定して支持している状態を示している。
図4に示されるように、第1マーカ51が、アウトリガ31、32にそれぞれ設けられている。なお、図1では、第1マーカ51及び第2マーカ52の図示が省略されている。
第1マーカ51は、例えば、プラスチックシートに表記された図形である。第1マーカ51は、内筒35の先端部やジャッキシリンダ37に設けられた貼付面にテープなどを用いて貼り付けられる。すなわち、第1マーカ51は、アウトリガ31、32の先端部に設けられている。第1マーカ51は、キャビン13に設置されたカメラ17によって撮像される。第1マーカ51を撮像して得られた画像データは、コントローラ60が座標系を決定する処理に用いられる。詳しくは後述される。
不図示のスイベルが、車体20とクレーン装置12の旋回台41との間に設けられている。油圧装置16が送出する作動油は、スイベルを通じてクレーン装置12に供給される。
クレーン装置12は、旋回台41と、ブーム装置42と、を備える。旋回台41は、車体20に旋回可能に支持されている。旋回台41は、上述の旋回モータ33によって旋回される。
ブーム装置42は、ブーム44と、起伏シリンダ43(図2)と、伸縮シリンダ45(図2)と、を有する。ブーム44は、旋回台41に起伏可能に支持されている。
起伏シリンダ43は、スイベルを通じて油圧装置16から供給された作動油によって伸縮し、ブーム44を起伏させる。
ブーム44は、基端ブーム46と、中間ブーム47と、先端ブーム48と、を有する。基端ブーム46、中間ブーム47、及び先端ブーム48は、入れ子状に配置されている。すなわち、ブーム44は、伸縮可能である。なお、ブーム44は、基端ブーム46及び先端ブーム48の2つのブームのみを有していてもよいし、複数の中間ブーム47を有していてもよい。
伸縮シリンダ45は、スイベルを通じて油圧装置16から供給された作動油によって伸縮し、ブーム44を伸縮させる。すなわち、ブーム44は、起伏可能であり、かつ、伸縮可能である。
また、ブーム装置42は、図2に示されるように、ウインチ49及びフック50を有する。ウインチ49は、スイベルを通じて油圧装置16から供給された作動油によって駆動する。ウインチ49は、駆動されることにより、不図示のロープを巻き取り、或いはロープを繰り出す。フック50は、当該ロープにとってブーム44の先端から吊下される。すなわち、ウインチ49は、フック50を昇降させる。
図4に示されるように、第2マーカ52が、ブーム44に設けられている。第2マーカ52は、例えば、プラスチックシートに表記された図形である。第2マーカ52の形状(図柄)及び第1マーカ51の形状(図柄)は、同一であってもよいし、それぞれ相違していてもよい。後述のコントローラ60が、カメラ17がどのマーカを撮像して得られた画像データであるかを判断可能であれば、各マーカ51、52の形状は、全て同一であってもよい。例えば、コントローラ60がカメラ17の向きを操作してマーカ17に向け撮像を行って画像データを得られる場合、各マーカ51、52は、同一の形状であってもよい。また、操縦者が、コントローラ60が指示する順番、或いは予め決められた順番にしたがってカメラ17の向きを操作して撮像を行う場合も、各マーカ51、52の形状は、同一であってよい。一方、操縦者がカメラ17を各マーカ51或いは各マーカ52にそれぞれランダムに向けて撮像を行って画像データをコントローラ60に入力する場合などは、各マーカ51、52は、それぞれ相違する形状とされる。コントローラ60は、入力された画像データが、どのマーカを撮像して得られた画像データであるかを、入力された画像データが示す形状から判断する。
なお、図4に示す例では、第2マーカ52は、基端ブーム46及び先端ブーム48に設けられている。しかしながら、第2マーカ52は、いずれのブーム46、47、48に設けられていてもよい。
第2マーカ52は、基端ブーム46及び先端ブーム48にそれぞれ設けられた貼付面にテープなどを用いて貼り付けられる。第2マーカ52は、キャビン13に設置されたカメラ17によって撮像される。第2マーカ52を撮像することによって得られた画像データは、コントローラ60がブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出する処理に用いられる。ブーム44の撓み量及び捻じれ量は、本発明の「変形量」の一例である。詳しくは後述される。
コントローラ60は、図2に示されるように、CPU61と、ROM62と、RAM63と、メモリ64と、不図示の通信バスとを備える。ROM62は、プログラム59を記憶する。プログラム59は、中央演算処理装置であるCPU61によって実行される。RAM63は、プログラム59が実行される際に、データなどを一時記憶する。メモリ64は、後述の性能データや基準画像データなどを記憶する。CPU61、ROM62、RAM63、及びメモリ64は、不図示の通信バスによって相互に接続されている。
コントローラ60は、操縦装置15と、カメラ17と、保持装置14と、油圧装置16が有する電磁弁等と接続されている。操縦装置15は、操縦者の操作を受け付ける操作レバーや操作ボタン等の他、ディスプレイ18及びスピーカ19を有する。
コントローラ60は、操縦装置15から、操縦者の操作に応じた操作信号を入力される。また、コントローラ60は、ディスプレイ18に画像信号を出力し、ディスプレイ18に画像を表示させ、スピーカ19に音声信号を出力し、スピーカ19に音声を出力させる。
また、コントローラ60は、油圧装置16の電磁弁等に駆動信号を出力し、旋回モータ33、油圧シリンダ36、ジャッキシリンダ37、起伏シリンダ43、伸縮シリンダ45、及びウインチ49に供給する作動油を制御し、旋回モータ33、油圧シリンダ36、ジャッキシリンダ37、起伏シリンダ43、伸縮シリンダ45、及びウインチ49の動作を制御する。すなわち、コントローラ60は、油圧装置16を通じて、アウトリガ31、32やクレーン装置12の動作を制御する。
また、コントローラ60は、センサ群65と接続されている。センサ群65は、例えば、ブーム44の起伏角度を検出する起伏角センサや、ブーム44の長さを検出するブーム長さセンサや、フック50が吊下する荷物の重量(以下、負荷と記載する)を検出する負荷センサや、旋回台41の旋回位置を検出する旋回角センサや、アウトリガ31、32の位置を検出するアウトリガセンサなどである。センサ群65が出力するセンサ信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60は、センサ群65から入力されたセンサ信号と、メモリに64に記憶された性能データとを用いて、クレーン装置12の駆動を許容し、或いは禁止する。或いは、コントローラ60は、ディスプレイ18やスピーカ19を用いて警告を報知する。
詳しく説明すると、メモリ64は、性能データを記憶する。性能データは、ブーム装置42の移動許容範囲を決定するデータである。性能データは、例えば、アウトリガ31、32の張出位置や負荷の大きさやブーム44の長さに応じたブーム44の起伏角の上限や下限を規定するデータである。或いは、性能データは、アウトリガ31、32の張出位置や負荷の大きさやブーム44の起伏角に応じたブーム44の長さの上限を規定するデータである。コントローラ60は、センサ群65から入力されるセンサ信号と、メモリ64に記憶された性能データと、操縦装置15から入力された操作信号とを用いて、クレーン装置12が性能データを超えるような操作信号が入力された場合に、ディスプレイ18やスピーカ19を用いて警告報知を行う。或いは、コントローラ60は、クレーン装置12の駆動を強制的に停止させる。上述のコントローラ60の処理により、クレーン装置12の安全性が確保される。
コントローラ60は、クレーン装置12の安全性を高めるため、ブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出し、算出した撓み量及び捻じれ量を用いて、メモリ64に記憶された性能データを補正する。以下、詳しく説明がされる。
メモリ64は、基準画像データを記憶する。基準画像データは、図3(A)に示されるマーカ51、52と正対する位置でマーカ51、52から所定の距離だけ離間する位置からマーカ51、52を撮像して得られる画像データに相当するデータである。マーカ51、52の形状がそれぞれ相違する場合は、設置されるマーカ51、52の数に応じた基準画像データがメモリ64に記憶される。マーカ51、52の形状が全て同じ場合は、一の基準画像データがメモリ64に記憶される。マーカ51、52が全て同じ形状である場合、一の基準画像データのみをメモリ64に記憶させればよく、複数種類の基本画像データをメモリ64に記憶させるよりも、メモリ64に記憶させるデータ量が低減する。
基準画像データは、カメラ17が第1マーカ51や第2マーカ52を撮像して得られた画像データ(図3(B))と比較される。以下、コントローラ60が、メモリ64に記憶された基準画像データ及び撮像によって得られた画像データを用いて撓み量や捻じれ量を決定して性能データを補正する処理について、図5を参照して説明がされる。メモリ64に記憶された基準画像データは、本発明の「第1基準画像データ」及び「第2基準画像データ」の一例である。
[性能データ補正処理]
コントローラ60は、カメラ17に撮像指示を入力し、アウトリガ31、32に設置された少なくとも3つの第1マーカ51(図4)をカメラ17にそれぞれ撮像させる(S11)。具体的に説明すると、コントローラ60は、カメラ17を保持する保持装置14のモータ23に駆動信号を入力し、カメラ17を第1マーカ51に向けた後、カメラ17に撮像指示を入力し、カメラ17に第1マーカ51を撮像させる。或いは、カメラ17が操縦者の手動によって第1マーカ51に向けられた後、操縦者が操縦装置15の操作ボタン等を用いて撮像を指示すると、コントローラ60は、撮像指示をカメラ17に入力する。カメラ17を第1マーカ51に向けて撮像させるステップS11の処理は、本発明の「第1撮像処理」の一例である。
撮像指示が入力されたカメラ17は、各第1マーカ51をそれぞれ撮像し、撮像によって得られた画像データ(以下、第1画像データと記載する)をコントローラ60に入力する。
コントローラ60は、カメラ17から第1画像データが入力されるまで待機する(S12:No)。コントローラ60は、カメラ17から第1画像データが入力されたと判断すると(S12:Yes)、カメラ17から第1マーカ51までの距離及び方向を決定する(S13)。具体的に説明すると、まず、コントローラ60は、基準画像データ(図3(A))をメモリ64から読み出して取得する。コントローラ60は、取得した基準画像データと、カメラ17から入力された第1画像データ(図3(B))とを比較し、カメラ17の設置位置から第1マーカ51までの距離及び方向を、パターンマッチングなどの画像解析技術を用いて、各第1マーカ51のそれぞれについて算出する。例えば、コントローラ60は、第1基準画像データに対する第1画像データの縮尺比と、第1基準画像データに対する第1画像データの縦横の歪み度合とを決定し、決定した縮尺比から距離を算出し、決定した歪み度合から方向を算出する。コントローラ60が第1画像データを受け付けるステップS12の処理は、本発明の「第1受付処理」の一例である。
コントローラ60は、決定した第1マーカ51までの距離及び方向に基づいて、クレーン車10を基準とした座標系を決定する(S14)。例えば、コントローラ60は、決定した3つの第1マーカ51の中心位置を原点とする座標系を決定する。コントローラ60は、例えば、マーカ型AR(Augmented Reality)技術を用いて座標系を決定する。すなわち、コントローラ60は、マーカ型ARプログラムをサブルーチンとして有していてもよい。コントローラ60は、決定した座標系を示す座標系データをメモリ64に記憶させる(S15)。座標系データが示す座標系は、本発明の「基準座標系」の一例である。座標系を決定してメモリ64に記憶するステップS14、S15の処理は、本発明の「座標系決定処理」の一例である。
次に、コントローラ60は、保持装置14のモータ23に駆動信号を入力し、カメラ17を第2マーカ52に向ける。そして、コントローラ60は、カメラ17に撮像指示を入力し、ブーム44に設置された2つの第2マーカ52(図4)をカメラ17にそれぞれ撮像させる(S16)。カメラ17による第2マーカ52の撮像は、第1マーカ51の撮像と同様にして行われる。カメラ17を第2マーカ52に向けて撮像させるステップS16の処理は、本発明の「第2撮像処理」の一例である。
撮像指示が入力されたカメラ17は、2つの第2マーカ52をそれぞれ撮像し、撮像によって得られた画像データ(以下、第2画像データと記載する)をコントローラ60に入力する。
コントローラ60は、カメラ17から第2画像データが入力されるまで待機する(S17:No)。コントローラ60は、カメラ17から第2画像データが入力されたと判断すると(S17:Yes)、メモリ64に記憶された座標系データが示す座標系における2つの第2マーカ52の座標位置をそれぞれ決定する(S18)。具体的には、コントローラ60は、カメラ17から第2マーカ52までの距離及び方向を上述の第1マーカ51と同様にして算出し、算出した距離及び方向に基づいて、第2マーカ52の座標位置を決定する。カメラ17から第2画像データの入力を受け付けるステップS17の処理は、本発明の「第2受付処理」の一例である。座標系における第2マーカ52の座標位置を決定するステップS18の処理は、本発明の「画像処理」の一例である。
コントローラ60は、決定した2つの第2マーカ52の位置に基づいて、ブーム44の撓み量を算出する(S19)。例えば、図6に示されるように、コントローラ60は、基端ブーム46に設置された第2マーカ52の座標位置と、センサ群65から入力された信号から決定したブーム44の起伏角及びブーム44の長さとに基づいて、ブーム44に撓みがない場合の先端ブーム48の第2マーカ52の仮想座標位置を決定し、決定した仮想座標位置と、ステップS18で決定した先端ブーム48の第2マーカ52の座標位置との差X(水平方向における差)を、撓み量として算出する。ブーム44の撓み量を算出するステップS19の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
また、コントローラ60は、ブーム44の捻じれ量を算出する(S19)。例えば、コントローラ60は、算出した第2マーカ52の座標位置に基づいて、ブーム44の捻じれ量を決定する。或いは、コントローラ60は、第2画像データと基準画像データとを対比し、2つの第2マーカ52の傾き度合を算出してもよい。傾き度合とは、例えば、第2マーカ52がカメラ17と正対する向きを基準とした第2マーカ52の傾きである。コントローラ60は、2つの第2マーカ52のそれぞれについて、傾き度合を算出する。そして、コントローラ60は、例えば、ブーム44が捻じれていない状態である場合の第2マーカ52の傾き度合と、算出した第2マーカ52の傾き度合と、算出した第2マーカ52までの距離とに基づいて、ブーム44の捻じれ量を算出する。なお、第2画像データに基づいてブーム44の捻じれ量を算出可能であれば、他の算出方法が用いられてもよい。ステップS19の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
コントローラ60は、図5に示されるように、算出した撓み量及び捻じれ量を用いて、メモリ64に記憶された性能データを補正し(S20)、性能データ補正処理を終了する。例えば、メモリ64は、撓み量及び捻じれ量と、補正値との対応が示されたテーブルや、撓み量及び捻じれ量から補正値を算出する計算式を記憶する。コントローラ60は、メモリ64に記憶されたテーブルや計算式を用いて、撓み量及び捻じれ量から補正値を算出する。例えば、コントローラ60は、撓み量が大きいほど、ブーム44の移動許容範囲が小さくなるように、性能データを補正する。性能データを補正するステップS20の処理は、本発明の「決定処理」の一例である。
なお、コントローラ60は、ステップS19において、撓み量と捻じれ量とのうちの一方のみを算出してもよい。そして、コントローラ60は、算出した撓み量又は捻じれ量を用いて、性能データを補正する。また、ステップS19において、コントローラ60は、撓み量及び捻じれ量を統合した変形量として算出してもよい。コントローラ60は、算出した変形量を用いて、性能データを補正する。例えば、ブーム44が、捻じれが比較的少ない箱型ブームである場合には、撓み量のみが算出される。ブーム44が、捻じれが生じやすいラウンドブームである場合には、撓み量及び捻じれ量、或いは変形量が算出される。
[ブーム制御処理]
コントローラ60は、性能データ補正処理の実行後、図7に示されるブーム制御処理を実行する。まず、コントローラ60は、操縦装置15からブーム装置42を操作する操作信号が入力するまで待機する(S31:No)。すなわち、ブーム制御処理は、操作信号の入力をトリガとして実行される。
コントローラ60は、操作信号が入力したと判断すると(S31:Yes)、入力した操作信号に基づいて、ブーム装置42の動作を開始させる(S32)。具体的には、コントローラ60は、制御信号を出力して、旋回モータ33、起伏シリンダ43、伸縮シリンダ45を駆動させる。
次に、コントローラ60は、センサ群65(旋回角センサ、起伏角センサ、ブーム長さセンサ)から入力される検出信号に基づいて、旋回台41の旋回位置、ブーム44の起伏角度、及びブーム44の伸長長さを検出する。コントローラ60は、検出した旋回位置におけるブーム44の起伏角度や伸長長さが、性能データ補正処理で決定した性能で決まる値に達したか否かを判断する(S33)。すなわち、ステップS33では、ブーム44が移動許容範囲の端まで到達したか否かが判断される。
コントローラ60は、ブーム44の起伏角度や伸長長さが、性能データ補正処理で決定した性能で決まる値に達していないと判断すると(S33:No)、操作信号の入力が停止したか否かを判断する(S34)。コントローラ60は、操作信号の入力が停止したと判断すると(S34:Yes)、ブーム装置42を通常停止させ(S35)、ブーム制御処理を終了する。通常停止とは、操作信号が入力されなくなったことに起因して、ブーム装置42を停止させることを指す。この場合においてコントローラ60は、操作信号が再び入力すると、ブーム制御処理を再び実行する。
コントローラ60は、ステップS34において、操作信号が継続して入力されていると判断すると(S34:No)、ステップS33の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ60は、入力された操作信号によってブーム装置42が動作されている間、ブーム44の起伏角度や伸長長さが性能データ補正処理で決定した性能で決まる値に達したか否かを継続して判断する(S33)。
コントローラ60は、ステップS33において、ブーム44の起伏角度や伸長長さが、性能データ補正処理で決定した性能で決まる値に達したと判断すると(S33:Yes)、ブーム装置42の停止を報知する(S36)。具体的には、コントローラ60は、ディスプレイ18に警告画面を表示し、或いは、スピーカ19に警告音を出力させる。その後、コントローラ60は、ブーム装置42を強制停止させ(S37)、ブーム制御処理を終了する。強制停止とは、操作信号が入力しているか否かに拘わらず、ブーム装置42を停止させることを指す。この場合において、コントローラ60は、例えば、強制停止を解除する不図示のスイッチが操作されるまで、操作信号が入力されてもブーム制御処理を実行しない。
[実施形態の作用効果]
本実施形態のクレーン車10は、カメラ17とマーカ51、52とを用いた簡単な構成で、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出することができる。
また、本実施形態のクレーン車10は、第1マーカ51を用いて座標系を決定するので、クレーン車10の種類に応じた座標系を予めメモリ64に記憶させる必要がない。したがって、本実施形態のクレーン車10は、種々のクレーン車に汎用的に使用可能なコントローラ60を用いることができる。
また、本実施形態のクレーン車10は、第1マーカ51を用いて座標系を決定するので、メモリ64に座標系を予め記憶する場合に比べ、算出する撓み量や捻じれ量や変形量の精度を高めることができる。
また、第1マーカ51は、車体20の変形の影響を受けにくいアウトリガ31、32に設けられる。したがって、本実施形態のクレーン車10は、算出する撓み量や捻じれ量や変形量の精度をさらに高めることができる。詳しく説明すると、車体20は、温度や湿度や直射日光の影響を受けて変形する。アウトリガ31、32の変形の度合は、車体20の変形の度合よりも小さい。変形の度合が小さいアウトリガ31、32に第1マーカ51が設けられることにより、設定する座標系の精度が高くなる。設定する座標系の精度が高くなることにより、算出する撓み量や捻じれ量や変形量の精度が高くなる。
また、コントローラ60は、保持装置14を駆動してカメラ17の向きを変え、カメラ17に第1マーカ51及び第2マーカ52を撮像させる。したがって、操縦者がカメラ17の向きを変える必要がない。すなわち、操縦者の手間が省かれる。その結果、クレーン車10の使い勝手が良くなる。
また、本実施形態のクレーン車10は、撓み量や捻じれ量や変形量が大きいほど、ブーム44の移動許容範囲が小さくなるように性能データを補正するので、より安全にクレーン装置12を動作させることができる。
[変形例1]
上述の実施形態では、マーカ51、52を用いて撓み量や捻じれ量や変形量を算出する例が説明された。本変形例では、マーカ51、52を用いずに、撓み量や捻じれ量や変形量を算出する例が説明される。すなわち、本変形例のクレーン車10は、マーカ型のAR技術ではなく、マーカレス型のAR技術を用いてブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。
メモリ64は、第1マーカ51の基準画像データに代えて、張り出されたアウトリガ31、32を撮像した第1基準画像データを予め記憶する。また、メモリ64は、第2マーカ52の基準画像データに代えて、所定の起伏角で起伏し、かつ、所定の長さで伸長されたブーム44を撮像した画像データを第2基準画像データとして予め記憶する。その他の構成は、上述の実施形態と同一である。
以下、図5を参照して、本変形例のコントローラ60が実行する処理について説明がされる。
コントローラ60は、ステップS11において、アウトリガ31、32の撮像を指示する撮像指示をカメラ17に入力する。コントローラ60は、ステップS12で、アウトリガ31、32を撮像することによって得られた第1画像データを取得する。第1画像データを取得するステップS12の処理は、本発明の「受付処理」の一例である。
コントローラ60は、取得した第1画像データと、メモリ64に記憶された第1基準画像データとを対比し、実施形態と同様にして、アウトリガ31、32の先端部までの距離及び方向を算出する。アウトリガ31、32の先端部は、本発明の「第1検出部位」の一例である。
コントローラ60は、算出したアウトリガ31、32の先端部までの距離及び方向により、座標系を決定し(S14)、決定した座標系を示す座標系データをメモリ64に記憶させる(S15)。なお、ステップS15の処理に代えて、座標系がメモリ64に予め記憶されていてもよい。
次に、コントローラ60は、ステップS16において、ブーム44の撮像を指示する撮像指示をカメラ17に入力する。コントローラ60は、ステップS17で、ブーム44を撮像することによって得られた第2画像データを取得する。コントローラ60は、取得した第2画像データと、メモリ64に記憶された第2基準画像データとを用い、実施形態と同様にして、ブーム44の2つの検出部位までの距離及び方向を算出する。2つの検出部位は、例えば、基端ブーム46及び先端ブーム48である。コントローラ60は、算出した距離及び方向により、ブーム44の2つの検出部位の座標位置を決定する(S18)。ステップS18の処理は、本発明の「画像処理」の一例である。
コントローラ60は、決定したブーム44の座標位置を用い、上述の実施形態と同様にして、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する(S19)。また、コントローラ60は、算出した撓み量や捻じれ量や変形量を用いて、メモリ64に記憶された性能データを補正し、処理を終了する。ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出するステップS19の処理は、本発明の「算出処理」の一例である。
[変形例1の作用効果]
本変形例のクレーン車10は、マーカ51、52を用いないので、実施形態よりも、さらに容易な構成でブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出することができる。
[変形例2]
上述の実施形態では、キャビン13に設けられたカメラ17と、ブーム44に設けられた2つの第2マーカ52とを用いて、コントローラ60が撓み量や捻じれ量を算出する例が説明された。本変形例では、図8が示すように、ブーム44の先端部に設けられたカメラ17と、ブーム44の基端部に設けられた1つの第2マーカ52とを用いて、コントローラ60が撓み量及び捻じれ量を算出する例が説明される。なお、カメラ17及び第2マーカ52以外の構成は、上述の実施形態と同じである。また、以下で説明される処理以外の処理は、上述の実施形態と同じである。
第2マーカ52は、ブーム44の基端部に設けられている。第2マーカ52は、例えば、ブーム44の基端部に取り付けられた貼付部材に貼り付けられることにより、設置される。第2マーカ52は、ブーム44の先端部に正対する向きに設置される。
カメラ17は、ブーム44の先端部に設けられている。カメラ17は、例えば、ブーム44の先端部に取り付けられた設置台に固定、或いは、回動可能に保持されている。カメラ17は、例えば、ブーム44が吊下する吊荷等を撮像するカメラとしても利用される場合に、回動可能に設けられる。カメラ17は、ブーム44が撓んだり捻じれたりしていない状態で第2マーカ52に正対する位置及び向きに設けられている。
コントローラ60は、図5が示す性能データ補正処理のステップS19において、ブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出する。コントローラ60は、例えば、上述の実施形態における2つの第2マーカ52のうちの一方の第2マーカ52の座標位置をカメラ17の座標位置として、実施形態と同様にして撓み量及び捻じれ量を算出する。カメラ17の座標位置は、センサ群65(旋回角センサ、起伏角センサ、ブーム長さセンサ)から入力される検出信号に基づいて、決定される。
或いは、コントローラ60は、ステップS18において第2マーカ52の座標位置を決定する代わりに、算出した第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合と、ブーム44が変形していない場合における第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合とを対比し、ブーム44の撓み量及び捻じれ量を算出してもよい。ブーム44が変形していない場合における第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合は、メモリ64に予め記憶されていてもよいし、或いは、吊荷を吊下していない状態においてカメラ17が第2マーカ52を撮像することによって得られた第2画像データから算出した第2マーカ52までの距離及び第2マーカ52の傾き度合が用いられてもよい。なお、カメラ17が撮像した第2画像データに基づいてブーム44の撓み量や捻じれ量を算出可能であれば、他の算出方法が用いられてもよい。
[変形例2の作用効果]
本変形例では、ブーム44の基端部に設置された1つの第2マーカ52のみを撮像して撓み量及び捻じれ量を算出するので、複数の第2マーカ52を撮像して撓み量及び捻じれ量を算出する場合に比べ、コントローラ60のCPU61の演算回数が低減する。したがって、撓み量や捻じれ量の算出に要する時間が短くなり、ブーム44の変形に応じて即座に性能データを補正することができる。その結果、クレーン車10の安全性がさらに向上する。
また、本変形例では、吊荷を撮像するカメラ17を利用して第2マーカ52を撮像することができるので、新たにカメラを設ける必要がない。その結果、クレーン車10の部品点数が低減する。
また、本変形例では、1つの第2マーカ52のみでブーム44の撓み量及び捻じれ量が算出されるので、第2マーカ52を設置する手間が低減する。
本変形例では、第2マーカ52がブーム44の基端部に設けられ、カメラ17がブーム44の先端部に設けられた例が説明された。しかしながら、第2マーカ52がブーム44の先端部に設けられ、カメラ17がブーム44の基端部に設けられていてもよい。
また、上述の実施形態と同様に、コントローラ60は、ステップS19において、撓み量と捻じれ量との一方のみを算出してもよいし、撓み量及び捻じれ量を統合した変形量として算出してもよい。
[その他の変形例]
上述の実施形態のクレーン車10は、ブーム44の撓み量を算出する。しかしながら、クレーン車10は、ブーム44の撓み量に加え、ブーム44に取り付けられるジブの撓み量を算出してもよい。その場合、第2マーカ52は、ジブの先端部にも設けられる。クレーン車10は、算出したブーム44及びジブの撓み量を用いて、性能データを補正する。
また、上述の実施形態のクレーン車10は、アウトリガ31、32に設置した第1マーカ51を撮像して得られた第1画像データを用いて座標系を決定する。しかしながら、座標系は、メモリ64に予め記憶されていてもよい。クレーン車10は、座標系をメモリ64に予め記憶しておくことにより、第1マーカ51を撮像して座標系を決定する処理を省略することができる。
また、上述の実施形態では、第1マーカ51がアウトリガ31、32に設置された例が説明された。しかしながら、第1マーカ51は、アウトリガ31、32ではなく、車体20に設けられていてもよい。
また、上述の実施形態のクレーン車10は、第2マーカ52を撮像することによって得られた第2画像データと、センサ群65によって検出したブーム44の起伏角とを用いて、撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。しかしながら、クレーン車10は、第2画像データのみを用いて撓み量や捻じれ量や変形量を算出してもよい。詳しく説明すると、座標系における基端ブーム46と旋回台41との接続位置の座標位置を示す座標データが、メモリ64に予め記憶される。コントローラ60は、接続位置の座標位置と、2つの第2マーカ52の座標位置とを用いて、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。或いは、3つ以上の第2マーカ52がブーム44に設けられる。コントローラ60は、3つの第2マーカ52の座標位置を決定し、決定した3つの第2マーカ52の座標位置に基づいて、ブーム44の撓み量や捻じれ量や変形量を算出する。