JP2020063426A - 水生生物付着抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】水生生物付着抑制効果の低下が見られず、長期に渡り高い効果を持続する膜を形成するための水生生物付着抑制膜、及び該膜の形成方法に関すること。【解決手段】セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制剤;並びに該水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法。【選択図】なし

Description

本発明は水生生物付着抑制剤に関する。
従来より船舶などの水中構造物の水に接する部分では、フジツボ、カキ、ムラサキガイ、ヒドラ、セルプラ、ホヤ、コケムシ、アオサ、アオノリ、付着珪藻など水生生物が付着して繁殖し、流体抵抗の増加や熱伝導性の低下といった設備機械性能の低下等様々な問題を引き起こしていた。更に、付着した水生生物を除去する作業に大きな労力と膨大な時間がかかり、多大な経済的損失が生じていた。
かかる課題に対し、従来より有機スズ化合物や亜酸化銅など毒性防汚剤が含まれた防汚塗料で水中構造物の表面を処理する対策が行われていた。かかる対策は、防汚塗料中の毒性成分が染み出し、水生生物を殺すことにより被害を防ぐ方法である。
しかし、有機スズ化合物や亜酸化銅など毒性成分は少なからず人体や環境に悪影響を及ぼすために、長期的に見れば深刻な問題となり得るという課題がある。
一方、かかる対策とは別に、特許文献1ではシリコーン樹脂の3次元ネットワークに防汚剤を含浸させたゲルによって、特許文献2では、微細な凹凸構造に潤滑油を保持させた表面により、高い水中生物の付着抑制効果が示されている。
特開2013−147629号公報 特開2018−039266号公報
しかしながら、特許文献1、2の技術では、防汚剤や潤滑油といった生物付着に働く剤が表面に染み出すことによって機能を発現するため、防汚剤や潤滑油が枯渇してしまうと効果を損なうという課題があった。
そこで、防汚剤や潤滑油の枯渇による水生生物付着抑制効果の低下が見られず、長期に渡り高い効果を持続する膜や、膜を形成するための抑制剤の検討を進めたところ、I型結晶構造を有する特定の疎水変性セルロース繊維が、高い水生生物付着抑制効果を発揮することを見出した。更に本発明者らは検討を進め、この疎水変性セルロース繊維に有機媒体を混合させた膜においても、有機媒体の保持力に優れ、環境下に排出されず、長期に渡り高い効果が持続可能であることを見出した。
本発明は、下記の〔1〕〜〔7〕に関する。
〔1〕 セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制剤。
〔2〕 さらに有機媒体を含有する、前記〔1〕に記載の水生生物付着抑制剤。
〔3〕 さらに、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物(但し、硬化性樹脂ではない)を含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の水生生物付着抑制剤。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子
〔4〕 さらに、硬化性樹脂を含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法。
〔6〕 セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制膜。
〔7〕 前記〔6〕に記載の水生生物付着抑制膜を有する成形体。
本発明の水生生物付着抑制膜は、水生生物付着抑制効果が長期間持続する効果や、抑制膜に付着した水生生物を容易に除去できる効果を発揮する。本発明の水生生物付着抑制剤は、成形体に塗布するだけで、かかる水生生物付着抑制膜を該成形体表面に容易に形成させることができる効果を発揮する。
図1は、海水中での1ヶ月間の浸漬試験後の基板表面の表面状態を示す写真である。図1中、Aは実施例1に、Bは比較例1に、Cは比較例2に、そしてDは比較例3にそれぞれ対応する。
[水生生物付着抑制剤]
本発明の水生生物付着抑制剤は、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する。
本明細書における「水生生物」とは、水中に生息する植物・動物であれば特に限定されず、例えば、コンブ等の水中植物や、フジツボ、カサネカンザシ、ムラサキガイ、ホヤ等の水中動物を挙げることができる。
<疎水変性セルロース繊維>
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるものであって、該疎水変性セルロース繊維はI型結晶構造を有するものである。疎水変性セルロース繊維は、有機媒体、好ましくはSP値10以下の油に分散性を示すものが、より好ましい。SP値10以下の油に対して分散性を有するとは、例えば、油と対象の疎水変性セルロース繊維との混合液の粘度をE型粘度計(25℃、1rpm、1分後、標準コーンロータ、ロータコード:01)を用いて測定した場合、増粘が観測されることをいう。例えば、本発明における疎水変性セルロースとしては、SP値10以下の油の代表例としてスクアラン中にセルロース繊維の含有量を0.5質量%になるように調製した液の微細化処理後の分散液粘度が50mPa・s以上になるものが好ましい。なお、微細化処理は、後述の方法により行うことができる。
疎水変性セルロース繊維としては、例えば、アニオン性基を有するセルロース繊維(以下、「アニオン変性セルロース繊維」とも言う。)のアニオン性基に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維(A)や、セルロース繊維表面の水酸基に修飾基がエーテル結合されてなる疎水変性セルロース繊維(B)(以下、「エーテル化セルロース繊維」とも言う。)が挙げられ、本発明の効果がより発揮できる観点から、好ましくは、疎水変性セルロース繊維(A)である。
(セルロース繊維)
疎水変性セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは1μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下である。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、好ましくは100μm以上であり、好ましくは5,000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
<疎水変性セルロース繊維(A)>
本発明における疎水変性セルロース繊維(A)とは、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に、修飾基を導入するための化合物が結合してなるセルロース繊維である。
(アニオン変性セルロース繊維)
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、セルロース繊維への導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
(アニオン性基含有量)
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
また、アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比の好適な範囲は、微細化処理後の疎水変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比の好ましい範囲と同じである。また、後述の実施例に記載の測定方法により求めることができる。
(アニオン性基を導入する工程)
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、少なくとも1つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
アニオン変性の対象となるセルロース繊維としては、原料のセルロース繊維が挙げられる。分散性の観点から、原料のセルロース繊維を、アルカリ加水分解処理や酸加水分解処理等で短繊維化処理した平均繊維長が1μm以上であり、1,000μm以下であるセルロース繊維を用いることが好ましい。
以下、(i)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合と、(ii)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又はリン酸基を導入する場合とに分けてより具体的に説明する。
(i)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合
セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
(酸化セルロース繊維)
本明細書において、カルボキシ基を有するセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」と称する。酸化セルロース繊維は、例えば、触媒として2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して、セルロース繊維の水酸基をカルボキシ基に酸化する方法を適用することにより、製造することができる。より詳細には、特開2011−140632号公報に記載の方法を参照することができ、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。酸化セルロース繊維は、それ以外のアニオン変性セルロース繊維と比べて、有機媒体の外部への移行抑制の観点から好ましい。
(ii)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又はリン酸基を導入する場合
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
セルロース繊維にアニオン性基としてリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
(修飾基)
本明細書において、疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合とは、セルロース繊維表面のアニオン性基に、好ましくはカルボキシ基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合している状態のことを意味する。アニオン性基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、油の流動物への移行抑制の観点から、好ましくはアミド結合である。有機媒体の外部への移行抑制の観点から、本発明における疎水変性セルロース繊維(A)としては、セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基に、修飾基を導入するための化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られるものが好ましい。
(修飾基を導入するための化合物)
修飾基を導入するための化合物としては、後述の修飾基を導入可能なものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。修飾基を導入するための化合物としてのアミノ変性シリコーン化合物も、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、のいずれでもよい。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられる。
共有結合の場合は置換される官能基によって以下のものを用いることができる。
カルボキシ基への修飾においては、アミド結合の場合は、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよい。エステル結合の場合は、アルコールがよく、例えば、ブタノール、オクタノール、ドデカノールが例示される。ウレタン結合の場合は、イソシアネート化合物がよい。
疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基としては、炭化水素基等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上が組み合わさって、セルロース繊維に結合(導入)されてもよい。
(炭化水素基)
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、付着抑制効果の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの修飾基における炭素数のことを意味する。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、イソプレニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基が挙げられる。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。
前記炭化水素基を導入するための第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、酸無水物、イソシアネート化合物は、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。
第1〜3級アミンとしては、付着抑制性の観点から、炭素数が好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、炭素数が好ましくは20以下であり、より好ましくは18以下であり、更に好ましくは16以下である(ただし、アミノ変性シリコーン化合物を除く。)。第1〜3級アミンの具体例としては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、及びベンジルアミン、並びにアミノ変性シリコーン化合物等が挙げられる。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。これらの中では、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミン、アミノ変性シリコーン化合物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、アニリン、より好ましくはプロピルアミン、ドデシルアミン、アミノ変性シリコーン化合物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、アニリンであり、更に好ましくはアミノ変性シリコーン化合物である。
これらの化合物の中で、とりわけアミノ変性シリコーン化合物を用いて得られた疎水変性セルロース繊維が、水生生物付着抑制膜の原料として有用である。従って、本発明の一態様として、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にアミノ変性シリコーン化合物が結合されてなる疎水変性セルロース繊維が提供される。かかる疎水変性セルロース繊維を水生生物付着抑制膜とした場合、優れた付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制性という効果を発揮することができる。
(アミノ変性シリコーン化合物)
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10〜20,000mm/s、アミノ当量400〜8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、より好ましくは200〜10,000mm/s、更に好ましくは500〜5,000mm/sである。
また、アミノ当量は、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは400〜8,000g/mol、より好ましくは600〜5,000g/mol、更に好ましくは800〜3,000g/molである。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=質量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーン化合物の具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
〔式中、R1aは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、同様の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、xは好ましくは10〜10,000の数、より好ましくは20〜5,000の数、更に好ましくは30〜3,000の数である。yは好ましくは1〜1,000の数、より好ましくは1〜500の数、更に好ましくは1〜200の数である。一般式(a1)の化合物の質量平均分子量は、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは8,000〜50,000である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
−C−NH
−C−NH−C−NH
−C−NH−[C−NH]−C−NH
−C−NH(CH
−C−NH−C−NH(CH
−C−NH−[C−NH]−C−NH(CH
−C−N(CH
−C−N(CH)−C−N(CH
−C−N(CH)−[C−N(CH)]−C−N(CH
−C−NH−cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1〜30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーン化合物は、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80〜110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53−98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーン化合物としては、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが−C−NHで表される化合物〔以下、(a1−1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが−C−NH−C−NHで表される化合物〔以下、(a1−2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
本発明におけるアミノ変性シリコーン化合物としては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSS−3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16−209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16−892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16−898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ−3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、信越化学工業(株)製のKF8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF−864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、BY16−213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16−853U(動粘度:14、アミノ当量:450)が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(a1−1)成分としては、BY16−213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16−853U(動粘度:14、アミノ当量:450)がより好ましい。
(a1−2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16−209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ−3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SS−3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)がより好ましい。
なお、前記修飾基は更に置換基を有するものであってもよく、例えば、炭化水素基の場合、置換基を含めた修飾基全体の総炭素数が前記範囲内となるものが好ましい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1〜6のアルコキシ−カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1〜6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基が挙げられる。なお、前記した炭化水素基そのものが置換基として結合していてもよい。
疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合量は、セルロース繊維あたり、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは0.01mmol/g以上であり、より好ましくは0.05mmol/g以上であり、更に好ましくは0.1mmol/g以上であり、更に好ましくは0.3mmol/g以上であり、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2.5mmol/g以下であり、更に好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下であり、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。ここで、修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時にセルロース繊維に導入されている場合、修飾基の結合量は、導入されている修飾基の合計量が前記範囲内であることが好ましい。
疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の導入率は、いずれの修飾基についても、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは30mol%以上であり、更に好ましくは50mol%以上であり、更に好ましくは60mol%以上であり、更に好ましくは70mol%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99mol%以下であり、より好ましくは97mol%以下であり、更に好ましくは95mol%以下であり、更に好ましくは90mol%以下である。ここで、修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時にセルロース繊維に導入されている場合、導入率の合計は、上限の100mol%を超えない範囲において、前記範囲内であることが好ましい。
本明細書において、疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合量及び導入率は、修飾基を導入するための化合物の添加量や種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。修飾基の結合量(mmol/g)及び導入率(mol%)とは、疎水変性セルロース繊維(A)の表面のアニオン性基に修飾基が導入された量及び割合のことである。疎水変性セルロース繊維(A)のアニオン性基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出できる。疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合量及び導入率は、例えば、実施例に記載された方法で算出される。
<疎水変性セルロース繊維(A)の製造方法>
疎水変性セルロース繊維(A)は、例えば、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、アニオン性基がカルボキシ基の場合、特開2018−024967号公報の段落0017〜0106等を参照して疎水変性セルロース繊維(A)を製造することができる。なお、疎水変性セルロース繊維(A)の製造の際には、特開2018−024967号公報における低アスペクト比化処理や微細化工程を省略することができる。
<疎水変性セルロース繊維(B)(エーテル化セルロース繊維)>
本発明における疎水変性セルロース繊維(B)(エーテル化セルロース繊維とも言う)は、セルロース繊維表面に修飾基がエーテル結合を介して結合していることを特徴とし、セルロースI型結晶構造を有するものである。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維表面の水酸基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
エーテル化セルロース繊維における修飾基は、好ましくは「置換基を有していてもよい炭化水素基」である。ここで、置換基を有してもよい炭化水素基において、炭化水素基としては、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、又はシクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。また、本発明における置換基を有してもよい炭化水素基において、置換基としては、ハロゲン原子、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基及び水酸基等が挙げられる。
このようなエーテル化セルロース繊維の好適な態様(「態様1」とする)として、例えば、下記一般式(1)で表される修飾基及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基がエーテル結合を介してセルロース繊維に結合しており、セルロースI型結晶構造を有するものが挙げられる。
−CH−CH(R)−R (1)
−CH−CH(R)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRは水素原子又は水酸基を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す。〕
態様1の具体例としては、例えば、下記一般式(4)で表されるエーテル化セルロース繊維が例示される。
〔式中、Rは同一又は異なって、水素原子、もしくは前記一般式(1)で表される修飾基及び前記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる修飾基を示し、mは20以上3000以下の整数が好ましく、但し、全てのRが同時に水素原子である場合を除く〕
一般式(4)で表されるエーテル化セルロース繊維は、前記修飾基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有するものである。繰り返し構造の繰り返し数として、一般式(4)におけるmは、付着抑制効果の観点から20以上3000以下の整数が好ましい。
(置換基を有していてもよい炭化水素基)
態様1のエーテル化セルロース繊維は、前記の一般式(1)及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基を単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基は同一の修飾基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
付着抑制効果の観点から、一般式(1)及び一般式(2)におけるRは水酸基が好ましい。
一般式(1)におけるRの炭素数は、付着抑制性の観点から、好ましくは25以下である。具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、トリアコンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、クレジル基、メトキシフェニル基、トリチル基、ナフチル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基等が例示される。
一般式(2)におけるRの炭素数は、付着抑制性の観点から、好ましくは4以上であり、付着抑制性、入手性及び反応性向上の観点から、好ましくは27以下である。具体的には、前記した一般式(1)におけるRと同じものが挙げられる。
一般式(2)におけるAは、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は、付着抑制性、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が例示される。
一般式(2)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは、付着抑制性、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下である。
一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、付着抑制性の観点から、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせである。
一般式(1)で表される修飾基の具体例としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、2−エチルヘキシルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イソオクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、トリアコンチルヒドロキシエチル基等が挙げられる。
一般式(2)で表される修飾基の具体例としては、例えば、3−ブトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル−3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル−3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は0以上50以下であればよく、例えば、前記したエチレンオキシド等のオキシアルキレン基を有する修飾基において付加モル数が10、12、13、20モルの修飾基が例示される。
(モル置換度(MS))
エーテル化セルロース繊維において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する修飾基が導入されたモル量(モル置換度:MS)は、修飾基の種類により一概には限定できないが、付着抑制性の観点から、好ましくは0.0001以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1.5以下である。ここで、修飾基として、一般式(1)で表される修飾基と一般式(2)で表される修飾基のいずれもが導入されている場合は、合計したMSのことである。なお、本明細書において、エーテル化セルロース繊維における修飾基のMSは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、無水グルコースユニットを「AGU」と略記する場合がある。AGUはセルロースがすべて無水グルコースユニットで構成されていると仮定して算出される。
(平均繊維径)
本発明におけるエーテル化セルロース繊維としては、修飾基の種類に関係なく、平均繊維径に特に限定はない。例えば、平均繊維径がマイクロオーダーの態様、平均繊維径がナノオーダーの態様が例示される。
マイクロオーダーの態様のエーテル化セルロース繊維は、付着抑制性、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは5μm以上である。また、上限は特に設定されないが、付着抑制性、取扱い性の観点から、好ましくは100μm以下である。なお、本明細書において、マイクロオーダーのセルロース繊維の平均繊維径は、原料のセルロース繊維の平均繊維径と同じ方法で測定することができる。
ナノオーダーの態様のエーテル化セルロース繊維は、付着抑制性、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは1nm以上であり、付着抑制性及び取扱い性の観点から、好ましくは500nm以下である。なお、本明細書において、ナノオーダーのセルロース繊維の平均繊維径は、微細化処理後の疎水変性セルロース繊維の平均繊維径と同じ方法で測定することができる。
[エーテル化セルロース繊維の製造方法]
本発明におけるエーテル化セルロース繊維は、上記したようにセルロース繊維表面に、修飾基、好ましくは前記の置換基を有していてもよい炭化水素基がエーテル結合を介して結合しているが、修飾基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。以下、態様1のエーテル化セルロース繊維を製造する方法の具体的な例を説明する。
態様1のエーテル化セルロース繊維の製造方法の具体例として、上記の原料のセルロース繊維に対し、塩基存在下、特定の化合物を反応させる態様が挙げられる。
また、製造工程数低減の観点から、あらかじめ微細化されたセルロース繊維を原料のセルロース繊維として用いてよく、その場合の平均繊維径は、入手性およびコストの観点から、好ましくは1nm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは500nm以下である。
(塩基)
本製造方法においては、前記原料のセルロース繊維に塩基を混合する。
塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
塩基の量は、原料のセルロース繊維の無水グルコースユニットに対して、エーテル化反応を進行させる観点から、好ましくは0.01当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下である。
なお、前記原料のセルロース繊維と塩基の混合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
原料のセルロース繊維と塩基の混合は、均一に混合できるのであれば、温度や時間は特に制限はない。
次に、前記で得られた原料のセルロース繊維と塩基の混合物に、修飾用化合物(本明細書において「エーテル化剤」ともいう)、好ましくは置換基を有していてもよい炭化水素基を導入するための化合物を添加して、原料のセルロース繊維とかかる化合物とを反応させる。かかる化合物としては、反応性を有する環状構造基を有する化合物を用いることが好ましく、エポキシ基を有する化合物を用いることがより好ましい。
一般式(1)で表される修飾基をエーテル結合を介して結合させることができる化合物としては、例えば、特開2017−053077号公報の段落0079〜0084に記載の酸化アルキレン化合物が挙げられる。
一般式(2)で表される修飾基をエーテル結合を介して結合させることができる化合物としては、例えば、特開2017−053077号公報の段落0085〜0091に記載のグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
修飾用化合物の量は、得られる疎水変性セルロース繊維(B)における修飾基の所望のMSにより決めることができるが、反応性の観点から、原料のセルロース繊維の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下である。
(エーテル化反応)
前記化合物と原料のセルロース繊維とのエーテル化反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。エーテル化反応の詳細については、特開2017−053077号公報の段落0070〜0075の記載を参照することができる。
このようにして得られた疎水変性セルロース繊維(B)を、公知の微細化処理、例えば、有機溶媒中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行ってもよい。
上記の疎水変性セルロース繊維(A)及び(B)のいずれに関しても、得られた疎水変性セルロース繊維は、上記後処理を行った後の分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の疎水変性セルロース繊維を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、疎水変性セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
粉末状の疎水変性セルロース繊維としては、例えば、前記セルロース繊維の分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記セルロース繊維の分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記セルロース繊維の分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記セルロース繊維の分散液を大気中で噴霧し、乾燥させる方法である。
<疎水変性セルロース繊維の特性>
疎水変性セルロース繊維の結晶化度は、付着抑制性発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
得られた微細化処理後の疎水変性セルロース繊維(「微細セルロース繊維」とも言う。)の平均繊維径は、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1nm以上、更に好ましくは2nm以上、より更に好ましくは3nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは6nm以下、より更に好ましくは5nm以下である。
得られた微細セルロース繊維の長さ(平均繊維長)としては、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは750nm以下、更に好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。
また、得られた微細セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長/繊維径)は、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは40以上、更に好ましくは50以上であり、同様の観点から、好ましくは150以下、より好ましくは140以下、更に好ましくは130以下、更に好ましくは100以下、更に好ましくは95以下、更に好ましくは90以下である。また、平均アスペクト比が上記範囲内にある場合、アスペクト比の標準偏差としては、付着抑制性及び有機媒体の外部への移行抑制の観点から、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは45以下であり、下限は特に設定されないが、経済性の観点から、好ましくは4以上である。前記低アスペクト比の微細セルロース繊維は、水生生物付着抑制剤中での分散性に優れ、機械的強度が高く、脆性破壊し難い膜が得られる。
平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の測定方法により求めることができる。
なお、本発明において、セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、前記の範囲に限定されるものではなく、例えばマイクロメーターのオーダーのものであっても使用することができる。
水生生物付着抑制剤における疎水変性セルロース繊維の含有量は、有機媒体の外部への移行抑制及び耐久性の観点から、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、更に好ましくは0.4質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
本発明の水生生物付着抑制剤は、前述の疎水変性セルロース繊維の他に、有機媒体、特定の高分子化合物、溶媒及びその他の成分からなる群より選択される1種以上の成分をさらに含有していてもよい。
<有機媒体>
本発明においては、有機媒体、好ましくはSP値が10以下の油を、水生生物付着抑制剤又は水生生物付着抑制膜を構成する潤滑油として含有することが好ましい。かかる有機媒体を使用することによって、水生生物付着抑制作用がより強く発揮できるため、好ましい。
本明細書におけるSP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition(A Wiley−Interscience publication, 1989)等に記載されている。
有機媒体の質量平均分子量には特に制限はないが、好ましくは100以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下である。
本発明で使用される有機媒体としては、例えば、オレイン酸(SP値:9.2)、D−リモネン(SP値:9.4)、PEG400(SP値:9.4)、コハク酸ジメチル(SP値:9.9)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)、ラウリン酸ヘキシル(SP値:8.6)、ラウリン酸イソプロピル(SP値8.5)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値8.5)、パルミチン酸イソプロピル(SP値8.5)、オレイン酸イソプロピル(SP値:8.6)、ヘキサデカン(SP値:8.0)、オリーブ油(SP値:9.3)、ホホバ油(SP値:8.6)、スクアラン(SP値:7.9)、流動パラフィン(SP値:7.9)、フッ素系不活性液体(例えば、フロリナートFC−40(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC−43(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC−72(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC−770(3M社製、SP値:6.1))、シリコーンオイル(例えば、KF96−1cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−10cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−50cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−100cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−1000cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−10000cs(信越化学社製、SP値:7.3))等が挙げられる。これらの中では、付着抑制効果及び油の流動物への移行抑制の観点から、油のSP値は、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
水生生物付着抑制剤が有機媒体を含む場合、水生生物付着抑制剤における有機媒体の含有量は、有機媒体の外部への移行抑制及び耐久性の観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。
本発明の抑制剤における疎水変性セルロース繊維中のセルロース繊維と有機媒体との質量比(セルロース繊維:有機媒体)は特に制限されないが、付着抑制性を発揮させる観点から、好ましくは1:1以上、より好ましくは1:2以上、更に好ましくは1:3以上である。また、膜の耐久性の観点から、好ましくは1:100以下、より好ましくは1:50以下、更に好ましくは1:20以下である。なお、疎水変性セルロース繊維中のセルロース繊維の量は、換算量として、後述の実施例に記載の方法に従って求めることができる。
<高分子化合物>
本発明においては、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物(但し、硬化性樹脂ではない)、即ち、非硬化性の高分子化合物を、水生生物付着抑制剤又は水生生物付着抑制膜が含有することが好ましい。かかる特定の高分子化合物を使用することによって、水生生物付着抑制作用がより強く発揮できるため、好ましい。有機媒体の外部への移行抑制及び膜の耐久性の観点から、(X)の高分子化合物がより好ましい。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子化合物
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子化合物
前記高分子化合物は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、分子量10万以上の高分子成分を含有するものが好ましい。高分子化合物中のこのような高分子成分の成分量としては、同様の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。高分子化合物の質量平均分子量や高分子化合物中の分子量10万以上の高分子成分の成分量は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
前記高分子化合物の質量平均分子量としては、有機媒体への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは1000以上であり、同様の観点から、好ましくは50万以下である。
(高分子化合物(X))
主鎖にエステル基を有する高分子化合物(X)としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールとの縮合物等、あるいは、グルコール酸、乳酸などの一分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を有する化合物の縮合物が挙げられる。
主鎖にアミド基を有する高分子化合物(X)としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸等のジカルボン酸と、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族ジアミン等のジアミンとの縮合物等が挙げられる。
主鎖にウレタン基を有する高分子化合物(X)としては、トリレジンジイソシアネート、ジフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールとの重合物等が挙げられる。
主鎖にアミノ基を有する高分子化合物(X)としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、へキシレンイミン等のアルキルイミンの重合物が挙げられる。
主鎖にエーテル基を有する高分子化合物(X)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドの重合物、ホルムアルデヒドの重合物等が挙げられる。
主鎖にカーボネート基を有する高分子化合物(X)としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のポリオールとホスゲンとの縮合物等が挙げられる。
高分子化合物(X)は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、3官能性以上のモノマーを構成単位としてさらに含むものが好ましい。
3官能性以上のモノマーとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミン等の3官能性以上のアミン、トリメチロール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等の3官能性以上のアルコール、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等の3官能性以上のカルボン酸が挙げられ、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミン等の3官能性以上のアミンである。
高分子化合物(X)は、3官能性以上のモノマーを構成単位としてさらに含むことにより架橋点が形成され、架橋点が形成されることによって、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性が向上すると考えられる。
高分子化合物(X)における、3官能性以上のモノマーの含有率は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは0.2モル%以上であり、より好ましくは0.5モル%以上であり、更に好ましくは2.5モル%以上であり、有機媒体の外部への移行性の観点から、好ましくは25モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下であり、更に好ましくは15モル%以下である。
高分子化合物(X)は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは下記の(a)及び(b)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物であり、有機媒体の外部への流動物への移行抑制及び膜の耐久性の観点から、(a)のポリアミド化合物がより好ましい。
(a)ポリアミド化合物
(b)ポリアルキレンイミン化合物
(a)ポリアミド化合物
ポリアミド化合物としては、セルロース構造を有さず、かつ、アミド結合(−CONH−)を有する高分子化合物であれば、いかなる化学構造を有するポリアミド化合物を使用することもできる。ポリアミド化合物は、例えば、主として脂肪族骨格からなるナイロンであってもよいし、主として芳香族骨格をもつアラミドであってもよい。更にはこの両者以外の骨格構造を有するものでもよい。一方で好適に用いられる構造体の例としては、アミン化合物と、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸からなる群より選択される1種以上のカルボン酸とからなるポリアミドが挙げられる。
ポリアミド化合物の質量平均分子量としては、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは2万以上、更に好ましくは3万以上であり、同様の観点から、好ましくは50万以下、より好ましくは25万以下、更に好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下である。
ポリアミド化合物は、通常、環状ラクタムの開環重合反応や、アミノ酸やその誘導体の自己縮合反応、カルボン酸とアミン化合物との縮重合反応などにより得られる。カルボン酸とアミン化合物との縮重合反応によるポリアミド化合物は、例えば、カルボン酸とアミン化合物とを縮合(縮重合)反応させて得ることができる。
一方の原料であるカルボン酸においては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸を好適に用いることができる。
モノカルボン酸としては、ポリアミド化合物が生成する反応における重合停止剤の役割を果たすができるもの、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、及びベヘニン酸などが挙げられる。また、不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸、天然油脂より得られる混合脂肪酸(トール油脂肪酸、米ヌカ脂肪酸、大豆油脂肪酸、牛脂脂肪酸等)などが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるモノカルボン酸は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは炭素数8以上24以下のものであり、より好ましくは炭素数10以上22以下のものであり、更に好ましくは炭素数12以上18以下のものである。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸としては、好ましくは、アルケニル基が炭素数4〜20のものが好ましい。
重合脂肪酸とは、不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸を重合して得られる重合物、または不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステル化物を重合して得られる重合物である。重合脂肪酸としては、植物油脂由来のダイマー酸の脱水縮合反応により得られる構造物が挙げられる。
当該不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸としては、通常1〜3の不飽和結合を有する総炭素数が8〜24の不飽和脂肪酸が用いられる。これらの不飽和脂肪酸として、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、天然の乾性油脂肪酸、天然の半乾性油脂肪酸などが挙げられる。また、不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステルとしては、前記不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸と脂肪族アルコール、好ましくは、炭素数1〜3の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。前記不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸を重合して得られる重合物、または不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステル化物を重合して得られる重合物である重合脂肪酸は、二量体を主成分とするものが好ましい。例えば、炭素数18の不飽和脂肪酸の重合物として、その組成が、炭素数18の一塩基酸(単量体)0〜10質量%、炭素数36の二塩基酸(二量体)60〜99質量%、炭素数54の三塩基酸以上の酸(三量体以上)30質量%以下のものが市販品として入手できる。
更に、カルボン酸成分としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸のほか、膜の物性を阻害しない範囲で、その他のカルボン酸を加えてもよい。
これらカルボン酸においては、モノカルボン酸と重合脂肪酸の組み合わせが特に好適に用いられる。なお、カルボン酸は、炭素数1〜3のアルコールとのエステルであってもよい。
また、他方の原料であるアミン化合物としては、ポリアミン、アミノカルボン酸、アミノアルコールなどが挙げられる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン、(オルト、パラ又はメタ)キシレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミンが挙げられる。アミノカルボン酸としては、メチルグリシン、トリメチルグリシン、6−アミノカプロン酸、δ−アミノカプリル酸、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、プロパノールアミンなどが挙げられる。
また、アミン化合物として、ポリアミド化合物が生成する反応における重合停止剤の役割として、モノアミンを使用することができる。
これら原料として使用される各化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
また、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、アミン化合物として、好ましくはポリアミンを含むアミン成分、より好ましくは、前記アミン化合物として、ジアミンと、トリアミン、テトラミン、ペンタミン及びヘキサテトラアミンからなる群から選ばれる1種以上とを併用するアミン成分(「アミン成分1」とする。)や、2種以上のジアミンを含むアミン成分(「アミン成分2」とする。)を用いることができる。付着抑制性の観点から、アミン化合物としてはアミン成分1の方がより好ましい。アミン成分1における各成分の併用時の質量比としては、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、〔ジアミン:トリアミン、テトラミン、ペンタミン及びヘキサミンからなる群から選ばれる1種以上〕が、好ましくは99.5:0.5〜50:50であり、より好ましくは99:1〜60:40であり、更に好ましくは95:5〜70:30である。アミン成分2における各成分の併用時の質量比としては、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、〔一方のジアミン:他方のジアミン〕が、好ましくは99.5:0.5〜50:50であり、より好ましくは99:1〜60:40であり、更に好ましくは95:5〜64:36である。一方のジアミンとしては、例えばエチレンジアミン等が挙げられ、他方のジアミンとしては、例えばメタキシレンジアミン等が挙げられる。
(b)ポリアルキレンイミン化合物
ポリアルキレンイミン化合物とは、主鎖がアルキレン基とアミノ基からなる繰返し単位であり、下記式(A)及び/又は式(B)の構造の繰返し単位を有する高分子化合物である。
前記式(A)及び式(B)中、Qはアルキレン基を示す。ここで、Qで示されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。アルキレン基は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。これらのうち、アルキレン基がエチレン基であることが好ましい。すなわち、ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミンであることが好ましい。
ポリアルキレンイミン化合物の質量平均分子量としては、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは5000以上、更に好ましくは1万以上であり、同様の観点から、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下、更に好ましくは2万以下である。
(高分子化合物(Y))
高分子化合物(Y)、即ち、側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子化合物としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN−メチル(メタ)アクリルアミド、ポリN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリN−フェニル(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明の水生生物付着抑制剤がかかる高分子化合物を含有する場合、該水生生物付着抑制剤における高分子化合物の含有量は、有機媒体の外部への移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下であり、更に好ましくは2.0質量%以下である。
<硬化性樹脂>
本発明の水生生物付着抑制剤は、さらに硬化性樹脂を含有してもよい。硬化性樹脂を含有することにより、基板との接着性向上という作用効果が発揮されるため、好ましい。硬化性樹脂としては、前記高分子化合物以外のもの、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が好ましいものとして挙げられ、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上がより好ましい。
硬化性樹脂がウレタン樹脂の場合、硬化性モノマーとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系やヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系等のイソシアネートや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルジオール、ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、イソホロンジアミン等のポリオールが挙げられる。イソシアネートとポリオールの反応物がウレタン樹脂となるが、この限りではない。列記したポリオールのオリゴマーや、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオールを硬化性プレポリマーとして用いても良い。
硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂の場合、硬化性モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、ノナンジオールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレート、シアノアクリレート等のモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。列記したモノ(メタ)アクリレートのオリゴマーを硬化性プレポリマーとして用いても良い。
硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化性モノマーとしては、例えばビスフェノールA型、フェノールノボラック型、グリシジルエーテル型、脂環型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型などのモノマーが挙げられる。列記したモノマーのオリゴマーを硬化性プレポリマーとして用いても良い。
硬化性樹脂がユリア樹脂の場合、硬化性モノマーとして尿素とホルムアルデヒドが挙げられる。
硬化性樹脂がメラミン樹脂の場合、硬化性モノマーとしてメラミンとホルムアルデヒドが挙げられる。
硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合、硬化性モノマーとしてフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノールとホルムアルデヒドが挙げられる。
<硬化性モノマー又は硬化性プレポリマー>
水生生物付着抑制剤への配合の際は、硬化性樹脂ではなく、重合反応により硬化性樹脂となる硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーが用いられる。
硬化性プレポリマーの質量平均分子量としては、乾燥時のヒビ割れ抑制の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であり、一方、疎水変性セルロース繊維の分散性と溶媒への溶解性の観点から、該分子量としては、好ましくは30,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
本発明におけるより好ましい硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーとしては、硬化速度の観点から、UV硬化反応により重合するUV硬化性樹脂である。具体的には、UV硬化性樹脂である(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂のモノマー又はプレポリマーが挙げられる。その中でも、疎水変性セルロース繊維との相互作用の強さの観点から、ウレタンアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートが好ましいものとして挙げられ、耐熱性の観点からはビスフェノール型、脂環型のエポキシ樹脂が好ましいものとして挙げられる。また、膜の靱性の観点からは、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂のモノマー又はプレポリマーが好ましく、その中でも、疎水変性セルロース繊維との相互作用の強さの観点から、ウレタンアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
UV硬化性樹脂の硬化性ポリマー又は硬化性プレポリマーを使用する場合、必要に応じて、光重合開始剤を更に用いることが好ましい。
かかる光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
<溶媒>
溶媒としては、例えば、イソプロパノール(IPA)、1−プロパノール、エタノール、メタノール、t−ブタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられる。
水生生物付着抑制剤が溶媒を含む場合、水生生物付着抑制剤における溶媒の含有量は、疎水変性セルロース繊維等を十分に分散させる観点から、好ましくは80.0質量%以上であり、より好ましくは85.0質量%以上であり、更に好ましくは88.0質量%以上である。また、膜形成時間の短縮化の観点から、好ましくは98.0質量%以下であり、より好ましくは97.5質量%以下であり、更に好ましくは97.0質量%以下である。
<その他の成分>
水生生物付着抑制剤には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。かかる任意成分としては、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。抑制剤におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
水生生物付着抑制剤は、前述の各成分を混合することにより調製することができるが、水生生物付着抑制剤が硬化性樹脂を含有する場合、硬化性モノマー及び/又は硬化性プレポリマーや、必要に応じて光重合開始剤を各成分と一緒に混合すればよい。
[成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法]
本発明の、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法は、前述の本発明の水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する。
本明細書における水生生物付着抑制剤の適用対象(「成形体」と称する場合がある。)は、水中環境に配される物体であり、淡水環境又は海洋環境に配されるいかなる物体をも意味する。水中環境に配される物体は、例えば、水中に沈められる物体や、水付近に存在することにより水生生物の付着が問題となる物体、例えば、船(特に船底やプロペラ)、取水路、波消しブロック、排水路やテトラポット等の水中構造物、養殖網、ブイや定置網の養殖漁業や海洋施設を包含する。更には、水族館、生簀や家庭用の水槽のような、疑似的な淡水環境又は海洋環境に配される物体(水槽自体も含む)も「水中環境に配される物体」に該当する。
水生生物付着抑制剤の塗工方法としては、例えば、特に限定されないが、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ブラシコーティングなどが挙げられる。必要に応じて、成形体の腐食を防いだり、成形体と抑制膜との密着性を向上させるために、防食塗料や、プライマー等の下地(下層体)を予め成形体表面に塗工したり、形成させたりしても良い。
成形体上の水生生物付着抑制剤の塗膜の厚みとしては、付着抑制性、耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、塗工性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、更に好ましくは1200μm以下である。
次いで、塗膜を乾燥させて膜を得る。乾燥条件としては、減圧下でも常圧下でもよく、温度範囲としては15〜75℃が好ましい。また、乾燥のための時間としては、1〜24時間が好ましい。
水生生物付着抑制剤が硬化性モノマー及び/又は硬化性プレポリマーを含有する場合、前記の塗膜を乾燥させた後に重合反応を起こさせることにより、かかる成分が硬化して硬化性樹脂が形成される。硬化方法には、公知の方法、例えば、UV硬化、熱硬化、水分硬化等が挙げられ、用いる樹脂のタイプによって適宜選択すればよい。好ましくは、熱処理による有機媒体の流出の観点や反応時間の観点からUV硬化であり、さらに好ましくは、膜厚硬化性の観点からカチオン型よりもラジカル型のUV硬化が好ましい。
このようにして、水生生物付着抑制膜が成形体の表面に形成され、膜を有する成形体が得られる。
[水生生物付着抑制膜]
本発明の水生生物付着抑制膜は、特定の疎水変性セルロース繊維を含有する。ここで膜とは、常温で流動せずに形状を保持する膜をいう。膜の表面硬度としては、例えば、微小硬度計で測定した場合、下記式により算出されるマルテンス硬さ(HM)が0.1(N/mm)以上の膜が好ましい。具体的には、後述の実施例に記載の方法により膜のマルテンス硬さが測定される。
HM=F/(26.43×hmax
F:試験力(N)
hmax:押し込み深さの最大値(mm)
本発明の水生生物付着抑制膜が前記効果を発揮することの詳細なメカニズムは定かではないが、考え得る可能性として、(1)本発明の抑制膜が有機媒体を含有する場合、セルロースのネットワークに保持された有機媒体の流動性により、水生生物付着の足場となるタンパク質が抑制膜に付着することが抑制される、(2)(水酸基を多数有する結晶性の構造という)セルロースの構造が原因で、足場となるタンパク質が付きにくく、付いても水流で容易に洗い流され、更にセルロースを疎水修飾することによって、水やタンパク質を表面からはじく効果がより高まり、効果が大きくなる、ことが挙げられる。
本発明の膜の厚みは特に制限はなく、膜の耐久性の観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、更に好ましくは5μm以上であり、経済性の観点から、好ましくは2000μm以下であり、より好ましくは1200μm以下であり、更に好ましくは500μm以下であり、更に好ましくは100μm以下である。なお、膜の厚みは、アプリケーター等の塗布用具による塗膜厚の設定や、抑制剤中の溶媒の割合を調整することにより、所望の値とすることができる。
本発明の膜は、平滑性が高いほど、付着抑制性が高くなるため好ましい。具体的には、膜の算術平均粗さとして、費用対効果の観点から、好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、更に好ましくは0.8μm以上であり、一方、付着抑制性の観点から、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは35μm以下であり、更に好ましくは30μm以下である。なお、膜の算術平均粗さは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の膜中の疎水変性セルロース繊維の量としては、特に限定されないが、膜の付着抑制性及び耐久性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。
本発明の膜が前記有機媒体を含有する場合、膜中の有機媒体の量としては、特に限定されないが、該有機媒体の移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
本発明の膜が前記高分子化合物を含有する場合、膜中の高分子化合物の量としては、特に限定されないが、油の移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
本発明の膜中の[疎水変性セルロース繊維の質量]/[硬化性樹脂の質量]の比率としては、水生生物付着抑制効果の観点から、好ましくは66/10,000以上、より好ましくは66/1,000以上、更に好ましくは66/500以上、更に好ましくは66/300以上であり、一方、基板との接着性の観点から、前記比率は好ましくは66/1以下、より好ましくは66/50以下、更に好ましくは66/100以下である。
本発明の膜中の硬化性樹脂の含有量は、基板との接着性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。一方、水生生物付着抑制効果の観点から、該含有量としては、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
本発明の膜には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。膜におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。
[本発明の成形体]
本発明の成形体は、前述の本発明の水生生物付着抑制膜を有する成形体である。本発明の成形体は前述のようにして製造することができる。本発明の成形体の具体例としては、前述の膜を有する前記「水中環境に配される物体」が挙げられる。かかる膜を有する成形体は、水生生物の付着が抑制され、かつ付着した水生生物を簡易な操作で除去できるという効果を有する。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
〔疎水変性セルロース繊維における結晶構造の確認〕
疎水変性セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出する。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編)のP199−200の記載に則り、以下の式(B)に基づいて算出することが好ましい。
したがって、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100 (B)
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0−11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
〔アニオン変性セルロース繊維、疎水変性セルロース繊維及び微細セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中の対象のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅とみなすことができる。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔アニオン性基含有セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維(A)のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−701」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)
〔酸化セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
ビーカーに、対象のセルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2−メチル−2−ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え常温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し、アルデヒドを酸化処理した対象のセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記のアニオン性基含有量の測定方法で測定し、酸化処理した対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。続いて、式1にて酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量)−(酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計MOC−120H(島津製作所社製)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合量及び導入率(イオン結合)〕
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維(A)を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、下記式A及び式Bにより、修飾基の結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。以下の「1720cm−のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の結合量及び導入率を算出すればよい。
<式A>
修飾基の結合量(mmol/g)=a×(b−c)÷d
a:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
b:酸化セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度
c:疎水変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度
d:酸化セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度
1720cm−1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
<式B>
修飾基の導入率(mol%)=100×e/f
e:修飾基の結合量(mmol/g)
f:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
〔疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合量及び導入率(アミド結合)〕
修飾基の結合量を下記式により算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はカルボキシ基を当該アニオン性基に置き換えて、修飾基の結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の結合量(mmol/g)=修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)−修飾基導入後のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(%)={修飾基の結合量(mmol/g)/修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
〔疎水変性セルロース繊維(B)における修飾基の導入率〕
得られたエーテル化セルロース繊維中に含有される修飾基の含有量%(質量%)は、Analytical Chemistry, Vol.51, No.13, 2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出する。以下に手順を示す。
(i)200mLメスフラスコにn−オクタデカン0.1gを加え、ヘキサンにて標線までメスアップを行い、内標溶液を調製する。
(ii)精製、乾燥を行ったエーテル化セルロース繊維100mg、アジピン酸100mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓する。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱する。
(iv)加熱後、バイアルに内標溶液3mL、ジエチルエーテル3mLを順次注入し、常温で1分間攪拌する。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、「GC2010Plus」)にて分析する。分析条件は以下のとおりとする。
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB−5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:100℃→10℃/min→280℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃、検出器温度:300℃、打ち込み量:1μL
使用した、修飾基を導入するための化合物の検出量から、エーテル化セルロース繊維中の修飾基の含有量(質量%)を算出する。
得られた修飾基の含有量から、下記数式(1)を用いてモル置換度(MS)(無水グルコースユニット1モルに対する修飾基のモル量)を算出する。
(数式1)
MS=(W1/Mw)/((100−W1)/162.14)
W1:エーテル化セルロース繊維中の修飾基の含有量(質量%)
Mw:導入した、修飾基を導入するための化合物の分子量(g/mol)
〔膜の算術平均粗さの測定〕
膜の算術平均粗さは次のようにして測定する。膜の算術平均粗さはレーザー顕微鏡(キーエンス社製、商品名:「VK−9710」)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。膜の算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いる。
〔疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)〕
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される「修飾基を導入するための化合物」が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾基を導入するための化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される「修飾基を導入するための化合物」が2種類以上の場合
各化合物のモル比率(即ち、添加される化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾基との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾基を導入するための化合物の分子量」とは、「修飾基を導入するための化合物全体の分子量」を指す。一方、セルロース繊維と修飾基を導入するための化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾基を導入するための化合物の分子量」とは、「修飾基を導入するための化合物全体の分子量−18」である。
〔膜の硬度測定〕
膜に対して硬度試験測定器(島津サイエンス社製、DUH−211)を用いて下記条件で表面硬度(マルテンス硬度)の測定を行う。
試験力:0.1mN
負荷保持時間:5(s)
除荷保持時間:1(s)
〔セルロース繊維分散液の作製〕
調製例1(天然セルロース繊維にN−オキシル化合物を作用させて得られる酸化セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25g、臭化ナトリウム12.5g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−701)でpHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。撹拌速度100rpmにて反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。
得られた酸化パルプに0.01Mの塩酸を加えてpH=2とした後に、イオン交換水を用いて、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまで十分に洗浄し、次いで脱水処理を行って、酸化セルロース繊維を得た。
その後、酸化セルロース繊維3.9gとイオン交換水296.1gを高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP−2 5005)を用いて245MPaで微細化処理を2回行い、酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量1.3質量%)を得た。この酸化セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/gであった。
調製例2(アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維の分散液)
ビーカーに調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液3846.15g(固形分含有量1.3質量%)を投入し、ここに1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製、純度95質量%)を2.63g仕込み、常温下3時間反応させアルデヒド還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、常温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。最後にイソプロパノールで溶媒置換し、アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液を得た。
得られた分散液に0.01Mの塩酸を加えてpH=2とした後に、イオン交換水を用いて、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまで十分に洗浄した。
得られたアルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/gであった。
〔疎水変性セルロース繊維の作製〕
製造例1
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた微細化された酸化セルロース繊維をIPAに溶媒置換したものの分散体300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製「SS−3551」)を、該酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.4molに相当する量を仕込み、セルロース含有量が0.5質量%になるようにイソプロパノールを添加し、これらの混合物を常温(25℃)で14時間撹拌して反応させた。反応終了後、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて150MPaで10パス処理させることで、酸化セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した疎水変性セルロース繊維を得た。この疎水変性セルロース繊維の結晶化度は30%、平均繊維径は3.3nm、平均繊維長は578nmであった。
製造例2
酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込んだ以外は製造例1と同じ方法で疎水変性セルロース繊維を得た。
〔水生生物付着試験用基板の作製1〕
L257mm×W185mm×T3mmのSUS304上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP−13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水系アクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A−1127)を塗工した。常温(25℃)下で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(SUS)と下層体との積層構造物1を得た。なお、形成された下層体の厚みは3μmであった。
実施例1
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして前記積層構造物1の下層体側の表面上に上層体を作製した。疎水変性セルロース繊維のIPA分散液(セルロース含有量0.5質量%)に、疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミドが1:3:1の質量比になるように、また、イソプロパノール:トルエン=100:5の質量比となるように各成分を配合し、スクリュー管中、常温で24時間撹拌した。得られた上層体形成用の分散液を水生生物付着抑制剤として、前記積層構造物1の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、水生生物付着抑制剤の厚みが1800μmになるように塗工した。常温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約50μmの上層体が形成された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、上層体の算術平均粗さは1μmであった。
〔水生生物付着試験用基板の作製2〕
L300mm×W100mm×T3mmのSUS304上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP−13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水系アクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A−1127)を塗工した。常温(25℃)下で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(SUS)と下層体との積層構造物2を得た。なお、形成された下層体の厚みは3μmであった。
実施例2
製造例2で得られた疎水変性セルロース繊維のIPA分散液を水生生物付着抑制剤として、前記積層構造物2の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、水生生物付着抑制剤の厚みが2200μmになるように塗工した。常温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約40μmの上層体が作製された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
実施例3
製造例2で得られた疎水変性セルロース繊維及び積層構造物2を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
実施例4
積層構造物2を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
実施例5、6
積層構造物2を用い、表3に記載の質量比率で有機媒体、高分子化合物を配合した以外は実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
なお、実施例6で用いた有機媒体は以下である。
シリコーン100cs:信越化学社製、KF−96−100cs
実施例7
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして膜を作製した。疎水変性セルロース繊維のIPA分散液(セルロース含有量0.5質量%)に、疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミド:硬化性プレポリマー(日本合成化学社製「紫光UV−7000B」(Mw3500);「ウレタンアクリレート」と略記する。)が1:3:1:3の質量比になるように、また、イソプロパノール:トルエン=100:5の質量比となるように各成分を配合し、スクリュー管内に入れた。更に光重合開始剤の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンをウレタンアクリレートに対して4質量%配合した。次いで、スクリュー管の内容物を、マグネチックスターラーの回転数:500rpm、常温(25℃)で12時間撹拌した。
その後、自動公転式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて2200rpmで2分撹拌して脱泡し、塗膜用の混合物を得た。これを水生生物付着抑制剤として、SUS基板上にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて厚みが1400μmになるように塗膜した。常温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約60μmの膜を得た。次いで、UV照射機(FUSION UV SYSTEMS JAPAN社製、UV−1100−G)を用いて、速度15.8cm/min、出力90%、ランプ高さ67mm、2Passの条件で該膜にUV照射して該硬化性プレポリマーを重合させて、該硬化性プレポリマーが硬化した膜を得た。
実施例8
製造例2で得られた疎水変性セルロース繊維を用い、表3に記載の質量比率で有機媒体、高分子化合物を配合したこと以外は実施例1と同じ方法で水生生物付着抑制剤を調製し、SUS基板上に直接塗工し、膜を得た。
なお、実施例8で用いた高分子化合物は以下である。
アクリル:DSM社製、NeoCryl A−1127
上記で使用したポリアミドは次のようにして調製した。
ハリダイマー 250K:450gを2Lセパラフラスコにとり、70℃に昇温した後に窒素置換を行った。その後、エチレンジアミン:45g、ジエチレントリアミン:5gを徐々に添加し、添加後に内温が145℃になるまで昇温を行った。145℃で1時間撹拌した後に、内温を210℃に昇温し、6時間撹拌を行った。その後、内温を210℃に保ったまま、内圧を45KPaになるまで真空ポンプを用いて減圧を行い、0.5時間撹拌を行い、ポリアミドを調製した。
ハリダイマー 250K(ハリマ化成株式会社製):Cas番号61788−89−4:100%(C36 Dimer acid)
なお、ポリアミドにおけるジエチレントリアミンの含有率は3.0モル%であった。
高分子化合物の分子量測定方法
質量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミッション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR−Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは、溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのファーミンDM20(花王株式会社製)のクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で行った。検量線の作成のための標準ポリマーとしては、ポリスチレン(東ソー株式会社製)を使用した。
比較例1
L257mm×W185mm×T3mmの未処理のSUS304(北村鉄工所社製)を比較例1とした。
比較例2
L257mm×W185mm×T3mmのSUS304上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP−13)を用いて、防汚塗料(エフロンティアTM防汚塗料:三菱マテリアルトレーディング社製)を塗工した。
比較例3
シリコーンポッティング材SYRGARDTM184(東レ・ダウコーニング株式会社製)の主剤、硬化剤とシリコーンオイル(KF96−100CS:信越化学工業株式会社製)が10:1:30質量比になるように混合撹拌し、塗膜用サンプル液とした。次に、前記積層構造物1の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、塗膜用サンプル液の厚みが1000μmになるように塗工した。90℃で12時間硬化反応させ、膜厚が約1000μmの上層体が作製された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
比較例4
L300mm×W100mm×T3mmの未処理のSUS304(北村鉄工所社製)を比較例4とした。
<野外水生生物付着試験>
作製した基板を鎖で繋ぎ、干潮時に水面から2mの深さになるように和歌山下津港付近に設置し、1ヶ月間海水中での浸漬試験を行った。なお、実施例1及び比較例1〜3、実施例2〜8及び比較例4を、それぞれ同時に試験した。
その後、基板への甲殻動物類と藻類の付着度合いを目視によって評価した。評価基準は次の通りである。
1:水生生物の付着が基板表面の2面積%以下である状態。
2:基板表面の2面積%超10面積%以下に水生生物が付着している状態。
3:基板表面の10面積%超20面積%以下に水生生物が付着している状態。
4:基板表面の20面積%超30面積%以下水生生物が付着している状態。
5:基板表面の30面積%超50面積%以下に水生生物が付着している状態。
6:基板表面の50面積%超80面積%以下に水生生物が付着している状態。
7:基板表面の80面積%超水生生物が付着している状態。
<付着水生生物除去性>
基板上に付着した水生生物の除去性を以下の基準で評価した。なおここで低圧とは、洗瓶から吹き付けるほどの弱い圧力を示す。
1:低圧の水洗で容易に除去可能
2:水洗+こする作業が必要
3:工具の使用が必要(1回削る作業で除去)4:工具で複数回削る必要、あるいは除去不可
上記の結果を表2及び表3に示す。図1に、海水中での1ヶ月間の浸漬試験後の基板表面の表面状態の写真を示す。図1中、Aは実施例1に、Bは比較例1に、Cは比較例2に、そしてDは比較例3にそれぞれ対応する。
表2、表3及び図1より、本発明の水生生物付着抑制剤を用いて形成された水生生物付着抑制膜は、水生生物の付着そのものを抑制できる効果を有し、かつ、付着した水生生物の除去性も良好であった。
本発明の水生生物付着抑制剤を塗布して形成される膜は、高い水生生物付着抑制効果を有するので、水生生物の付着を抑制したい分野、例えば、船舶や養殖漁業等の分野に利用することができる。

Claims (10)

  1. セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制剤。
  2. さらに有機媒体を含有する、請求項1に記載の水生生物付着抑制剤。
  3. 疎水変性セルロース繊維が、セルロース繊維のアニオン性基に修飾基が結合されたものである、請求項1又は2に記載の水生生物付着抑制剤。
  4. アニオン性基がカルボキシ基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
  5. さらに、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物(但し、硬化性樹脂ではない)を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
    (X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子
    (Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子
  6. さらに、硬化性樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤。
  7. 硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項6に記載の水生生物付着抑制剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水生生物付着抑制剤を成形体に塗布する工程を有する、成形体への水生生物付着抑制膜の形成方法。
  9. セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、I型結晶構造を有する疎水変性セルロース繊維を含有する、水生生物付着抑制膜。
  10. 請求項9に記載の水生生物付着抑制膜を有する成形体。
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