JP2020195932A - 疎水変性セルロース繊維及び有機媒体を含む膜の製造方法 - Google Patents

疎水変性セルロース繊維及び有機媒体を含む膜の製造方法 Download PDF

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嘉則 長谷川
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Abstract

【課題】膜と、膜が形成される固体表面との間の接着性が高い膜の製造方法を提供すること。【解決手段】疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜の製造方法であって、下記工程1及び2を含む膜の製造方法;工程1:疎水変性セルロース繊維、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマー及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む混合物の塗膜を形成させる工程;工程2:工程1の後、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーを重合反応させる工程。【選択図】なし

Description

本発明は、疎水変性セルロース繊維及び有機媒体を含む膜の製造方法に関する。
従来より、化粧料や食品等の包装容器等の分野において、容器やトレイ等に接触し得る物体(例えば化粧料や食品そのものといった、容器内に充填されたり膜で包装されたりする対象の物)や汚れ等の流動物の付着を防止する表面膜が開発されてきた。最近では、疎水変性セルロース繊維及び油を有する膜が知られており、かかる膜は、油の移行が小さく、かつ高い滑水・滑油性(即ち、滑液性)を示す膜である(特許文献1)。
WO2018/164135
このような滑液性を示す膜は、様々な物質と接触することで経時的に剥がれてしまう。そこで、より長期間、滑液性が発揮されるために、膜と、膜が形成される固体表面との間の接着性が高い膜の製造方法が求められてきた。
本発明は、下記〔1〕〜〔2〕に関する。
〔1〕 疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜の製造方法であって、下記工程1及び2を含む膜の製造方法。
工程1:疎水変性セルロース繊維、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマー及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む混合物の塗膜を形成させる工程
工程2:工程1の後、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーを重合反応させる工程
〔2〕 疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂、及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜。
本発明の製造方法によれば、膜と、膜が形成される固体表面との間の接着性が高い膜を提供することができる。
本発明の膜の製造方法は、疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜の製造方法であって、前述の工程1及び2を含み、好ましくは分散媒を除去する工程を更に含む。
本発明者らが上記課題を解決すべく種々検討したところ、膜と膜が形成される固体表面との接着性に着目した。そこで、疎水変性セルロース繊維及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜の製造方法において、特定のモノマー又はプレポリマーを配合し、特定のタイミングでかかるモノマー又はプレポリマーを重合反応させて硬化させることで、意外にも固体表面に対する膜の接着性を高めることができた。
かかる効果が発現されるメカニズムは定かではないが、固体表面と膜との間の水素結合力の強化、アンカー効果の向上、相互拡散による接着性向上のいずれか、もしくはこれらの効果の組み合わせによるものと推定される。
<疎水変性セルロース繊維>
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上の基に修飾基が結合されてなるものであり、有機媒体に分散性を示すものがより好ましい。
(セルロース繊維)
原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、セルロース繊維としては、有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは、アニオン性基(例えば、カルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等)を有するセルロース繊維(以下、アニオン変性セルロース繊維ともいう。)であり、より好ましくは、カルボキシ基を有するセルロース繊維(以下、酸化セルロース繊維ともいう。)である。酸化セルロース繊維は、下記のように、セルロース繊維を酸化することにより得ることができる。
(酸化セルロース繊維)
酸化セルロース繊維は、例えば、触媒として2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して酸化する方法が適用できる。より詳細には、特開2011−140632号公報に記載の方法を参照することができ、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
(カルボキシ基含有量)
酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量としては、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「カルボキシ基含有量」とは、疎水変性セルロース繊維又は酸化セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
また、酸化セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比の好適な範囲は、後述の疎水変性セルロース繊維と同様であり、また、後述の疎水変性セルロース繊維と同様の測定方法により求めることができる。
(修飾基)
本発明における修飾基としては、炭化水素基及び/又はシリコーン基を含む化合物を用いることができる。これらは単独で又は2種以上が組み合わさって、セルロース繊維に結合(導入)されてもよい。
本明細書において、疎水変性セルロース繊維における修飾基の結合とは、セルロース繊維表面のカルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の基に、好ましくはカルボキシ基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合している状態のことを意味する。カルボキシ基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくはアミド結合である。また、水酸基への結合様式としては、共有結合が挙げられ、具体的には、エステル結合;カルボキシメチル化、カルボキシエチル化など、エーテル結合、ウレタン結合が挙げられる。有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、本発明における疎水変性セルロース繊維としては、セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基に、修飾基を導入するための化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られるものが好ましい。
(修飾基を導入するための化合物)
修飾基を導入するための化合物としては、後述の修飾基を導入可能なものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。これらの中では、分散性の観点から、好ましくは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物である。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシイオンが挙げられる。
(炭化水素基)
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。
鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは8以上である。また、同様の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。なお、以降において炭化水素基の炭素数とは、修飾基全体としての総炭素数のことを意味する。
鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。また、入手容易性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下である。
環式飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上である。また、入手容易性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下である。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
前記アリール基の総炭素数は6以上であればよく、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
前記アラルキル基の総炭素数は7以上であり、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは8以上であり、また、同様の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは13以下、更に好ましくは11以下である。
前記炭化水素基を導入するための第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、酸無水物、イソシアネート化合物は、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。
とりわけアミノ変性シリコーン化合物を用いて得られた疎水変性セルロース繊維が、膜の原料として有用である。従って、疎水変性セルロース繊維の一態様として、セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上の基に、アミノ変性シリコーン化合物によって導入される修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維が提供される。かかる疎水変性セルロース繊維を膜とした場合、優れた滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制性という効果を発揮することができる。
(アミノ変性シリコーン化合物)
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10mm/s以上20,000mm/s以下、アミノ当量400g/mol以上8,000g/mol以下のアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、より好ましくは200mm/s以上10,000mm/s以下、更に好ましくは500mm/s以上5,000mm/s以下である。
また、アミノ当量は、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは400g/mol以上、より好ましくは600g/mol以上、、更に好ましくは800g/mol以上であり、また、好ましくは5,000g/mol以下、より好ましくは8,000g/mol以下、更に好ましくは3,000g/mol以下である。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=質量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーン化合物の具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020195932
〔式中、R1aは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示す。R1aは滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が前記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、xは好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、また、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下である。yは好ましくは1以上、また、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは200以下である。一般式(a1)の化合物の質量平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは8.000以上、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
−C−NH
−C−NH−C−NH
−C−NH−[C−NH]−C−NH
−C−NH(CH
−C−NH−C−NH(CH
−C−NH−[C−NH]−C−NH(CH
−C−N(CH
−C−N(CH)−C−N(CH
−C−N(CH)−[C−N(CH)]−C−N(CH
−C−NH−cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1〜30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーン化合物は、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80〜110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53−98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーン化合物としては、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが−C−NHで表される化合物〔以下、(a1−1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが−C−NH−C−NHで表される化合物〔以下、(a1−2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
疎水変性セルロース繊維における修飾基、好ましくは、炭化水素基及びシリコーン基からなる群より選択される1種以上の基の平均結合量は、疎水変性セルロース繊維あたり、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。ここで、修飾基として鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合であっても、個々の平均結合量は前記範囲内であることが好ましい。
また、疎水変性セルロース繊維における修飾基の導入率は、いずれの修飾基についても、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、反応性の観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下である。ここで、修飾基として鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
なお、本明細書において、修飾基の平均結合量は、修飾基を導入するための化合物の添加量、修飾基を導入するための化合物の種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。また、疎水変性セルロース繊維における修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、疎水変性セルロース繊維表面のカルボキシ基又は水酸基に修飾基が導入された量及び割合のことであり、疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することで算出することができ、疎水変性セルロース繊維の水酸基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出することができる。
(疎水変性セルロース繊維の製造方法)
本発明で用いられる疎水変性セルロース繊維は、前記したセルロース繊維に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。なお、ここでいうセルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011−140632号公報に記載の酸化反応工程の説明を参照して得られた酸化セルロース繊維として、あるいは、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
具体的な製造方法としては、修飾基をイオン結合によってセルロース繊維に結合させる態様、修飾基を共有結合によってセルロース繊維に結合させる態様が挙げられる。
疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1nm以上、更に好ましくは2nm以上、より更に好ましくは3nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは6nm以下、より更に好ましくは5nm以下である。
疎水変性セルロース繊維の長さ(平均繊維長)としては、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは750nm以下、更に好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。
なお、本発明において、疎水変性セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、前記の範囲に限定されるものではなく、例えばマイクロメーターのオーダーのものであっても使用することができる。
また、疎水変性セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長/繊維径)は、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは40以上、更に好ましくは50以上であり、同様の観点から、好ましくは150以下、より好ましくは140以下、更に好ましくは130以下、更に好ましくは100以下、更に好ましくは95以下、更に好ましくは90以下である。また、平均アスペクト比が前記範囲内にある場合、アスペクト比の標準偏差としては、滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制の観点から、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは45以下であり、下限は特に設定されないが、経済性の観点から、好ましくは4以上である。前記低アスペクト比の疎水変性セルロース繊維は分散体中での分散性に優れるため、均一性の高い膜を得ることができる。
<硬化性樹脂>
本発明における硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
本発明における硬化性樹脂は、疎水変性セルロース繊維との相互作用の観点から、Owens-Wendt法により求められる、当該硬化性樹脂の単一硬化膜の表面自由エネルギーの極性成分は、好ましくは0.1mJ/m以上、より好ましくは1mJ/m以上であり、一方、滑液性の観点から、該極性成分は、好ましくは30mJ/m以下、より好ましくは11mJ/m以下、更に好ましくは5mJ/m以下である。かかる表面自由エネルギーの極性成分は、後述の実施例に記載の方法によって求められる。
硬化性樹脂がウレタン樹脂の場合、硬化性モノマーとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系やヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系等のイソシアネートや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルジオール、ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、イソホロンジアミン等のポリオールが挙げられる。イソシアネートとポリオールの反応物がウレタン樹脂となるが、この限りではない。列記したポリオールのオリゴマーや、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオールを硬化性プレポリマーとして用いても良い。
硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂の場合、硬化性モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、ノナンジオールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレート、シアノアクリレート等のモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。列記したモノ(メタ)アクリレートのオリゴマーを硬化性プレポリマーとして用いても良い。
硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化性モノマーとしては、例えばビスフェノールA型、フェノールノボラック型、グリシジルエーテル型、脂環型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型などのモノマーが挙げられる。列記したモノマーのオリゴマーを硬化性プレポリマーとして用いても良い。
硬化性樹脂がユリア樹脂の場合、硬化性モノマーとして尿素とホルムアルデヒドが挙げられる。
硬化性樹脂がメラミン樹脂の場合、硬化性モノマーとしてメラミンとホルムアルデヒドが挙げられる。
硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合、硬化性モノマーとしてフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノールとホルムアルデヒドが挙げられる。
<硬化性モノマー又は硬化性プレポリマー>
工程1においては、硬化性樹脂ではなく、重合反応により硬化性樹脂となる硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーが用いられる。
硬化性プレポリマーの質量平均分子量としては、塗膜乾燥時のヒビ割れ抑制の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であり、一方、疎水変性セルロース繊維の分散性と溶媒への溶解性の観点から、該分子量としては、好ましくは30,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
本発明におけるより好ましい硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーとしては、硬化速度の観点から、UV硬化反応により重合するUV硬化性樹脂である。具体的には、UV硬化性樹脂である(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂のモノマー又はプレポリマーが挙げられる。その中でも、疎水変性セルロース繊維との相互作用の強さの観点から、ウレタンアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートが好ましいものとして挙げられ、耐熱性の観点からはビスフェノール型、脂環型のエポキシ樹脂が好ましいものとして挙げられる。また、膜の靱性の観点からは、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂のモノマー又はプレポリマーが好ましく、その中でも、疎水変性セルロース繊維との相互作用の強さの観点から、ウレタンアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
UV硬化性樹脂の硬化性ポリマー又は硬化性プレポリマーを使用する場合、必要に応じて、光重合開始剤を更に用いることが好ましい。
かかる光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
<常温常圧で不揮発性の有機媒体>
本発明で用いる常温常圧で不揮発性の有機媒体とは、常温常圧下での蒸気圧が10Pa未満の有機媒体を意味する。なお、本明細書において、常温とは25℃を、常圧とは101.3kPaを意味する。かかる有機媒体の中で、膜の耐久性の観点から、SP値が好ましくは10以下のもの、より好ましくは9.5以下のもの、更に好ましくは9.0以下のものである。また、入手性の観点から、SP値が好ましくは1以上、より好ましくは3以上、より好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、更に好ましくは6.0以上である。
本明細書におけるSP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition (A Wiley-Interscience publication, 1989)等に記載されている。
前記不揮発性の有機媒体の質量平均分子量には特に制限はないが、好ましくは100以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下である。
本発明で用いる常温常圧で不揮発性の有機媒体としては、例えば、オレイン酸(SP値:9.2)、D−リモネン(SP値:9.4)、PEG400(SP値:9.4)、コハク酸ジメチル(SP値:9.9)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)、ラウリン酸ヘキシル(SP値:8.6)、ラウリン酸イソプロピル(SP値8.5)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値8.5)、パルミチン酸イソプロピル(SP値8.5)、オレイン酸イソプロピル(SP値:8.6)、ヘキサデカン(SP値:8.0)、オリーブ油(SP値:9.3)、ホホバ油(SP値:8.6)、スクアラン(SP値:7.9)、流動パラフィン(SP値:7.9)、フッ素系不活性液体(例えば、フロリナートFC−40(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC−43(3M社製、SP値:6.1)フロリナートFC−72(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC−770(3M社製、SP値:6.1))、シリコーンオイル(例えば、KF96−1cs(信越化学社製、SP値:7.3)KF−96−10cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−50cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−100cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−1000cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF−96−10000cs(信越化学社製、SP値:7.3))
等が挙げられる。これらの中では、膜の耐久性の観点から、スクアラン及びシリコーンオイル(具体的には、KF−96−10cs、KF−96−50cs、KF−96−100cs、KF−96−1000cs、KF−96−10000cs)が好ましい。
<分散媒>
工程1における混合物は、分散媒を更に含有することが好ましい。混合物が分散媒を配合することによって混合物の粘度を下げることができるので、均一な厚みの塗膜をより容易に形成させることができる。工程1で用いられる分散媒は、常温常圧で揮発性の有機媒体である。常温常圧で揮発性の有機媒体とは、常温常圧下での蒸気圧が10Pa以上の有機媒体を意味する。
かかる分散媒の具体例としては、例えば例えば、イソプロパノール(IPA)、1−プロパノール、エタノール、メタノール、t−ブタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられる。
<高分子化合物>
本発明においては、工程1における混合物又は膜が更に高分子化合物を含有することが好ましい。ここでいう高分子化合物とは、前記硬化性樹脂に該当しない高分子化合物であり、非硬化性の高分子化合物であることが好ましく、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物であることがより好ましく、(X)の高分子化合物がさらに好ましい。かかる高分子化合物を用いることによって、膜の耐久性を更に高めることができる。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子化合物
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子
前記高分子化合物の質量平均分子量としては、有機媒体の移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは1,000以上であり、同様の観点から、好ましくは50万以下である。
〔(X)の高分子化合物〕
主鎖にエステル基を有する高分子化合物(X)としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールとの縮合物等が挙げられる。
主鎖にアミド基を有する高分子化合物(X)としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸等のジカルボン酸と、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族ジアミン等のジアミンとの縮合物等が挙げられる。
主鎖にウレタン基を有する高分子化合物(X)としては、トリレジンジイソシアネート、ジフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールとの重合物等が挙げられる。
主鎖にアミノ基を有する高分子化合物(X)としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、へキシレンイミン等のアルキルイミンの重合物等が挙げられる。
主鎖にエーテル基を有する高分子化合物(X)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドの重合物、ホルムアルデヒドの重合物等が挙げられる。
主鎖にカーボネート基を有する高分子化合物(X)としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のポリオールとホスゲンとの縮合物等が挙げられる。
高分子化合物(X)は、有機媒体の移行性及び膜の耐久性の観点から、好ましくは下記の(a)及び(b)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物であり、(a)のポリアミド化合物がより好ましい。
(a)ポリアミド化合物
(b)ポリアルキレンイミン化合物
(a)ポリアミド化合物
ポリアミド化合物としては、セルロース構造を有さず、かつ、アミド結合(−CONH−)を有する高分子化合物であれば、いかなる化学構造を有するポリアミド化合物を使用することもできる。ポリアミド化合物は、例えば、主として脂肪族骨格からなるナイロンであってもよいし、主として芳香族骨格をもつアラミドであってもよい。更にはこの両者以外の骨格構造を有するものでもよい。一方で好適に用いられる構造体としては、アミン化合物と、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸からなる群より選択される1種以上のカルボン酸とからなるポリアミドが挙げられる。
一方の原料であるカルボン酸においては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸を好適に用いることができる。
また、他方の原料であるアミン化合物としては、ポリアミン、アミノカルボン酸、アミノアルコールなどが挙げられる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン、(オルト、パラ又はメタ)キシレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミンが挙げられる。アミノカルボン酸としては、メチルグリシン、トリメチルグリシン、6−アミノカプロン酸、δ−アミノカプリル酸、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、プロパノールアミンなどが挙げられる。
これら原料として使用される各化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
また、有機媒体の移行性及び膜の耐久性の観点から、アミン化合物として、好ましくはポリアミンを含むアミン成分、より好ましくは、前記アミン化合物として、ジアミンと、トリアミン、テトラミン、ペンタミン及びヘキサテトラアミンからなる群から選ばれる1種以上とを併用するアミン成分を用いることができる。
〔(Y)の高分子化合物〕
高分子(Y)、即ち、側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN−メチル(メタ)アクリルアミド、ポリN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリN−フェニル(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
次に、本発明の製造方法の具体的な工程について説明する。
<工程1>
工程1は、(a)疎水変性セルロース繊維、(b)硬化性モノマー又は硬化性プレポリマー、及び(c)常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む混合物の塗膜を形成させる工程である。
これらの成分の混合はマグネチックスターラーを用いて実施しても良く、その場合の条件としては、例えば、回転数400rpm以上600rpm以下、温度15℃以上35℃以下、6時間以上24時間以下撹拌しても良く、温度20℃以上30℃以下で10時間以上16時間以下撹拌しても良い。
[工程1における混合物]
工程1における混合物は、膜、好ましくは滑液表面膜を形成させるための塗工液として提供され得る。
前記混合物中の疎水変性セルロース繊維の含有量は、耐久性の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。一方、同様の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
前記混合物中の硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーの含有量は、滑液性の耐久性の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。一方、滑液速度の観点から、前記含有量は、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
前記混合物中の[疎水変性セルロース繊維の質量]/[硬化性モノマー及び硬化性プレポリマーの合計質量]の比率としては、滑液速度の観点から、好ましくは、66/10,000以上、より好ましくは66/1,000以上、更に好ましくは66/500以上、更に好ましくは66/300以上、更に好ましくは66/200以上であり、一方、滑液性の耐久性の観点から、前記比率は好ましくは66/1以下、より好ましくは66/50以下、更に好ましくは66/75以下である。
前記混合物中の常温常圧で不揮発性の有機媒体の含有量は、滑液性の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。また、膜の耐久性の観点から、前記含有量は、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
前記混合物は分散媒を含有していることが好ましい。前記混合物が分散媒を含有している場合、混合物中の分散媒の含有量は、疎水変性セルロース繊維等を十分に分散させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。また、膜形成時間の短縮化の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
工程1における混合物が前記高分子化合物を含有する場合、前記混合物中の高分子化合物の含有量は、滑液性の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。一方、同様の観点から、前記含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
前記混合物には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。混合物におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。
[工程1における混合物の塗工]
工程1では、前記混合物を、例えば固体表面に塗工して、固体表面上に塗膜を形成させる。本明細書において固体表面とは、ガラス、樹脂、金属、セラミックス又はコンクリート等を素材とする硬質表面や、繊維表面等の表面を有する物体であり、本発明における膜がその固体表面上に形成される対象である。固体表面の形状は特に限定されず、板状、(中空の)筒状及びフィルム状のものや、これらの固体表面を所定の形状、例えばトレイ及び船底等にさらに加工したものが例示できる。
混合物の塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ブラシコーティングなどが挙げられる。固体表面と膜との密着性を向上させるために、必要に応じて、プライマー等の下地(下層体)を予め固体表面上に塗工したり、形成させたりしても良い。
混合物の塗膜の厚みとしては、滑液速度、耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、塗布性の観点から、好ましくは2,000μm以下、より好ましくは1,500μm以下、更に好ましくは1,200μm以下である。
<分散媒を除去する工程>
工程1における混合物が分散媒を含有する場合、工程1で形成された塗膜から分散媒を除去する工程を、工程1と工程2との間に実施することが好ましい。硬化性モノマー等の重合反応の前に分散媒を除去することにより、重合反応をより確実に実施することができる。分散媒を除去ための具体的な方法は特に限定されず、例えば、減圧下又は常圧下で混合物の塗膜を乾燥させる方法が挙げられる。乾燥時の温度範囲としては、15℃以上75℃以下が好ましい。また、乾燥のための時間としては、1時間以上24時間以下が好ましい。分散媒は必ずしも完全に除去する必要はなく、膜の性能を妨げない程度に、膜に残存していても良い。
<工程2>
工程2は、工程1の後又は分散媒除去工程の後、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーを重合反応させる工程である。重合反応により、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーが硬化し、硬化性樹脂が形成する。
硬化方法には、公知の方法、例えば、UV硬化、熱硬化、水分硬化等が挙げられ、用いる樹脂のタイプによって適宜選択すればよい。好ましくは、熱処理による有機媒体の流出の観点や反応時間の観点からUV硬化であり、さらに好ましくは、膜厚硬化性の観点からカチオン型よりもラジカル型のUV硬化が好ましい。
<膜>
本発明の膜は、疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂、及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜であり、例えば、前述の本発明の膜の製造方法によって製造することができる。ここで膜とは、常温で流動せずに形状を保持する膜をいう。
本発明の膜及び本発明の製造方法によって製造される膜は、文献(超撥水・超撥油・滑液性表面の技術/発行者:元木浩/発行所:サイエンス&テクノロジー株式会社/2016年1月28日発行)に示される滑液表面性を示すことが好ましい。従って、本発明の膜の好ましい態様の一つは滑液膜であり、本発明の製造方法の好ましい態様の一つは滑液膜の製造方法である。
滑液表面性は、例えば、後述の実施例の「滑落角測定試験」に記載の方法により測定することができる。この試験によって測定される液滴の滑落角が90°以下の場合、その膜は滑液表面性を有すると言うことができる。滑落角は、滑液性の観点から、好ましくは80°以下、より好ましくは50°以下、更に好ましくは40°以下、更に好ましくは20°以下である。
従って、本発明の膜の製造方法により、例えば、固体表面を滑液表面に改質することができる。滑液表面に改質することにより、固体表面と比べて、流動物の固体表面への付着を抑制することができる。
本発明の膜中の[疎水変性セルロース繊維の質量]/[硬化性樹脂の質量]の比率としては、滑液速度の観点から、好ましくは66/10,000以上、より好ましくは66/1,000以上、更に好ましくは66/500以上、更に好ましくは66/300以上であり、一方、滑液性の耐久性の観点から、前記比率は好ましくは66/1以下、より好ましくは66/50以下、更に好ましくは66/100以下である。
本発明の膜中の疎水変性セルロース繊維の量は、膜の滑液表面性及び耐久性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
本発明の膜中の硬化性樹脂の含有量は、滑液性の耐久性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。一方、滑液速度の観点から、該含有量としては、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
本発明の膜中の、常温常圧で不揮発性の有機媒体の含有量は、滑液性の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。一方、膜の耐久性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
膜の耐久性の観点から、本発明の膜は更に前記高分子化合物を含むことが好ましい。かかる場合において、本発明の膜中の高分子化合物の含有量は、膜の耐久性の観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27質量%以下、更に好ましくは24質量%以下である。
本発明の膜の算術平均粗さは特に制限はなく、滑液表面性の観点から、膜の厚みとしては、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、経済性の観点から、好ましくは2,000μm以下、より好ましくは1,200μm以下、更に好ましくは500μm以下である。
本発明の膜は膜上に接触する流動物の付着抑制効果が高いことが一つの特徴である。具体的には、滑落速度は、好ましくは1.5cm/分以上、より好ましくは2.0cm/分以上、更に好ましくは2.5cm/分以上である。なお、滑落速度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の膜の用途としては、例えば、化粧料や食品等の包装容器、輸送用パイプの内装材、船底、電線等の被覆材が挙げられる。
<成形体>
膜を有する成形体は前述のようにして製造することができ、前述の膜を有する成形体は、本発明に包含される。本明細書において、成形体とは、ガラス、樹脂、金属、セラミックス又はコンクリート等を素材とする硬質表面や、繊維表面等表面を有する物体であり、本発明の膜がその固体表面上に形成される対象である。成形体の形状は特に限定されず、板状、(中空の)筒状及びフィルム状のものや、これらの成形体を所定の形状、例えばトレイ及び船底等にさらに加工したものが例示できる。
本発明の膜を前述のように固体表面に適用することにより、固体表面を滑液表面に改質することができる。従って本発明は、固体表面を滑液表面に改質するための前述の膜を包含するものである。本発明の膜は流動物の付着防止効果が高いだけでなく、膜自体の耐久性に優れるためにその効果を長期間維持できることから、各種用途、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の包装容器用の内装材、食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイや輸送用パイプ等、さらには船底や電線等の被覆材として好適に用いることができる。
成形体の具体例としては、記載事項に限定されるわけではないが、パイプ、配管、タンク、電線、ワイヤーロープ、標識版、冠雪防止板、ミラー、シェルター、照明灯、柵、信号機、ガード等の屋外設備や、換気扇、排水口、パッキン、洗面台、トイレ、浴室内部、洗濯機、空調、シンク、台所等の住宅設備や、屋根、壁、窓、トンネル、橋、物置等の建造物や、内視鏡、人工透析機、カテーテル、義歯、義歯を固定するための器具等の医療機器や、金属加工装置、金属加工器具、工作機械部品、食器、洗面桶等の器具や、船舶(船底)、自動車、飛行機、鉄道車両等の乗り物や、瓶、ボトル、パウチ、フィルム容器、ジャー容器、袋、トレイ、ブリスターパック、缶、紙パック、ポンプ、吐出具、ドラム容器、カートリッジ等の容器や、衣類、生理用品、おむつ等の不織布が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
〔アニオン変性セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
測定対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維径とみなすことができる。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔アニオン変性セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT−701)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔アニオン変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
ビーカーに、測定対象のセルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2−メチル−2−ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え常温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、イオン交換水にて洗浄を行い、アルデヒド基を酸化処理した測定対象のセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記アニオン性基含有量の測定方法で測定し、「酸化処理したアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量」を算出する。続いて、次式にて測定対象のアニオン変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理したアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量)−(測定対象のアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量)
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、商品名:MOC-120H)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量及び導入率(イオン結合)〕
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、下記式AおよびBにより、修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。式A、Bはアニオン性基がカルボキシ基の場合、即ち、酸化セルロース繊維の場合を示す。以下の「1720cm−1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
<式A>
修飾基の平均結合量(mmol/g)=a×(b−c)÷d
a:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
b:酸化セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度
c:疎水変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度
d:酸化セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度
1720cm−1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
<式B>
修飾基の導入率(%)=100×e/f
e:修飾基の結合量(mmol/g)
f:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
〔疎水変性セルロース繊維における結晶構造の確認〕
疎水変性セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式Cに基づいて算出する。
<式C>
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
〔疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維量(換算量)〕
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される「修飾基を導入するための化合物」が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Eによって算出する。
<式E>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾基を導入するための化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される「修飾基を導入するための化合物」が2種類以上の場合
各化合物のモル比率(即ち、添加される化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を案分して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
〔膜の算術平均粗さの測定〕
膜の算術平均粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いる。
調製例1(アニオン変性セルロース繊維の調製)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(ウエストフレザー社製、商品名:ヒントン)を原料のセルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム及び水酸化ナトリウムは市販品を用いた。
まず、メカニカルスターラー、テフロン(登録商標)製撹拌翼を備えた2LのPP製ビーカーに前記漂白クラフトパルプ繊維10g、イオン交換水990gをはかり取り、常温、100rpmで30分撹拌した。その後、該パルプ繊維10gに対し、TEMPO 0.13g、臭化ナトリウム1.3g、10.5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液35.5gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−701)でpHスタット滴定を用い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持した。撹拌速度100rpmにて反応を常温で120分行った後、水酸化ナトリウム水溶液の滴下を停止し、アニオン変性セルロース繊維の懸濁液を得た。
得られたアニオン変性セルロース繊維の懸濁液に0.01Mの塩酸を加えてpH=2とした後に、イオン交換水を用いて、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまで十分に洗浄し、次いで脱水処理を行って、アニオン変性セルロース繊維を得た。得られたアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.50mmol/g、アルデヒド基含有量は0.23mmol/gであった。
調製例2(微細化されたアニオン変性セルロース繊維の調製)
調製例1で最終的に得られたアニオン変性セルロース繊維の懸濁液(固形分含有量2.0質量%)100gを調製し、これに0.5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=8に調整後、イオン交換水を加えて合計200gとした。この懸濁液に、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)を用いて150MPaで微細化処理を3回行い、微細化されたアニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0%)を得た。この微細化されたアニオン変性セルロース繊維が有するカルボキシ基のカウンターイオンはナトリウムイオンであり、「TCNF(Na型)」と略記する。
調製例3(アルデヒド基を還元処理した微細化アニオン変性セルロース繊維の調製)
調製例2で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0%)182gをはかり取り、イオン交換水を加えて合計400gとした。そこに0.1M水酸化ナトリウム水溶液1.2mL、水素化ホウ素ナトリウム120mgを加え、常温で4時間撹拌した。次に、1M塩酸9mLを加えてプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水で6回洗浄して塩および塩酸を除去し、アルデヒド基が還元処理された微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量0.9%)を得た。得られたアルデヒド基を還元処理した微細化アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.50mmol/g、アルデヒド基含有量は0.02mmol/gであった。この微細化アニオン変性セルロース繊維が有するカルボキシ基は遊離酸型(COOH)となっており、「TCNF(H型)」と略記する。
製造例1(疎水変性セルロース繊維の製造)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維の分散液300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製「SS−3551」;「シリコーン1」と略記する。)を、該アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.5molに相当する量を仕込み、イソプロパノール100gを添加し、これらの混合物を常温(25℃)で14時間撹拌して反応させた。反応終了後ろ過し、得られたケークをイソプロパノールにて洗浄後、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて150MPaで10パス処理させることで、アニオン変性セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した疎水変性セルロース繊維を得た。修飾基の導入率はアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基の40%であった。この疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、平均繊維長は578nm、結晶化度は30%であった。
実施例1
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして膜を作製した。即ち、分散媒が混合物全体の95質量%になるように、かつ表1に示す組成の質量比になるように、疎水変性セルロース繊維、硬化性プレポリマー(日本合成化学社製「紫光UV−7000B」(Mw3500);「ウレタンアクリレート1」と略記する。)、有機媒体(スクアラン)及び分散媒(イソプロパノール)をスクリュー管内に配合した。更に光重合開始剤の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンをウレタンアクリレート1に対して4質量%配合した。次いで、スクリュー管の内容物を、マグネチックスターラーの回転数:500rpm、常温(25℃)で12時間撹拌した。その後、自動公転式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて2200rpmで2分撹拌して脱泡し、塗膜用の混合物を得た。
得られた塗膜用の混合物を、モデル固体表面としてのガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S2112)上、60mm×26mmの範囲にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて厚みが1000μmになるように塗膜した(工程1)。
次いで、該塗膜を常温・常圧で24時間乾燥することにより分散媒のイソプロパノールを揮発させ、硬化性プレポリマーが硬化する前の膜(膜厚:50μm)を得た(分散媒除去工程)。
次いで、UV照射機(FUSION UV SYSTEMS JAPAN社製、UV-1100-G)を用いて、速度15.8cm/min、出力90%、ランプ高さ67mm、2Passの条件で該膜にUV照射して該硬化性プレポリマーを重合させて、該硬化性プレポリマーが硬化した膜を得た(工程2)。膜厚は50μmであった。
実施例2
工程1において、高分子化合物を表1に示す質量比で更に混合物に添加したこと以外は実施例1と同じ方法で、工程1、分散媒除去工程及び工程2をこの順序で実施して、硬化性プレポリマーが硬化した膜を得た。
実施例2で使用した高分子化合物のポリアミドは次のようにして調製した。
ハリダイマー 250K:450gを2Lセパラフラスコにとり、70℃に昇温した後に窒素置換を行った。その後、エチレンジアミン:45g、ジエチレントリアミン:5gを徐々に添加し、添加後に内温が145℃になるまで昇温を行った。145℃で1時間撹拌した後に、内温を210℃に昇温し、6時間撹拌を行った。その後、内温を210℃に保ったまま、内圧を45KPaになるまで真空ポンプを用いて減圧を行い、0.5時間撹拌を行い、ポリアミドを調製した。質量平均分子量は33,000であった。
ハリダイマー 250K(ハリマ化成株式会社製):Cas番号61788-89-4:100%(C36 Dimer acid)
なお、ポリアミドにおけるジエチレントリアミンの含有率は3.0モル%であった。
高分子化合物の分子量測定方法
質量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミッション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR−Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは、溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのファーミンDM20(花王株式会社製)のクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で行った。検量線の作成のための標準ポリマーとしては、ポリスチレン(東ソー株式会社製)を使用した。
比較例1
硬化性プレポリマーを配合しなかったこと及びUV照射を行わなかったこと以外は実施例1と同じ方法で、工程1、分散媒除去工程及び工程2をこの順序で実施して、膜を得た。
比較例2
硬化性プレポリマーを配合しなかったこと以外は実施例2と同じ方法で、工程1、分散媒除去工程及び工程2をこの順序で実施して、膜を得た。
上記実施例及び比較例に関して、次の試験を行った。なお、次の試験は常温下で実施した。試験で使用した流動物Aの詳細は以下の通りである。
コータミンE−80K(花王株式会社製):3質量%
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製):1質量%
イオン交換水:残部
試験例1(滑落速度の測定)
各実施例又は比較例で製造した膜上の一か所に流動物Aをスポイトを用いて50mg置いて、膜を90°傾けた。そして、1分間当たりに流動物Aが膜上を滑落する距離を測定し、滑落速度を算出した。結果を表1に示す。
試験例2(摩擦処理後の滑液性評価)
(1)摩擦処理
摩耗摩擦試験機(新東科学製)を用いて、各実施例又は比較例で製造した膜を部分的に摩擦処理した。具体的には、膜上に直径10mmのSUSボールを一つ置き、ボールに対し、治具を用いて200gの荷重を与えた状態で、移動距離20mm、速度2000mm/minの条件で往復30回擦った。
(2)滑液性の評価
摩擦処理後の膜上に流動物Aを50mg置いて、試験例1と同じ方法で流動物Aが滑落する様子を観察し、滑落速度を求めて、下記の評価基準で摩擦処理後の滑液性を評価した。なお、膜上のボール治具が接触した部位に流動物Aを置いた。
5:摩擦処理前と同じ滑落速度、即ち摩擦処理前の滑液性と同等であった。
4:摩擦部分で滑落速度が低下するが、停止はせず、流動物Aは全て滑落した。
3:摩擦部分で滑落速度が低下し、一旦停止することがあるが、最終的に流動物Aは全て滑落した。
2:摩擦部分で一部流動物Aが残った。
1:摩擦部分で流動物Aの全てが停止し、滑落しなかった。
評価基準の数値が大きいほど、膜と基板との間の接着性が高いことを示した。
試験例3(テープ剥離試験)
各実施例及び比較例の工程1において、モデル基板としてのガラス基板の代わりに、フィルム厚みが50μmのLLDPEフィルム(三井化学東セロ社製、TUX MC-S)を用いて、そのコロナ処理面に混合物を塗工した。次いで、実施例1の分散媒除去工程及び工程2と同じ処理を実施して、膜を得た。
次いで、膜上に25枚のテープ(リンテック社製、ユポ80(UV)MF 8LK、剥離強度:5.5N/25mm)を貼り付けた。25枚のテープの剥離は、テープを張り付けてから1分以内に行った。フィルムに対し60°の角度でテープを剥離した。フィルム上に膜が接着したままの枚数を数え、表1に記載した。接着したままの枚数が多いほど、フィルムと膜との接着性が高いことを示す。
Figure 2020195932
上記の実験より次のことが分かった。実施例1、2は比較例1、2に比べて、滑液性の耐久性が高い結果が得られ、接着性に関しても改善されることが分かった。また、硬化性プレポリマーを添加した場合、意外にも摩擦前の滑落速度は悪影響を受けずに維持されており、摩擦処理後も滑落速度は低下しない結果となった。さらに実施例2は実施例1と比較して膜が平滑になっており、このことは、高分子化合物の添加の効果によるものと推定された。
実施例3〜4、7及び8
硬化性プレポリマーとしてのウレタンアクリレート1に代えて表2に記載の各ウレタンアクリレート2〜5を用いたこと以外は実施例2と同じ方法で、工程1、分散媒除去工程及び工程2をこの順序で実施して、硬化性プレポリマーが硬化した膜を得た。
各ウレタンアクリレートの詳細は次の通りである。
ウレタンアクリレート2:日本合成化学社製、紫光UV−6630B(Mw3000)
ウレタンアクリレート3:日本合成化学社製、紫光UV−7550B(Mw2400)
ウレタンアクリレート4:日本合成化学社製、紫光UV−3310B(Mw5000)
ウレタンアクリレート5:日本合成化学社製、紫光UV−6630B(Mw11000)
実施例5
硬化性プレポリマーとしてのウレタンアクリレート1に代えてエポキシプレポリマー(ADEKA社製、アデカアークルズKRX−3303)を使用したこと以外は実施例2と同じ方法で工程1及び分散媒除去工程を実施して、硬化性プレポリマーが硬化する前の膜を得た。なお、エポキシプレポリマー中に光重合開始剤が添加されているため、光重合開始剤は添加しなかった。
次いで、UV照射機(EYE GRAPHICS社製、EYE INVERTOR GRANDAGE(4kW))を用いて、速度60cm/min、4kW、高さ150mm、1Passの条件で該膜にUV照射して該硬化性プレポリマーを重合させて、該硬化性プレポリマーが硬化した膜を得た(工程2)。
実施例6
硬化性プレポリマーとしてのウレタンアクリレート1に代えて、(1)硬化性モノマーとしてのブロック型イソシアネート(旭化成社製、デュラネートMF−K60B)及び(2)硬化性プレポリマーとしてのポリオール(旭化成社製、デュラノールT5650E)を使用したこと以外は実施例2と同じ方法で工程1及び分散媒除去工程を実施して、硬化性モノマー及び硬化性プレポリマーが硬化する前の膜を得た。イソシアネートとポリオールのモル比がNCO/OH=1.0となるようにし、イソシアネートとポリオールの合計量を表2のウレタンとして配合した。なお、これらの硬化性モノマー及び硬化性プレポリマーはUV硬化反応で硬化するタイプではないので、光重合開始剤を添加しなかった。
次いで、ガラス基板上の硬化前の膜を、90℃で3時間硬化反応させることで硬化させた膜を得た(工程2)。
試験例4(硬化性樹脂の表面自由エネルギーの検討)
種々の硬化性樹脂の単一硬化膜の表面自由エネルギーと、形成される膜の効果との関係について検討した。
(1)硬化性樹脂の単一硬化膜の静的接触角の測定
疎水変性セルロース繊維、有機媒体及び高分子化合物を配合しなかったこと以外は実施例2〜8と同じ方法で、ガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S2112)上に硬化性樹脂の単一硬化膜(硬化後の膜)を形成させた。次いで、各膜の水及びジヨードメタンの静的接触角を測定した。
静的接触角の測定は次のようにして行った。全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、膜に対して水又はジヨードメタンを1μL滴下した。次いで、1秒静置後の液滴の静的接触角を測定した。結果を表2に示す。
(2)表面自由エネルギーの算出
測定された水及びジヨードメタンについての静的接触角の数値を基に、下記式を用いて、硬化性樹脂の表面自由エネルギーの極性成分(γs p)及び分散成分(γs d)をそれぞれ求めた。結果を表2に示す。
Figure 2020195932
試験例6(滑落角測定試験)
全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、実施例3〜9にて製造された膜に対して8μLの水滴(23℃)を滴下し、1秒静置した後に1°/sの速さで膜表面を90°まで傾け、液滴が流れ始める角度を測定した。
さらに、各実施例の膜について、前述の試験例2と同じ摩擦処理を行った。摩擦処理後の膜についても、同様にして滑落角を測定した。結果を表2に示す。
試験例7(テープ剥離試験)
前述の試験例3と同じ方法で、実施例3〜8における膜についてのテープ剥離試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2020195932
実施例2〜8についての結果を表2にまとめた。
表2より、全ての実施例において接着性が改善されたことが確認できた。特に、実施例2〜5及び7〜8では、接着性が非常に優れていたことが分かった。実施例2〜6は摩擦処理後の滑落角が低く、膜の滑液性の耐久性が高い結果が得られた。これは硬化性樹脂の極性成分が適当な場合、硬化性樹脂とセルロース繊維とが相互作用する力が強くなり耐久性が向上すると考えられる。
実施例9、比較例3
実施例2又は比較例2において調製された塗膜用の混合物を用いて、次のようにして膜を製造した。
すなわち、10cm四方のコンクリート試験片上に、バーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP−13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水性アクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A-1127)を塗工した。常温で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(コンクリート)と下層体との積層構造物を得た。なお、形成された下層体の厚みは3μmであった。次いで、実施例2又は比較例2において調製された塗膜用の混合物を、前記下層体上に塗工、乾燥、硬化させて膜厚が40μmの膜(上層体)を形成させ、上層体、下層体及び基板からなる積層体を得た。
試験例8(膜の汚れ除去性の評価)
直径2cmの円状に、油性マジック又は油性ラッカースプレーを積層体の膜上に塗布し、直ちに布でこすってその除去性を評価した。評価基準は以下となる。
5:90%以上除去
4:80%〜90%除去
3:50%〜80%除去
2:30〜50%除去
1:0〜30%除去
3以上を合格とした。
本試験を10回同一箇所で繰り返し行い、その1回目と10回目の評価結果を表3に示す。
Figure 2020195932
表3より、硬化性樹脂を含む膜は、汚れである油性マジックや油性ラッカーを容易に除去できる効果を持続できたことが分かった。
比較例4
疎水変性セルロース繊維を配合しなかったこと以外は実施例2と同じ方法で、工程1、分散媒除去工程及び工程2をこの順序で実施して、膜を得た。
試験例9(滑落角測定試験)
全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、実施例2又は比較例4にて製造された膜に対して8μLの水滴(23℃)を滴下し、1秒静置した後に1°/sの速さで膜表面を90°まで傾け、液滴が流れ始める角度を測定した。さらに、同一箇所にて繰り返し同様の試験を行い、3回目の時点での滑落角を測定した。結果を表4に示す。
Figure 2020195932
上記の実験より次のことが分かった。実施例2は比較例4に比べて膜の平滑性が高く、滑液性も優れており、そのうえ繰り返し滑液試験を行った後も平滑性と滑液性を維持できることが分かった。かかる効果は、疎水変性セルロース繊維が均一な膜を形成する役割を担い、かつ形成するネットワーク構造により有機媒体の保持力が高まったためであると推定される。
本発明の膜は、化粧料や食品の包装容器の内装材の分野や、種々の建材や輸送用パイプ等の分野に利用することができる。

Claims (9)

  1. 疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜の製造方法であって、下記工程1及び2を含む膜の製造方法。
    工程1:疎水変性セルロース繊維、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマー及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む混合物の塗膜を形成させる工程
    工程2:工程1の後、硬化性モノマー又は硬化性プレポリマーを重合反応させる工程
  2. 工程1における混合物が分散媒を更に含有し、
    工程1で形成された塗膜から前記分散媒を除去する工程を工程1と工程2との間に実施する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程1における混合物が前記硬化性樹脂以外の高分子化合物を更に含有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 工程2における重合反応がUV硬化反応である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 工程1における混合物中の[疎水変性セルロース繊維の質量]/[硬化性モノマー及び硬化性プレポリマーの合計質量]の比率が、66/10,000以上、66/1以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 疎水変性セルロース繊維、硬化性樹脂、及び常温常圧で不揮発性の有機媒体を含む膜。
  8. 更に前記硬化性樹脂以外の高分子化合物を含む、請求項7に記載の膜。
  9. 工程1における混合物中の[疎水変性セルロース繊維の質量]/[硬化性モノマー及び硬化性プレポリマーの合計質量]の比率が、66/1,000以上、66/1以下である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の膜。
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