JP2019182997A - 疎水変性セルロース繊維及び油を配合してなる膜 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕 アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にシリコーン化合物が結合されてなる疎水変性セルロース繊維とSP値が10以下の油とを配合してなる膜であって、疎水変性セルロース繊維におけるシリコーン化合物の平均結合量が0.8mmol/g以上である、膜。
本発明の膜は、特定の疎水変性セルロース繊維とSP値が10以下の油とが配合されてなる。ここで膜とは、室温で流動せずに形状を保持する膜をいう。膜の表面硬度としては、例えば、微小硬度計で測定した場合、次の式により算出されるマルテンス硬さ(HM)が0.1(N/mm2)以上の膜が好ましい。具体的には、後述の実施例に記載の方法により膜のマルテンス硬さが測定される。
HM=F/(26.43×hmax2)
F:試験力(N)
hmax:押し込み深さの最大値(mm)
本発明の膜は、文献(超撥水・超撥油・滑液性表面の技術/発行者:元木浩/発行所:サイエンス&テクノロジー株式会社/2016年1月28日発行)に示される滑液表面性を示すことが好ましい。本明細書において、かかる滑液表面性を発揮する膜を「滑液表面膜」とも称する。
本発明における流動物とは、例えば化粧料や食品そのものといった、包装対象又は被覆対象の物である。本発明の膜において付着を抑制できる流動物は特に限定されないが、本発明の効果が発現し易い観点から、流動物の粘度は、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは0.5mPa・s以上、更に好ましくは0.8mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは80,000mPa・s以下、更に好ましくは50,000mPa・s以下である。なお、流動物の粘度は、E型粘度計(25℃、1rpm、1分後、標準コーンロータ、ロータコード:01)により測定することができる。
また、本発明の効果が発現し易い観点から、流動物の表面張力は、好ましくは15mN/m以上、より好ましくは18mN/m以上、更に好ましくは20mN/m以上であり、同様の観点から、好ましくは75mN/m以下である。なお、流動物の表面張力は、プレート法(Wilhelmy法)により測定することができる。
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にシリコーン化合物が結合されてなるものであり、SP値10以下の油に分散性を示すものであればより好ましい。SP値10以下の油に対して分散性を有するとは、例えば、油と対象の疎水変性セルロース繊維との混合液の粘度をE型粘度計(25℃、1rpm、1分後、標準コーンロータ、ロータコード:01)を用いて測定した場合、増粘が観測されることをいう。例えば、本発明における疎水変性セルロースとしては、SP値10以下の油の代表例としてスクアラン中にセルロース繊維の含有量を0.5質量%になるように調製した液の微細化処理後の分散液粘度が50mPa・s以上になるものが好ましい。なお、微細化処理は、後述の方法により行うことができる。
疎水変性セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、セルロース繊維への導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
アニオン変性の対象となるセルロース繊維としては、前記の原料のセルロース繊維が挙げられる。分散性の観点から、原料のセルロース繊維を、アルカリ加水分解処理や酸加水分解処理等で短繊維化処理した平均繊維長が1μm以上であり、1,000μm以下であるセルロース繊維を用いることが好ましい。
セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
シリコーン化合物としては、アニオン性基とイオン結合又は共有結合を介して容易に結合し得る観点から、分子内にアミノ基を有するシリコーン化合物(本明細書において、「アミノ変性シリコーン化合物」とも称する。)が好ましい。
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10〜20,000mm2/s、アミノ当量400〜8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
−C3H6−NH2
−C3H6−NH−C2H4−NH2
−C3H6−NH−[C2H4−NH]e−C2H4−NH2
−C3H6−NH(CH3)
−C3H6−NH−C2H4−NH(CH3)
−C3H6−NH−[C2H4−NH]f−C2H4−NH(CH3)
−C3H6−N(CH3)2
−C3H6−N(CH3)−C2H4−N(CH3)2
−C3H6−N(CH3)−[C2H4−N(CH3)]g−C2H4−N(CH3)2
−C3H6−NH−cyclo-C5H11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1〜30の数である。)
H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2 (a2)
(a1−2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16−209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ−3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)がより好ましい。
本発明で用いられる疎水変性セルロース繊維は、前記したアニオン変性セルロース繊維にシリコーン化合物を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。以下、アニオン変性セルロース繊維の好ましい一態様としての酸化セルロース繊維を用いた場合を説明する。なお、ここでいう酸化セルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011−140632号公報に記載の方法を参照にし、更に、前述の追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
〔態様A〕
工程(1):天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、酸化セルロース繊維を得る工程
工程(2A):工程(1)で得られた酸化セルロース繊維と、シリコーン化合物を導入するための化合物とを混合する工程
〔態様B〕
工程(1):天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、酸化セルロース繊維を得る工程
工程(2B):工程(1)で得られた酸化セルロース繊維と、シリコーン化合物を導入するための化合物とをアミド化反応させる工程
工程(1)は、天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、酸化セルロース繊維を得る工程である。具体的には、天然セルロース繊維に対して、特開2015−143336号又は特開2015−143337号に記載の、酸化処理工程(例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)を用いた酸化処理)及び精製工程(必要により)を行うことで、カルボキシ基含有量が好ましくは0.1mmol/g以上の酸化セルロース繊維が得られる。TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(−CH2OH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位の水酸基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。
次に、(必要により行われてもよい)精製工程後に工程(1)で得られた酸化セルロース繊維を微細化する工程を行って、微細な酸化セルロース繊維を得る。微細化工程では、精製工程を経た酸化セルロース繊維を溶媒中に分散させ、微細化処理を行うことが好ましい。
第1の製造形態において、工程(2A)は、前記工程を経て得られた酸化セルロース繊維とシリコーン化合物とを混合して、疎水変性セルロース繊維を得る工程である。具体的には、酸化セルロース繊維とシリコーン化合物とを溶媒中で混合すればよく、例えば、特開2015−143336号に記載の方法に従って製造することができる。
第1の製造形態において、工程(2B)は、前記工程を経て得られた酸化セルロース繊維とシリコーン化合物とをアミド化反応させて、セルロース繊維を得る工程である。前記混合方法としては、原料が反応する程度のものであれば特に問題なく、具体的には、前記原料を縮合剤の存在下で混合し、酸化セルロース繊維に含有されるカルボキシ基とシリコーン化合物、好ましくはアミノ変性シリコーン化合物のアミノ基とを縮合反応させてアミド結合を形成する。
得られた疎水変性セルロース繊維は、前記の後処理を行った後の分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の疎水変性セルロース繊維を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、疎水変性セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
本発明においては、SP値が10以下の油を、膜を構成する潤滑油として使用する。
本発明の膜中の疎水変性セルロース繊維の配合量としては、特に限定されないが、膜の滑液表面性及び耐久性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは48質量%以下である。
任意成分としては、例えば、分子量10万以上の高分子化合物(例えば縮重合系高分子、メタクリル系及びアクリル系高分子等)が挙げられる。
本発明の成形体への膜の形成方法とは、疎水変性セルロース繊維とSP値が10以下の油とを含有する分散体を調製する工程1、及び工程1で調製された分散体を成形体に塗布する工程2を有するものである。
疎水変性セルロース繊維とSP値が10以下の油とを含有する分散体は、これらの成分と溶媒とを混合することにより調製することができる。
工程1で得られた分散体を、ガラス、樹脂等の固体表面を有する成形体に塗布する。塗布の方法としては、例えば、アプリケーター、バーコーダー、スピンコーター等を使用して塗布する方法が挙げられる。成形体上の塗膜の厚みとしては、滑落速度、耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μmであり、塗布性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、更に好ましくは1200μm以下である。
膜を有する成形体は前述のようにして製造することができ、前述の本発明の膜を有する成形体は、本発明に包含される。
本発明の一態様として、前記疎水変性セルロース繊維とSP値が10以下の油とを有する膜用分散体が提供される。かかる膜用分散体は、膜、好ましくは滑液表面膜を形成させるための塗工液として提供され得る。かかる膜用分散体は、必要に応じて、前記[成形体への膜の形成方法]に列挙された溶媒やその他の成分を含有していてもよい。
対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料とした。原子間力顕微鏡(AFM、Digital instrument社製、商品名:Nanoscope III Tapping mode AFM、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中の対象のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅とみなすことができる。
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとする。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−710)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)
ビーカーに、測定対象のセルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2−メチル−2−ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え室温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し、アルデヒドを酸化処理した対象のセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を前記のアニオン性基含有量の測定方法で測定し、酸化処理された対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。続いて、式1にて対象のセルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理された対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量)−(酸化処理前の対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
ハロゲン水分計(島津製作所社製、商品名:MOC−120H)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
シリコーン化合物の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、次式により、シリコーン化合物の平均結合量及び導入率を算出する。以下、アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。「1720cm−1のピーク強度」とは、カルボン酸(カルボキシ基)中のカルボニル基に由来するピーク強度のことである。なお、アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基がカルボキシ基以外の基の場合であっても、ピーク強度の値を適宜変更することにより、対象の疎水変性セルロース繊維におけるシリコーン化合物の平均結合量及び導入率を算出することができる。
シリコーン化合物の平均結合量(mmol/g)=[アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(アニオン変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度 − 疎水変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度)÷アニオン変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度]
シリコーン化合物の導入率(%)={シリコーン化合物の平均結合量(mmol/g)/アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
シリコーン化合物の平均結合量を下記式により算出する。以下、アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。なお、アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基がカルボキシ基以外の基の場合であっても、カルボキシ基を当該アニオン性基に置き換えることにより、対象の疎水変性セルロース繊維におけるシリコーン化合物の平均結合量及び導入率を算出することができる。
シリコーン化合物の平均結合量(mmol/g)=アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)−疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
シリコーン化合物の導入率(%)={シリコーン化合物の平均結合量(mmol/g)/アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
疎水変性セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、商品名:RigakuRINT 2500VC X−RAY diffractometer)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出する。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
一方、前記の式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編)のP199−200の記載に則り、以下の式(B)に基づいて算出することが好ましい。
したがって、前記の式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100 (B)
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0−11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaはアモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める。〕
膜の算術平均粗さは次のようにして測定する。膜の算術平均粗さはレーザー顕微鏡(キーエンス社製、商品名:VK−9710)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。膜の算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いる。
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加されるシリコーン化合物が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+シリコーン化合物の分子量(g/mol)×シリコーン化合物の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加されるシリコーン化合物が2種類以上の場合
各シリコーン化合物のモル比率(即ち、添加されるシリコーン化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維とシリコーン化合物との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「シリコーン化合物の分子量」とは、「シリコーン化合物全体の分子量」を指す。一方、セルロース繊維とシリコーン化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「シリコーン化合物の分子量」とは、「シリコーン化合物全体の分子量−18」である。
調製例1(天然セルロース繊維にN−オキシル化合物を作用させて得られる酸化セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名:Machenzie、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウム及び臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
ビーカーに調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液3846.15g(固形分含有量1.3質量%)を投入し、ここに1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製、純度95質量%)を2.63g仕込み、室温下3時間反応させアルデヒド基の還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、室温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。最後にイソプロパノールで溶媒置換し、アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液を得た。得られたアルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基含有量は0.02mmol/gであった。
製造例1
マグネチックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた酸化セルロース繊維分散液300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:BY16−209;「シリコーン1」と略記する。)を、酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.7molに相当する量を仕込み、イソプロパノール100gを添加し、これらの混合物を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、得られたケークをイソプロパノールにて洗浄後、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間撹拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて100MPaで1パス、150MPaで9パス微細化処理を行うことで、酸化セルロース繊維のカルボキシ基に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して結合した疎水変性セルロース繊維を得た。シリコーン化合物の導入率は酸化セルロース繊維のカルボキシ基の60%であった。
シリコーン化合物及び仕込み量を表1に示す通りに変更した点以外は製造例1と同様の方法で、疎水変性セルロース繊維を得た。なお、表1中のシリコーン化合物の詳細は次の通りである。
シリコーン2:東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:SF8417
シリコーン3:東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:FZ−3760
製造例1〜6で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして分散体を得た。即ち、疎水変性セルロース繊維中のセルロース繊維が分散体全体の0.1質量%になるように、疎水変性セルロース繊維及び油(スクアラン)をスクリュー管内に配合した。次いで、スクリュー管の内容物を、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて100MPaで8パス処理を行った。次いで、波長660nmにおける光線透過率を、ダブルビーム分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、商品名:U−2910)及び光路長10mmの石英セルを用いて、25℃、1分の条件で測定した。スクアランのみの測定値を100%とした、それぞれの分散体の透過率の相対値を表1に示す。透過率が高いほど、疎水変性セルロース繊維が油中に良好に分散にしていることを示す。
一方、シリコーン化合物の平均結合量が0.8mmol/g未満である製造例6においては、製造例1〜5に比べて、透過率が低いことから、疎水変性セルロース繊維の油中への分散性が製造例1〜5に劣っていることが分かった。
実施例1〜7、比較例1
製造例1〜6で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして塗膜用の分散体を調製し、膜を作製した。即ち、溶媒が分散体全体の90質量%になるように、かつ疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:油が表2に示す質量比になるように、疎水変性セルロース繊維、油(スクアラン)及び溶媒(イソプロパノール)をスクリュー管内に配合した。次いで、スクリュー管の内容物を、マグネチックスターラーの回転数:500rpm、室温(25℃)で12時間撹拌した。その後、自動公転式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて2200rpmで2分撹拌して脱泡し、塗膜用の分散体を得た。得られた塗膜用分散体を、モデル成形体としてのガラス基板(MATSUNAMI社製、Micro Slide Glass S2112)上にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて厚みが400μmになるように塗膜し、常温・常圧で12時間乾燥することによりイソプロパノールを揮発させ、膜厚が40μmの膜を得た。
スクアラン(和光純薬製、SP値:7.9)
特記がない限り、以下の試験は室温下で実施した。試験で使用した流動物Aの詳細は以下の通りである。
コータミンE-80K(花王株式会社製):3質量%
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製):1質量%
イオン交換水:残部
室温20℃にて、各実施例又は比較例で作製した膜に対して8μLの水の液滴(20℃)を滴下し、10秒静置した後に1°/sの速さで膜表面を傾け、液滴が流れ始める角度を測定した。この試験を30回実施した。1回目及び30回目の滑落角を表2に示す。
各実施例又は比較例で作製した膜上に、膜中の油の質量に対して100倍量の流動物Aを塗布し、室温で静置した。72時間後に流動物Aのサンプリングを行い、膜から流動物Aへの油の移行性を評価した。移行性は、油移行率として、元々膜中に含まれていた全ての油の質量を100とした際の、サンプリングされた流動物A(サンプル)中に移行した全ての油の量(質量%)で評価した。サンプル中のスクアランはGCを用いて下記条件により測定した。
下記測定メソッドにおいて、18.9分に検出されるスクアラン由来のピーク面積より、移行率を測定した。
カラム:DB−5 (Agilent)、12m×200μm×0.33μm
メソッド:100℃で3分保持→10℃/分で100℃から320℃まで昇温→320℃で15分保持
ディテクター:330℃(FID)、H2:30mL/分、Air:400mL/分、He:30mL/分
キャリアガス:He
注入量:1μL
サンプル:サンプリング後イソプロパノールで100倍希釈した溶液
各実施例又は比較例で作製した膜上に流動物Aを50mg置き、膜を90°傾け、1分間当たりに流動物Aが滑落する距離を測定した。代表例として、実施例1の膜の滑落速度は7.5cm/minであった。
各実施例又は比較例で作製した膜に対して硬度試験測定器(島津サイエンス社製、DUH−211)を用いて下記条件で表面硬度(マルテンス硬度)の測定を行った。結果を表6に示す。
試験力:0.1mN
負荷保持時間:5(s)
除荷保持時間:1(s)
前記の各実施例及び比較例で調製された塗膜用の分散体について、室温下で保管し、目視で分散体の状態を観察した。下記の評価基準による評価を行い、安定性評価とした。結果を表2に示す。
5:1週間以上安定に分散
4:1週間後に分離。
3:3日後に分離。
2:1日後に分離。
1:撹拌終了直後に分離。
疎水変性セルロース繊維におけるシリコーン化合物の平均結合量が0.8mmol/g以上である実施例1〜7においては、膜の平滑性や滑液性に優れ、油の流動物への移行性が小さく、分散体の分散性や安定性が高く、膜の表面硬度も十分に高いものであった。滑落角に関して、1回目における値と30回目における値とはほぼ同様であり、かつ十分に小さい値であったことから、本発明の膜は繰り返し使用しても付着防止効果を維持できる耐久性に優れた膜であることが分かった。
一方、疎水変性セルロース繊維におけるシリコーン化合物の平均結合量が0.8mmol/g未満である比較例1においては、実施例1〜7に比べて、分散体の安定性は同等であったものの、膜の平滑性や滑液性、油の流動物への移行性、分散体の分散性及び膜の表面硬度の点で劣っていた。滑落角に関して、1回目では(実施例よりも大きな値ではあったものの)値を測定することができたが、30回目においては液滴が滑落しなかった。このことから、比較例1の膜は繰り返し使用すると付着防止効果を維持できない、耐久性に劣る膜であることが分かった。
Claims (5)
- アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にシリコーン化合物が結合されてなる疎水変性セルロース繊維とSP値が10以下の油とを配合してなる膜であって、疎水変性セルロース繊維におけるシリコーン化合物の平均結合量が0.8mmol/g以上である、膜。
- アニオン性基がカルボキシ基である、請求項1に記載の膜。
- シリコーン化合物がアミノ変性シリコーン化合物である、請求項1又は2に記載の膜。
- 平均結合量が1.3mmol/g以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜。
- 疎水変性セルロース繊維中のセルロース繊維とSP値が10以下の油との質量比(セルロース繊維:SP値が10以下の油)が1:1〜1:100である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜。
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