JP2022117975A - 乳化組成物の製造方法 - Google Patents

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黎明 竹内
Reimei Takeuchi
里奈子 羽野
Rinako Hano
成実 駒見
Narumi Komami
嘉則 長谷川
Yoshinori Hasegawa
穣 吉田
Minoru Yoshida
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Abstract

【課題】部分中和アニオン変性セルロース繊維を用いることで、容易にセルロース繊維を解繊することができ、さらに、乳化安定性に優れると共に低粘度のアニオン変性セルロース繊維を含有する乳化組成物の製造方法を提供すること。【解決手段】下記工程1及び工程2を有する、乳化組成物の製造方法。工程1:部分中和アニオン変性セルロース繊維を解繊して、アニオン変性セルロース繊維の水分散体を得る工程;工程2:工程1で得られたアニオン変性セルロース繊維の水分散体、油剤、及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する工程。【選択図】なし

Description

本発明は乳化組成物の製造方法に関する。
従来より、セルロース繊維を含む乳化組成物が知られている。
例えば、特許文献1には、下記の(A)成分および(B)成分を含有することを特徴とする粘性水系組成物が開示されている。(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2~150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてカルボキシル基に変性され、それによってカルボキシル基が0.6~2.0mmol/gの割合になっており、かつそのカルボキシル基が、有機概念図における有機性値が300以下のモノアミンとの塩となっている、セルロース繊維。(B)水。
特許文献1には、アニオン変性セルロース微細繊維に、有機性値が300以下のモノアミンを塩として結合させることで、保形性、分散安定性、耐塩性に優れるとともに、乳化安定性に優れた粘性水系組成物を製造できることが記されている。
特開2012-126786号公報
しかしながら、前記特許文献1では、得られた乳化組成物の乳化安定性と粘度との両立については考慮されていない。
本発明の第1の態様は、乳化安定性に優れると共に低粘度のアニオン変性セルロース繊維を含有する乳化組成物についての製造方法に関する。
また、従来、アニオン変性セルロース繊維の水分散体を得るには、アニオン性基が遊離酸型の状態では、解繊処理が困難なため、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基を完全に中和した後、解繊処理を行っていた。
本発明の第2の態様は、部分中和アニオン変性セルロース繊維を用いることで、容易にセルロース繊維を解繊することができ、さらに、乳化安定性に優れると共に低粘度のアニオン変性セルロース繊維を含有する乳化組成物の製造方法に関する。
本発明の第1の態様は下記〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 部分中和アニオン変性セルロース繊維の水分散体、
油剤、及び
カチオン性基を有する有機化合物
を混合する工程を有する、乳化組成物の製造方法。
〔2〕 前記〔1〕に記載の製造方法によって製造される、乳化組成物。
〔3〕 前記〔2〕に記載の乳化組成物を乾燥して得られる、膜。
本発明の第2の態様は下記〔4〕~〔6〕に関する。
〔4〕 下記工程1及び工程2を有する、乳化組成物の製造方法。
工程1:部分中和アニオン変性セルロース繊維を解繊して、アニオン変性セルロース繊維の水分散体を得る工程
工程2:工程1で得られたアニオン変性セルロース繊維の水分散体、油剤、及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する工程
〔5〕 前記〔4〕に記載の製造方法によって製造される、乳化組成物。
〔6〕 前記〔5〕に記載の乳化組成物を乾燥して得られる、膜。
本発明の製造方法によれば、乳化安定性に優れ、低粘度を示すアニオン変性セルロース繊維を含有する乳化組成物を簡便に製造することができる。
〔乳化組成物の製造方法〕
本発明の第1の態様は、本発明者らが上記課題解決のために鋭意検討した結果、部分中和アニオン変性セルロース繊維水分散体、油剤及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する製造方法であり、乳化安定性に優れた、低粘度の乳化組成物を得られることを見出した。
本発明の第1の態様に用いられるアニオン変性セルロース繊維の水分散体を得るには、本発明の第2の態様の工程1を用いることが好ましい。
本発明の第2の態様は、下記工程1及び工程2を有する、乳化組成物の製造方法である。
工程1:部分中和アニオン変性セルロース繊維を解繊して、アニオン変性セルロース繊維の水分散体を得る工程
工程2:工程1で得られたアニオン変性セルロース繊維の水分散体、油剤、及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する工程
[態様2の工程1]
工程1では、アニオン変性セルロース繊維が有するアニオン性基を完全に中和することなく、アニオン性基のうちの、好ましくは2%以上90%以下を金属イオン又はアンモニウムイオンで中和することで、意外にも繊維の十分な解繊を達成することができ、解繊後にアニオン性基を遊離酸型に戻さなくても乳化組成物を調製することができるという製造プロセス上の利点を、本発明は有する。
第2の態様における工程2は、本発明の態様1と同じである。
[アニオン変性セルロース繊維]
アニオン変性セルロース繊維は、セルロース繊維を原料として、公知の方法によりアニオン性基を導入することによって得ることができる。原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられる。アニオン性基としては、糖鎖切断効率の観点から、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。アニオン性基の結合安定性の観点から、アニオン変性セルロース繊維がカルボキシ変性セルロース繊維であることがより好ましく、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維であることが更に好ましい。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは1μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下である。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、好ましくは100μm以上であり、好ましくは5,000μm以下である。
公知のアニオン変性セルロース繊維を製造するための一態様としては、例えばWO2019/235557に記載されたような、触媒として2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を使用する方法が挙げられる。かかる製造方法では、原料セルロース繊維として、好ましくは天然セルロース繊維を使用し、触媒としてTEMPOすることによって、アニオン性基としてのカルボキシ基をセルロース繊維に導入する。
工程1に用いられるアニオン変性セルロース繊維のセルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは1μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下である。
アニオン変性セルロース繊維は、好ましくはセルロースI型結晶構造を有するものである。アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は、成膜時の強度発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。なお、本明細書において、各種セルロース繊維の結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
[部分中和アニオン変性セルロース繊維]
本明細書において、部分中和アニオン変性セルロース繊維とは、アニオン変性セルロースが有するアニオン性基の一部が、陽イオンで中和されたアニオン変性セルロースである。本発明では、かかる部分中和アニオン変性セルロース繊維の水分散体を用いて乳化組成物を製造する。
アニオン変性セルロースが有するアニオン性基の一部を中和する陽イオンは、アニオン変性セルロース繊維の解繊し易さ及び最終的に得られる乳化組成物の乳化安定性の観点から、好ましくは1価の陽イオンからなる群より選択される1種又は2種以上、より好ましくは金属イオン及びオニウムイオンからなる群から選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくはアルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンから選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくはナトリウムイオンである。
部分中和アニオン変性セルロース繊維が有するアニオン性基が中和された程度(本明細書において「アニオン性基の中和度」と記載する場合がある。)は、「アニオン変性セルロース繊維1gが有するアニオン性基のモル数×価数」に対する、「アニオン変性セルロース繊維1g中に存在する陽イオンのモル数×陽イオンの価数」の占める割合として定義され、具体的には、実施例記載の方法で求めることができる。
アニオン性基の中和度は、アニオン変性セルロース繊維の解繊し易さ及び最終的に得られる乳化組成物の乳化安定性の観点から、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。一方、アニオン性基の中和度は、最終的に得られる乳化組成物の増粘を抑える観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
アニオン変性セルロース繊維から部分中和アニオン変性セルロース繊維を調製する方法としては、アニオン変性セルロース繊維と塩基とを混合する方法が挙げられる。
塩基としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)の水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等)の水酸化物、アンモニア等が挙げられる。従って、アニオン性基を中和する金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオン等が挙げられる。金属イオンとしては、アニオン変性セルロース繊維の分散性の観点から、アルカリ金属イオン、即ち、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが好ましい。
[水分散体]
本発明における水分散体は部分中和アニオン変性セルロース繊維を含有する。
水分散体における部分中和アニオン変性セルロース繊維の含有量は、固形分含有量として、効率的に分散体を製造する観点から好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。一方、分散体の過度な増粘を抑制する観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
水分散体における溶媒、即ち、水系溶媒は、水のみであってもよく、水以外の溶媒、例えば、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、アセトン、1-プロパノール、2-プロパノール、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが含まれていてもよい。水以外の溶媒が含まれる場合、水系溶媒中の「水以外の溶媒」の割合は、アニオン変性セルロース繊維の分散性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
水系溶媒としては上述のとおりであり、解繊処理の際の、部分中和アニオン変性セルロース繊維と水系溶媒との比率としては、部分中和アニオン変性セルロース繊維1質量部に対して、水系溶媒が好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、一方、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
部分中和アニオン変性セルロース繊維の水分散体を解繊分散処理することにより、マイクロメータースケールのセルロースをナノメータースケールに微細化することができる。
解繊分散処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。
解繊分散処理して得られるアニオン変性セルロース繊維の水分散体中のアニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、乳化組成物を得る観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、乳化組成物の乳化安定性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径としては、乳化組成物を得る観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1.0nm以上、更に好ましくは2.0nm以上であり、乳化組成物の乳化安定性の観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
[態様1の工程、及び態様2の工程2]
態様1、及び態様2の工程2は、部分中和アニオン変性セルロース繊維水分散体、油剤及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する工程である。
部分中和アニオン変性セルロース繊維の水分散体は、部分中和アニオン変性セルロース繊維と水とを混合して調製する。水分散体の調製方法の好ましい一態様としては、部分中和アニオン変性セルロース繊維を水系溶媒中で解繊分散処理する工程である態様2の工程1が挙げられ、本発明において、かかる工程を更に有することが好ましい。
[油剤]
本発明で用いられる油剤としては、耐水性及び滑液性を向上させた膜を得る観点から、溶解度パラメーターが好ましくは6.0(cal/cm0.5以上のもの、より好ましくは6.5(cal/cm0.5以上のものであり、同様の観点から、溶解度パラメーターが好ましくは10(cal/cm0.5以下のもの、より好ましくは9.5(cal/cm0.5以下のもの、更に好ましくは9.0(cal/cm0.5以下のもの、更に好ましくは8.5(cal/cm0.5以下のものである。
本明細書における溶解度パラメーターとは、Fedors法で計算されるSP値であり、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition (A Wiley-Interscience publication, 1989)等に記載されている。
本発明で用いられる油剤としては、25℃、100gの水への溶解度が10g以下のものが好ましく、1g以下のものがより好ましい。
本発明で用いられる油剤の分子量としては、耐水性及び滑液性を向上させた膜を得る観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上であり、同様の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
このような油剤の好ましい具体例としては、保存安定性に優れた低粘度の乳化組成物を得る観点から、例えば、アルコール、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、エーテル油、油脂、フッ素系不活性液体及び脂肪酸からなる群より選択される一種以上が挙げられ、エステル油、シリコーン油、エーテル油、油脂、及びフッ素系不活性液体からなる群より選択される一種以上が好ましく、シリコーン油、エステル油、及びエーテル油からなる群より選択される一種以上がより好ましく、シリコーン油及び/又はエステル油が更に好ましい。
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
本発明で使用される油剤としてのシリコーンオイルは、例えば、KF96-1cs(信越化学工業社製、SP値:7.3)、KF-96-10cs(信越化学工業社製、SP値:7.3)、KF-96-50cs(信越化学工業社製、SP値:7.3)、KF-96-100cs(信越化学工業社製、SP値:7.3)、KF-96-1000cs(信越化学工業社製、SP値:7.3)、KF-96H-1万cs(信越化学工業社製、SP値:7.3)等である。
[カチオン性基を有する有機化合物]
カチオン性基を有する有機化合物におけるカチオン性基とは、例えば、アミノ基(1級アミン、2級アミン、3級アミン)、4級アンモニウム、ホスホニウム、アミジン、グアニジン、イミダゾリウム、ピリジニウム、イミダゾリン等が挙げられ、化合物の入手性の観点から、アミノ基が好ましい。
本発明においては、カチオン性基を有する有機化合物としては、カチオン性基を有する高分子化合物及びカチオン性基を有する炭化水素系化合物が挙げられる。
[カチオン性基を有する高分子化合物]
カチオン性基を有する高分子化合物は、入手容易性の観点から、好ましくはアミノ基を有する高分子化合物である。
本発明において好ましく用いることができるアミノ基を有する高分子化合物は、市販品として入手することができ、あるいは公知の方法に従って調製することができる。アミノ基を有する高分子化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明におけるアミノ基を有する高分子化合物としては、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアミン、アミノ変性ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、アミノ変性ビニル系ポリマー、アミノ変性ポリエステル、アミノ変性ポリカーボネート、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の樹脂;鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂芳香族ポリアミン等などが挙げられ、反応基の位置は高分子化合物の主鎖、側鎖、末端のいずれでもよい。これらの中では、滑液性を有する膜を得る観点から、好ましくはアミノ変性シリコーン及びポリオキシアルキレンアミンからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
(i)アミノ変性シリコーン
アミノ変性シリコーンとは、アミノ基を有するシリコーン系化合物である。アミノ変性シリコーンとしては、25℃での動粘度が10mm/s以上20,000mm/s以下のものが好ましい。さらに、アミノ当量が400g/mol以上16,000g/mol以下のアミノ変性シリコーンが好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、滑液性の観点から、より好ましくは20mm/s以上、更に好ましくは50mm/s以上であり、ハンドリング性の観点からより好ましくは10,000mm/s以下、更に好ましくは5,000mm/s以下である。
また、アミノ当量は、滑液性の観点から、好ましくは400g/mol以上、より好ましくは600g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上であり、アニオン変性セルロース繊維への結合のさせやすさの観点から、好ましくは16,000g/mol以下、より好ましくは14,000g/mol以下、更に好ましくは12,000g/mol以下である。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=重量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーンの具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022117975000001
〔式中、R1aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、滑液性の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、同様の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、滑液性の観点から、xは好ましくは10以上~10,000以下の数、より好ましくは20以上5,000以下の数、更に好ましくは30以上3,000以下の数である。yは好ましくは1以上1,000以下の数、より好ましくは1以上500以下の数、更に好ましくは1以上200以下の数である。一般式(a1)の化合物の重量平均分子量は、好ましくは2,000以上1,000,000以下、より好ましくは5,000以上100,000以下、更に好ましくは8,000以上50,000以下である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
-C-NH
-C-NH-C-NH
-C-NH-[C-NH]-C-NH
-C-NH(CH
-C-NH-C-NH(CH
-C-NH-[C-NH]-C-NH(CH
-C-N(CH
-C-N(CH)-C-N(CH
-C-N(CH)-[C-N(CH)]-C-N(CH
-C-NH-cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーンは、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80~110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53-98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーンとしては、高い耐水性を有する膜を得る観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが-C-NH-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
本発明におけるアミノ変性シリコーンとしては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16-892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16-898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、信越化学工業社製のKF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF-8004(動粘度:800、アミノ当量:1500)、KF-8005(動粘度:1200、アミノ当量:11000)、KF-867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF-864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、KF-859(動粘度:60、アミノ当量:6000)、が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(a1-1)成分としては、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16-853U(動粘度:14、アミノ当量:450)がより好ましい。
(a1-2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、KF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、SS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)がより好ましい。
なお、シリコーン系化合物は置換基を有するものであってもよい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1~6のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基が挙げられる。
(ii)ポリオキシアルキレンアミン
本発明におけるポリオキシアルキレンアミンとは、ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物のことである。ポリオキシアルキレン構造と該アミン化合物の窒素原子とは、直接に又は連結基を介して結合していることが好ましい。連結基としては炭化水素基が好ましく、炭素数が好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下のアルキレン基が挙げられる。かかるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
[カチオン性基を有する炭化水素系化合物]
本発明における、カチオン性基を有する炭化水素系化合物とは、一つのカチオン性基に対して一つ以上の炭化水素基が結合したものである。カチオン性基を有する炭化水素系化合物の合計炭素数は、高い耐水性を有する膜を得る観点から、好ましくは16以上、さらに好ましくは18以上であり、ハンドリング性の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは26以下である。
カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、カチオン性基が1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム、ホスホニウム等の場合には、炭化水素基は窒素原子あるいはリン原子に共有結合を介して直接結合した化合物である。カチオン性基がアミジン、グアニジン等の場合は、その官能基の窒素原子あるいは炭素原子の少なくとも片方に共有結合を介して結合した化合物である。カチオン性基がイミダゾリウム、ピリジニウム、イミダゾリン等の場合は、環構造のいずれかの位置に少なくとも一つ以上の炭化水素基が共有結合を介して結合した化合物である。
前記炭化水素系化合物における炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、入手性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは24以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの炭化水素基における炭素数のことを意味する。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、イソプレニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基が挙げられる。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。
上記炭化水素系化合物は、一部の水素原子が更に置換されていてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ケトン基、チオール基等が挙げられる。
上記カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、好ましくは1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム等の、アミノ基を有する炭化水素系化合物(本明細書において、「炭化水素系アミン」と称する。)である。かかる炭化水素系アミンの具体例としては、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、ジメチルジオクチルアンモニウム塩、ジメチルジデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩等が好ましい。
[その他の成分]
本発明の製造方法では、乳化組成物は、前記成分以外に、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
[混合操作]
部分中和アニオン変性セルロース繊維の水分散体、油剤、及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する工程を経ることで乳化が生じ、乳化組成物が得られる。かかる混合処理には、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモミキサー、真空乳化装置、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。混合処理は、2種類以上の操作を組み合わせて実施してもよい。
〔乳化組成物〕
本発明の乳化組成物は、前記の製造方法によって製造される組成物であり、o/w型エマルション、w/o型エマルションのどちらでもよいが、好ましくはo/w型エマルションである。
本発明の乳化組成物は、意外にも乳化状態の安定性が高く、かつ粘度も小さいためハンドリングが良好である。
乳化組成物中、部分中和アニオン変性セルロース繊維の含有量は、乳化力の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、一方、ハンドリング性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
乳化組成物中、油剤の含有量は、乳化状態を維持する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、一方、溶液粘度やハンドリング性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
乳化組成物中、カチオン性基を有する有機化合物の含有量は、乳化力の観点から、乳化状態を維持する観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、溶液粘度やハンドリング性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
各成分の混合時の温度や時間としては、特に限定されるものではなく、例えば、好ましくは5~50℃の温度範囲とし、好ましくは1分間~3時間の範囲とする。
乳化組成物の粘度は特に限定されないが、25℃における粘度が好ましくは0.5mPa・s以上、より好ましくは0.8mPa・s以上、更に好ましくは1mPa・s以上であり、ハンドリング性の観点から、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは200mPa・s以下、更に好ましくは100mPa・s以下である。ここで粘度は、B型粘度計により各サンプルの粘度域に合わせた適切なローターを用いて、25℃、回転数60rpmの条件で1分攪拌後の値を測定したものである。
乳化組成物における乳化滴の平均粒子径(体積中位粒径)は、後述するレーザー回折法による測定において、生物付着抑制及び滑液性とその耐久性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、同様の観点から、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下であり、好ましくは10nm以上2000nm以下、より好ましくは50nm以上1000nm以下、更に好ましくは100nm以上500nm以下である。
〔膜〕
本発明の乳化組成物を乾燥して膜を製造することができる。かかる膜は、文献(超撥水・超撥油・滑液性表面の技術/発行者:元木浩/発行所:サイエンス&テクノロジー株式会社/2016年1月28日発行)に示される滑液表面性を示すことが好ましい。
滑液表面性は、例えば、後述の実施例の「滑落角測定試験」に記載の方法により測定することができる。滑落角の値が小さいほど、その膜の滑液性が高いことを示す。
本発明の膜の厚みは特に制限はなく、膜の耐久性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、経済性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1200μm以下、更に好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下である。なお、膜の厚みは、アプリケーター等の塗布用具による塗膜厚の設定や、媒体の割合を調整することにより、所望の値とすることができる。なお、膜の厚みは後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の膜は、平滑性が高いほど、滑液性が高くなるため好ましい。具体的には、製造直後の膜の算術平均粗さとして、費用対効果の観点から、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.8μm以上であり、一方、付着抑制性の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、更に好ましくは30μm以下である。なお、膜の算術平均粗さは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の膜には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。膜におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本発明の膜を固体表面に適用することにより、固体表面を滑液表面に改質することができる。本発明の膜は滑液性に優れるだけではなく、膜自体の耐久性に優れるためにその効果を長期間維持できることから、各種用途、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の包装容器用の内装材、食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイや輸送用パイプ等、さらには屋根、建造物の壁面、船底や電線等の被覆材として好適に用いることができる。これにより、粉塵等の付着を抑制する防汚膜、雪や氷等の付着を抑制する防雪膜、水性生物の付着を抑制する、生物付着抑制膜等として、好適に用いることができる。
本発明の乳化組成物は、生物付着抑制剤、防汚剤、防雪剤として有用であり、本発明の乳化組成物を、上記等の固体表面に塗布することで、生物付着抑制方法、防汚方法、防雪方法として用いることができる。
このような膜は、例えば、次のようにして製造することができる。
具体的には、前記乳化組成物を、基質、例えば、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、コンクリート、木材、石材、繊維等を素材とする固体表面あるいは皮膚、髪などに塗布する。塗布の方法としては、例えば、アプリケーター、バーコーダー、スピンコーター等を使用して塗布する方法や、刷毛塗り、手塗り、スプレー、ディップコート等が挙げられるが、それに限定されるものではない。
基質上の乳化組成物の塗膜の厚みとしては、膜の耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、塗布性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
次いで、乳化組成物の塗膜を乾燥させて塗工膜を得ることができる。乾燥条件としては、減圧下でも常圧下でもよく、温度範囲としては15℃以上75℃以下が好ましい。また、乾燥のための時間としては、1時間以上24時間以下が好ましい。
以下、実施例等を示して本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
測定対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出する。AFMによる画像で分析される高さを繊維径とみなすことができる。
〔アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔アニオン変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
測定対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量を、上記アニオン性基含有量の測定方法によって測定する。
一方、これとは別に、ビーカーに、測定対象のセルロース繊維の水分散液100g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)100g、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え25℃で16時間撹拌して、カルボキシ変性セルロース繊維に残存するアルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、脱イオン水にて洗浄を行い、アルデヒド基を酸化処理したセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記アニオン性基含有量の測定方法で測定し、「酸化処理したセルロース繊維のカルボキシ基含有量」を算出する。続いて、式1にて測定対象のセルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理したセルロース繊維のカルボキシ基含有量)-(測定対象のセルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、MOC-120H)を用いて測定する。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少がサンプルの初期量の0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔各種セルロース繊維における結晶構造の確認〕
セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットに圧縮して作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式Aに基づいて算出する。
<式A>
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編;2000年4月発行)のP199-200の記載に則り、以下の式Bに基づいて算出することが好ましい。
したがって、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式Bに基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
<式B>
セルロースI型結晶化度(%)=[A/(A+A)]×100
〔式中、Aは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
〔アニオン性基の中和度〕
アニオン変性セルロース繊維の有するアニオン性基の中和度は次のようにして求める。
中和度(%)=〔[[アニオン変性セルロース繊維1gに導入されたアニオン性基に結合した金属イオン量(mmol)×金属イオンの価数]+[アニオン変性セルロース繊維1gに導入されたアニオン性基に結合したアンモニウムイオン量(mmol)×価数]]/[アニオン変性セルロース繊維1gに導入されたアニオン性基の含有量(mmol)×アニオン性基の価数]〕×100
アニオン性基に結合した金属イオン量は下記の方法で求める。
乾燥したアニオン変性セルロース繊維約1gと、脱イオン水100gとを混合し、20℃で1時間撹拌(100rpm)した後、ろ紙(No.5)を用いてろ過する。この洗浄操作を合計3回行う。洗浄後のアニオン変性セルロース繊維を凍結乾燥させて秤量し、灰化し、塩酸に溶解させ、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)で金属イオン量を測定する。
ことができる。
アニオン性基に結合したアンモニウムイオン量は下記の方法で求める。
乾燥したアニオン変性セルロース繊維約1gと、脱イオン水100gとを混合し、20℃で1時間撹拌(100rpm)した後、ろ紙(No.5)を用いてろ過する。この洗浄操作を合計3回行う。洗浄後のアニオン変性セルロース繊維を乾燥させて秤量し、過剰量の水酸化ナトリウムを添加して100%以上に中和した際に検出されるアンモニア量を測定し、アンモニウムイオン量に換算する。
なお、金属イオンがアルカリ金属イオンの場合、価数は1であり、金属イオンがアルカリ土類金属イオンの場合、価数は2であり、アンモニウムイオンの価数は1である。
〔レーザー回折法による乳化滴の粒径測定〕
レーザー回折法による乳化滴の粒径測定は、堀場製作所製LA-960を用いて行う。
測定条件:測定用セルに水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積粒度分布及び体積中位粒径(D50)を測定する。なお、相対屈折率1.40、温度25℃、循環ポンプON、循環速度5、撹拌速度5とする。
〔アニオン変性セルロース繊維の調製〕
調製例1
針葉樹の漂白クラフトパルプ(ウエストフレザー社製、ヒントン)を原料の天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム及び水酸化ナトリウムとしては市販品を用いた。
まず、メカニカルスターラー、撹拌翼を備えた2LのPP製ビーカーに、前記漂白クラフトパルプ繊維10g、脱イオン水990gをはかり取り、25℃、100rpmで30分撹拌した後、該パルプ繊維10gに対し、TEMPO 0.13g、臭化ナトリウム1.3g、10.5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液35.5gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)でpHスタット滴定を用い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持した。撹拌速度100rpmにて反応25℃で120分行った後、水酸化ナトリウム水溶液の滴下を停止し、アニオン変性セルロース繊維(カルボキシ変性セルロース繊維)の懸濁液を得た。
得られたアニオン変性セルロース繊維の懸濁液を1Mの塩酸で3度洗浄した後、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまで、脱イオン水を用いて十分に洗浄、次いで脱水処理を行って、アニオン変性セルロース繊維1を得た。この時、アニオン変性セルロース繊維1の中和度は0%(検出限界以下)であった。また、このアニオン変性セルロース繊維1のカルボキシ基含有量は1.45mmol/g、アルデヒド基含有量は0.23mmol/gであった。アニオン変性セルロース繊維1の平均繊維長は2000μm、平均繊維径は40μmであった。、
調製例2
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を71mL、反応時間を300分としたこと以外は調製例1と同様にして、アニオン変性セルロース繊維2を得た。この時、アニオン変性セルロース繊維2の中和度は0%(検出限界以下)であった。また、このアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.90mmol/g、アルデヒド基含有量は0.20mmol/gであった。アニオン変性セルロース繊維2の平均繊維長は800μm、平均繊維径は50μmであった。、
実施例1
[部分中和アニオン変性セルロース繊維の調製]
調製例1で調製されたアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を加えて、懸濁液(固形分含有量2.0重量%)50gを調製した。そこに、表1に記載の所定の中和度となるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を添加し、さらに脱イオン水を添加して、部分中和アニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0質量%)100gを調製した。
[部分中和された微細化アニオン変性セルロース繊維の調製]
このようにして得られた、部分中和アニオン変性セルロース繊維の分散液を、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)を用いて150MPaで解繊分散処理を5回行い、部分中和された微細化アニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0質量%)を得た。実施例1の中和度で微細化されたアニオン変性セルロース繊維1の平均繊維長は600nm、平均繊維径は3.3nmであった。最終的に得られた分散液の透過率及びナノファイバー収率を測定した。結果を表1に示す。
[乳化組成物の調製]
このようにして得られた、部分中和された微細化アニオン変性セルロース繊維1の分散液60.0g(固形分含有量1.0質量%)、シリコーンオイル(信越化学工業社製、KF-96-100cs) 6.0g、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、SS-3551) 2.22gを混合し、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、アニオン変性セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して結合した改質セルロース繊維を含む乳化組成物を得た。この乳化組成物の安定性および粘度を評価した。結果を表1に示す。体積中位粒径は300nmであった。
実施例2~5
表1に示すように、調製例1又は調製例2で調製されたアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を加えて、懸濁液(固形分含有量2.0重量%)50gを調製した。そこに、表1に記載の所定の中和度となるように、1M水酸化ナトリウム水溶液又は1Mアンモニア水溶液を添加し、さらに脱イオン水を添加して、部分中和アニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0質量%)100gを調製した。
次いで、実施例1と同様に、それぞれの実施例について、部分中和された微細化アニオン変性セルロース繊維及び乳化組成物を調製し、各評価項目について評価した。結果を表1に示す。
比較例1及び3
表1に示すように、調製例1又は調製例2で調製されたアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を加えて、アニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0重量%)100gを調製した。
次いで、実施例1と同様に、それぞれの比較例について、微細化アニオン変性セルロース繊維及び乳化組成物を調製し、各評価項目について評価した。結果を表1に示す。
比較例2
表1に示すように、調製例1で調製されたアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を加えて、懸濁液(固形分含有量2.0重量%)50gを調製した。そこに、表1に記載の所定の中和度となるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を添加し、さらに脱イオン水を添加して、全てのアニオン性基が中和されたアニオン変性セルロース繊維の分散液(固形分含有量1.0質量%)100gを調製した。
次いで、実施例1と同様に、微細化アニオン変性セルロース繊維及び乳化組成物を調製し、各評価項目について評価した。結果を表1に示す。
Figure 2022117975000002
表1における各評価項目の評価方法は次のとおりである。
〔分散液の透過率〕
分散液(固形分含有量1.0重量%)を光路長1cmの角型セルに入れ、660nmにおける光線透過率を、分光光度計(アズワン社製、ASV11D-H)を用いて測定した。脱イオン水を100%として、それぞれ相対値で示した。
〔ナノファイバー収率〕
分散液(固形分含有量1.0重量%)を脱イオン水で40倍に希釈し、加速度10000gで20分遠心分離し、ナノファイバーまで解繊されていないセルロース繊維を沈降させた。この上澄み1mLを15mL遠沈管に測り取り、5%フェノール水溶液1mLを加えた後、濃硫酸5mLを勢いよく滴下した。30分室温で静置した後、波長490nmにおける吸光度を、分光光度計(アズワン社製、ASV11D-H)を用いて測定し、あらかじめセルロース濃度既知のサンプルで作成した検量線から上澄みに存在したセルロース量を定量した。また、遠心分離を行う前のサンプルについても同様にセルロース量を定量し、遠心分離後に上澄みに残存したセルロースの割合をナノファイバー収率とした。
〔乳化組成物の安定性〕
以下の基準をもとに、25℃で保管した乳化組成物の安定性を3段階で評価した。
1:調製後3日以内にクリーミングが観察された。
2:調製後1週間以内にクリーミングが観察された。
3:調製後1週間以上たってもクリーミングが観察されなかった。
〔乳化組成物の粘度〕
B型粘度計(東機産業TVB-10)を用いて、25℃、回転速度60RPM、1分後の粘度を測定した。
参考例1
実施例1で調製した乳化組成物50mLに対して、1M水酸化ナトリウム水溶液348μL(組成物中のカルボキシ基量の80%に相当)を加えて、マグネチックスターラーで10分間攪拌して追加の中和を行い、比較例2と同組成の乳化組成物を得た。
参考例2
実施例3で製造した乳化組成物50mLに対して、1M水酸化ナトリウム水溶液218μL(組成物中のカルボキシ基量の50%に相当)を加えて、マグネチックスターラーで10分間攪拌して追加の中和を行い、比較例2と同組成の乳化組成物を得た。
参考例1及び参考例2で最終的に調製された乳化組成物の評価結果等を、表2に示す。
Figure 2022117975000003
実施例1~5において調製された部分中和アニオン変性セルロース繊維の分散液は、高い光線透過率とナノファイバー収率を示し、効率的に微細繊維に解繊されていることが分かった。さらに、実施例1~5において調製された乳化組成物は高い安定性を示す一方で、粘度が低くハンドリング性に優れることがわかった。
一方で、アニオン変性セルロース繊維の金属イオンによる中和度が0%の状態で解繊分散処理を行った比較例1および3では、アニオン変性セルロース繊維の解繊が十分でなく、結果として調製された乳化組成物の乳化安定性に劣る結果となった。また、アニオン変性セルロース繊維の金属イオンによる中和度が100%の状態で解繊分散処理を行った比較例2では、調製された乳化組成物の安定性には優れるが、乳化組成物の粘度が高く、ハンドリング性に劣る結果となった。
参考例1及び2では、実施例1及び3で調製した乳化組成物に対して、さらに水酸化ナトリウム水溶液を加え、比較例2と同じ、金属イオンによって100%中和された組成としたが、乳化組成物の粘度は上昇することはなく、むしろ低下した。
〔乾燥膜の作製〕
実施例1~2及び比較例1~2で作製した乳化組成物を、それぞれ別々のガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S2112)上に400μL塗布し、スライドガラス全域に塗り広げた。次いで、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製した。下記の測定方法によって実施例1の膜の厚みを測定したところ20μmであった。
〔膜の厚みの測定〕
乾燥後の膜の厚みは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定した。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとした。膜の一部を金属製のスパーテルで削り取り、ガラス基板を露出させたサンプルを測定し、内蔵の画像処理ソフトを用いてガラス基板の高さと膜のある部分の高さを計測し、それらの差をとることで膜の厚みを求めた。
〔水滴転落角度測定試験〕
上記のようにして作製された実施例1~2、比較例1~2の乾燥膜を水平の状態に設置し、各膜に対して、全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、8μLの水滴(23℃)を滴下し、1秒静置した。次いで、1°/sの速さで膜表面を85°まで傾け、液滴が滑り始める角度を測定した。測定結果を下記の表に示す。ただし、85°まで傾けても液滴が滑り落ちなかった場合には、水滴滑落角は、「85以上」と記した。水滴滑落角の値が小さいほど、その膜の滑液性が高いことを示す。
〔膜の算術平均粗さの測定〕
上記のようにして作製された実施例1~2及び比較例1~2の乾燥膜の表面の算術平均粗さを測定した。膜の算術平均粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定した。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いた。
〔生物付着試験〕
実施例1~2及び比較例1~2で調製した乳化組成物を、SUS304基板(L50mm×W50mm×T3mm)上に1.5mL塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製した。なお、L50mm×W50mm×T3mmの未処理のSUS304基板を比較例4とした。
上述の各基板を鎖で繋ぎ、干潮時に水面から2mの深さになるように和歌山県下津港付近の海水中に設置し、海水中での浸漬試験を行った。
浸漬1ヶ月後に、基板への甲殻動物類と藻類のそれぞれについての付着度合いを目視によって評価した。評価基準は次の通りである。数値が小さいほど、水生生物の付着抑制効果が高いことを示す。
1:水生生物の付着が基板表面の2面積%以下である状態。
2:基板表面の2面積%超10面積%以下に水生生物が付着している状態。
3:基板表面の10面積%超20面積%以下に水生生物が付着している状態。
4:基板表面の20面積%超30面積%以下に水生生物が付着している状態。
5:基板表面の30面積%超50面積%以下に水生生物が付着している状態。
6:基板表面の50面積%超80面積%以下に水生生物が付着している状態。
7:基板表面の80面積%超に水生生物が付着している状態。
〔付着生物除去性〕
上記生物付着試験において、浸漬1ヶ月後と3ヶ月後に基板上に付着した水生生物の除去性を以下の基準で評価した。なおここで低圧とは、洗瓶から吹き付けるほどの弱い圧力を示す。数値が小さいほど、水生生物が容易に除去できることを示す。
1:低圧の水洗で容易に除去可能。
2:水洗+こする作業が必要。
3:工具の使用が必要(1回削る作業で除去)。
4:工具で複数回削る作業が必要、あるいは除去不可。
結果を表3に示す。
Figure 2022117975000004
表3より、本発明の乳化組成物や膜は、滑液性にすぐれ、生物が付着しにくく、付着した生物も容易に除去できることが分かった。
本発明の乳化組成物は、滑液性に優れ、生物が付着しにくい膜を形成することができるため、様々な表面、例えば、船舶、橋梁等に対するコーティングの分野に利用することができる。

Claims (8)

  1. 部分中和アニオン変性セルロース繊維の水分散体、
    油剤、及び
    カチオン性基を有する有機化合物
    を混合する工程を有する、乳化組成物の製造方法。
  2. 下記工程1及び工程2を有する、乳化組成物の製造方法。
    工程1:部分中和アニオン変性セルロース繊維を解繊して、アニオン変性セルロース繊維の水分散体を得る工程
    工程2:工程1で得られたアニオン変性セルロース繊維の水分散体、油剤、及びカチオン性基を有する有機化合物を混合する工程
  3. 前記アニオン変性セルロース繊維がカルボキシ変性セルロース繊維である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記水分散体中のアニオン変性セルロース繊維の平均繊維径が0.1nm以上200以下nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記カチオン性基を有する有機化合物におけるカチオン性基がアミノ基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記油剤のFedors法で計算される溶解度パラメーターが、6.0(cal/cm0.5以上10(cal/cm0.5以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される、乳化組成物。
  8. 請求項7に記載の乳化組成物を乾燥して得られる、膜。
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