JP2023094520A - 乳化組成物 - Google Patents

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成実 砂土居
Shigemi Sunadoi
淑貴 伊藤
Yoshitaka Ito
嘉則 長谷川
Yoshinori Hasegawa
剛久 矢野
Takehisa Yano
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Abstract

【課題】抗菌性に優れた膜、及び当該膜を形成することができる組成物を提供すること。【解決手段】(A)修飾基を有するセルロース繊維、(B)水、(C)25℃1気圧で液体の有機化合物及び(D)抗菌性を有する化合物を含有し、成分(D)と成分(A)の質量比((D)/(A))が0.0001以上である、乳化組成物。【選択図】なし

Description

本発明は乳化組成物に関する。
近年、微生物による感染・バイオフィルム付着など、微生物による様々な弊害を防止できる抗菌組成物あるいは表面処理剤が求められている。それらは対象へ容易に処理が可能かつ持続的にその効果が発揮されることが望まれる。
例えば、既存技術では、下記の非特許文献1~3等が知られている。
Coatings 2020,10,1239 Biomaterials 2007, 28, 4192-4199 Biointerfaces 2014, 113, 115-124
しかしながら、かかる既存技術では、微生物付着抑制効果が不十分であったり(非特許文献1及び2)、処理条件が簡便ではない(非特許文献3)などの課題があった。
従って、本発明の目的は、抗菌性に優れた膜、及び当該膜を形成することができる組成物を提供することにある。
本発明は、下記〔1〕~〔4〕に関する。
〔1〕 以下の成分(A)~(D)を含有し、成分(D)と成分(A)の質量比((D)/(A))が0.0001以上である、乳化組成物。
(A)修飾基を有するセルロース繊維
(B)水
(C)25℃1気圧で液体の有機化合物
(D)抗菌性を有する化合物
〔2〕 前記〔1〕に記載の乳化組成物を含有する、生物付着抑制剤、防汚剤又は抗菌剤。
〔3〕 前記〔1〕に記載の乳化組成物又は前記〔2〕に記載の生物付着抑制剤、防汚剤若しくは抗菌剤を塗布して得られる膜。
〔4〕 以下の成分(A)~(D)を混合する工程を含み、成分(D)と成分(A)の質量比((D)/(A))が0.0001以上である、乳化組成物の製造方法。
(A)修飾基を有するセルロース繊維
(B)水
(C)25℃1気圧で液体の有機化合物
(D)抗菌性を有する化合物
本発明によれば、抗菌性に優れた膜、及び当該膜を形成するための乳化組成物を提供することができる。
本発明者らが検討した結果、特定の構造を有する改質セルロース繊維、有機媒体、水、及び特定の抗菌性を有する化合物を含有してなる乳化組成物を見出した。かかる乳化組成物は、対象の表面に噴霧処理するという簡便な処理方法によって、強固な膜を形成することができ、かつかかる膜の発揮する微生物付着抑制効果が十分に高いことをさらに見出し、本発明を完成させた。
1.乳化組成物
本発明の乳化組成物は、以下の成分(A)~(D)を含有する。
<成分(A)>
成分(A)は修飾基を有するセルロース繊維である。
修飾基を有するセルロース繊維の好ましい一例としては、I型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基及びヒドロキシ基からなる群より選択される一種以上の基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維が挙げられる。
〔アニオン変性セルロース繊維〕
アニオン変性セルロース繊維とは、セルロース繊維中にアニオン性基を含むようにアニオン変性されたセルロース繊維である。アニオン変性セルロース繊維は、原料のセルロース繊維に由来するセルロースI型結晶構造を有するものである。アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。
本明細書において、各種セルロース繊維の結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられる。前記アニオン性基は、セルロース繊維への修飾基の導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
アニオン変性セルロース繊維としては、調製が容易である観点及び反応条件が穏やかである観点から、アニオン性基がカルボキシ基であるカルボキシ基含有セルロース繊維がより好ましい。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径としては、取扱い性の観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1.0nm以上、更に好ましくは2.0nm以上であり、成膜した時の強度の観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
〔改質セルロース繊維〕
修飾基を有するセルロース繊維は、本明細書中において、改質セルロース繊維とも記載する。改質セルロース繊維は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくはアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基又はヒドロキシ基に修飾基が結合したものである。修飾基は、修飾基を導入するための化合物(本明細書において「修飾用化合物」と記載する。)とアニオン変性セルロース繊維との反応によって導入される。即ち、修飾基の構造は、使用される修飾用化合物の構造に依存する。
修飾基の結合箇所がヒドロキシ基の場合、修飾基とアニオン変性セルロース繊維との結合様式は共有結合であり、例えば、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合等が挙げられる。
修飾基の結合箇所がアニオン性基の場合、修飾基とアニオン変性セルロース繊維との結合様式はイオン結合又は共有結合である。ここで、結合様式がイオン結合の場合には、カチオン性基を有する修飾用化合物が、静電相互作用を介してアニオン性基と結合する。ここで、結合様式が共有結合の場合には、エステル結合、アミド結合などを介して両者が結合する。特にアニオン性基がカルボキシ基の場合、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合等を介して結合する。
〔修飾基〕
修飾基としては、膜の抗菌性向上の観点から、(a)ポリマー基、及び(b)炭化水素基が挙げられる。これらの修飾基は1種類が単独で又は2種以上が組み合わさって、アニオン変性セルロース繊維に結合してもよい。
(a)ポリマー基
ポリマー基とは、ポリマー構造を含有する官能基である。ポリマー基の官能基当量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは100g/mol以上、より好ましくは200g/mol以上、更に好ましくは300g/mol以上、更に好ましくは400g/mol以上、更に好ましくは600g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上、更に好ましくは1,500g/mol以上である。同様の観点から、好ましくは20,000g/mol以下、より好ましくは16,000g/mol以下、更に好ましくは14,000g/mol以下、更に好ましくは12,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下、更に好ましくは7,000g/mol以下、更に好ましくは5,000g/mol以下、更に好ましくは4,000g/mol以下、更に好ましくは3,500g/mol以下、更に好ましくは2,500g/mol以下である。
なお、官能基当量は、官能基1個当りの分子量であり、官能基当量(g/mol)=[重量平均分子量]/[1分子あたりの官能基数]で求められる。
ポリマー基の重量平均分子量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、同様の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
ポリマー基は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは、酸素原子を有する構造によって連結される繰り返し構造を有する官能基、より好ましくは、ポリオキシアルキレン構造、ポリシロキサン構造等の、酸素原子によって連結される繰り返し構造を有する官能基であり、より好ましくは、ポリシロキサン構造を有する官能基である。
ポリシロキサン構造とはシロキサン結合を主鎖とする構造であり、更にアルキレン基が伴っていてもよい。ポリシロキサン構造は、後述する置換基を有していてもよい。
(b)炭化水素基
炭化水素基としては、一価の炭化水素基、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び(複素環式)芳香族炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基の炭素数は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは12以上であり、更に好ましくは16以上、更に好ましくは18以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは24以下、更に好ましくは22以下である。炭化水素基は、後述する置換基を有していてもよく、炭化水素基の一部が窒化水素基に置換されていてもよい。
(c)更なる置換基
なお、上記(a)ポリマー基や(b)炭化水素基等の修飾基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1~6のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基;ヒドロキシ基が挙げられる。
改質セルロース繊維における修飾基の結合量(mmol/g)及び導入率(モル%)とは、改質セルロース繊維に導入された修飾基の量及び割合のことである。修飾基の結合量及び導入率は、修飾用化合物の添加量、種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。
改質セルロース繊維における修飾基の結合量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.2mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上、である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下である。
また、改質セルロース繊維における修飾基の導入率は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99モル%以下、より好ましくは97モル%以下、更に好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
〔改質セルロース繊維の製造方法〕
改質セルロース繊維は、例えば、(1)原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入してアニオン変性セルロース繊維を得る工程、及び(2)前記(1)の工程を含む方法によって得られたアニオン変性セルロース繊維に修飾用化合物を結合させて、改質セルロース繊維を得る工程、を含む方法によって製造することができる。
(1)アニオン変性セルロース繊維を得る工程
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、原料のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、1つ又は2つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
アニオン変性の対象となるセルロース繊維、即ち、改質セルロース繊維やアニオン変性セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは1μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下である。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は、入手性及びコストの観点から、好ましくは100μm以上であり、好ましくは5,000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。分散性の観点から、原料のセルロース繊維を、アルカリ加水分解処理や酸加水分解処理等で短繊維化処理した平均繊維長が1μm以上であり、1,000μm以下であるセルロース繊維を用いることが好ましい。
導入されるアニオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基又はリン酸基が挙げられる。
(i)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合
セルロース繊維にカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースのヒドロキシ基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースのヒドロキシ基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上を反応させる方法が挙げられる。
前記セルロースのヒドロキシ基を酸化処理する方法としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を反応させて酸化処理する方法が適用できる。より詳細には、公知の方法、例えば特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができる。
TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位のヒドロキシ基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。従って、本発明におけるアニオン変性セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。
本明細書において、セルロース構成単位中のヒドロキシ基の酸化により得られるセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維を「TEMPO酸化セルロース繊維」という場合がある。酸化セルロース繊維は、それ以外のアニオン変性セルロース繊維と比べて調製が容易であることから好ましい。従って、本発明における改質セルロース繊維の好ましい態様の一つは、酸化セルロース繊維にアミノ変性シリコーンが結合してなる改質セルロース繊維であり、より好ましい態様の一つは、TEMPO酸化セルロース繊維にアミノ変性シリコーンが結合してなる改質セルロース繊維である。
酸化セルロース繊維に更に追酸化処理又は還元処理を行うことで、残存するアルデヒド基を除去した酸化セルロース繊維を調製することができる。
(ii)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又はリン酸基を導入する場合
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
セルロース繊維にアニオン性基としてリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
(2)改質セルロース繊維を得る工程
改質セルロース繊維は、前記アニオン変性セルロース繊維に、修飾基を有する化合物、好ましくは、アミノ変性シリコーン、及びカチオン性基を有する炭化水素系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を結合させることにより製造することができる。かかる製造方法としては、公知の方法、例えば特開2015-143336号公報に記載の方法を用いることができる。
(3)修飾用化合物
修飾用化合物は、膜の抗菌性向上の観点から、修飾基を有し、且つ、アニオン変性セルロース繊維と結合し得る化合物、好ましくは、修飾基を有し、且つ、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基又はヒドロキシ基と結合し得る化合物、更に好ましくは、修飾基及びカチオン性基を有する化合物、更に好ましくは、修飾基及びアミノ基又は4級アンモニウム基を有する化合物、更に好ましくは、修飾基を有する1級アミン、2級アミン、3級アミン及び4級アンモニウム化合物である。
修飾用化合物の好ましい例としては、膜の抗菌性向上の観点から、アミノ基を有する高分子化合物やカチオン性基を有する炭化水素系化合物が挙げられる。
(i)アミノ基を有する高分子化合物
本発明に修飾用化合物として、好ましいアミノ基を有する高分子化合物は、市販品として入手することができ、あるいは公知の方法に従って調製することができる。アミノ基を有する高分子化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明におけるアミノ基を有する高分子化合物としては、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアミン、アミノ変性ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、アミノ変性ビニル系ポリマー、アミノ変性ポリエステル、アミノ変性ポリカーボネート、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の樹脂;鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン等などが挙げられ、反応基の位置は高分子化合物の主鎖、側鎖、末端のいずれでもよい。これらの中では、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくはアミノ変性シリコーンである。修飾用化合物としてアミノ変性シリコーンを使用することによって、前述のポリシロキサン構造を有する修飾基を改質セルロース繊維に提供することができる。
アミノ変性シリコーンとは、アミノ基を有するシリコーン系化合物である。アミノ変性シリコーンとしては、25℃での動粘度が10mm/s以上20,000mm/s以下のものが好ましい。さらに、アミノ当量が400g/mol以上16,000g/mol以下のアミノ変性シリコーンが好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、膜の抗菌性向上の観点から、より好ましくは20mm/s以上、更に好ましくは50mm/s以上であり、ハンドリング性の観点からより好ましくは10,000mm/s以下、更に好ましくは5,000mm/s以下である。
また、アミノ当量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは400g/mol以上、より好ましくは600g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上であり、アニオン変性セルロース繊維への結合のさせやすさの観点から、好ましくは16,000g/mol以下、より好ましくは14,000g/mol以下、更に好ましくは12,000g/mol以下である。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=重量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーンの具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023094520000001
〔式中、R1aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、滑液性および膜の抗菌性向上の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、同様の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、滑液性および膜の抗菌性向上の観点から、xは好ましくは10以上10,000以下の数、より好ましくは20以上5,000以下の数、更に好ましくは30以上3,000以下の数である。yは好ましくは1以上1,000以下の数、より好ましくは1以上500以下の数、更に好ましくは1以上200以下の数である。一般式(a1)の化合物の重量平均分子量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、同様の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
-C-NH
-C-NH-C-NH
-C-NH-[C-NH]-C-NH
-C-NH(CH
-C-NH-C-NH(CH
-C-NH-[C-NH]-C-NH(CH
-C-N(CH
-C-N(CH)-C-N(CH
-C-N(CH)-[C-N(CH)]-C-N(CH
-C-NH-cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーンは、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80~110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53-98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーンとしては、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが-C-NH-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
本発明におけるアミノ変性シリコーンとしては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、ダウ・東レ社製のSS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16-892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16-898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、信越化学工業社製のKF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF-8004(動粘度:800、アミノ当量:1500)、KF-8005(動粘度:1200、アミノ当量:11000)、KF-867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF-864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、KF-859(動粘度:60、アミノ当量:6000)、が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(a1-1)成分としては、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16-853U(動粘度:14、アミノ当量:450)がより好ましい。
(a1-2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、KF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、SS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)がより好ましい。
なお、アミノ基を有する高分子化合物は置換基を有するものであってもよい。置換基の具体例としては、上述の「(c)更なる置換基」で記載したものが挙げられる。
(ii)カチオン性基を有する炭化水素系化合物
本発明における、カチオン性基を有する炭化水素系化合物とは、一つのカチオン性基に対して一つ以上の炭化水素基が結合したものである。カチオン性基を有する炭化水素系化合物の合計炭素数は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、更に好ましくは18以上であり、ハンドリング性の観点から、好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下、更に好ましくは26以下、更に好ましくは22以下である。
カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、カチオン性基が1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム、ホスホニウム等の場合には、炭化水素基は窒素原子あるいはリン原子に共有結合を介して直接結合した化合物である。カチオン性基がアミジン、グアニジン等の場合は、その官能基の窒素原子あるいは炭素原子の少なくとも片方に共有結合を介して結合した化合物である。カチオン性基がイミダゾリウム、ピリジニウム、イミダゾリン等の場合は、環構造のいずれかの位置に少なくとも一つ以上の炭化水素基が共有結合を介して結合した化合物である。
カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、オキシアルキレン基を含まないものがより好ましい。
上記炭化水素系化合物は、一部の水素原子が更に置換されていてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ケトン基、チオール基等が挙げられる。
上記カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、好ましくは1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム等の、アミノ基を有する炭化水素系化合物(本明細書において、「炭化水素系アミン」と称する。)である。かかる炭化水素系アミンの具体例としては、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、ジメチルジオクチルアンモニウム塩、ジメチルジデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩等が好ましい。
なお、カチオン性基を有する炭化水素系化合物は置換基を有するものであってもよい。置換基の具体例としては、上述の「(c)更なる置換基」で記載したものが挙げられる。
(iii)修飾用化合物の使用量
改質セルロース繊維を得る工程における、前記アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に対する、使用する修飾用化合物のアニオン性基と反応し得る官能基の当量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは1当量以上、更に好ましくは1.5当量以上である。また、成膜性の観点から、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下、更に好ましくは2当量以下である。
(4)微細化処理工程
改質セルロース繊維の製造過程のいずれかの段階においてセルロースを微細化することにより、マイクロメータースケールのセルロースをナノメータースケールに微細化することができる。平均繊維径をナノメートルサイズにまで小さくすることによって、成膜時の強度が向上するため、微細化処理工程をさらに実施することが好ましい。
微細化処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における反応物繊維の固形分含有量は50質量%以下が好ましい。
<成分(B)>
本発明における成分(B)は水である。成分(B)は、成分(A)の調製の際の溶媒として、及び本発明の乳化組成物の構成成分の一つとしての役割を有する。
<成分(C)>
本発明における成分(C)は、25℃1気圧で液体の有機化合物である。成分(C)は、成分(A)の調製の際に使用される溶媒であってもよい。
成分(C)の水への溶解度は、25℃の水100gあたり、10g以下が好ましく、1g以下が更に好ましい。
成分(C)の重量平均分子量は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下であり、同上の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。
本発明における成分(C)は、具体的には、油剤、有機溶剤、重合性モノマー、プレポリマー等が挙げられる。本発明における成分(C)は、好ましくは油剤であり、油剤としては、膜の抗菌性向上の観点から、例えば、アルコール、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、エーテル油、油脂、フッ素系不活性液体及び脂肪酸からなる群より選択される一種以上が挙げられ、エステル油、シリコーン油、エーテル油、油脂、及びフッ素系不活性液体からなる群より選択される一種以上が好ましく、シリコーン油、エステル油、及びエーテル油からなる群より選択される一種以上がより好ましく、シリコーン油及び/又はエステル油が更に好ましい。
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油が挙げられ、具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン等の炭素数2~18の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸エステルが挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、ヒマシ油などの植物油や動物油等が挙げられる。
成分(C)は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくはSP値が10以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9.0以下、より更に好ましくは8.5以下であり、同上の観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上である。例えば、後述のSP値が10以下の油剤が好ましいものとして例示できる。
本明細書におけるSP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm3)1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition (A Wiley-Interscience publication, 1989)等に記載されている。
本発明で好適に使用されるSP値が10以下の油剤としては、例えば、オレイン酸(SP値:9.2)、D-リモネン(SP値:9.4)、PEG400(SP値:9.4)、コハク酸ジメチル(SP値:9.9)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)、ラウリン酸ヘキシル(SP値:8.6)、ラウリン酸イソプロピル(SP値8.5)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値8.5)、パルミチン酸イソプロピル(SP値8.5)、オレイン酸イソプロピル(SP値:8.6)、ヘキサデカン(SP値:8.0)、オリーブ油(SP値:9.3)、ホホバ油(SP値:8.6)、スクアラン(SP値:7.9)、流動パラフィン(SP値:7.9)、フッ素系不活性液体(例えば、フロリナートFC-40(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-43(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-72(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-770(3M社製、SP値:6.1))、シリコーンオイル(例えば、KF96-1cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-10cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-50cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-100cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-1000cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96H-1万cs(信越化学社製、SP値:7.3)等)等が挙げられる。これらの油剤はいずれも25℃1気圧で液体である。
<成分(D)>
本発明における成分(D)は抗菌性を有する化合物である。抗菌とは、滅菌、殺菌、消毒、静菌、制菌、除菌、防腐、防菌、防カビなど全ての作用を含む。
抗菌性を有する化合物は、例えば、有機合成系抗菌剤、天然物系抗菌剤、および無機物系抗菌剤が挙げられる。
有機合成系抗菌剤としては、イソチアゾリン系抗菌剤、ビグアナイド系抗菌剤、界面活性剤系抗菌剤(両性界面活性剤系抗菌剤、第4級アンモニウム塩系抗菌剤)、フェノール系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、カルバニリド系抗菌剤、アミノ酸系抗菌剤、スルフィド系抗菌剤、ニトリル系抗菌剤、ポリマー系抗菌剤、カルボン酸系抗菌剤、アルコール系抗菌剤、メデトミジン、トラロピリル(4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル)等が挙げられる。
イソチアゾリン系抗菌剤としては、例えば、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンまたは2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンが挙げられる。
ビグアナイド系抗菌剤としては、クロルヘキシジンジグルコネート(CHG)、クロルヘキシジンジアセテート、クロルヘキシジンジヒドロクロリド、クロルヘキシジンジホスファニレート、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩(PHMB)、クロルヘキシジン・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合物、等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩系抗菌剤としては、第4級窒素原子の置換基として、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1~16のアルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1~16のアルケニル基、炭素数1~16のヒドロキシアルキル基又は炭素数1~16のフェニルアルキル基を有する第4級アンモニウム塩が好ましく、例えば、塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;塩化セチルピリジニウム;有機シリコーン第4アンモニウム塩(例えば、3-(メトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド);N-ポリオキシアルキレン-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩;N-アルキルアンモニウム塩、N,N-ジアルキルアンモニウム塩、N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩、N,N,N,N-テトラアルキル第4アンモニウム塩等(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、トリドデシルメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド);クロロアリルヘキサミニウムクロリド;リン酸エステルモノマーの共重合体の第4級アンモニウム塩化合物;ジシアンアミド・ジエチレントリアミン・塩化アンモニウム縮合物、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミンアンモニウム重縮合物、カチオンポリマー((ポリ-β-1,4)-N-アセチル-D-グルコサミンの部分脱アセチル化合物とヘキサメチレンビス(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)との反応生成物)が例示される。
なお、上記第4アンモニウム塩は、塩化物等のハロゲン化物であってもよく、カルボン酸塩であってもよく、ジアルキルリン酸塩であってもよい。
フェノール系抗菌剤は、芳香族炭化水素核の水素原子の1つ以上がヒドロキシ基で置換された構造を有する抗菌剤であり、例えば、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)、o-ベンジル-p-クロロフェノール(クロロフェン)、イソプロピルメチルフェノール(3-メチル-4-イソプロピルフェノール、IPMP)、パラクロロメタキシレノール(4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、PCMX)などが挙げられる。
ピリジン系抗菌剤としては、ジンクピリチオン、亜鉛ピリチオン、カッパーピリチオン、銅ピリチオンが挙げられる。
無機物系抗菌剤としては、金属系の無機物系抗菌剤、光触媒系の無機物系抗菌剤、酸化物/天然物系の無機系抗菌剤が例示される。
金属系の無機物系抗菌剤としては、ゼオライト、粘土鉱物、シリカゲル、シリカ/アルミナ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ガラス等のケイ酸塩系;リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム(アパタイト)等のリン酸塩系;活性炭、酸化チタン、錯塩等のその他の金属系が例示される。
また、光触媒系としては、アナターゼ型酸化チタン、白金担持酸化チタン、アパタイトコート酸化チタン、窒素ドープ酸化チタン等の酸化チタン;銀担持リン酸ジルコニウム、銀担持アクリル繊維等のその他の光触媒系が例示される。
酸化物/天然物系としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物系、焼成ホタテ貝殻、焼成カキ殻、天然鉱物(ドロマイト、カルサイト)等が挙げられる。
<その他の成分>
本発明の乳化組成物は、前記成分以外に、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
<乳化組成物の性質>
本発明の乳化組成物は、前記の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を必須成分として含む、乳化状態の組成物である。本発明の乳化組成物は、o/w型エマルション、w/o型エマルションのどちらでもよいが、好ましくはo/w型エマルションである。
乳化組成物中又は乳化組成物の調製の際の成分(A)の含有量としては、乳化力の観点から、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、一方、ハンドリング性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
乳化組成物中又は乳化組成物の調製の際の成分(B)の含有量としては、乳化状態を維持する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、有効分量の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
乳化組成物中又は乳化組成物の調製の際の成分(C)の含有量としては、乳化状態を維持する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、一方、粘度やハンドリング性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
乳化組成物中又は乳化組成物の調製の際の成分(D)の含有量としては、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
乳化組成物中又は乳化組成物の調製の際の成分(D)と成分(A)の質量比((D)/(A))は、膜の抗菌性向上の観点から、0.0001以上、好ましくは0.0005以上、より好ましくは0.001以上であり、同様の観点から、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.04以下である。
乳化組成物中又は乳化組成物の調製の際の成分(A)と成分(C)の質量比((A)/(C))は、膜の抗菌性向上の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0002以上、更に好ましくは0.0005以上、更に好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.4以上であり、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。
乳化組成物の粘度は、ハンドリングの観点から、25℃における粘度が好ましくは0.5mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは30Pa・s以下である。ここで粘度は、B型粘度計により各サンプルの粘度域に合わせた適切なローターを用いて、25℃、回転数60rpmの条件で1分攪拌後の値を測定したものである。
乳化組成物における乳化滴の粒子径のメジアンは、後述するSEM観察による測定において、膜の抗菌性、耐水性、滑液性及び耐久性の向上の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、更に好ましくは400nm以上であり、同様の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。
かかる本発明の乳化組成物の用途としては、例えば、生物付着抑制剤、防汚剤、抗菌剤が挙げられる。
2.乳化組成物の製造方法
本発明の乳化組成物の製造方法は、前述の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)等を混合する工程、又は、アニオン変性セルロース繊維、修飾用化合物、成分(B)、成分(C)及び成分(D)等を混合する工程を有するものである。
各成分を混合することで乳化が生じ、乳化組成物が得られる。かかる混合処理には、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモミキサー、真空乳化装置、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。混合処理は、2種類以上の操作を組み合わせて実施してもよい。
各成分の混合時の温度や時間としては、特に限定されるものではなく、例えば、好ましくは5~50℃の温度範囲とし、好ましくは1分間~3時間の範囲とする。
混合時の各成分の含有量の好ましい範囲は、前述の本発明の乳化組成物における各成分の含有量の好ましい範囲と同じである。なお、成分(A)に代えて、アニオン変性セルロース繊維(成分(A-1))及び修飾用化合物(成分(A-2))を使用してもよい。
3.膜
上記の本発明の乳化組成物、生物付着抑制剤、防汚剤又は抗菌剤を硬質表面(例えば、金属表面、樹脂表面、ガラス表面、陶磁器表面、セラミック表面)等に塗布し、常温常圧下、又は必要に応じて加温又は減圧することにより、膜を形成させる。
膜は滑液性を有し、しかも耐水性を有することから、水中や海水中で滑液性を望まれる用途、例えば船舶の船体およびプロペラ、橋梁の骨格、配管、岸壁、冷却塔、タンク内面、洋上設備、観測機、漁網用の塗料として使用することができる。
以下、実施例等を示して本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
〔アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
測定対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出する。AFMによる画像で分析される高さを繊維径とみなすことができる。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、上記アニオン性基含有量の測定方法によって測定する。
一方、これとは別に、ビーカーに、測定対象の酸化セルロース繊維の水分散液100g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)100g、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え25℃で16時間撹拌して、酸化セルロース繊維に残存するアルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、脱イオン水にて洗浄を行い、アルデヒド基を酸化処理したセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記アニオン性基含有量の測定方法で測定し、「酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量」を算出する。続いて、式1にて測定対象の酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)-(測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、MOC-120H)を用いて測定する。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少がサンプルの初期量の0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔改質セルロース繊維における結晶構造の確認〕
改質セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットに圧縮して作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式Aに基づいて算出する。
<式A>
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編;2000年4月発行)のP199-200の記載に則り、以下の式Bに基づいて算出することが好ましい。
したがって、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式Bに基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
<式B>
セルロースI型結晶化度(%)=[A/(A+A)]×100
〔式中、Aは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
〔レーザー回折法による乳化滴の粒子径の測定〕
レーザー回折法による乳化滴の粒子径の測定は、堀場製作所製LA-960を用いて行う。
測定条件:測定用セルに水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積粒度分布及びメジアン(体積累積中位粒径(D50))を測定する。なお、相対屈折率1.20、温度25℃、循環ポンプON、循環速度5、撹拌速度5とする。
〔アニオン変性セルロース繊維〕
原料として、表1に記載の物性値を有するアニオン変性セルロース繊維を用いた。
Figure 2023094520000002
かかるアニオン変性セルロース繊維は、例えば下記のTEMPO酸化処理のようにして調製することができる。
[TEMPO酸化処理]
メカニカルスターラー、撹拌翼を備えた2LのPP製ビーカーに、原料の天然セルロース繊維としての針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維10g、脱イオン水990gをはかり取り、25℃、100rpmで30分撹拌する。次いで、該パルプ繊維10gに対し、TEMPOを0.13g、臭化ナトリウム1.3g、10.5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液35.5gをこの順で添加する。次いで、自動滴定装置を用いてpHスタット滴定を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持する。撹拌速度100rpmにて反応25℃で120分行う。
次いで、撹拌しながら、それに0.01Mの塩酸を加えて、懸濁液のpHを2とする。次いで、吸引濾過で、固形分を濾別する。固形分を脱イオン水中に分散させ、吸引濾過で固形分を濾別する操作を、ろ液の伝導度が200μs/cm以下になるまで繰り返す。得られる固形分に対して脱水処理を行って、アニオン変性セルロース繊維を得ることができる。
〔還元処理された微細化アニオン変性セルロース繊維の調製〕
調製例1
前記アニオン変性セルロース繊維に微細化処理、次いで、還元処理を行って、表2に記載の物性値を有する微細化アニオン変性セルロース繊維を調製した。
Figure 2023094520000003
かかる微細化アニオン変性セルロース繊維は、例えば下記の微細化処理及び還元処理により調製することができる。
[微細化処理]
アニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を添加して懸濁液(固形分含有量2.0質量%)100gを調製し、これに0.5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=8に調整する。次いで、脱イオン水を加えて合計200gとする。この懸濁液に、高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで微細化処理を3回行い、微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量1.0質量%)を得ることができる。
[還元処理]
微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量1.0質量%)182gをはかり取り、脱イオン水を加えて合計400gとし、そこに0.1M水酸化ナトリウム水溶液1.2mL、水素化ホウ素ナトリウム120mgを加え、25℃で4時間撹拌する。次いで、1M塩酸9mLを加えて撹拌を続ける。撹拌終了後、吸引ろ過して得られた固形分を脱イオン水中に分散させ、吸引濾過で固形分を濾別する操作を6回繰り返す。このようにして、微細化アニオン変性セルロース繊維に存在するアルデヒド基が還元処理された、微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量0.9質量%)を得ることができる。
〔改質セルロース繊維及び乳化組成物の製造〕
以下に示す方法で、実施例及び比較例の改質セルロース繊維及び乳化組成物を製造した。なお、表に示す原料の組成は原料の有効分であり、各原料の有効分が表に記載の質量%となるように、各原料を使用した。
実施例1
ビーカーに、調製例1で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイル1、アミノ変性シリコーン(アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基に対して1.25当量に相当)を混合し、そこに脱イオン水を加えてセルロース繊維の分散液とした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、アニオン変性セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した、修飾基を有するセルロース繊維、即ち改質セルロース繊維を含む分散体を得た。得られた分散体は白濁液であって、光学顕微鏡によって水中に油滴が分散している様子が観察されたため、乳化状態であると判断した。
得られた分散体に対して、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンを添加し、超音波ホモジナイザーUE-300E(日本精機製作所社製、プローブ径12mm)を用いて1分間分散し、乳化組成物を得た。
実施例2~26、比較例1、5、7、8
乳化組成物の配合を下表に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、乳化組成物を得た。なお、成分Dが溶液のものについては、超音波ホモジナイザーではなくボルテックスミキサーVORTEX-GENIE 2(サイエンティフィックインダストリーズ社製)で30秒間ミキシングして乳化組成物を得た。
比較例2
1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンを0.1質量%となるよう脱イオン水で希釈したものを表面処理剤として用いた。
比較例3
サニゾールCを0.1質量%となるよう脱イオン水で希釈したものを表面処理剤として用いた。
なお、実施例等で使用した代表的な成分の詳細を以下にまとめた。
[成分(A-2):修飾用化合物]
アミノ変性シリコーン:ダウ・東レ社製、SS-3551(動粘度:1,000、アミノ当量:1,700)
オレイルアミン:富士フイルム和光純薬社製、(アミノ当量:267.5、合計炭素数:18)
[成分(C)]
シリコーンオイル1:信越化学工業社製、KF-96-100cs(SP値:7.3)
パルミチン酸イソプロピル:富士フイルム和光純薬社製(SP値:8.5)
[成分(D):抗菌性を有する化合物]
1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(表中、BITと略記する。):富士フイルム和光純薬社製
Proxel BDN(有効成分:BIT):ロンザ社製(有効分濃度33質量%)
サニゾールC:花王社製(有効分濃度50質量%)
ジンクピリチオン:富士フイルム和光純薬製
カッパーピリチオン標準品:富士フイルム和光純薬社製
なお、ジンクピリチオンとカッパーピリチオンに関しては、乳化状態の分散液に配合した際の分散性向上のために、分散液中にポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社、KF-642、HLB:14)を0.2質量%となるよう添加し、ジンクピリチオン分散体、カッパーピリチオン分散体として用いた
酸化亜鉛(290nm):堺化学工業社製、ST-ABZ-10
酸化亜鉛(20nm):堺化学工業社製、DIF-AQ-50(有効分濃度40質量%水分散体)
メデトミジン:Toronto Research Chemicals社製、デキスメデトミジン
ダイクロサン:BASFジャパン社製、Tinosan(登録商標)HP 100(有効分濃度30質量%)
Proxel IB:ロンザ社製(有効成分:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、有効分濃度20質量%)
トラロピリル:ヤンセンファーマ社製、ECONEA(登録商標) TECHNICAL
上記のようにして調製された乳化組成物及び比較例2~3の表面処理剤を、下記のように評価した。
<試験片の作成>
スライドガラス(MATSUNAMI社製、スーパーフロストスライドガラス 76 × 26 [mm] S2441)の透明部分(61 × 26 [mm])に対し、各組成物を200μL塗布し室温で風乾させた。乾燥後、滅菌脱イオン水を用い表面を洗浄後、再度室温で風乾させた。
一方、このスライドガラスに対して、何も塗布しない基板を比較例4、比較例6の基板とした。
<滑液性の評価>
〔滑落角測定試験〕
上記のようにして作製された実施例、比較例の膜を水平の状態に設置し、各膜に対して、全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、8μLの水滴(23℃)を滴下し、1秒静置した。次いで、1°/sの速さで膜表面を85°まで傾け、水滴が滑り始める角度を測定した。水滴滑落角の値が小さいほど、その膜の滑液性が高いことを示す。各成分の組成(膜中の質量部数)及び評価結果を下記の表に示す。ただし、80°まで傾けても水滴が滑り落ちなかった場合には、水滴滑落角は、「80超」と記した。滑落角が「80超」の膜は、明らかに滑液性を有さないと評価できる。
<バイオフィルム形成抑制効果評価>
〔菌液の調製〕
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus (S. aureus) NBRC13276)、大腸菌(Escherichia coli (E. coli) NBRC3972)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus: MRSA)(花王社環境分離菌)、Microbacterium oxydans (M. oxydans) (NBRC15586)、Pseudomonas aeruginosa (P. aeruginosa) (NBRC12689)、Stenotrophomonas maltophilia (S. maltophilia) (NBRC14161)、ESBL産生Stenotrophomonas maltophilia (S. maltophila-ESBL)(花王社環境分離菌)のグリセロール凍結保存品より、ディスポループ1型(アズワン社製)で採取し、それぞれSoybean Casein Digest寒天培地(日本製薬社製、標準寒天培地「ダイゴ」)を用いて32.5℃、24時間の前培養を行った。
同一菌種の抗生物質耐性菌株及び抗生物質感受性菌株の比較試験を行うために、Enterococcus faecium (NBRC100480, ATCC51575)、S. aureus (NBRC100910, ATCC BAA-41)、Klebsiella pneumoniae (NBRC14940, ATCC BAA-2342)、Acinetobacter baumannii (NBRC109757, ATCC BAA-1605)、Pseudomonas aeruginosa (NBRC12689, ATCC BAA-2110)、Enterobacter cloacae (NBRC13535, ATCC BAA-2341)のグリセロール凍結保存品より、ディスポループ1型で採取しそれぞれSoybean Casein Digest寒天培地(日本製薬社製、標準寒天培地「ダイゴ」)を用いて32.5℃、24時間の前培養を行った。これらの菌種は分譲機関より入手した。
試験管(Corning社製、PYREX(登録商標) 18 × 150 mm)にLuria-Bertani(日本製薬社製、LB寒天培地「ダイゴ」)を 2mL入れ、そこに前培養で作製したコロニーを1白金耳接種して37℃/200rpm/24時間の条件で振とう培養した。
培養後、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U-5100)を用いて、600 nmの波長における吸光度(OD600 nm)を測定し、E. coli:1.0、P. aeruginosa:0.2、S. maltophilia:0.2、その他の菌:0.5になるように調製した。OD600 nmを前記の値に合わせた菌液をそれぞれSoybean Casein Digest寒天培地(日本製薬社製、標準寒天培地「ダイゴ」)で100倍希釈し、評価用の菌液とした。
〔バイオフィルム形成抑制効果評価〕
各試験片に菌液100μLを滴下し、同じ剤で処理した試験片で挟んだ状態で滅菌2号角シャーレ(140×100×14.5[mm]: 栄研化学製)に入れ、32.5℃で24時間培養した。菌液を挟んだスライドガラスは菌液付着面が露出するようにして、5mL用ピペットマンを用いて滅菌イオン交換水で洗浄した。ふきふきチェックII(栄研化学社製)を用いて試験片表面をスワブし、容器を30秒ボルテックスして菌体を懸濁させた。これを10倍毎の段階希釈により菌液を調製し、3μLを滅菌2号角シャーレに充填したSoybean Casein Digest寒天培地(日本製薬社製、SCD寒天培地「ダイゴ」)へ添加し、32.5℃で18~24時間培養した。また併せて、懸濁液原液については滅菌シャーレ(Φ90 x 15[mm]: イナ・オプティカ製)に充填したSCD寒天培地に100μL添加し、検出下限が101 cfu/mLまで確認出来るようにした。
以下の方法により抗菌活性値を算出した。
抗菌活性値=log {(未処理試験片における24時間培養後の生菌数)―(処理試験片における24時間培養後の生菌数)}
なお、抗菌活性値が大きいほど、処理試験片の作成に使用した乳化組成物の抗菌性が高いことを示す。
結果を下記表に示す。
Figure 2023094520000004
Figure 2023094520000005
Figure 2023094520000006
Figure 2023094520000007
Figure 2023094520000008
Figure 2023094520000009
表3~6における各成分の量は、媒体等を含まない「有効分」の量である。成分(B)の水の量には、各成分を溶液や懸濁液等として使用した場合に媒体として持ち込まれる水の量を含む。
上記評価結果から、以下のことが分かった。
表3から、本発明の乳化組成物から成る膜においては、配合する成分(D)が有機系抗菌剤、無機系抗菌剤などいずれの化合物を用いた場合にも高い抗菌性を発現することがわかった。また、比較例の抗菌剤単体処理基板よりも効果が圧倒的に高いことがわかった。これは、改質セルロース繊維を用いた膜と成分(D)を組み合わせることによって、抗菌性を有する化合物が対象表面に効果的に保持されていることによると考えられる。
また、表4から、成分Dの配合量は極めて少量でもその効果を発現することが分かった。さらに、表5からは、本発明から成る膜の抗菌性を発現する上で対象とする菌種に関して、グラム陽性菌、グラム陰性菌、薬剤耐性菌など幅広い菌種に対応可能であることがわかった。さらに、表6からは、本発明の乳化組成物から成る膜は、抗生物質耐性菌株及び抗生物質感受性菌株の両者に対して、その効果を発現することが分かった。
本発明の乳化組成物は抗菌性に優れた膜を形成することができ、さらには膜の耐久性も期待できるため、微生物による感染・バイオフィルム付着など、微生物による様々な害の防止を必要とする現場、例えば、医療機関や食品工場等の施設内の壁面や配管等の表面処理剤として使用することができる。

Claims (8)

  1. 以下の成分(A)~(D)を含有し、成分(D)と成分(A)の質量比((D)/(A))が0.0001以上である、乳化組成物。
    (A)修飾基を有するセルロース繊維
    (B)水
    (C)25℃1気圧で液体の有機化合物
    (D)抗菌性を有する化合物
  2. 成分(D)の含有量が0.0005質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の乳化組成物。
  3. 成分(A)と成分(C)の質量比((A)/(C))が0.0001以上20以下である、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化組成物を含有する、生物付着抑制剤。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化組成物を含有する、防汚剤。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化組成物を含有する、抗菌剤。
  7. 請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化組成物、請求項4に記載の生物付着抑制剤、請求項5に記載の防汚剤、又は請求項6に記載の抗菌剤を塗布して得られる膜。
  8. 以下の成分(A)~(D)を混合する工程を含み、成分(D)と成分(A)の質量比((D)/(A))が0.0001以上である、乳化組成物の製造方法。
    (A)修飾基を有するセルロース繊維
    (B)水
    (C)25℃1気圧で液体の有機化合物
    (D)抗菌性を有する化合物
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