JP2022117973A - 硬質表面処理剤 - Google Patents

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Reimei Takeuchi
嘉則 長谷川
Yoshinori Hasegawa
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Abstract

【課題】簡易に滑液性を付与することができる硬質表面改質剤を提供すること。【解決手段】水中油型ピッカリングエマルションを含有する硬質表面処理剤;並びに防雪用塗料、防汚塗料、抗菌性塗料、流動抵抗低減剤又は離型剤の用途である前記硬質表面処理剤。【選択図】なし

Description

本発明は硬質表面処理剤に関する。
従来より、対象物に撥水性を持たせることで汚れの付着を防止する試みが行われてきた。最近では、ネットワーク構造や微細な凹凸構造に液体潤滑剤を含侵させたSlippery Liquid Infused Porous Surface (SLIPS)が報告されており、従来の撥水技術よりわずかな傾斜で、水をはじめとした液体を滑り落とすことができる。この性質は滑液性と呼ばれている。
例えば、特許文献1には、アニオン性シリカ微粒子分散液を基材表面に塗布した後、シリコーンエマルジョンを塗布することにより、1種以上のシリコーンからなる滑水性皮膜を基材表面に形成する方法が記されている。
特開2006-247544号公報
特許文献1の方法では、処理工程が複雑なため、簡易な操作で滑液性を付与することができる剤が求められている。
本発明の課題は、簡易に滑液性を付与することができる硬質表面改質剤に関する。
本発明は、下記〔1〕~〔2〕に関する。
〔1〕 水中油型ピッカリングエマルションを含有する硬質表面処理剤。
〔2〕 前記硬質表面処理剤が、防雪用塗料、防汚塗料、抗菌性塗料、流動抵抗低減剤、又は離型剤の用途である、前記〔1〕に記載の硬質表面処理剤。
本発明によって提供される硬質表面処理剤を用いることによって、硬質表面に滑液性に優れた膜を簡便に製造することができる。
図1は、圧力損失の測定装置の模式図である。
本発明者らが上記課題解決のために鋭意検討した結果、水中油型ピッカリングエマルションを含有する剤により、硬質表面に簡易に滑液性を有する膜を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
ピッカリングエマルションとは、液液界面に吸着した固体粒子によって安定化されたエマルションであり、油相と水相の両方に適切な濡れ性を有する固体粒子が、油水界面へと吸着し、エマルションを安定化したものである。
本発明の水中油型ピッカリングエマルションを、硬質表面に塗布し、乾燥させることで、滑液性を有する被膜を形成することができる。かかる特徴を発現するメカニズムは明らかでないが、ピッカリングエマルションを形成していた固体粒子が乾燥に伴ってネットワーク構造を形成し、そこに油剤が保持された被膜を形成できるためと推測される。
ピッカリングエマルションを用いることにより、界面活性剤量を低減又は配合することなく安定なエマルションを得ることができる。
1.硬質表面処理剤
本発明の硬質表面処理剤は水中油型ピッカリングエマルションを含有する。
ピッカリングエマルションは、例えば、固体粒子と、それに対して結合性を有する有機化合物を含むものが挙げられ、該有機化合物が該固体粒子に結合したものであることが、エマルションに十分な安定性を付与する観点から好ましい。
<固体粒子>
ピッカリングエマルションに用いられる固体粒子としては、無機物であってもよく、有機物であってもよいが、ピッカリングエマルションを製造する観点から、好ましくはアニオン性固体粒子である。アニオン性固体粒子としては、無機粒子又は結晶性有機粒子がより好ましい。固体粒子のさらに好ましいものとしては、I型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維、シリカ粒子及びアニオン性基を有するカーボン系化合物からなる群より選択される1種以上である。
無機物としては、金属粒子(金、銀、銅、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、パラジウム、白金、イリジウム、ロジウムなどの金属や、それらの合金)、金属酸化物(シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄など)、天然鉱物(マイカ、タルク、カオリン、雲母、ベントナイト、スメクタイトなど)、不溶性塩(金属の炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、半導体微粒子(CdSe、ZnS、InP、CdS、PbSなど)、カーボン系(カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、ナノダイヤモンド、金属炭化物など)が挙げられる。
有機物としては、多糖類(セルロースナノファイバー、セルロース粒子、デンプン)、油脂粉末、金属石鹸、有機顔料、ポリマー粉末(フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂)が挙げられ、これらの中で、結晶性有機粒子、例えば、セルロースナノファイバー、セルロース粒子、金属石鹸等がエマルションの安定性の観点から好ましい。
無機物の固体粒子及び有機物の固体粒子は、カルボキシ基等のアニオン性基、水酸基、アミノ基等のカチオン性基で変性されていてもよい。
固体粒子は、好ましくはアニオン性固体粒子であり、より好ましくはカルボキシ基を有する固体粒子である。
具体的な化合物として、アニオン性基を有する固体粒子として、アニオン性基を有するカーボンブラック、アニオン性基を有する多糖類が挙げられる。これらの化合物は市販されており、容易に入手することができる。
固体粒子の形状はいずれであってもよく、球状、不定形、繊維状、シート状などが考えられる。
固体粒子の最大長は、エマルション同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下であり、一方、液液界面への十分な吸着力を確保する観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上である。これらの粒子の最大長は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察した、無作為に抽出した50個の粉末の長径(粒子の表面で、最も離れている点の間を結んだ直線の長さ)の数平均値を意味する。
固体粒子の形状がセルロースナノファイバーのような繊維状の場合、即ちアスペクト比が5以上の場合、平均繊維径は、液液界面への十分な吸着力を確保する観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、一方、エマルション同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは500nm以下である。さらに、固体粒子の形状がセルロースナノファイバーのような繊維状の場合、平均繊維長は、液液界面への十分な吸着力を確保する観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、一方、エマルション同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは1mm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは10μm以下である。平均繊維径及び平均繊維長は、後述する方法により求めることができる。
さらに、固体粒子の形状がシート状の場合、エマルション同士の凝集を抑制する観点から、その厚さは好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
セルロースナノファイバーの一例として、アニオン性基を有する多糖類が挙げられる。アニオン性基を有する多糖類としては、例えば、セルロース繊維中にアニオン性基を含むようにアニオン変性されたセルロース繊維が挙げられる。
〔アニオン変性セルロース繊維〕
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、セルロース繊維中にアニオン性基を含むようにアニオン変性されたセルロース繊維である。
アニオン変性セルロース繊維はセルロースI型結晶構造を有するものである。アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は、成膜時の強度発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。なお、本明細書において、各種セルロース繊維の結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられる。前記アニオン性基は、セルロース繊維への修飾基の導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
セルロース繊維にカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースのヒドロキシ基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースのヒドロキシ基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
前記セルロースのヒドロキシ基を酸化処理する方法としては特に制限されないが、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を反応させて酸化処理する方法が適用できる。より詳細には、公知の方法、例えば特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができる。
TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位のヒドロキシ基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。従って、本発明におけるアニオン変性セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。本明細書において、かかるセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」という場合がある。酸化セルロース繊維は、それ以外のアニオン変性セルロース繊維と比べて調製が容易であることから好ましい。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
アニオン変性セルロース繊維としては、調製が容易である観点及び反応条件が穏やかである観点から、アニオン性基がカルボキシ基であるカルボキシ基含有セルロース繊維がより好ましい。
<結合性を有する有機化合物>
本発明における結合性を有する有機化合物とは、固体粒子に対して結合性を有する有機化合物であり、固体粒子がアニオン性固体粒子の場合、該有機化合物としては、カチオン性官能基を有する有機化合物が好ましい。
カチオン性官能基を有する有機化合物としては、アミノ基を有する有機化合物が好ましく、アミノ基を有する有機化合物としては、アミノ基を有する高分子化合物及びアミノ基を有する炭化水素系化合物が挙げられる。
(i)アミノ基を有する高分子化合物
本発明において好ましく用いることができるアミノ基を有する高分子化合物は、市販品として入手することができ、あるいは公知の方法に従って調製することができる。アミノ基を有する高分子化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明におけるアミノ基を有する高分子化合物としては、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアミン、アミノ変性ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、アミノ変性ビニル系ポリマー、アミノ変性ポリエステル、アミノ変性ポリカーボネート、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の樹脂;鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂芳香族ポリアミン等などが挙げられ、反応基の位置は高分子化合物の主鎖、側鎖、末端のいずれでもよい。これらの中では、滑液性を有する膜を得る観点から、好ましくはアミノ変性シリコーンである。
アミノ変性シリコーンとは、アミノ基を有するシリコーン系化合物である。アミノ変性シリコーンとしては、25℃での動粘度が10mm/s以上20,000mm/s以下のものが好ましい。さらに、アミノ当量が400g/mol以上16,000g/mol以下のアミノ変性シリコーンが好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、離型性に優れる膜を得る観点から、より好ましくは20mm/s以上、更に好ましくは50mm/s以上であり、ハンドリング性の観点からより好ましくは10,000mm/s以下、更に好ましくは5,000mm/s以下である。
また、アミノ当量は、離型性に優れる膜を得る観点から、好ましくは400g/mol以上、より好ましくは600g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上であり、アニオン変性セルロース繊維への結合のさせやすさの観点から、好ましくは16,000g/mol以下、より好ましくは14,000g/mol以下、更に好ましくは12,000g/mol以下である。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=重量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーンの具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022117973000001
〔式中、R1aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、離型性に優れる膜を得る観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、同様の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、離型性に優れる膜を得る観点から、xは好ましくは10以上10,000以下の数、より好ましくは20以上5,000以下の数、更に好ましくは30以上3,000以下の数である。yは好ましくは1以上1,000以下の数、より好ましくは1以上500以下の数、更に好ましくは1以上200以下の数である。一般式(a1)の化合物の重量平均分子量は、好ましくは2,000以上1,000,000以下、より好ましくは5,000以上100,000以下、更に好ましくは8,000以上50,000以下である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
-C-NH
-C-NH-C-NH
-C-NH-[C-NH]-C-NH
-C-NH(CH
-C-NH-C-NH(CH
-C-NH-[C-NH]-C-NH(CH
-C-N(CH
-C-N(CH)-C-N(CH
-C-N(CH)-[C-N(CH)]-C-N(CH
-C-NH-cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーンは、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80~110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53-98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーンとしては、離型性に優れる膜を得る観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが-C-NH-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
本発明におけるアミノ変性シリコーンとしては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、ダウ・東レ社製のSS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16-892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16-898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、信越化学工業社製のKF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF-8004(動粘度:800、アミノ当量:1500)、KF-8005(動粘度:1200、アミノ当量:11000)、KF-867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF-864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、KF-859(動粘度:60、アミノ当量:6000)、が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(a1-1)成分としては、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16-853U(動粘度:14、アミノ当量:450)がより好ましい。
(a1-2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、KF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、SS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)がより好ましい。
なお、アミノ変性シリコーンは置換基を有するものであってもよい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1~6のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基が挙げられる。
(ii)アミノ基を有する炭化水素系化合物
アミノ基を有する炭化水素系化合物とは、一つのアミノ基に対して一つ以上の炭化水素基が結合したものである。アミノ基を有する炭化水素系化合物の合計炭素数は、離型性に優れる膜を得る観点から、好ましくは16以上、さらに好ましくは18以上であり、ハンドリング性の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは26以下である。
アミノ基を有する炭化水素系化合物において、アミノ基が1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム、ホスホニウム等の場合には、炭化水素基は窒素原子あるいはリン原子に共有結合を介して直接結合した化合物である。
アミノ基を有する炭化水素系化合物は、オキシアルキレン基を含まないものがより好ましい。
(炭化水素基)
前記炭化水素系化合物における炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、入手性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは24以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの炭化水素基における炭素数のことを意味する。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、イソプレニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基が挙げられる。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。
上記炭化水素系化合物は、一部の水素原子が更に置換されていてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ケトン基、チオール基等が挙げられる。
上記アミノ基を有する炭化水素系化合物は、好ましくは1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム等の、アミノ基を有する炭化水素系化合物(本明細書において、「炭化水素系アミン」と称する。)である。かかる炭化水素系アミンの具体例としては、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、ジメチルジオクチルアンモニウム塩、ジメチルジデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩等が好ましい。
〔疎水変性セルロース繊維〕
固体粒子がI型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維であり、結合性を有する有機化合物がアミノ変性シリコーン又は炭化水素系アミンの場合、ピッカリングエマルションにおいては、両者が結合して疎水変性セルロース繊維を形成する。疎水変性セルロース繊維においては、アミノ変性シリコーン又は炭化水素系アミンに由来する修飾基が、I型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維の特定の基に修飾基が結合している。修飾基の結合箇所としては、アニオン性基及びヒドロキシ基からなる群より選択される一種以上の基である。
前記結合箇所がアニオン変性セルロース繊維のヒドロキシ基の場合には、結合様式は共有結合であり、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合等が挙げられる。
前記結合箇所がアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基の場合には、結合様式はイオン結合あるいは共有結合である。結合様式がイオン結合の場合には、カチオン性基を有する修飾用化合物が、静電相互作用を介して結合した状態であり、結合様式が共有結合の場合には、エステル結合、アミド結合などを介して結合した状態を指し、特にカルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基に対しては、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合等を介して結合した状態である。
例えば、修飾基を導入するための化合物(本明細書において「修飾用化合物」と記載する。)がアミノ変性シリコーン(「HN-〔アルキルシリコーン骨格〕」とする。)であり、アニオン変性セルロース繊維がカルボキシ基含有セルロース繊維(「〔セルロース骨格〕-C(=O)-OH」とする。)である場合において、結合様式がイオン結合であれば、疎水変性セルロース繊維は「〔セルロース骨格〕-C(=O)-O-H-〔アルキルシリコーン骨格〕」のような構造となり、修飾基は「-〔アルキルシリコーン骨格〕」となる。一方、結合様式がアミド結合であれば、疎水変性セルロース繊維は「〔セルロース骨格〕-C(=O)-NH-〔アルキルシリコーン骨格〕」のような構造となり、修飾基は「-〔アルキルシリコーン骨格〕」となる。このように、修飾基の構造は、使用する修飾用化合物の構造に依存する。なお、「C」はセルロース構成単位の6位の炭素原子を意味する。
セルロース繊維にアミノ変性シリコーンが結合してなる疎水変性セルロース繊維の一つの好ましい態様は、下記一般式(T-Ce)で示される構造を有する。
Figure 2022117973000002
(式中、Xは-CHOH、-CHO-R、-C(=O)OH、-C(=O)O-R、-C(=O)-O-H-R及び-C(=O)-NH-Rからなる群より選択される一種以上の基であり、Rは修飾基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子又は修飾基であり、R及びRは同一でも異なっていてもよく、複数のR及びRのうちの少なくとも一つは修飾基である。mは20以上3,000以下の整数である。)
I型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維にアミノ変性シリコーンが結合してなる疎水変性セルロース繊維における修飾基はアミノ変性シリコーンに由来する基であり、修飾基(即ち、前記式(T-Ce)におけるR及びR)の構造は、使用するアミノ変性シリコーンの構造に依存する。セルロース繊維に対する修飾基の結合様式は、共有結合あるいはイオン結合であることが好ましい。製造の簡便性の観点から、イオン結合が好ましく、形成される膜の安定性の観点から共有結合が好ましい。
<水>
本発明の硬質表面処理剤には水が含まれる。
水はピッカリングエマルションの調製の際の溶媒として、及び本発明の硬質表面処理剤の構成成分の一つとしての役割を有する。
<油剤>
本発明の硬質表面処理剤には油剤が含まれる。
油剤としては、25℃1気圧で液体の有機化合物が好ましい。
25℃1気圧で液体の有機化合物の水への溶解度は、25℃の水100gあたり、10g以下が好ましく、1g以下が更に好ましい。
油剤の分子量は、滑液性を向上させた膜を得る観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下であり、同上の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。
油剤としては、滑液性を向上させた膜を得る観点から、例えば、アルコール、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、エーテル油、油脂、フッ素系不活性液体及び脂肪酸からなる群より選択される一種以上が挙げられ、エステル油、シリコーン油、エーテル油、油脂、及びフッ素系不活性液体からなる群より選択される一種以上が好ましく、シリコーン油、エスエル油、及びエーテル油からなる群より選択される一種以上がより好ましく、シリコーン油及び/又はエスエル油が更に好ましい。
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油が挙げられ、具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン等の炭素数2~18の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸エステルが挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、ヒマシ油などの植物油や動物油等が挙げられる。
油剤の化合物は、ピッカリングエマルションを製造する観点から、好ましくはSP値が10以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9.0以下、より更に好ましくは8.5以下であり、同上の観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上である。
本明細書におけるSP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm3)1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition (A Wiley-Interscience publication, 1989)等に記載されている。
本発明で使用されるSP値が10以下の油剤としては、例えば、オレイン酸(SP値:9.2)、D-リモネン(SP値:9.4)、PEG400(SP値:9.4)、コハク酸ジメチル(SP値:9.9)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)、ラウリン酸ヘキシル(SP値:8.6)、ラウリン酸イソプロピル(SP値8.5)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値8.5)、パルミチン酸イソプロピル(SP値8.5)、オレイン酸イソプロピル(SP値:8.6)、ヘキサデカン(SP値:8.0)、オリーブ油(SP値:9.3)、ホホバ油(SP値:8.6)、スクアラン(SP値:7.9)、流動パラフィン(SP値:7.9)、フッ素系不活性液体(例えば、フロリナートFC-40(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-43(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-72(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-770(3M社製、SP値:6.1))、シリコーンオイル(例えば、KF96-1cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-10cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-50cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-100cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-1000cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96H-1万cs(信越化学社製、SP値:7.3)等)等が挙げられる。
<ポリエーテル変性シリコーン化合物>
本発明の硬質表面処理剤はポリエーテル変性シリコーン化合物を更に含んでいてもよい。かかる成分を硬質表面処理剤に配合することによって、離型性を向上させた膜を得ることができる。ポリエーテル変性シリコーン化合物の一例としては、メチルシリコーン鎖を主鎖とし、ポリオキシエチレン基からなる側鎖をもつ化合物が挙げられ、具体的には、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
Figure 2022117973000003
(式中、Rはメチレン基、エチレン基又はトリメチレン基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、mは0~50の整数、nは1~10の整数、pは1~50の整数、及びqは0~50の整数をそれぞれ示す。-R(CO)(CO)で示される基において、(CO)及び(CO)はランダムでもブロックでもよい。)
ポリエーテル変性シリコーン化合物のHLB値は、硬質表面処理剤の乾燥によって得られる離型性に優れる膜を得る観点から、特定の範囲内のものが好ましく、具体的には、好ましくは1以上、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であって、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
HLB値が異なる2種以上のポリエーテル変性シリコーンを使用する場合は、それらの加重平均で求めたHLB値が上記範囲になればよい。なお、HLB値とは、親水性と親油性のバランスを表す指標であり、本発明においては、以下のグリフィン(Griffin)の式により求められるものを指す。
HLB値=20×親水基部の分子量の総和/分子量
ポリエーテル変性シリコーン化合物の25℃における動粘度は、硬質表面処理剤の乾燥によって得られる離型性に優れる膜を得る観点から、特定の範囲内のものが好ましく、具体的には、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは5mm/s以上であり、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは500mm/s以下、更に好ましくは200mm/s以下である。
ポリエーテル変性シリコーン化合物は市販されており、市販品としては、信越化学工業社製の、KF-615A、KF-640、KF-642、KF-643、KF-644、KF-351A、KF-354L、KF-355A、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6016、KF-6017、KF-6020、KF-6043等が挙げられ、硬質表面処理剤の乾燥によって得られる離型性に優れる膜を得る観点から、KF-640、KF-642、KF-643、KF-351A、KF-354L、KF-355A等が好適に用いることができる。前記一般式に該当しない構造の市販品(例えば、信越化学工業社製のKF-6028及びKF-6038等)も、ポリエーテル変性シリコーン化合物として使用することができる。
<揮発性の有機化合物>
本発明における硬質表面処理剤は、前記油剤に該当するもの以外の有機化合物であって、25℃1気圧で揮発性の有機化合物を更に含んでいてもよい(かかる有機化合物を、本明細書において「揮発性の有機化合物」と称する。)。かかる成分を、ピッカリングエマルションや硬質表面処理剤に配合することによって、基材上により容易に成膜させることができるため、好ましい。本明細書において、25℃1気圧で揮発性の有機化合物とは、かかる条件での蒸気圧が10Pa以上の有機化合物を意味する。
かかる成分としては、例えば、N-メチルピロリドン、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、メタノール、t-ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられる。
<高分子化合物>
本発明における硬質表面処理剤は、上記のアミノ基を有する高分子化合物以外の高分子化合物、例えば、下記の高分子化合物(X)及び高分子化合物(Y)からなる群より選択される1種以上を更に含んでいてもよい。かかる成分を乳化組成物に配合することによって、膜の耐久性を向上することができるため、好ましい。
高分子化合物(X):側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子
高分子化合物(Y):主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子化合物
高分子化合物(X)の重量平均分子量としては、膜の耐久性向上の観点から、好ましくは1,000以上であり、同様の観点から、好ましくは50万以下である。
高分子化合物(X)としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート、スチレンアクリル、ウレタンアクリル等アクリルとの共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN-メチル(メタ)アクリルアミド、ポリN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリN-フェニル(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
2.硬質表面処理剤の製造方法
本発明の硬質表面処理剤は、例えば、前述の成分(A)、成分(B)、成分(C)等を混合することにより製造することができる。
各成分を混合することで乳化が生じ、ピッカリングエマルションが得られる。かかる混合処理には、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモミキサー、真空乳化装置、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。混合処理は、2種類以上の操作を組み合わせて実施してもよい。
各成分の混合時の温度や時間としては、特に限定されるものではなく、例えば、好ましくは5~50℃の温度範囲とし、好ましくは1分間~3時間の範囲とする。
混合時の各成分の含有量の好ましい範囲は、前述の本発明のピッカリングエマルションにおける各成分の含有量の好ましい範囲と同じである。
アニオン性固体粒子とカチオン性官能基を有する有機化合物との配合比としては、アニオン性固体粒子のアニオン性基に対して、滑液性及びその耐久性の観点から、カチオン性官能基を有する有機化合物が好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.3当量以上、更に好ましくは0.5当量以上であり、一方、ピッカリングエマルションの安定性の観点から、好ましくは3当量以下、より好ましくは2当量以下、更に好ましくは1.5当量以下である。
あるいは、〔アニオン性固体粒子のアニオン性基のモル数〕に対する、[アミノ変性シリコーンのアミノ基のモル数]と[炭化水素系アミンのアミノ基のモル数]との合計モル数〕が、滑液性とその耐久性を向上させた膜を得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、成膜性の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基のモル数は、アニオン変性セルロース繊維の使用量(g)にアニオン性基含有量(mmol/g)を乗じればよく、アミノ変性シリコーンのアミノ基のモル数は、アミノ変性シリコーンの使用量(g)をアミノ当量(g/mol)で除すればよい。
また、カチオン性官能基を有する有機化合物と油剤に対するとの質量比([カチオン性官能基を有する有機化合物]/[油剤])は、滑液性とその耐久性を向上させた膜を得る観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.004以上、更に好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.04以上であり、成膜性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。これらの観点から、好ましくは0.0001以上20以下、より好ましくは0.001以上10以下、更に好ましくは0.004以上5以下、更に好ましくは0.01以上3以下、更に好ましくは0.04以上2以下である。
3.硬質表面処理剤の性質
本発明の硬質表面処理剤は、前記の各成分を必須成分として含む、乳化状態の組成物である。本発明における乳化は、水と、25℃1気圧で液体の有機化合物を混合した状態で機械力をかけ、一方の液中に他方の液滴が微細に分散した状態とすることである。エマルションのタイプは水中油型エマルションである。
ピッカリングエマルション中又は混合時の[固体粒子とそれに対して結合性を有する有機化合物の合計]の含有量としては、乳化力の観点から、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、一方、ハンドリング性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
ピッカリングエマルション中又は混合時の水の含有量としては、乳化状態を維持する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、有効分量の観点から、好ましくは98質量%以下である。
ピッカリングエマルション中又は混合時の油剤の含有量としては、乳化状態を維持する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、一方、溶液粘度やハンドリング性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
ピッカリングエマルション中又は混合時の成分[固体粒子とそれに対して結合性を有する有機化合物の合計]と油剤との質量比([固体粒子とそれに対して結合性を有する有機化合物の合計]/[油剤])は、滑液性を向上させた膜を得る観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.004以上、更に好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.04以上であり、成膜性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。これらの観点から、好ましくは0.0001以上20以下、より好ましくは0.001以上10以下、更に好ましくは0.004以上5以下、更に好ましくは0.01以上3以下、更に好ましくは0.04以上2以下である。
本発明の硬質表面処理剤がポリエーテル変性シリコーン化合物を含む場合、ポリエーテル変性シリコーン化合物の含有量としては、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、一方、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
本発明の硬質表面処理剤が前記揮発性の有機化合物を含む場合、かかる有機化合物の含有量としては、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、一方、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本発明の硬質表面処理剤が高分子化合物(X)及び高分子化合物(Y)からなる群より選択される1種以上を含む場合、高分子化合物(X)及び高分子化合物(Y)からなる群より選択される1種以上の含有量としては、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、一方、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
ピッカリングエマルションの粘度は特に限定されないが、ハンドリングの観点から、25℃における粘度が好ましくは0.5mPa・s以上、より好ましくは0.8mPa・s以上、更に好ましくは1mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは30Pa・s以下、より好ましくは20Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下である。ここで粘度は、B型粘度計により各サンプルの粘度域に合わせた適切なローターを用いて、25℃、回転数60rpmの条件で1分攪拌後の値を測定したものである。
ピッカリングエマルションにおける乳化滴の平均粒子径は、後述するSEM観察による測定において、滑液性とその耐久性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、同様の観点から、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下であり、好ましくは10nm以上2000nm以下、より好ましくは50nm以上1000nm以下、更に好ましくは100nm以上500nm以下である。
4.硬質表面処理剤の硬質表面への適用
本発明の硬質表面処理剤を硬質表面へ塗布し、乾燥させることによって、硬質表面に膜を形成させる。
具体的には、前記処理剤を、硬質表面、例えば、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、コンクリート、木材、石材、紙等を素材とする固体表面に塗布する。塗布の方法としては、例えば、アプリケーター、バーコーダー、スピンコーター、ローラー等を使用して塗布する方法や、刷毛塗り、手塗り、エアスプレー、エアレススプレー、トリガースプレー、エアゾール缶などのスプレー、ディップコート等が挙げられるが、それに限定されるものではない。
硬質表面上のピッカリングエマルションの塗膜の厚みとしては、膜の耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、塗布性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
次いで、ピッカリングエマルションの塗膜を乾燥させて膜を得ることができる。乾燥条件としては、減圧下でも常圧下でもよく、温度範囲としては15℃以上75℃以下が好ましい。また、乾燥のための時間としては、1時間以上24時間以下が好ましい。
前記の方法によって形成される乾燥膜は、文献(超撥水・超撥油・滑液性表面の技術/発行者:元木浩/発行所:サイエンス&テクノロジー株式会社/2016年1月28日発行)に示される滑液表面性を示すことが好ましい。
滑液表面性は、例えば、後述の実施例の「滑落角測定試験」に記載の方法により測定することができる。滑落角の値が小さいほど、その膜の滑液性が高いことを示す。
膜は、前述のポリエーテル変性シリコーン化合物を含むことにより、膜の耐久性がさらに向上する。
膜の厚みは特に制限はなく、膜の耐久性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、経済性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1200μm以下、更に好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下である。なお、膜の厚みは、アプリケーター等の塗布用具による塗膜厚の設定や、媒体の割合を調整することにより、所望の値とすることができる。なお、膜の厚みは後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
膜は、平滑性が高いほど、滑液性が高くなるため好ましい。具体的には、製造直後の膜の表面の算術平均粗さとして、費用対効果の観点から、好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、更に好ましくは0.8μm以上であり、一方、付着抑制性の観点から、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは35μm以下であり、更に好ましくは30μm以下である。なお、膜の表面粗さは、算術平均粗さとして、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
膜は、耐久性が高い方が好ましい。膜の耐久性の評価は、例えば、水に一定期間接触した後の膜の算術平均粗さの増加の程度又は滑液性の有無によって評価することができる。具体的には、これらの膜が成膜された基板を水平に保持し、基板に対して40cmの高さから、流量50mL/秒で水を5分間連続滴下した後の膜の算術平均粗さが滴下前の粗さの2倍以下であり、かつ5分間滴下後の膜が滑液性を保持していれば、その膜は耐久性が高いと評価することができる。
膜中の固体粒子の量は、膜の耐久性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、膜の滑液性の観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは36質量%以下、更に好ましくは16質量%以下である。膜中の疎水変性セルロース繊維の量は、ピッカリングエマルションにおける揮発性成分の量を考慮して算出する。
膜には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。膜におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本発明の硬質表面処理剤を硬質表面に適用することにより、硬質表面を滑液表面に改質することができる。形成される膜は滑液性に優れるだけではなく、膜自体の耐久性に優れるためにその効果を長期間維持できることから、各種用途、例えば、防雪用塗料、防汚塗料、抗菌性塗料、流動抵抗低減剤及び離型剤として有用であり、適用対象としては例えば、船舶(船底、プロペラなど)、家屋(例えば屋根、壁、住居設備など)、車両、建材、配管、設備、工具、パネル、容器などに用いることができる。本発明のピッカリングエマルションを、上記等の硬質表面に塗布することで、防雪方法、防汚方法、抗菌方法、流動抵抗の低減方法、離型方法として用いることができる。
以下、実施例等を示して本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
〔アニオン変性セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
測定対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出する。AFMによる画像で分析される高さを繊維径とみなすことができる。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔アニオン変性セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、上記アニオン性基含有量の測定方法によって測定する。
一方、これとは別に、ビーカーに、測定対象の酸化セルロース繊維の水分散液100g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)100g、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え25℃で16時間撹拌して、酸化セルロース繊維に残存するアルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、脱イオン水にて洗浄を行い、アルデヒド基を酸化処理したセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記アニオン性基含有量の測定方法で測定し、「酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量」を算出する。続いて、式1にて測定対象の酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)-(測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、MOC-120H)を用いて測定する。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少がサンプルの初期量の0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔疎水変性セルロース繊維における結晶構造の確認〕
疎水変性セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットに圧縮して作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式Aに基づいて算出する。
<式A>
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編;2000年4月発行)のP199-200の記載に則り、以下の式Bに基づいて算出することが好ましい。
したがって、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式Bに基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
<式B>
セルロースI型結晶化度(%)=[A/(A+A)]×100
〔式中、Aは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aはアモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
〔疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)〕
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される「修飾用化合物」が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Cによって算出する。
<式C>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される「修飾用化合物」が2種類以上の場合
各化合物のモル比率(即ち、添加される化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
〔ピッカリングエマルションの粘度の測定〕
B型粘度計(東機産業TVB-10)No.1ローターを用いて、25℃、回転速度60RPM、1分後の粘度を測定する。
〔Cryo-SEMによるピッカリングエマルションの観察〕
Cryo-SEMによるピッカリングエマルションの観察は、FEI社製電界放射型走査電子顕微鏡Scios DualBeamを用いて行う。凍結したピッカリングエマルションから水分を徐々に昇華させながら観察を行う。加速電圧2kV、倍率25000倍にて観察を行う。
〔レーザー回折法による乳化滴の粒径測定〕
レーザー回折法による乳化滴の粒径測定は、堀場製作所製LA-960を用いて行う。
測定条件:測定用セルに水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積粒度分布及び体積中位粒径(D50)を測定する。なお、相対屈折率1.20、温度25℃、循環ポンプON、循環速度5、撹拌速度5とする。
〔アニオン変性セルロース繊維の調製〕
調製例1
針葉樹の漂白クラフトパルプ(ウエストフレザー社製、ヒントン)を原料の天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム及び水酸化ナトリウムとしては市販品を用いた。
まず、メカニカルスターラー、撹拌翼を備えた2LのPP製ビーカーに、前記漂白クラフトパルプ繊維10g、脱イオン水990gをはかり取り、25℃、100rpmで30分撹拌した後、該パルプ繊維10gに対し、TEMPO 0.13g、臭化ナトリウム1.3g、10.5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液35.5gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)でpHスタット滴定を用い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持した。撹拌速度100rpmにて反応25℃で120分行った後、水酸化ナトリウム水溶液の滴下を停止し、アニオン変性セルロース繊維の懸濁液を得た。
得られたアニオン変性セルロース繊維の懸濁液に0.01Mの塩酸を加えてpH=2とした後に、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまで、脱イオン水を用いて十分に洗浄、次いで脱水処理を行って、アニオン変性セルロース繊維を得た。また、このアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.50mmol/g、アルデヒド基含有量は0.23mmol/gであった。
調製例2(微細化アニオン変性セルロース繊維の製造)
調製例1で最終的に得られたアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を添加して懸濁液(固形分含有量2.0質量%)100gを調製した。これに0.5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=8に調整後、脱イオン水を加えて合計200gとした。この懸濁液に、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)を用いて150MPaで微細化処理を3回行い、微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量1.0質量%)を得た。この微細化アニオン変性セルロース繊維が有するカルボキシ基のカウンターイオンはナトリウムイオンであった。この微細化アニオン変性セルロース繊維を「TCNF(Na型)」と略記する。
調製例3(アルデヒド基を還元処理した微細化アニオン変性セルロース繊維の製造)
調製例2で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量1.0質量%)182gをはかり取り、脱イオン水を加えて合計400gとした。そこに0.1M水酸化ナトリウム水溶液1.2mL、水素化ホウ素ナトリウム120mgを加え、25℃で4時間撹拌した。次に、1M塩酸9mLを加えてプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークを脱イオン水で6回洗浄して塩および塩酸を除去し、アルデヒド基が還元処理された、微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量0.9質量%)を得た。得られたセルロース繊維のカルボキシ基含有量は1.50mmol/g、アルデヒド基含有量は0.02mmol/gであった。この微細化アニオン変性セルロース繊維が有するカルボキシ基は遊離酸型(COOH)となっており、「TCNF(H型)」と略記する。この微細化アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は30%、平均繊維径は3.3nm、平均繊維長は600nmであった。
調製例4(平均粒子径400nmのシリカ微粒子の合成)
フラスコにエタノール500g、イオン交換水45g、アンモニア水20g、テトラエトキシシラン30gを混合し、室温で12時間攪拌した。その後、溶液からシリカ微粒子を遠心分離(10000g、10分)にて分離した後、分離後の粒子を水に再懸濁し、凍結乾燥によって粉末を得た。
この粉末5gを10質量%となるようにイオン交換水に懸濁し、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US-300E、プローブ径12mm)を用いて5分間分散処理し、水に分散したシリカ微粒子を得た。走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM-IT500HR、加速電圧10kV、倍率50000倍)による観察によって測定された数平均粒径は400nmであった。
〔ピッカリングエマルションの作製〕
実施例1
ビーカーに調製例3で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量0.9質量%)20g、シリコーンオイル10cs 1.8g、アミノ変性シリコーン0.6gをはかり取り、そこにイオン交換水を加えて合計30gとした。この溶液を超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US-300E、プローブ径12mm)を用いて5分間分散処理し、微細化アニオン変性セルロース繊維によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。かかるピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とする。
実施例2~6
各成分を表1に記載の割合としたこと以外は、実施例1と同様にして、微粒子によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。かかるピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とする。
比較例1
ビーカーにシリコーンオイル10cs 1.8g、アミノ変性シリコーン0.6gをはかり取り、そこにイオン交換水を加えて合計30gとした。この溶液を超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US-300E、プローブ径12mm)を用いて5分間分散処理したが、すぐに2層に分離してしまい、エマルションを得ることはできなかった。
比較例2
ビーカーにシリコーンオイル10cs 1.8g、アミノ変性シリコーン0.6g、エマルゲン109P 60mgをはかり取り、そこにイオン交換水を加えて合計30gとした。この溶液を超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US-300E、プローブ径12mm)を用いて5分間分散処理し、界面活性剤によって安定に乳化されたエマルションを得た。
〔エマルションの安定性〕
実施例1~6で作製したピッカリングエマルション、及び比較例2で作製したエマルションを5mLずつバイアルに測りとり、室温で静置したところ、1週間以上分離は確認されず、安定に乳化状態を維持した。
〔乾燥膜の作成〕
実施例1~6で作製したピッカリングエマルション、及び比較例2で作製したエマルションをそれぞれ別々のガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S2112)上に400μL塗布し、スライドガラス全域に塗り広げた。次いで、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製した。下記の測定方法によって実施例1の膜の厚みを測定したところ20μmであった。
〔膜の厚みの測定〕
乾燥後の膜の厚みは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定した。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとした。膜の一部を金属製のスパーテルで削り取り、ガラス基板を露出させたサンプルを測定し、内蔵の画像処理ソフトを用いてガラス基板の高さと膜のある部分の高さを計測し、それらの差をとることで膜の厚みを求めた。
〔滑落角測定試験〕
上記のようにして作製された実施例1~6、比較例2の乾燥膜を水平の状態に設置し、各膜に対して、全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、8μLの水滴(23℃)を滴下し、1秒静置した。次いで、1°/sの速さで膜表面を85°まで傾け、液滴が滑り始める角度を測定した。測定結果を下記の表に示した。ただし、85°まで傾けても液滴が滑り落ちなかった場合には、水滴滑落角は、「85以上」と記した。水滴滑落角の値が小さいほど、その膜の滑液性が高いことを示す。
下記の表1に、各組成物の組成(質量%)及び評価結果をまとめた。
Figure 2022117973000004
上記の実験から以下のことがわかった。
本発明の範囲内の、ピッカリングエマルションを基材に塗布、乾燥してなる被膜は、微小な水滴に対してもわずかな傾斜で滑り落とすことができ、滑液性に優れることがわかった。
これに対して、界面活性剤あるいは固体粒子を添加しなかった場合(比較例1)、安定なピッカリングエマルションを作製することができなかった。また、界面活性剤を用いて作製したエマルション(比較例2)を基材に塗布して作成した被膜は滑液性を示さなかった。
調製例5
ビーカーに、調製例3で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液66.7g(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイル100cs 12g、アミノ変性シリコーン 1.91gをはかり取り、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、微細化アニオン変性セルロース繊維によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。ここにポリエーテル変性シリコーン1 0.2gを添加し、25℃で30分撹拌し、ピッカリングエマルションを得た。レーザー回折法による平均乳化粒径は300nm、粘度は10mPa・sであった。最終的に得られたピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とする。
調製例6
ビーカーに、調製例3で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液66.7g(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイル10cs 6g、アミノ変性シリコーン 1.91gを混合し、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、微細化アニオン変性セルロース繊維によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。ここにポリエーテル変性シリコーン1 0.2gを添加し、25℃で30分撹拌し、ピッカリングエマルションを得た。最終的に得られたピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とする。
調製例7
ビーカーに、調製例3で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液66.7g(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイル100cs 6g、アミノ変性シリコーン 2.68gを混合し、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、微細化アニオン変性セルロース繊維によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。最終的に得られたピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とする。
調製例8
ビーカーに、調製例3で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液66.7g(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイル10cs 12g、アミノ変性シリコーン 1.91gを混合し、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、微細化アニオン変性セルロース繊維によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。ここにポリエーテル変性シリコーン1 0.2gを添加し、25℃で30分撹拌し、ピッカリングエマルションを得た。最終的に得られたピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とする。
調製例9
ビーカーに、調製例3で得られた微細化アニオン変性セルロース繊維分散液66.7g(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイル100cs 6g、アミノ変性シリコーン2.68gを混合し、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この溶液をメカニカルスターラーで5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、微細化アニオン変性セルロース繊維によって安定化されたピッカリングエマルションを得た。ここにポリエーテル変性シリコーン2 0.2g、スチレンアクリル(固形分44.5質量%)13.5g、N-メチルピロリドン10gを添加し、25℃で30分撹拌し、ピッカリングエマルションを得た。最終的に得られたピッカリングエマルションを硬質表面処理剤とした。
下記の表2に、各エマルションの組成(質量%)をまとめた。
Figure 2022117973000005
〔使用した主な成分〕
実施例等で使用した代表的な成分の詳細を以下にまとめた。
〔固体粒子〕
微細化アニオン変性セルロース繊維(調製例3で調製したもの)
酸化グラフェン(10mg/mL 水分散体):東京化成工業製
ナノダイヤモンド(粒子径: <10nm) (カルボン酸基修飾):東京化成工業製
シリカ微粒子1、アエロジル300:日本アエロジル社製
シリカ微粒子2、(平均粒径400nm):調製例4にて合成したもの
〔調製例4で用いた試薬〕
エタノール(99.5%):富士フイルム和光純薬社製
テトラエトキシシラン:富士フイルム和光純薬社製
28%アンモニア水:富士フイルム和光純薬社製
〔油剤〕
シリコーンオイル10cs:信越化学工業社製、KF-96-10cs
シリコーンオイル100cs:信越化学工業社製、KF-96-100cs
流動パラフィン:富士フイルム和光純薬社製
〔結合性を有する有機化合物〕
アミノ変性シリコーン:ダウ・東レ製SS-3551
オレイルアミン:富士フイルム和光純薬社製
〔界面活性剤〕
エマルゲン109P(ポリオキシエチレンラウリルエーテル):花王株式会社製
〔ポリエーテル変性シリコーン〕
ポリエーテル変性シリコーン1:信越化学工業社製KF-640
ポリエーテル変性シリコーン2:信越化学工業社製KF-642
〔高分子化合物〕
スチレンアクリル:DSM社製、NeoCryl XK-188(固形分44.5質量%)
〔揮発性の有機化合物〕
N-メチルピロリドン:富士フイルム和光純薬社製
〔着雪性試験〕
<乾燥膜の作製>
実施例7
調製例5で作製した硬質表面処理剤をガラス基板(10cm×10cm×厚み5mm)上に2.4mL塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製し、実施例7の基板とした。この膜の水滴滑落角は7°であった。
比較例3
比較例3としては、硬質表面処理剤を塗布していないガラス基板(10cm×10cm×厚み5mm)を用いた。
比較例4
比較例4としては、市販防雪塗料「関西ペイント製ラク雪塗料」を、比較例3で用いたものと同じガラス基板に刷毛で塗り広げ、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させた。乾燥後の塗料厚みは20μmであった。
<滑雪性評価>
MTS雪氷研究所社の低温試験室(1℃)において、滑雪性評価を行った。
実施例7、比較例3~4の各基板の裏に1cm×2cm×厚み2mmのステンレス片を両面テープ(Scotch超強力両面テープ スーパー多用途 幅12mm、3M社製)で貼り付け、磁石が備え付けられた固定台に基板が90°になるように設置した。次いで、基板正面から風速5m/sで30分間人工雪を吹き付け、滑雪性を評価したところ、実施例7の基板では人工雪を吹き付け始めてから10分以内に雪が滑り落ちたのに対し、比較例3及び4の基板では30分以内に雪が滑り落ちることはなかった。すなわち、実施例7の硬質表面処理剤を塗布した基板は滑雪性に優れることがわかった。
〔流動抵抗試験〕
<乾燥膜の作製>
実施例8
調製例5で作製した硬質表面処理剤をSUS304基板(L200mm×W50mm×T3mm)上に塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製し、実施例8の基板とした。乾燥膜の膜厚は20μmであった。
実施例9
SUS304基板(L200mm×W50mm×T3mm)上にアクリル樹脂系塗料(中国塗料社製、SEAFLO NEO CF Z)を刷毛で塗り広げ、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させた。乾燥後の塗料厚みは20μmであった。次いで、その上に調製例9で作製した硬質表面処理剤を塗布し、同様に乾燥させて膜を作製し、実施例9の基板とした。乾燥膜の膜厚は20μmであった。
実施例10
アクリル樹脂系塗料の代わりにエポキシ樹脂系塗料(中国塗料社製、バンノー500)を用いた以外は実施例9同様にして、エポキシ樹脂系塗料上に調製例9で作製した硬質表面処理剤を塗布した基板を作製し、実施例10の基板とした。乾燥膜の膜厚は20μmであった。
比較例5
比較例5としては、塗料や処理剤を塗布していないSUS304基板(L200mm×W50mm×T3mm)を用いた。
比較例6
比較例6としては、塗料や処理剤を塗布していないSUS304基板(L200mm×W50mm×T3mm)にアクリル樹脂系塗料(中国塗料社製、SEAFLO NEO CF Z)を塗布し乾燥させた基板を用いた。
比較例7
比較例7としては、塗料や処理剤を塗布していないSUS304基板(L200mm×W50mm×T3mm)にエポキシ樹脂系塗料(中国塗料社製、バンノー500)を塗布し乾燥させた基板を用いた。
比較例8
比較例8としては、塗料や処理剤を塗布していないPVC(ポリ塩化ビニル)基板(L200mm×W50mm×T3mm)を用いた。
<流動抵抗測定>
図1で示すようにSUS304で構成されたスリット流れの流路デバイス中に、水道水(30℃における粘度:0.8mPa・s)を流した際の圧力損失の測定を行った。基板(実施例8~10、比較例5~8)で厚さ4mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のスペーサーを挟み、圧力ポート間距離230mm、スリット幅30mm、スリット高さ4mm、流量13.3L/分の条件で、入口圧力ポートと出口圧力ポートには、透明チューブを繋ぎ、室温20℃、水温32℃にて、液供給口にはホースで水道の蛇口を繋ぎ、水を30分流した際の圧力損失で比較した。入口と出口に繋がれたシリコンチューブ中の水面の高さの差を測定することで水頭圧を測定し、圧力損失を評価した。結果を表3に示す。
〔膜の表面粗さの測定〕
膜の表面粗さ(Rz)は、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定した。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。Rzは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いた。
Figure 2022117973000006
表3より、実施例8~10の基板は、比較例5~8の基板よりも圧力損失の値が小さいことが分かった。このことは、実施例8~10の硬質表面処理剤を塗布した基板は、流動抵抗を低減する効果を有することを示す。また、実施例8は比較例5の基板上に、実施例9は比較例6の基板上に、実施例10は比較例7の基板上にそれぞれ硬質表面処理剤を塗布したものであることから、本発明によれば、様々な種類の基板の流動抵抗を下げる効果を付与できることが分かった。更に、実施例9と比較例8については、表面粗さは同程度に低いものの、実施例9の方が更に圧力損失を低くすることができることが分かった。
〔流動抵抗の耐久性試験〕
循環水槽に和歌山県下津港付近の海水をくみ入れ、日照が当たる環境下で2週間に1回海水を半分入れ替えるという運用で、実施例9と比較例6の基板をそれぞれ7ヶ月間浸漬させ、3ヶ月目と7ヶ月目に汚損状況と圧力損失低減率を評価した。
汚損状況の評価基準は以下の通りであり、圧力損失低減率は比較例6の初期を基準とした。結果を表4に示す。
汚損状況はスコアが低いほど優れ、圧力損失低減率の数値が高い程、圧力損失を低減する効果が高い、すなわち流動抵抗を下げる効果が高いことを示す。
<汚損評価>
1:付着物が表面全体の1割未満
2:付着物が表面全体の1割以上3割未満
3:付着物が表面全体の3割以上5割未満
4:付着物が表面全体の5割以上7割未満
5:付着物が表面全体の7割以上9割未満
6:付着物が表面全体の9割以上
Figure 2022117973000007
表4より次のことが分かった。実施例9は比較例6に比べて、循環した海水中に浸漬させたときの汚損を抑制する効果が高く、浸漬3ヶ月目、7ヶ月目もより圧力損失を低下する効果が高かった。また、比較例6は7ヶ月間で44%も圧力損失が悪化したのに対し、実施例9は初期から6.2%の悪化に留まり、実施例9の硬質表面処理剤を塗布した基板は圧力損失低下効果の持続性、すなわち流動抵抗低減効果の耐久性が高いことが分かった。
〔水生生物付着試験〕
実施例11
調製例6で作製した硬質表面処理剤をSUS304基板(L50mm×W50mm×T3mm)上に1.5mL塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製し、実施例11の基板とした。この膜の水滴滑落角は6°であった。
比較例9
なお、L50mm×W50mm×T3mmの未処理のSUS304基板を比較例9とした。
上述の各基板を鎖で繋ぎ、干潮時に水面から2mの深さになるように和歌山県下津港付近の海水中に設置し、3ヶ月間海水中での浸漬試験を行った。
浸漬3ヶ月後に、基板への甲殻動物類と藻類の付着度合いを目視によって評価したところ、実施例11の基板では、甲殻動物類の付着は見られず、藻類の付着面積も基板の30%以下であり、付着した水生生物も水洗によって容易に除去可能であった。一方で比較例9の基板では、基板の面積の30%以上に甲殻動物類が付着しており、80%以上に藻類が付着していた。これらの生物は工具で繰り返しこすらないと除去できなかった。すなわち、実施例11の硬質表面処理剤を塗布した基板は、水生生物の付着抑制効果と付着した水生生物の除去性に優れることがわかった。
〔抗菌性試験〕
<乾燥膜の作製>
実施例12
調製例7で作製した硬質表面処理剤をガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S2112)上に0.4mL塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで24時間乾燥させて膜を作製し、実施例12の基板とした。この膜の水滴滑落角は5°であった。
比較例10
比較例10としては、処理剤を塗布していないガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S2112)を用いた。
<菌液の調製>
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)のグリセロールストック液を、Luria-Bertani Agar(日本製薬社製、LB寒天培地「ダイゴ」)を用いて37℃、24時間の前培養を行った。
50 mL 遠沈管にLuria-Bertani(日本製薬社製、LB培地「ダイゴ」)を 10 mL 入れ、そこに前培養で作製したコロニーを1白金耳接種して37℃ / 200 rpm / 24時間の条件で振とう培養した。
培養後、分光光度計(フナコシ社製、WPA biowave CO8000)を用いて、600 nmの波長における吸光度(OD600nm)を測定し、吸光度が0.4となるように希釈した菌液をそれぞれLB培地で100倍希釈し、評価用の菌液とした。
<バイオフィルム形成抑制効果評価~コロニーカウント法~>
実施例12、及び比較例10の各基板にUVを10分間照射し、基板表面を滅菌した。角型 4 well(アズワン社製、浮遊細胞用マルチディッシュ267061)内に滅菌した基板を入れ、先に調製した菌液を 6 mLずつ入れ、37℃、24時間培養して、基板上にバイオフィルムを形成させた。
ピペットガンを用いてwell 内の菌液を吸い取り、生理食塩水 6 mL を well 内に添加して振とうした。次いで生理食塩水をピペットガンで吸い取り、well に生理食塩水 6 mL を加えて振とうした。次いで生理食塩水をピペットガンで吸い取り、基板(15 cm2)の表面をふき取り検査キット(エルメックス社製、ST-25)でふき取ったのち、10mLのリン酸緩衝生理食塩水中に菌を抽出し、希釈液(日本製薬社製、LP希釈液「ダイゴ」)で10倍希釈した。これらを段階希釈法により菌液を調製し、100μLをプレーティングビーズ(富士フイルム和光純薬社製、Bac 'n' Roll Beads)を用いてLB寒天培地に広げ、30℃で48時間培養を行った。
培養後の寒天培地において生育が確認されたコロニーをカウントし、試験板への付着菌数を求めたところ、実施例12の基板では、比較例10のガラス基板と比べて、菌の付着を98%抑制していることがわかった。すなわち、実施例12の硬質表面処理剤を塗布した基板は抗菌性に優れることが分かった。
〔離型性試験〕
<乾燥膜の作製>
実施例13
調製例8で作製した硬質表面処理剤を、エアスプレー(アネスト岩田製、WIDER1-10E1G、ノズル口径Φ1.0mm)を用いて、ステンレス製深型組バット(三宝社製、外寸法:135×106×H59mm、容積650mL)に3g均一に塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで1時間乾燥させて膜を作製し、実施例13のバットとした。膜厚は7μmであり、この膜の水滴滑落角は10°であった。
比較例11
比較例11としては、処理剤を塗布していないステンレス製深型組バット(三宝社製、外寸法:135×106×H59mm、容積650mL)を用いた。
比較例12
比較例12としては、市販のシリコーン系離型剤(信越化学工業社製、KM-9782、有効分10%)3gをエアスプレー(アネスト岩田製、WIDER1-10E1G、ノズル口径Φ1.0mm)を用いて、処理剤を塗布していないステンレス製深型組バット(三宝社製、外寸法:135×106×H59mm、容積650mL)に3g均一に塗布し、1気圧、25℃、湿度約40%RHで1時間乾燥させて膜を作製した。
<樹脂離型性評価>
300℃に加熱したホットプレート上で、ステンレス製容器に入れた非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロン600TM)を軟化させ、実施例13、比較例12のコーティング剤で処理したステンレス製深型組バット、あるいは未処理のステンレス製深型バット(比較例11)に500g流し入れ、室温で12時間冷却して硬化させた後、以下の基準で樹脂の離型性を評価した。
実施例13のバットでは、バットをひっくり返すのみで樹脂が落下し、同じ実験を10回繰り返しても同様の離型性を保っていた。一方で比較例12のバットでは、樹脂を離型するためにハンマーでバットの底を殴打する必要があった。比較例11のバットでは、ハンマーで5回殴打しても樹脂が離型しなかった。すなわち、実施例13の硬質表面処理剤を塗布したバットは離型性に優れることが分かった。
総合すると、本発明の硬質表面処理剤を基材に塗布、乾燥してなる被膜は、滑液性を有するため防汚性に優れ、海中での水生生物付着抑制効果、雪の付着抑制効果(防雪効果)、抗菌性、樹脂の離型性にも優れることがわかった。
本発明の硬質表面処理剤は、防雪効果、防汚効果、抗菌効果、流動抵抗低減効果又は離型性向上効果を有するので、防雪用塗料、防汚塗料、抗菌性塗料、流動抵抗低減剤、又は離型剤等として利用することができる。
PG 圧力計

Claims (7)

  1. 水中油型ピッカリングエマルションを含有する硬質表面処理剤。
  2. 前記エマルションが、固体粒子に対して結合性を有する有機化合物が結合した固体粒子を含む、請求項1に記載の硬質表面処理剤。
  3. 固体粒子がアニオン性固体粒子であり、結合性を有する有機化合物がカチオン性官能基を有する有機化合物である、請求項2に記載の硬質表面処理剤。
  4. 前記カチオン性官能基を有する有機化合物がアミノ基を有する有機化合物である、請求項3に記載の硬質表面処理剤。
  5. 前記アニオン性固体粒子が無機粒子又は結晶性有機粒子である、請求項3又は4に記載の硬質表面処理剤。
  6. 前記固体粒子が、I型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維、シリカ粒子及びアニオン性基を有するカーボン系化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項2~5のいずれか1項に記載の硬質表面処理剤。
  7. 前記硬質表面処理剤が、防雪用塗料、防汚塗料、抗菌性塗料、流動抵抗低減剤、又は離型剤の用途である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬質表面処理剤。
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