JP2023095398A - 積層体の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フジツボ等の接着力が強い生物が付着した場合でも付着物を容易に除去することが可能な積層体の形成方法を提供すること。【解決手段】以下の工程1及び工程2を含む積層体の形成方法。工程1:樹脂表面上に、以下の成分(A)~(C)を含有する乳化組成物を塗布する工程。(A)修飾基を有するセルロース繊維(B)水(C)25℃1気圧で不揮発性の有機化合物工程2:工程1の後、前記乳化組成物を乾燥させる工程。【選択図】なし

Description

本発明は積層体の形成方法に関する。
従来より、水棲生物が船底に付着することを防止するために、塗膜消耗度を有し、かつ長期間にわたって優れた防汚性を発揮する防汚塗膜が形成されてなる防汚塗料組成物が知られている(特許文献1)。
国際公開第2011-118526号パンフレット
かかる防汚塗料組成物が塗布された積層体は、多少の付着物が付着した程度であれば、塗膜自体が溶解することで、付着物がないきれいな表面を維持することができる。
しかしながら、フジツボ等の接着力が強い生物が付着すると、それらを除去することは難しく、最終的には工具を用いて除去する必要がある。工具によるフジツボの除去には多大な労力を要し、さらには積層体の基材が露出して性能の低下や外観の悪化が生じるという課題があった。
従って、本発明の目的は、フジツボ等の接着力が強い生物が付着した場合でも付着物を容易に除去することが可能な積層体の形成方法を提供することにある。
本発明は、下記〔1〕~〔2〕に関する。
〔1〕 以下の工程1及び工程2を含む積層体の形成方法。
工程1:樹脂表面上に、以下の成分(A)~(C)を含有する乳化組成物を塗布する工程
(A)修飾基を有するセルロース繊維
(B)水
(C)25℃1気圧で不揮発性の有機化合物
工程2:工程1の後、前記乳化組成物を乾燥させる工程
〔2〕 前記樹脂が溶解型樹脂である、前記〔1〕に記載の積層体の形成方法。
本発明によれば、フジツボ等の接着力が強い生物が付着した場合でも付着物を容易に除去することが可能な積層体の形成方法を提供することができる。
図1は、本発明における積層体の断面構造を示す模式図である。
1.積層体
本明細書における積層体は、樹脂表面上に、乳化組成物が乾燥してなる膜が積層した構造体である。本明細書における積層体は、更に基材上に形成されていてもよい。例えば、図1のように、「基材1-樹脂層2-膜3」が積層した構造体が挙げられる。
さらに、本明細書における積層体は、乳化組成物が乾燥してなる膜の表面に任意の膜が形成されていてもよい。さらに、該膜と樹脂層との間や、基材と樹脂層の間に任意の膜が形成されていてもよい。
本発明における積層体は、表面に滑液性を有する膜を有するので、船舶の船体やプロペラ、橋梁の骨格、配管、岸壁、冷却塔、タンク内面、洋上設備・観測機、漁網といった、海水又は淡水に接した部材として用いることができる。
<樹脂層>
樹脂層は樹脂から形成される層であり、溶解型樹脂を含むことが好ましい。
樹脂層の厚みとしては、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上であり、生産性向上の観点から、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
樹脂層には、本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。
〔溶解型樹脂〕
溶解型樹脂は樹脂層の材料である。溶解型樹脂を用いることで、基材から樹脂層や膜の剥離作業や更新作業を簡便に行うことができるため、好ましい。
「流水に接する」という条件下で溶解性を示す樹脂を、本明細書における「溶解型樹脂」と規定する。溶解型樹脂は、本発明の乳化組成物において、膜の滑液性能の持続性向上及び溶解することによる膜表面の更新という役割を有する。
本発明において、溶解型樹脂を用いることにより、船舶・水中構造物等で安定した塗膜消耗性を発現させることができるため、好ましい。
溶解型樹脂は、以下に述べる
・金属塩結合含有共重合体(d1)(以下「共重合体(d1)」ともいう。)、
・金属塩結合含有共重合体(d2)(以下「共重合体(d2)」ともいう。)、及び
・シリルエステル共重合体(d3)(以下「共重合体(d3)」ともいう。)
からなる群より選択される1種又は2種以上の溶解型樹脂を含むものが好ましい。
溶解型樹脂は、共重合体(d1)にみられる側鎖末端型金属塩結合と、共重合体(d2)にみられる架橋型金属塩結合の両方の構造を含有する、共重合体(d1)及び(d2)のいずれの要件をも満たす共重合体であってもよい。
溶解型樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〔金属塩結合含有共重合体(d1)〕
金属塩結合含有共重合体(d1)は、アクリル樹脂又はポリエステル樹脂であって、一般式(D-I)で示される側鎖末端基を有する金属塩結合含有共重合体である。本明細書において、前記構造を「側鎖末端型金属塩結合」と称することがある。
-COO-M-O-COR (D-I)
(式(D-I)中、Mは亜鉛又は銅であり、Rは有機基である。共重合体(d1)が、式(D-I)で示される側鎖末端基を複数有する場合、各R及びMは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
共重合体(d1)における有機基R(及び後述する式(D-IV)中の有機基R)としては、一塩基酸から形成される有機酸残基であって、炭素数2以上30以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数3以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂環式炭化水素基、又は炭素数6以上18以下の芳香族炭化水素基、あるいはこれらの置換体が好ましい。前記置換体としては、例えば、ヒドロキシル基置換体が挙げられる。
共重合体(d1)のうち、アクリル樹脂型の重合体が好ましい。かかるアクリル樹脂型の重合体は、例えば一般式(D-IV)で示される金属塩結合を有する単量体、すなわち一塩基酸金属(メタ)アクリレート(以下「単量体(d11)」ともいう。)を用いた重合反応により調製することができる。
CH=C(R)-COO-M-O-COR (D-IV)
(式(D-IV)中、Mは亜鉛又は銅であり、Rは有機基であり、Rは水素原子又はメチル基である。式(D-IV)中のR及びその好ましい種類は、式(D-I)中の有機基Rと同様である。ただし、後述する架橋型金属塩結合を形成し得る式(D-II)で示される単量体(d21)と区別するため、式(D-IV)におけるRからは、ビニル基[-CH=CH]及びイソプロペニル基[-C(CH)=CH]が除外される。)
共重合体(d1)は、2種以上の単量体(d11)の共重合反応により得られた重合体であってもよい。また、1種又は2種以上の単量体(d11)と、単量体(d11)と共重合し得る1種又は2種以上の他の不飽和単量体(以下「単量体(d12)」ともいう。)とを用いた共重合反応によって得られた重合体、すなわち、単量体(d11)から誘導される成分単位と、単量体(d12)から誘導される成分単位とを有する共重合体であってもよい。
単量体(d12)としては、アクリル樹脂用の重合性不飽和単量体として用いられている各種の化合物から適宜選択することができる。例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の金属塩結合を含有しない単量体等が好ましい。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が更に好ましい。
アクリル樹脂型の共重合体(d1)は、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等を用いてアクリル樹脂を調製した後、前記アクリル樹脂の側鎖にある、未だ金属塩結合を形成していないカルボキシ基に、亜鉛又は銅(M)を介して有機基(R)が結合した構造を導入する反応を行い、前記式(D-I)で示される側鎖末端基を形成するような方法によって調製することもできる。
なお、前記の調製方法によりアクリル樹脂に所定の側鎖末端基が導入される場合であっても、前記式(D-I)におけるRの好ましい種類は前述したものと同様である。前記の調製方法では、前記の一塩基酸を、有機基Rを導入するための反応に用いることができる。
共重合体(d1)において、前記式(D-I)の構造に起因する亜鉛及び/又は銅の含有量は、当該共重合体の0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。このような条件を満たす共重合体(d1)を用いることにより、防汚性及び消耗性の両面に更に優れた防汚塗膜を形成できるようになる。ここで「亜鉛及び/又は銅の含有量」とは、亜鉛及び銅が双方とも含まれる場合は亜鉛及び銅の合計含有量を意味する。
亜鉛及び/又は銅の含有量は、共重合体(d1)の調製に用いられる、これらの金属を含有する単量体(d11)とそれ以外の単量体(d12)との配合割合、あるいは、アクリル樹脂に後から反応させる亜鉛及び/又は銅を含有する化合物(例:前記一塩基酸)の添加量を調節すること等により、前記範囲内のものとすることが可能である。
〔金属塩結合含有共重合体(d2)〕
金属塩結合含有共重合体(d2)は、一般式(D-II)で示される単量体(d21)から誘導される成分単位と、前記単量体(d21)と共重合し得る他の不飽和単量体(d22)から誘導される成分単位とを有する共重合体である。
CH=C(R)-COO-M-O-CO-C(R)=CH (D-II)
(式(D-II)中、Mは亜鉛又は銅であり、Rは水素原子又はメチル基である。共重合体(d2)に、式(D-II)で示される単量体(d21)から誘導される成分単位が複数存在する場合、それぞれのR及びM同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
単量体(d21)としては、例えば、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、銅ジアクリレート、銅ジメタクリレートが挙げられる。単量体(d21)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(d21)は、例えば、無機金属化合物(亜鉛又は銅の酸化物、水酸化物、塩化物等)と(メタ)アクリル酸又はそのエステル化合物とを、アルコール系有機溶剤及び水の存在下で、金属塩の分解温度以下で加熱・撹拌する等、公知の方法により調製することができる。
単量体(d21)から誘導される成分単位は、下記一般式で示される構造を有するが、本明細書では前記構造を「架橋型金属塩結合」とよぶことがある。
Figure 2023095398000001
単量体(d21)と共重合し得る他の不飽和単量体(d22)としては、前述の共重合体(d1)についての単量体(d12)と同様、アクリル樹脂用の重合性不飽和単量体として用いられている各種の化合物から適切なものを選択することができる。すなわち、不飽和単量体(d22)としては、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が好ましく、これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等がより好ましい。
また、前述の共重合体(d1)についての単量体(d11)、すなわち前記式(D-IV)で示される一塩基酸金属(メタ)アクリレートも、単量体(d21)と共重合し得る単量体であり、金属塩結合含有共重合体(d2)の調製に用いることのできる不飽和単量体(d22)に該当する。不飽和単量体(d22)としての前記式(D-IV)で示される一塩基酸金属(メタ)アクリレートおけるR及びその好ましい態様は、式(D-I)中の有機基Rと同様である。
不飽和単量体(d22)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和単量体(d22)は、前記式(D-IV)で示される一塩基酸金属(メタ)アクリレートと、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種又は2種以上の不飽和単量体とを含むものであることも好ましい。
その他、スチレン及びスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリロニトリル等も、不飽和単量体(d22)として挙げられる。
共重合体(d2)においても、前述した共重合体(d1)と同様の観点から、前記式(D-II)の構造に起因する亜鉛及び/又は銅の含有量は、当該共重合体の0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上19質量%以下がより好ましい。ここで「亜鉛及び/又は銅の含有量」とは、亜鉛及び銅が双方とも含まれる場合は亜鉛及び銅の合計含有量を意味する。
亜鉛及び/又は銅の含有量は、共重合体(d2)の調製に用いられる単量体の配合割合により調整することが可能である。なお、共重合体(d2)が架橋型金属塩結合及び側鎖末端型金属塩結合の両方の構造を有する場合は、それぞれの構造に起因する亜鉛及び/又は銅の含有量の合計が前記範囲内にあるようにすることが好ましい。
共重合体(d1)及び共重合体(d2)の数平均分子量及び重量平均分子量は、防汚塗料組成物の粘度や貯蔵安定性、防汚塗膜の溶出速度等を考慮し、適宜調整することができるが、数平均分子量は、好ましくは1,000以上100,000以下、より好ましくは1,000以上50,000以下であり、重量平均分子量は、好ましくは1,000以上200,000以下、より好ましくは1,000以上100,000以下である。
なお、本明細書における数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値である。
〔シリルエステル共重合体(d3)〕
シリルエステル共重合体(d3)は、一般式(D-III)で示される単量体(d31)(以下「シリルエステル単量体」ともいう。)から誘導される成分単位(以下「シリルエステル成分単位」ともいう。)を有する共重合体であり、前記単量体(d31)と共重合し得る他の不飽和単量体(d32)から誘導される成分単位を必要に応じて有する共重合体である。
-CH=C(R)-COO-SiR (D-III)
(式(D-III)中、Rは水素原子又はメチル基であり、R、R及びRはそれぞれ独立して炭化水素基であり、Rは水素原子又はR-O-CO-(ただし、Rは有機基又はSiR1011で示されるシリル基であり、R、R10及びよびR11はそれぞれ独立に炭化水素基である。)
シリルエステル単量体(d31)のうちで、Rが水素原子である場合には、当該単量体は一般式(D-IIIa)で示される。
CH=C(R)-COO-SiR (D-IIIa)
(式(D-IIIa)中、R、R、R及びRは、それぞれ式(D-III)中のR、R、R及びRと同様である。)前記R、R及びRにおける炭化水素基としては、好ましくは炭素数が1以上10以下のアルキル基であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等のアルキル基が更に好ましい。
シリルエステル単量体(d31)のうちで、Rが「R-O-CO-」である場合、当該単量体は一般式(D-IIIb)で示される。
-O-CO-CH=C(R)-COO-SiR (D-IIIb)
(式(D-IIIb)中の、R、R、R、R及びRは、それぞれ式(D-III)又は式(D-IIIa)中のR、R、R、R及びRと同様である。前記Rにおける有機基としては、炭素数が1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等のアルキル基がより好ましい。前記R、R10及びR11における炭化水素基としては、炭素数が1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等のアルキル基がより好ましい。
前記式(D-IIIb)で示されるシリルエステル単量体(d34)としては、例えば、マレイン酸エステル(式(D-IIIb)中でR=水素原子のもの)が挙げられる。
単量体(d31)(あるいは単量体(d33)及び/又は(d34))と共重合し得る他の不飽和単量体(d32)としては、前記共重合体(d1)及び(d2)の原料化合物として例示した「他の不飽和単量体(d12)、(d22)」が挙げられる。
シリルエステル単量体(d31)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、他の不飽和単量体(d32)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリルエステル共重合体(d3)では、シリルエステル単量体(d31)から誘導される成分単位は、前記共重合体(全構成単位100モル%)中に、好ましくは10モル%以上100モル%以下となる量で、他の不飽和単量体(d32)から誘導される成分単位は、残部量、すなわち好ましくは0モル%以上90モル%以下となる量で含まれる。成分単位の含有量が前記範囲にあると、塗膜中の樹脂粘度(例えば、耐クラック性)、塗料の貯蔵安定性、塗膜中の樹脂の溶出性などに優れる点で好ましい。
シリルエステル共重合体(d3)の数平均分子量は、好ましくは1,000以上200,000(20万)以下である。数平均分子量が前記範囲にあると、塗膜中の樹脂粘度(例えば、耐クラック性)、塗料の貯蔵安定性、塗膜中の樹脂の溶出性などに優れる点で好ましい。
<乳化組成物が乾燥してなる膜>
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する乳化組成物が乾燥してなる膜は滑液性を有するため、積層体に滑液性を付与することができる。かかる膜は、後述の乳化組成物を乾燥させて形成する。
前記膜の厚みとしては、付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、生産性向上の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは100μm以下である。なお、膜の厚みは、噴霧時の塗膜厚の設定や、媒体の割合を調整することにより、所望の値とすることができる。なお、膜の厚みは後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
〔成分(A)〕
成分(A)は修飾基を有するセルロース繊維である。
修飾基を有するセルロース繊維の好ましい一例としては、I型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基及びヒドロキシ基からなる群より選択される一種以上の基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維が挙げられる。
[アニオン変性セルロース繊維]
アニオン変性セルロース繊維とは、セルロース繊維中にアニオン性基を含むように変性されたセルロース繊維である。アニオン変性セルロース繊維は、原料のセルロース繊維に由来するセルロースI型結晶構造を有するものである。アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は、成膜時の強度発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。
本明細書において、各種セルロース繊維の結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられる。前記アニオン性基は、セルロース繊維への修飾基の導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
アニオン変性セルロース繊維としては、調製が容易である観点及び反応条件が穏やかである観点から、アニオン性基がカルボキシ基であるカルボキシ基含有セルロース繊維がより好ましい。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径としては、取扱い性の観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1.0nm以上、更に好ましくは2.0nm以上であり、成膜した時の強度の観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
[改質セルロース繊維]
修飾基を有するセルロース繊維は、本明細書中において、改質セルロース繊維とも記載する。改質セルロース繊維は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくはアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基又はヒドロキシ基に修飾基が結合したものである。修飾基は、修飾基を導入するための化合物(本明細書において「修飾用化合物」と記載する。)とアニオン変性セルロース繊維との反応によって導入される。即ち、修飾基の構造は、使用される修飾用化合物の構造に依存する。
結合箇所がヒドロキシ基の場合、修飾基とアニオン変性セルロース繊維との結合様式は共有結合であり、例えば、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合等が挙げられる。
結合箇所がアニオン性基の場合、修飾基とアニオン変性セルロース繊維との結合様式はイオン結合又は共有結合である。ここで、結合様式がイオン結合の場合には、カチオン性基を有する修飾用化合物が、静電相互作用を介してアニオン性基と結合する。ここで、結合様式が共有結合の場合には、エステル結合、アミド結合などを介して両者が結合する。特にアニオン性基がカルボキシ基の場合、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合等を介して結合する。
[修飾基]
修飾基としては、膜から付着物を容易に除去できる観点から、(a)ポリマー基、及び(b)炭化水素基が挙げられる。これらの修飾基は1種類が単独で又は2種以上が組み合わさって、アニオン変性セルロース繊維に結合してもよい。
(a)ポリマー基
ポリマー基とは、ポリマー構造を含有する官能基である。ポリマー基の官能基当量は、膜から付着物を容易に除去できる観点から好ましくは100g/mol以上、より好ましくは200g/mol以上、より好ましくは300g/mol以上、より好ましくは400g/mol以上、更に好ましくは600g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上、更に好ましくは1,500g/mol以上である。同様の観点から、好ましくは16,000g/mol以下、より好ましくは14,000g/mol以下、更に好ましくは12,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下、更に好ましくは7,000g/mol以下、更に好ましくは5,000g/mol以下、更に好ましくは4,000g/mol以下、更に好ましくは3,500g/mol以下、更に好ましくは2,500g/mol以下である。
なお、官能基当量は、官能基1個当りの分子量であり、官能基当量(g/mol)=重量平均分子量/1分子あたりの官能基数で求められる。
ポリマー基の重量平均分子量は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、同様の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
ポリマー基は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは、酸素原子を有する構造によって連結される繰り返し構造を有する官能基、より好ましくは、ポリオキシアルキレン構造、ポリシロキサン構造等の、酸素原子によって連結される繰り返し構造を有する官能基であり、より好ましくは、ポリシロキサン構造を有する官能基である。
ポリシロキサン構造とはシロキサン結合を主鎖とする構造であり、更にアルキレン基が伴っていてもよい。ポリシロキサン構造は、後述する置換基を有していてもよい。
(b)炭化水素基
炭化水素基としては、一価の炭化水素基、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び(複素環式)芳香族炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基の炭素数は、膜の滑液性能の持続性向上の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは12以上であり、更に好ましくは16以上、更に好ましくは18以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは24以下、更に好ましくは22以下である。炭化水素基は、後述する置換基を有していてもよく、炭化水素基の一部が窒化水素基に置換されていてもよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。
(c)更なる置換基
なお、上記(a)ポリマー基や(b)炭化水素基等の修飾基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1~6のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基;ヒドロキシ基が挙げられる。
改質セルロース繊維における修飾基の結合量(mmol/g)及び導入率(モル%)とは、改質セルロース繊維に導入された修飾基の量及び割合のことである。修飾基の結合量及び導入率は、修飾用化合物の添加量、種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。
改質セルロース繊維における修飾基の結合量は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.2mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上、である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下である。
また、改質セルロース繊維における修飾基の導入率は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99モル%以下、より好ましくは97モル%以下、更に好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
[改質セルロース繊維の製造方法]
改質セルロース繊維は、例えば、(1)原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入してアニオン変性セルロース繊維を得る工程、及び(2)前記(1)の工程を含む方法によって得られたアニオン変性セルロース繊維に修飾用化合物を結合させて、改質セルロース繊維を得る工程、を含む方法によって製造することができる。
(1)アニオン変性セルロース繊維を得る工程
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、原料のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、1つ又は2つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
アニオン変性の対象となるセルロース繊維、即ち、改質セルロース繊維やアニオン変性セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは1μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下である。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は、入手性及びコストの観点から、好ましくは100μm以上であり、好ましくは5,000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。分散性の観点から、原料のセルロース繊維を、アルカリ加水分解処理や酸加水分解処理等で短繊維化処理した平均繊維長が1μm以上であり、1,000μm以下であるセルロース繊維を用いることが好ましい。
導入されるアニオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基又はリン酸基が挙げられる。
(i)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合
セルロース繊維にカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースのヒドロキシ基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースのヒドロキシ基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上を反応させる方法が挙げられる。
前記セルロースのヒドロキシ基を酸化処理する方法としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を反応させて酸化処理する方法が適用できる。より詳細には、公知の方法、例えば特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができる。
TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位のヒドロキシ基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。従って、本発明におけるアニオン変性セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。本明細書において、セルロース構成単位中の水酸基の酸化により得られるセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維を「TEMPO酸化セルロース繊維」という場合がある。酸化セルロース繊維は、それ以外のアニオン変性セルロース繊維と比べて調製が容易であることから好ましい。従って、本発明における改質セルロース繊維の好ましい態様の一つは、酸化セルロース繊維にアミノ変性シリコーンが結合してなる改質セルロース繊維であり、より好ましい態様の一つは、TEMPO酸化セルロース繊維にアミノ変性シリコーンが結合してなる改質セルロース繊維である。
酸化セルロース繊維に更に追酸化処理又は還元処理を行うことで、残存するアルデヒド基を除去した酸化セルロース繊維を調製することができる。
(ii)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又はリン酸基を導入する場合
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
セルロース繊維にアニオン性基としてリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
(2)改質セルロース繊維を得る工程
改質セルロース繊維は、前記アニオン変性セルロース繊維に、修飾基を有する化合物、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは、アミノ変性シリコーン、及びカチオン性基を有する炭化水素系化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を結合させることにより製造することができる。かかる製造方法としては、公知の方法、例えば特開2015-143336号公報に記載の方法を用いることができる。
(修飾用化合物)
修飾用化合物は、膜の滑液性能の持続性向上の観点から、修飾基を有し、且つ、アニオン変性セルロース繊維と結合し得る化合物、好ましくは、修飾基を有し、且つ、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基又はヒドロキシ基と結合し得る化合物、更に好ましくは、修飾基及びカチオン性基を有する化合物、更に好ましくは、修飾基及びアミノ基又は4級アンモニウム基を有する化合物、更に好ましくは、修飾基を有する1級アミン、2級アミン、3級アミン及び4級アンモニウム化合物である。
修飾用化合物の好ましい例としては、膜から付着物を容易に除去できる観点から、アミノ基を有する高分子化合物やカチオン性基を有する炭化水素系化合物が挙げられる。
(i)アミノ基を有する高分子化合物
本発明に修飾用化合物として、好ましいアミノ基を有する高分子化合物は、市販品として入手することができ、あるいは公知の方法に従って調製することができる。アミノ基を有する高分子化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明におけるアミノ基を有する高分子化合物としては、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアミン、アミノ変性ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、アミノ変性ビニル系ポリマー、アミノ変性ポリエステル、アミノ変性ポリカーボネート、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の樹脂;鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂芳香族ポリアミン等などが挙げられ、反応基の位置は高分子化合物の主鎖、側鎖、末端のいずれでもよい。これらの中では、膜の滑液性能の持続性向上の観点から、好ましくはアミノ変性シリコーンである。
アミノ変性シリコーンとは、アミノ基を有するシリコーン系化合物である。アミノ変性シリコーンとしては、25℃での動粘度が10mm/s以上20,000mm/s以下のものが好ましい。さらに、アミノ当量が400g/mol以上16,000g/mol以下のアミノ変性シリコーンが好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、膜から付着物を容易に除去できる観点から、より好ましくは20mm/s以上、更に好ましくは50mm/s以上であり、ハンドリング性の観点からより好ましくは10,000mm/s以下、更に好ましくは5,000mm/s以下である。
また、アミノ当量は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは400g/mol以上、より好ましくは600g/mol以上、更に好ましくは800g/mol以上であり、アニオン変性セルロース繊維への結合のさせやすさの観点から、好ましくは16,000g/mol以下、より好ましくは14,000g/mol以下、更に好ましくは12,000g/mol以下である。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=重量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーンの具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023095398000002
〔式中、R1aは炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、同様の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、膜から付着物を容易に除去できる観点から、xは好ましくは10以上10,000以下の数、より好ましくは20以上5,000以下の数、更に好ましくは30以上3,000以下の数である。yは好ましくは1以上1,000以下の数、より好ましくは1以上500以下の数、更に好ましくは1以上200以下の数である。一般式(a1)の化合物の重量平均分子量は、膜の滑液性能の持続性向上の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは8,000以上であり、同様の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
-C-NH
-C-NH-C-NH
-C-NH-[C-NH]-C-NH
-C-NH(CH
-C-NH-C-NH(CH
-C-NH-[C-NH]-C-NH(CH
-C-N(CH
-C-N(CH)-C-N(CH
-C-N(CH)-[C-N(CH)]-C-N(CH
-C-NH-cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーンは、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80~110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53-98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーンとしては、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが-C-NH-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
本発明におけるアミノ変性シリコーンとしては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、ダウ・東レ社製のSS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16-892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16-898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、信越化学工業社製のKF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF-8004(動粘度:800、アミノ当量:1500)、KF-8005(動粘度:1200、アミノ当量:11000)、KF-867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF-864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、KF-859(動粘度:60、アミノ当量:6000)、が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(a1-1)成分としては、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16-853U(動粘度:14、アミノ当量:450)がより好ましい。
(a1-2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SF8452C(動粘度:600、アミノ当量:6400)、KF-8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、SS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1700)がより好ましい。
なお、シリコーン系化合物は置換基を有するものであってもよい。置換基の具体例としては、上述の「(c)更なる置換基」で記載したものが挙げられる。
(ii)カチオン性基を有する炭化水素系化合物
本発明における、カチオン性基を有する炭化水素系化合物とは、一つのカチオン性基に対して一つ以上の炭化水素基が結合したものである。カチオン性基を有する炭化水素系化合物の合計炭素数は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、更に好ましくは18以上であり、ハンドリング性の観点から、好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは26以下、更に好ましくは22以下である。
カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、カチオン性基が1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム、ホスホニウム等の場合には、炭化水素基は窒素原子あるいはリン原子に共有結合を介して直接結合した化合物である。カチオン性基がアミジン、グアニジン等の場合は、その官能基の窒素原子あるいは炭素原子の少なくとも片方に共有結合を介して結合した化合物である。カチオン性基がイミダゾリウム、ピリジニウム、イミダゾリン等の場合は、環構造のいずれかの位置に少なくとも一つ以上の炭化水素基が共有結合を介して結合した化合物である。
カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、オキシアルキレン基を含まないものがより好ましい。
上記炭化水素系化合物は、一部の水素原子が更に置換されていてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ケトン基、チオール基等が挙げられる。
上記カチオン性基を有する炭化水素系化合物は、好ましくは1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム等の、アミノ基を有する炭化水素系化合物(本明細書において、「炭化水素系アミン」と称する。)である。かかる炭化水素系アミンの具体例としては、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、ジメチルジオクチルアンモニウム塩、ジメチルジデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩等が好ましい。
なお、カチオン性基を有する炭化水素系化合物は置換基を有するものであってもよい。置換基の具体例としては、上述の「(c)更なる置換基」で記載したものが挙げられる。
(修飾用化合物の使用量)
改質セルロース繊維を得る工程における、前記アニオン変性セルロース繊維中のアニオン性基に対する、使用する修飾用化合物のアニオン性基と反応し得る官能基の当量は、膜の滑液性能の持続性向上の観点から、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは1当量以上、更に好ましくは1.5当量以上である。また、成膜性の観点から、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下、更に好ましくは2当量以下である。
(3)微細化処理工程
改質セルロース繊維の製造過程のいずれかの段階においてセルロースを微細化することにより、マイクロメータースケールのセルロースをナノメータースケールに微細化することができる。平均繊維径をナノメートルサイズにまで小さくすることによって、成膜時の強度が向上するため、微細化処理工程をさらに実施することが好ましい。
微細化処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における反応物繊維の固形分含有量は50質量%以下が好ましい。
〔成分(B)〕
本発明における成分(B)は水である。成分(B)は、成分(A)の調製の際の溶媒として、及び本発明における乳化組成物の構成成分の一つとしての役割を有する。
〔成分(C)〕
本発明における成分(C)は、25℃1気圧で不揮発性の有機化合物である。成分(C)は、成分(A)の調製の際に使用される溶媒であってもよい。本明細書において、25℃1気圧で不揮発性の有機化合物とは、かかる条件での蒸気圧が10Pa未満の有機化合物を意味する。
成分(C)の水への溶解度は、25℃の水100gあたり、10g以下が好ましく、1g以下が更に好ましい。
成分(C)の分子量は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは10,000以下であり、同上の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。
本発明における成分(C)は、具体的には、油剤、有機溶剤、重合性モノマー、プレポリマー等が挙げられる。本発明における成分(C)は、好ましくは油剤であり、油剤としては、膜から付着物を容易に除去できる観点から、例えば、アルコール、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、エーテル油、油脂、フッ素系不活性液体及び脂肪酸からなる群より選択される一種以上が挙げられ、エステル油、シリコーン油、エーテル油、油脂、及びフッ素系不活性液体からなる群より選択される一種以上が好ましく、シリコーン油、エステル油、及びエーテル油からなる群より選択される一種以上がより好ましく、シリコーン油及び/又はエステル油が更に好ましい。
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油が挙げられ、具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン等の炭素数2以上18以下の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸エステルが挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、ヒマシ油などの植物油や動物油等が挙げられる。
成分(C)は、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくはSP値が10以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9.0以下、より更に好ましくは8.5以下であり、同上の観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上である。例えば、後述のSP値が10以下の油剤が好ましいものとして例示できる。
本明細書におけるSP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm3)1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition (A Wiley-Interscience publication, 1989)等に記載されている。
本発明で好適に使用されるSP値が10以下の油剤としては、例えば、オレイン酸(SP値:9.2)、PEG400(SP値:9.4)、コハク酸ジメチル(SP値:9.9)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)、ラウリン酸ヘキシル(SP値:8.6)、ラウリン酸イソプロピル(SP値8.5)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値8.5)、パルミチン酸イソプロピル(SP値8.5)、オレイン酸イソプロピル(SP値:8.6)、ヘキサデカン(SP値:8.0)、オリーブ油(SP値:9.3)、ホホバ油(SP値:8.6)、スクアラン(SP値:7.9)、流動パラフィン(SP値:7.9)、フッ素系不活性液体(例えば、フロリナートFC-40(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-43(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-72(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-770(3M社製、SP値:6.1))、シリコーンオイル(例えば、KF96-1cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-10cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-50cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-100cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-1000cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96H-1万cs(信越化学社製、SP値:7.3)等)等が挙げられる。
〔成分(D)〕
本発明における乳化組成物は、25℃1気圧で揮発性の有機化合物を更に含んでいてもよい。かかる成分を乳化組成物に配合することによって、基材上に容易に成膜することができるため、好ましい。本明細書において、25℃1気圧で揮発性の有機化合物とは、かかる条件での蒸気圧が10Pa以上の有機化合物を意味する。
かかる成分としては、例えば、N-メチルピロリドン、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、メタノール、t-ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられる。
〔成分(E)〕
本発明における乳化組成物は、成分(E)のポリエーテル変性シリコーン化合物を更に含んでいてもよい。かかる成分(E)を乳化組成物に配合することによって、膜の耐久性を向上することができるため、好ましい。
成分(E)の一例としては、メチルシリコーン鎖を主鎖とし、ポリオキシエチレン基からなる側鎖をもつ化合物が挙げられ、具体的には、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
Figure 2023095398000003
式中、Rはメチレン基、エチレン基又はトリメチレン基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、mは0~50の整数、nは1~10の整数、pは1~50の整数、及びqは0~50の整数をそれぞれ示す。-R(CO)(CO)で示される基において、(CO)及び(CO)はランダムでもブロックでもよい。
成分(E)のHLB値は、乳化組成物の乾燥によって得られる膜の耐久性の観点から、特定の範囲内のものが好ましく、具体的には、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
HLB値が異なる2種以上のポリエーテル変性シリコーンを使用する場合は、成分(E)としてのHLB値としては、それらの加重平均で求めた値が上記範囲になればよい。なお、HLB値とは、親水性と親油性のバランスを表す指標であり、本発明においては、以下のグリフィン(Griffin)の式により求められるものを指す。
HLB値=20×親水基部の分子量の総和/分子量
成分(E)の25℃における動粘度は、乳化組成物の乾燥によって得られる膜の耐久性の観点から、特定の範囲内のものが好ましく、具体的には、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは5mm/s以上であり、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは500mm/s以下、更に好ましくは200mm/s以下である。
成分(E)として好ましく使用できるポリエーテル変性シリコーン化合物は市販されており、市販品としては、信越化学工業社製の、KF-615A、KF-640、KF-642、KF-643、KF-644、KF-351A、KF-354L、KF-355A、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6016、KF-6017、KF-6020、KF-6043等が挙げられ、乳化組成物の乾燥によって得られる膜の耐久性の観点から、KF-640、KF-642、KF-643、KF-351A、KF-354L、KF-355A等が好適に用いることができる。前記一般式に該当しない構造の市販品(例えば、信越化学工業社製のKF-6028及びKF-6038等も、成分(E)として使用することができる。
〔成分(F)〕
本発明における乳化組成物は、成分(F)として高分子化合物を更に含んでいてもよい。ここで、成分(F)としては、成分(A)、成分(C)、成分(D)又は成分(E)に該当するものは包含されない。かかる成分(F)を乳化組成物に配合することによって、膜の耐久性を向上することができるため、好ましい。
成分(F)の重量平均分子量としては、膜の耐久性向上の観点から、好ましくは1,000以上であり、同様の観点から、好ましくは50万以下である。
成分(F)としては、下記の高分子化合物(X)及び高分子化合物(Y)からなる群より選択される1種以上が好ましい。
高分子化合物(X):主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子化合物
高分子化合物(Y):側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子
成分(F)の好ましい具体例としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート、スチレンアクリル、ウレタンアクリル等アクリルとの共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN-メチル(メタ)アクリルアミド、ポリN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリN-フェニル(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
〔その他の成分〕
本発明における乳化組成物は、前記成分以外に、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
2.基材
基材は、各種部材の機械的強度を担保するための材料であり、各種金属、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミニウムなどや、プラスチック、ガラス、コンクリートなどが挙げられる。
基材の厚みとしては、機械的強度の観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、生産性の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
3.積層体の形成方法
本発明の積層体の形成方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
工程1:樹脂表面上に、以下の成分(A)~(C)を含有する乳化組成物を塗布する工程
(A)修飾基を有するセルロース繊維
(B)水
(C)25℃1気圧で不揮発性の有機化合物
工程2:工程1の後、前記乳化組成物を乾燥させる工程
<工程1>
工程1は樹脂表面上に乳化組成物を塗布する工程である。
塗布方法としては、乳化組成物のエアスプレー、エアレススプレー、トリガースプレーなどのスプレー、エアゾール缶を用いた噴霧、刷毛、ローラー、布などを用いた塗布、浸漬塗布等が挙げられる。これらの塗布方法は非常に簡便な方法であると言うことができる。
樹脂表面上の塗膜の厚みとしては、膜から付着物を容易に除去できる観点から、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であり、生産性の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。
<工程2>
工程2は、工程1の後、前記乳化組成物を乾燥させる工程である。乳化組成物を乾燥させることで、膜を樹脂表面上に形成させる。
乳化組成物を乾燥させる方法としては、常温常圧下で風乾する方法でもよく、あるいは加温したり、減圧することで、乾燥を促進させてもよい。
<乳化組成物>
乳化組成物は、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する。必要に応じて、成分(D)、成分(E)及び/又は成分(F)を含有していてもよい。
乳化組成物中の成分(A)の含有量としては、乳化力の観点から、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、一方、ハンドリング性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
乳化組成物中の成分(B)の含有量としては、乳化状態を維持する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、一方、粘度やハンドリング性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
乳化組成物中の成分(C)の含有量としては、乳化状態を維持する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
乳化組成物中の成分(D)の含有量としては、基材上に容易に成膜できる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
乳化組成物中の成分(E)の含有量としては、膜の耐久性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
乳化組成物中の成分(F)の含有量としては、膜の耐久性向上の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
乳化組成物中の成分(C)と成分(A)の質量比((C)/(A))は、膜から付着物を容易に除去できるの観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上であり、同様の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。
乳化組成物の粘度は、ハンドリングの観点から、25℃における粘度が好ましくは0.5mPa・s以上、より好ましくは0.8mPa・s以上、更に好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは30Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、更に好ましくは1Pa・s以下、更に好ましくは100mPa・s以下、更に好ましくは20mPa・s以下である。ここで粘度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
乳化組成物における乳化滴の粒子径のメジアンは、後述するレーザー回折法による測定において、耐水性及び滑液性とその耐久性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、同様の観点から、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
<乳化組成物の調製方法>
本発明における乳化組成物の調製方法は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分C)等を混合する工程、又は、アニオン変性セルロース繊維、修飾用化合物、成分(B)及び成分(C)等を混合する工程を有するものである。
各成分を混合することで乳化が生じ、乳化組成物が得られる。かかる混合処理には、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモミキサー、真空乳化装置、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。混合処理は、2種類以上の操作を組み合わせて実施してもよい。
各成分の混合時の温度や時間としては、例えば、好ましくは5~50℃の温度範囲とし、好ましくは1分間~3時間の範囲とする。
混合時の各成分の含有量の好ましい範囲は、前述の本発明における乳化組成物における各成分の含有量の好ましい範囲と同じである。
以下、実施例等を示して本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
〔アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
測定対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出する。AFMによる画像で分析される高さを繊維径とみなすことができる。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、上記アニオン性基含有量の測定方法によって測定する。
一方、これとは別に、ビーカーに、測定対象の酸化セルロース繊維の水分散液100g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)100g、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え25℃で16時間撹拌して、酸化セルロース繊維に残存するアルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、脱イオン水にて洗浄を行い、アルデヒド基を酸化処理したセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記アニオン性基含有量の測定方法で測定し、「酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量」を算出する。続いて、式1にて測定対象の酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)-(測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、MOC-120H)を用いて測定する。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少がサンプルの初期量の0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔改質セルロース繊維における結晶構造の確認〕
改質セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットに圧縮して作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式Aに基づいて算出する。
<式A>
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編;2000年4月発行)のP199-200の記載に則り、以下の式Bに基づいて算出することが好ましい。
したがって、上記式Aで得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式Bに基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
<式B>
セルロースI型結晶化度(%)=[A/(A+A)]×100
〔式中、Aは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
〔乳化組成物の粘度の測定〕
B型粘度計(東機産業TVB-10)No.1ローターを用いて、25℃、回転速度60RPM、1分後の粘度を測定する。
〔レーザー回折法による乳化滴の粒子径の測定〕
レーザー回折法による乳化滴の粒子径の測定は、堀場製作所製LA-960を用いて行う。
測定条件:測定用セルに水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積粒度分布及びメジアン(体積累積中位粒径(D50))を測定する。なお、相対屈折率1.20、温度25℃、循環ポンプON、循環速度5、撹拌速度5とする。
〔膜の厚みの測定〕
乾燥後の膜の厚みは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとした。膜の一部を金属製のスパーテルで削り取り、下層体を露出させたサンプルを測定し、内蔵の画像処理ソフトを用いて下層体の高さと膜のある部分の高さを計測し、それらの差をとることで膜の厚みを求める。
〔アニオン変性セルロース繊維〕
原料として、表1に記載の物性値を有するアニオン変性セルロース繊維を用いた。
Figure 2023095398000004
かかるアニオン変性セルロース繊維は、例えば下記のTEMPO酸化処理のようにして調製することができる。
[TEMPO酸化処理]
メカニカルスターラー、撹拌翼を備えた2LのPP製ビーカーに、原料の天然セルロース繊維としての針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維10g、脱イオン水990gをはかり取り、25℃、100rpmで30分撹拌する。次いで、該パルプ繊維10gに対し、TEMPOを0.13g、臭化ナトリウム1.3g、10.5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液35.5gをこの順で添加する。次いで、自動滴定装置を用いてpHスタット滴定を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持する。撹拌速度100rpmにて反応25℃で120分行う。
次いで、撹拌しながら、それに0.01Mの塩酸を加えて、懸濁液のpHを2とする。次いで、吸引濾過で、固形分を濾別する。固形分を脱イオン水中に分散させ、吸引濾過で固形分を濾別する操作を、ろ液の伝導度が200μs/cm以下になるまで繰り返す。得られる固形分に対して脱水処理を行って、アニオン変性セルロース繊維を得ることができる。
〔還元処理された微細化アニオン変性セルロース繊維の調製〕
前記アニオン変性セルロース繊維に微細化処理、次いで、還元処理を行って、表2に記載の物性値を有する微細化アニオン変性セルロース繊維を調製した。
Figure 2023095398000005
かかる微細化アニオン変性セルロース繊維は、例えば下記の微細化処理及び還元処理により調製することができる。
[微細化処理]
アニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を添加して懸濁液(固形分含有量2.0質量%)100gを調製し、これに0.5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=8に調整する。次いで、脱イオン水を加えて合計200gとする。この懸濁液に、高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで微細化処理を3回行い、微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量1.0質量%)を得ることができる。
[還元処理]
微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量1.0質量%)182gをはかり取り、脱イオン水を加えて合計400gとし、そこに0.1M水酸化ナトリウム水溶液1.2mL、水素化ホウ素ナトリウム120mgを加え、25℃で4時間撹拌する。次いで、1M塩酸9mLを加えて撹拌を続ける。撹拌終了後、吸引ろ過して得られた固形分を脱イオン水中に分散させ、吸引濾過で固形分を濾別する操作を6回繰り返す。このようにして、微細化アニオン変性セルロース繊維に存在するアルデヒド基が還元処理された、微細化アニオン変性セルロース繊維分散液(固形分含有量0.9質量%)を得ることができる。
〔乳化混合物の調製〕
ビーカーに、表2に記載の物性値を有する前記微細化アニオン変性セルロース繊維の分散液66.7g(固形分含有量0.9質量%)、シリコーンオイルを6.0g、修飾用化合物としてのアミノ変性シリコーンを2.67g(アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基に対して1.75当量に相当)を混合し、そこに脱イオン水を加えて合計100gとした。この分散液をメカニカルスターラーで常温で5分間撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、アニオン変性セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して結合した改質セルロース繊維を含む乳化混合物を得た。得られた混合物は白濁液であって、光学顕微鏡によって水中に油滴が分散している様子が観察されたため、乳化系であると判断した。乳化滴の粒子径のメジアンは300nmであった。
実施例1~2
表に記載の有効分濃度になるように、ビーカーに、乳化混合物及び表に記載の原料を測り取り、25℃で30分間撹拌し、積層体形成用の乳化組成物を得た。
実施例で使用した代表的な成分の詳細を以下にまとめた。
[修飾用化合物]
アミノ変性シリコーン:ダウ・東レ社製、DOWSILTM SS-3551」、動粘度:1,000、アミノ当量:1,700
[成分(C)]
シリコーンオイル:信越化学工業社製、KF-96-100cs」、SP値:7.3
[成分(D)]
N-メチルピロリドン:富士フィルム和光純薬社製
2-プロパノール:富士フィルム和光純薬社製
[成分(E)]
ポリエーテル変性シリコーン:信越化学工業社製、KF-642、HLB:14
[成分(F)]
スチレンアクリル:DSM社製、NeoCryl XK-188(固形分44.5質量%)
〔下層体の塗工〕
SUS329J4L製基材(100mm×300mm×厚み3mm)上に下層体を形成する塗料として、アクリル樹脂系塗料(中国塗料社製、SEAFLO NEO CF Z)をアプリケーター(テスター産業社製)を用いて厚みが200μmになるように塗工した。室温で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、下層体の膜厚が約100μmの基材と下層体との積層構造物を得た。なお、ここで用いたアクリル樹脂系塗料に含まれるアクリル樹脂は溶解型樹脂に該当する。
〔下層体上への上層体の作製〕
実施例1及び実施例2で作成したそれぞれの乳化組成物を、表に記載の塗膜の厚みになるように、前記積層構造物の下層体の上の全域に塗り広げた。次いで、室温で24時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、下層体と上層体の積層体を備えた構造体を得た。
比較例1
上層体を備えない、前記下層体のみを備えた構造体を比較例1として用いた。
〔滑液性の評価〕
試験例1
上記のようにして作製された実施例1~2、比較例1の構造体を、上層体が上を向くように水平の状態に設置し、各膜に対して、全自動接触角計(協和界面科学社製、FAMAS)を用い、23℃にて、8μLの水滴(23℃)を滴下し、1秒静置した。次いで、1°/sの速さで膜表面を85°まで傾け、水滴が滑り始める角度を測定した。水滴滑落角の値が小さいほど、その膜の滑液性が高いことを示す。各成分の組成(乾燥膜中の質量部数)及び評価結果を下記の表に示す。ただし、85°まで傾けても水滴が滑り落ちなかった場合には、水滴滑落角は、「85超」と記した。
〔野外水生生物付着試験〕
試験例2
実施例1、2の上層体と下層体の積層体を備えた基板と比較例1の基板をそれぞれ鎖で繋ぎ、干潮時に水面から2mの深さになるように和歌山県下津港付近の海水中に設置し、7ヶ月間海水中での浸漬試験を行った。浸漬1ヶ月後、3ヶ月後、7ヶ月後に、基板への甲殻動物類と藻類の付着度合いを目視によって評価した。評価基準は次の通りである。数値が小さいほど、水生生物の付着抑制効果が高いことを示す。
1:水生生物の付着が基板表面の2面積%以下である状態。
2:基板表面の2面積%超10面積%以下に水生生物が付着している状態。
3:基板表面の10面積%超20面積%以下に水生生物が付着している状態。
4:基板表面の20面積%超30面積%以下に水生生物が付着している状態。
5:基板表面の30面積%超50面積%以下に水生生物が付着している状態。
6:基板表面の50面積%超80面積%以下に水生生物が付着している状態。
7:基板表面の80面積%超に水生生物が付着している状態。
〔付着物の除去試験〕
試験例3
上記試験例1において、1ヶ月後、3ヶ月後、7ヶ月後に、基板上に付着した水生生物の除去性を以下の基準で評価した。なおここで水流とは13.3L/minの速さで、基板に対して水平方向に流して評価した。数値が小さいほど、付着物が容易に除去できることを示す。
なお、実施例2は、3か月で上層体が下層体から剥がれたため、そこで評価を終了した。
1:水流で付着物のみ除去可能。
2:水流で付着物ごと上層体が剥離することで除去可能。
3:水流+こする作業で付着物のみ除去可能。
4:付着物の除去に工具の使用が必要。
さらに、付着物除去後の表面状態を目視にて確認し、除去作業により表面に欠損のあり/なしを評価した。上記の除去性スコア2又は3(上層体も剥離)の場合は、上層体剥離後の下層体の表面状態を評価した。
Figure 2023095398000006
表1より、下層体に上層体を積層した実施例の構造体は、下層体単独と比べて水生生物の付着そのものを抑制できる効果を有し、かつ付着した水生生物の除去性にも優れることが分かった。特に甲殻動物類の付着抑制に優れることを確認した。
また、下層体に上層体を積層した実施例の構造体は、一定期間浸漬後、水流のみで付着物ごと上層体が簡便に剥離可能であり、欠損のないきれいな下層体を表出可能であるということが分かった。そのため、本発明における乳化組成物を用いて、下層体上に再度、簡便な作業で上層体を形成させることが可能である。
実施例1、実施例2の比較により、上層体が下層体から剥離するまでの耐久期間は、成分(D)としてN-メチルピロリドンを用いる方が2-プロパノールを用いるときと比べて長いことが分かった。これは、理由は定かではないが、類似のSP値を有する有機媒体であるが、N-メチルピロリドンの方が2-プロパノールに比べて沸点が高く、揮発に時間がかかるために下層体とゆっくり相互拡散することができたためではないかと考えている。一方、比較例1は甲殻動物類が付着すると付着物の除去に工具が必要であり、除去後は表面に欠損が生じてしまった。
1 基材
2 樹脂層
3 膜

Claims (5)

  1. 以下の工程1及び工程2を含む積層体の形成方法。
    工程1:樹脂表面上に、以下の成分(A)~(C)を含有する乳化組成物を塗布する工程
    (A)修飾基を有するセルロース繊維
    (B)水
    (C)25℃1気圧で不揮発性の有機化合物
    工程2:工程1の後、前記乳化組成物を乾燥させる工程
  2. 前記乳化組成物が、更に以下の成分(D)を含有する、請求項1に記載の積層体の形成方法。
    (D)25℃1気圧で揮発性の有機化合物
  3. 前記乳化組成物が、更に以下の成分(E)を含有する、請求項1又は2に記載の積層体の形成方法。
    (E)ポリエーテル変性シリコーン
  4. 前記乳化組成物が、更に以下の成分(F)を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体の形成方法。
    (F)高分子化合物(ただし、成分(A)、成分(C)、成分(D)又は成分(E)に該当するものを除く。)
  5. 前記樹脂が溶解型樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体の形成方法。
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