JP7336924B2 - スプレー用組成物 - Google Patents
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Description
〔1〕 セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、有機媒体とを含有する、スプレー用組成物。
〔2〕 さらに、常温常圧で不揮発性の有機媒体を含有する、前記〔1〕に記載のスプレー用組成物。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載のスプレー用組成物を構造体に噴霧して塗工する工程を有する、構造体への該スプレー用組成物の塗工方法。
〔4〕前記〔1〕又は〔2〕に記載のスプレー用組成物を構造体に噴霧して塗工物を製造する工程を有する、塗工物の製造方法。
本発明のスプレー用組成物は、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と有機媒体とを含有する。
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるものであり、後述の常温常圧で不揮発性の有機媒体に分散性を示すものが、より好ましい。常温常圧で不揮発性の有機媒体に対して分散性を有するとは、例えば、該有機媒体と対象の疎水変性セルロース繊維との混合液の粘度をE型粘度計(25℃、1rpm、1分後、標準コーンロータ、ロータコード:01)を用いて測定した場合、増粘が観測されることをいう。例えば、本発明における疎水変性セルロースとしては、不揮発性有機媒体の代表例としてスクアラン中にセルロース繊維の含有量を0.5質量%になるように調製した液の微細化処理後の分散液粘度が1mPa・s以上になるものが好ましい。なお、微細化処理は、後述の方法により行うことができる。
疎水変性セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における疎水変性セルロース繊維(A)とは、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に、修飾基を導入するための化合物、即ち修飾用化合物が結合してなるセルロース繊維である。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、セルロース繊維への導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量は、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、少なくとも1つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
セルロース繊維にカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
本明細書において、カルボキシ基を有するセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」と称する。酸化セルロース繊維は、例えば、触媒として2,2,6,6,-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して、セルロース繊維の水酸基をカルボキシ基に酸化する方法を適用することにより、製造することができる。より詳細には、特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができ、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。酸化セルロース繊維は、それ以外のアニオン変性セルロース繊維と比べて、不揮発性有機媒体の外部への移行抑制の観点から好ましい。
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
本明細書において、疎水変性セルロース繊維(A)における修飾基の結合とは、セルロース繊維表面のアニオン性基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合している状態のことを意味する。アニオン性基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、不揮発性有機媒体の膜からの喪失抑制の観点から、好ましくはアミド結合である。同様の観点から、本発明における疎水変性セルロース繊維(A)としては、セルロース繊維表面に既に存在するアニオン性基に、修飾基を導入するための化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られるものが好ましい。
修飾基を導入するための化合物としては、後述の修飾基を導入可能なものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。修飾基を導入するための化合物としてのアミノ変性シリコーン化合物も、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、のいずれでもよい。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられる。
アニオン性基への修飾においては、アミド結合の場合は、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよい。エステル結合の場合は、アルコールがよく、例えば、ブタノール、オクタノール、ドデカノールが例示される。ウレタン結合の場合は、イソシアネート化合物がよい。
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び共重合部位を有する炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、液ダレ防止の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの修飾基における炭素数のことを意味する。
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10~20,000mm2/s、アミノ当量400~8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
-C3H6-NH2
-C3H6-NH-C2H4-NH2
-C3H6-NH-[C2H4-NH]e-C2H4-NH2
-C3H6-NH(CH3)
-C3H6-NH-C2H4-NH(CH3)
-C3H6-NH-[C2H4-NH]f-C2H4-NH(CH3)
-C3H6-N(CH3)2
-C3H6-N(CH3)-C2H4-N(CH3)2
-C3H6-N(CH3)-[C2H4-N(CH3)]g-C2H4-N(CH3)2
-C3H6-NH-cyclo-C5H11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2 (a2)
(a1-2)成分としては、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、SS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)がより好ましい。
疎水変性セルロース繊維(A)は、例えば、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、アニオン性基がカルボキシ基の場合、特開2018-024967号公報の段落0017~0106等を参照して疎水変性セルロース繊維(A)を製造することができる。なお、疎水変性セルロース繊維(A)の製造の際には、特開2018-024967号公報における低アスペクト比化処理や微細化工程を省略することができる。
本発明における疎水変性セルロース繊維(B)(エーテル化セルロース繊維とも言う)は、セルロース繊維表面に修飾基がエーテル結合を介して結合していることを特徴とし、好ましくはセルロースI型結晶構造を有するものである。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維表面の水酸基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
-CH2-CH(R0)-R1 (1)
-CH2-CH(R0)-CH2-(OA)n-O-R1 (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるR0は水素原子又は水酸基を示し、R1はそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す。〕
態様1のエーテル化セルロース繊維は、前記の一般式(1)及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基を単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基は同一の修飾基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
エーテル化セルロース繊維において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する修飾基が導入されたモル量(モル置換度:MS)は、修飾基の種類により一概には限定できないが、液ダレ防止の観点から、好ましくは0.0001以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1.5以下である。ここで、修飾基として、一般式(1)で表される修飾基と一般式(2)で表される修飾基のいずれもが導入されている場合は、合計したMSのことである。なお、本明細書において、エーテル化セルロース繊維における修飾基のMSは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、無水グルコースユニットを「AGU」と略記する場合がある。AGUはセルロースがすべて無水グルコースユニットで構成されていると仮定して算出される。
本発明におけるエーテル化セルロース繊維としては、修飾基の種類に関係なく、平均繊維径に特に限定はない。例えば、平均繊維径がマイクロオーダーの態様、平均繊維径がナノオーダーの態様が例示される。
本発明におけるエーテル化セルロース繊維は、上記したようにセルロース繊維表面に、修飾基、好ましくは前記の置換基を有していてもよい炭化水素基がエーテル結合を介して結合しているが、修飾基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。以下、態様1のエーテル化セルロース繊維を製造する方法の具体的な例を説明する。
本製造方法においては、前記原料のセルロース繊維に塩基を混合する。
塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
前記化合物と原料のセルロース繊維とのエーテル化反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。エーテル化反応の詳細については、特開2017-053077号公報の段落0070~0075の記載を参照することができる。
疎水変性セルロース繊維の結晶化度は、液ダレ防止の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の測定方法により求めることができる。
有機媒体は、本発明のスプレー用組成物における溶媒として使用される。有機媒体としては、常温常圧で揮発性の有機媒体が好ましい。常温常圧で揮発性の有機媒体としては、例えば、イソプロパノール(IPA)、1-プロパノール、エタノール、メタノール、t-ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられる。なお、ここで、常温とは25℃を、常圧とは、101.3kPaを意味する。また、常温常圧で揮発性の有機媒体とは、常温常圧下での蒸気圧が10Pa以上の有機媒体を意味する。
本発明においては、常温常圧で不揮発性の有機媒体を、スプレー用組成物又は該組成物の塗工によって形成される膜を構成する潤滑油として含有することが好ましい。かかる油を使用することによって、液ダレ防止作用をより強く発揮できるため、好ましい。なお、常温常圧で揮発性の有機媒体とは、常温常圧下での蒸気圧が10Pa未満の有機媒体を意味する。
本発明においては、下記の(X)及び(Y)からなる群より選択される1種以上の高分子化合物を、スプレー用組成物又は該組成物の塗工によって形成される膜が含有することが好ましい。かかる特定の高分子化合物を使用することによって、液ダレ防止作用がより強く発揮できるため、好ましい。不揮発性の有機媒体の膜からの喪失抑制及び膜の耐久性の観点から、(X)の高分子化合物がより好ましい。
(X)主鎖にエステル基、アミド基、ウレタン基、アミノ基、エーテル基又はカーボネート基を有する高分子化合物
(Y)側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子化合物
主鎖にエステル基を有する高分子化合物(X)としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、及びアルケニルコハク酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールとの縮合物等、あるいは、グルコール酸、乳酸などの一分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を有する化合物の縮合物が挙げられる。
(a)ポリアミド化合物
(b)ポリアルキレンイミン化合物
ポリアミド化合物としては、セルロース構造を有さず、かつ、アミド結合(-CONH-)を有する高分子化合物であれば、いかなる化学構造を有するポリアミド化合物を使用することもできる。ポリアミド化合物は、例えば、主として脂肪族骨格からなるナイロンであってもよいし、主として芳香族骨格をもつアラミドであってもよい。更にはこの両者以外の骨格構造を有するものでもよい。好適に用いられる構造体の例としては、アミン化合物と、モノカルボン酸、ジカルボン酸及び重合脂肪酸からなる群より選択される1種以上のカルボン酸とからなるポリアミドが挙げられる。
本発明に用いられるモノカルボン酸は、不揮発性有機媒体の膜からの喪失抑制及び膜の耐久性の観点から、好ましくは炭素数8以上24以下のものであり、より好ましくは炭素数10以上22以下のものであり、更に好ましくは炭素数12以上18以下のものである。
ポリアルキレンイミン化合物とは、主鎖がアルキレン基とアミノ基からなる繰返し単位であり、下記式(A)及び/又は式(B)の構造の繰返し単位を有する高分子化合物である。
高分子化合物(Y)、即ち、側鎖にエステル基若しくはアミド基を有するメタクリル系又はアクリル系高分子化合物としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN-メチル(メタ)アクリルアミド、ポリN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリN-フェニル(メタ)アクリルアミド等のポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
スプレー用組成物には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。かかる任意成分としては、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。スプレー用組成物におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
本発明のスプレー用組成物は、液ダレ性が小さいにも関わらず、比較的低粘度であることが一つの特徴である。本発明のスプレー用組成物の25℃での粘度は、液ダレ防止の観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは150mPa・s以上、更に好ましくは300mPa・s以上であり、一方、スプレー塗工性の観点から、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下である。なお、スプレー用組成物の粘度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の、構造体へのスプレー用組成物の塗工方法及び塗工物の製造方法は、前述の本発明のスプレー用組成物を構造体に噴霧して塗工する工程を有する。噴霧の方式は特に限定なく、エアスプレー方式、エアレススプレー方式、静電スプレー方式等いずれの方式でもよい。
本明細書において塗工物とは、本発明のスプレー用組成物による膜が構造体上に形成された物体のことである。
本発明のスプレー用組成物の塗工により形成される膜は、特定の疎水変性セルロース繊維、即ち、セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維を含有するものであり、常温常圧で不揮発性の有機媒体及び/又は前記高分子化合物をさらに含有するものがより好ましい。このような膜は、本発明のスプレー用組成物を塗工することによって、構造体の内側もしくは外側または両側の表面の一部もしくは全面に、容易に形成させることができる。ここで膜とは、常温で流動せずに形状を保持する膜をいう。膜の表面硬度としては、例えば、微小硬度計で測定した場合、下記式により算出されるマルテンス硬さ(HM)が0.1(N/mm2)以上の膜が好ましい。
HM=F/(26.43×hmax2)
F:試験力(N)
hmax:押し込み深さの最大値(mm)
測定対象のセルロース繊維に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope II Tappingmode AFM、Digital instrument社製;プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維径とみなすことができる。
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-701」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
ビーカーに、測定対象の酸化セルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え常温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、イオン交換水にて洗浄を行い、アルデヒド基を酸化処理した測定対象のセルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品のカルボキシ基含有量を上記アニオン性基含有量の測定方法で測定し、「酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量」を算出する。続いて、式1にて測定対象の酸化セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)-(測定対象の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
ハロゲン水分計(島津製作所社製;商品名「MOC-120H」)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製:商品名「Nicolet 6700」)を用いATR法にて測定し、下記式A及び式Bにより、修飾基の結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合、即ち、酸化セルロース繊維の場合を示す。以下の「1720cm-1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の結合量(mmol/g)=a×(b-c)÷d
a:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
b:酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
c:疎水変性セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
d:酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
1720cm-1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
<式B>
修飾基の導入率(mol%)=100×e/f
e:修飾基の結合量(mmol/g)
f:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
アミド結合による修飾基の結合量を下記式により算出する。なお、下記式はアニオン性基がカルボキシ基の場合、即ち、酸化セルロース繊維の場合の例である。
修飾基の結合量(mmol/g)=酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)-疎水変性セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(mol%)=[修飾基の結合量(mmol/g)/酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×100
最初に、測定対象のセルロース中に含有される修飾基の含有量%(質量%)を、Analytical Chemistry, Vol. 51, No.13, 2172 (1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出する。以下に手順を示す。
(ii)精製、乾燥を行った測定対象のセルロース70mg、アジピン酸80mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓する。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱する。
(iv)加熱後、バイアルに内標溶液2mL、ジエチルエーテル2mLを順次注入し、常温で1分間攪拌する。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、商品名:GC2010Plus)にて分析する。
(vi)測定対象のセルロースを、その改質に用いたエーテル化剤5mg、10mg、15mgにそれぞれ変更する以外は、(ii)~(v)と同様の方法で分析を行い、エーテル化剤の検量線を作成する。
(vii)作成した検量線と、測定対象のセルロースの分析結果から、測定対象のセルロース中に含有される修飾基を定量する。分析条件は以下のとおりである。
カラム:アジレント・テクノロジー社製、商品名:DB-5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:30℃(10min Hold)→10℃/min→300℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃
検出器温度:300℃
打ち込み量:1μL
数式(1):導入する修飾基が一種類の場合
MS=(W/Mw)/((100-W)/162.14)
W:疎水変性セルロース繊維中の修飾基の含有量(質量%)
Mw:導入したエーテル化剤の分子量(g/mol)
数式(2):導入する修飾基が二種類の場合
MS1=(W1/Mw1)/((100-W1-W2)/162.14)
MS2=(WB2/Mw2)/((100-W1-W2)/162.14)
MS1:一種類目の修飾基のモル置換度
MS2:二種類目の修飾基のモル置換度
W1:疎水変性セルロース繊維中の一種類目の修飾基の含有量(質量%)
W2:疎水変性セルロース繊維中の二種類目の修飾基の含有量(質量%)
Mw1:導入した一種類目のエーテル化剤の分子量(g/mol)
Mw2:導入した二種類目のエーテル化剤の分子量(g/mol)
疎水変性セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出する。
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
したがって、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100 (B)
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される「修飾基を導入するための化合物」が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾基を導入するための化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される「修飾基を導入するための化合物」が2種類以上の場合
各化合物のモル比率(即ち、添加される化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾基との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾基を導入するための化合物の分子量」とは、「修飾基を導入するための化合物全体の分子量」を指す。一方、セルロース繊維と修飾基を導入するための化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾基を導入するための化合物の分子量」とは、「修飾基を導入するための化合物全体の分子量-18」である。
調製例1(天然セルロース繊維にN-オキシル化合物を作用させて得られる酸化セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(SIGMA ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
その後、酸化セルロース繊維3.9gとイオン交換水296.1gを高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP-2 5005)を用いて245MPaで微細化処理を2回行い、酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量1.3質量%)を得た。 この酸化セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基量は0.27mmol/gであった。
ビーカーに調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液3846.15g(固形分含有量1.3質量%)を投入し、ここに1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製、純度95質量%)を2.63g仕込み、常温下3時間反応させアルデヒド基の還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、常温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。最後にイソプロパノールで溶媒置換し、アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液を得た。
得られたアルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基量は0.02mmol/gであった。
製造例1(疎水変性セルロース繊維の製造)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた酸化セルロース繊維分散液300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、修飾基を導入するための化合物として、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製「SS-3551」)を、酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.4molに相当する量を仕込み、セルロース濃度が0.5質量%になるようにイソプロパノールを添加し、これらの混合物を常温(25℃)で14時間撹拌して反応させた。反応終了後、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、酸化セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した疎水変性セルロース繊維の分散液を得た。修飾基の導入率は酸化セルロース繊維のカルボキシ基の40%であった。この疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、平均繊維長は578nm、結晶化度は30%であった。
修飾基を導入するための化合物及び仕込み量を以下の様に変更した点以外は製造例1と同様の方法で、疎水変性セルロース繊維の分散液を得た。
製造例2:ドデシルアミン(和光純薬製)を該アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込んだ。
製造例3:EOPOアミン(HUNTSMAN社製;JEFFAMINE M-2070)を該アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.3molに相当する量を仕込んだ。
絶乾した針葉樹の漂白クラフトパルプ(以後NBKPと略称、ウエストフレザー社製、「ヒントン」、繊維状、セルロース含有量90質量%、水分含有量5質量%)250.0gに6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液267.1g(NaOH 0.28当量/AGU)を添加し、均一に混合した。その後、エーテル化剤として酸化ブチレン333.8g(和光純薬社製、3.0当量/AGU)を添加し、密閉した後に50℃、7時間かけてニーダー回転器を用いて撹拌し、反応を行った。反応後、酢酸で中和し、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において50μs/cm以下になるまでイオン交換水を用いて十分に反応後のパルプを洗浄し、次いで、さらにアセトン5Lで十分に洗浄することで不純物を取り除いた。次いで、70℃で一晩真空乾燥を行うことで、セルロース由来の水酸基に修飾基としての2-ヒドロキシブチル基がエーテル結合を介して結合してなる疎水変性セルロース繊維を得た。置換度(MS)は0.30であった。
数式(3)
X=162.14/(162.14+Mw1×MS1+Mw2×MS2)
Mw1、Mw2:導入したエーテル化剤の分子量(g/mol)
MS1、MS2:導入した修飾基のモル置換度
ただし、Mw1及びMS1は1種類目のエーテル化剤に関し、Mw2及びMS2は2種類目のエーテル化剤に関する。
実施例1、6、8、10(ただし、実施例10は参考例である。)
製造例1~4で得られた疎水変性セルロース繊維の分散液(セルロース濃度0.5質量%)をそのまま用いて、スプレー用組成物とした。
製造例1~3で得られた疎水変性セルロース繊維の分散液を用いて、次のようにしてスプレー用組成物を作製した。疎水変性セルロース繊維の分散液(セルロース濃度0.5質量%)に表2に示す不揮発性有機媒体を疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:不揮発性有機媒体が1:3の質量比になるように配合し、スクリュー管中、常温で24時間撹拌した。撹拌後の分散液をスプレー用組成物とした。
なお、用いた不揮発性有機媒体の詳細は以下である。
スクアラン:和光純薬製
シリコーン:信越化学社製、KF-96-100cs
流動パラフィン:和光純薬製
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにしてスプレー用組成物を作製した。疎水変性セルロース繊維の分散液(セルロース濃度0.5質量%)に疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミドが1:3:1の質量比になるように、また、イソプロパノール:トルエン=100:5の質量比となるように配合し、スクリュー管中、常温で24時間撹拌した。撹拌後の分散液をスプレー用組成物とした。
ハリダイマー 250K:450gを2Lセパラフラスコにとり、70℃に昇温した後に窒素置換を行った。その後、エチレンジアミン:45g、ジエチレントリアミン:5gを徐々に添加し、添加後に内温が145℃になるまで昇温を行った。145℃で1時間撹拌した後に、内温を210℃に昇温し、6時間撹拌を行った。その後、内温を210℃に保ったまま、内圧を45KPaになるまで真空ポンプを用いて減圧を行い、0.5時間撹拌を行い、ポリアミドを調製した。
なお、ポリアミドにおけるジエチレントリアミンの含有率は3.0モル%であった。
質量平均分子量(Mw)は、日立L-6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミッション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L-6000、検出器はショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR-Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは、溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのファーミンDM20(花王株式会社製)のクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で行った。検量線の作成のための標準ポリマーとしては、ポリスチレン(東ソー株式会社製)を使用した。
調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量1.3質量%)をエバポレーターで濃縮し、酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量1.7質量%)を得た。得られた酸化セルロース繊維分散液をスプレー用組成物とした。
調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量1.3質量%)とイオン交換水を固形分含有量が0.5質量%になるように混和し、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで3パス処理させることで、酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量0.5質量%)を得た。得られた酸化セルロース繊維分散液をスプレー用組成物とした。
固形分含有量が0.4質量%になるように、イオン交換水を加えた以外は、比較例3と同様の操作を行い、酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量0.4質量%)を得た。得られた酸化セルロース繊維分散液をスプレー用組成物とした。
上記のようにして調製された各スプレー用組成物に関して、以下に示す評価を行った。なお、比較例1では、実施例1のスプレー用組成物をバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP-13)を用いてガラス基板に塗布した。
E型粘度計(東機産業株式会社製:VISCOMETER TV-35)を用い、25℃、1rpm、1分後、標準コーンロータ、ロータコード:01の条件で、各スプレー用組成物の粘度を測定した。
上記各スプレー用組成物を、エアスプレーを用いてスプレー塗工性を評価した。エアー缶(タミヤ製:スプレーワークエアーカン420D)にエアーブラシ(タミヤ製:スプレーワークHGシングルエアーブラシ)を取り付け、スプレー用組成物がノズルに入っていく様子を目視で観測し、スプレー塗工性を評価した。評価基準は以下になる。
1:全くつまりがなく、スムーズに液がノズルに入っていく。
2:つまりはないが、ややノズルに入っていく速度が遅い。
3:液が詰まり、ノズルに液が入っていかない。
上記各スプレー用組成物を前記エアー缶に注入し、前記エアーブラシの先端から10cmの距離から10秒間、ガラス基板(MATSUNAMI社製:Micro Slide Glass S9112)に向けて噴霧し、塗りムラを評価した。なお、比較例1では、バーコーターを用いて前記ガラス基板に組成物を塗布した際の塗りムラを評価した。評価基準は以下になる。
1:均一に塗工可能。
2:やや厚みムラが生じる。
3:厚みムラが大きい。
前記「<塗りムラ>」の実験で10秒間噴霧した後の、ガラス基板からの組成物の液垂れ性を評価した。なお、比較例1では、バーコーターを用いて塗布した後の組成物の液垂れ性を評価した。評価基準は以下になる。
1:塗工後、ガラス基板を垂直に立てて置いた際も、液垂れが全く生じない。
2:塗工後、ガラス基板を垂直に立てて置いた際に、次第に液が垂れる。
3:塗工後、ガラス基板を垂直に立てて置いた際に、すぐに液が垂れ出す。
前記「<塗りムラ>」の実験で組成物が塗布されたガラス基板を常温で12時間放置し、ガラス基板上に、膜を形成させた。次いで、各例の膜の算術平均粗さ(Ra)を次のようにして測定した。膜の算術平均粗さはレーザー顕微鏡(キーエンス社製:VK-9710)を用いて以下の測定条件で測定した。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとした。膜の算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いた。
実施例1、実施例6及び比較例4のスプレー用組成物について、繊維製品における片面バリア性を評価した。
市販の非エアゾール型のスプレイヤーに、前記3種類のスプレー用組成物をそれぞれ1種類ずつ充填した。
一方、JIS L 1907 繊維製品の吸水性試験方法(滴下法)における測定時間が1秒以下になるまでスーピマコットン男性用ボクサーブリーフ(綿93%、ポリウレタン7%、株式会社ユニクロ製)を洗濯し、10cm×10cmの平面視正方形形状に切り出して試験布を作製した。
結果を表4にまとめた
Claims (8)
- セルロース繊維のアニオン性基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、有機媒体とを含有する、スプレー用組成物であって、
該疎水変性セルロース繊維が、
(a)セルロース繊維のアニオン性基に炭化水素基が結合されてなるもの、
(b)セルロース繊維のアニオン性基にアミノ変性シリコーン化合物が結合されてなるもの、又は
(c)セルロース繊維の水酸基に一般式(-CH 2 -CH(R 0 )-R 1 )で示される炭化水素基が結合されてなるもの(式中、R 0 は水素原子を示し、R 1 は炭素数3以上30以下の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示す。)
である、スプレー用組成物。 - 有機媒体が常温常圧で揮発性の有機媒体である、請求項1に記載のスプレー用組成物。
- 25℃における粘度が1~10,000mPa・sである、請求項1又は2に記載のスプレー用組成物。
- 疎水変性セルロース繊維が、セルロース繊維のアニオン性基に修飾基が結合されたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスプレー用組成物。
- アニオン性基がカルボキシ基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のスプレー用組成物。
- さらに、常温常圧で不揮発性の有機媒体を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のスプレー用組成物。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のスプレー用組成物を構造体に噴霧して塗工する工程を有する、構造体への該スプレー用組成物の塗工方法。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のスプレー用組成物を構造体に噴霧して塗工物を製造する工程を有する、塗工物の製造方法。
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