JP2020057751A - ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法 - Google Patents

ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い保磁力iHcと高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法を提供する。【解決手段】ボンド磁石用フェライト粉末の製造方法は、鉄とストロンチウムの複合酸化物と、酸化鉄と、融剤とを混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、フェライトの粗粉とこのフェライトの粗粉より比表面積が大きいフェライトの微粉を混合し、アニールする工程とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法に関し、特に、フェライトの粗粒と微粒を含むボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法に関する。
従来、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータや、複写機のマグネットロールなどに使用される磁石のような高磁力の磁石として、フェライト系焼結磁石が使用されている。しかし、フェライト系焼結磁石は、欠け割れが発生したり、研磨が必要なために生産性に劣るという問題があることに加えて、複雑な形状への加工が困難であるという問題がある。
そのため、近年では、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータなどの高磁力の磁石として、希土類磁石のボンド磁石が使用されている。しかし、希土類磁石は、フェライト系焼結磁石の約20倍のコストがかかり、また、錆び易いという問題があるため、フェライト系焼結磁石の代わりにフェライト系ボンド磁石を使用することが望まれている。
しかし、ボンド磁石と焼結磁石では密度が大きく異なり、例えば、フェライト系焼結磁石の密度が5.0g/cm程度であるのに対して、フェライト系ボンド磁石は、樹脂やゴムなどのバインダを含むために、その密度はフェライト系焼結磁石よりも低くなり、磁力が低下する。そのため、フェライト系ボンド磁石の磁力を高くするために、フェライト粉末の含有率を増加させることが必要になる。しかし、フェライト系ボンド磁石中のフェライト粉末の含有率を増加させると、フェライト粉末とバインダとの混練時に、これらの混練物の粘度が高くなり、混練時の負荷が増大して、生産性が低下し、極端な場合には混練することができなくなる。また、混練することができたとしても、成形時に混練物の流動性が悪くなるので、生産性が低下し、極端な場合には成形することができなくなる。
このようなフェライト系ボンド磁石の問題を解決するために、フェライト粉末の充填性を高めることが重要である。このフェライト粉末の充填性は、一般に粒度分布や圧縮密度と関連性が高く、フェライト粉末の充填性を高めるためには、圧縮密度を高くする必要がある。
このような圧縮密度が高く、高充填性のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法として、酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒して得られた第1の造粒物を1180℃以上1220℃未満の温度で焼成して、焼成物の粗粉を得るとともに、酸化物を含む複数のフェライト原料を造粒して得られた第2の造粒物を900℃以上1000℃以下の温度で焼成して、焼成物の微粉を得た後、焼成物の粗粉と微粉の合計の質量に対する粗粉の質量の比が65質量%以上75質量%未満の混合比率で粗粉と微粉を混合して得られた混合粉に機械的粉砕力を加えて得られた混合粉砕物をアニールして、ボンド磁石用フェライト粉末を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2016−72636号公報(段落番号0014)
近年、モータの(形状の複雑化や多磁極化などの)高性能化に伴って、反磁界に対する減磁を抑制するために、(4000Oe以上の)高い保磁力iHcと(2800G以上の)高い残留磁化Brを有するボンド磁石が求められている。このように高い保磁力のボンド磁石を得るためには、ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力を高くする必要がある。このようにボンド磁石用フェライト粉末の保磁力を高くするためには、フェライトの粗粉と微粉を混合して製造されるボンド磁石用フェライト粉末に使用する粗粉の粒子径を小さくする必要がある
しかし、特許文献1のボンド磁石用フェライト粉末のように、従来のボンド磁石用フェライト粉末では、粗粉の粒子径を小さくすると、混合後のフェライト粉末を充填し難くなって、圧縮密度が低下するという問題がある。このように圧縮密度が低下したボンド磁石用フェライト粉末を使用してボンド磁石を作製すると、残留磁化Brが低下する。そのため、従来のボンド磁石用フェライト粉末では、高い保磁力iHcと高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができなかった。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、高い保磁力iHcと高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鉄とストロンチウムの複合酸化物と、酸化鉄と、融剤とを混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、フェライトの粗粉とこのフェライトの粗粉より比表面積が大きいフェライトの微粉とを混合し、アニールする工程とを備えたボンド磁石用フェライト粉末の製造方法により、高い保磁力iHcと高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法は、鉄とストロンチウムの複合酸化物と、酸化鉄と、融剤とを混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、フェライトの粗粉とこのフェライトの粗粉より比表面積が大きいフェライトの微粉とを混合し、アニールする工程とを備えたことを特徴とする。
このボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、複合酸化物が、α−Feと炭酸ストロンチウムを、Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)が0.5〜2.5になるように混合して造粒した後に、焼成することにより製造されるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるのが好ましい。さらに、ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるのが好ましい。
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末は、空気透過法による平均粒径が1.00〜1.24μmであり、長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であることを特徴とする。このボンド磁石用フェライト粉末は、圧粉体の保磁力iHcが3000〜4500Oeであるのが好ましい。
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末は、空気透過法による平均粒径が0.5〜2μmであるボンド磁石用フェライト粉末であり、このボンド磁石用フェライト粉の圧粉体の保磁力iHcが3000〜4500Oeであり、圧粉体の保磁力iHc(Oe)をx、圧縮密度CD(g/cm)をyとすると、y>−0.000228x+4.25であることを特徴とする。このボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるのが好ましい。
上記のボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤0.8質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂8.4質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを4.3KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHcと残留磁化Brを測定磁場10kOeで測定すると、保磁力iHcが4000Oe以上、残留磁化Brが2800G以上であるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末の比表面積は、0.5〜10m/gであるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.60以下であるのが好ましい。
また、本発明によるボンド磁石は、上記のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えたことを特徴とする。
なお、本明細書中において、「短軸長に対する長軸長の比」とは、短軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離(平行な2本の直線に対して垂直に引いた線分の長さ)の最小値)に対する長軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最大値)の比(長軸長/短軸長)をいう。また、ボンド磁石用フェライト粉末の「空気透過法による平均粒径」とは、空気透過法(粉体の充填層に空気を通過させて、その透過性から粉体の平均粒径を測定する方法)により得られた平均粒径をいう。また、「比表面積」とは、比表面積測定装置を使用してBET一点法によって測定されたBET比表面積をいう。さらに、ボンド磁石用フェライト粉末の「圧縮密度」とは、ボンド磁石用フェライト粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cmの圧力で圧縮したときのボンド磁石用フェライト粉末の密度をいう。
本発明によれば、高い保磁力iHcと高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末を製造することができる。
実施例1で得られたフェライトの粗粉の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 比較例2で得られたフェライトの粗粉のSEM写真である。 実施例1〜2および比較例1〜2で得られたボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度CDと保磁力iHcと関係を示す図である。
本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法の実施の形態は、鉄とストロンチウムの複合酸化物と、酸化鉄と、融剤とを混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、フェライトの粗粉とこのフェライトの粗粉より比表面積が大きいフェライトの微粉とを混合し、アニールする工程とを備えている。
鉄とストロンチウムの複合酸化物は、酸化物結晶であるのが好ましく、酸化鉄(ヘマタイト(α−Fe))と炭酸ストロンチウムを、Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)が0.5〜2.5になるように混合して造粒した後に、焼成することにより製造されるのが好ましい。Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)が0.5〜2.5になるように混合して造粒した後に焼成して得られた鉄とストロンチウムの複合酸化物を使用すると、圧縮密度が高いボンド磁石用フェライト粉末を得ることができる。また、このようにして得られた鉄−ストロンチウムの複合酸化物は、Srに対するFe(合計)のモル比(Fe(合計)/Sr)=11.〜12.0になるように、酸化鉄(ヘマタイト(α−Fe))と混合するのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるのが好ましく、長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるのが好ましい。また、融剤はホウ酸であるのが好ましい。また、フェライトの微粉は、α−Feと炭酸ストロンチウムを混合して造粒した後、粗粉を得る際の焼成の温度より低い温度で焼成し、粉砕することによって得ることができる。
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の実施の形態は、空気透過法による平均粒径が1.00〜1.24μmであり、長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下である。このように空気透過法による平均粒径が1.00〜1.24μmであり且つ長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるボンド磁石用フェライト粉末を使用すれば、高い保磁力iHcと高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる。このボンド磁石用フェライト粉末は、圧粉体の保磁力iHcが3000〜4500Oeであるのが好ましい。また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の実施の形態は、空気透過法による平均粒径が0.5〜2μmであるボンド磁石用フェライト粉末であり、このボンド磁石用フェライト粉の圧粉体の保磁力iHcが3000〜4500Oe(好ましくは3250〜4200Oe)であり、圧粉体の保磁力iHc(Oe)をx、圧縮密度CD(g/cm)をyとすると、y>−0.000228x+4.25である。このボンド磁石用フェライト粉末は、長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であるのが好ましい。この平均値が1.60以下であれば、ボンド磁石用フェライト粉末中で大きな粒子が動き易くなり、圧縮密度が高くなって、流動性が向上する。
なお、空気透過法による平均粒径dは、ボンド磁石用フェライト粉末の充填層に空気を通過させたときに、体積Q(cc)の空気が透過するのに要した時間t(秒)と、厚さL(cm)の充填層の両端の圧力差Δp(g/cm)を測定すれば、以下の数式1および数式2から計算することができる。
Figure 2020057751
Figure 2020057751
なお、数式1および数式2において、ηは空気の粘性係数(poise)、Aは流れの方向に垂直な充填層の断面積(cm)、εは充填層の空隙率、Wはボンド磁石用フェライト粉末の重量(g)、ρはボンド磁石用フェライト粉末の密度(g/cm)である。
上記のボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤0.8質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂8.4質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを4.3KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHcと残留磁化Brを測定磁場10kOeで測定すると、保磁力iHcが4000Oe以上、残留磁化Brが2800G以上であるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末の比表面積は、0.5〜10m/gであるのが好ましく、1〜5m/gであるのがさらに好ましく、2.3〜4m/gであるのが最も好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.60以下であるのが好ましい。この平均値が1.60以下であれば、ボンド磁石用フェライト粉末中で大きな粒子が動き易くなり、圧縮密度が高くなって、流動性が向上する。また、ボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度は、3.2g/cm以上であるのが好ましく、3.3g/cm以上であるのがさらに好ましい。なお、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnは5.0〜6.0であるのが好ましく、5.4〜5.9であるのがさらに好ましい。
また、本発明によるボンド磁石の実施の形態は、上記のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えている。なお、このボンド磁石を製造するためにボンド磁石用フェライト粉末を樹脂などと混合する際の流動度MFRは40g/10分以上であるのが好ましく、80g/10分以上であるのがさらに好ましい。
以下、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
(フェライトの粗粉の製造)
ヘマタイト(α−Fe、比表面積5.3m/g)と炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)をモル比0.5:1.0(Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)=1.0)になるように秤量して混合し、この混合物にパンペレタイザー中で水を加えながら造粒し、得られた直径3〜10mmの球状の造粒粒を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気雰囲気中において1050℃で20分間焼成して焼成物を得た。この焼成物をローラーミルで粉砕して、(比表面積1.71m/gの)鉄−ストロンチウムの複合酸化物の粉末を得た。この鉄−ストロンチウムの複合酸化物の粉末とヘマタイト(α−Fe、比表面積5.3m/g)を、Srに対するFe(合計)のモル比(Fe(合計)/Sr)=11.7になるように秤量して混合し、この混合物に対して0.17質量%のホウ酸と2.3質量%の塩化カリウムを加えて混合した後、水を加えて造粒し、得られた直径3〜10mmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気中において1210℃(焼成温度)で20分間焼成して得られた焼成物をローラーミルで粉砕して、フェライトの粗粉を得た。
このフェライトの粗粉の比表面積(SSA)を比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製のモノソーブ)を使用してBET一点法によって測定したところ、比表面積は1.47m/gであった。また、フェライトの粗粉の形状指標として、長軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最大値)が1.0μm以上の粒子の短軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最小値)に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、1.55であり、良好な形状を有する粒子であった。なお、短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)は、フェライトの粗粉4.5gとNCクリアラッカー5.7gと直径2mmのステンレスビーズ30gを遠心ボールミル(FRITSCH社製のPULNERISETTE type702)に入れ、回転数200rpmで20分間粉砕して分散させた塗料をアプリケータバーによりシート上に塗布した後、塗布面に対して平行に配向磁場5kOeを印加して配向させて、(フェライトの粗粉の粒子のc軸方向が塗布面と平行になるため)塗布面の真上から粒子のc軸方向の粒径を測定することができるようにし、乾燥させたシートを走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製のS−3400N)により観察し、5000倍のSEM写真中の200個以上の粒子(SEM写真の(1以上の)視野内に外縁部全体が観察される長軸長が1.0μm以上の200個以上の粒子)について、長軸長と短軸長を計測し、(長軸長/短軸長)の平均値として算出した。
(フェライトの微粉の製造)
ヘマタイト(α−Fe)と炭酸ストロンチウム(SrCO)をモル比5.5:1.0(Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)=11.0)になるように秤量して混合し、この混合物に水を加えて造粒し、得られた直径3〜10mmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気雰囲気中において970℃で20分間焼成して焼成物を得た。この焼成物をローラーミルで粗粉砕した後、乾式の振動ボールミルで粉砕して、フェライトの微粉を得た。なお、このフェライトの微粉の比表面積を上記と同様の方法により測定したところ、比表面積は7.0m/gであった。
(ボンド磁石用フェライト粉末の製造)
得られたフェライトの粗粉100質量部とフェライトの微粉42質量部(粗粉:微粉=70:30)と水210質量部とを湿式のアトライターに投入し、粉砕および混合処理を20分間行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過して得られた固形物を大気中において150℃で10時間乾燥させて、乾燥ケーキを得た。この乾燥ケーキをミキサーで解砕して得られた解砕物を、振動ボールミル(株式会社村上精機工作所製のUras Vibrator KEC−8−YH)により、媒体として直径12mmのスチール製ボールを使用して、回転数1800rpm、振幅8mmで14分間粉砕処理を行った。このようにして得られた粉砕物を電気炉により大気中において980℃で30分間アニール(焼鈍)して、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
このボンド磁石用フェライト粉末について、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のZSX100e)を使用して、ファンダメンタル・パラメータ法(FP法)により、各元素の成分量を算出することにより、組成分析を行った。この組成分析では、ボンド磁石用フェライト粉末を測定用セルに詰め、10トン/cmの圧力を20秒間加えて成型し、測定モードをEZスキャンモード、測定径を30mm、試料形態を酸化物、測定時間を標準時間とし、真空雰囲気中において、定性分析を行った後に、検出された構成元素に対して定量分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、89.0質量%のFeと、10.3質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.61であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、比表面積測定装置(株式会社島津製作所製のSS−100)を用いて空気透過法により平均粒径(APD)を求めた。この平均粒径は、ボンド磁石用フェライト粉末の充填層の厚さLを1.0cm、流れの方向に垂直な充填層の断面積を2.0cm、ボンド磁石用フェライト粉末の重量Wを5.0g、空気の粘性係数ηを180×10−4(poise)、ボンド磁石用フェライト粉末の密度ρを5.1g/cmとして、充填層に空気を透過させたときに、体積Q(=2.0cm)の空気が透過するのに要した時間(秒)と、充填層の両端の圧力差Δp(g/cm)を測定し、数式1および数式2から計算した。その結果、積Q(=2.0cm)の空気が透過するのに要した時間は88秒、充填層の両端の圧力差Δpが40.0g/cmであり、平均粒径は1.21μmであった。また、このボンド磁石用フェライト粉末の比表面積を上記と同様の方法により測定したところ、比表面積は2.37m/gであった。また、このボンド磁石用フェライト粉末について、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を上記と同様の方法により算出したところ、1.0μm以上の粒子では1.53であり、0.5μm以上の粒子では1.54であった。また、ボンド磁石用フェライト粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cmの圧力で圧縮したときのボンド磁石用フェライト粉末の密度をボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度(CD)として測定したところ、3.52g/cmであった。また、ボンド磁石用フェライト粉末8gとポリエステル樹脂(日本地科学社製のP−レジン)0.4ccを乳鉢中で混練し、得られた混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2トン/cmの圧力で40秒間圧縮して得られた成形品を金型から抜き取り、150℃で30分間乾燥させて圧粉体を得た。この圧粉体の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF−5BH)を使用して、測定磁場10kOeで圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定したところ、保磁力iHcは3290Oeであり、残留磁化Brは1990Gであった。
(ボンド磁石の製造)
得られたボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製のZ−6094N)0.8質量部と、滑剤(ヘンケル社製のVPN−212P)0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製のP−1011F)8.4質量部とを秤量し、ミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを得た。なお、メルトフローインデクサー(株式会社東洋精機製作所製のメルトフローインデクサーC−5059D2)を使用して、上記の混合物が270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された量に換算することにより、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、90g/10分であった。この混練ペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製)に装填して、4.3KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石(F.C.90.0質量%、4.3KOe)を得た。
このボンド磁石の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF−5BH)を使用して、測定磁場10kOeでボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4093Oe、残留磁化Brは2871G、最大エネルギー積BHmaxは2.03MGOeであった。
[実施例2]
フェライトの粗粉を作製する際の焼成温度を1210℃から1150℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本実施例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は2.14m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.58であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、88.9質量%のFeと、10.4質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.55であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度と圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.10μm、比表面積は2.60m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.57であり、0.5μm以上では1.57であった。さらに、圧縮密度は3.35g/cm、圧粉体の保磁力iHcは4030Oe、圧粉体の残留磁化Brは1900Gであった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4842Oe、残留磁化Brは2808G、最大エネルギー積BHmaxは1.93MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、84g/10分であった。
[実施例3]
アニール温度を980℃から950℃に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、88.9質量%のFeと、10.3質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.60であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度と圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.11μm、比表面積は2.52m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.55であり、0.5μm以上では1.58であった。さらに、圧縮密度は3.39g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3950Oe、圧粉体の残留磁化Brは1870Gであった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4868Oe、残留磁化Brは2840G、最大エネルギー積BHmaxは1.97MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、88g/10分であった。
[実施例4]
フェライトの粗粉を製造する際に、鉄−ストロンチウムの複合酸化物の粉末とヘマタイト(α−Fe)を、Srに対するFe(合計)のモル比(Fe(合計)/Sr)=11.9になるように秤量して混合し、焼成温度を1210℃から1175℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本実施例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は1.72m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.58であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、89.1質量%のFeと、10.1質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.72であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度と圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.12μm、比表面積は2.54m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.59であり、0.5μm以上では1.55であった。さらに、圧縮密度は3.43g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3720Oe、圧粉体の残留磁化Brは1920Gであった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4458Oe、残留磁化Brは2844G、最大エネルギー積BHmaxは1.98MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、88g/10分であった。
[実施例5]
フェライトの粗粉を製造する際に、鉄−ストロンチウムの複合酸化物の粉末とヘマタイト(α−Fe)を、Srに対するFe(合計)のモル比(Fe(合計)/Sr)=11.4になるように秤量して混合し、焼成温度を1210℃から1150℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本実施例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は1.58m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.52であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、88.8質量%のFeと、10.5質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.49であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度と圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.20μm、比表面積は2.41m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.52であり、0.5μm以上では1.52であった。さらに、圧縮密度は3.48g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3450Oe、圧粉体の残留磁化Brは1970Gであった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4061Oe、残留磁化Brは2863G、最大エネルギー積BHmaxは2.02MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、102g/10分であった。
[比較例1]
ヘマタイト(α−Fe)と炭酸ストロンチウム(SrCO)をモル比5.87:1.0(Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)=11.7)になるように秤量して混合し、この混合物に対して0.17質量%のホウ酸と2.3質量%の塩化カリウムを加えて混合した後、水を加えて造粒し、得られた直径3〜10mmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気中において1180℃(焼成温度)で20分間焼成して得られた焼成物をローラーミルで粉砕して、フェライトの粗粉を得た。このフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は1.73m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.87であった。
このフェライトの粗粉を使用し、ボンド磁石用フェライト粉末を得る際のアニール温度を980℃にした以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、89.0質量%のFeと、10.2質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.66であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.15μm、比表面積は2.69m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.92であり、0.5μm以上では1.87であった。さらに、圧縮密度は3.36g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3700Oe、圧粉体の残留磁化Brは1870Gであった。
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4461Oe、残留磁化Brは2767G、最大エネルギー積BHmaxは1.87MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、74g/10分であった。
[比較例2]
フェライトの粗粉を作製する際の焼成温度を1180℃から1150℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本比較例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は2.01m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.91であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、89.1質量%のFeと、10.2質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.67であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.11μm、比表面積は2.55m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.87であり、0.5μm以上では1.89であった。さらに、圧縮密度は3.28g/cm、圧粉体の保磁力iHcは4030Oe、圧粉体の残留磁化Brは1840Gであった。
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4625Oe、残留磁化Brは2736G、最大エネルギー積BHmaxは1.83MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、58g/10分であった。
[比較例3]
フェライトの粗粉を作製する際の焼成温度を1180℃から1175℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本比較例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は1.67m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.68であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、89.0質量%のFeと、10.3質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.61であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.16μm、比表面積は2.39m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.66であり、0.5μm以上では1.68であった。さらに、圧縮密度は3.42g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3450Oe、圧粉体の残留磁化Brは1970Gであった。
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは4230Oe、残留磁化Brは2776G、最大エネルギー積BHmaxは1.90MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、89g/10分であった。
[比較例4]
フェライトの粗粉を作製する際の焼成温度を1180℃から1200℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本比較例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は1.44m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.64であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、88.9質量%のFeと、10.3質量%のSrOと、0.2質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.60であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.21μm、比表面積は2.25m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.65であり、0.5μm以上では1.65であった。さらに、圧縮密度は3.46g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3290Oe、圧粉体の残留磁化Brは1970Gであった。
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは3946Oe、残留磁化Brは2812G、最大エネルギー積BHmaxは1.95MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、75g/10分であった。
[比較例5]
フェライトの粗粉を作製する際の焼成温度を1180℃から1220℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を作製し、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。なお、本比較例で作製したフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積を測定するとともに、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、比表面積は1.02m/gであり、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は1.57であった。
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、89.0質量%のFeと、10.3質量%のSrOと、0.1質量%のBaOが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、Feが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%以下と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、Feの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式をSrO・n(Fe)と表記した場合のnを算出すると、n=5.61であった。
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに比表面積を測定し、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出し、圧縮密度、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.26μm、比表面積は2.17m/gであった。また、長軸長が1.0μm以上の粒子と0.5μm以上の粒子のそれぞれの粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、1.0μm以上では1.57であり、0.5μm以上では1.59であった。さらに、圧縮密度は3.53g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3110Oe、圧粉体の残留磁化Brは1990Gであった。
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは3879Oe、残留磁化Brは2867G、最大エネルギー積BHmaxは2.03MGOeであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、115g/10分であった。
これらの実施例および比較例の結果を表1〜表4に示す。また、実施例1および比較例2で得られたフェライトの粗粉の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図1および図2に示す。なお、図1および図2の右下の1目盛が1μmの長さを示している。また、実施例および比較例で得られたボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度CDと保磁力iHcと関係を図3に示す。なお、図3に示すように、ボンド磁石用フェライト粉の圧粉体の保磁力iHc(Oe)をx、圧縮密度CD(g/cm)をyとすると、実施例1〜2のボンド磁石用フェライト粉末では、y=−0.000230x+4.28、比較例1〜2のボンド磁石用フェライト粉末では、y=−0.000242x+4.26であり、圧粉体の保磁力3000〜4500Oeの範囲において、実施例1〜2のボンド磁石用フェライト粉末は、y>−0.000228x+4.25を満たしているのがわかる。また、実施例3〜5ボンド磁石用フェライト粉末も、y>−0.000228x+4.25を満たしている。
Figure 2020057751
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Claims (12)

  1. 鉄とストロンチウムの複合酸化物と、酸化鉄と、融剤とを混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、フェライトの粗粉とこのフェライトの粗粉より比表面積が大きいフェライトの微粉とを混合し、アニールする工程とを備えたことを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
  2. 前記複合酸化物が、α−Feと炭酸ストロンチウムを、Srに対するFeのモル比(Fe/Sr)が0.5〜2.5になるように混合して造粒した後に、焼成することにより製造されることを特徴とする、請求項1に記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
  3. 前記ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
  4. 前記ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
  5. 空気透過法による平均粒径が1.00〜1.24μmであり、長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であることを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末。
  6. 前記ボンド磁石用フェライト粉の圧粉体の保磁力iHcが3000〜4500Oeであることを特徴とする請求項5に記載のボンド磁石用フェライト粉末
  7. 空気透過法による平均粒径が0.5〜2μmであるボンド磁石用フェライト粉末であり、このボンド磁石用フェライト粉の圧粉体の保磁力iHcが3000〜4500Oeであり、圧粉体の保磁力iHc(Oe)をx、圧縮密度CD(g/cm)をyとすると、y>−0.000228x+4.25であることを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末。
  8. 前記ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が0.5μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であることを特徴とする、請求項7に記載のボンド磁石用フェライト粉末。
  9. ボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤0.8質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂8.4質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを4.3KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHcと残留磁化Brを測定磁場10kOeで測定すると、保磁力iHcが4000Oe以上、残留磁化Brが2800G以上であることを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
  10. 前記ボンド磁石用フェライト粉末の比表面積が0.5〜10m/gであることを特徴とする、請求項5乃至9のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
  11. 前記ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.60以下であることを特徴とする、請求項5乃至10のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
  12. 請求項5乃至11のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えたことを特徴とする、ボンド磁石。
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