JP2020055704A - 複合酸化物粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子伝導性などの電気特性及び磁気特性などの優れたペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末を提供する。【解決手段】ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末であって、BET比表面積が14m2/g以下で、格子歪みが1%以下で、磁場配向比ORが1.75以上であることを特徴とする。ここで、複合酸化物粉末の組成式が一般式(1)で示されるものであるが好ましい。ABO3・・・・・・(1)(式中、A:La,Sr,Caから選択される一種以上の元素、B:Mn,Co,Fe,Niから選択される一種以上の元素である。)【選択図】図1

Description

本発明はペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末に関し、より詳細には、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell、以下、単に「SOFC」ということがある。)の電極等として好適に用いられる複合酸化物粉末に関するものである。
SOFCは、種々のタイプの燃料電池のなかでも発電効率が高く、また多様な燃料が使用可能なこと等から、環境負荷の少ない次世代の発電装置として開発が進められている。SOFCの単セルは、多孔質構造の空気極(カソード)と、酸化物イオン伝導体を含む緻密な固体電解質と、多孔質構造の燃料極(アノード)とがこの順に積層された構造を有する(図2を参照)。SOFCの作動時には、空気極に空気等のO(酸素)含有ガスが、燃料極にH(水素)等の燃料ガスが、それぞれ供給される。この状態で、SOFCに電流を印加すると、空気極でOが還元されてO−アニオン(酸素イオン)となる。そして、このO−アニオンが固体電解質を通過して燃料極に到達し、Hを酸化して電子を放出する。これによって、電気エネルギーの生成(すなわち発電)が行われる。
このようなSOFCの動作温度は従来800℃〜1000℃程度であったが、近年、SOFCの動作温度の低温化が図られている。とはいうものの、実用化されているSOFCの最低温度は600℃以上と依然として高温である。
このようなセル構造と高い動作温度のため、SOFCの空気極の材料には、基本的に、酸素イオン導電性が高く、電子伝導性が高く、熱膨張が電解質と同等あるいは近似し、化学的な安定性が高く、他の構成材料との適合性が良好であり、焼結体が多孔質であり、一定の強度を有することなどの特性が要求される。
このようなSOFCの空気極の材料として、ランタンストロンチウムコバルタイトフェライト(LSCF:Lanthanum Strontium Cobalt Ferrite)やランタンストロンチウムコバルタイト(LSC:Lanthanum Strontium Cobaltite)等のペロブスカイト型複合酸化物が検討されている。
例えば、特許文献1には、LaSrMnOを主成分とし、所定の平均構成粒径を有する、低酸素濃度酸化剤を使用する固体電解質型燃料電池の空気極用の導電性セラミック焼結体及びその製造方法が開示されている。また特許文献2には、高度に均一組成のLSCF粉末からなる固体酸化物型燃料電池用空気極材料粉末及びその製造方法が開示されている。そしてまた特許文献3では、層状ペロブスカイト型混合伝導体であるSLFCに磁場中鋳込み形成法を適用して作製した配向バルク体は、磁場印加方向に対してc軸が配向すること、a−b面内方向で高い電気伝導度を示し電気伝導度に異方性のあることが述べられている。
特開平7−215764号公報 特開2012−138256号公報 矢野広将、外5名、「SLFC(Sr3−xLaxFe2−yCoyO7−σ)系層状ペロブスカイト型混合伝導体の配向制御と異方特性評価」、粉体および粉末冶金、2018年2月、第65巻、第2号、p114−120
ところで、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物材料は、結晶構造として、複数の異なる金属イオンを含むことが可能な複合酸化物材料であり、SOFCの空気極材料としてのみならず様々な技術分野での使用が検討されつつある。ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物材料は、それらの金属イオンの大きさ、イオン価数、更に、結晶内での電気的中性を維持するための酸素欠陥構造により、電磁気学的に種々の機能特性を有し、近年、誘電体としては、工業的な電子デバイスにおいて、例えば、メモリ、キャパシタ、波長変換素子等の種々の利用が期待されている。
また、導電性ペロブスカイト型複合酸化物材料では、その電子伝導性を利用し、種々の電子デバイスにおけるセラミック電極としての利用にも大きな可能性があり、小型電子機器等で利用されているリチウム電池の負極や、高速蓄電型のスーパーキャパシタの蓄電電極への応用も試みられている。
更に、ペロブスカイト型複合酸化物材料は、その酸素欠陥における反応を利用し、例えば、地球温暖化ガスであるNO等の削減のために、石炭燃焼発電所や化学プラントにおける酸素ガス分離フィルターとして、排出ガスからのNO等の不純物の削減に貢献し得るものとして注目されている。
このためペロブスカイト型複合酸化物粉末に要求される特性も多様化しており、用途によってはこれまでにない特性評価が加わりつつある。
一般に、LSCF粉末等のペロブスカイト型複合酸化物粉末は溶媒に投入されてスラリーとされたり、あるいは他の粉体と混合されて成型体とされることが多い。このような場合、作業性や取り扱い性などの観点からは複合酸化物粉末の粒径はある程度の大きさを有する方が望ましい。また用途によっては電子伝導性などの電気特性及び磁気特性が優れていることなどが望まれる。
本発明者らはこのような要求に応えるべく鋭意検討を重ねた結果、BET比表面積、格子歪み、磁場配向比ORを特定の範囲とすることによって前記要求を満足できることを見出し本発明を成すに至った。すなわち、本発明に係る複合酸化物粉末は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末であって、BET比表面積が14m/g以下で、格子歪みが1%以下で、磁場配向比OR(以下、単に「配向比OR」と記すことがある。)が1.75以上であることを特徴とする。
なお、本明細書においてBET比表面積、格子歪み、磁場配向比ORの各測定方法は後述の実施例で説明する測定方法によるものとする。
ここで、前記複合酸化物粉末としては、組成式が一般式(1)で示されるものであるであるのが好ましい。
ABO ・・・・・・(1)
(式中、A:La,Sr,Caから選択される一種以上の元素、B:Mn,Co,Fe,Niから選択される一種以上の元素である。)
また前記複合酸化物粉末としては、組成式が一般式(2)で示されるものであってもよい。
(La1−xSrCoFe1−y ・・・・・・(2)
(式中、0.2≦x≦0.5,0.1≦y≦0.6,0.9≦a≦1.1である。)
また、本発明によれば、燃料極と、固体電解質と、空気極とを備えた固体酸化物形燃料電池であって、前記空気極が、前記のいずれかに記載の複合酸化物粉末の焼成体で構成されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池が提供される。
本発明の複合酸化物粉末によれば、作業性や取り扱い性、磁気特性に優れ、特に配向性が高いことにより、電気特性を向上させることができ、しかもこれらの優れた特性が長期間にわたって持続する。
実施例1のLSCFのXRD測定チャートの一部である。 固体酸化物型燃料電池の一例を模式的に示す断面構成図である。
本発明に係るペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末の大きな特徴の一つは、BET比表面積が14m/g以下であることである。用途特性によって複合酸化物粉末に求められる表面性や粒径の好適範囲は異なるものの、複合酸化物粉末は通常は溶媒に投入されてスラリー状やペースト状とされる、あるいは粉末混合されることが多く、複合酸化物粉末のBET比表面積が14m/gより大きいすなわち複合酸化物粉末の粒径が小さいと、取り扱い性や成形性が低下することがある。そこで本発明ではBET比表面積を14m/g以下と定めた。より好ましいBET比表面積は11m/g以下であり、さらに好ましくは9.0m/g以下である。またBET比表面積の好適な下限値は0.5m/gである。
また本発明に係る複合酸化物粉末の他の大きな特徴は、格子歪みが1%以下であることである。格子歪みは複合酸化物粉末の電気特性に大きな影響を与え、格子歪みが小さい程電気特性は優れたものとなる。そこで本発明では格子歪みを1%以下と定めた。より好ましい格子歪みは0.50以下である。
また本発明に係る複合酸化物粉末の他の大きな特徴は、配向比ORが1.75以上であることである。本発明者らの検討により、格子歪みが小さいと電気特性は向上するものの磁気特性は必ずしも向上しないとの知見を得た。そしてさらに検討を重ねた結果、配向性ORが特定値以上であれば、複合酸化物粉末の電気特性及び磁気特性が共に向上するとの知見を得た。そこで本発明では配向比ORを1.75以上と定めた。より好ましい配向比ORは1.85以上である。また配向比ORの好適な上限値は3.00である。
本発明に係る複合酸化物粉末は組成としてはペロブスカイト型構造を有するものであればよい。具体的には、一般式ABOで示されるものが好ましい。なお、AはLa,Sr,Caから選択される一種以上の元素であり、BはMn,Co,Fe,Niから選択される一種以上の元素である。より具体的には、La(ランタン)・Sr(ストロンチウム)・Co(コバルト)・Fe(鉄)を含む(La,Sr)(Co,Fe)O系複合酸化物(以下、「LSCF」と記すことがある。)、La・Sr・Coを含む(La,Sr)CoO系複合酸化物(以下、「LSC」と記すことがある。)、La・Sr・Mnを含む(La,Sr)MnO系複合酸化物(以下、「LSM」と記すことがある。)、La・Ni・Coを含む(La,Ni)CoO系複合酸化物(以下、「LNC」と記すことがある。)、La・Ni・Feを含む(La,Ni)FeO系複合酸化物(以下、「LNF」と記すことがある。)、Sr・Sm・Coを含む(Sr,Sm)CoO系複合酸化物(以下、「SSC」と記すことがある。)を挙げることができる。これらは、一種又は2種以上を混合して用いてもよい。これらのペロブスカイト型複合酸化物は、電子導電性を持ち、例えば、吸着剤、触媒担体、分離膜、燃料電池等の酸素極、キャパシタ等の電極、機能性フィルターの部材、更には、ガスセンサー、リチウム蓄電デバイス、色素増感型太陽電池等としての利用も可能である。
これらの中でも下記式で示されるLSCFが、本発明に係る複合酸化物粉末を固体酸化型燃料電池の空気極の材料として使用する場合には好適である。
(La1−xSrCoFe1−y
(式中、0.2≦x≦0.5,0.1≦y≦0.6,0.9≦a≦1.1である。)
なお、酸素の組成は化学量論的には3であるが、場合によっては一部欠損していても、あるいは過剰に存在していてもよい。また本発明に係る複合酸化物は主成分としてペロブスカイト型構造を有していればよく、他に不純物相が存在していてもよい。
次に、本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法について具体的に説明する。本発明の係る複合酸化物粉末は、乾式製法と湿式製法で製造することができる。
(乾式製法)
(秤量)
目的の組成のペロブスカイト型構造を有する複合酸化物が生成されるように所定の各成分原料を秤量する。成分原料は、通常使用されるものを好適に使用することができる。例えば、La、Sr、Co、Feを含む酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩などが挙げられる。特に環境的な側面、入手し易さの理由から、炭酸塩、水酸化物または酸化物が好ましい。また、成分原料は1つの元素につき炭酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩などから選ばれた任意の2種類以上の化合物を元素源として選択することもできる。尚、後工程において噴霧乾燥により造粒粉を製造するため、成分原料は水に不溶性の塩であるのが好ましく、また各成分原料塩中の不純物については、重量で100ppm以下となるように成分原料を選定すればよい。
(湿式粉砕)
所定量を秤量した各成分原料を純水と混合してスラリーを得る。当該原料スラリーにおける粉末の固形分濃度は、25質量%以上であれば良好な特性を有する複合酸化物粉末を得ることができる。さらに、乾燥効率の観点からは、当該原料スラリーにおける粉末の固形分濃度は40質量%以上が望ましい。もっとも、原料スラリーにおける粉末の固形分濃度が50質量%以上となると、スラリーの粘度が高くなり、原料の粉砕が困難になる。そこで、原料スラリーにおける粉末の固形分濃度が50質量%以上の場合は、原料スラリーへ分散剤を添加することが望ましい。当該分散剤としては、ポリアクリル酸アンモニウム等を好ましく用いることができる。
湿式粉砕はビーズミルで行う。粉砕メディアの素材は、機械的強度の高いものならば限定せずに使用できる。具体的には、強度が高いZrビーズが好ましい。また、ZrはFe等の元素に比べ、例えコンタミネーションが発生しても許容される範囲が大きい。従って、当該コンタミネーションの観点からもZrビーズが好ましい。ビーズ径が直径2.0mm以下であると粉砕効率を担保出来るので好ましい。
湿式粉砕後の原料スラリーは、累積粒径D50が5.0μm以下であれば、後述する焼成において、一般式ABOで表記される複合酸化物相以外の異相が生成せず好ましい。原料スラリーの粒度分布の累積粒径D50が5.0μm以下であれば、造粒物内の部位による組成の偏りが少ないので異相の生成が抑制され、且つ粒子形状の歪みが小さくなる。そして、累積粒径D50は小さい程好ましいが、0.8μm以上あればコンタミネーションの増加を抑制できる。当該観点から、累積粒径D50は0.8μm以上5.0μm以下であることが好ましい。さらに、上述した本発明に係る複合酸化物粉末を構成する粒子内部の充填率を上げる観点から、累積粒径D50は0.8以上1.2μm未満で、一山分布の粒度分布を有することがさらに好ましい。
(乾燥、造粒)
前記湿式粉砕後の原料スラリーを乾燥して造粒する。当該原料スラリーを乾燥して球状に造粒するには、噴霧乾燥が適している。そして、球形の造粒粉を得る観点からスプレードライヤーを用いることが好ましい。スプレードライヤーにはノズル式、ディスク式があるが、造粒径を大きく、球形の粒子を得るためにはディスク式が好ましく、且つ、スプレードライヤーにおけるアトマイザーディスクの回転数は高回転なほど、スラリーを剪断し造粒する操作が均一になるため、粒子の形状が歪むことなく球状になりやすい。
なお、アトマイザーディスクの回転数はスラリーを供給する速度やドライヤーの送風量、チャンバー容量にもよるが、20000rpm以上とすることが好ましい。乾燥用熱風温度は、噴霧乾燥後、造粒される粒子に水分が残らない温度が望ましい。具体的には、入り口温度で150℃以上250℃以下、出口温度は60℃以上が望ましい。
原料スラリーの供給速度は装置容量により異なる。例えば、乾燥室の容量が1m程度の装置の場合には、原料スラリーの供給速度は5kg/h以上30kg/h以下とすることで、造粒される粒子の形状を保つことができ、生産性も担保できることから好ましい。
(焼成)
作製した造粒粉は焼成炉にて焼成される。焼成炉は、熱源として電気式又はガス式のシャトルキルン、ローラハースキルン、ロータリーキルンなど従来公知のものが使用できる。焼成温度は、複合酸化物粉末を構成する粒子の粒子内部の充填率を上げ、当該粒子の導電率を上げる観点から850℃以上1600℃以下の範囲が望ましい。また、特に導電率上げる観点から焼成温度は900℃以上が好ましい。また、焼成温度が1500℃以下であると焼成後の造粒物の解粒が容易となるため好ましい。
焼成時は、昇温速度は10℃/min以下がよく、雰囲気は大気で良い。そして、炉内や焼成容器内を開放系とし、成分原料の原料塩から発生してくるガス成分を除去しながら昇温する。なお、本発明において開放系とは、炉内や焼成容器内が密閉されておらず、雰囲気である気体の流入出が可能な反応系を指す。
これは、気体の流入出が遮断された密閉系にて造粒物を焼成すると、原料から発生するガス成分が系内に充満する為、粒子がその形状を崩しながら成長し、その結果、粒子形状が歪んでしまう場合があるからである。一方、開放系にて造粒物を焼成すれば、複合酸化物粉末を構成する粒子が、球形形状を崩しながら、または、表面に凹凸を形成しながら粒成長することが無いからである。
(粉砕)
次に、焼成後の造粒物(焼成物)を粉砕する。より詳細には焼成物を乾式粉砕する。これにより所定の配向比ORを有する本発明に係る複合酸化物粉末が得られる。従来はエタノールなどの溶媒に焼成物を投入しビーズミルなどを用いて湿式粉砕して複合酸化物粉末を得ていたが、本発明者等の検討によれば、焼成物の湿式粉砕のみでは粉砕後の複合酸化物粉末の配向比ORは所望値とならなかった。そこで、本発明者等は焼成物の粉砕処理に関して鋭意検討を重ねた結果、湿式粉砕ではなく乾式粉砕によって複合酸化物粉末の配向比ORが向上すること、そして粉砕強度によって配向比ORは制御可能であることを見出した。
焼成物を粉砕する装置としてはインパクトミル、サンプルミル、ヘンシェルミキサー等を用いることができ、これらの中でもインパクトミルが好適に使用される。インパクトミルの回転数としては9000rpm以上16000rpm以下の範囲が好ましい。
なお、インパクトミルの回転数と粉砕時間は、焼成工程における焼成温度と焼成時間とに関連し、焼成温度が高くまた焼成時間が長いほど、インパクトミルの回転数は大きく粉砕時間は長くするのが望ましい。
焼成物のBET比表面積を大きくするため、乾式粉砕した焼成物を更に湿式粉砕してもよい。
湿式粉砕法としては、湿式ボールミル、サンドグラインダー、アトライター、パールミル、超音波ホモジナイザー、圧力ホモジナイザー、アルティマイザーなどで湿式粉砕又は湿式破砕を行うことにより、上述の条件に沿ったペロブスカイト型複合酸化物を構成することができる。特に、パールミルを使用することが好ましい。
湿式での粉砕を行うにあたりパールミルを選択するときには、知られている縦型流通管式ビ−ズミル、横型流通管式ビ−ズミル、強粉砕型突流式ビスコミルなどの既存の湿式粉砕機のいずれでも粉砕可能であるが、好ましくは横型流通管式ビ−ズミルを使用する。横型流通管式ビ−ズミルは縦型流通管式ビ−ズミルと比較してベッセル内に滞留している間は均一に粉砕が行われ、同一流量においてより均一な粉砕が可能となるため好適である。また、横型流通管式ビ−ズミルは強粉砕型突流式ビスコミルよりも処理流量が大きいため、経済的に好ましい。
粉砕メディアとしてはガラス、セラミック、アルミナ、ジルコニア等の硬質原料で製造されたボールを使用すると良い。所望の粒子径を有したペロブスカイト型複合酸化物を得るためのボールの粒子径は0.1mm以上5.0mm以下程度が好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。
溶媒としては、水又は有機溶媒などを使用することができる。製造コストの観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
粉砕後の焼成物(複合酸化物粉末)の累積粒径D50は0.5μm以上5.0μm以下の範囲で、一山分布の粒度分布を有するのが好ましい。
(湿式製法)
(製造方法)
製造方法としては、あらかじめアルカリを溶解した溶液に対して原料溶液を添加する方法を採用することが出来る。具体的には酸化ランタンなどランタン原料をあらかじめ酸で溶解して水溶液とし、これを一体のものとして添加する方法が採用できる。とくに不純物の低減のために酸化ランタンを用いる場合、吸湿性が有り水酸化ランタンに変化する場合があるので、組成ずれを生じる虞がある。そのため、あらかじめ作成した酸化ランタン溶液を用いる方が、組成のずれを少なくできるという意味で工業的に有利である。
生成させる中和塩としては、炭酸を含ませておくことが好ましい。こうすることによって、中和塩を分離回収した際に空気中の二酸化炭素と反応して局部的に炭酸塩化し結晶化することを抑制することが出来る、その結果、後の工程でペロブスカイト化した際の析出物のずれが生じるおそれが少なくなるので好ましい。この系内への炭酸の添加は炭酸塩としての添加でよい。
中和塩を形成させるときの温度は60℃以下、好ましくは50℃以下、一層好ましくは40℃以下とするのが良い。こうした温度設定にすることで、液中に含まれる炭酸やアンモニアとガスとなりやすいものが液中から気散することができるので、中和生成物を好適に得ることが出来る。
得られた中和塩はろ過、洗浄して後乾燥しても良いし、中和塩が液中に存在する状態で直接乾燥させる方法(例えばスプレードライヤーなど)を採用することが出来る。ただし、直接乾燥させる場合には、粉末にアルカリ金属、アルカリ土類金属といった不純物が残存するおそれがあるので、pH調整時の試薬をアルカリ金属、アルカリ土類金属が含まれていない場合に使用するのが好適である。乾燥する際の乾燥温度は150℃以上350℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下とするのが良い。この範囲を極端に外れた状態で乾燥させると、一部がペロブスカイト化するおそれ、もしくは乾燥しきらずに粉末中に水分が残ることがあるので好ましくない。
乾燥した粉末は粉砕を行うことで、微細化処理することが出来る。粉砕は、後述の焼成工程を経てから行っても構わない。上述の乾燥工程においてスプレードライヤーにより乾燥させた場合には、粉砕を要しない場合もある。粉砕に用いる解砕装置としては、例えば、乳鉢、サンプルミル、ヘンシェルミキサー、ハンマーミル、ジェットミル、パルペライザー、インペラーミルが挙げられるが、これらに限定されない。
(固体酸化物型燃料電池用空気極)
以上説明した複合酸化物粉末は固体酸化物型燃料電池の空気極として好適に使用される。すなわち、本発明の複合酸化物粉末を成型体として焼結することにより、その成型焼結体は、固体酸化物型燃料電池用空気極として好適に使用することができる。
焼結体を形成する手段としてはそれ自体公知の手段が適用される。例えば、まず、本発明の複合酸化物粉末をバインダーと混合し、一定の体積を有する金型に充填し、上から圧力をかけることにより、当該粉末の成型体を作成する。圧力をかける方法は、機械的一軸プレス、冷間等方圧(CIP)プレスなど特に限定されない。次に、この成型体を熱処理し焼結体を得る。熱処理温度は、1000℃以上1450℃以下の範囲が好ましい。熱処理温度が1000℃以上では成型体の機械的強度が十分に保たれ、また1450℃以下であると生成した複合酸化物粉末の一部が分解して、不純物を形成し、組成が不均一となるおそれがないので好ましい。熱処理時間は、2時間以上24時間以下が好ましい。
(固体酸化物型燃料電池,SOFC)
固体酸化物型燃料電池について説明する。図2は、固体酸化物型燃料電池の一例を模式的に示した断面構成図である。支持体となる薄板状あるいはシート状の燃料極1と、燃料極1の表面に形成された固体電解質膜2と、固体電解質膜2の表面に形成された薄板状あるいはシート状の空気極3とが積層された構造を有する。
そして、燃料極1に燃料ガス(典型的には水素(H)であるが炭化水素(メタン(CH))等でもよい。)を供給し、空気極3に酸素(O)を含む気体(空気)を流し、燃料電池に電流を印加すると、空気極3において、空気中の酸素が、酸化物イオンとなる。酸化物イオンは、空気極3から固体電解質2を介して燃料極1に供給される。そして、該燃料極1において、燃料ガスと反応して水(HO)を生成し、電子を放出し、発電が行われる。
SOFCは、適用する燃料電池の構成や製造プロセスにもよるが、燃料極、固体電解質膜等の積層体を予め作製し、その積層体の上に、印刷法や蒸着等によって、上記空気極材料を含む層を形成し焼結させることで空気極が形成され、燃料電池が作製される。
空気極の膜厚はセルの構造等に応じて適宜決定すればよく特に限定されないが、例えば20μm以上50μm以下であることが好ましい。
固体電解質層としては、上記空気極材料に用いる電解質材料を用いることができ、例えば、希土類元素ドープセリア系固体酸化物電解質や、希土類元素ドープジルコニア系固体酸化物電解質が挙げられる。
固体電解層の膜厚は、固体電解質層の緻密性が維持される程度に厚くする一方、燃料電池として好ましい酸素イオン又は水素イオンの伝導度を供し得る程度に薄くなるよう、両者をバランスさせて設定され、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましい。
燃料極としては、多孔質構造を有し、供給される燃料ガスと接触できるように構成されていればよく、従来から固体酸化物型燃料電池に用いられている材料を使用することができる。例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)その他の白金族元素、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等からなる金属および/または金属元素のうちの1種類以上から構成される金属酸化物が挙げられる。これらは、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
燃料極の膜厚は、耐久性、熱膨張率等から、20μm以上1mm以下が好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましい。
なお、SOFCの構造は、従来公知の平型、多角形型、円筒型(Tubular)あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat Tubular)等とすることができ、形状やサイズは特に限定されない。また、平型のSOFCとしては、燃料極支持型(ASC:Anode-Supported Cell)の他にも、例えば電解質を厚くした電解質支持型(ESC:Electrolyte-Supported Cell)や、空気極を厚くした空気極支持型(CSC:Cathode-Supported Cell)等を用いることができる。その他、燃料極の下に多孔質な金属シートを入れた、メタルサポートセル(MSC:Metal-Supported Cell)とすることもできる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
(原料スラリーの作製)
(1)(La1−xSrCoFe1−y(但し、x=0.40、y=0.20、a=1.00)の組成を有する複合酸化物粉末が得られるよう、Laを39086g、SrCOを23544g、Coを6331g、Feを25293g、純水を46039g、ポリアクリル酸系の分散剤を4712g秤量した。
(2)ビーズミル(容量1.2L)の粉砕室(ベッセル)内に直径1.75mmのZrOビーズを3100gを充填した。
(3)純水と分散剤とをバッファータンク内に投入して混合し分散剤水溶液とした。そして、当該分散剤水溶液をポンプを用いてビーズミルとバッファータンクとの間で循環させた。
(4)バッファータンク内の分散剤水溶液を400rpmで撹拌しながら、ここへ、前記秤量したLa、SrCO、Co、Feを投入した。
(5)ビーズミル内のアジテーター(撹拌翼)を1000rpmで回転させ、投入したLa、SrCO、Co、Feを300分間粉砕して、原料スラリーを作製した。この原料スラリー中の粉砕物を溶媒としての水に入れて超音波出力40Wで6分間超音波処理を行った後、得られた粒子の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをHRAとして)測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の累積50%粒径D50は0.83μmであった。
(乾燥、造粒)
(1)前記原料スラリーへ純水を添加し、原料スラリーにおける粉末の固形分濃度を60質量%に調整した。
(2)スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製のL−12型)のディスク回転数を25000rpm、乾燥用熱風温度を入り口温度で165℃、出口温度で65℃とし、原料スラリーの供給速度を10kg/hとして、原料スラリーの噴霧乾燥を行って造粒物を得た。この乾燥造粒物の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、乾燥造粒物の体積基準の累積50%粒径D50は27μmであった。
次に、得られた乾燥造粒物をインパクトミル(ミルシステム株式会社製のAVIS−150)により10000rpmで粉砕して乾燥粉砕物を得た。
(焼成)
得られた乾燥粉砕物2000gを角型焼成サヤ(幅300mm、奥行き300mm、高さ80mmの容器)内に入れ、箱型電気炉(ナーバー社製のN200−S)内へセットし、室温から800℃まで昇温速度3.1℃/分、800℃から1300℃まで昇温速度2.6℃/分で昇温させ、1300℃(焼成温度)で2時間保持して焼成した後、室温まで自然冷却した。
(粉砕)
得られた焼成物を供給速度200g/minでインパクトミル(ミルシステム株式会社製のピンミルAVIS−150)に投入し、このインパクトミルのローターとステーターとの間隙(クリアランス)の最小値を1mmとして、回転数16000rpmで回転するローターとステーターとの間を1回通過させる乾式粉砕処理を行って、複合酸化物粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。得られた複合酸化物粉末の所定の物性を下記方法により測定した。結果を表1及び表2に示す。
(組成分析)
得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製の720ES)によって組成分析を行った。
(BET比表面積)
得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、BET比表面積測定装置(ユアサイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を用いてBET一点法によりBET比表面積を求めた。
(バルク−磁気特性)
得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を直径6mmのプラスチック製容器に詰め、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−P7−15)を使用して、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で、保磁力Hc(Oe、kA/m)、飽和磁化σs(Am/kg)、角形SQ、保磁力分布SFDを測定した。
(限界配向−磁気特性)
[磁性塗料の調整]
試料粉末0.31gを秤量し、これをステンレスポット(内径45mm、深さ13mm
)に入れる。フタを開けた状態で10分間放置する。次にビヒクル[アセチルアセトン0
.25gと、ステアリン酸n−ブチル0.25g、シクロヘキサン97.9mLとの混合溶
媒へ、ウレタン樹脂(東洋紡社製UR−8200)34.9gと、塩化ビニル樹脂(日本
ゼオン社製MR−555)15.8gとを溶解したもの]をマイクロピペットで1.11m
L採取し、これを前記のポットに添加する。その後直ちにスチールボール(2mm径)3
0g、ナイロンボール(8mm径)10個をポットに加え、蓋を閉じ10分間静置する。
その後、このポットを遠心式ボールミル(FRITSCH P−6)にセットし、5秒間
でディスク回転数を600rpmに上昇させた後に、ディスク回転数600rpmで、6
0分間分散処理を行う。遠心式ボールミルが停止した後、ポットを取り出し、マイクロピ
ペットを使用し、あらかじめ、MEKとトルエンを1:1で混合しておいた調整液を0.
70mL添加する。再度遠心式ボールミルにこのポットをセットし、ディスク回転数60
0rpmで5分間分散処理することにより、塗料を調製する。
[磁気シートの作成]
前記の分散を終了した後に、ポットの蓋を開け、ナイロンボールを取り除き、調製され
た塗料をスチールボールごとアプリケーター(隙間250μm)に入れ、支持フィルム(
東レ株式会社製ポリエチレンフィルム:商品名ルミラー)対して塗布を行う。塗布後5秒
以内に、磁束密度0.55Tの配向器のコイルの中心に置き、磁場配向させ、そのまま放
置し乾燥させる。
[磁気ヒステリシス曲線(シートB−H曲線)の測定]
フィルムの磁場配向方向がわかるようにプラスチック板を貼り付けて、ポンチなどで打
ち抜いた10mm角の測定ピースを、配向方向と印加磁場方向を合わせてセットし、東英
工業株式会社製のVSM装置(VSM−P7)を使用して、外部磁場795.8kA/m
(10kOe)で、飽和磁束密度Bs(Gauss)、残留磁束密度Br(Gauss)
を測定し、磁場配向方向のSQx(=Br/Bs)を求めた。さらに、磁場配向方向に対
し垂直方向のSQy(=Br/Bs)を測定し、OR(SQx/SQy)を求めた。
(体積基準の累積50%粒径D50
得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末0.15gを、500ppのヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する水50mLに添加し、超音波ホモジナイザーにより2分間分散させて得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を含むスラリーを使用して、このペロブスカイト型複合酸化物粉末の体積基準の累積50%粒径(D50)をマイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをMT3000IIとして)測定した。
(X線回折(XRD)測定)
得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、X線回折装置(リガク社製 試料水平型X線回析装置 Ultima IV)により、X線源としてCu管球を使用して20〜70°/2θの範囲を測定して、X線回折(XRD)測定を行った。このX線回折測定により得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末がX線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在を確認したところ、ピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された(図1を参照)。
下記条件でXRD回折を行い、X線回折パターンを得た。得られたパターンに基づき、サンプルの結晶相を同定した。結晶相の同定には、PDXL2用ICDS(Inorganic Crystal Structure Database)を使用した。また、WPPF(Whole Powder Pattern Fitting)法によりリートベルト解析を行い、得られた酸化物の結晶構造における結晶子サイズDx、格子歪みを算出した。
装置:リガク社製 試料水平型X線回析装置 Ultima IV
計測方法:2θ/θ法
走査:連続走査
X線管球:Cu Kα
X線管球出力:40kV/40mA
発散スリット:1/2°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:8mm
測定範囲:2θ=10〜120°
スキャンスピード:4°/分
測定間隔:0.02°
解析ソフト:リガク社製PDXL
(実施例2)
(1)前駆体の作製
硝酸に酸化ランタンを溶解させた溶液(La濃度:14.83wt%、NO :270g/L)183.04kgと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)29.01kgと、硝酸鉄九水和物(Fe(NO・9HO)106.31kgと、硝酸コバルト六水和物(Co(NO・6HO)19.99kgをそれぞれイオン交換水342kgに溶解させ、これらの溶液の濃度を溶解種の合計で約0.20mol/Lとして混合し、硝酸塩の混合溶液Aを作成した。
また、イオン交換水2250kgと炭酸アンモニウム143.32kgを溶解槽に入れ、撹拌しながら水温を25℃になるよう調整した。この炭酸アンモニウム溶液を、硝酸塩の混合溶液Aに徐々に加えて中和反応を行い、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させた後、この前駆体を30分間熟成させて反応を完了させた。
(2)ろ過・乾燥
このようにして得られた前駆体を濾過した後に水洗し、得られたウエットケーキを直径5mmの細長い円柱形のペレット状に成形した。この成形後直ぐにペレット状の成形体に空気を通風しながら250℃で2時間加熱して乾燥させ、黒色の乾燥粉末を得た。
(3)焼成
焼成には箱型電気炉を使用した。
次に、得られた乾燥粉砕物2000gを角型焼成サヤ(幅300mm、奥行き300mm、高さ80mmの容器)内に入れ、箱型電気炉(ナーバー社製のN200−S)内へセットし、室温から800℃まで昇温速度3.1℃/分、800℃から990℃まで昇温速度2.6℃/分で昇温させ、990℃(焼成温度)で2時間保持して焼成した後、室温まで自然冷却した。
(4)乾式粉砕
乾式粉砕にはインパクトミルを使用した。
得られた焼成物を供給速度200g/分でインパクトミル(ミルシステム株式会社製のピンミルAVIS−150)に投入し、このインパクトミルのロータとステータとの間隙(クリアランス)の最小値を1mmとして、回転数9000rpmで回転するロータとステータとの間を1回通過させる粉砕処理を行って、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、計算モードをHRAとした事以外は実施例1と同様の方法で体積基準の累積50%粒径D50を測定したところ、0.66μmであった。
(実施例3)
実施例2と同様の方法で、乾式粉砕した粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
(1) 湿式粉砕
湿式粉砕にはビーズミル(容量2.7リットル)を使用した。
〈1〉上記乾式粉砕した粉末を19.4kg秤量する。
〈2〉ビーズミルのベッセル内に、直径1.75mmのZrOビーズを5.15kg仕込む。
〈3〉純水を29.1kg秤量し、バッファータンクに投入し、ポンプを用いてビーズミルに循環させる。
〈4〉バッファータンク内の純水を400rpmで撹拌しながら、ここへ、上記秤量した乾式粉砕した粉末を投入する。
〈5〉ビーズミルを1000rpmで回転させ、投入した粉末を340分間粉砕して、湿式粉砕した粉末が含有するスラリーを得た。
〈6〉得られたスラリーをろ過することにより固液分離し、125℃で乾燥させることにより、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、計算モードをHRAとした事以外は実施例1と同様の方法で体積基準の累積50%粒径D50を測定したところ、0.53μmであった。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で焼成物を得た。
(2)湿式粉砕
湿式粉砕にはビーズミル(容量2.7リットル)を使用した。
〈1〉上記焼成物を23.2kg秤量する。
〈2〉ビーズミルのベッセル内に、直径1.00mmのZrOビーズを5.15kg仕込む。
〈3〉純水を32.1kg秤量し、バッファータンクに投入し、ポンプを用いてビーズミルに循環させる。
〈4〉バッファータンク内の純水を400rpmで撹拌しながら、ここへ、上記秤量した乾式粉砕した粉末を投入する。
〈5〉ビーズミルを1000rpmで回転させ、投入した粉末を1800分間粉砕して、湿式粉砕した粉末が含有するスラリーを得た。
〈6〉得られたスラリーをろ過することにより固液分離し、125℃で乾燥させることにより、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法で体積基準の累積50%粒径D50を測定したところ、0.38μmであった。
実施例1の複合酸化物粉末は、焼成温度1300℃で2時間焼成して得られた焼成物をインパクトミル(回転数16000rpm)で乾式粉砕して作製されたものであり、BET比表面積、格子歪み、配向性ORはいずれも本件発明の規定範囲内であった。
実施例2の複合酸化物粉末は、焼成温度990℃と実施例1よりも低くして得られた焼成物を、実施例1よりも回転数を9000rpmと低く設定したインパクトミルで乾式粉砕して作製されたものであり、BET比表面積、格子歪み、配向性ORはいずれも本件発明の規定範囲内であった。
実施例3の複合酸化物粉末は、焼成温度990℃と実施例1よりも低くして得られた焼成物を、実施例1よりも回転数を9000rpmと低く設定したインパクトミルで乾式粉砕し、さらにビーズミルで湿式粉砕して作製されたものであり、実施例1〜3の中ではBET比表面積が最も大きい(粒径が最も小さい)。実施例3の複合酸化物粉末のBET比表面積、格子歪み、配向性ORはいずれも本件発明の規定範囲内であった。
これに対して比較例1の複合酸化物粉末は、実施例1と同様にして焼成温度1300℃で2時間焼成して得られた焼成物を、さらにビーズミルで湿式粉砕して作製されたものであり、BET比表面積が14.8m/gと大きく、また配向性ORが1.72と小さかった。
本発明の複合酸化物粉末は、作業性や取り扱い性、磁気特性に優れ、特に配向性が高いことにより、電気特性を向上させることができ、しかもこれらの優れた特性が長期間にわたって持続する。
1 燃料極
2 固体電解質膜
3 空気極

Claims (4)

  1. ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末であって、
    BET比表面積が14m/g以下で、
    格子歪みが1%以下で、
    磁場配向比ORが1.75以上である
    ことを特徴とする複合酸化物粉末。
  2. 前記複合酸化物粉末の組成式が一般式(1)で示されるものである請求項1記載の複合酸化物粉末。
    ABO ・・・・・・(1)
    (式中、A:La,Sr,Caから選択される一種以上の元素、B:Mn,Co,Fe,Niから選択される一種以上の元素である。)
  3. 前記複合酸化物粉末の組成式が一般式(2)で示されるものである請求項2記載の複合酸化物粉末。
    (La1−xSrCoFe1−y ・・・・・・(2)
    (式中、0.2≦x≦0.5,0.1≦y≦0.6,0.9≦a≦1.1である。)
  4. 燃料極と、固体電解質と、空気極とを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
    前記空気極が、前記請求項1〜3のいずれかに記載の複合酸化物粉末の焼成体で構成されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
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