JP2020050930A - ステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体 - Google Patents

ステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】管端増肉部の隙間構造における耐食性を向上させたステンレス鋼管を提供する。【解決手段】鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有し、前記鋼母材部が、質量%で、C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜5.00%、Mn:0.01〜2.00%、P:≦0.050%、S:≦0.0100%、Cr:9.0〜30.0%、Ti:0.01〜1.00%およびNb:0.01〜1.00%の1種又は2種、Al:0.010〜5.000%、N:0.001〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、前記鋼管部の管端に折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられ、前記管端増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}3(式中のCr、Al及びSiは前記鋼母材部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすステンレス鋼管を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、ステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体に関するものである。
ステンレス鋼は家電製品や電子機器、自動車等の幅広い分野で使用されている。特に自動車分野ではエキゾーストマニホールドからマフラーまで様々な部品で使用されるため、使用されるステンレス鋼には耐熱性や耐食性などが要求される。また、これらの部品は溶接を施される場合がほとんどであるため、溶接部の強度、剛性や耐食性も要求される。
近年、自動車の軽量化を目的として各部品に使用される材料の薄肉化を検討する場合が増加している。しかし、溶接部の強度、剛性および溶接性を確保するためには一定の肉厚が必要となる場合があり、非溶接部においても厚肉となり排気システム全体の薄手化の妨げとなる。これに対して、排気管を構成し、他部品と溶接接合される鋼管端部を増肉することにより溶接箇所を厚肉して強度し、剛性および溶接性を確保する技術が知られている。これを管端増肉と呼ぶ。この場合、非溶接部は薄肉化でき、排気システム全体の薄肉・軽量化が可能となる。
上記のような管端増肉に関する技術はいくつか開示されている。特許文献1には、パイプ端部の強度を確保し、且つパイプの軽量化を図る目的として、パイプを回転させながら端部にローラーを押し当てて径方向内側に折り曲げた後、ローラーによって密着させる加工方法が開示されている。特許文献2には、管端を二重管状に成形し肉厚を倍にすることで溶接時の溶け落ちを防ぐための工法が開示されている。特許文献3には管端を折り返して増肉するために素管に関する特許が開示されており、溶接部の内面ビード部が管内面に突き出しており、その突出量が板厚の4〜15%と規定されている。
特許文献1〜3に記載されている管端増肉されたパイプは、折り曲げられた箇所に高さ数〜数百μmの隙間構造を有することとなる。この隙間部は、特許文献1、2のように内側に折り曲げられた場合は排気系部品内部で発生する排ガス凝縮水が滞留しやすくなり、特許文献3のように外側に折り曲げられた場合は排気系部品外部から付着する塩水が滞留しやすくなる。
この環境で起こる腐食は隙間腐食ではなく、隙間環境で塩水や排ガス凝縮水が滞留しやすくなることにより促進される塩害腐食である。さらに、管端増肉部を拡管または縮管して使用される場合、曲げられた管端増肉部は局所的に非常に隙間間隔の狭い環境となり、腐食環境として非常に厳しいものとなる。
このように隙間部での腐食が促進される恐れがあるため、使用されるステンレス鋼は隙間部での耐塩害性に優れる鋼種が求められる。特に排気系部品は腐食による穴あきは排気ガスの漏れに繋がるため、耐穴あき性の高い材料を適用することが重要となる。
特許文献4には、質量%で、C:0.001〜0.02%、N:0.001〜0.02%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.05〜1%、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:12〜25%、Ti、Nbの1種または2種をTi:0.02〜0.5%、Nb:0.02〜1%の範囲で含み、かつ、Sn:0.005〜2%の範囲で含み、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする耐すきま腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献4に記載の技術では、Snを添加することで耐すきま腐食性を向上させているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
特許文献5には、質量%で、C:≦0.015%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜0.50%、P≦0.050%、S:≦0.0100%、N:≦0.015%、Al:0.020〜0.100%、Cr:10.5〜13.05%を含有し、さらに、Ti:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.30%の1種または2種、Sn:0.03〜0.50%およびSb:0.03〜0.50%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物より成り、式(2)で定義されるA値が15.23以上であることを特徴とする加熱後耐食性に優れた自動車排気系部材用省合金型フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
A=[Cr]+[Si]+0.5[Mn]+10[Al]+15([Sn]+[Sb
]) ・・・式(2)
特許文献5に記載の技術では、Sn、Sbを添加することで加熱後の耐食性を向上させているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
特許文献6には、質量%で、C:≦0.015%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.01〜0.50%、P≦0.050%、S:≦0.010%、N:≦0.015%、Al:0.010〜0.100%、Cr:16.5〜22.5%を含有し、更に、Ti:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.30%の1種または2種を含有し、更に、Sn:0.05〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする加熱後耐食性に優れた自動車排気系部材用省Mo型フェライト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献6に記載の技術では、Snを添加することで加熱後の耐食性を向上させているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
特許文献7には、質量%で、C:≦0.015%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.01〜0.50%、P≦0.050%、S:≦0.010%、N:≦0.015%、Al:0.010〜0.100%、Cr:16.5〜22.5%、Ni:0.5〜2.0%、Sn:0.01〜0.50%を含有し、更に、Ti:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.30%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献7に記載の技術では、排気系部品の加熱後の耐食性について開示しているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
特許文献8には、質量%で、C:0.0150%以下、Si:1.0〜1.5%、Mn:0.15〜1.0%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.0150%以下、Al:0.010〜0.200%、Cr:13.0〜16.0%、およびSn:0.002〜0.050%を含有し、さらにTi:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.50%の1種または2種を含有し、かつ(1)式で定義するA値が0.024以上であることを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
A=[Si]×[Sn]+0.014[Si] −−−−−−−(1)
ここで[Si]、[Sn]は、それぞれSi、Snの質量%としての含有量である。
特許文献8に記載の技術では、排気系部品の加熱後の耐食性について開示しているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
特許文献9には、質量%で、C:0.0150%以下、Si:0.2〜0.7%、Mn:0.2〜0.6%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.0150%以下、Al:0.010〜0.20%、Cr:10.5〜11.5%、Mo:0.02〜0.20%、およびSn:0.005〜0.050%を含有し、さらにTi:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.50%の1種または2種を含有し、かつ(1)式で定義するA値が0.00065%2以上であることを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする耐食性に優れた排気系部材用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
A=[Mo]×[Sn] −−−−−−−(1)
特許文献9に記載の技術では、排気系部品の加熱後の耐食性について開示しているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
特開2010−234406号公報 特開2013−103250号公報 特開2004−255414号公報 特許第4727601号公報 特許第5297713号公報 特許第5320034号公報 特許第5586279号公報 特許第6006660号公報 特開2014−169491号公報
上記のように、従来技術においては管端増肉されたパイプの管端増肉部に形成される隙間構造における耐食性を改善する方法はまだ提案されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、管端増肉部の隙間構造における耐食性を向上させた、ステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有し、
前記鋼母材部が、質量%で、
C:0.001〜0.100%、
Si:0.01〜5.00%、
Mn:0.01〜2.00%、
P:≦0.050%、
S:≦0.0100%、
Cr:9.0〜30.0%、
Ti:0.01〜1.00%およびNb:0.01〜1.00%の1種又は2種、
Al:0.010〜5.000%、
N:0.001〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
前記鋼管部の管端に折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられ、前記管端増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}(式中のCr、Al及びSiは前記鋼母材部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすことを特徴とするステンレス鋼管。
[2] さらに質量%で、
Ni:0.01〜3.00%、
Mo:0.01〜3.00%、
Sn:0.01〜3.00%、
Cu:0.01〜3.00%、
B:0.0001〜0.0100%、
W:0.001〜1.000%、
V:0.001〜1.000%、
Sb:0.001〜0.100%、
Co:0.001〜0.500%、
Ca:0.0001〜0.0050%、
Mg:0.0001〜0.0050%、
Zr:0.0001〜0.0300%、
Ga:0.0001〜0.0100%、
Ta:0.001〜0.050%、
REM:0.001〜0.100%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載のステンレス鋼管。
[3] 前記管端増肉部が、前記鋼管部に対して拡管または縮管されていることを特徴とする[1]または[2]に記載のステンレス鋼管。
[4] [1]乃至[3]の何れか一項に記載のステンレス鋼管からなることを特徴とする管端増肉構造体。
[5] [4]に記載の管端増肉構造体の前記管端増肉部と、鋼管部材とが重ね隅肉溶接部により接合されてなることを特徴とする溶接構造体。
[6] 前記重ね隅肉溶接部の前記管端増肉部側の最大溶け込み深さが、前記鋼管部の肉厚tに対して0.3t〜2.0tの範囲とされていることを特徴とする[5]に記載の溶接構造体。
本発明によれば、管端増肉部の隙間構造において耐食性を向上させた、ステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体を提供できる。
図1は、実施形態のステンレス鋼管(管端増肉構造体)と他の鋼管(鋼管部材)とからなる溶接構造体の一例を示す断面模式図。 図2は、実施形態のステンレス鋼管(管端増肉構造体)と他の鋼管(鋼管部材)とからなる溶接構造体の別の例を示す断面模式図。 図3は、実施形態のステンレス鋼管(管端増肉構造体)と他の鋼管(鋼管部材)とからなる溶接構造体の他の例を示す断面模式図。 図4は、実施形態のステンレス鋼管(管端増肉構造体)と他の鋼管(鋼管部材)とからなる溶接構造体の要部を示す図であって、最大溶け込み深さを説明する断面模式図。 図5は、実施形態のステンレス鋼管(管端増肉構造体)と他の鋼管(鋼管部材)とからなる溶接構造体の要部を示す断面模式図。 図6は、横軸を(2Al+Si)量とし、縦軸を隙間間隔とし、最大孔食深さの評価結果をプロットしたグラフであり、Cr量が11%の場合のd=5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}の曲線を併記した。 図7は、横軸を(2Al+Si)量とし、縦軸を隙間間隔とし、最大孔食深さの評価結果をプロットしたグラフであり、Cr量が13.5%の場合のd=5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}の曲線を併記した。 図8は、横軸を(2Al+Si)量とし、縦軸を隙間間隔とし、最大孔食深さの評価結果をプロットしたグラフであり、Cr量が17%の場合のd=5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}の曲線を併記した。 図9は、横軸を(2Al+Si)量とし、縦軸を隙間間隔とし、最大孔食深さの評価結果をプロットしたグラフであり、Cr量が22%の場合のd=5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}の曲線を併記した。 図10は、横軸を(2Al+Si)量とし、縦軸を隙間間隔とし、最大孔食深さの評価結果をプロットしたグラフであり、Cr量が30%の場合のd=5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}の曲線を併記した。
鋼管の長手方向の一端において、鋼管の端部を径方向外側または径方向内側に折り返すことにより、折り返し曲げ部が形成される。折り返し曲げ部においては、鋼管の肉厚が増肉される。そのため、鋼管の端部に形成された折り返し曲げ部は管端増肉部と呼ばれる。管端増肉部を形成する際には、折り返した端部を鋼管の外周面または内周面に密着させるように加工を施すものの、折り返された端部と鋼管の外周面または内周面との間には僅かな隙間が生じる。
本発明者らは、管端増肉部に生じた隙間の耐食性に関して鋭意検討を行った。その結果、管端増肉加工されて生成した隙間環境では、AlまたはSiを多く含有するステンレス鋼ほど孔食深さが低下することを知見した。またそのAl及びSiの添加効果は特に、Cr含有量の低いステンレス鋼で顕著であることがわかった。そして管端増肉加工されて生成した隙間環境で孔食の成長を抑制するCr、Al及びSi量と、管端増肉構造体の孔食が深く成長する臨界隙間間隔との間に、ある関係があることを見出した。
より具体的に説明すると、管端増肉部の隙間環境を模擬して耐食性を評価する為に、本発明者らは種々の組成の鋼板を作製した。そして、これらの鋼板から管端増肉部を有する鋼管を作製し、JASO−M610−92の自動車部品外観腐食試験方法を100サイクル実施して隙間部の塩害腐食性を評価した。評価には最大孔食深さを用い、最大孔食深さが500μm未満の条件を○、500μm以上の条件を×とした。その結果、図6〜図10に示すように、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}を満たす場合に、最大孔食深さが小さくなることを見出した。
試験後の鋼板表面を観察したところ、Al、Si濃度が高い鋼種は孔食があまり成長しておらず、孔食進展速度が遅いことがわかった。これより母材中のAl及びSiは孔食の成長を抑制することがわかった。特にAlは発生初期の孔食内部でイオンとして溶け出し表面に吸着することで孔食成長の抑制及び再不動態化を促進していると考えられる。Siは孔食内部で酸化物を形成し、孔食成長の抑制及び再不動態化を促進していると考えられる。
なお、本実施形態の管端増肉部の隙間における腐食現象は、従来のすきま腐食とは異なる腐食現象であり、本実施形態の管端増肉部の隙間において生じる腐食現象は、従来のすきま腐食の「すきま」よりも隙間間隔が広い場合における腐食現象であって、従来のすきま腐食とは発生メカニズムが異なるものである。
以下、本実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のステンレス鋼管は、鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有し、前記鋼母材部が、質量%で、C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜5.00%、Mn:0.01〜2.00%、P:≦0.050%、S:≦0.0100%、Cr:9.0〜30.0%、Ti:0.01〜1.00%およびNb:0.01〜1.00%の1種又は2種、Al:0.010〜5.000%、N:0.001〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、前記鋼管部の管端に折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられ、前記管端増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}(式中のCr、Al及びSiは鋼母材部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすステンレス鋼管である。
また、本実施形態のステンレス鋼管は、さらに質量%で、Ni:0.01〜3.00%、Mo:0.01〜3.00%、Sn:0.01〜3.00%、Cu:0.01〜3.00%、B:0.0001〜0.0100%、W:0.001〜1.000%、V:0.001〜1.000%、Sb:0.001〜0.100%、Co:0.001〜0.500%、Ca:0.0001〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.0050%、Zr:0.0001〜0.0300%、Ga:0.0001〜0.0100%、Ta:0.001〜0.050%、REM:0.001〜0.100%の1種または2種以上を含有することが好ましい。
以下に、本実施形態で規定される鋼母材部の化学組成について、さらに詳しく説明する。なお、%は質量%を意味する。
C:0.001〜0.100%
Cは、耐食性、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。そのため、Cの含有量の上限を0.100%以下とする。しかしながら、C量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、C量の下限を0.001%以上とする。C量の好ましい範囲は、0.002〜0.010%である。
Si:0.01〜5.00%
Siは、本実施形態における重要な元素である。Siは、表面に濃縮して腐食発生を抑制するのみならず、母材の腐食速度も低減する非常に有益な元素である。そのため、Siの含有量の下限を0.01%以上とする。ただし、Siの過度な含有は鋼の伸び減少を引き起こし、加工性を低下させるため、Siの含有量の上限を5.00%以下とする。Si量の好ましい範囲は、0.30〜3.00%、より好ましい範囲は0.70〜1.20%である。
Mn:0.01〜2.00%
Mnは、脱酸元素として有用であるが、過剰量のMnを含有させると、耐食性を劣化させる。そのため、Mn量を0.01〜2.00%とする。Mn量の好ましい範囲は、0.05〜1.00%、より好ましい範囲は0.02〜0.50%である。
P:0.050%以下
Pは、加工性・溶接性・耐食性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、P量を0.050%以下とする。P量の好ましい範囲は、0.030%以下である。
S:0.0100%以下
Sは、耐食性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、S量を0.0100%以下とする。S量の好ましい範囲は、0.0070%以下である。
Cr:9.0〜30.0%
Crは、塩害環境での耐食性を確保するために、9.0%以上の含有が必要である。Crの含有量を増加させるほど、耐食性は向上するが、加工性、製造性を低下させる。そのため、Cr量の上限を30.0%以下とする。Cr量の好ましい範囲は、9.5〜25.0%、より好ましい範囲は10.0〜15.0%である。
Ti:0.01〜1.00%およびNb:0.01〜1.00%の1種又は2種
TiおよびNbは、ステンレス鋼の鋭敏化を防止するために、0.01%以上含有する必要がある。ただし、多量の含有は合金コスト増加や鋼中介在物増加による耐食性低下、製造性低下に繋がるため、TiおよびNb量の上限を1.00%とする。TiおよびNb量の好ましい範囲は、0.03〜0.50%、より好ましい範囲は0.10〜0.25%である。
Al:0.010〜5.000%
Alは、本実施形態における重要な元素である。Alは、表面に濃縮して腐食発生を抑制するのみならず、母材の腐食速度も低減する非常に有益な元素である。そのため、Alの含有量の下限を0.010%以上とする。ただし、Alの過度な含有は材料の伸び減少を引き起こし、加工性を低下させるため、Alの含有量の上限を5.000%以下とする。Al量の好ましい範囲は、0.050〜3.000%、より好ましい範囲は0.800〜2.500%である。
N:0.001〜0.050%
Nは、耐孔食性に有用な元素であるが、耐粒界腐食性、加工性を低下させる。そのため、Nの含有量を低く抑える必要がある。そのため、N量の上限を0.050%以下とする。しかしながら、N量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、N量の下限を0.001%以上とする。N量の好ましい範囲は、0.002〜0.020%である。
以上が、本実施形態のステンレス鋼の基本となる化学組成であるが、本実施形態では、更に、次のような元素を必要に応じて含有させることができる。
Ni、Mo、Sn、Cu、B、W、V、Sb、Co、Ca、Mg、Zr、Ga、Ta、REMは、目的に応じて、これらの1種または2種以上が含有されていてもよい。これらの元素の下限は、0%以上、好ましくは0%超である。
Ni:0.01〜3.00%
Niは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。ただし、多量の含有は合金コスト増加に繋がるため、Ni量の上限を3.00%以下とする。Ni量の好ましい範囲は、0.02〜1.00%である。
Mo:0.01〜3.00%
Moは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップに繋がる。そのため、Mo量の上限を3.00%以下とする。Mo量の好ましい範囲は、0.05〜1.00%である。
Sn:0.001〜3.00%
Snは、耐食性を向上させるため、0.001%以上含有することができる。しかし、過剰の含有はコスト増加に繋がる。そのため、Sn量の上限を3.00%以下とする。Sn量の好ましい範囲は、0.005〜1.00%である。
Cu:0.01〜3.00%
Cuは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有はコスト増加に繋がる。そのため、Cu量の上限を3.00%以下とする。Cu量の好ましい範囲は0.02〜1.00%、より望ましい範囲は0.05〜0.09%である。
B:0.0001〜0.0100%
Bは、2次加工性を向上させるのに有用な元素であり、0.0100%以下含有することができる。B量の下限を、安定した効果が得られる0.0001%以上とする。B量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0050%である。
W:0.001〜1.000%
Wは、耐食性を向上させるため、1.000%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、W量の下限を0.001%以上とする。W量の好ましい範囲は、0.005〜0.800%である。
V:0.001〜1.000%
Vは、耐食性を向上させるため、1.000%以下含有することができる。安定した効果を得ためには、V量の下限を0.001%以上とする。V量の好ましい範囲は、0.005〜0.500%である。
Sb:0.001〜0.100%
Sbは、耐全面腐食性を向上させるため、0.100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Sb量の下限を0.001%以上とする。Sb量の好ましい範囲は、0.010〜0.080%である。
Co:0.001〜0.500%
Coは、二次加工性と靭性を向上させるために、0.500%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Co量の下限を0.001%以上とする。Co量の好ましい範囲は、0.010〜0.300%である。
Ca:0.0001〜0.0050%
Caは、脱硫のために含有されるが、過剰に含有すると、水溶性の介在物CaSが生成して耐食性を低下させる。そのため、0.0001〜0.0050%の範囲でCaを含有することができる。Ca量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0030%である。
Mg:0.0001〜0.0050%
Mgは、組織を微細化し、加工性、靭性の向上にも有用である。そのため、0.0050%以下の範囲でMgを含有することができる。安定した効果を得るためには、Mg量の下限を0.0001%以上とする。Mg量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0030%である。
Zr:0.0001〜0.0300%
Zrは、耐食性を向上させるために、0.0300%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Zr量の下限を0.0001%以上とする。Zr量の好ましい範囲は、0.0010〜0.0100%である。
Ga:0.0001〜0.0100%
Gaは、耐食性と耐水素脆化性を向上させるために、0.0100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Ga量の下限を0.0001%以上とする。Ga量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0050%である。
Ta:0.001〜0.050%
Taは、耐食性を向上させるために、0.050%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Ta量の下限を0.001%以上とする。Ta量の好ましい範囲は、0.005〜0.030%である。
REM:0.001〜0.100%
REMは、脱酸効果等を有するので、精練で有用な元素であるため、0.100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、REM量の下限を0.001%以上とする。REM量の好ましい範囲は、0.003〜0.050%である。
ここで、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。REMは、これら希土類元素から選択される1種以上であり、REMの量とは、希土類元素の合計量である。
本実施形態のステンレス鋼管は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不純物には不可避的不純物も含む)からなる。また、以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。本実施形態では、例えばBi、Pb、Se、H等を含有させてもよいが、その場合は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Biは0.01%以下、Pbは0.01%以下、Seは0.01%以下、Hは0.01%以下の1種以上を含有してもよい。
本実施形態のステンレス鋼管は、上記の化学成分を有する鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有する。鋼母材部は、本実施形態の鋼成分を有するステンレス鋼板が管状に成形加工されてなる。溶接部は、管状に成形加工された鋼板の端部同士をERW(抵抗溶接)、レーザー溶接またはTIG溶接(タングステン不活性ガス溶接)等によって溶接されてなる。溶接方法については適宜選択してもよい。また、鋼管のサイズについても用途に応じて決定すればよい。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼管は、鋼管部の端部に、折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられる。管端増肉部はステンレス鋼管の一端に設けられていてもよく、両端に設けられていてもよい。折り返し曲げ部は、鋼管部の端部が径方向外側または径方向内側に折り返されて形成される。折り返し曲げ部においては、鋼管の肉厚が増肉される。このため、折り返し曲げ部を管端増肉部と称する。管端増肉部を形成する際には、折り返した端部を鋼管の外周面または内周面に密着させるように加工を施すものの、折り返された端部と鋼管の外周面または内周面との間には僅かな隙間が形成される。
管端増肉部が備えられたステンレス鋼管は、管端増肉構造体と称してもよい。図1〜3に、ステンレス鋼管の鋼管部の長手方向の一端に形成された管端増肉部を示す。
図1は、ステンレス鋼管1の鋼管部1aの一端に管端増肉部1bが設けられた例である。鋼管部1aの一端において、鋼管部の一部が径方向内側に約180°折り返されて折り返し曲げ部1cが形成されている。折り返し曲げ部1cは鋼管部1aの内周面に接するように曲げられており、折り返し曲げ部1cによって管端増肉部1bが形成されている。管端増肉部1bの肉厚は、鋼管部1aの肉厚に対して、折り返し曲げ部1cの肉厚分だけ増肉されており、鋼管部1aの肉厚のほぼ2倍になっている。管端増肉部1bには、鋼管部1aと折り返し曲げ部1cとの間に隙間1dが形成されている。本実施形態ではこの隙間1dにおける耐食性向上が重要である。
また、図1に示すステンレス鋼管1(管端増肉構造体)には、他の鋼管2が重ね隅肉溶接部3を介して接合されている。ステンレス鋼管1(管端増肉構造体)と他の鋼管2(鋼管部材)とにより溶接構造体Aが形成されている。図1に示すように、ステンレス鋼管1の管端増肉部1bを雄側とし、鋼管2の端部2aを雌側とし、鋼管2の端部2aに管端増肉部1bが挿入されている。そして、管端増肉部1bの外面と鋼管2の端部2aとの間に重ね隅肉溶接部3が形成されている。
図2には、別の例の溶接構造体Bを示す。図2に示す溶接構造体Bは、図1の場合と同様に、ステンレス鋼管1(管端増肉構造体)に、他の鋼管2が重ね隅肉溶接部3を介して接合されているが、図1との違いは、ステンレス鋼管1の管端増肉部1bが鋼管部1aに対して拡管されている点にある。
また、図3には、別の例の溶接構造体Cを示す。図3に示す溶接構造体Cは、図1の場合と同様に、ステンレス鋼管1(管端増肉構造体)に、他の鋼管2が重ね隅肉溶接部3を介して接合されているが、図1との違いは、ステンレス鋼管1の管端増肉部1bが鋼管部1aに対して縮管されている点にある。
なお、図1〜図3に示す溶接構造体A〜Cでは、管端増肉部1bの外周面と他の鋼管2との間において重ね隅肉溶接部3が形成された例を示したが、本実施形態はこれに限らず、管端増肉部1bの内径よりも僅かに小さな外径を有する鋼管を管端増肉部1bの内側に挿入させ、管端増肉部1bの内周面と他の鋼管2との間において重ね隅肉溶接部3を形成させてもよい。
本実施形態のステンレス鋼管1((管端増肉構造体)においては、管端部に存在する隙間1dの間隔d(μm)は、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}(式中のCr、Al及びSiは、鋼母材部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすことにより、管端増肉部の隙間における耐食性を向上させることができる。なお、隙間1dの間隔d(μm)は、鋼管部1aと折り返し曲げ部1cとの間の隙間1dの間隔の最大値をいう。
また、図1〜図3に示す溶接構造体A〜Cにおいては、重ね隅肉溶接部3の管端増肉部1b側の最大溶け込み深さが、鋼管部1の肉厚tに対して0.3t〜2.0tの範囲とされていることが好ましい。最大溶け込み深さを0.3t以上とすることで、重ね隅肉溶接部3の強度が担保されるとともに、隙間1dにおける耐食性をより向上できる。ただし、最大溶接深さが2.0tを超えると、溶接部の形状が不均一となり、強度の低下や耐食性の劣化、排気ガスの漏れなどの様々な不具合に繋がる可能性があるため、上限は2.0t以下にするとよい。
溶け込み深さを0.3t以上とすることで隙間1dにおける耐食性をより向上できる理由は、管端増肉部1bの溶接部形状が安定化して、腐食起点となりうる隙間構造が形成されなくなるためと考えられる。さらに溶け込み深さを1.0t超とすれば管端増肉部1bにおける隙間1dが塞がれ、腐食起点となりうる隙間構造がさらに減少する。これに加え、Al及びSiを鋼中に添加することで、万が一腐食が発生した場合も溶出したAlイオンが溶解表面に吸着し、かつSi酸化物が鋼表面に生成することで鋼母材のさらなる溶出を抑制し、溶接部の耐食性劣化を回避できると考えらえる。
なお、最大溶け込み深さとは、図4に示すように、管端増肉部1bの外周面と、管端増肉部側への重ね隅肉溶接部3の最深部との間隔dとする。
図5には、重ね隅肉溶接部3周辺の拡大図を示す。ステンレス鋼管の鋼管部1aの板厚をtとすると、図5(a)は、最大溶け込み深さが0.3tである場合を示し、図5(b)は、最大溶け込み深さが1.0tの場合を示し、図5(c)は、最大溶け込み深さが2.0tの場合を示し、図5(d)は、最大溶け込み深さが2.0t超の場合を示す。
図5は、管端増肉部1bの外周面側に電極/アークを近づけて溶接を行って重ね隅肉溶接部3が形成された場合を示す。このため、管端増肉部1bの外周面が、電極/アーク側の面となり、管端増肉部1bの内周面が、電極/アーク側の面の反対側の面(裏面)となる。管端増肉部1bの外周面から最大溶け込み部までの距離(深さ)が最大溶け込み深さである。
図5に示されたように、重ね隅肉溶接部3が、管端増肉部1bの内周面に到達していない場合、最大溶け込み深さは2.0t未満である。重ね隅肉溶接部3が、管端増肉部1bの内周面にちょうど到達している場合、最大溶け込み深さは2.0tである。重ね隅肉溶接部3が、管端増肉部1bの内周面に到達し、内周面にも溶融部が存在する場合、最大溶け込み深さは2.0t超である。すなわち、最大溶け込み深さが2.0tを超える場合とは、溶接時の電極/アーク側の面の反対側の面(裏面)に溶融部が存在する場合である。
このような重ね隅肉溶接部を得るためには、特にシールドガスが必要な溶接においては、選ばれたシールドガスが必要となる。特に管端増肉部1bは隙間1dを有しているため、不活性ガスによる適正なシールドが不可欠である。具体的にはArが最も望ましい。COやOを混合する場合は5%以下とすることが望ましい。
本実施形態のステンレス鋼管は、本実施形態で規定される鋼成分を有するステンレス鋼板を素材とするが、ステンレス鋼板の製造方法は、製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗−冷間圧延−焼鈍の各工程よりなり、各工程の製造条件については、特に規定するものでは無い。
製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、転炉溶製し続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、鋳造(連続鋳造)することによりスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。熱間圧延後の焼鈍工程は省略しても良く、酸洗後の冷間圧延は、通常のゼンジミアミル、タンデムミルのいずれで圧延しても良いが、鋼管の曲げ性を考慮するとタンデムミル圧延の方が望ましい。
冷間圧延においては、ロール粗度、ロール径、圧延油、圧延パス回数、圧延速度、圧延温度などは一般的な範囲内で適宜選択すれば良い。冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れても良く、中間および最終焼鈍はバッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも構わない。また、焼鈍の雰囲気は、必要であれば水素ガスあるいは窒素ガスなどの無酸化雰囲気で焼鈍する光輝焼鈍でも大気中で焼鈍しても構わない。
更に、ステンレス鋼板を管状に成形する際は、ステンレス鋼板に潤滑塗装を施してプレス成形を向上させても良い。潤滑塗装膜の種類は適宜選択すれば良い。最終焼鈍後に形状矯正のために調質圧延やレベラーを付与しても構わないが、加工硬化能の低下を招くことから、これらは付与しないことが望ましい。
鋼管の製造方法については、適宜選択すれば良く、溶接方法に限定されずERW(抵抗溶接)、レーザー溶接、TIG溶接(タングステン不活性ガス溶接)等適宜選択すれば良い。また、鋼管のサイズについても用途に応じて決定すれば良い。
ステンレス鋼管の端部に管端増肉部を形成するプロセスは、管端のスピニング加工あるいは鍛造処理が望ましいが、これらの工法についても特に規定するものでは無い。作業能率や寸法精度を考慮すると、スピニング加工の方が望ましい。
また、鋼管部の端部を径方向外側に折り曲げて増肉する場合と、径方向内側に折り曲げて増肉する場合が考えられるが、径方向外側に折り曲げて増肉する場合は、増肉箇所の内径は素管の鋼管部1aの内径と同じになる。一方、径方向内側に折り曲げて増肉する場合は、管端増肉部1bの外径は素管である鋼管部の外径と同じになる。
更に、管端増肉部1bを形成した後、次工程にて拡管または縮管を行う工法を採用してもよい。
次に、管端増肉部を形成したステンレス鋼管(管端増肉構造体)を素材として溶接構造体を製造するには、ステンレス鋼管の管端増肉部と、他の鋼管部材とを溶接により接合する。溶接による接合工程では、溶接部にシールドガスを供給しながら溶接を行うことが好ましい。シールドガスとしては、Arなどの不活性ガスや、COまたはOのいずれか一方又は両方と不活性ガスとの混合ガスなどが挙げられる。混合ガス中のCOとOの量は5.0体積%以下が好ましい。特に溶接方法が、TIG溶接、ミグ溶接、又はマグ溶接の場合、溶接部にシールドガスを供給しながら溶接を行うことが好ましい。一方、溶接方法がレーザー溶接の場合は、シールドガスを供給しなくともよい。
本実施形態のステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体によれば、管端増肉部の隙間における耐腐食性に優れる。これにより、鋼管部の肉厚を小さくすることができ、特に、自動車部品、二輪車用部品として適用する際に鋼管部の薄肉化が可能となり、腐食を防止しつつ部品の軽量化を図ることができ、自動車、二輪車の燃費向上が可能となる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
表1A及び表1Bに示す組成の鋼を溶製し、上記を満たした条件で板厚4mmまで熱間圧延を施した。Cr量は11.0、13.5、17.0、22.0、30.0%の5水準とした。また比較材として、Cr量の下限量の判断用にCr量8.9%の鋼種を含む、各種の鋼板を用意した。得られた鋼板に対して、ショット・酸洗を施した。その後、板厚1.0mmまで冷間圧延を施し、920℃で1分間焼鈍を行い、次いで酸洗を施した。
作製した鋼板から、TIG溶接により直径60mmのステンレス鋼管を作製した。スピニング加工により、鋼管の端部を内側に180°折り返して長さ50mmの管端増肉部を作製した。以上により、直径が60mm、内側に折り返した管端増肉部の長さが50mmである管端増肉構造体を作製した。そして、折り返し部から60mmの長さで管端増肉構造体を切断した。
なお、管端増肉部における隙間部の隙間間隔は、スピニング加工の条件を調整することで種々の値とした。
また、各種の管端増肉構造体とそれぞれ同じ化学成分を有する鋼板を用いて、直径62mmの別の鋼管部材を作製した。そして、管端増肉部の外側に、同じ鋼板から製造された直径62mmの鋼管部材を重ねあわせ、管端増肉部において内径側に折り返した折り返し曲げ部が溶接箇所となるように種々の方法(TIG溶接、ミグ溶接、マグ溶接、又はレーザー溶接)で溶接を行った。以上により、全長が100mmであり、別の鋼管部材と溶接構造体とからなり、重ね隅肉溶接部が管軸方向中央に位置するCCT試験片を作製した。
各種の溶接の際、電流量を調節して溶接部の溶け込み深さを調整し、溶け込み深さの耐食性への影響を調べた。またシールドガスを用いる溶接の場合、様々なシールドガスを用いて溶接を行い、シールドガスの耐食性への影響も調べた。
なお、最大溶け込み深さは、以下の方法により測定した。同一の条件で溶接を施し、CCT試験片を別途、作製した。重ね隅肉溶接部の断面を観察し、重ね隅肉溶接部において、最も深くまで溶解した箇所を最大溶け込み位置とし、その深さを最大溶け込み深さとした。詳細には、管端増肉部の外周面と別の鋼管部材とを重ねあわせ、管端増肉部の外周面側に電極/アークを近づけて溶接を行った。このため、管端増肉部の外周面が、電極/アーク側の面となり、管端増肉部の内周面が、電極/アーク側の面の反対側の面(裏面)となった。管端増肉部の外周面から最大溶け込み位置までの距離(深さ)を最大溶け込み深さとした。
このCCT試験片をJASO−M610−92の自動車部品外観腐食試験方法で評価した。サイクル数を100サイクルとし、試験後に溶接部を切断して管端増肉部を二枚の板に分け、隙間内の最大孔食深さを評価できるようにした。錆落とし後に隙間上下の試験片の孔食深さをそれぞれ10点測定し、最も深い孔食の値を、その鋼種の最大孔食深さとした。最大孔食深さが500μm未満の条件を○、500μm以上の条件を×とした。表2A及び表2Bに、各組成のステンレス鋼を用いて作製した試験片の溶接部の溶け込み深さと、溶接シールドガスと、自動車部品の外観の腐食試験方法(JASO−M610−92)による最大孔食深さ(μm)と、その判定結果を併せて示す。また、図6〜図10に、横軸を(2Al+Si)量とし、縦軸を隙間間隔とし、最大孔食深さの評価結果をプロットしたグラフを示す。図6〜図10には、Cr量毎のd=5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}の曲線を併記した。
表1A〜1B、表2A〜2B及び図6〜図10の結果から、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}を満たす場合に、最大孔食深さが小さくなり、評価が○になることがわかる。
Figure 2020050930
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本発明によれば、耐隙間部塩害性に優れたステンレス鋼管を提供することが可能である。また、本発明を適用した鋼管を、特に自動車、二輪用部品として使用することによって薄肉化が可能となり、効率的な部品製造および燃費向上が可能となる。即ち、本発明は産業上極めて有益である。
A〜C:溶接構造体、1:フェライト系ステンレス鋼管(管端増肉構造体)、1a:鋼管部、1b:管端増肉部、1d:隙間、2:鋼管(鋼管部材)、3:重ね隅肉溶接部。

Claims (6)

  1. 鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有し、
    前記鋼母材部が、質量%で、
    C:0.001〜0.100%、
    Si:0.01〜5.00%、
    Mn:0.01〜2.00%、
    P:≦0.050%、
    S:≦0.0100%、
    Cr:9.0〜30.0%、
    Ti:0.01〜1.00%およびNb:0.01〜1.00%の1種又は2種、
    Al:0.010〜5.000%、
    N:0.001〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
    前記鋼管部の管端に折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられ、前記管端増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧5000/{Cr+9×(2Al+Si)/Cr}(式中のCr、Al及びSiは前記鋼母材部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすことを特徴とするステンレス鋼管。
  2. さらに質量%で、
    Ni:0.01〜3.00%、
    Mo:0.01〜3.00%、
    Sn:0.01〜3.00%、
    Cu:0.01〜3.00%、
    B:0.0001〜0.0100%、
    W:0.001〜1.000%、
    V:0.001〜1.000%、
    Sb:0.001〜0.100%、
    Co:0.001〜0.500%、
    Ca:0.0001〜0.0050%、
    Mg:0.0001〜0.0050%、
    Zr:0.0001〜0.0300%、
    Ga:0.0001〜0.0100%、
    Ta:0.001〜0.050%、
    REM:0.001〜0.100%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼管。
  3. 前記管端増肉部が、前記鋼管部に対して拡管または縮管されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステンレス鋼管。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のステンレス鋼管からなることを特徴とする管端増肉構造体。
  5. 請求項4に記載の管端増肉構造体の前記管端増肉部と、鋼管部材とが重ね隅肉溶接部により接合されてなることを特徴とする溶接構造体。
  6. 前記重ね隅肉溶接部の前記管端増肉部側の最大溶け込み深さが、前記鋼管部の肉厚tに対して0.3t〜2.0tの範囲とされていることを特徴とする請求項5に記載の溶接構造体。
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