JP7156342B2 - 薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板およびこれを用いてなる薄肉管 - Google Patents
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Description
C:0.001~0.015%、
Si:0.01~0.80%、
Mn:0.01~0.40%、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.001~0.010%、
Cr:18.0~24.0%、
Ti:0.010%以下、
Nb:0.05~0.40%、
N:0.001~0.015%、
O:0.0050%以下を含有し、かつ、以下の式(1)を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板。
Al/O<4.0 ・・・(1)
ただし、式(1)中のAl、Oは、各元素の含有量(質量%)を示す。
[2]前記成分組成は、質量%で、さらに、
Ni:0~3.00%、
Mo:0~3.00%、
Cu:0~1.00%、
W:0~0.50%、
Co:0~0.50%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、[1]に記載の薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板。
[3]前記成分組成は、質量%で、さらに、
V:0~0.50%、
Zr:0~0.50%、
REM:0~0.10%、
B:0~0.010%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、[1]または[2]に記載の薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板。
[4]前記[1]~[3]のいずれかに記載の薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板を用いてなる薄肉管。
Cは鋼に不可避的に含まれる元素である。Cの含有量が多いと強度が向上し、少ないと加工性が向上する。配管として適度な強度を得るためには0.001%以上のCの含有が適当である。一方で、0.015%を超えるCの含有は、固溶炭素の増加に加えて、Nb炭窒化物の析出による析出強化により、過度の強度上昇が起こる。本発明において良好な管の加工性を得るためには過度の強度上昇は好ましくないため、0.015%以下のCの含有が適当である。よって、C含有量は0.001~0.015%とした。C含有量は、好ましくは0.002%以上である。また、C含有量は、好ましくは0.010%以下である。
Siは脱酸に有用な元素である。本発明においては鋼中の酸素低減のための重要な元素である。その効果は0.01%以上のSiの含有で得られる。一方で、過剰のSiの含有は、ろう付け処理中にステンレス鋼表面に酸化皮膜を形成し、ろうの広がりを阻害して、ろう付け性を低下させる。Si含有量を0.80%以下とすることで、ろう付け性の低下を抑制しやすくなる。よって、Si含有量は、0.01~0.80%とした。Si含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、Si含有量は、好ましくは0.60%以下である。
Mnは、鋼に不可避的に含まれる元素であり、強度を上昇させる。配管として適度な強度を得るためには、0.01%以上のMnの含有が適当である。一方で、0.40%を超える過剰なMnの含有は、固溶強化による過剰な強度上昇を招き、本発明の良好な管の加工性を得ることが困難となる。よって、Mn含有量は、0.01~0.40%とした。Mn含有量は、好ましくは0.02%以上である。また、Mn含有量は、好ましくは0.20%以下である。
Pは、鋼に不可避的に含まれる元素であり、ステンレス鋼の耐食性を低下させる元素である。よって、Pの含有量は、少ないほど好ましく、0.04%以下とした。P含有量は、好ましくは0.03%以下である。下限については特に限定されるものではないが、過度の脱Pは製造コストの増加を招くので、P含有量の下限は0.01%程度とすることが好適である。
Sは、鋼に不可避的に含まれる元素であるが、0.01%超の含有はCaSやMnSなどの水溶性硫化物の形成が促進され耐食性を低下させる。よって、S含有量は、0.01%以下とした。下限については特に限定されるものではないが、過度の脱Sは製造コストの増加を招くので、S含有量の下限は0.001%程度とすることが好適である。
Alは、脱酸に有用な元素であり、本発明においては鋼中の酸素濃度を低減するための重要な元素である。その効果は、Alの含有量が0.001%以上で得られる。一方で、Alの含有量が0.010%を超えるとろう付け処理の際に表面に酸化皮膜を形成しやすくなり、ろう付け性が低下する。よって、Al含有量は、0.001~0.010%とした。Al含有量は、好ましくは0.005%以下である。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を決定付ける重要な元素である。銅相当の耐食性を得るために18.0%以上のCrの含有が必要である。一方で、過剰のCrの含有は、加工性を低下させるため、24.0%以下のCrの含有が適当である。よって、Cr含有量は、18.0~24.0%とした。Cr含有量は、好ましくは19.0%以上である。また、Cr含有量は、好ましくは23.0%以下である。
Tiは、ろう付け処理の際にステンレス鋼表面に酸化物を形成し、ろう付け性を低下させる元素である。0.010%を超えるTiの含有はろう付け性の低下が顕著となる。よって、Ti含有量は0.010%以下とした。Ti含有量は、好ましくは0.008%以下である。このようにTi含有量の上限を規制するためには、Tiを原料として添加しないだけでは不十分で、溶解原料のTi含有量を厳しく規制する必要がある。溶解原料としてスクラップを用いる場合は、Tiを含有しないスクラップを用いることが好ましい。さらに、出鋼する際の炉の状態を厳しく管理する必要がある。炉内(炉壁)にTi酸化物が残留していると、溶鋼の組成によっては前記Ti酸化物が還元され、溶鋼中に0.010%超のTiが不可避的に含まれてしまう場合がある。炉壁のTi酸化物は、Ti含有鋼(鋼中のTi含有量がおおよそ0.1%以上の鋼)を出鋼する際に生成する。そのため、本発明の成分組成を有する鋼(本発明鋼)を出鋼する際は、Ti含有鋼を出鋼したことが無い炉を使用するか、またはその直前にTiを含有しない鋼(鋼中のTi含有量が0.1%未満の鋼)を出鋼した後に出鋼する必要がある。本発明鋼の出鋼のために毎回新しい炉を使用することは工業上現実的ではないため、本発明鋼の出鋼の直前にはTi含有鋼を出鋼しないこととする。直前の出鋼がTi含有鋼でなければ、鋼中に取り込まれるTi量を0.010%以下に規制することが出来る。よって、Tiを含有しない鋼を出鋼した後に、本発明鋼を出鋼することとする。好ましくは二回以上Tiを含有しない鋼を出鋼した後に、本発明鋼を出鋼する。
Nbは、C、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。その効果は0.05%以上のNbの含有で得られる。一方で、過剰のNbの含有は固溶強化による強度の上昇に加えて、微細なNb炭窒化物の析出による析出強化を引き起こしさらなる強度上昇を招く。0.40%超えのNbの含有で強度の上昇は顕著となるため、Nbの含有量は0.40%以下が適切である。よって、Nb含有量は、0.05~0.40%とした。Nb含有量は、好ましくは0.10%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。また、Nb含有量は、好ましくは0.35%以下であり、より好ましくは、0.30%以下である。
Nは、Cと同様に固溶強化により鋼の強度を上昇させる効果がある。その効果はNの含有量が0.001%以上で得られる。一方で、0.015%を超えるNの含有は、固溶窒素の増加に加えて、Nb炭窒化物の析出による析出強化により、過度の強度上昇が起こる。本発明において良好な管の加工性を得るためには過度の強度上昇は好ましくないため、0.015%以下のNの含有が適当である。よって、N含有量は、0.001~0.015%とした。N含有量は、好ましくは0.002%以上である。また、N含有量は、好ましくは0.010%以下である。
O(酸素)は、溶接の際の溶融池の対流方向に影響を与え、溶接溶け込み性を変化させる元素である。本発明においては、板厚0.6mm以下の造管溶接において、Oの含有量を0.0050%以下とすると、溶接溶け落ちが抑制されることを見出した。これは、溶融池表面の対流方向が外向きに変化したことで深さ方向への溶け込みが抑制されたためと考えられる。よって、O含有量は、0.0050%以下とした。O含有量は、好ましくは0.0040%以下であり、より好ましくは0.0030%以下である。O含有量を低減することで、造管溶接後の管内面での溶接ビードの垂れをより低減でき、良好な溶接部が得られ、より良好な溶接性が得られる。また、過剰のOの低減は脱酸時間増加により製造が困難となるため、O含有量は0.0005%以上が好ましい。
本発明においては薄肉配管の造管溶接性を確保するため、Oを極度に低減している。そのため、鋼中のAlの存在状態としては、一般的なステンレス鋼と比較して酸化物のAlが少なく、固溶Alが多くなっている。固溶Alはろう付け処理の際に表面に酸化皮膜を形成し、ろう付け性を低下させるため、通常であればろう付けに影響を与えない含有量までAlを低減してもろう付け性が不適である場合があった。検討の結果、Oの含有量(質量%)に対するAlの含有量(質量%)の比が4.0未満、すなわちAl/O<4.0の場合に良好なろう付け性が得られることを見出した。よって、Al/O<4.0とした。より好ましくは、Al/O<3.0である。
なお、上記式(1)および不等式中のAl、Oは、それぞれAlの含有量(質量%)、Oの含有量(質量%)を示す。
Niは、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、不動態皮膜が形成できず活性溶解が起こる腐食環境において腐食の進行を抑制する元素である。しかし、3.00%超のNiの含有では、応力腐食割れが発生するため配管には適さない。よって、Niを含有する場合、Ni含有量は0~3.00%とした。Ni含有量は、好ましくは、0.10%以上である。また、Ni含有量は、好ましくは2.00%以下である。
Moは、不動態皮膜の再不動態化を促進し、ステンレス鋼の耐食性を向上する元素である。しかし、Moの含有量が3.00%を超えると強度が増加し、加工性が低下する。よって、Moを含有する場合、Mo含有量は0~3.00%とした。Mo含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、Mo含有量は、好ましくは2.00%以下である。
Cuは、腐食の発生後に腐食個所に析出し、腐食の進展を抑制する元素である。一方で、1.00%を超えるCuの含有は金属Cuの介在物が鋼中に生成し、腐食起点となって発銹性を低下させる。よって、Cuを含有する場合、Cu含有量は0~1.00%とした。Cu含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、Cu含有量は、好ましくは0.80%以下である。
Wは、Moと同様に耐食性を向上する効果がある。しかし、0.50%を超える過剰のWの含有は強度を上昇させ、加工性を低下させる。よって、Wを含有する場合、W含有量は0~0.50%とした。W含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、W含有量は、好ましくは0.40%以下である。
Coは、靭性を向上させる元素である。しかし、0.50%を超えてCoを含有させると加工性が低下する。よって、Coを含有する場合、Co含有量は0~0.50%とした。Co含有量は、好ましくは0.01%以上である。また、Co含有量は、好ましくは0.20%以下である。
Vは、VNを形成することでCr窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。しかし、0.50%を超える過剰なVの含有は、加工性が低下する。よって、Vを含有する場合、V含有量は0~0.50%とした。V含有量は、好ましくは0.01%以上である。また、V含有量は、好ましくは0.30%以下である。
Zrは、C、Nと結合して、鋭敏化を抑制する効果がある。しかし、0.50%を超える過剰のZrの含有は加工性を低下させるうえ、非常に高価な元素であるためコストの増大を招く。よって、Zrを含有する場合、Zr含有量は0~0.50%とした。Zr含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、Zr含有量は0.30%以下である。
REM(希土類金属:Rare Earth Metals)は耐酸化性を向上する元素である。しかし、0.10%を超える過剰のREMの含有は酸洗性などの製造性を低下させるうえ、コストの増大を招く。よって、REMを含有する場合、REM含有量は0~0.10%とした。REM含有量は、好ましくは0.01%以上である。また、REM含有量は、好ましくは0.02%以下である。
Bは二次加工脆性を改善する元素である。しかし、0.010%を超える過剰のBの含有は、固溶強化による加工性低下を引き起こす。よって、Bを含有する場合、B含有量は0~0.010%とした。B含有量は、好ましくは0.001%以上である。また、B含有量は、好ましくは0.008%以下である。
供試材から長さ800mm、直径22mmのパイプを造管した。造管溶接はTIG溶接で行った。溶接条件は、溶接速度800mm/min、溶接電流80Aとし、パイプ内面、外面のいずれもArガスでシールドした。なお、後掲の表1に示すNo.21では、O(酸素)含有量が本発明の範囲外であったため、溶け落ちが発生し、造管できなかった(溶接性評価結果:×)。No.21以外の鋼種については、いずれも造管が可能であり、良好な溶接性が得られた。さらに、No.21以外の鋼種について、造管溶接後の溶接ビード断面を観察したところ、No.4、19の鋼種では、パイプ内面方向に0.05mm以上の溶接ビードの垂れ量が観察された(溶接性評価結果:〇)。なお、前記溶接ビードの垂れ量は、図1に示すように、溶接ビード断面の内面側端部を結んだ直線(直線L)からのパイプ内面方向への溶接ビードの垂れの最大長さである。No.4、19以外の鋼種については、パイプ内面方向に0.05mm以上の溶接ビードの垂れ量が観察されず、溶接ビードの垂れがより低減されたより良好な溶接部が得られた(溶接性評価結果:◎)。この溶接性評価において、溶接性評価結果×を不合格とし、溶接性評価結果〇を合格(溶接性に優れる)、◎を合格(溶接性に特に優れる)と評価した。
供試材から50×50mmの試験片を採取し、JIS Z 3191に準拠したろうのぬれ広がり試験を行った。試験片を水平に置き、試験片の表面中央部にNiろうBNi-1(JIS Z 3265)を0.1g設置し、真空炉でろう付け熱処理を行った。前記真空炉の真空度は10-2Pa、加熱温度は1100℃、均熱時間は10minとした。ろうのろう付け後の直径dbとろう付け前の直径d0を測定し、その比(db/d0)×100をろう広がり率(%)とした。ろう広がり率が130%以上を良好なろう付け性を有する(ろう付け性評価合格)と判断し、それ以外をろう付け性評価不合格と判断した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.001~0.015%、
Si:0.01~0.80%、
Mn:0.01~0.40%、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.001~0.010%、
Cr:18.0~24.0%、
Ti:0.010%以下、
Nb:0.05~0.40%、
N:0.001~0.015%、
O:0.0050%以下を含有し、かつ、以下の式(1)を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板。
Al/O<4.0 ・・・(1)
ただし、式(1)中のAl、Oは、各元素の含有量(質量%)を示す。 - 前記成分組成は、質量%で、さらに、
Ni:0~3.00%、
Mo:0~3.00%、
Cu:0~1.00%、
W:0~0.50%、
Co:0~0.50%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板。 - 前記成分組成は、質量%で、さらに、
V:0~0.50%、
Zr:0~0.50%、
REM:0~0.10%、
B:0~0.010%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板。 - 請求項1~3のいずれかに記載の薄肉管用フェライト系ステンレス鋼板を用いてなる薄肉管。
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