JP5311942B2 - ろう付け用ステンレス鋼 - Google Patents

ろう付け用ステンレス鋼 Download PDF

Info

Publication number
JP5311942B2
JP5311942B2 JP2008232727A JP2008232727A JP5311942B2 JP 5311942 B2 JP5311942 B2 JP 5311942B2 JP 2008232727 A JP2008232727 A JP 2008232727A JP 2008232727 A JP2008232727 A JP 2008232727A JP 5311942 B2 JP5311942 B2 JP 5311942B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
brazing
less
stainless steel
temperature
content
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008232727A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010065278A (ja
Inventor
太一朗 溝口
和加大 原田
宏紀 冨村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Nisshin Co Ltd filed Critical Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Priority to JP2008232727A priority Critical patent/JP5311942B2/ja
Publication of JP2010065278A publication Critical patent/JP2010065278A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5311942B2 publication Critical patent/JP5311942B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、ろう付け温度950〜1200℃でのろう付けに適したフェライト+マルテンサイト複相組織となる成分系のステンレス鋼に関する。
近年、Ni価格の高騰により、種々のステンレス鋼用途において、オーステナイト系ステンレス鋼からフェライト系ステンレス鋼への材料変更が検討される機会が増えている。フェライト系ステンレス鋼は高価なNiを多量に含有するオーステナイト系ステンレス鋼に比べコスト的に有利であることに加え、オーステナイト系鋼種で問題となる応力腐食割れが生じにくいという長所もある。
しかしながら、フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼よりプレス成形性が低い。そのため所望形状の最終製品を作るにあたっては溶接やろう付け等の「接合」に負うところが大きくなりやすい。接合方法のなかでも、溶接については様々な研究が進んでおり、TiやNbの添加によって溶接での鋭敏化防止を図ったフェライト単相ステンレス鋼が多くの用途で使用されている。
一方、ステンレス鋼のろう付け技術については溶接とは異なる難しさがある。すなわち、ステンレス鋼のろう付けには一般にニッケルろうや銅・銅合金ろうなど、ろう付け温度が950〜1200℃程度のろう材が使用される。ろう付けに際しては一般に、ろう材を塗布したステンレス鋼材(部品)を所定形状に重ねた状態として、ろう付け温度に保たれた炉中に装入し、数分から1時間以上保持した後、炉から取り出すという工程を採用することが多い。そのような工程で作られる代表的なろう付け製品として熱交換器(熱交プレート)や自動車排ガス部材などが挙げられる。オーステナイト系ステンレス鋼であれば950〜1200℃といった高温で保持しても結晶粒の粗大化はあまり起こらず、強度・靭性への悪影響も少ない。しかしフェライト系鋼種では結晶粒の粗大化が起こりやすく、強度・靭性を大きく低下させる要因となる。例えば熱交プレートの場合、使用中に付与される応力(水圧等)によって、ろう付け時に粗大化したフェライト結晶粒界で割れが発生するといったトラブルが生じることがある。
特許文献1には、フェライト系ステンレス鋼にNを添加することによりろう付け温度でオーステナイト相を生成させ、それによってフェライト結晶粒の粗大化を抑制する技術が記載されている。
特開平3−277744号公報
特許文献1に示されるような、ろう付け温度でオーステナイト相が生成するフェライト系ステンレス鋼を用いることで、結晶粒粗大化に起因する強度不足は改善される。ところが、発明者らの調査によると、このようなNを添加したステンレス鋼の場合、ろう付け温度や、ろう付け温度からの冷却条件によっては、Cr窒化物が生成して粒界にCr欠乏層が生じ、粒界腐食が生じやすくなる場合があることがわかった。また、ろう付け温度においてフェライト相とオーステナイト相の界面で粒界滑りが生じ、ろう付け中に材料が大きく変形してしまう場合があることも明らかになった。
このように、フェライト相を主体としたステンレス鋼種を用いたろう付けの場合には、材料が高温に曝される時間が短く冷却速度も大きい溶接とは異なり、技術的に難しい未解決の問題が多い。さらに、それらの問題の解決を図る場合には、ろう材とのぬれ性が低下しないように配慮することが肝要である。
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼よりも素材コストが安価であり、ニッケルろうおよび銅・銅合金ろうとのぬれ性が良好であり、「粒界滑りに起因する変形」と「結晶粒粗大化」が同時に顕著に改善される適正なろう付け温度範囲を持ち、粒界腐食に対する抵抗力にも優れるステンレス鋼を提供することを目的とする。
上記目的は、質量%で、C:0.05%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.005%以下、Ni:1〜6%、Cr:18〜24%、N:0.05%以下、Nb:7×(C+N)〜0.7%であり、必要に応じて、Cu:1%以下、Mo:2%以下の1種以上、あるいはさらにTi:0.1%以下、Al:0.1%以下、B:0.01%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式において右辺第1項のT値を950〜1200の範囲で変動させたときに左辺のM値が1〜25となる場合があるように(1)式右辺の各元素の含有量が調整されている、ろう付け用ステンレス鋼によって達成される。
M=−0.22T+34.5Ni+10.5Mn+13.5Cu−17.3Cr−17.3Si−18Mo+475.5 ……(1)
ただし、(1)式右辺の元素記号の箇所にはそれぞれ質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。(1)式右辺に規定される元素のなかでCuとMoは任意元素であるが、CuとMoうち含有しない元素がある場合にはその元素の箇所には0(ゼロ)が代入される。
た、上記のステンレス鋼からなる材料を、下記(2)式および(3)式を満たすろう付け温度TB(℃)でろう付けに供するステンレス鋼材のろう付け方法が開示される。
950≦TB≦1200 ……(2)
1≦−0.22TB+34.5Ni+10.5Mn+13.5Cu−17.3Cr−17.3Si−18Mo+475.5≦25 ……(3)
ただし、(3)式の元素記号の箇所にはそれぞれ質量%で表される当該元素の含有量の値が代入され、CuとMoうち含有しない元素がある場合にはその元素の箇所には0(ゼロ)が代入される。
上記ろう付けに使用するろう材として、例えばJIS Z3265:1998に規定されるニッケルろう、またはJIS Z3262:1998に規定される銅ろうもしくは銅合金ろうを挙げることができる。
本発明によれば、オーステナイト系ステンレス鋼よりも安価なステンレス鋼を用いて、強度、靭性、耐食性を低下させることなく、接合強度が高く、寸法精度に優れた健全なろう付け製品を安定して得ることが可能になる。
本発明では、ろう付け温度においてフェライト相とオーステナイト相を共存させることにより、フェライト結晶粒の粗大化の抑制を図る。詳細な検討の結果、950〜1200℃の温度領域では、フェライト相中にわずか1体積%のオーステナイト相を共存させるだけでフェライト相の結晶粒粗大化が顕著に抑制されることがわかった。すなわち、1体積%以上のオーステナイト相が共存する状態で長時間の加熱を行った場合、フェライト結晶粒は概ね結晶粒度5番以上のサイズが保たれ、粗大化が回避される。
ところが、950〜1200℃という高温域では、フェライト相中に共存するオーステナイト相の体積率が増大すると、フェライト/オーステナイト相境界で粒界滑りが生じやすくなり、これがろう付け中の材料変形を招くという問題が顕在化した。発明者らは詳細な研究の結果、950〜1200℃の温度域では、フェライト+オーステナイト複相組織においてオーステナイト相の体積率を25%以下に抑えると、粒界滑りに起因するろう付け中の材料変形は十分に抑止され、寸法精度においても満足できる健全なろう付け製品が得られることを見出した。
一方、高温でのフェライト相とオーステナイト相の存在割合は、温度によって変動する。本発明で対象とする成分系では、950〜1200℃の温度域では低温ほどオーステナイト相の存在量が多くなる。したがって、950〜1200℃の間に、オーステナイト相の体積率が1〜25%となる温度が存在することが、「結晶粒粗大化」と「粒界滑り」の問題を同時に回避したろう付けを可能にする上で極めて重要となる。
なお、常温の状態では、高温域で生じていたオーステナイト相はマルテンサイト相となって、フェライト+マルテンサイト複相組織を呈する。このような複相組織は強度および靭性に優れるものである。
発明者らは、各合金成分の含有量を後述の範囲で種々変動させた多くの溶製例を用いて、合金成分含有量、950〜1200℃における温度T(℃)、およびT℃でのオーステナイト相の存在量(体積%)の関係を詳細に調査した。その結果、オーステナイト相の存在量に及ぼす影響力の大きい合金元素としてNi、Mn、Cu、Cr、Si、Moを取り上げ、下記(1)式を策定するに至った。
M=−0.22T+34.5Ni+10.5Mn+13.5Cu−17.3Cr−17.3Si−18Mo+475.5 ……(1)
(1)式で定義されるM値は、温度T(ただし950℃≦T≦1200℃)における当該鋼のオーステナイト相の存在量(体積%)に対応する指標である。発明者らは、前記(1)式において右辺第1項のT値を950〜1200の範囲で変動させたときに左辺のM値が1〜25となる場合がある成分組成のステンレス鋼を用いて、これをろう付けに供するとき、(1)式でM値が1〜25となるときのT値をろう付け温度(℃)に設定すれば、実際に「結晶粒粗大化」と「粒界滑り」の問題を同時に回避したろう付けが可能になることを見出した。ただし、各合金成分の含有量は後述の規定範囲内で調整する必要がある。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
以下、各合金成分について説明する。合金元素の含有量における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、その含有量が多くなると、ろう付け温度や、ろう付け温度からの冷却速度によってはCr炭化物の生成を招き、粒界にCr欠乏層を形成して粒界腐食の原因となることがある。種々検討の結果、C含有量は0.05%に制限される。
Siは、脱酸に有効な元素であるが、過剰添加は鋼を硬質化させ加工性低下の原因となる。Si含有量は1%以下とする。
Mnは、オーステナイト生成元素であり、ろう付け温度でオーステナイト相をフェライト相と共存させるために有効である。しかし、過剰なMn添加は耐食性低下の原因となるので、Mn含有量は1%以下とする。
Pは、鋼の靭性を低下させる要因になるので、0.045%以下に制限される。
Sは、孔食の起点となりやすいMnSを形成して耐食性を阻害する元素である。また、ろう付け部の高温割れの要因にもなりやすい。S含有量は0.005%以下に制限される。
Niは、強力なオーステナイト生成元素であり、ろう付け温度でオーステナイト相を存在させる上で本発明では必須の元素である。また、実操業でろう付け温度が高めに振れてフェライト結晶粒が粗大化した場合でも、Ni含有により靱性低下は顕著に抑制される。これらの作用を十分に引き出すためには、Ni含有量は1%以上とすることが必要であり、2%以上とすることがより効果的である。しかし、Niの過剰添加はコスト増を招くのでNi含有量は6%以下とする。
Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり、孔食や隙間腐食などの局部腐食に対する抵抗力の増大をもたらす。熱交プレートや排ガス経路部材をはじめとする種々の耐食用途に適用するためには18%以上(好ましくは18%超え)のCr含有量とすることが望まれる。ただし、Cr含有量が多くなるとC、Nの低減が難しくなり機械的性質や靭性を阻害し、かつコストを増大させる要因となる。本発明ではCr含有量を24%以下とする。
Nは、その含有量が多いと、ろう付け温度や、ろう付け温度からの冷却速度によってはCr窒化物の生成を招き、Cr欠乏層を形成して粒界腐食を引き起こす要因となることがある。N含有量は0.05%以下に制限される。
Nbは、C、Nを固定し、ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するために有効な元素である。発明者らの検討によれば、粒界腐食を十分に抑制するためにはC、N含有量を上述のように規制するとともに、CとNの合計量の7倍以上のNbを添加することが極めて有効である。ただし過剰のNb添加はステンレス鋼を硬質化させ、加工性低下の要因となるので、Nb含有量は0.7%以下とする。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、ろう付け温度でのオーステナイト相の存在量を確保するために有効である。このためCuは必要に応じて添加することができる。その場合、0.05%以上のCu含有量を確保することがより効果的である。ただし多量のCu含有はεCu相の析出を招き耐食性低下の要因となる。Cuを添加する場合は1%以下の範囲で行う。
Moは、Crとの共存により耐食性レベルを向上させるのに有効な元素であり、本発明では必要に応じて添加することができる。その作用を十分に得るには0.05%以上のMo含有量を確保することが効果的であり、0.1%以上とすることがより好ましい。ただしMoは高価な元素であることから、Moを添加する場合は2%以下の範囲で行う。
Tiは、Nbと同様、C、Nを固定する作用を有するので本発明では必要に応じて添加することができる。その作用を十分に得るためには0.01%以上のTi含有量を確保することが効果的である。ただしTi含有量が多くなると、ろう付け中にステンレス鋼表面に酸化皮膜が形成されやすい。この酸化皮膜はニッケルろうや銅・銅合金ろうに対するぬれ性を低下させ、健全なろう付け製品を得る上で支障となる場合がある。検討の結果、Tiを添加する場合は0.1%以下の含有量範囲とすることが重要である。
Alは、脱酸剤として有効な元素であり、またろう付けで酸化したときの耐食性低下を抑制する作用も有するので、本発明では必要に応じて添加することができる。これらの作用を十分に得るためには0.02%以上のAl含有量を確保することが効果的である。しかしTiの酸化皮膜と同様、Alの酸化皮膜はニッケルろう、銅・銅合金ろういずれのろう材に対してもぬれ性が悪く、健全なろう付け製品を得る上で支障となる場合がある。検討の結果、Alを添加する場合は0.1%以下の含有量範囲とすることが重要である。
Bは、微量の添加で高温での粒界強度を向上させ、熱間加工性の向上等に有効である。このため本発明では必要に応じてBを添加することができる。その作用を十分に得るには0.0005%以上のB含有量を確保することが効果的である。しかし過剰のB添加は硼化物の形成を招き、却って高温での変形能を低下させる要因となる。B含有量は0.01%以下に制限される。
その他、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)、V等の元素は、原料のスクラップ、溶製設備の耐火物、炉壁の付着物、スラグ等からステンレス鋼中に混入しやすいが、Ca、Mg、Y、REMは合計0.01%まで、Vは0.1%まで混入が許容される。
以上の化学組成に調整されたステンレス鋼は、高温でフェライト+オーステナイト複相組織となり、常温では高温のオーステナイト相がマルテンサイト相に変態して存在するので、フェライト+マルテンサイト複相組織を呈するものである。ろう付けに供するためのステンレス鋼材料(部品)は、通常のステンレス鋼板製造工程に従って製造されたステンレス鋼板を素材として作られる。
ろう付けは、従来一般的に使用されている設備を用いて行うことができる。ただし、上記本発明のステンレス鋼からなる材料に対しては、下記(2)式および(3)式を満たすろう付け温度TB(℃)でろう付けを行うことによって、「結晶粒粗大化」と「粒界滑り」の問題を同時に回避したろう付けが可能になる。
950≦TB≦1200 ……(2)
1≦−0.22TB+34.5Ni+10.5Mn+13.5Cu−17.3Cr−17.3Si−18Mo+475.5≦25 ……(3)
ただし、(3)式の元素記号の箇所にはそれぞれ質量%で表される当該元素の含有量の値が代入され、CuとMoうち含有しない元素がある場合にはその元素の箇所には0(ゼロ)が代入される。
ろう材は、ろう付け温度が950〜1200℃にある種々のものが使用でき、規格品としては例えばJIS Z3265:1998に規定されるニッケルろう、またはJIS Z3262:1998に規定される銅ろうもしくは銅合金ろうを挙げることができる。
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を溶製し、熱間圧延にて板厚3mmの熱延板を作製した。その後、冷間圧延にて板厚1.0mmとし、仕上焼鈍を1000〜1070℃で行い、酸洗を施すことによって供試材とした。表1中には前記(1)式により算出される各温度T(℃)でのM値を併せて記載してある。
〔ろう材のぬれ性〕
ろう材として表2に示すニッケルろうおよび銅ろうを用意した。いずれもペースト状の市販品である。各供試材から切り出した25mm×25mmの平板の中央部に、ろう材0.1gを5mm×5mmの面積(25mm2)に塗布した試料を作製し、これを水平に保ったまま、実際のろう付け条件を模擬して表2に示すヒートパターンにて真空中で熱処理した。表2中、「炉外空冷」とは、試料を真空容器に入れたままの状態で炉から出して真空容器ごと常温の空気中に放置することを意味する。真空容器中への大気の導入は試料温度が50℃以下になってから行った。
熱処理後の試料についてろうが拡がった面積を測定し、その面積を塗布面積で除することにより「ろう拡がり率」を求めた。この試験においてろう拡がり率が2.0以上であれば、実際のろう付けが十分可能なぬれ性を有していると判断される。したがって、ろう拡がり率が2.0以上のものを○(ぬれ性良好)、2.0未満のものを×(ぬれ性不良)と評価した。
〔適正なろう付け温度範囲〕
「フェライト/オーステナイト相境界の粒界滑りに起因するろう付け中の変形」と、「フェライト結晶粒の粗大化」の問題を両方とも回避できる適正なろう付け温度が950〜1200℃の間に存在するかどうかを評価するために、以下のような熱処理実験を行った(比較鋼No.23、24を除く)。
すなわち、板厚1.0mmの供試材から幅20mm、長さ70mmの試験片を切り出し、図1に示すように試験片の両端10mmを固定し、これを水平に保ったまま真空中でろう付けを模擬した熱処理に供した。熱処理温度は、1200℃、1150℃、1100℃、1050℃、1000℃、950℃の各水準とした。ヒートパターンは、「常温から熱処理温度までの昇温時間;3.5h→熱処理温度での保持時間;30min→炉外空冷」とした。熱処理後に板の変形量(重力による垂下変形量)を図1(b)(c)に示すように測定した。この変形量が10mm未満であれば、多くのろう付け用途において寸法精度上問題のないろう付けが可能と判断される。したがって、変形量10mm未満の場合を合格(耐粒界滑り性;良好)、10mm以上の場合を不合格(耐粒界滑り性;不良)と判定した。
また、上記熱処理後の試験片について、断面の金属組織を光学顕微鏡により観察した。エッチングはフッ酸+硝酸の混酸水溶液で行った。フェライト結晶粒径を切片法により求めた。この結晶粒径が200μm以下であれば、多くの用途におけるろう付け製品において、強度および靭性が阻害されることはないと判断される。したがって、フェライト結晶粒径が200μm以下の場合を合格(耐結晶粒粗大化性;良好)、200μm未満の場合を不合格(耐結晶粒粗大化性;不良)と判定した。
以上の試験により「耐粒界滑り性」と「耐結晶粒粗大化性」の両方がともに合格と判定された温度水準を、「適正なろう付け温度水準」とした。この「適正なろう付け温度水準」を含む温度領域において、「粒界滑り」と「結晶粒粗大化」の問題を同時に回避したろう付けが可能になると評価される。
〔耐粒界腐食性〕
各供試材から25mm×25mmの試験片を切り出し、これを水平に保ったまま真空中でろう付けを模擬した熱処理に供した(比較鋼No.21〜24を除く)。ヒートパターンは表3に示す6通りとした。ステンレス鋼の粒界腐食はCr欠乏層に起因して起きる。冷却速度によってCr欠乏層の生成状況に影響が生じると考えられるため、各熱処理温度につき2通りの冷却速度を採用した。
熱処理後の試験片について、JIS G0571に準じてしゅう酸電解エッチングにより耐粒界腐食性を評価した。上記6通りの全ての条件においてエッチングによる溝状組織が認められないものを○(耐粒界腐食性;良好)、それ以外のものを×(耐粒界腐食性;不良)と評価した。
以上の実験結果を表4に示す。
表4からわかるように、本発明鋼を用いた材料はいずれも、950〜1200℃の間に適正なろう付け温度範囲を持ち、「結晶粒粗大化」と「粒界滑り」の問題を同時に回避したろう付けが可能になると評価される。また、そのような適正なろう付け温度範囲は、表1に示されるM値が1〜25となる温度と良好に対応することが確認された。すなわち、(1)式により、化学組成に応じた適正なろう付け温度を設定することが可能である。また、本発明鋼を用いた材料はろう材のぬれ性が良好であり、耐粒界腐食性も良好であった。
一方、比較鋼21、22は各合金成分の含有量範囲は本発明規定範囲にあるが、(1)式においてT値を950〜1200の範囲で変動させたときにM値が1〜25となる温度範囲が存在しない。このうちNo.21ではオーステナイト相が存在しないために950〜1200℃の範囲で結晶粒が粗大化し、No.22ではオーステナイト相の存在量が多すぎたことにより950〜1200℃の範囲で粒界滑りに起因する変形量が大きかった。No.23はTi含有量が高すぎ、No.24はAl含有量が高すぎたことにより、それぞれろう材のぬれ性に劣った。No.25はN含有量が高すぎ、No.26はC含有量が高すぎたことにより、それぞれろう付け熱処理後の耐粒界腐食性に劣った。
粒界滑りに起因する変形量の評価手法を模式的に示した図。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.005%以下、Ni:1〜6%、Cr:18〜24%、N:0.05%以下、Nb:7×(C+N)〜0.7%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式において右辺第1項のT値を950〜1200の範囲で変動させたときに左辺のM値が1〜25となる場合があるように(1)式右辺の各元素の含有量が調整されている、ろう付け用ステンレス鋼。
    M=−0.22T+34.5Ni+10.5Mn+13.5Cu−17.3Cr−17.3Si−18Mo+475.5 ……(1)
    ただし、(1)式右辺の元素記号の箇所にはそれぞれ質量%で表される当該元素の含有量の値が代入され、ここではCuとMoの箇所にはそれぞれ0(ゼロ)が代入される。
  2. さらにCu:1%以下、Mo:2%以下の1種以上を含有する請求項1に記載のろう付け用ステンレス鋼。
    ただし、(1)式右辺の元素記号の箇所にはそれぞれ質量%で表される当該元素の含有量の値が代入され、CuとMoうち含有しない元素がある場合にはその元素の箇所には0(ゼロ)が代入される。
  3. さらにTi:0.1%以下、Al:0.1%以下、B:0.01%以下の1種以上を含有する請求項1または2に記載のろう付け用ステンレス鋼。
JP2008232727A 2008-09-10 2008-09-10 ろう付け用ステンレス鋼 Active JP5311942B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008232727A JP5311942B2 (ja) 2008-09-10 2008-09-10 ろう付け用ステンレス鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008232727A JP5311942B2 (ja) 2008-09-10 2008-09-10 ろう付け用ステンレス鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010065278A JP2010065278A (ja) 2010-03-25
JP5311942B2 true JP5311942B2 (ja) 2013-10-09

Family

ID=42191109

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008232727A Active JP5311942B2 (ja) 2008-09-10 2008-09-10 ろう付け用ステンレス鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5311942B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5741931B2 (ja) * 2011-05-31 2015-07-01 株式会社ノーリツ 熱交換器
WO2016068291A1 (ja) * 2014-10-31 2016-05-06 新日鐵住金ステンレス株式会社 耐排ガス凝縮水腐食性とろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP6159775B2 (ja) 2014-10-31 2017-07-05 新日鐵住金ステンレス株式会社 耐排ガス凝縮水腐食性とろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP6985940B2 (ja) * 2018-01-09 2021-12-22 山陽特殊製鋼株式会社 造形用のステンレス鋼粉末
JP7385487B2 (ja) 2020-02-10 2023-11-22 日鉄ステンレス株式会社 ステンレス鋼材及び拡散接合体
CN115354243A (zh) * 2022-08-30 2022-11-18 浙江青山钢铁有限公司 一种含铌双相不锈螺纹钢筋及其制造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06102817B2 (ja) * 1990-03-28 1994-12-14 新日本製鐵株式会社 ろう付け後の靭性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP5420292B2 (ja) * 2008-05-12 2014-02-19 日新製鋼株式会社 フェライト系ステンレス鋼

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010065278A (ja) 2010-03-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5420292B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼
JP4803174B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼
KR101564152B1 (ko) 내산화성과 고온 강도가 우수한 고순도 페라이트계 스테인리스 강판 및 그 제조 방법
JP7059357B2 (ja) 二相ステンレスクラッド鋼板およびその製造方法
JP5885884B2 (ja) フェライト系ステンレス熱延鋼板とその製造方法及び鋼帯
WO2012018074A1 (ja) フェライト系ステンレス鋼
TWI546389B (zh) Fat iron stainless steel plate
CN102725432B (zh) 韧性优异的高耐腐蚀性铁素体系不锈钢热轧钢板
JP5311942B2 (ja) ろう付け用ステンレス鋼
JP6037882B2 (ja) 耐スケール剥離性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法
WO2013035588A1 (ja) 二相ステンレス鋼
JP2017206735A (ja) 耐水蒸気酸化性に優れる複相系ステンレス鋼
JP7067998B2 (ja) ステンレス鋼材
JP6442852B2 (ja) 二相ステンレス鋼溶接継手
JP6093063B1 (ja) 加工性に優れた高強度ステンレス鋼材とその製造方法
JP2011021263A (ja) 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板
JP2017053028A (ja) フェライト−マルテンサイト2相ステンレス鋼およびその製造方法
JP2017020054A (ja) ステンレス鋼およびステンレス鋼管
JP6146401B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼板
JP2017128775A (ja) ステンレス鋼およびステンレス鋼管
JP6575650B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼
KR20170029601A (ko) 페라이트계 스테인리스 강판
JP2017101267A (ja) フェライト系ステンレス鋼
JP6146400B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼板
JP6179485B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110906

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130521

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130613

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130702

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130702

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5311942

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250