JP6179485B2 - フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、SUS430と同等以上の耐食性とSUH409Lと同等以上の加工性を持つ、耐食性と加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板に関する。
フェライト系ステンレス鋼は、優れた耐食性を有し、かつ省資源であるため、自動車排気系部品、建材、厨房器具および家電部品等をはじめ、様々な用途に使用されている。
フェライト系ステンレス鋼に含まれる、最も重要な合金元素はCrである。一般的には、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量を増加させると、フェライト系ステンレス鋼の耐食性は向上するが、加工性は低下する。この特徴から、加工性に優れるが耐食性に劣る低Cr系鋼種(代表的な鋼種はSUH409L(日本工業規格 JIS G 4312、11mass%Cr−0.3mass%Ti))および加工性に劣るが耐食性に優れた中Cr系鋼種(代表的な鋼種はSUS430(日本工業規格 JIS G 4305、16mass%Cr))が、用途により使い分けられることが多い。
近年、コンピューターやその周辺機器に用いられる部品への、フェライト系ステンレス鋼の適用が進んでいる。フェライト系ステンレス鋼を適用することにより、長期間にわたってメンテナンスが不要となり、上記部品のライフサイクルコストを削減できる。
しかし、上記部品には複雑な形状を有するものも多く、上記部品に適用されるフェライト系ステンレス鋼は、優れた耐食性のみならず、優れた加工性も同時に有することが必要とされる。
SUS430LX(日本工業規格 JIS G 4305、16mass%Cr−0.2mass%Ti)は優れた耐食性と加工性を兼ね備えている。しかし、SUS430LXは、高純度鋼で製造が難しいという欠点があり汎用的な使用には適していない。
そこで、SUS430と同等以上の優れた耐食性と、SUH409Lと同等以上の優れた加工性とを兼ね備え、汎用的な用途でも好ましく使用可能な、フェライト系ステンレス鋼の開発が望まれている。
フェライト系ステンレス鋼の耐食性および加工性それぞれの向上については、特許文献1や特許文献2に記載がある。
特許文献1には、表面特性および耐食性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献1では、Ti系析出物の形態を制御することにより、耐食性の向上を実現している。
特許文献2には、延性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。フェライト系ステンレス鋼板中のMg系介在物やTi炭硫化物の形態を制御することで、伸びの向上を実現している。
特開2001−288544号公報 特開2001−294990号公報
しかしながら、特許文献1では、耐食性の指標である孔食電位が検討されているが、全伸び、r値などの加工性が検討されていない。また、特許文献2では加工性の指標である全伸びが検討されているが、耐食性が検討されていない。
本発明は、SUS430と同等以上の優れた耐食性と、SUH409Lと同等以上の優れた加工性とを有するフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対し、耐食性および加工性の両者を満足するための総合的な検討を行った。
まず、TiとNbを複合的に添加することで、耐食性を向上させることが可能であることを見出した。この効果は、Ti含有量を0.10%以上0.40%以下かつNb含有量を0.010%以上0.100%以下にすることで得られる。なお、含有量を表す「%」は「質量%」を意味する。
さらに、上記のTiとNbの複合添加による耐食性向上に加え、Cuを0.10%以上0.60%以下の範囲で含有する場合に、フェライト系ステンレス鋼の耐食性が大きく向上することを知見した。
これにより、12.0%以上のCrを含有するフェライト系ステンレス鋼においてもSUS430と同等以上の耐食性が得られることが分かった。
なお、Ti含有量に対するNb含有量の比(Nb/Ti)が0.10以上0.30以下である場合に、特に大きな耐食性向上効果が得られる。
また、Nb含有量を0.010%以上0.100%以下にすることが、フェライト系ステンレス鋼の加工性の向上に有効であることを見出した。Nbはフェライト系ステンレス鋼中に固溶し、この固溶したNbは結晶粒を細粒化する効果を有すると考えられる。結晶粒界近傍の局所的不均一部からは{111}〈001〉方位粒が生成されやすいため、上記のNb添加による結晶粒微細化にともない、再結晶過程において{111}再結晶粒の生成頻度が増加する。そして、{111}再結晶頻度増加にともない、面内異方性を増大するGoss方位({110}〈001〉)粒の生成が抑制されるため、組織の面内異方性が低減され、Elmin(Elの最小値)およびrmin(rの最小値)が向上する。この効果により、15.0%以下のCrを含有するフェライト系ステンレス鋼において、SUH409Lと同等以上の加工性が得られることが分かった。
上述した耐食性、加工性の双方の検討により、SUS430と同等以上の耐食性と、SUH409Lと同等以上の加工性とを有するフェライト系ステンレス鋼を実現するためには、12.0〜15.0%のCrを含有するフェライト系ステンレス鋼において、Ti:0.10〜0.40%、Nb:0.010〜0.100%およびCu:0.10〜0.60%を満たすことが極めて重要であることが判明した。
本発明は、上記知見に立脚するものであり、その要旨構成は次のとおりである。
[1]質量%で、C:0.025%以下、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Al:0.001〜0.100%、Cr:12.0〜15.0%、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.01〜0.80%、Ti:0.10〜0.40%、Nb:0.010〜0.100%およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
[2]Ti含有量およびNb含有量が、下記式(1)を満たすことを特徴とする[1]記載のフェライト系ステンレス鋼板。
0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)における元素記号は、各元素の含有量を意味する。
[3]さらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Co:0.01〜0.50%およびW:0.01〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[4]さらに、質量%でV:0.01〜0.30%、Zr:0.01〜0.30%、B:0.0003〜0.0030%、Mg:0.0005〜0.0030%、Ca:0.0003〜0.0030%、Y:0.001〜0.20%およびREM(希土類金属):0.001〜0.10のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[5]さらに、質量%でSn:0.001〜0.50%およびSb:0.001〜0.50%のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
本発明によれば、耐食性と加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板を提供することができる。具体的には、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、SUS430と同等以上の優れた耐食性と、SUH409Lと同等以上の優れた加工性を有する。
Nb含有量とTi含有量が耐食性に与える影響を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、質量%で、C:0.025%以下、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Al:0.001〜0.100%、Cr:12.0〜15.0%、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.01〜0.80%、Ti:0.10〜0.40%、Nb:0.010〜0.100%およびN:0.020%以下を必須成分として含有する。
まず、本発明で成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、鋼の成分を示す%については、特に断らない限り質量%を意味する。
C:0.025%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。その効果を得る観点からは、C含有量を0.001%以上にすることが好ましい。一方、C含有量が0.025%を超えると、耐食性および加工性が著しく低下する。よって、C含有量は0.025%以下とする。より好ましくは0.015%以下である。さらに望ましくは0.010%以下である。
Si:0.05〜1.00%
Siは脱酸剤として有用な元素である。この効果はSi含有量を0.05%以上にすることで得られる。一方、Si含有量が1.00%を超えると鋼が硬質化して加工性が低下する。従って、Si含有量は0.05〜1.00%の範囲に限定する。より好ましくは0.20〜0.90%の範囲である。さらに好ましくは0.40〜0.85%の範囲である。
Mn:0.05〜1.00%
Mnには、脱酸作用がある。この効果を得る観点からMn含有量を0.05%以上にする。一方、Mn含有量が1.00%を超えるとMnSの析出および粗大化を促して耐食性が低下する。従って、Mn含有量は0.05〜1.00%の範囲に限定する。より好ましくは0.10〜0.40%の範囲である。さらに好ましくは0.20〜0.30%の範囲である。
P:0.040%以下
Pは耐食性を低下させる元素である。また、Pが結晶粒界に偏析することで熱間加工性が低下する。そのため、P含有量は可能な限り低いほうが望ましく、P含有量は0.040%以下とする。好ましくは0.030%以下である。
S:0.030%以下
SはMnと析出物MnSを形成する。このMnSとステンレス鋼母材の界面は孔食の起点となり、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を低下させる。よって、S含有量は低いほうが望ましく、0.030%以下とする。好ましくは0.020%以下である。さらに好ましくは0.010%以下とする。
Al:0.001〜0.100%
Alは脱酸のために有効な元素である。この効果はAl含有量を0.001%以上にすることで得られる。一方、Al含有量が0.100%を超えるとAl系の非金属介在物による表面傷の増加により表面品質が低下する。従って、Al含有量は0.001〜0.100%の範囲に限定する。より好ましくは0.01〜0.08%の範囲である。さらに好ましくは0.02〜0.06%の範囲である。
Cr:12.0〜15.0%
Crはフェライト系ステンレス鋼の耐食性と加工性を決定する重要な元素である。フェライト系ステンレス鋼の耐食性は、Crが鋼表面に不動態皮膜を形成することによって得られる。そのため、Cr含有量を増加させるほど耐食性は向上する。本発明では、Cr含有量を特定の範囲にするとともに、Cu含有量、Ti含有量およびNb含有量も特定の範囲に調整することで、鋼の耐食性を向上させている。SUS430と同等以上の耐食性を得るためには、Cr含有量を12.0%以上にすることが必要である。一方、Cr含有量が増加するに従って、フェライト系ステンレス鋼の加工性は低下する。本発明では、後述するNb添加により加工性を向上させているが、SUH409Lと同等以上の加工性を得るためにはCr含有量を15.0%以下にしなければならない。従って、Cr含有量は12.0%〜15.0%の範囲に限定する。より好ましくは12.5〜14.4%の範囲である。さらに好ましくは13.0〜13.8%の範囲である。
Cu:0.10〜0.60%
Cuには、不動態皮膜が破壊されて活性溶解が起こったフェライト系ステンレス鋼の表面に金属Cuの皮膜を形成し、アノード反応を抑制する効果がある。この効果により、鋼の活性溶解は抑制され、再不動態化が促進される。すなわち、Cuは不動態状態をより安定にしてフェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる。さらに、Cu含有量を特定の範囲に調整するとともに、Ti含有量およびNb含有量を特定の範囲に調整すれば、耐食性向上の相乗効果がある。
これらの効果は、Cuの含有量を0.10%以上にすることにより得られる。一方、Cu含有量が0.60%を超えると、鋼中にCuが析出して、フェライト系ステンレス鋼の加工性が低下するとともに、析出Cuが孔食の起点となり耐食性も低下する。従って、Cu含有量は0.10〜0.60%の範囲に限定する。より好ましくは0.20〜0.50%の範囲である。さらに好ましくは0.30〜0.45%の範囲である。
Ni:0.01〜0.80%
Niは酸によるアノード反応を抑制し、より低いpHでも不動態の維持を可能にする元素である。すなわち、Niは耐隙間腐食性を高める効果があり、活性溶解状態における腐食の進行を顕著に抑制して、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる。
この効果は、Ni含有量を0.01%以上にすることで得られる。一方、Ni含有量が0.80%を超えるとフェライト系ステンレス鋼が硬質化して、その加工性が低下する。従って、Ni含有量は0.01〜0.80%の範囲に限定する。より好ましくは0.10〜0.40%の範囲である。
Ti:0.10〜0.40%
Tiは、CおよびNを固定してCr炭窒化物による鋭敏化を防ぎ、耐食性を向上させる。また、Tiは、後述するNbとの複合効果により、フェライト系ステンレス鋼の耐食性をさらに向上させる。
その効果はTi含有量が0.10%以上で得られる。一方、Ti含有量が0.40%を超えると、フェライト系ステンレス鋼が硬質化し、加工性が低下する。さらに、Ti含有量が0.40%を超えると、Ti系介在物が表面に生成して表面品質が低下する。従って、Ti含有量は0.10〜0.40%の範囲とする。より好ましくは0.15〜0.35%の範囲である。さらに好ましくは0.20〜0.30%の範囲である。
Nb:0.010〜0.100%
Nbは鋼中に固溶し、結晶粒を細粒化する効果を有する。結晶粒界近傍からは{111}〈001〉方位粒が生成されやすいため、Nb添加による結晶粒微細化にともない、結晶過程において{111}再結晶粒の割合が増加する。これにより、面内異方性を増大させて、加工性を低下させるGoss方位({110}〈001〉)粒の生成が抑制され組織の面内異方性が低減する。この結果、Elmin(圧延方向、圧延方向に対して45度方向、圧延方向に直角方向をそれぞれL方向、D方向、C方向として、各方向の伸びの中での最小値)およびrmin(L、D、C各方向のr値の中での最小値)が増加して加工性が向上する。その効果はNb含有量が0.010%以上で得られる。一方、Nb含有量が0.100%を超えるとステンレス鋼板が硬質化して、フェライト系ステンレス鋼の加工性が低下する。従って、Nb含有量は0.010〜0.100%の範囲とする。より好ましくは,0.030〜0.070%の範囲である。
本発明を完成する際に、NbとTiを複合添加することで、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させられることが見出された。その機構は次のように考えられる。フェライト系ステンレス鋼の腐食は孔食と呼ばれる局所的な不動態皮膜の破壊に起因することが知られている。孔食の発生起点としてMnSとステンレス鋼母材との界面に加え、Ti炭窒化物とステンレス鋼母材との界面がある。これはTi炭窒化物が粗大であり、かつ直線的な界面を有するため、その界面においてアノード反応が集中して起こるためである。しかしながら、TiとともにNbを複合添加することにより、Ti炭窒化物の周辺にNb炭窒化物が付着するTi−Nb複合炭窒化物の析出形態をとることとなる。このTi−Nb複合炭窒化物とステンレス鋼母材との界面は、Ti炭窒化物と異なり直線的ではなくなる。すなわち、界面の全長が増大してアノード反応が分散して起こるため、孔食が起こりにくくなり、フェライト系ステンレス鋼の耐食性が向上する。
この効果を発現させ、かつ加工性を良好とするためには、Ti含有量とNb含有量がそれぞれ前述した範囲内にあることが必要である。
より好ましくは、Ti含有量に対するNbの含有量の比(Nb/Ti)を0.10以上0.30以下とする。すなわち、下記式(1)を満たすようにNb含有量およびTi含有量を調整することであり、これにより、フェライト系ステンレス鋼の耐食性がさらに向上する。比(Nb/Ti)の値が0.10以上とすることでTi炭窒化物の周辺へのNb炭窒化物の析出が十分となること、また、0.30以下とすることでNb単独の炭窒化物が析出しにくくなり、Ti−Nb複合炭窒化物が形成されやすくなることによる。
0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)において元素記号は各元素の含有量を意味する。
N:0.020%以下
Nはフェライト系ステンレス鋼中に不可避的に混入する元素である。しかし、N含有量が0.020%を超えると、フェライト系ステンレス鋼の耐食性と加工性が著しく低下する。従って、N含有量は0.020%以下とする。より好ましくは0.015%以下である。
以上、必須成分について説明したが、本発明ではその他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Mo:0.01〜0.30%
Moには、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる効果がある。その効果はMo含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Mo含有量が0.30%を超えるとその効果は飽和し、さらに、加工性が低下する。そのため、Moを添加する場合はMo含有量を0.01〜0.30%とする。より好ましくは0.03〜0.10%である。
Co:0.01〜0.50%
Coは、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる元素である。この効果はCo含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、その含有量が0.50%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、加工性が低下する。そのため、Coを添加する場合、Co含有量は0.01〜0.50%とする。より好ましくは0.03〜0.30%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.10%の範囲である。
W:0.01〜0.50%
Wはフェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる元素である。上記効果を得るためにはW含有量を0.01%以上にすることが好ましい。その含有量が0.50%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、フェライト系ステンレス鋼の加工性が低下する。そのため、Wを添加する場合は、W含有量を0.01〜0.50%とする。より好ましくは、0.03〜0.30%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.10%の範囲である。
V:0.01〜0.30%
Vは、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる元素である。その効果はV含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、その含有量が0.30%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、加工性が悪化する。そこで、Vを添加する場合はV含有量を0.30%以下とする。より好ましくは0.03〜0.20%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.10%以下の範囲である。
Zr:0.01〜0.30%
ZrにはTiやNbと同様にC、Nを固定してCr炭窒化物による鋭敏化を防ぎ耐食性を向上させる効果がある。その効果はZr含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Zr含有量が0.30%を超えるとZrO等が生成して表面傷が生じるので、Zrを添加する場合はZr含有量を0.001〜0.30%とする。より好ましくは、0.03〜0.20%である。
B:0.0003〜0.0030%
Bは熱間加工性や2次加工性を向上させる元素である。Bは、Ti添加鋼への添加が有効であることで知られている。この効果はB含有量が0.0003%以上で得られる.一方、B含有量が0.0030%を超えると加工性が低下する。従って、Bを添加する場合はB含有量を0.0003〜0.0030%の範囲にする。より好ましくは0.0005〜0.0010%の範囲である。
Mg:0.0005〜0.0030%
Mgは、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する。この効果はMg含有量を0.0005%以上にすることで得られる。一方、Mg含有量が0.0030%を超えるとフェライト系ステンレス鋼の靱性が低下して、製造性が低下する。従って、Mgを添加する場合、Mg含有量は0.0005〜0.003%の範囲に限定する。
Ca:0.0003〜0.0030%
Caは、連続鋳造の際に発生しやすいTi系介在物の晶出によるノズルの閉塞を防止するのに有効な成分である。この効果はCa含有量を0.0003%以上で得られる。一方、Ca含有量が0.0030%を超えるとCaSの析出により耐食性が低下する。従って、Caを添加する場合は、Ca含有量は0.0003〜0.0030%の範囲に限定する。より好ましくは、0.0010〜0.0020%の範囲である。
Y:0.001〜0.20%
Yは、溶鋼の粘度減少を減少させ、清浄度を向上させる元素である。この効果はY含有量が0.001%以上で得られる。一方、Y含有量が0.20%を超えるとその効果は飽和し、さらに、加工性が低下する。そこで、Yを添加する場合は、Y含有量は0.001〜0.20%の範囲に限定する。より好ましくは0.001〜0.10%の範囲である。
REM(希土類金属):0.001〜0.10%
REM(希土類金属:La、Ce、Ndなどの原子番号57〜71の元素)は、耐高温酸化性を向上させる元素である。この効果はREM含有量が0.001%以上で得られる。一方、REM含有量が0.10%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、熱間圧延の際に表面欠陥が生じる。そこで、REMを添加する場合はREM含有量を0.001〜0.10%の範囲に限定する。より好ましくは0.005〜0.05%の範囲である。
Sn、Sb:0.001〜0.50%
これらの元素は、圧延時における変形帯生成の促進によるリジング向上に効果的である。この効果はこれらの元素のいずれかの含有量を0.001%以上にすることで得られる。しかし、これらの元素の含有量がそれぞれ0.50%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、加工性が低下する。これらの元素を添加する場合はそれぞれの含有量を0.001〜0.50%とする.より好ましくは,それぞれの含有量が0.003〜0.20%の範囲である。
以上の成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に本発明のフェライト系ステンレス鋼板の好適な製造方法について説明する。上記した成分組成の鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の公知の方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊法により鋼素材(スラブ)とする。この鋼素材を1000℃〜1200℃に加熱後、仕上温度を700℃〜1000℃、巻取温度を500℃〜850℃の条件で、板厚2.0mm〜5.0mmになるように熱間圧延する。こうして作製した熱延板を800℃〜1100℃の温度で焼鈍し酸洗を行い、次に、冷間圧延を行い、700℃〜1000℃の温度で冷延板焼鈍を行う。冷延板焼鈍後には酸洗を行い、スケールを除去する。スケールを除去した冷延板にはスキンパス圧延を行ってもよい。
表1のNo.1〜49に示す組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製した後、鋳造して30kg鋼塊とした。この鋼塊を1050℃の温度に加熱した後、仕上げ温度:900℃で熱間圧延を行い、板厚:5mmの熱延板とした。その後、Ar雰囲気中において1000〜1050℃で1分間の焼鈍を行い、硫酸に浸漬して酸洗を行った後、冷間圧延で板厚:1.0mmの冷延板とした。得られた冷延板は、Ar雰囲気中において900℃で1分間の焼鈍を行い、中性塩電解、硝弗酸浸漬、および硝酸塩電解により酸洗して冷延焼鈍酸洗板を得た。
また、表1のNo.50に示す組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製した後、鋳造して30kg鋼塊とした。この鋼塊を1050℃の温度に加熱した後、仕上げ温度:900℃で熱間圧延を行い、板厚:5mmの熱延板とした。その後、大気中において800〜850℃で12時間の焼鈍を行い、硫酸に浸漬して酸洗を行った後、冷間圧延で板厚:1.0mmの冷延板とした。得られた冷延板は、Ar雰囲気中において800℃で1分間の焼鈍を行い、中性塩電解、硝弗酸浸漬、および硝酸塩電解により酸洗して冷延焼鈍酸洗板を得た。
なお、表1の試験No.49、50はそれぞれSUH409L相当鋼、SUS430相当鋼である。
以上の製造条件で得られたフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍酸洗板を、せん断加工により80×60mmに切出した。切り出し後、アセトンによる脱脂を行い、エメリー研磨紙で600番まで研磨した。得られた鋼板の端部をシールし、傾き:60°でサイクル腐食試験機に配置し、JASO M 609−91に準拠したサイクル腐食試験を30サイクル行い、耐食性を評価した。試験後、鋼表面の発銹面積率が30%未満であるものを「○」(合格:特に優れている)、30%以上50%未満であるものを「□」(合格)、50%以上であるものを「▲」(不合格)と評価した。さらに,JIS Z 2201に規定される13B号試験片を、圧延方向、圧延方向に対して45度方向、および圧延方向に対して直角方向に採取し、常温で引張試験を行い加工性を評価した。Elminが32%以上かつrminが1.0以上であるものを「○」(合格)、Elminが32%未満あるいはrminが1.0未満であるものを「▲」(不合格)とした。
得られた結果を表1に示す.発明鋼は耐食性の評価が「○」あるいは「□」であり、かつ、加工性の評価が「○」であり、耐食性および加工性に優れることが分かる。さらに、本発明例の結果、およびNb含有量またはTi含有量が本発明範囲を外れる比較例の結果について、図1にまとめた。図1に示すようにTiおよびNbの含有量が式(1)を満たす場合に、より良好な耐食性を有することが分かる。
試験No.34、36、38、40、41の比較例は、それぞれCr、Ni、Cu、Tiの含有量が本発明の成分範囲よりも低いため、耐食性が劣っている。試験No.35、37、39、42、43、46、47の比較例は、それぞれCr、Ni、Cu、Ti、Nbの含有量が本発明の成分範囲よりも高いため、加工性が劣っている。試験No.44、45の比較例は、Nbの含有量が本発明の成分範囲よりも低いため、耐食性、加工性がともに劣っている。試験No.48の比較例は、Cの含有量が本発明の成分範囲よりも高いため、耐食性、加工性がともに劣っている。
Figure 0006179485
本発明によれば、耐食性と加工性に優れるので、エレベーターの内板をはじめとして、インテリア、ダクトフード、マフラーカッタ、ロッカー、家電製品用部品、事務用品用部品、自動車内装用部品、自動車排気用配管、建材、および排水溝の蓋などの用途に対して好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.025%以下、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Al:0.001〜0.100%、Cr:12.0〜15.0%、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.01〜0.80%、Ti:0.10〜0.40%、Nb:0.010〜0.100%およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    Ti含有量およびNb含有量が、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
    0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
    式(1)における元素記号は、各元素の含有量を意味する。
  2. さらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Co:0.01〜0.50%およびW:0.01〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  3. さらに、質量%でV:0.01〜0.30%、Zr:0.01〜0.30%、B:0.0003〜0.0030%、Mg:0.0005〜0.0030%、Ca:0.0003〜0.0030%、Y:0.001〜0.20%およびREM(希土類金属):0.001〜0.10のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  4. さらに、質量%でSn:0.001〜0.50%およびSb:0.001〜0.50%のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
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