JP6179485B2 - フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)における元素記号は、各元素の含有量を意味する。
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素である。その効果を得る観点からは、C含有量を0.001%以上にすることが好ましい。一方、C含有量が0.025%を超えると、耐食性および加工性が著しく低下する。よって、C含有量は0.025%以下とする。より好ましくは0.015%以下である。さらに望ましくは0.010%以下である。
Siは脱酸剤として有用な元素である。この効果はSi含有量を0.05%以上にすることで得られる。一方、Si含有量が1.00%を超えると鋼が硬質化して加工性が低下する。従って、Si含有量は0.05〜1.00%の範囲に限定する。より好ましくは0.20〜0.90%の範囲である。さらに好ましくは0.40〜0.85%の範囲である。
Mnには、脱酸作用がある。この効果を得る観点からMn含有量を0.05%以上にする。一方、Mn含有量が1.00%を超えるとMnSの析出および粗大化を促して耐食性が低下する。従って、Mn含有量は0.05〜1.00%の範囲に限定する。より好ましくは0.10〜0.40%の範囲である。さらに好ましくは0.20〜0.30%の範囲である。
Pは耐食性を低下させる元素である。また、Pが結晶粒界に偏析することで熱間加工性が低下する。そのため、P含有量は可能な限り低いほうが望ましく、P含有量は0.040%以下とする。好ましくは0.030%以下である。
SはMnと析出物MnSを形成する。このMnSとステンレス鋼母材の界面は孔食の起点となり、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を低下させる。よって、S含有量は低いほうが望ましく、0.030%以下とする。好ましくは0.020%以下である。さらに好ましくは0.010%以下とする。
Alは脱酸のために有効な元素である。この効果はAl含有量を0.001%以上にすることで得られる。一方、Al含有量が0.100%を超えるとAl系の非金属介在物による表面傷の増加により表面品質が低下する。従って、Al含有量は0.001〜0.100%の範囲に限定する。より好ましくは0.01〜0.08%の範囲である。さらに好ましくは0.02〜0.06%の範囲である。
Crはフェライト系ステンレス鋼の耐食性と加工性を決定する重要な元素である。フェライト系ステンレス鋼の耐食性は、Crが鋼表面に不動態皮膜を形成することによって得られる。そのため、Cr含有量を増加させるほど耐食性は向上する。本発明では、Cr含有量を特定の範囲にするとともに、Cu含有量、Ti含有量およびNb含有量も特定の範囲に調整することで、鋼の耐食性を向上させている。SUS430と同等以上の耐食性を得るためには、Cr含有量を12.0%以上にすることが必要である。一方、Cr含有量が増加するに従って、フェライト系ステンレス鋼の加工性は低下する。本発明では、後述するNb添加により加工性を向上させているが、SUH409Lと同等以上の加工性を得るためにはCr含有量を15.0%以下にしなければならない。従って、Cr含有量は12.0%〜15.0%の範囲に限定する。より好ましくは12.5〜14.4%の範囲である。さらに好ましくは13.0〜13.8%の範囲である。
Cuには、不動態皮膜が破壊されて活性溶解が起こったフェライト系ステンレス鋼の表面に金属Cuの皮膜を形成し、アノード反応を抑制する効果がある。この効果により、鋼の活性溶解は抑制され、再不動態化が促進される。すなわち、Cuは不動態状態をより安定にしてフェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる。さらに、Cu含有量を特定の範囲に調整するとともに、Ti含有量およびNb含有量を特定の範囲に調整すれば、耐食性向上の相乗効果がある。
Niは酸によるアノード反応を抑制し、より低いpHでも不動態の維持を可能にする元素である。すなわち、Niは耐隙間腐食性を高める効果があり、活性溶解状態における腐食の進行を顕著に抑制して、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる。
Tiは、CおよびNを固定してCr炭窒化物による鋭敏化を防ぎ、耐食性を向上させる。また、Tiは、後述するNbとの複合効果により、フェライト系ステンレス鋼の耐食性をさらに向上させる。
Nbは鋼中に固溶し、結晶粒を細粒化する効果を有する。結晶粒界近傍からは{111}〈001〉方位粒が生成されやすいため、Nb添加による結晶粒微細化にともない、結晶過程において{111}再結晶粒の割合が増加する。これにより、面内異方性を増大させて、加工性を低下させるGoss方位({110}〈001〉)粒の生成が抑制され組織の面内異方性が低減する。この結果、Elmin(圧延方向、圧延方向に対して45度方向、圧延方向に直角方向をそれぞれL方向、D方向、C方向として、各方向の伸びの中での最小値)およびrmin(L、D、C各方向のr値の中での最小値)が増加して加工性が向上する。その効果はNb含有量が0.010%以上で得られる。一方、Nb含有量が0.100%を超えるとステンレス鋼板が硬質化して、フェライト系ステンレス鋼の加工性が低下する。従って、Nb含有量は0.010〜0.100%の範囲とする。より好ましくは,0.030〜0.070%の範囲である。
0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)において元素記号は各元素の含有量を意味する。
Nはフェライト系ステンレス鋼中に不可避的に混入する元素である。しかし、N含有量が0.020%を超えると、フェライト系ステンレス鋼の耐食性と加工性が著しく低下する。従って、N含有量は0.020%以下とする。より好ましくは0.015%以下である。
Moには、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる効果がある。その効果はMo含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Mo含有量が0.30%を超えるとその効果は飽和し、さらに、加工性が低下する。そのため、Moを添加する場合はMo含有量を0.01〜0.30%とする。より好ましくは0.03〜0.10%である。
Coは、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる元素である。この効果はCo含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、その含有量が0.50%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、加工性が低下する。そのため、Coを添加する場合、Co含有量は0.01〜0.50%とする。より好ましくは0.03〜0.30%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.10%の範囲である。
Wはフェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる元素である。上記効果を得るためにはW含有量を0.01%以上にすることが好ましい。その含有量が0.50%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、フェライト系ステンレス鋼の加工性が低下する。そのため、Wを添加する場合は、W含有量を0.01〜0.50%とする。より好ましくは、0.03〜0.30%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.10%の範囲である。
Vは、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性を向上させる元素である。その効果はV含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、その含有量が0.30%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、加工性が悪化する。そこで、Vを添加する場合はV含有量を0.30%以下とする。より好ましくは0.03〜0.20%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.10%以下の範囲である。
ZrにはTiやNbと同様にC、Nを固定してCr炭窒化物による鋭敏化を防ぎ耐食性を向上させる効果がある。その効果はZr含有量を0.01%以上にすることで得られる。しかし、Zr含有量が0.30%を超えるとZrO2等が生成して表面傷が生じるので、Zrを添加する場合はZr含有量を0.001〜0.30%とする。より好ましくは、0.03〜0.20%である。
Bは熱間加工性や2次加工性を向上させる元素である。Bは、Ti添加鋼への添加が有効であることで知られている。この効果はB含有量が0.0003%以上で得られる.一方、B含有量が0.0030%を超えると加工性が低下する。従って、Bを添加する場合はB含有量を0.0003〜0.0030%の範囲にする。より好ましくは0.0005〜0.0010%の範囲である。
Mgは、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する。この効果はMg含有量を0.0005%以上にすることで得られる。一方、Mg含有量が0.0030%を超えるとフェライト系ステンレス鋼の靱性が低下して、製造性が低下する。従って、Mgを添加する場合、Mg含有量は0.0005〜0.003%の範囲に限定する。
Caは、連続鋳造の際に発生しやすいTi系介在物の晶出によるノズルの閉塞を防止するのに有効な成分である。この効果はCa含有量を0.0003%以上で得られる。一方、Ca含有量が0.0030%を超えるとCaSの析出により耐食性が低下する。従って、Caを添加する場合は、Ca含有量は0.0003〜0.0030%の範囲に限定する。より好ましくは、0.0010〜0.0020%の範囲である。
Yは、溶鋼の粘度減少を減少させ、清浄度を向上させる元素である。この効果はY含有量が0.001%以上で得られる。一方、Y含有量が0.20%を超えるとその効果は飽和し、さらに、加工性が低下する。そこで、Yを添加する場合は、Y含有量は0.001〜0.20%の範囲に限定する。より好ましくは0.001〜0.10%の範囲である。
REM(希土類金属:La、Ce、Ndなどの原子番号57〜71の元素)は、耐高温酸化性を向上させる元素である。この効果はREM含有量が0.001%以上で得られる。一方、REM含有量が0.10%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、熱間圧延の際に表面欠陥が生じる。そこで、REMを添加する場合はREM含有量を0.001〜0.10%の範囲に限定する。より好ましくは0.005〜0.05%の範囲である。
これらの元素は、圧延時における変形帯生成の促進によるリジング向上に効果的である。この効果はこれらの元素のいずれかの含有量を0.001%以上にすることで得られる。しかし、これらの元素の含有量がそれぞれ0.50%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、加工性が低下する。これらの元素を添加する場合はそれぞれの含有量を0.001〜0.50%とする.より好ましくは,それぞれの含有量が0.003〜0.20%の範囲である。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.025%以下、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Al:0.001〜0.100%、Cr:12.0〜15.0%、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.01〜0.80%、Ti:0.10〜0.40%、Nb:0.010〜0.100%およびN:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
Ti含有量およびNb含有量が、下記式(1)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
0.10≦Nb/Ti≦0.30 (1)
式(1)における元素記号は、各元素の含有量を意味する。 - さらに、質量%で、Mo:0.01〜0.30%、Co:0.01〜0.50%およびW:0.01〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
- さらに、質量%でV:0.01〜0.30%、Zr:0.01〜0.30%、B:0.0003〜0.0030%、Mg:0.0005〜0.0030%、Ca:0.0003〜0.0030%、Y:0.001〜0.20%およびREM(希土類金属):0.001〜0.10%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
- さらに、質量%でSn:0.001〜0.50%およびSb:0.001〜0.50%のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。
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