JP2020164937A - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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一成 今川
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Abstract

【課題】鋼成分中のCrおよびMoの添加量を低減しつつ、高い強度を有するとともに優れた耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】フェライト系ステンレス鋼は、質量%で、Si:1.4%以上2.0%以下、Cr:18.0%以上21.0%以下、およびMo:0.3%以上1.0%以下を含有し、フェライト系ステンレス鋼の表面に存在する、平面視したときの長軸が5μm以上の大きさを有する被さりが、フェライト系ステンレス鋼の表面0.01mm2あたり平均5個以下である。【選択図】図1

Description

本発明はフェライト系ステンレス鋼に関する。より詳しくは、耐食性に優れるとともに高い強度を有するフェライト系ステンレス鋼に関する。
従来、ステンレス鋼は、耐食性が要求される用途に供される製品の素材として好適に用いられる。ステンレス鋼を成形および加工して製造される製品は、溶接部や組み立て構造の接合部にすき間が生じることがあり、製品の耐食性を向上させる上では、優れた耐すき間腐食性を有するステンレス鋼を素材として用いることが求められる。例えば、特許文献1〜4には、鋼成分組成を調整することにより耐すき間腐食性を向上させたフェライト系ステンレス鋼が記載されている。
ところで、製品の低コスト化のために、製品を構成する各種部材の薄肉化および軽量化が試みられる場合がある。この場合、(i)製品の構造を保持するために部材の強度を高めることが求められる。加えて、(ii)例えば孔食が生じた部分において部材の厚さに対する孔食深さの比率が高まることから、部材の耐食性の向上も求められる。つまり、製品の素材として用いられるステンレス鋼の高強度化および耐食性の向上が要望される。
また、高耐食性のフェライト系ステンレス鋼として、例えばSUS445J1(22Cr−1Mo)が知られている。そして、製品の低コスト化のために、良好な耐食性および強度を確保しつつ、SUS445J1よりも鋼成分中のCr量およびMo量を低減する技術が提案されている(例えば、特許文献5)。
特開2007−270226号公報 特開2008−231542号公報 特開2005−220429号公報 特開2005−89828号公報 特許第6399666号公報
上記特許文献1〜4に記載の技術では、フェライト系ステンレス鋼の強度については検討されておらず、優れた耐すき間腐食性と高強度とを両立させたフェライト系ステンレス鋼について検討の余地がある。また、特許文献5に記載の技術において、耐食性の更なる向上が望まれる。
本発明の一態様は、このような現状に鑑み、鋼成分中のCrおよびMoの添加量を低減しつつ、高強度かつ優れた耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、Si:1.4%以上2.0%以下、Cr:18.0%以上21.0%以下、およびMo:0.3%以上1.0%以下を含有し、フェライト系ステンレス鋼の表面から延出し、当該表面の一部を覆う様に存在しており、平面視したときの長軸が5μm以上の大きさを有する表面欠陥が、前記表面0.01mmあたり平均5個以下であることを特徴としている。
また、本発明の一様態に係るフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.03%以下、Mn:1.0%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ni:0.5%以上2.0%以下、Cu:2.0%以下、N:0.030%以下、TiおよびNbの少なくとも1種を合計で10(C+N)%以上0.7%以下、Al:0.15%以下、およびB:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成であってもよい。
また、本発明の一様態に係るフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、V、W、およびCoの少なくとも1種を合計で0.50%以下、並びに、REMおよびCaの少なくとも1種を合計で0.1%以下含む成分組成であってもよい。
本発明の一態様によれば、鋼成分中のCrおよびMoの添加量を低減しつつ、高い強度を有するとともに優れた耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供することができる。
本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼の表面を示す顕微鏡写真である。 フェライト系ステンレス鋼の不動態皮膜中のCrに関するGDS測定結果を示す図であって、(a)〜(c)はそれぞれ、酸洗処理にソルトバスを用いた本発明例の焼鈍酸洗板、従来法による比較例の焼鈍酸洗板、および表面に研磨処理を施した参考例の研磨材について、縦軸をCrの任意強度、横軸を時間として示すグラフである。 従来法により得られた焼鈍酸洗板の表面を示す顕微鏡写真である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものでは無い。また、本出願において、「A〜B」とは、A以上B以下であることを示している。
また、本明細書において、「ステンレス鋼」との用語は、具体的な形状が限定されないステンレス鋼材を意味する。このステンレス鋼材としては、例えば、鋼板、鋼管、条鋼、等が挙げられる。
本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼について、フェライト系ステンレス鋼板を例示して以下に説明する。一般に、フェライト系ステンレス鋼板は、概して、溶製、鋳造、熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延、焼鈍、および酸洗、の各工程がこの順に行われて製造される。
本発明者らは、CrおよびMoの添加量を低減するとともにSiを適量添加し、かつ室温でフェライト相を維持するように成分組成を調整することにより、低コストであり高強度および高耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼板の製造を試行した。具体的には、後述するような成分組成に調整したスラブを用いて、一般的な製造方法によりフェライト系ステンレス鋼板を製造した。
これにより得られたフェライト系ステンレス鋼板は、成分組成から想定される耐食性よりも、実際の耐食性が劣るということがわかった。本発明者らは、鋭意検討を行い、焼鈍および酸洗を施した後の焼鈍酸洗板の表面状態について以下の知見を見出した。
すなわち、上記焼鈍酸洗板は、例えば顕微鏡で200倍程度に拡大して表面観察をすると、フェライト系ステンレス鋼の表面から延出し、当該表面の一部を覆う表面欠陥が存在した。図3は、上記焼鈍酸洗板の表面を示す顕微鏡写真である。
図3に示すように、表面欠陥10は、焼鈍酸洗板(フェライト系ステンレス鋼板)の表面の一部を覆うように形成されており、換言すれば、フェライト系ステンレス鋼の表面の一部に被さるように形成されている。表面欠陥10は、フェライト系ステンレス鋼の表面の一部に対してすき間を有するように覆い被さる延出部11と、該延出部がフェライト系ステンレス鋼の表面素地から延出する始端部(接続部)12とを有している。そして、延出部11は、フェライト系ステンレス鋼板の表面素地と同一の成分からなる。
このような表面欠陥10は、以下のように生成したと考えられる。すなわち、酸洗処理によってスケールが除去されるに際して、フェライト系ステンレス鋼板の表面素地も一部溶解する。この溶解反応が、上記延出部11が残存するような形で進行する、すなわち上記延出部11とフェライト系ステンレス鋼板の素地との間にすき間を形成するように進行する。このようにして、酸洗処理後の上記焼鈍酸洗板に上記表面欠陥10が生成する。
このような表面欠陥(被さり)10においては、延出部11とフェライト系ステンレス鋼板の表面素地との間にすき間を有している。そのため、上記焼鈍酸洗板は、表面欠陥10に起因してすき間腐食が発生し得る。それゆえ、上述のように上記焼鈍酸洗板における実際の耐食性が劣化するということがわかった。
そこで、本発明者らは、上記表面欠陥の中でも、長軸の長さが5μm以上であるような比較的大きい表面欠陥の数を減少させることにより、すき間腐食の発生を抑制し、フェライト系ステンレス鋼板の耐食性を向上させることを試みた。その結果、詳しくは後述するように、適切な酸洗工程の条件を見出し、本願発明を実現した。
なお、表面欠陥10の長軸を図3にて示せば、Lである。表面欠陥10における延出部11は歪な形状にて生成し得るので、例えば、延出部11の外縁に沿って近似図形(楕円や閉曲線)を描画し、その近似図形に基づいて長軸Lの長さを求めることができる。
〔フェライト系ステンレス鋼の表面状態〕
図1は、本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼板(フェライト系ステンレス鋼)の表面を示す顕微鏡写真である。
本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼板(以下、本フェライト系ステンレス鋼板と称する)は、平面視したときの長軸が5μm以上の大きさを有する表面欠陥(以下、特定表面欠陥と称する)が、前記表面0.01mmあたり平均5個以下である。これにより、本フェライト系ステンレス鋼板は、表面欠陥とフェライト系ステンレス鋼の表面とのすき間におけるすき間腐食の発生が抑制され、耐食性が向上する。
本フェライト系ステンレス鋼板の表面に存在する特定表面欠陥の数を計測する範囲である0.01mmは、例えば、100μm×100μmの正方形の範囲であってよい。
本フェライト系ステンレス鋼板における、特定表面欠陥の数を計測する部位は、任意に選択された部位であってよく、特に限定されない。例えば、本フェライト系ステンレス鋼板の表面における任意の部位を10点計測し、計測結果を平均する。これにより、当該フェライト系ステンレス鋼板の表面0.01mmあたりにおける特定表面欠陥の平均個数を推定できる。上記のような特定表面欠陥の計測は、例えば、光学顕微鏡などを用いて200倍に拡大することにより行うことができる。
〔鋼中の化学成分〕
本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、鋼成分組成として、質量%で、Si:1.4%以上2.0%以下、Cr:18.0%以上21.0%以下、およびMo:0.3%以上1.0%以下を含有する。そして、上述のように特定表面欠陥の数が低減された表面状態を有する。これにより、低コストであり、高強度および耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼が得られる。以下、フェライト系ステンレス鋼に含まれる各元素の含有量の意義について説明する。
(Si)
Si(ケイ素)は、1.4質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。Siを1.4質量%以上含むフェライト系ステンレス鋼は、高強度かつ耐食性に優れる。また、Siを過度に含有すると、フェライト系ステンレス鋼は、加工性および靱性が低下する。そのため、Si含有量の上限を2.0質量%と規定した。
(Cr)
Cr(クロム)は、18.0質量%以上21.0質量%以下であることが好ましい。Crを18.0質量%以上含むフェライト系ステンレス鋼は、耐食性に優れ、このことは溶接部および熱影響部においても同様である。また、Crを過度に含有すると、加工性が低下するとともに材料コストが上昇する。そのため、Cr含有量の上限を21.0質量%と規定した。
(Mo)
Mo(モリブデン)は、0.3質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.4質量%以上0.8質量%以下である。Moを0.3質量%以上含むフェライト系ステンレス鋼は、耐食性に優れる。また、Moを過度に含有すると、加工性が低下するとともに材料コストが上昇する。そのため、Mo含有量の上限を1.0質量%と規定した。
さらに、本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.03%以下、Mn:1.0%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ni:0.5%以上2.0%以下、Cu:2.0%以下、N:0.030%以下、TiおよびNbの少なくとも1種を合計で10(C+N)%以上0.7%以下、Al:0.15%以下、B:0.020%以下を含有していてもよい。残部は鉄(Fe)および不可避的不純物であってもよい。また、残部は他の各種の添加元素を含んでいてもよい。
(C)
C(炭素)は、0.030質量%以下であることが好ましい。Cを0.030質量%以下含むフェライト系ステンレス鋼は、耐粒界腐食性(鋭敏化抑制)および加工性に優れ、かつ、精錬に要するコストを低減できる。
(Mn)
Mn(マンガン)は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。Mnを過度に含有すると、フェライト相が不安定化するとともに、腐食起点(MnS)の発生を促進する。そのため、Mn含有量の上限を1.0質量%と規定した。
(P)
P(リン)は、0.050質量%以下であることが好ましい。Pを過度に含有すると、溶接性、溶接部の靱性、および加工性が劣化し得る。そのため、P含有量の上限を0.050質量%と規定した。
(S)
S(硫黄)は、0.020質量%以下であることが好ましく、0.010質量%以下であることがより好ましい。Sを過度に含有すると、溶接部の靱性が低下するとともに、腐食起点の発生が促進され得る。そのため、S含有量の上限を0.020質量%と規定した。
(Ni)
Ni(ニッケル)は、0.5質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。Niを0.5質量%以上含むフェライト系ステンレス鋼は、耐食性および溶接部の靱性に優れる。また、Niを過度に含有すると、フェライト相が不安定化するとともに、材料コストが上昇する。そのため、Ni含有量の上限を2.0質量%と規定した。
(Cu)
Cu(銅)は、2.0質量%以下であることが好ましい。Cuは耐食性の向上に寄与するが、Cuを過度に含有すると、フェライト相が不安定化するとともに、材料コストが上昇する。そのため、Cu含有量の上限を2.0質量%と規定した。
(N)
N(窒素)は、0.030質量%以下であることが好ましい。Nを0.030以下含むフェライト系ステンレス鋼は、耐粒界腐食性(鋭敏化抑制)および加工性に優れ、かつ、精錬に要するコストを低減できる。
(TiおよびNb)
Ti(チタン)およびNb(ニオブ)は、合計で10(C+N)質量%以上0.7質量%以下であることが好ましく、より好ましくはTiが0.3質量%以下であり、かつ、Nbが0.4質量%以下である。TiおよびNbを10(C+N)以上含むフェライト系ステンレス鋼は、耐粒界腐食性(鋭敏化抑制)に優れる。一方で、Tiを過度に含有すると、加工性および表面品質が劣化し得るため、Ti含有量の上限を0.3質量%と規定した。また、Nbを過度に含有すると、加工性および靱性が劣化し得るため、Nb含有量の上限を0.4質量%と規定した。
(Al)
Al(アルミニウム)は、0.15質量%以下であることが好ましい。Alを0.15質量%以下含むフェライト系ステンレス鋼は、脱酸性および耐食性に優れる。一方で、Alを過度に含有すると、表面品質が劣化し得るため、Al含有量の上限を0.15質量%と規定した。
(B)
B(ホウ素)は、0.020質量%以下であることが好ましい。Bを過度に含有すると、熱間加工性が劣化し得る。そのため、B含有量の上限を0.020質量%と規定した。
[その他の成分]
本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、さらに、質量%で、V、W、およびCoの少なくとも1種を合計で0.5%以下、並びに、REMおよびCaの少なくとも1種を合計で0.1%以下含有していてもよい。
(V、W、およびCo)
V(バナジウム)、W(タングステン)、およびCo(コバルト)の少なくとも1種は、合計で0.5質量%以下であることが好ましい。V、W、またはCoの少なくとも1種を合計で0.5質量%以下含むフェライト系ステンレス鋼は、加工性および靱性に優れ、かつ、材料コストの上昇を抑制できる。
(REMおよびCa)
REM(希土類元素)およびCa(カルシウム)の少なくとも1種は、合計で0.1質量%以下であることが好ましい。REMおよびCaの少なくとも1種を合計で0.1質量%以下含むフェライト系ステンレス鋼は、材料コストの上昇を抑制できる。
〔フェライト系ステンレス鋼の製造方法〕
本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼板(フェライト系ステンレス鋼)は、上述のように成分調整された組成を有し、表面に存在する特定表面欠陥の数が、表面0.01mmあたり平均5個以下となっている。このようなフェライト系ステンレス鋼板は、以下のような方法にて製造することができる。
一般に、熱間圧延された熱延板または冷間圧延された冷延板に対して焼鈍処理を施した後、次工程として焼鈍板に酸洗工程が施される。この酸洗工程では、熱硫酸、中性塩電解、塩化第二鉄等を用いて予備処理を行った後、混酸を用いて本処理を行うことが多い。このような従来の方法(以下、従来法と称することがある)を用いて得られた焼鈍酸洗板は、表面に上述の特定表面欠陥が多数生成する。本発明者らは、特定表面欠陥の発生を抑制するためには、酸洗処理を施す際の、予備処理および本処理における、スケールを溶解する作用とフェライト系ステンレス鋼の素地を溶解する作用とのバランスを適切に調整することが重要であると考えた。
ここで、上記予備処理においては、従来、ソルトバスを用いる方法が知られている。ソルトバスは、焼鈍板の表面に生成したスケールを溶解する作用が比較的強い。そのため、比較的短い時間にて予備処理を行うことができる。
なお、従来法において、予備処理に例えば熱硫酸等を用いる場合、例えば処理時間を長大化させることによって、スケールに対して充分な予備処理を施すことは可能であり得る。しかしながら、そのような長時間の予備処理は、フェライト系ステンレス鋼を製造するラインの連続操業における制限を受けるとともに、製造コストが増大するという問題がある。
そのため、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼の製造方法では、ソルトバスを用いて、焼鈍により生成したスケールを効果的に改質する。すなわち、FeおよびCrが溶出し易いスケールに改質する。そして、ソルトバスを用いて予備処理を行った後、硝酸電解および弗硝酸に浸漬させて本処理を行う。このように酸洗処理を行うことによって、スケールを適切に溶解することができるとともに、上記特定表面欠陥の発生を抑制することができる。つまり、フェライト系ステンレス鋼の素地に対して、上記特定表面欠陥を生じるような溶解反応が生じ難くすることができる。よって、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼を好適に製造することができる。
〔フェライト系ステンレス鋼の物性〕
本フェライト系ステンレス鋼は、JIS Z2291に準じて測定した引張強度が、500MPa以上であることが好ましい。フェライト系ステンレス鋼は、引張強度が500Mpa以上であることにより、良好な強度を有すると言える。
また、本フェライト系ステンレス鋼は、定電位浸漬試験において、フェライト系ステンレス鋼の表面における腐食発生電位が、0.4(V vs,Ag/AgCl)以上であることが好ましく、0.45(V vs,Ag/AgCl)以上であることがより好ましい。また、本フェライト系ステンレス鋼は、表面に金属間すき間を形成した条件下で定電位浸漬試験を行った場合において、腐食発生電位が、0.35(V vs,Ag/AgCl)以上であることが好ましく、0.4(V vs,Ag/AgCl)以上であることがより好ましい。本フェライト系ステンレス鋼は、定電位浸漬試験において上記のような結果を示し、優れた耐食性を有する。
また、本フェライト系ステンレス鋼の表面における不動態皮膜について、図2を用いて説明すれば以下のとおりである。図2は、フェライト系ステンレス鋼の不動態皮膜中のCrについて、GDS(グロー放電発光分光法)を用いて測定した結果を示す図である。図2の(a)〜(c)はそれぞれ、酸洗処理にソルトバスを用いた本発明例の焼鈍酸洗板、従来法による比較例の焼鈍酸洗板、および表面に研磨処理を施した参考例の研磨材について、縦軸をCrの任意強度、横軸を時間として示すグラフである。なお、図2の(a)〜(c)においては、同じ成分組成および方法で製造した焼鈍板を用いて、各種の酸洗処理または研磨処理を行った結果を示している。
図2の(a)および(b)に示すように、本発明例の焼鈍酸洗板は、比較例の焼鈍酸洗板に比べて、表面近傍のCr濃度が比較的高いことがわかる。また、本発明例の焼鈍酸洗板では、酸洗処理後の表面状態として、不動態皮膜中のCr濃度のピークが、表面から比較的深部における不動態皮膜中のCr量とほぼ同じである。これは、フェライト系ステンレス鋼の表面素地に対する酸洗処理の影響が小さいことを示していると考えられる。一方で、比較例の焼鈍酸洗板では、不動態皮膜中のCr濃度が比較的小さくなっており、フェライト系ステンレス鋼の表面素地に対する酸洗処理の影響が大きいことを示唆している。図2の(c)に示す研磨材においても、従来法による酸洗処理を施した上記比較例と同様のことが言える。
(用途)
本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼は、鋼成分中のCrおよびMoの添加量を低減しつつ、高い強度を有するとともに優れた耐食性を有しており、建材や配管等の製品の素材として好適に用いることができる。例えば、屋根材料、壁材料、建材外装、ダクト、自動車モール、装飾部品、フェンス、配管、水層、および貯水タンク等の製品を形成する素材として用いることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上記説明において開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一実施例について以下に説明する。
〔フェライト系ステンレス鋼の評価方法〕
[耐食性の評価]
フェライト系ステンレス鋼の耐食性について、下記の方法により素材表面における耐食性および耐すき間腐食性を評価した。
(フェライト系ステンレス鋼の素材表面における耐食性の評価)
試験片として一辺が10mmの正方形のフェライト系ステンレス鋼板を用い、定電位浸漬試験により、フェライト系ステンレス鋼の素材表面における耐食性を評価した。
定電位浸漬試験は、以下のように行った。塩化物イオン濃度200ppmの水溶液を80℃に加熱し、上記水溶液に試験片を浸漬した。そして、Ar脱気雰囲気とした。対極(Pt)および参照極(Ag/AgCl)を上記水溶液に浸漬し、一定電位で、48時間保持した。そして、48時間後の電流値が1μA以上となる最小の電位を腐食発生電位(V vs,Ag/AgCl)として評価した。
(フェライト系ステンレス鋼の金属間すき間における耐すき間腐食性の評価)
一辺が30mmの正方形のフェライト系ステンレス鋼板の中央に形成した穴にSUSワッシャーを介してボルトを挿入して固定することにより、SUSワッシャーとフェライト系ステンレス鋼板との間に金属間すき間を形成して試験片を作成した。定電位浸漬試験により、フェライト系ステンレス鋼の金属間すき間における耐すき間腐食性を評価した。
定電位浸漬試験は、塩化物イオン濃度200ppmで、80℃の水溶液に、試験片を浸漬し、Ar脱気雰囲気とした。また、対極(Pt)および参照極(Ag/AgCl)を浸漬し、一定電位で、48時間保持した。そして、48時間後の電流値が1μA以上となる最小の電位を腐食発生電位(V vs,Ag/AgCl)として評価した。
[機械的性質の評価]
(引張強度)
フェライト系ステンレス鋼の機械的性質の評価において、JIS Z2241に規定された13B号試験片を用いてJIS Z2291に準じて、引張試験を行ない、引張強度を評価した。
〔実施例1〕
本発明の実施例1に係るフェライト系ステンレス鋼の組成を表1に示す。これらの各合金組成のステンレス鋼をラボ溶解で溶製し、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、焼鈍および酸洗を行なうことにより0.6mmt(0.6mmの厚み)の焼鈍酸洗板を製造した。なお、実施例1に係るフェライト系ステンレス鋼における酸洗では、ソルトバスを行った後、硝酸電解および弗硝酸に浸漬することにより酸洗を行った。
〔比較例1〕
本発明の比較例1に係るフェライト系ステンレス鋼は、酸洗工程において、ソルトバスを用いず、従来法を用いた。換言すれば、比較例1に係るフェライト系ステンレス鋼は、製造工程における酸洗以外の工程は、実施例1に係るフェライト系ステンレス鋼と同じである。
〔比較例2〕
比較例2に係るフェライト系ステンレス鋼は、表1に示すようにCrを多く含み、耐食性の高い鋼種である。比較例2に係るフェライト系ステンレス鋼は、ソルトバスを用いず、従来法により焼鈍酸洗を施して作製した。
〔比較例3〕
比較例3に係るフェライト系ステンレス鋼は、表1に示すようにCrおよびNiを多く含み、耐食性の高い鋼種である。比較例3に係るフェライト系ステンレス鋼は、ソルトバスを用いず、従来法により焼鈍酸洗を施して作製した。
〔結果〕
平均表面欠陥数、引張強度、および、素材表面または金属すき間における腐食発生電位の試験結果を表2に示す。
実施例1に係るフェライト系ステンレス鋼は、当該フェライト系ステンレス鋼の表面100μm×100μm(0.01mm)の範囲において、任意の10点における被さり(特定表面欠陥)の平均個数が1.8個であった。
実施例1に係るフェライト系ステンレス鋼は、素材表面における腐食発生電位は0.45(V vs,Ag/AgCl)、金属すき間における腐食発生電位は0.4(V vs,Ag/AgCl)となり、比較例2および比較例3と同様に良好な耐食性および耐すき間腐食性を有するフェライト系ステンレス鋼であることが認められた。そのため、高価なCrおよびMoの使用量を減らしたフェライト系ステンレス鋼であっても良好な耐食性および耐すき間腐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を作製できた。
実施例1に係るフェライト系ステンレス鋼は、引張強度が560MPaであり、良好な強度を有するフェライト系ステンレス鋼であることが認められた。
なお、比較例2および比較例3のフェライト系ステンレス鋼において、平均表面欠陥数がそれぞれ1.6個および2.1個と少ない結果(平均5個以下)となっている。これは、比較例2のフェライト系ステンレス鋼はCrおよびMoを比較的多く含む鋼種であり、比較例3のフェライト系ステンレス鋼はCrを比較的多く含む鋼種であることから、耐食性が高く、特定表面欠陥の生成が抑制されるためである。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:1.4%以上2.0%以下、Cr:18.0%以上21.0%以下、およびMo:0.3%以上1.0%以下を含有し、
    フェライト系ステンレス鋼の表面から延出し、当該表面の一部を覆う様に存在しており、平面視したときの長軸が5μm以上の大きさを有する表面欠陥が、前記表面0.01mmあたり平均5個以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
  2. 質量%で、C:0.03%以下、Mn:1.0%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ni:0.5%以上2.0%以下、Cu:2.0%以下、N:0.030%以下、TiおよびNbの少なくとも1種を合計で10(C+N)%以上0.7%以下、Al:0.15%以下、およびB:0.020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、V、W、およびCoの少なくとも1種を合計で0.50%以下、並びに、REMおよびCaの少なくとも1種を合計で0.1%以下含有する、請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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