JP4089076B2 - 加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として鋼管としての使用に際して優れた加工特性を有するフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
TiやNb等の炭窒化物形成元素を添加したいわゆる高純度フェライト系ステンレス鋼板はー般的に熱間圧延、熱間圧延板焼鈍、酸洗、冷延、焼鈍、酸洗の工程を経て製造され、各工程において加工性、表面品質、製造性の向上のために多大な努力が払われている。このフェライト系ステンレス鋼板は比較的安価で優れた耐蝕性を有するため、自動車排気系材料や電気器具、建築材料などとして使用される。特に自動車排気系材料としては鋼板をパイプに加工し、さらに拡管、縮管及び曲げ等の複雑な加工を施されることが多く、素材の鋼板に高い加工性が要求される。
【0003】
熱間圧延方法により加工性を改善する技術については、特開平8−311557号公報、特開平9−194937号公報に開示されているように、粗圧延での強圧下で、加工歪みを蓄積し、さらに仕上圧延前待機での再結晶による組織改善をはかる技術や、特開平8−311542号公報に開示されているように低摩擦係数と、仕上終了温度及び巻取温度を高温とすることを組み合わせる技術がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板にあっては、加工性の改善は得られるものの、仕上圧延前での待機を必要とする前者の技術では、生産能率を低下させるという新たな課題が生じ、また、高温での巻取りを必要とする後者の技術では、熱間圧延後のコイル形状での自熱による焼鈍効果を利用するため、コイルの先端部、尾端部やエッジ部では冷却し易く、十分な効果が得られず、特性が安定しないという新たな課題が生じている。
【0005】
これらの結果から、近年の複雑な部品加工の要求を満たす、良好な特性の製品を生産効率を低下させることなく、且つ安定して生産するには至っていないのが現状である。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、複雑な部品加工の要求を満たし、良好な特性の製品を安定して高生産効率で生産することができる加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板は、重量%でC:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:9.0〜35.0%、N:0.02%以下、Ni:1.0%以下、Al:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Nb:0.03%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるFe−Cr系合金であって、PとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満たし、圧延方向、圧延45度方向及び圧延直角方向の各ランクフォード値を夫々rL、rD及びrCとし、全方向のランクフォード値の最小値をrMIN としたときに、rL≧rD、rC≧1.3及びrMIN ≧1.0の関係を満たすように設定されていることを特徴としている。
【0007】
この請求項1に係る発明において、各成分元素の限定理由は以下に述べる通りである。
先ず、C及びNは、Crと化合物を生成して耐蝕性を劣化させ、加工性にも悪影響を与えるため少ないほどよく、夫々の上限を0.02%とした。
Sについては、多量に存在すると熱間加工性及び製品加工性を劣化させるためS≦0.01%とする。Crは素材の耐蝕性を担う重要な元素であり、少な過ぎるとその効果が十分でなく、また過剰に添加してもその効果は飽和し、コストアップを招くため、その範囲を9.0〜35.0%とする。
【0008】
PはFe,Tiと析出物を形成し焼鈍時の再結晶を遅らせるため、その上限を0.05%とする。
Mnは熱間脆性を抑制し、Niは耐蝕性を向上させる元素であるが、これらは過剰に含有すると熱間圧延温度域でオーステナイト相を生成し、本発明による最適な製造条件から外れるため、夫々の上限を1.0%とする。
【0009】
Alは脱酸能力の高い元素であり、脱酸とそれによるTiの歩留り向上に寄与するが、過剰な添加は介在物の量を増やし表面品質を劣化させるため上限を1.0%とする。
Tiは炭化物窒化物を形成し固溶C,N低減により加工性、溶接性を向上させるが、過剰の含有は析出物量を増加させ加工性を劣化させるため、その上限を1.0%とする。
【0010】
NbもTiと同様に炭窒化物を形成し、固溶C,N低減よる加工性、溶接性を向上させる元素であるが、Nbの炭窒化物はTiに比べて析出温度が低く、析出時の拡散速度が遅いため、微細な析出部を形成し、この微細な析出物は粒界移動を抑制する効果が大きいため、Nbが過剰な焼鈍時の再結晶不良による特性劣化をもたらすため、その上限を0.03%とする。
【0011】
Siは耐蝕性の向上に有利な元素であるが、硬度を上昇させて加工性を劣化させるためその上限を1.0%とする。
そして、PとNbとの含有量がP×Nb>0.0005である場合には、圧延方向、圧延45度方向及び圧延直角方向の各ランクフォード値を夫々rL、rD及びrCとし、全方向のランクフォード値の最小値をrMIN としたときに、rL≧rD、rC≧1.3及びrMIN ≧1.0の関係を満たすことができず、パイプ成形後の加工性を表す拡管試験及び曲げ試験の結果が思わしくなく、P×Nb≦0.0005である場合には、rL≧rD、rC≧1.3及びrMIN ≧1.0の関係を満足して、パイプ成形後の拡管試験及び曲げ試験結果が良好で加工性を向上させることができる。ここで、ランクフォード値rCはパイプ成形後の拡管試験に影響を与え、最小値rMIN はパイプ成形後の曲げ試験に影響を与える。
【0012】
また、請求項2に係る加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板は、請求項1に係る発明において、重量%でMo:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:2.0%以下、V:0.5%以下、Zr:2.0%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有することを特徴としている。
【0013】
この請求項2に係る発明では、Mo,Cu及びCoを含有させることにより、耐蝕性を改善する効果があるが、過剰な添加は脆化をもたらすため上限は夫々2.0%とする。
また、V,Zrを含有させることにより、特に溶接部でのCr炭窒化物の生成を抑制し、耐蝕性を向上させることができるが、過剰な添加は靱性や延性を低下させるため上限は夫々5%とする。
【0014】
さらに、Bを含有させることにより、特にNを固定し耐蝕性や加工性の改善に寄与するが、過剰に添加してもその効果は飽和するため上限を0.005%とした。
さらにまた、Caを含有させることにより、連続鋳造時のイマージョンノズル詰まりを抑制し、生産中断のトラブルを防止する効果があるが、過剰な添加は介在物による表面品質の劣化を招くため上限は0.005%とする。
【0015】
さらに、請求項3に係る加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法は、請求項1に係る加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、熱間圧延において、仕上圧延の圧下率を80%以上とし、複数段の圧延スタンドを備えた仕上圧延における最前段の2パスにおける摩擦係数μF をμF ≧0.2に設定すると共に、最後段の3パスにおける摩擦係数μR をμR ≦0.2に設定し、且つ仕上圧延終了温度を800℃以下とすることを特徴とする。
【0016】
この請求項3に係る発明においては、仕上圧延の圧下率は、全方向のランクホォード値の最小値rMIN に影響を与え、80%未満であると、他の条件を満足していても、最小値rMIN が下限近くの小さい値となって、パイプ成形後の後述の90°曲げ試験結果が肉厚比70%未満となる不合格となり、同様に、最前段の2パスにおける摩擦係数μF がμF <0.2となると、最小値rMIN が下限近くの小さい値となって、パイプ成形後の後述の90°曲げ試験結果が肉厚比70%未満となる不合格となる。一方、最後段の3パスにおける摩擦係数μR は、圧延直角方向のランクフォード値rCに影響を与え、μR >0.2となると、ランクフォード値rCが下限値1.3近くの小さい値となって、パイプ成形後の拡管試験結果が10%を越える不合格となり、同様に仕上圧延終了温度も圧延直角方向のランクフォード値rCに影響を与え、800℃を越えると、ランクフォード値rCが下限値1.3近くの小さい値となって、パイプ成形後の拡管試験結果が10%を越える不合格となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明者等は、ステンレス鋼板の加工性に影響する因子について種々検討を行い、パイプの加工性に素材のランクフォード値の異方性が大きく影響することを知見し、さらに係る材料の製造に際して、成分及び熱間圧延条件に良好な範囲があることを見い出し、本発明に至ったものである。
【0018】
【実施例1】
先ず、基本組成として、重量%でC:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:9.0〜35.0%、N:0.02%以下、Ni:1.0%以下、Al:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Nb:0.03%以下を少なくとも含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる下記表1に示す種々の組成のフェライト系ステンレス鋼からなるスラブを形成し、このスラブを図1に示すように、加熱炉1で1150℃に加熱した後、幅プレス2で幅方向にプレスし、次いで粗圧延機3で粗圧延してから仕上待機することなく仕上圧延機4で仕上圧延してコイル巻取機5で巻き取る。
【0019】
ここで、仕上圧延機4は、所定間隔を保って連続配置された7つのミルスタンドF1〜F7を有し、仕上圧下率が90%以上に設定されていると共に、最前段の2パス即ちスタンドF1及びF2では摩擦係数μF を0.24に設定し、最後段の3パス即ちスタンドF5〜F7では摩擦係数μR を0.18に設定し、仕上圧延終了温度を800℃に設定している。
【0020】
そして、熱間圧延された鋼板に900℃で3分以内の焼鈍と酸洗とを連続して行なった後、圧下率65%の冷間圧延を施し、860℃で3分以内の焼鈍と酸洗とを連続して行いフェライト系ステンレス鋼板の製品板を作成した。
得られたステンレス鋼板よりサンプルを採取し、引張試験により加工性を評価した。引張方向は圧延方向に対して0度、45度及び90度の各方向について行いこれら方向のランクフォード値rL,rD,rC及び全方向のランクフォード値の最小値rMIN を評価した。その結果の一例を図2に示す。
【0021】
この図2では、実施例B1及び比較例A4の圧延方向から見た角度とランクフォード値rとの関係が表されており、実施例B1では、圧延方向のランクフォード値rLに対して圧延方向に対して45度方向のランクフォード値rDが小さい値となり、且つ最小値rMIN が下限値1.0以上で且つ圧延方向に対して90度の方向のランクフォード値rCが下限値1.3以上となり、ランクフォード値の設定条件を満足している。これに対して比較例A4では、rL<rD、rMIN =0.82<1.0、rC=1.2<1.3であり、ランクフォード値の設定条件を全て満足していない。
【0022】
また、製品板は、連続式に径40mmの電縫管に加工し、拡管試験及び曲げ試験を実施した。一連の実験条件と試験結果を図3及び下記表1に示す。
ここで、鋼板の加工性はJIS13号B試験片において伸び15%時のランクフォード値rを測定した。また、パイプの加工性については6セグメント式の拡管試験で径を1.45倍に拡管(1.45D拡管試験)したときの割れ発生率で評価し、10%以下を良好と判定した。さらに、パイプの加工性については直径の1.3倍の曲率半径で90度の曲げ試験(90度1.3D曲げ試験)したときの肉厚比(曲げ後厚の最小値/もと厚)で評価し、70%以上を良好と判定した。
【0023】
【表1】
【0024】
この実施例1の結果によると、図3及び表1に示すように、実施例となるA1〜A3及びB1〜B3についてはrL≧rDで且つrMIN ≧1.0、rC≧1.3となって、拡管試験及び曲げ試験とも良好な結果であり優れた加工性の鋼管が得られることがわかる。そして、このような加工特性の優れたフェライト系ステンレス鋼板は、PとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満たす場合に得られることが判明した。
【0025】
また、比較例となるA4〜A6及びB4〜B6では、ランクフォード値rのrL≧rDで且つrMIN ≧1.0、rC≧1.3となる条件を満たさず、拡管試験及び曲げ試験とも結果が悪く加工性が低下しており、しかもこれらの場合のPとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係も満たさないことが判明した。この結果、ランクフォード値rのrL≧rDで且つrMIN ≧1.0、rC≧1.3となる条件を満たすと共に、PとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満たすことにより、加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を熱間加工時に仕上待機時間を設けることなく得ることができる。
【0026】
【実施例2】
重量%で、C:0.005、Si:0.23、Mn:0.20、P:0.03、S:0.005、Cr:10.2、N:0.007、Ni:0.2、Al:0.02、Ti:0.26、Nb:0.01、B:0.004、Ca:0.002を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼でなるスラブを1150℃に加熱し、粗圧延に引き続き仕上圧延するに際し、仕上の圧下率、前段2パスF1,F2及び後段3パスF5〜F7の摩擦係数及び仕上圧延終了温度(FDT)について種々の条件で熱間圧延を実施した。これらの熱間圧延板に900℃で3分以内の焼鈍と酸洗とを連続して行なった後、65%の冷間圧延を施し、860℃で3分以内の焼鈍と酸洗とを連続して行い製品板とした。
【0027】
得られた製品板よりサンプルを採取し、引張試験により加工性を評価した。引張方向は、圧延方向にに対して0度、45度及び90度の各方向について行いこれら方向のランクフォード値rL,rD,rC及び全方向のランクフォード値の最小値rMIN を評価した。また、製品板を連続式に径40mmの電縫管に加工し、拡管試験及び曲げ試験を実施した。一連の実験条件と試験結果を下記表2に示す。
【0028】
ここで、鋼板の加工性はJIS13号B試験片において伸び15%時のランクフォード値rを測定した。また、パイプの加工性については6セグメント式の拡管試験で径を1.50倍及び1.55倍にに拡管(1.50D拡管試験及び1.55D拡管試験)したときの割れ発生率で評価し、10%以下を良好と判定した。さらに、パイプの加工性については直径の1.3倍の曲率半径で90度及び130度の曲げ試験(90度1.3D曲げ試験及び130度1.3D曲げ試験)したときの肉厚比(曲げ後厚の最小値/もと厚)で評価し、70%以上を良好と判定した。
【0029】
【表2】
【0030】
この実施例2では、表2における番号1,2,5,7〜9,12〜14に示すように、熱間圧延において、仕上圧下率が80%以上、仕上圧延における前段2パスの摩擦係数μF が0.2以上、仕上圧延後段3パスの摩擦係数μR が0.2以下で且つ仕上圧延終了温度(FDT)が800℃以下の場合にパイプ成形後の加工性条件を満足し、さらに良好な製品特性が得られ、仕上圧下率が80%以上、仕上圧延における前段2パスの摩擦係数μF が0.2以上、仕上圧延後段3パスの摩擦係数μR が0.2以下で且つ仕上圧延終了温度(FDT)が800℃以下の圧延条件のうちの1つでも外れるとパイプ成形後の加工性が悪化することがわかる。
【0031】
熱間圧延条件によって上記のような効果が得られた理由については必ずしも明らかでないが、仕上後段3パスの摩擦係数μR がμR ≦0.2と低く、且つFDT≦800℃と低い場合には、圧延方向に対して90度のランクフォード値rCが向上し、拡管加工性の向上に有効であった。すなわち、摩擦係数μR が低いため、ロールと圧延材との摩擦により生じる剪断応力が低減されたため、板厚方向での変形がより均一な状態に近づき、且つ温度も低く、ひずみの回復が抑えられ、十分に歪みが蓄積された熱間圧延鋼板が得られる。
【0032】
このような熱間圧延鋼板では、熱間圧延板焼鈍で均一な再結晶組織が容易に得られるため、製品以下での特性を向上させたと考えられる。さらに、仕上圧延の圧下率を高く、且つ前段2パスの摩擦係数は寧ろ高くすることはランクフォード値rの最小値rMIN を向上させ、曲げ加工性の向上に有効であった。これは異方性の改善が主として後段のパスに支配されているのに対して、比較的高温の前段では高摩擦係数による加工発熱や高歪み量でパス間再結晶してスラブに起因する粗大粒特に表層付近の柱状晶に起因する{100}粒を再結晶させることにより特性が改善されたものと考えられる。また、このようにして得られた製品板より造管したパイプの加工特性が良好となったのは拡管試験においては圧延方向に対して90度のC方向の加工性、また曲げ試験においては圧延方向に対して0度のL方向のランクフォード値rL及び全方位での最小値rMIN が結果の良否に顕著に影響するためと考えられる。
【0033】
【実施例3】
下記表3に示す前述した実施例1におけるPとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満足する成分組成のステンレス鋼スラブを1100℃に加熱し、粗圧延に引き続き仕上圧延するに際し、仕上の圧下率、前段2パス及び後段3パスの摩擦係数及び仕上圧延終了温度(FDT)について種々の条件で熱間圧延を実施した。これらの熱間圧延板に900℃で3分以内の焼鈍と酸洗とを連続して行なった後、圧下率65%の冷間圧延を施し、860℃で3分以内の焼鈍と酸洗とを連続して行い製品板とした。
【0034】
【表3】
【0035】
得られた製品板よりサンプルを採取し、引張試験により加工性を評価した。引張方向は、圧延方向にに対して0度、45度及び90度の各方向について行いこれら方向のランクフォード値rL,rD,rC及び全方向のランクフォード値の最小値rMIN を評価した。また、製品板を連続式に径50mmの電縫管に加工し、拡管試験及び曲げ試験を実施した。一連の実験条件と試験結果を下記表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
ここで、鋼板の加工性はJIS13号B試験片において伸び15%時のランクフォード値rを測定した。また、パイプの加工性については6セグメント式の拡管試験で径を1.50倍及び1.55倍に拡管(1.50D拡管試験及び1.55D拡管試験)したときの割れ発生率で評価し、10%以下を良好と判定した。さらに、パイプの加工性については直径の1.3倍の曲率半径で90度及び130度の曲げ試験(90度1.3D曲げ試験及び130度1.3D曲げ試験)したときの肉厚比(曲げ後厚の最小値/もと厚)で評価し、70%以上を良好と判定した。
【0038】
この実施例3によれば、PとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満足する場合であっても、表4に示すように、仕上圧下率が80%以上、仕上圧延における前段2パスの摩擦係数μF が0.2以上、仕上圧延後段3パスの摩擦係数μR が0.2以下で且つ仕上圧延終了温度(FDT)が800℃以下に設定された熱間圧延条件を満足しない場合には、ランクフォード値rの条件であるrC又はrMIN を満足しない状態となり、パイプ成形後の加工性が悪化することがわかる。
【0039】
すなわち、ステンレス鋼Cについては、圧延方向に対して90度のランクフォード値rCに影響を与える後段3パスの摩擦係数μR を上限値0.20より大きい0.22とし、且つ仕上圧延終了温度を上限値800℃より高い810℃に設定した場合には、ランクフォード値rCが下限値1.30より小さい値1.29となり、パイプ成形後の1.50D及び1.55D拡管試験結果が14%及び20%となり、共に10%を越えて加工性が悪化している。
【0040】
同様に、ステンレス鋼Dについては、全方位のランクフォード値の最小値rMIN に影響を与える仕上圧延の圧下率を下限値80%より小さい75%とし、且つ前段2パスの摩擦係数μF を下限値0.20より小さい0.17に設定した場合には、ランクフォード値の最小値rMIN が下限値1.0より小さい0.99となり、パイプ成形後の90度及び130度曲げ試験結果が共に合格点より低い57%及び50%となり加工性が悪化している。
【0041】
この実施例3からPとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満足するステンレス鋼を仕上圧下率が80%以上、仕上圧延における前段2パスの摩擦係数μF が0.2以上、仕上圧延後段3パスの摩擦係数μR が0.2以下で且つ仕上圧延終了温度(FDT)が800℃以下の熱間圧延条件で圧延することにより、ランクフォード値の条件rL≧rDで且つrMIN ≧1.0、rC≧1.3を満足する加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を熱間圧延中に待機時間を設けることなく得ることができ、生産能率を低下させることなく、安定した品質の加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造することができる。
【0042】
一方、実施例3のステンレス鋼板について、μF ≧0.20、μR ≦0.20及びFDT≦800℃の条件を満足し、残りの仕上圧下率を変化させて熱間圧延した場合の拡管試験結果及び曲げ試験結果を図4(a)及び(b)に示す。この図4から明らかなように、拡管不良率については図4(a)に示すように仕上圧下率の変化にかかわらず10%以下を保って良好であるが、曲げ試験結果については図4(b)に示すように、仕上圧下率が80%未満である場合には、肉厚比が50%近傍で加工性が悪く、80%以上となると、肉厚比が合格ラインの70%を越えて曲げ加工性が向上している。
【0043】
また、仕上圧下率を80%以上、μR ≦0.20及びFDT≦800℃の条件を満足し、残りの前段2パスの摩擦係数μF を変化させて熱間圧延した場合の拡管試験結果及び曲げ試験結果を図5(a)及び(b)に示す。この図5から明らかなように、拡管不良率については図5(a)に示すように前段2パスの摩擦係数μF の変化にかかわらず10%以下を保って良好であるが、曲げ試験結果については図5(b)に示すように、前段2パスの摩擦係数μF が0.20未満であるときには、肉厚比が合格点の70%にとどかず、摩擦係数μF が0.20以上となると、肉厚比が合格ラインの70%を越えて曲げ加工性が向上している。
【0044】
さらに、仕上圧下率を80%以上、μF ≧0.20及びFDT≦800℃の条件を満足し、残りの後段3パスの摩擦係数μR を変化させて熱間圧延した場合の拡管試験結果及び曲げ試験結果を図6(a)及び(b)に示す。この図6から明らかなように、曲げ試験肉厚比については図6(b)に示すように後段3パスの摩擦係数μR の変化にかかわらず70%以上を保って良好であるが、拡管試験結果については図6(a)に示すように、後段3パスの摩擦係数μF が0.20を越えているときには、不良率が合格点の10%を越えて加工性が圧下しているが、摩擦係数μR が0.20以下となると、不良率が合格ラインの10%以下となり、拡管加工性が向上している。
【0045】
さらにまた、仕上圧下率を80%以上、μF ≧0.20及びμR ≦0.20の条件を満足し、残りの仕上圧延終了温度FDTを変化させて熱間圧延した場合の拡管試験結果及び曲げ試験結果を図7(a)及び(b)に示す。この図7から明らかなように、曲げ試験肉厚比については図7(b)に示すように仕上圧延終了温度FDTの変化にかかわらず70%以上を保って良好であるが、拡管試験結果については図7(a)に示すように、仕上圧延終了温度FDTが800℃を越えているときには、不良率が合格点の10%を越えて加工性が圧下しているが、仕上圧延終了温度FDTが800℃以下となると、不良率が合格ラインの10%以下となり、拡管加工性が向上している。
【0046】
したがって、全ての圧延条件を満足することにより、加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を安定して製造することが実証された。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板によれば、重量%でC:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:9.0〜35.0%、N:0.02%以下、Ni:1.0%以下、Al:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Nb:0.03%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるFe−Cr系合金であって、PとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満たし、圧延方向、圧延45度方向及び圧延直角方向の各ランクフォード値を夫々rL、rD及びrCとし、全方向のランクフォード値の最小値をrMIN としたときに、rL≧rD、rC≧1.3及びrMIN ≧1.0の関係を満たすように設定することにより、パイプ加工したときの拡管試験及び曲げ試験で良好な結果が得られる加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を得ることができるという効果が得られる。
【0048】
また、請求項2に係る加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板によれば、重量%でMo:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:2.0%以下、V:0.5%以下、Zr:2.0%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有させることにより、耐蝕性の向上、溶接部でのCr炭窒化物の生成の抑制、Nを固定し耐蝕性や加工性の改善、連続鋳造時のノズル詰まりの抑制等の効果を付加することができる。
【0049】
さらに、請求項3に係る加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法によれば、請求項1に係る加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、熱間圧延において、仕上圧延の圧下率を80%以上とし、複数段の圧延スタンドを備えた仕上圧延における最前段の2パスにおける摩擦係数μF をμF ≧0.2に設定すると共に、最後段の3パスにおける摩擦係数μR をμR ≦0.2に設定し、且つ仕上圧延終了温度を800℃以下とすることにより、加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を熱間圧延工程で待機時間を設けることなく高生産効率で、安定して製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフェライト系ステンレス鋼板の熱間圧延設備を示す概略構成図である。
【図2】実施例と比較例における圧延方向から見た角度とランクフォード値との関係を示す特性線図である。
【図3】実施例1における各鋼種のPとNbとの含有量P×Nbとランクフォード値r及びrL−rDとの関係を示す特性線図である。
【図4】仕上圧下率のパイプの加工性に及ぼす影響を説明するためのグラフである。
【図5】前段2パス摩擦係数のパイプ加工性に及ぼす影響を説明するためのグラフである。
【図6】後段3パス摩擦係数のパイプ加工性に及ぼす影響を説明するためのグラフである。
【図7】熱間仕上圧延終了温度のパイプ加工性に及ぼす影響を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上圧延機
F1〜F7 ミルスタンド
Claims (3)
- 重量%でC:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:9.0〜35.0%、N:0.02%以下、Ni:1.0%以下、Al:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Nb:0.03%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるFe−Cr系合金であって、PとNbとの含有量がP×Nb≦0.0005の関係を満たし、圧延方向、圧延45度方向及び圧延直角方向の各ランクフォード値を夫々rL、rD及びrCとし、全方向のランクフォード値の最小値をrMIN としたときに、rL≧rD、rC≧1.3及びrMIN ≧1.0の関係を満たすように設定されていることを特徴とする加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板。
- 重量%でMo:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Co:2.0%以下、V:0.5%以下、Zr:2.0%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板。
- 請求項1に係る加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造するに際し、熱間圧延において、仕上圧延の圧下率を80%以上とし、複数段の圧延スタンドを備えた仕上圧延における最前段の2パスにおける摩擦係数μF をμF ≧0.2に設定すると共に、最後段の3パスにおける摩擦係数μR をμR ≦0.2に設定し、且つ仕上圧延終了温度を800℃以下とすることを特徴とする加工性の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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