JP2011021263A - 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C、Si、Mn、Al、Nb、Ti、Ca、Nを含有するとともに、Ni、Cu、Cr、およびMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、下記(1)式で表されるA値が、125≦A≦200であるとともに、下記(2)式で表されるG値との間に、A/G≧4350の関係を有し、更に、円相当径0.05μm未満のTi含有窒化物が5.0×106個/mm2以上、円相当径0.05〜1.0μmのTi含有窒化物が1.0×105個/mm2以上、円相当径1.0μm超のTi含有窒化物が5個/mm2以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板である。
A=53+104[C]+76[Cu]+109[Cr]+37[Ni]
+2422[Nb]+31[Mo] ・・・(1)
G=[Nb]+5[B] ・・・(2)
【選択図】なし
Description
A=53+104[C]+76[Cu]+109[Cr]+37[Ni]
+2422[Nb]+31[Mo] ・・・(1)
G=[Nb]+5[B] ・・・(2)
[式(1)、(2)中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。]
まず、ベイナイト変態の駆動力と各種合金の影響について検討した。ベイナイト変態の形成過程を考慮すると、その駆動力はベイナイト変態の駆動力が発生し始める温度(以下、「T0温度」と呼ぶ)と、実際にベイナイト変態が起こる温度(以下、「Bs点」と呼ぶ)との差で説明できると考えられた。
A=53+104[C]+76[Cu]+109[Cr]+37[Ni]
+2422[Nb]+31[Mo] ・・・(1)
次に、オーステナイト粒界エネルギーと各種合金元素の影響について検討した。一般に、NbやBはオーステナイト粒界エネルギーを下げる元素として知られている。そこで、同程度のA値を有しNb量およびB量を変化させた鋼種をいくつか用意し、それぞれについてHAZにおけるベイナイト組織サイズを測定した。その結果、ベイナイト組織サイズに対するB量の影響は、Nb量の約5倍であったことから、オーステナイト粒界エネルギーに影響を与える指標として、G=[Nb]+5[B]を用いることとした。粒界エネルギーを下げる作用を有するNbやBの含有量が多くなれば、下記(2)式から明らかなようにG値は大きくなるのであり、Gの値が大きいことは、すなわちオーステナイト粒界エネルギーが小さいことを意味している。なお、本発明においてB(ボロン)は任意元素であるので、Bを含まない場合は[B]=0としてG値を計算するものとする。
G=[Nb]+5[B] ・・・(2)
円相当径0.05μm未満のTi含有窒化物が5.0×106個/mm2以上
円相当径0.05〜1.0μmのTi含有窒化物が1.0×105個/mm2以上
円相当径1.0μm超のTi含有窒化物が5個/mm2以下
Cは鋼板の強度を確保するために必要な元素である。Cが0.03%より少ないと鋼板の強度が不十分となる。一方、Cが0.10%を超えると硬質なMA(島状マルテンサイト)組織が生成することによってHAZ靭性が低下する。C量の好ましい範囲は0.04〜0.09%であり、より好ましくは0.05〜0.08%である。
Siは固溶強化により強度を向上させる作用を有する元素であるが、過剰に添加すると溶鋼中でTiの活量を上昇させTi+N→TiNの反応を促進する。溶鋼中で生成したTiNは粗大化しやすいため、Siの過剰な添加は粗大なTiNを生成する原因となる。またSi量が過剰になると硬質なMA(島状マルテンサイト)組織が生成することによってHAZ靭性が低下する。そこでSi量を0.25%以下とする。Si量は好ましくは0.15%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
Mnは強度を確保するために有効な元素である。そこでMn量を1.0%以上とする。一方、Mnが過剰になるとHAZの強度が上昇することによる靭性低下を招く。そこでMn量は2.0%以下と定めた。Mn量は好ましくは1.2〜1.8%であり、より好ましくは1.4〜1.7%である。
Alは溶製時の脱酸に有効な元素であり、後記する通り、溶製時にCaに先立って添加することで粗大TiNの生成を抑制するの作用を有する。一方、過剰に添加すると粗大な酸化物を形成してHAZ靭性を低下させる。そこでAl量は0.005〜0.050%と定めた。Al量は好ましくは0.010〜0.04%、より好ましくは0.02〜0.035%である。
Nbは上述のA値を上昇させることによりHAZのベイナイト組織を微細化させるのに有効な元素である。またNbは炭窒化物として析出し、オーステナイト粒粗大化を抑制することで母材靭性を向上させる作用を有する。一方、過剰に添加するとオーステナイト粒界に偏析することによりオーステナイト粒界エネルギーを低下させ、上述のA/Gが低下することによって却ってHAZのベイナイト組織を粗大化させる。そこでNb量は0.002〜0.04%と定めた。Nb量は好ましくは0.004〜0.03%であり、より好ましくは0.007〜0.02%である。
TiはTiNを生成させるために必要な元素である。一方、過剰に添加するとTiNの粗大化を招きHAZ靭性が低下する。そこでTi量は0.010〜0.080%と定めた。Ti量は好ましくは0.012〜0.060%であり、より好ましくは0.015〜0.050%である。
Caは硫化物系介在物の球状化に有効な元素であり、またAlの後に添加することによって粗大なTiNの生成を抑制する作用を有する。一方、過剰に添加すると粗大酸化物を形成しHAZ靭性が低下する。そこでCa量は0.0005〜0.010%と定めた。Ca量は好ましくは0.0008〜0.008%であり、より好ましくは0.001〜0.005%である。
NはTiNの形成に必要な元素である。一方、N量が過剰になると固溶N量が増加して歪時効が生じることによりHAZ靭性が低下する。そこでN量を0.0020〜0.020%と定めた。N量は好ましくは0.003〜0.018%であり、より好ましくは0.004〜0.01%である。
Cu:1.50%以下(0%を含まない)
Cr:1.20%以下(0%を含まない)
Mo:1.2%以下(0%を含まない)
Ni、Cu、Cr、Moはいずれも鋼板の強度を確保するとともに、上述したA値を上昇させることによりHAZのベイナイト組織を微細化させるのに有効な元素である。一方、これらの元素が過剰になると硬質なマルテンサイト組織の生成を招き、HAZ靭性に悪影響を及ぼす。そこでNi量は1.5%以下、Cu量は1.50%以下、Cr量は1.20%以下、Mo量は1.2%以下と定めた。Ni量、Cu量はいずれも好ましくは0.1〜1.2%(さらに好ましくは0.2〜1.0%)であり、Cr量、Mo量はいずれも好ましくは0.1〜1.0%(さらに好ましくは0.15〜0.8%)である。Ni、Cu、Cr、Moは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
Vは炭窒化物として析出し、オーステナイト粒の粗大化を抑制することで母材靭性を向上させるのに有効な元素である。一方、過剰に添加すると析出強化による強度の過大な上昇を招きHAZ靭性が低下する。そこでV量は0.10%以下とすることが好ましい。V量はより好ましくは0.01〜0.08%であり、さらに好ましくは0.02〜0.07%である。
Bは粗大な粒界フェライトを抑制することでHAZ靭性の向上に寄与する元素である。一方、過剰に添加するとオーステナイト粒界に偏析することでオーステナイト粒界エネルギーを低下させ、上述のA/Gを低下させることによって却ってHAZのベイナイト組織を粗大化させる。そこでB量は0.0010〜0.0050%とすることが好ましく、より好ましくは0.0012〜0.0045%であり、さらに好ましくは0.0015〜0.0040%である。
Zr:0.0003〜0.02%
REMおよびZrは酸化物を微細化させることでHAZ靭性の向上に寄与する元素である。一方、これら元素を過剰に添加すると却って酸化物の粗大化を招きHAZ靭性に悪影響を及ぼす。そこでREM、Zrはいずれも0.0003〜0.02%とすることが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.0150%であり、さらに好ましくは0.0010〜0.010%である。REMおよびZrは単独で用いても良いし、併用しても良い。
溶製時のAlとCaの添加順序は、Al→Caとする。Ca→Alとすると溶鋼中にCa酸化物およびAl酸化物が生成するが、これらの酸化物は粗大なTiNの生成起点となりやすい。つまり、円相当径1.0μm超の粗大TiNの生成によるHAZ靭性の低下を招いてしまう。これに対して、Al→Caの順で添加すれば、TiNの生成起点となり難いCa−Al複合酸化物が生成し、粗大なTiNの生成が抑制される。
鋳込みまでの保持時間t1(分)はCa−Al複合酸化物の生成に影響を及ぼす要件であり、t1が10分より短いとCa−Al複合酸化物が十分に生成せず、粗大なTiNによるHAZ靭性の低下をもたらす。なぜなら、本発明では上述のようにAl→Caの順に添加するのであるが、まずAlを添加した時点で溶鋼中にAl酸化物が生成し、続いてCaを添加して保持することによってAl酸化物がCa−Al複合酸化物に変化するのであり、t1が短いとCa−Al酸化物が十分生成せずAl酸化物が多数残存することとなるからである。一方、t1が90分以上になると、生成した酸化物が粗大化してHAZ靭性に悪影響を及ぼす。t1は好ましくは25≦t1≦80である。
t2が600秒を超えると、粗大なTiNの生成量が増加し、その分0.05〜1.0μmのサイズのTiNが減少し、十分なHAZ靭性が確保できなくなる。t2は好ましくは570秒以下である。
Thが1050℃未満、あるいはt3が2時間未満であると、0.05〜1.0μmのサイズのTiNが十分に得られない。一方、Thが1200℃を超える、あるいはt3が5時間を超えると、TiNのオストワルド成長が促進され、0.05μm未満の微細なTiNが確保できなくなる。Th(℃)は好ましくは1080≦Th≦1180であり、t3(時間)は好ましくは2.5≦t3≦4.5である。
Tfが900℃未満であると、0.05μm未満の微細なTiNが十分に得られずHAZ靭性の低下を招く。Tf(℃)は好ましくはTf≧930である。Tf(℃)の上限は特に限定されないが、概ね1000℃である。
表1〜4に示す化学成分組成の鋼を、表5〜8に示した条件で、溶製、鋳造してスラブ(断面形状150mm×250mm)とした後、熱間圧延を行い、板厚80mmの熱間圧延板を得た。なお、表1〜4においてREMはCeを50%程度とLaを25%程度含有するミッシュメタルの形態で添加した。また、表5〜8において、Al、Caの添加順序が「○」とはAl→Caの順に添加したことを意味し、「×」とはCa→Alの順に添加したことを意味する。
各熱延板のt/4(4:板厚)位置から試験片を切り出し(試験片の軸心が熱延板のt/4位置となるように採取)、圧延方向および板厚方向に平行な断面からレプリカTEM試験片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観察倍率60000倍、観察視野2μm×2μmの条件で5視野観察した。そしてEDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)によってTi、Nを含む粒子を判別してTi含有窒化物とした。さらに画像解析によってその視野中のTi含有窒化物の面積を測定し、円相当径に換算して0.05μm未満のTi含有窒化物の個数を計測し、1mm2あたりに換算して個数密度を求めた。但し、0.01μm以下の粒子についてはEDXの信頼性が十分でないため、解析から除外した。
観察倍率を15000倍にしたこと、および観察視野を8μm×8μmにしたこと以外は、上記測定と同様にして、円相当径0.05〜1.0μmのTi含有窒化物の個数密度を求めた。
上記と同様に、熱延板のt/4位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を、Carl Zeiss社製の電界放射式走査型電子顕微鏡[SUPRA35]を用いて観察した。観察倍率は1000倍、観察視野は0.06μm2で、20視野観察した。上記測定と同様にTi含有窒化物を判別し、画像解析により円相当径1.0μm超のものの個数密度を求めた。
各熱延板の表面から深さt/4位置から、圧延方向にシャルピー衝撃試験片(JIS Z2242に規定される標準試験片)を採取し、大入熱溶接を模擬した熱サイクル試験を行い、HAZ靭性を評価した。このとき熱サイクル試験は、上記試験片を1400℃に加熱して60秒保持した後、800℃〜500℃の温度範囲を500秒かけて冷却したのであり、溶接入熱量が55kJ/mmの溶接に相当する。その後、JIS Z2242に準拠して、−40℃の温度でシャルピー衝撃試験を行い、vE−40を測定した。試験は3本の試験片について行い、これらのvE−40の平均値が190Jを超えるものをHAZ靭性に優れると評価した。なお、表8のa〜fについては、3本の試験片のvE−40の最小値も示した。
表5のNo.1〜3、5、14、表6のNo.31、および表8のNo.c、dについて熱延板から試験片を採取し(12.5mm×32mm×55mm)、実施例1と同様の熱サイクル試験を行った。該試験片において、熱延板の表面から深さt/4位置に相当する部分について、EBSP(Electron Back−Scattering Pattern)測定を実施し(視野:200μm×200μm)、結晶方位差15°以上の大角粒界で囲まれたHAZベイナイト組織の平均粒径を線分法で測定した。結果を表9、図1に示す。
Claims (4)
- 質量%で、
C :0.03〜0.10%、
Si:0.25%以下(0%を含む)、
Mn:1.0〜2.0%、
Al:0.005〜0.050%、
Nb:0.002〜0.04%、
Ti:0.010〜0.080%、
Ca:0.0005〜0.010%、
N :0.0020〜0.020%を含有するとともに、
Ni:1.5%以下(0%を含まない)、Cu:1.50%以下(0%を含まない)、Cr:1.20%以下(0%を含まない)、およびMo:1.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
下記(1)式で表されるA値が、125≦A≦200であるとともに、下記(2)式で表されるG値との間に、A/G≧4350の関係を有し、
更に、
円相当径0.05μm未満のTi含有窒化物が5.0×106個/mm2以上、
円相当径0.05〜1.0μmのTi含有窒化物が1.0×105個/mm2以上、
円相当径1.0μm超のTi含有窒化物が5個/mm2以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板。
A=53+104[C]+76[Cu]+109[Cr]+37[Ni]
+2422[Nb]+31[Mo] ・・・(1)
G=[Nb]+5[B] ・・・(2)
[式(1)、(2)中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。] - 更に、V:0.10%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の鋼板。
- 更に、B:0.0010〜0.0050%を含有する請求項1または2に記載の鋼板。
- 更に、REM:0.0003〜0.02%および/またはZr:0.0003〜0.02%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板。
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