JP4914783B2 - シャー切断性に優れた大入熱溶接用厚鋼板 - Google Patents

シャー切断性に優れた大入熱溶接用厚鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、例えば船舶や海洋構造物等の溶接構造物に適用される厚鋼板に関し、殊に大入熱溶接後の熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)の靭性に優れると共に、シャー切断性にも優れた厚鋼板に関するものである。
近年、例えばコンテナ船等の大型化が進められ、板厚が40mm以上の厚鋼板が用いられることがある。このような厚鋼板を効率良く溶接するために、入熱量が40kJ/mm以上であるような大入熱溶接若しくは超大入熱溶接(以下、「大入熱溶接」で代表することがある)を行うことが求められている。
しかしながら、大入熱溶接を行うと、HAZが高温のオーステナイト領域まで加熱されてから徐冷されるため、その組織が粗大化し、HAZ靭性が著しく劣化するという問題がある。こうしたことから、従来では、溶接入熱量の制限を余儀なくされていた。
このような大入熱溶接で良好なHAZ靭性を達成するために、例えば特許文献1は、厚鋼板中のC含有量を低減させると共に、不可避的に混入してくるPの含有量を制限し、加えてNbおよびBの含有量を適切な範囲に制御することを提案している。また特許文献2は、溶接用鋼中に存在するTiN系介在物の中にNbを積極的に含有させて、粗大フェライトの生成を抑制している。しかしながらこれらの技術では、TiNが不足しているか、またはTiNが足りている場合にはそのTiNが粗大化していたり、CaO酸化物等によるピン止め効果が十分でないために、HAZ靭性の更なる改善の余地がある。また、後述する母材鋼板のシャー切断性については考慮されていない。
特許文献3は、鋼材にNを比較的多量に含有させ、且つTiとBの含有量バランスを適切に制御することを提案している。しかしながらこうした技術においても、TiNやBNの析出量が十分でなかったり、微細でなかったりし、またNb無添加で焼入れ性が低いためにフェライトが粗大になったりするため、HAZ靭性の更なる改善の余地がある。また、後述する母材鋼板のシャー切断性については考慮されていない。
一方、熱間圧延により所定の板厚に圧延された厚鋼板は、冷却床で冷却されてから採寸作業が行われ、採寸された厚鋼板は所定寸法の幅および長さに切断されることになる。そして、この切断は、剪断機による切断やガス切断が行われる。通常、板厚が50mm程度よりも薄い厚鋼板では剪断機により切断され、板厚が50mm程度よりも厚い厚鋼板ではガス切断が行われているが、前記剪断機としては、厚鋼板のトップ部およびボトム部を切断するクロックシャー、耳部を切断するサイドシャー、厚鋼板の幅方向を二分割するスリッター、長さ方向を所定の寸法に切断するエンドシャー等があり、これらの剪断機で構成される切断ラインを通過させることによって、厚鋼板が所定の寸法にされることになる。
上記のような剪断工程において発生する鋼板切断面の不良は、タレ、カエリ、機械割れ、切込み、段着き等が知られており、これらが発生若しくは大きくなった場合には、そのままでは製品としては使用できず、ブラインダー研磨等の手入れや再切断が必要となり、歩留まりの低下や製造コストの上昇を招くことになる。
上記のような切断面不良の対策として、これまで様々な提案がなされている。こうした技術として、例えば非特許文献1には、これらの切断面不良は剪断機の設備的な条件によって決まる度合いが大きいとして、剪断機の設備条件を適正値に管理することが提案されている。また、特許文献4には、タレを少なくする方法として、切断線を含むクロップ部を予熱してから剪断機により切断する方法が開示されている。
本発明者らが、従来の技術について検討したところによれば、剪断機の設備条件を適切に管理しても、機械構造用、建築土木用およびラインパイプ用として適用されるような引張強度が550MPa以上の高靭性高強度厚鋼板の破断面には、発生頻度は少ないものの、板厚中心部に沿った割れ(以下、「シャー切断割れ」と呼ぶ)が発生することが確認できた。
上記のような各種用途に適用される厚鋼板は、短期間で大量生産する必要があり、予熱されることなく剪断機にて切断されるものである。シャー切断割れが発生した場合、オフラインにおけるガス切断によって再切断を行い、割れ部分を除去しなければならず、大幅な工期延長と製造コストの増加を余儀なくされることになる。しかしながら、これまでこうしたシャー切断割れを効果的に防止し得る技術が確立されていないのが実情である。
シャー切断割れ防止する技術として、例えば特許文献5には、圧延後の冷却速度を増大させることによって(加速冷却)、鋼材中の偏析を調整してシャー切断性を改善した技術が提案されているが、高速冷却を実施するものであるので、製造できる強度範囲が限られる等の問題があり、シャー切断割れへの対策としては不十分である。
特開2003−166033号公報 特開2004−218010号公報 特開2005−200716号公報 特開平6−190627号公報 特開2001−26821号公報 「鉄鋼便覧第3巻III(1)圧延基礎・鋼板」(日本鉄鋼協会編、第3版、第285頁)
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、大入熱溶接でも良好なHAZ靭性を示すと共に、シャー剪断機によって切断した場合であってもシャー切断割れが発生しないようなシャー切断性に優れた厚鋼板を提供することである。
上記目的を達成し得た本発明の厚鋼板とは、C:0.030〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.8〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.015〜0.03%、B:0.0010〜0.0035%、N:0.0050〜0.01%、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、O:0.01%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共に、下記(1)式および(2)式を満足し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つベイナイト分率が95面積%以上の組織であり、ベイナイトのブロックサイズの平均円相当直径が40μm以下であると共に、ベイナイトのブロックサイズの最大円相当直径と前記平均円相当直径の差が40μm以下である点に要旨を有するものである。尚、上記「円相当直径」とは、ベイナイト・ブロックの大きさに着目して、その面積が等しくなる様に想定した円の直径を求めたものである。
1.5≦[Ti]/[N]≦4.0 … (1)
40≦X値≦160 … (2)
X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]
+14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]
(式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。)
本発明の厚鋼板では、良好な低温靭性およびHAZ靭性の観点から、(a)δ域の温度範囲が40℃以下であることや、(b)深さt/4の位置(t=板厚)において、Ti系炭・窒化物の平均粒子径が43nm以下であること、等の要件を満足させることが好ましい。尚、「Ti系炭・窒化物」とは、Tiを含む炭化物、窒化物および炭窒化物のいずれをも含む趣旨である。
本発明の厚鋼板には、必要によって、更に(a)Nb:0.035%以下(0%を含まない)、(b)Cu:2.0%以下(0%を含まない)、Ni:2.0%以下(0%を含まない)およびCr:2.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)、(d)V:0.1%以下(0%を含まない)、(e)Mg,Sr,Baよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.01%以下(0%を含まない)、(f)希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)、(g)Zr,TaおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.05%以下(0%を含まない)、(h)Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)、等を含有することも有用であり、含有される成分に応じて、鋼板の特性が更に改善される。
本発明によれば、各成分の量および組織を適切な範囲内に収めると共に、上記(1)式および(2)式を満足するように化学成分組成を調整し、且つベイナイトのブロックサイズの平均円相当直径や、ベイナイトのブロックサイズの最大円相当直径と前記平均円相当直径の差を適切に制御することによって、大入熱溶接でも優れたHAZ靭性を示すと共に、シャー切断性にも優れた厚鋼板が実現できた。
本発明者らは、Ti系炭・窒化物を微細化することによって、大入熱溶接でも良好なHAZ靭性を達成させることを試みた。従来のTi系炭・窒化物の分散状態は、溶鋼凝固時の冷却速度が一定であれば、Ti、Nの添加バランスのみにより定まるものと考えられてきた。しかし本発明者らが鋭意検討した結果、鋼の状態図において表されるδ域の温度範囲を縮小させることにより、同じTi、N添加量でも、Ti系炭・窒化物を微細分散させ得ることを見出した。
上記(2)式の関係を規定するX値は、δ域の温度範囲に関する関数である。本発明者らは、HAZ靭性の改善を試みて上記(2)式の関係を見出したのであるが、まずその経緯について説明する。上記「δ域」とは、鋼の状態図においてδ鉄が含まれる領域を意味する。この「δ鉄が含まれる領域」は、δ鉄のみの領域の他にも、δ+γの2相領域など、δ鉄と他の状態が含まれる領域も包含する。そして「δ域の温度範囲」とは、δ鉄が含まれる温度範囲(δ域の上限温度と下限温度との差)をいう。ここで特定組成の鋼において、例えばδ鉄のみの温度範囲とδ+γ鉄の温度範囲がある場合、これらの温度範囲の合計が、δ域の温度範囲である。このδ域の温度範囲は、総合熱力学計算ソフトウェア(Thermo−calc、CRC総合研究所から購入可能)に、鋼板の化学成分組成を入力することにより計算することができる。
このδ鉄中ではTiの拡散速度が速いため、δ域の温度範囲が広いと、δ鉄が存在する時間が長くなり、粗大なTi系炭・窒化物が形成され易くなると考えられる。そこで化学成分組成を調整してδ域の温度範囲を縮小することにより、Ti系炭・窒化物を微細化することを検討した。そのためにThermo−calcの計算にて、特定成分を基準に化学成分量の1つだけを変更することにより、各化学成分のδ域の温度範囲への影響を調べた。そのような検討により、δ域の温度範囲と相関関係にあり、化学成分組成の関数で表されるX値を定めた:
X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]
+14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]
(式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。)
X値の上記式中の係数は、特定成分の鋼から、各化学成分を変化させた場合のδ域の温度範囲の変化量に対応する。具体的には、例えば[C]の係数の「500」は、C量を0.01%だけ増大させたときに、Thermo−calcの計算にてδ域の温度範囲が約5℃減少することを意味する。そしてX値とδ域の温度範囲とは、ほぼ反比例の関係(X値が増大すれば、δ域の温度範囲は減少するという関係)にある。
尚、上記X値を規定する元素のうちには、本発明の厚鋼板の基本成分(C,Si,Mn)以外にも、必要によって含有されるものも含まれるが(Nb,Cu,Ni,Cr,Mo,V等)、これらの元素を含まないときには、これらの項目がないものとしてX値を計算し、これらの元素を含むときには、上記式からX値を計算すれば良い。
このような考えに基づいて、様々なX値を有する鋼板を製造して調べたところ、X値を増大させることで、Ti系炭・窒化物の平均粒子径を微細化でき、HAZ靭性を向上させ得ることを見出した。
そしてX値を増大させることで、更に、鋼板の低温靭性も向上することを見出した。この現象は、X値を増大させることで、Ti系炭・窒化物の平均粒子径が減少したことによるものと推定される。
上記のように本発明の厚鋼板は、その化学成分組成が下記(2)式:
40≦X値≦160 … (2)
X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]
+14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]
(式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。)
を満たしている点に、大きな特徴がある。但し、本発明は、上記のような推定理由(δ域の温度範囲の減少による炭・窒化物の平均粒子径の減少、平均粒子径の減少によるHAZ靭性および低温靭性の向上等)には制限されず、本発明の範囲は、特許請求の範囲により定められる。即ち特許請求の範囲に規定する構成要件を満たす厚鋼板は、本発明の範囲内に包含される。
各化学成分量が適正範囲内であれば、X値が大きくなるほど、Ti系炭・窒化物の平均粒子径、およびHAZ靭性並びに母材靭性が向上する。このX値の下限は、40(好ましくは45、より好ましくは50)である。X値の上限は、各化学成分の適正量から定められ、160(好ましくは100以下、より好ましくは75以下)である。硬質相MA組織(マルテンサイト−オーステナイトの混合組織)の生成抑制の観点から、X値の好ましい上限は、75である。
本発明の厚鋼板では、X値が40以上となるように化学成分組成を調整することにより、Ti系炭・窒化物を微細にしている。しかしTi含有量とN含有量とのバランスが崩れると、鋼板の靭性、特にHAZ靭性が劣化する。具体的にはTi含有量[Ti]とN含有[N]の比([Ti]/[N])が4.0を超える場合には、Ti系炭・窒化物が粗大になり、HAZ靭性が低下する。逆に1.5未満であれば、過剰Nの影響で、低温靭性およびHAZ靭性が低下する。よって本発明の厚鋼板では、X値を規定する上記(2)式に加えて、下記(1)式:
1.5≦[Ti]/[N]≦4.0 … (1)
を満たすように、Ti含有量[Ti]とN含有量[N]とのバランスが図られていることも特徴の1つとする。この[Ti]/[N]の好ましい下限は2.0であり、好ましい上限は3.5である。
靭性の観点から、本発明の厚鋼板中のTi系炭・窒化物は微細であることが好ましい。よって本発明の厚鋼板中のTi系炭・窒化物は、好ましくは43nm以下、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは35nm以下である。
本発明におけるTi系炭・窒化物の平均粒子径の値は、以下のようにして測定した値である。まず、鋼板の熱履歴を代表する部分として深さt/4の位置(t=板厚)を、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観察倍率6万倍以上、観察視野2.0μm×2.0μm以上、観察箇所5箇所以上の条件で観察する。そしてその視野中の各炭・窒化物の面積を測定し、この面積から各炭・窒化物の円相当径を算出する。この各炭・窒化物の円相当径を算術平均(相加平均)して得られる値を、本発明におけるTi系炭・窒化物の平均粒子径とする。
尚、Ti系炭・窒化物であるかの判別は、各炭・窒化物粒子の主体となる成分によって定まる。即ち、「Ti系炭・窒化物」とは、炭素および窒素を除いた残りの元素の合計質量を100%としたとき、Tiの割合が50質量%以上になるものを言う。元素の量は、エネルギー分散型X線検出器(EDX)によって決定することができる。但し、あまりに微細な炭・窒化物は測定できないため、本発明における「Ti系炭・窒化物」は、5nm以上のものに限定する。
厚鋼板では、上記のようにHAZ靭性が良好であることに加え、シャー切断性に優れていることも要求される。シャー切断後の切断面の不良が存在すると、そのままでは製品として使用できず、グラインダー等による手入れや、再切断が必要となり、歩留まりの低下や製造コストの上昇を招くことになる。本発明者らは、シャー切断性の向上を合わせて達成するという観点からも検討を重ねてきた。その結果、厚鋼板の組織をベイナイト主体とする(ベイナイト分率が95面積%以上)と共に、ベイナイトのブロックサイズ(以下、「ベイナイト・ブロックサイズ」と記す)に着目した組織制御をすれば、シャー切断性が良好になり得ることを見出した。
本発明の厚鋼板では、ベイナイト・ブロックサイズの平均円相当直径を40μm以下とすると共に、ベイナイト・ブロックサイズの最大円相当直径と前記平均円相当直径の差を40μm以下に制御して組織のバラツキを小さくすることによって、優れたシャー切断性が実現できる。ベイナイト組織を制御することによってシャー切断性が良好となるメカニズムについては、十分に明らかにできた訳ではないが、おそらく組織が微細均一なほど局部的(ミクロ)な応力集中が減少し、また素材自体も強靱になるので、劈開面にそって割れることが少なくなるものと推定される。
上記の効果を発揮させるためには、ベイナイト・ブロックサイズが平均円相当直径で40μm以下である必要があるが、ベイナイト・ブロックサイズは微細なほど良く、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下(更に好ましくは10μm以下)である。またベイナイト・ブロックサイズの最大円相当直径と前記平均円相当直径の差は、組織のバラツキを小さくするという観点から40μm以下に制御されるのであるが、この差の値も小ければ小さいほど好ましく、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下(更に好ましくは10μm以下)である。
ベイナイト・ブロックサイズは、EBSP解析装置(Electoron Backscatter Pattern解析装置:「TexSEM」Laboratories社製)、およびFE−SEM(電解放出型走査電子顕微鏡:「XL30S−FEG」Philips社製)を用いて測定した。傾角が15°以上の境界をベイナイト・ブロックとして、その大きさ(円相当直径)を測定した。このときの測定条件は、測定領域:250μm×250μm、測定ピッチ:0.4μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外した。また、ベイナイト・ブロックサイズが2.0mm以下のものについては、測定ノイズと判断し、ベイナイト・ブロックサイズの平均計算の対象から除外した。
本発明では、ベイナイトを主体とする組織であることが必要である。またベイナイト・ブロックサイズを上記のように規定することによって、良好なシャー切断性が発揮されることになる。但し、こうした効果を発揮させるためには、必ずしも100面積%がベイナイト組織である必要はなく、ベイナイト分率で95面積%以上であれば良い。ベイナイト以外の組織としては、マルテンサイト、フェライトまたはパーライト等が挙げられる。尚、本発明において、ベイナイト分率は、下記の方法に従って測定した。
[ベイナイト分率の測定方法]
各鋼板のt/4(t:板厚)位置から採取した2cm角の試験片を、鏡面研磨した後、ナイタール腐食液(2%硝酸−エタノール溶液)でエッチングし、光学顕微鏡によって組織を観察し(倍率:100倍)、n=10(回)として撮影した写真を画像解析装置(Media Cybernetics製:Imega−Pro Plus)によって、ベイナイト分率を算出した。この際、フェライト以外のラス状組織は全てベイナイトとみなした。
本発明の厚鋼板は、その化学成分組成が上記(1)式および(2)式の関係を満足すると共に、ベイナイト・ブロックサイズを制御することによって、HAZ靭性と共にシャー切断性が優れたものとなる。しかし、これらの要件を満足していても、夫々の化学成分(各元素)の含有量が適正範囲内になければ、上記の効果を達成することができない。よって本発明の厚鋼板は、上記(1)式および(2)式、並びにベイナイト・ブロックサイズが規定範囲を満たすことに加えて、夫々の化学成分の量が、以下に記載するような適正範囲内にあることも特徴とする。以下、化学成分について個々に説明する。
[C:0.030〜0.15%]
Cは、鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、また鋼の状態図におけるδ域の温度範囲を縮小させるために有効な元素である。C含有量が0.030%未満ではそれらの効果が発揮されなくなる。一方、C含有量が0.15%を超えると、硬質の第2相MA組織が多くなり過ぎて、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。そこでC含有量を0.030〜0.15%と定めた。C含有量の好ましい下限は0.040%であり(より好ましくは0.050%以上)、好ましい上限は0.10%(より好ましくは0.070%以下)である。
[Si:1.0%以下(0%を含まない)]
Siは、鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、そのためには、0.01%以上(より好ましくは0.10%以上)含有させることが好ましい。しかしSiを過剰に含有させると、MA組織が多く生成し、母材靭性およびHAZ靭性が低下するため、その上限を1.0%とする必要がある。Si量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.50%、更に好ましくは0.40%である。
[Mn:0.8〜2.0%]
Mnは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を確保するのに有効な元素である。Mn含有量が0.8%未満では、強度確保の作用が充分に発揮されない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。そこでMn含有量を、0.8〜2.0%と定めた。Mn含有量の好ましい下限は1.00%であり、より好ましくは1.20%、更に好ましくは1.50%である。一方、Mn量の好ましい上限は1.80%、より好ましくは1.60%である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
不純物元素であるPは、母材靭性およびHAZ靭性に悪影響を及ぼすため、その量は、できるだけ少ないことが好ましい。よってP量は、0.03%以下、好ましくは0.010%以下である。しかし工業的に、鋼中のP量を0%にすることは困難である。
[S:0.01%以下(0%を含まない)]
Sは、MnSを形成して延性を低下させる元素であり、特に高張力鋼において悪影響が大きくなるため、その量は、できるだけ少ないことが好ましい。よってS量は、0.01%以下、好ましくは0.005%以下である。しかし工業的に、鋼中のS量を0%にすることは困難である。
[Al:0.01〜0.10%]
Alは、脱酸、およびミクロ組織の微細化により母材靭性を向上させる効果を有する元素である。このような効果を充分に発揮させるため、Alを0.01%以上含有させる。もっともAlを過剰に含有させると、却って母材靭性およびHAZ靭性が低下するため、上限を0.10%とする。Al含有量の好ましい下限は0.020%である。一方、その好ましい上限は0.060%であり、より好ましくは0.040%以下である。
[Ti:0.015〜0.03%]
Tiは、Nと微細な窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することにより(いわゆるピンニング効果)、HAZ靭性を向上させるために有効な元素である。このような効果を充分に発揮させるためには、Tiを0.015%以上含有する。しかしTi含有量が過剰になると、却ってHAZ靭性が劣化するため、Ti含有量の上限を0.03%と定めた。Ti含有量は、好ましくは0.017%以上、0.020%以下とするのが良い。
[B:0.0010〜0.0035%]
Bは、大入熱溶接の際に、HAZ、殊にボンド部の付近で、BNを核にした粒内フェライトを生成させると共に、固溶Nの固定作用も有し、HAZ靭性改善に重要な元素である。本発明では、その効果を充分に発揮させるためにBを、通常の厚鋼板中の含有量よりも多く、0.0010%以上含有させている。しかしB含有量が過剰になると、大入熱溶接の際に粗大なベイナイト組織が形成されるため、却ってHAZ靭性が劣化する。そのためB含有量の上限を0.0035%と定めた。B含有量の好ましい下限は0.0015%(より好ましくは0.0020%以上)、好ましい上限は0.0030%(より好ましくは0.0025%以下)である。
[N:0.0050〜0.01%]
Nは、Tiと結合して微細な炭窒化物を形成し、大入熱溶接の際にオーステナイト粒の粗大化を抑制し、HAZ靭性を向上させる効果を有する元素である。N含有量が少な過ぎると、上記効果が充分に発揮されないため、その下限を0.0050%と定めた。一方、N含有量が過剰になると、母材靭性およびHAZ靭性に悪影響を及ぼすため、その上限を0.01%と定めた。N含有量の好ましい下限は0.0055%であり、より好ましくは0.0060%以上である。またN含有量の好ましい上限は0.0090%であり、より好ましくは0.0080%以下である。
[Ca:0.005%以下(0%を含まない)]
Caは、HAZ靭性を向上させる効果を有する元素である。詳しくは、Caは、MnSを球状化するという介在物の形態制御による異方性を低減させることによって、HAZ靭性を向上させる。一方、CaS、CaOを形成し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することによってHAZ靭性を向上させる。このような効果を充分に発揮させるために鋼板中に、Caを好ましくは0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Caの含有量が過剰であると、却って母材靭性およびHAZ靭性を劣化させるので、その上限を0.005%と定めた。Ca量の好ましい上限は0.0030%であり、より好ましくは0.0025%である。
[O:0.01%以下(0%を含まない)]
Oは、Al、Ca、Mg等と反応して高温で安定な酸化物を形成し、HAZの旧オーステナイト粒の粗大化を防止するのに有効に働く元素である。こうした効果はその含有量が多くなればなるほど増大するが、過剰になると清浄度が低下してしまい、HAZ靭性が却って低下するので、その上限を0.01%と定めた。
本発明の厚鋼板は、上記成分の他は基本的に、Feおよび不可避不純物からなる。しかし本発明は、他の元素が含有される厚鋼板を排除するものではなく、本発明の範囲には、本発明の効果が損なわれない範囲で、他の成分元素を含有している厚鋼板も含まれる。
例えば本発明の厚鋼板には、上記成分の他、必要に応じて、更に(a)Nb:0.035%以下(0%を含まない)、(b)Cu:2.0%以下(0%を含まない)、Ni:2.0%以下(0%を含まない)およびCr:2.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(c)Mo:1.0%以下(0%を含まない)、(d)V:0.1%以下(0%を含まない)、(e)Mg,Sr,Baよりなる群から選ばれる1種以上を合計0.01%以下(0%を含まない)、(f)希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)、(g)Zr,TaおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.05%以下(0%を含まない)、(h)Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であり、含有させる成分の種類に応じて、鋼板の特性がさらに改善される。
[Nb:0.035%以下(0%を含まない)]
Nbは、素地の焼入れ性を向上させて鋼板の強度を高めるために有効な元素であり、必要により含有される。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、母材靭性およびHAZ靭性が低下するため、その上限を0.035%と定めた。Nbは、その効果を発揮させるためには、0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.010%以上含有させるのが良い。またNb含有量のより好ましい上限は0.025%であり、更に好ましくは0.020%以下とするのが良い。
[Cu:2.0%以下(0%を含まない)、Ni:2.0%以下(0%を含まない)およびCr:2.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
Cu,NiおよびCrは、いずれも焼入れ性を高めて強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。このうちCuは、Cと同様にδ域の温度範囲を縮小させて、Ti系炭窒化物を微細化する効果を有すると考えられる。またNiも、δ域の温度範囲を縮小させるために有効な元素である。このような効果を充分に発揮させるために、いずれもその含有量は好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.40%以上であることが推奨される。これらの量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が低下する傾向があるため、その上限はいずれも2.0%と定めた。好ましくは1.0%以下である。
[Mo:1.0%以下(0%を含まない)]
Moは、焼入れ性を高めて強度を向上させることに加えて、焼戻し脆性を防止するために有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を充分に発揮させるために、Mo含有量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上であることが推奨される。しかしMo含有量が過剰になると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため、その上限を1.0%と定めた。Mo含有量は、より好ましくは0.50%以下である。
[V:0.1%以下(0%を含まない)]
Vは、少量の添加により、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果を有する元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を充分に発揮させるために、V量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上であることが推奨される。しかしV量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため、その上限を0.1%と定めた。V量は、好ましくは0.05%以下である。
[Mg,SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.01%以下(0%を含まない)]
Mg,SrおよびBaは、厚鋼板中に微細な酸化物を生成し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することによってHAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を十分に発揮させるためには、これらの1種以上(合計で)を0.0003%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これらの含有量が過剰になると、却って母材靭性およびHAZ靭性を劣化させるので、その上限を0.01%とした。より好ましい上限は、0.0040%であり、更に好ましくは0.0020%である。
[希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)]
希土類元素(REM)は、酸化物または硫化物として存在し、HAZのオーステナイト粒微細化やフェライト変態の促進作用によってHAZ靭性を改善する作用があり、必要によって有効に活用することができる。しかしながら、REMを過剰に含有させると、HAZ靭性を却って劣化させるので、その上限は0.01%とすることが好ましい。REMのより好ましい上限は0.003%である。尚、本発明で用いるREMは、ランタノイド系列希土類元素のいずれをも含むものであり、これらの1種以上を含有させれば良い。
[Zr,TaおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.05%以下(0%を含まない)]
Zr,TaおよびHfは、Tiと同様に炭素・窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制するので、HAZ靭性の改善に有効な元素である。このような効果を十分に発揮させるため、上記元素の1種以上を合計で0.001%以上含有させることが好ましいが、これらの含有量が過剰になると、母材靭性およびHAZ靭性が却って低下させるので、これらの元素を含有させる場合、その合計で0.05%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.03%以下とするのが良い。
[Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)]
CoおよびWは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を高める効果を有する元素である。このような効果を充分に発揮させるため、これらの1つまたは両方を、夫々0.2%以上で含有させることが好ましい。しかしこれらの量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため、これらの量の上限を、いずれも2.5%と定めた。
本発明の厚鋼板を製造するに当たっては、上記のように化学成分組成、[Ti]/[N]およびX値の要件を満たす鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとした後、例えば950〜1300℃の範囲に加熱した後、熱間圧延を行い、850±50℃の温度範囲における圧延パス数を4回以上とし(但し、1パス当りの圧下量は5mm以上)、引き続き750〜800℃での累積圧下率を10〜30%となるように圧延を終了し、その後700〜400℃の温度範囲を5℃/秒以上で冷却するようにすれば良い。
上記製造条件において、850±50℃の温度範囲における圧延パス数を4回以上で1パス当り5mm以上とするのは、ベイナイト・ブロックサイズの微細化という観点からであり、このときの圧延パス数が4回未満となるとベイナイト・ブロックサイズを平均円相当直径で40μm以下にすることができなくなる。また750〜800℃での累積圧下率を10〜30%とするのは、ベイナイト・ブロックサイズを小さくすると共に、その最大値を小さくするという観点からであり、このときの圧下率が10%未満ではベイナイト・ブロックサイズの平均円相当直径が40μmを超えることになり、圧下率が30%を超えるとベイナイト・ブロックサイズの最大円相当直径が大きくなって、これらの差(ベイナイト・ブロックサイズの最大円相当直径と平均円相当直径の差)が40μmを超えることになる。
また700〜400℃の温度範囲を5℃/秒以上で冷却するのは、ベイナイトが変態する温度域(700〜400℃)をできるだけ速く冷却することによってベイナイト・ブロックサイズを小さくするという観点からであり、この温度域での冷却速度が5℃/秒未満になるベイナイト・ブロックサイズの平均円相当直径が40μmを超えることになる。
本発明の厚鋼板は、X値を制御してδ域の温度範囲を狭くさせているので、溶鋼を通常の条件で冷却(例えば1500℃から1100℃までを0.1〜2.0℃/秒の冷却速度で冷却)してスラブを形成することにより、十分に小さいTi系炭・窒化物の平均粒子径を形成することができる。但し、より微細な炭・窒化物を形成させるために、鋳造機の冷却水量や冷却方法を変更させて、凝固時の冷却速度を向上させることが好ましい。
本発明は厚鋼板に関するものであり、該分野において厚鋼板とは、JISで定義されるように、一般に板厚が3.0mm以上であるものを指す。しかし本発明の厚鋼板の板厚は、好ましくは20mm以上、好ましくは40mm以上、更に好ましくは60mm以上である。なぜなら本発明の厚鋼板は、入熱量が40kJ/mmであるような大入熱溶接若しくは超大入熱溶接であっても良好なHAZ靭性を示すので、板厚が厚くても、入熱量を増大させることで効率よく溶接できるからである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1〜4に示す組成の鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を0.1〜2.0℃/分の冷却速度で1500℃から1100℃まで冷却してスラブとした後、1100℃に加熱して熱間圧延を行い、および場合により焼戻しを行い、板厚40mmの高張力鋼板を製造した。このとき、850±50℃の温度範囲における圧延パス数(1パス当りの圧下量:試験No.78のものは4mm、それ以外は10mm)、750〜800℃での累積圧下率、および700〜400℃の温度範囲での冷却速度を制御した。下記表1〜4には、鋼板の化学成分組成から計算した[Ti]/[N]、X値、およびThermo−calcから計算したδ域の温度範囲の値(表中で「δ域」と記載)を併記した。
Figure 0004914783
Figure 0004914783
Figure 0004914783
Figure 0004914783
上記のようにして製造した鋼板について、Ti系炭・窒化物の粒子径(平均、最大)、鋼板の引張強度、母材靭性、HAZ靭性およびシャー切断性を、下記の方法で測定すると共に、ベイナイトの面積率を前述した方法によって測定した。これらの結果を、製造方法(850±50℃の温度範囲における圧延パス数、750〜800℃での累積圧下率、および700〜400℃の温度範囲での冷却速度)と共に、下記表5〜8に示す。
[Ti系炭・窒化物の平均粒子径]
深さt/4の位置(t=板厚)を、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観察倍率6万倍、観察視野2.0μm×2.0μm、観察箇所5箇所の条件で観察した。そしてその視野中の各炭・窒化物の面積を測定し、この面積から各炭・窒化物の円相当径を算出した。この各炭窒化物の円相当径を算術平均(相加平均)して、各鋼板におけるTi系炭・窒化物の平均円相当直径を算出した。またベイナイト・ブロックサイズの最大円相当直径を選び、前記平均円相当直径の差を求めた。(下記表5〜8には、「直径差(最大−平均)」と記す)。
[鋼板の引張強度]
深さt/4の位置(t=板厚)で、試験片の長手方向が鋼板の板幅方向(C方向)となるようにJIS4号試験片を採取し、引張試験を行うことにより、引張強度を測定した。
[母材靭性]
深さt/4の位置(t=板厚)で、試験片の長手方向が鋼板の圧延方向(L方向)となるように、JIS Z 2242に規定するVノッチ標準試験片を採取し、各温度でシャルピー衝撃試験(衝撃刃半径:2mm)を行い、−40℃における吸収エネルギー(vE-40)を測定した。
[HAZ靭性]
入熱量40kJ/mmで溶接(エレクトロガスアーク溶接)を行い、図1に示す部位からJIS4号試験片を採取し(ノッチ位置は、ボンドから0.5mmHAZ側)、−40℃でシャルピー衝撃試験(衝撃刃半径:2mm)を行い、吸収エネルギー(vE-40)を測定した。本発明では、吸収エネルギー(vE-40)が200J以上のものを合格とした。
[シャー切断性の評価]
シャー切断性の良否は、切断後の厚板切断面を磁粉深傷にて調査し、シャー切断割れ等のないものをシャー切断性が良好(後記表中「○」と表示)、シャー切断割れが認められたものを不良(後記表中「×」と表示)とした。
Figure 0004914783
Figure 0004914783
Figure 0004914783
Figure 0004914783
これらの結果から、次のように考察できる。まず試験No.1〜46のものは、本発明で規定する要件を満たすものであるが、いずれの特性(鋼板の引張強度、母材靭性、HAZ靭性およびシャー切断性)も良好であることが分かる。
これに対して、試験No.47〜78のものでは、本発明で規定する要件のいずれかを欠くものであり、いずれかの特性が劣化している。
HAZ靭性(vE-40)測定用の試験片を採取した位置を示す概略図である。

Claims (9)

  1. C:0.030〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.8〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.015〜0.03%、B:0.0010〜0.0035%、N:0.0050〜0.01%、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、O:0.01%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共に、下記(1)式および(2)式を満足し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つベイナイト分率が95面積%以上の組織であり、ベイナイトのブロックサイズの平均円相当直径が40μm以下であると共に、ベイナイトのブロックサイズの最大円相当直径と前記平均円相当直径との差が40μm以下であり、δ域の温度範囲が40℃以下であると共に、深さt/4の位置(t=板厚)において、Ti系炭・窒化物の平均粒子径が43nm以下であることを特徴とするシャー切断性に優れた大入熱溶接用厚鋼板。
    1.5≦[Ti]/[N]≦4.0 … (1)
    40≦X値≦160 … (2)
    X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]
    +14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]
    (式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。)
  2. 更に、Nb:0.035%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項に記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  3. 更に、Cu:2.0%以下(0%を含まない)、Ni:2.0%以下(0%を含まない)およびCr:2.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  4. 更に、Mo:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  5. 更に、V:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  6. 更に、Mg,SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  7. 更に、希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  8. 更に、Zr,TaおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.05%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の大入熱溶接用厚鋼板。
  9. 更に、Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜のいずれかに記載の大入熱溶接用厚鋼板。
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