JP5034392B2 - 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、建築・土木構造物等の大型構造物に使用される脆性亀裂伝播停止特性に優れた、板厚50mm超えの高強度厚鋼板およびその製造方法に関する。
船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、建築・土木構造物等の大型構造物においては、脆性破壊に伴う事故が経済や環境に及ぼす影響が大きいため、安全性の向上が常に求められている。
従って、この様な構造物に使用される鋼材に対しては、低温靭性が要求されることが多く、最近では、不慮の事故等で構造物に亀裂が発生した場合においても破壊に至ることを防止する観点から、低温における脆性亀裂伝播停止特性が要求されている。
一般に、鋼板の脆性亀裂伝播停止特性は高強度あるいは厚肉材ほど劣化する傾向がある。このため、コンテナ船やバルクキャリアーなどの船舶においてはその構造上、船体外板に高強度の厚肉材を使用される場合が多く、船舶の安全性確保の点から材料に対する脆性亀裂伝播停止特性の要求も一段と高度化している。
鋼材の脆性亀裂伝播停止特性を向上させる手段として、従来からNi含有量を増加させる方法が知られており、液化天然ガス(LNG)の貯槽タンクにおいては、9%Ni鋼が商業規模で使用されている。しかし、Ni量の増加はコストの大幅な上昇を余儀なくさせるため、LNG貯槽タンク以外の用途には適用が難しい。
一方、LNGのような極低温まで至らない、船舶やラインパイプに使用される鋼板の板厚が50mm以下の比較的薄手の鋼材に対しては、TMCP法により細粒化を図り、低温靭性を向上させて、優れた脆性亀裂伝播停止特性を付与することができる。
近年、合金コストを上昇させることなく、鋼材の表層部の組織を超微細化する技術が、脆性亀裂伝播停止特性を向上させる手段として提案されている。例えば、特許文献1では、脆性亀裂が伝播する際に、鋼材表層部に発生するシアリップ(塑性変形領域)が脆性亀裂伝播停止特性の向上に効果があることに着目し、シアリップ部分の結晶粒を微細化させて、伝播する脆性亀裂が有する伝播エネルギーを吸収させる方法が開示されている。
この製造方法としては、熱間圧延後の制御冷却により表層部分をAr変態点以下に冷却し、その後制御冷却を停止して表層部分を変態点以上に復熱させる工程を1回以上繰り返して行い、この間に鋼材に圧下を加えることにより、繰り返し変態させ又は加工再結晶させて、表層部分に超微細なフェライト組織又はベイナイト組織を生成させるものである。
さらに、特許文献2では、フェライト−パーライトを主体のミクロ組織とする鋼材において脆性亀裂伝播停止特性を向上させるには、両表面部は円相当粒径:5μm以下、アスペクト比:2以上のフェライト粒を有するフェライト組織を50%以上有する層で構成し、フェライト粒径のバラツキを抑えることが重要であることが開示されている。
バラツキを抑える方法として仕上げ圧延中の1パス当りの最大圧下率を12%以下にすることで局所的な再結晶現象が抑制されるとしている。しかし、上述の発明は、鋼材表層部のみを一旦冷却した後に復熱させ、かつ復熱中に加工を加えることによって、脆性亀裂伝播停止特性に効果のある組織を得るものであり、実生産規模では制御が容易ではないと考えられるプロセスである。また、板厚が50mmを超える厚肉材での記載もないため、厚肉材への適用は不明である。
このような問題を解決する方法として、特許文献3において、フェライト結晶粒の微細化のみならずフェライト結晶粒内に形成されるサブグレインに着目しTMCP法の延長技術が提供されている。
具体的には、板厚30〜40mmにおいて、鋼板表層の冷却および復熱などの複雑な温度制御を必要とせずに、(a)微細なフェライト結晶粒を確保する圧延条件、(b)鋼材板厚の5%以上の部分に微細フェライト組織を生成する圧延条件、(c)微細フェライトに集合組織を発達させるとともに加工(圧延)により導入した転位を熱的エネルギーにより再配置しサブグレインを形成させる圧延条件、(d)形成した微細なフェライト結晶粒と微細なサブグレイン粒の粗大化を抑制する冷却条件、によって脆性亀裂伝播停止特性を向上させる方法を提供している。しかし、板厚50mm超えの厚肉材での記載がなく、板厚50mm超えの厚肉材において所定の脆性亀裂伝播停止特性が得られるかどうか不明である。
一方、制御圧延において、変態したフェライトに圧下を加えて集合組織を発達させることにより、脆性亀裂伝播停止特性を向上させる方法も知られている。鋼材の破壊面上にセパレーションを板厚方向と平行な方向に生ぜしめ、脆性亀裂先端の応力を緩和させることにより、脆性破壊に対する抵抗を高める方法である。
例えば、特許文献4では、制御圧延により(110)面X線強度比を2以上とし、かつ円相当径20μm以上の粗大粒を10%以下とすることにより、耐脆性破壊特性を向上させている。
また、特許文献5では継手部の脆性亀裂伝播停止性能の優れた溶接構造用鋼として、板厚内部においての圧延面での(100)面のX線面強度比が1.5以上を有することを特徴とする鋼板が開示されている。その原理はこの集合組織発達による応力負荷方向と亀裂伝播方向の角度のずれであるとしている。
しかし、本技術においても、最大板厚は50mmの記載があるのみで、50mmを超える板厚の記載はなく、より厚肉への適用が困難と予想される。また、後述する板厚方向の亀裂伝播に対しての特性が全く検証されていない。
特開平4−141517号公報 特開2002−256375号公報 特許第3467767号公報 特許第3548349号公報 特開平6−207241号公報
一方、最近の6,000TEUを越える大型コンテナ船では鋼板の板厚は50mm以上で、板厚効果により破壊靱性が低下することに加え、溶接入熱もより大きくなるため、溶接部の破壊靭性が一層低下する傾向にある。
最近、このような厚肉大入熱溶接継手では、溶接部から発生した脆性亀裂は母材側に反れずに直進し、骨材等の鋼板母材部でも停止しない可能性があることが実験的に示され(山口ら:「超大型コンテナ船の開発 ― 新しい高強度極厚鋼板の実用 ―」,日本船舶海洋工学会誌,3,(2005),P70.)、50mm以上の板厚の鋼板を適用した船体構造の安全確保の上で大きな問題となっている。
造船分野でのコンテナ船やバルクキャリヤーなどの強力甲板部構造では、ウエブ材(ハッチコーミング)にT字継手によりフランジ材(甲板)が溶接された様な構造になっている。脆性破壊はウエブ材の大入熱溶接部での進展が想定されるわけであるが、この場合、フランジ材では亀裂は板厚方向の進展となる。
つまり、一般に厚鋼板で脆性亀裂伝播を問題とする場合は、図1に示す様に亀裂は板厚方向に対し垂直な方向へ進展する亀裂を扱うものであり、ESSO試験等の標準的な試験で評価される。しかし、T字継手のフランジ材では図2の様に板厚方向の亀裂進展となる。
前述した様に、図1に示す如く進展する脆性亀裂伝播停止特性を向上させることを意図した先行技術は多く、板厚が50mm未満の比較的薄い板厚においては十分な効果を発揮すると考えられるが、板厚が50mm以上の厚肉材において、十分な脆性亀裂伝播停止特性を工業的な規模で安定して得ることは難しいと考えられる。
さらに、先行技術に係る鋼板が図2に示す板厚方向の亀裂停止性能に優れるかどうかが検証されておらず、課題が残されている。
そこで本発明は、板厚50mm超えの厚鋼板において、圧延条件を最適化し、板厚方向での集合組織を制御することにより、板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる高強度厚鋼板を、工業的に極めて簡易的なプロセスで安定して得る製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の達成に向けて鋭意研究を重ねた結果、以下に述べるように、板厚方向に進展する脆性亀裂に対し、優れた伝播停止特性を有する高強度厚鋼板および当該鋼板を安定して得る製造方法の発明を完成するに至った。
すなわち、板厚50mm超えの厚鋼板での板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に及ぼす集合組織の影響を詳細に調べた結果、板厚中央部における圧延面での(111)面X線強度比が2.0以上で、かつ板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上とすることにより、板厚方向に亀裂が突入する初期段階で亀裂停止性能を発揮させ、その後の亀裂の進展を抑制することができ、板厚50mm超えの厚鋼板で優れた脆性亀裂伝播停止特性が得られることを見出した。
さらに、その集合組織を実現するための熱間圧延プロセスとして、板厚中央部がAr
点−30℃以下Ar点−100℃の温度範囲における累積圧下率を30%以上とすれば
良いことを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものであり、次の技術を提供する。
1.板厚中央部における圧延面での(111)面X線強度比が2.0以上、かつ板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の集合組織を有することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板。
2.鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.03%以下,S:0.01%以下、N:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる1に記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板。
3.鋼組成が、さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.05%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする2に記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板。
4.2または3に記載の組成を有する鋼素材を、900〜1200℃の温度に加熱し、板厚中央部の温度がAr点以上の温度で累積圧下率30%以上、板厚中央部の温度がAr点−30℃以下Ar点―100℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行った後、2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板の製造方法。
本発明によって製造される厚鋼板は、板厚位置での集合組織が適切に制御されており、板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる。特に、板厚50mm超えの厚物材をフランジに用いた溶接構造物において、ウエブから進展してきた脆性亀裂をフランジ部で停止されることが可能となり、産業上極めて有用である。
例えば、造船分野ではコンテナ船、バルクキャリアーの強力甲板部構造においてハッチサイドコーミングに接合される甲板部材へ本鋼板を適用することにより船舶の安全性向上に寄与すること大である。
本発明では、1.板厚内部の集合組織、2.鋼の組成、3.製造条件を規定する。
1.板厚内部の集合組織
板厚方向に進展する亀裂伝播に対して亀裂伝播停止特性を向上させるため、その板厚中央部に圧延面に平行に(111)面を、かつ板厚の1/4の位置には(110)面を発達させ、板厚中央部における圧延面での(111)面X線強度比を2.0以上とし、かつ板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の集合組織とする。
板厚中央部では(111)面を発達させるのが好ましい。これは、亀裂を開口させる応力方向に対し、塑性変形が容易な集合組織のため、塑性仕事として亀裂伝播エネルギーをより多く吸収できるからと考えられる。
溶接部から板表面に脆性亀裂が突入した場合、亀裂は初期段階としてまず板厚1/4部に突入する。従って、板厚1/4部では(110)面が発達している方が好ましい。この理由については必ずしも明らかになったわけではないが、亀裂突入直後の亀裂伝播エネルギーの吸収能力が高いものと考えられる。
ここで、(111)面X線強度比とは、対象材の(111)結晶面の集積度を表す数値で、対象材の(222)反射のX線回折強度と集合組織のないランダムな標準試料からの(222)反射のX線回折強度の比のことであり、(110)面X線強度比とは対象材の(110)結晶面の集積度を表す数値で、対象材の(110)反射のX線回折強度と集合組織のないランダムな標準試料からの(110)反射のX線回折強度の比のことである。
また、母材靭性についても、ある程度の特性を有することが亀裂の進展を抑制するための前提となるので、本発明が開示する鋼板では板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度は−30℃以下と規定する。シャルピー破面遷移温度の低下は、破面単位の微細化によって達成されるが、後述する成分、圧延条件等の調整によってその特性を得ることが可能である。
板厚方向に亀裂が進展する場合、特性の異なる領域を亀裂が進展するわけであるが、実際の溶接構造物を想定した場合、亀裂の先端は広がりをもち亀裂伝播停止性能を支配する要因はより複雑になるため、板厚方向の集合組織分布も重要になってくるものと考えられる。
上述した集合組織は、化学成分と製造条件を適正な条件とした場合に得られるため、本発明では規定する。
2.化学成分
本発明は、溶接構造用厚鋼板として使用される厚鋼板で、引張強さが490MPa以上、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度が−30℃以下の靭性を有する厚鋼板に対するものであり、そのためには以下の化学成分からなることが好ましい。
説明において%は質量%とする。
C:0.03〜0.20%
Cは鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を確保するためには0.03%以上の含有を必要とするが、0.20%を超えると、溶接性が劣化するばかりか靭性にも悪影響がある。このため、Cは、0.03〜0.20%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.05〜0.15%である。
Si:0.03〜0.5%
Siは脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、0.03%未満の含有量ではその効果がない。一方、0.5%を越えると鋼の表面性状を損なうばかりか靭性が極端に劣化する。従ってその添加量を0.03%以上、0.5%以下とする。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、強化元素として添加する。0.5%より少ないとその効果が十分でなく、2.0%を超えると溶接性が劣化し、鋼材コストも上昇するため、0.5%以上、2.0%以下とする。
Al:0.005〜0.08%
Al:Alは、脱酸剤として作用し、このためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.08%を超えて含有すると、靭性を低下させるとともに、溶接した場合に、溶接金属部の靭性を低下させる。このため、Alは、0.005〜0.08%の範囲に規定した。なお、好ましくは、0.02〜0.04%である。
N:0.0050%以下
Nは、鋼中のAlと結合し、圧延加工時の結晶粒径を調整し、鋼を強化するが、0.0050%を超えると靭性が劣化するため、0.0050%以下とする。
P,S
P,Sは、鋼中の不可避不純物であるが、Pは0.03%を超え、Sは0.01%を超えると靭性が劣化するため、それぞれ、0.03%以下、0.01%以下が望ましい。
以上が本発明の基本成分組成であるが、更に特性を向上させるため、Nb,Ti,Cu,Ni,Cr,Mo,V,B,Ca,REMの一種または二種以上を含有することが可能である。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、NbCとしてフェライト変態時あるいは再加熱時に析出し、高強度化に寄与する。また、オーステナイト域の圧延において未再結晶域を拡大させる効果をもち、フェライトの細粒化に寄与するので、靭性の改善にも有効である。その効果を得るためには0.005%以上の添加が必要であるが0.05%を超えて添加すると、粗大なNbCが析出し逆に、靭性の低下を招くのでその上限は0.05%とするのが好ましい。
Ti:0.005〜0.03%、
Tiは微量の添加により、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して母材靭性を向上させる効果を有する。その効果は0.005%以上の添加によって得られるが、0.03%を超える含有は、母材および溶接熱影響部の靭性を低下させるので、Tiは、0.005〜0.03%の範囲にするのが好ましい。
Cu,Ni、Cr、Mo
Cu,Ni、Cr、Moはいずれも鋼の焼入れ性を高める元素である。圧延後の強度アップに直接寄与するとともに、靭性、高温強度、あるいは耐候性などの機能向上のために添加するが、過度の添加は靭性や溶接性を劣化させるため、それぞれ上限を0.5%、1.0%、0.5%、0.5%とする。逆に添加量が0.01%未満であるとその効果が現れないため、0.01%以上の添加とする。
V :0.001〜0.1%
Vは、V(CN)として析出強化により、鋼の強度を向上する元素であり、0.001%以上含有してもよいが、0.1%を超えて含有すると、靭性を低下させる。このため、Vは、0.001〜0.1%の範囲の添加する。
B:0.003%以下
Bは微量で鋼の焼き入れ性を高める元素として添加してもよい。しかし、0.003%を超えて含有すると溶接部の靭性を低下させるので、Bは0.003%以下の添加とする。
Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下
Ca,REMは溶接熱影響部の組織は微細化し靭性を向上させる、添加しても本発明の効果が損なわれることはないので必要に応じて添加してもよい。しかし、過度に添加すると、粗大な介在物を形成し母材の靭性を劣化させるので、添加量の上限をそれぞれ0.005%、0.01%とするのが好ましい。
3.製造条件
上記の化学成分と集合組織を有する厚鋼板は、優れた板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性を有し、次に示す製造工程が適当である。
まず、上記した組成の溶鋼を、転炉等で溶製し、連続鋳造等で鋼素材(スラブ)とする。
ついで、鋼素材を、900〜1200℃の温度に加熱してから熱間圧延を行う。
加熱温度が900以下であると、圧延能率が低下し、加熱温度が1200℃以上であるとオーステナイト粒が粗大化し、靭性の低下を招くばかりか、酸化ロスが顕著となり、歩留が低下するので、加熱温度は900〜1200℃とする。
靭性の観点から好ましい加熱温度の範囲は1000〜1150℃であり、より好ましくは1000〜1050℃である。
熱間圧延は板厚中央部の温度がAr点以上の累積圧下率を30%以上とすることが好ましい。累積圧下率が30%未満であると、オーステナイトの細粒化が十分でなく、靭性が向上しないばかりか、目的とする集合組織の分布が得られない。
次に、板厚中央部の温度がAr点−30℃以下Ar点―100℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行う。この圧延工程は所望の集合組織を有する鋼板を得るための肝要なプロセスである。
板厚50mm超えの厚鋼板に対して、この圧延を行うことにより、板厚中央部における圧延面での(111)面X線強度比が2.0以上で、かつ板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の集合組織を得ることができる。
Ar点−30℃以下で圧延を行わなければ、板厚中央部の圧延面での(111)面X線強度比2.0以上を得ることができず、板厚中央部の温度がAr点−30℃以下Ar点―100℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行わなければ、板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の集合組織を得ることができない。
ここで、温度域をAr点−30℃以下Ar点―100℃以上と規定したが、このことは上記温度範囲外での圧延を行うことを制限するものではない。前記温度域の上下の温度域で圧延を実施しても当該温度域で30%以上の累積圧下がおこなわれていればよい。
圧延が終了した鋼板は2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却する。2相域圧延によって導入された加工集合組織が再結晶するのを防ぐためであり、圧延後には鋼板を低温まで冷却する必要がある。
冷却速度が2℃/s未満では求める集合組織が得られないばかりか、鋼板の強度も低下するので、冷却速度は2℃/s以上とする。冷却停止温度は600℃より高いと冷却停止後にも再結晶が進行して所望の集合組織が得られないので冷却停止温度は600℃以下とすることが好ましい。
表1に示す各組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋼素材(スラブ)とした(鋼記号A〜T)。これらスラブ(鋼素材:280mm厚)を用いて、表2に示す圧延条件にて板厚50mm超え〜70mmに熱間圧延して、同じく表2に示す条件で、冷却を行いNo.1〜29の供試鋼を得た。
Figure 0005034392
Figure 0005034392
これらの厚鋼板について、板厚の1/4部よりΦ14のJIS14A号試験片を採取し、引張試験を行い、降伏点(YS)、引張強さ(TS)を測定した。また、板厚の1/4部よりJIS4号衝撃試験片を採取し、シャルピー試験を行って、破面遷移温度(vTrs)を求めた。板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下のものを本発明範囲内とした。
また、鋼板の集合組織を評価するため、板厚中央部における圧延面での(111)面X線強度比と、板厚1/4における圧延面での(110)面X線強度比を測定した。
次に、これらの厚鋼板の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性を評価するため、完全溶け込みT字型の溶接継手を作製した。作製したT字型溶接継手を用いて、図3に示す十字型ESSO試験片を作製し、脆性亀裂伝播停止試験(ESSO試験)に供した。図3(a)は正面図、図3(b)は側面図を示す。
試験は応力24kgf/mm、温度−10℃の条件にて実施した、ウエブ材の機械ノッチに打撃を与え脆性亀裂を発生させて、ウエブ材と溶接金属を貫通した脆性亀裂が評価する母材で停止するか否かを調査した。
表2に十字型ESSO試験の結果を併せて示す。板厚中央部と1/4部における集合組織が本発明の範囲である供試鋼板の場合、脆性亀裂は停止した。一方、板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃を超えるものは、もともと靭性が劣るので脆性亀裂は停止せず、板厚を貫通した。製造条件が本発明範囲外で、鋼板の集合組織が本発明の規定を満たさない鋼板では脆性亀裂は停止せず、板厚を貫通した。
厚鋼板の脆性亀裂伝播を説明する模式図 T形隅肉継手における脆性亀裂伝播を説明する模式図で(a)はT形隅肉継手、(b)はフランジにおける脆性亀裂伝播を説明する模式図。 十字型ESSO試験片形状を説明する図。
符号の説明
1 鋼板
2 ウエブ材
3 フランジ材
4 溶接部
a 脆性亀裂
b 機械ノッチ
c 仮付け溶接

Claims (4)

  1. 板厚中央部における圧延面での(111)面X線強度比が2.0以上、かつ板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の集合組織を有することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板。
  2. 鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.03%以下,S:0.01%以下、N:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる請求項1に記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板。
  3. 鋼組成が、さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.03%、Nb:0.005〜0.05%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板。
  4. 請求2または3に記載の組成を有する鋼素材を、900〜1200℃の温度に加熱し、板厚中央部の温度がAr点以上の温度で累積圧下率30%以上、板厚中央部の温度がAr点−30℃以下Ar点―100℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行った後、2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた板厚1/4部におけるシャルピー破面遷移温度がー30℃以下である板厚50mm超えの構造用高強度厚鋼板の製造方法。
JP2006246799A 2006-09-12 2006-09-12 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法 Active JP5034392B2 (ja)

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