JP5618044B2 - 板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、圧力容器等の溶接鋼構造物用として好適な、厚鋼板に係り、とくに板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性の改善に関する。
船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、圧力容器などの溶接鋼構造物に使用される鋼板は、強度、靭性などの機械的性質や溶接性に優れていることはもちろんであるが、稼動時における定常の繰返し荷重や、風、地震等の震動に起因する非定常の繰返し荷重に対しても、構造物の構造安全性を確保できる特性を有することが要求される。とくに近年では、鋼板に対して、耐疲労特性に優れることが強く要求されている。
溶接鋼構造物では、溶接止端部等に多数の応力集中部が存在する。とくに、溶接止端部には応力が集中しやすく、また、引張の残留応力も作用するため、繰返し荷重が作用した場合には、溶接止端部から疲労亀裂が発生しやすく、溶接止端部が疲労亀裂の発生源となることが多い。このような疲労亀裂の発生を防止するために、止端部形状の改善や、圧縮の残留応力の導入などの方策が知られている。しかし、溶接鋼構造物には多数の溶接止端部が存在するため、溶接止端部ごとに、上記した疲労亀裂の発生を防止する方策を実行することは、多大の労力と時間を必要とし、施工工数の増加や、施工コストの高騰を招く。一般に、疲労特性は、疲労亀裂発生特性と疲労亀裂伝播特性に分けて考えられている。そこで、このような疲労亀裂の発生を防止する方策に代えて、使用する鋼板自体の耐疲労亀裂伝播特性を向上させて、溶接鋼構造物の耐疲労特性の向上を図ることが考えられている。鋼板自体の耐疲労伝播特性を向上させることにより、疲労亀裂の初期成長が抑制されて、溶接鋼構造物の疲労寿命の延長が可能となる。
例えば、溶接止端部等の応力集中部で発生した疲労亀裂は、板厚方向に伝播し、最終的には板厚を貫通する亀裂に進展して、溶接構造物全体にわたる大規模破壊を引き起こす場合が多い。このため、板厚方向の疲労亀裂伝播速度を低減し、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性を向上させることができれば、疲労亀裂の進展が防止でき、溶接鋼構造物の疲労寿命を延長できる。このようなことから、とくに板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板が要望されている。
このような要望に対し、例えば特許文献1には、鋼板圧延方向に延在する縞状の第二相が母相内に5〜50%の面積率で散在する微視組織を有し、第二相の硬さHVが母相の硬さHVより30%以上高い、耐疲労亀裂進展特性の良好な鋼板が提案されている。特許文献1に記載された技術では、母相中に、硬さの高い第二相を分散させ、疲労亀裂が硬い第二相付近に達すると亀裂の伝播が大幅に遅延する現象を利用して、鋼板の耐疲労亀裂伝播特性を向上させている。特許文献1に記載された技術では、第二相のアスペクト比を4以上とすることが好ましいとしている。このような鋼板を、表面から疲労亀裂が発生し伝播する大型構造物に使用すれば、特別な配慮を必要とせず、高い疲労亀裂伝播阻止特性を大型構造物に付与可能であるとしている。
また、特許文献2には、C:0.015〜0.20%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなり、X線で測定した板厚方向の(200)回折強度比が2.0〜15.0で、且つ回復または再結晶フェライト粒の面積率が15〜40%である、板厚方向の疲労き裂伝播速度が低い厚鋼板が記載されている。特許文献2に記載された技術で製造された厚鋼板は、板厚方向の疲労き裂伝播抑制効果が大きく、母材および溶接継手の疲労強度を向上させることができ、溶接構造物の疲労破壊に対する信頼性を向上させることができるとしている。
特開平7−90478号公報 特開平8−199286号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、疲労亀裂伝播速度をより低くし、疲労亀裂の伝播を著しく遅滞させるためには、母相に比べ第二相の硬さをより高くし、さらに硬質の第二相を多量に分散させる必要がある。このため、鋼板の延性、靭性の低下が著しくなるという問題が生じる。鋼板の延性、靭性の低下は、多量の合金元素の含有で防止できる場合もあるが、多量の合金元素の含有は、材料コストの高騰を招くという問題を避けられない。
また、特許文献2に記載された技術では、板厚方向の(200)回折強度比を2.0以上とし、すなわち、(100)面が板面に平行に揃った集合組織を発達させ、疲労亀裂先端で種々のすべり系を活動させ転位同士の干渉を生じさせ、亀裂の伝播を抑制して板厚方向の疲労亀裂伝播速度を低くしている。しかし、(100)面は劈開面であり、板面に平行に(100)面が揃った、特許文献2に記載された技術で製造された厚鋼板では、板厚方向の靭性が劣化するという問題を残していた。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、好ましくは引張強さTS:490MPa以上の強度と、破面遷移温度Trs50:−40℃以下の高靭性とを有し、溶接鋼構造物向けとして好適な、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。ここでいう「厚鋼板」は、板厚:35mm以上の鋼板をいうものとする。また、ここで、「耐疲労亀裂伝播特性に優れた」とは、図1(a)に示す寸法形状の3点曲げ疲労試験片を用いて、少なくとも応力比が0.1となる条件で疲労亀裂伝播試験を実施して、板厚方向の疲労亀裂伝播速度を求め、応力拡大係数範囲ΔK:20MPa・m1/2での疲労亀裂伝播速度が3.0×10−8m/cycle未満である場合をいう。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、疲労亀裂伝播特性に影響する各種要因について鋭意研究を重ねた。その結果、集合組織に着目し、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲において、
(1)板面に平行に、(110)面を発達させた組織((110)集合組織)とすること、さらに
(2)板面に平行に、(100)面の発達を抑制した組織とすること
が、板厚方向の靭性低下を伴うことなく、板厚方向の疲労亀裂伝播速度が低く、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板とすることにおいて重要となるとの知見を得た。
そして、本発明者らの更なる研究により、厚鋼板で上記した位置に上記した集合組織を形成するには、上記した範囲の板厚方向位置が二相温度域となる温度域で、1パス平均の圧下率が5.0%未満、好ましくは4.5%未満となる熱間圧延を、累積圧下率で50%以上、好ましくは60%以上となるように施して、厚鋼板とすることが肝要であることを新規に見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)厚鋼板であって、該厚鋼板が、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.60%以下、
Mn:0.80〜1.80%を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、前記厚鋼板の組織が、該厚鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲において、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上となる部位を有することを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板。
(2)厚鋼板であって、該厚鋼板が、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、前記厚鋼板の組織が、該厚鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲において、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.5以上となる部位を有することを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組織が、さらに板面に平行な(100)面のX
線強度比が1.1以下であることを特徴とする厚鋼板。
(4)(ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、V:0.2%以下、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板。
)(ないしのいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板。
)鋼素材を加熱し熱間圧延を施して厚鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱間圧延が、オーステナイト部分再結晶温度以上の温度域で累積圧下率:10%以上とする第一の圧延と、前記厚鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までに相当する範囲および/または前記厚鋼板の裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までに相当する範囲が二相組織となる温度域で、1パス平均の圧下率が5.0%未満でかつ累積圧下率:50%以上となる第二の圧延とからなり、該第二の圧延の圧延終了温度が表面温度で600℃以上であることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板の製造方法。
)鋼素材に熱間圧延を施して厚鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱間圧延が、前記鋼素材を900〜1350℃の温度に加熱し、表面温度で1000〜850℃の温度域で累積圧下率:10%以上の圧延を施す第一の圧延と、表面温度が900〜600℃の温度域で1パスの平均圧下率が5.0%未満でかつ累積圧下率:50%以上となる第二の圧延とからなり、該第二の圧延の圧延終了温度を表面温度で850〜600℃の温度域の温度とすることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板の製造方法。
)(または(7)において、前記第二の圧延が、1パスの平均圧下率が4.5%未満でかつ累積圧下率:60%以上となる圧延であることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
)(ないしのいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、V:0.2%以下、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
10)()ないし()のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%
で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた板厚35mm上の厚鋼板を容易に、しかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明になる厚鋼板を溶接鋼構造物に適用すれば、溶接鋼構造物における鋼板の板厚方向の疲労亀裂伝播速度が低減でき、疲労亀裂の進展を抑制して、とくに高応力比の負荷が作用するような場合においても、溶接鋼構造物の疲労寿命延長が可能となり、溶接構造物全体にわたる大規模破壊を防止できるという効果もある。
疲労亀裂伝播試験に使用する3点曲げ試験片の(a)寸法形状と、(b)試験片におけるクラックゲージの貼付位置を模式的に示す説明図である。 板厚方向断面における、進展する疲労亀裂先端でのすべりの発生状況を模式的に示す説明図である。
まず、本発明厚鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明厚鋼板は、少なくとも板厚方向の特定範囲の位置で、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上、好ましくは2.5以上となる部位を有する板厚35mm上の厚鋼板である。
ここで、板面に平行な(110)面のX線強度比とは、ランダムな方位を有する鋼板における板面に平行な(110)面からのX線強度を基準とし、それに対する、板面に平行に存在する(110)面からのX線強度の比をいう。板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上とは、ランダムな方位を有する鋼板に比して、板面に平行な(110)面が2.0倍以上に高く集積して、(110)集合組織を形成していることを意味する。
一般に、疲労亀裂は、繰返し応力の作用により、図2に示すように、亀裂先端で、剪断応力が最大となる。例えば、亀裂面から45°程度傾いた面ですべりが生じて進展してゆく(亀裂先端の応力場と結晶方位の関係で剪断応力が最も高くなるすべり系(すべり面すべり方向)ですべり変形が生じ、亀裂が進展していく)。そこで、体心立方(bcc)構造鋼板の主すべり面である(110)面を、亀裂面から90°傾むければ、剪断応力が最大となる。例えば、亀裂面から45°程度傾いた面でのすべりが抑制され、疲労亀裂伝播速度が低下することになる。本発明では、板厚方向に進展する疲労亀裂(亀裂面が板厚面)の進展(伝播)を抑制するために、(110)面を、亀裂面(板厚面)から90°傾けた組織、すなわち、板面に平行に(110)面を集積させた組織((110)集合組織)とする。そして、板厚方向の疲労亀裂伝播速度を所定以下の速度とするためには、板面に平行な(110)面のX線強度比を2.0以上とする必要がある。板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0未満では、所望の優れた「耐疲労亀裂伝播特性」を確保できなくなる。このため、本発明では、板面に平行な(110)面のX線強度比を2.0以上に限定した。
なお、実際の溶接構造物においては、疲労亀裂は、死荷重あるいは溶接残留応力等の影響により、高い応力比(最小応力/最大応力)の繰返し応力が作用する場合が多い。このため、実用上は、例えば0.5以上の高い応力比における疲労亀裂伝播速度が、溶接構造物の疲労寿命を決定するうえで重要となる場合が多い。このような高い応力比の条件下における厚鋼板板厚方向の疲労亀裂伝播速度を低減するためには、上記したような板面に平行に(110)面をさらに強く集積させた組織とする必要がある。すなわち、高い応力比の条件下においても、優れた耐疲労亀裂伝播特性を有する厚鋼板とするためには、板面に平行な(110)面のX線強度比を2.5以上とすることが好ましい。
また、本発明厚鋼板では、鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲において、上記した板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上、好ましくは2.5以上となる部位を有する。
さらに、本発明厚鋼板では、板面に平行な(100)面のX線強度比を1.1以下となる部位を有することが好ましい。体心立方(bcc)構造鋼板では、(100)面は劈開面であり、板面に平行な(100)面の存在は、板厚方向の靭性を低下させる。また、(100)面が板面に平行に発達すると、(110)集合組織の形成を阻害する。このため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、板面に平行な(100)面のX線強度比が1.1以下であれば許容できる。
板厚方向に伝播する疲労亀裂は、鋼板表面近傍の応力集中部、たとえば表面に取り付けられた部材等の溶接部から発生することが多い。そのため、少なくとも上記した、鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲に、上記したような(110)集合組織を形成することにより、疲労亀裂伝播速度を有効に低減することができ、疲労寿命向上に大きな効果を及ぼす。上記したような(110)集合組織を、予め鋼板表層部に形成しても、部材等の取り付けのための溶接熱により、かかる集合組織が消失し、疲労亀裂伝播速度の低減に有効に作用しない場合がある。また、かかる集合組織を板厚中央部に形成しても、疲労寿命向上に大きな影響を及ぼさない。というのは、板厚中央部まで進展した疲労亀裂は、亀裂の大きさが大きくなっており、亀裂先端の応力拡大係数が大きく、繰返し荷重1サイクル当たりの疲労亀裂進展量が大きくなり、(110)集合組織の存在による疲労亀裂伝播速度の低減効果がほとんどなくなる。このようなことから、上記した集合組織を有する部位を、少なくとも、鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲に、限定した。
なお、本発明厚鋼板は、板厚35mm以上の鋼板である。板厚が35mm未満では、熱間圧延時に、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲に、(110)集合組織の発達に有効な剪断歪を導入することが困難となる。このため、本発明では板厚35mm以上の厚鋼板に限定した。
本発明厚鋼板は、上記した組織を有すれば、鋼板組成についてはとくに限定する必要はないが、溶接鋼構造物用として、所定の強度と所定の靭性を兼備させるために、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、あるいはさらに、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、V:0.2%以下、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Al:0.1%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましい。以下、好ましい組成の限定理由について説明する。とくに断わらない限り質量%は、単に%で記す。
C:0.03〜0.15%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するためには、0.03%以上含有することが好ましいが、0.15%を超えて含有すると、溶接熱影響部靭性が低下する。このため、Cは0.03〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。
Si:0.60%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.60%を超える含有は、溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Siは0.60%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5%以下である。
Mn:0.80〜1.80%
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するためには、0.80%以上含有することが好ましいが、1.80%超えて含有すると、母材靭性の低下が懸念される。このため、Mnは0.80〜1.80%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.9〜1.6%である。
Ti:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種
Ti、Nbは、析出強化を介して強度を増加させるとともに、加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制し鋼板組織の微細化に寄与する元素であり、本発明では1種または2種を含有する。
Tiは、炭化物、窒化物を形成し、鋼板製造時のオーステナイト粒の微細化に寄与するとともに、溶接熱影響部の結晶粒粗大化を抑制し、溶接熱影響部靭性を向上させる。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.050%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Tiは0.005〜0.050%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005〜0.02%である。
Nbは、Tiと同様に、析出強化を介して強度を増加させ、さらに組織を微細化するとともに、オーステナイトの再結晶を抑制し、所望の組織を形成するための圧延による効果を促進する作用を有する。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが好ましいが、0.1%を超える含有は、組織が針状化し靭性が低下する傾向となる。このため、Nbは0.001〜0.1%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.05%である。
上記した成分が基本の成分であるが、これら基本の成分に加えてさらに、選択元素として必要に応じて、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W、Zr、Bのうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Alを含有することができる。
Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、V:0.2%以下、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Mo、V、W、Zr、Bはいずれも、鋼の強度を増加させる元素で有り、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。
Cuは、主として析出強化を介して鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが望ましいが、2.0%を超える含有は、析出強化が過多となり、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Cuは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.35%以下である。
Niは、鋼の強度を増加するとともに、靭性向上にも寄与する。また、Niは、Cuによる熱間圧延時の割れを防止するために有効に作用する。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましい。しかし、2.0%を超えて多量に含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるとともに、Niは高価な元素であり多量の含有は材料コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Niは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.0%である。
Crは、パーライト量を増加させ、鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.6%を超える含有は、溶接部の靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.6%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.2%である。
Moは、鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.6%を超える含有は、溶接部の靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.6%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.08%である。
Vは、固溶強化、析出強化を介して鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが望ましいが、0.2%を超える含有は、母材靭性および溶接性を顕著に低下させる。このため、Vは0.2%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.1%である。
Wは、鋼の強度増加、とくに高温の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える多量の含有は、溶接部の靭性を低下させる。また、高価なWの多量含有は材料コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Wは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜0.4%である。
Zrは、鋼の強度増加に寄与するとともに、亜鉛めっき処理材における耐めっき割れ性を向上させる。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、溶接部靭性を低下させる。このため、含有する場合には、0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.1%である。
Bは、焼入れ性の向上を介し鋼の強度増加に寄与するとともに、圧延中にBNとして析出し、圧延後のフェライト粒の微細化に寄与する。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましいが、0.0050%を超える含有は靭性を劣化させる。このため、含有する場合には、Bは0.0050%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0010〜0.0035%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化にも寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.015%以上含有することが望ましいが、0.1%を超える過剰の含有は、靭性の低下に繋がる。このため、含有する場合には、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.08%以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、P:0.035%以下、S:0.035%以下、N:0.012%以下が許容できる。
つぎに、本発明厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、好ましくは上記した組成の鋼素材に、熱間圧延を施して、板厚35mm以上の厚鋼板とする。
鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要はないが、上記した組成の溶鋼を、転炉等の常用の溶製炉を用いて溶製し、連続鋳造法等の常用の方法で、スラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
好ましくは上記した組成を有する鋼素材を、好ましくは加熱温度:900〜1350℃の温度に加熱する。
本発明の厚鋼板の製造では、鋼素材の加熱温度は、材質の均一化と、所望の熱間圧延が可能な温度であればよく、とくに限定する必要はない。なお、本発明で使用する鋼素材の好ましい組成範囲では、鋼素材の加熱温度は900〜1350℃の範囲の温度とすることが好ましい。加熱温度が900℃未満では、所望の熱間圧延が困難となる。一方、1350℃を超える加熱温度では、表面酸化が顕著となり、また、結晶粒の粗大化が顕著となる。このため、鋼素材の加熱温度は、900〜1350℃の範囲の温度に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、靭性向上の観点から、1150℃以上である。
ついで、加熱された鋼素材に、熱間圧延を施す。熱間圧延は第一の圧延と、第二の圧延とからなる。第一の圧延は、オーステナイト部分再結晶温度以上の温度域で累積圧下率10%以上となる圧延とする。
この第一の圧延では、オーステナイト粒が少なくとも部分的に再結晶するため、鋼板組織を微細でかつ均一にすることができる。なお、少なくともオーステナイト粒が部分的に再結晶するためには、累積圧下率:10%以上とすることが好ましい。圧延温度域が、オーステナイト未再結晶温度域では、結晶粒の均一化が期待できなくなる。
上記した好ましい組成範囲では、この第一の圧延は、表面温度で1000〜850℃の温度域で累積圧下率:10%以上の熱間圧延となる。1000℃を超える温度で圧延すると、オーステナイト粒の成長が助長されるため、組織の微細化には不利となる。また、850℃未満の温度域は、オーステナイトの未再結晶域となるため、結晶粒の均一化の観点からは不利となる。このようなことから、第一の圧延は、表面温度で1000〜850℃の温度域で熱間圧延を施すことにした。この温度域の圧延は、累積圧下率で10%以上であれば、所望の組織の微細化、均一化を達成できる。なお、累積圧下率の上限は、第二の圧延の圧下率確保の観点から30%とすることがより好ましい。
上記した第一の圧延後、さらに、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲の領域が、二相組織となる温度域で、1パスの平均圧下率が5.0%未満でかつ累積圧下率:50%以上となる第二の圧延を施す。第二の圧延では、圧延終了温度を600℃以上とする。
1パスの平均圧下率が5.0%未満の圧延を施すことにより、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲の領域に、剪断歪が導入される。なお、好ましくは、1パスの平均圧下率は4.5%未満である。このような圧延を、累積圧下率が50%以上となるように、表面温度で600℃以上の温度(圧延終了温度)まで繰り返す。なお、好ましくは、累積圧下率は60%以上である。これにより、二相温度域となった、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲に、板面に平行に(110)面が発達した(110)集合組織が形成される。1パス当たりの平均圧下率が5.0%以上では、上記した範囲の位置に、上記したような集合組織の形成は見られない。また、累積圧下率が50%未満では、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上とすることができない。板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0未満では、所望の耐疲労亀裂伝播特性を確保できない。なお、この第二の圧延では、1パスの平均圧下率が4.5%未満でかつ累積圧下率は60%以上とすることがより好ましい。1パスの平均圧下率が4.5%未満でかつ累積圧下率を60%以上とすることにより、板面に平行に(110)面が発達した集合組織の形成が更に促進され、板面に平行な(110)面のX線強度比を2.5以上とすることが容易となる。これにより、応力比が0.5以上の高応力比の条件下においても、疲労亀裂伝播速度が低減し、所望の優れた耐疲労亀裂伝播特性を有する厚鋼板とすることができる。
なお、上記した好ましい組成範囲では、この第二の圧延は、表面温度が900〜600℃の温度域で行い、圧延終了温度を表面温度で600℃以上、好ましくは850〜600℃の温度域の温度とする。
上記した好ましい組成範囲では、表面温度が900〜600℃である場合には、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲が、概ね、(α+γ)の二相を主体とする組織を呈する。
また、圧延終了温度が、表面温度で600℃未満では、αに過度の加工歪が導入され靭性が低下するため、第二の圧延の圧延終了温度は600℃以上に限定した。
また、上記した好ましい製造方法で製造された厚鋼板は、表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲で板面に平行な(100)面のX線強度比を1.1以下に調整できる。
表1に示す組成の鋼素材に、表2に示す条件で熱間圧延を施し、板厚50〜80mmの厚鋼板とした。これら厚鋼板について、組織観察、引張試験、靭性試験、疲労亀裂伝播試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察
得られた厚鋼板の板厚の1/4位置(表面から板厚方向に2mm〜板厚の3/10位置の範囲の代表)から、板面に平行に組織観察用試験片(大きさ:厚さ1.5mm×幅25mm×長さ30mm)を採取し、X線回折法により、板面に平行な(110)面および(100)面のX線回折強度を求めた。得られたX線回折強度と、ランダム試験片の(110)面および(100)面のX線回折強度との比を、それぞれ、板面に平行な(110)面のX線強度比、板面に平行な(100)面のX線強度比とした。
(2)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201(1998)の規定に準拠して、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるように、JIS 4号引張試験片(平行部径:14mm)を採取した。試験片の採取位置は、板厚の1/4位置(表面から板厚方向に2mm〜板厚の3/10位置の範囲の代表)とした。引張試験は、JIS Z 2241(1998)に準拠して行い、降伏強さσYSまたは0.2%耐力σ0.2、引張強さσTS、伸びElを求め、静的引張時の引張特性を評価した。
(3)靭性試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242(2005)の規定に準拠して、長手方向が圧延方向に平行方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、破面遷移温度Trs50を求め、靭性を評価した。なお、Vノッチ試験片は、板厚の1/4位置(表面から板厚方向に2mm〜板厚の3/10位置の範囲の代表)から採取した。
(4)疲労亀裂伝播試験
得られた厚鋼板から、厚鋼板の圧延方向断面(L方向断面)で板厚の1/4位置から疲労亀裂の伝播方向が板厚方向となるように、疲労亀裂伝播試験用試験片(厚さ5mm×幅10mm×長さ55mm)を採取した。試験片は、図1(a)に示す寸法形状の3点曲げ疲労試験片であり、応力比R(=最小荷重/最大荷重)が0.1となる条件で疲労亀裂伝播試験を実施して、板厚方向の疲労亀裂伝播速度を求めた。得られた応力拡大係数範囲ΔKと疲労亀裂伝播速度との関係から、応力拡大係数範囲ΔK:20MPa・m1/2での疲労亀裂伝播速度を求めた。疲労亀裂伝播速度:3.0×10−8m/cycle未満である場合を「耐疲労亀裂伝播特性に優れる」として○と、それ以外の場合を×として評価した。なお、試験片のノッチは45°の機械加工ノッチである。また、疲労亀裂の伝播を検知するためのクラックゲージは、図1(b)に示すようにクラックゲージの端部が、ノッチの先端から0.5mm離れた位置となるように試験片表面および裏面に貼付した。なお、クラックゲージは、0.1mmピッチで幅4.5mmのものを使用した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005618044
Figure 0005618044
Figure 0005618044
本発明例はいずれも、板厚の1/4位置(表面から板厚方向に2mm〜板厚の3/10位置の範囲の代表)で、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上で、かつ板面に平行な(100)面のX線強度比が1.1以下となっており、板厚方向の靭性の低下もなく、板厚方向の疲労亀裂伝播速度が低く、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0未満となっており、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性が確保できていない。
なお、板厚の1/4位置(表面から板厚方向に2mm〜板厚の3/10位置の範囲の代表)で、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.5以上となっている本発明例はいずれも、応力比が0.5である疲労亀裂伝播試験においても、板厚方向の疲労亀裂伝播速度が3.0×10−8m/cycle未満と低く、高応力比の繰返し負荷が作用する場合においても、板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板となっている。

Claims (10)

  1. 厚鋼板であって、該厚鋼板の組成が、質量%で、
    C:0.03〜0.15%、 Si:0.60%以下、
    Mn:0.80〜1.80%
    を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    前記厚鋼板の組織が、該厚鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲において、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.0以上となる部位を有することを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板。
  2. 厚鋼板であって、該厚鋼板の組成が、質量%で、
    C:0.03〜0.15%、 Si:0.60%以下、
    Mn:0.80〜1.80%
    を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    前記厚鋼板の組織が、該厚鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までの範囲および/または裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までの範囲において、板面に平行な(110)面のX線強度比が2.5以上となる部位を有することを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板。
  3. 前記組織が、さらに板面に平行な(100)面のX線強度比が1.1以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、V:0.2%以下、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の厚鋼板。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の厚鋼板。
  6. 鋼素材を加熱し熱間圧延を施して厚鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.03〜0.15%、 Si:0.60%以下、
    Mn:0.80〜1.80%
    を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記熱間圧延が、オーステナイト部分再結晶温度以上の温度域で累積圧下率:10%以上とする第一の圧延と、前記厚鋼板の表面から板厚方向に2mmの位置から板厚の3/10位置までに相当する範囲および/または前記厚鋼板の裏面から板厚方向に2mmの位置から板厚の7/10位置までに相当する範囲が二相組織となる温度域で、1パスの平均圧下率が5.0%未満でかつ累積圧下率:50%以上となる第二の圧延とからなり、該第二の圧延の圧延終了温度が表面温度で600℃以上であることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板の製造方法。
  7. 鋼素材に熱間圧延を施して厚鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.03〜0.15%、 Si:0.60%以下、
    Mn:0.80〜1.80%
    を含み、さらにTi:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記熱間圧延が、前記鋼素材を900〜1350℃の温度に加熱し、表面温度で1000〜850℃の温度域で累積圧下率:10%以上の圧延を施す第一の圧延と、表面温度が900〜600℃の温度域で1パスの平均圧下率が5.0%未満でかつ累積圧下率:50%以上となる第二の圧延とからなり、該第二の圧延の圧延終了温度を表面温度で850〜600℃の温度域の温度とすることを特徴とする板厚方向の耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板の製造方法。
  8. 前記第二の圧延が、1パスの平均圧下率が4.5%未満でかつ累積圧下率:60%以上となる圧延であることを特徴とする請求項6または7に記載の厚鋼板の製造方法。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、V:0.2%以下、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の厚鋼板の製造方法。
  10. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の厚鋼板の製造方法。
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