JP5949023B2 - 板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、圧力容器等の溶接鋼構造物用として好適な、板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法に関する。
船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、圧力容器などの溶接鋼構造物に使用される鋼板は、強度、靭性などの機械的性質や溶接性に優れていることはもちろんであるが、稼動時における定常の繰返し荷重や、風、地震等の震動に起因する非定常の繰返し荷重に対しても、構造物の構造安全性を確保できる特性を有することが要求される。特に近年では、鋼板に対して、耐疲労特性に優れることが強く要求されている。
溶接鋼構造物では、溶接止端部等に多数の応力集中部が存在するが、溶接止端部には応力が集中しやすく、また、引張の残留応力も作用するため、繰返し荷重が作用した場合には、溶接止端部から疲労亀裂が発生しやすく、溶接止端部が疲労亀裂の発生源となることが多い。
このような疲労亀裂の発生を防止するために、止端部形状の改善や、圧縮の残留応力の導入などの方策が知られている。しかし、溶接鋼構造物には多数の溶接止端部が存在するため、溶接止端部ごとに、上記した疲労亀裂の発生を防止する方策を実行することは、多大の労力と時間を必要とし、施工工数の増加や、施工コストの高騰を招く。
そこで、このような疲労亀裂の発生を防止する方策に代えて、使用する鋼板自体の耐疲労特性を向上させて、溶接鋼構造物の耐疲労特性の向上を図ることが考えられている。鋼板自体の耐疲労特性を向上させることにより、疲労亀裂の成長が抑制されて、溶接鋼構造物の疲労寿命の延長が可能となる。
このような要望に対し、例えば特許文献1では、鋼板圧延方向に延在する縞状の第二相が母相内に5〜50%の面積率で散在する微視組織を有し、第二相の硬さHが母相の硬さHより30%以上高い、耐疲労亀裂進展特性の良好な鋼板が提案されている。
特許文献1に記載された技術は、母相中に、硬さの高い第二相を分散させ、疲労亀裂が硬い第二相付近に達すると亀裂の伝播が大幅に遅延する現象により、鋼板の耐疲労亀裂伝播特性を向上させるもので、第二相のアスペクト比を4以上とすることが好ましいとしている。このような鋼板を、表面から疲労亀裂が発生し伝播する大型構造物に使用すれば、特別な配慮を必要とせず、高い疲労亀裂伝播阻止特性を大型構造物に付与可能であることが記載されている。
特許文献2には、質量%で、C:0.015〜0.20%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなり、X線で測定した板厚方向の(200)回折強度比が2.0〜15.0で、且つ回復または再結晶フェライト粒の面積率が15〜40%である、板厚方向の疲労き裂伝播速度が低い厚鋼板が記載されている。
特許文献3には、鋼板を焼入れ、焼きならし等のオフライン熱処理、或いは、直接焼入れ、加速冷却等のオンライン熱処理を行った後、Ac1点以下の温度で焼き戻しを行い、その後の冷却する場合に、冷却過程における鋼板表面と鋼板板厚中心部の温度差の最大値を200℃以上とする強制冷却を行うことにより、鋼板表面に圧縮残留応力が付与され、優れた疲労強度の鋼板が得られるとしている。
特開平7−90478号公報 特開平8−199286号公報 特開平6−100947号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、疲労亀裂伝播速度を低くし、疲労亀裂の伝播を著しく遅滞させるため、母相に比べ第二相の硬さを高くし、さらに硬質の第二相を多量に分散させる必要がある。このため、鋼板の延性、靭性の低下が著しくなるという問題が生じる。鋼板の延性、靭性の低下は、多量の合金元素の含有で防止できる場合もあるが、多量の合金元素の含有は、材料コストの高騰を招くという問題を避けられない。
また、特許文献2に記載された技術では、板厚方向の(200)回折強度比を2.0以上とし、すなわち、(100)面が板面に平行に揃った集合組織を発達させ、疲労亀裂先端で種々のすべり系を活動させ転位同士の干渉を生じさせ、亀裂の伝播を抑制して板厚方向の疲労亀裂伝播速度を低くしている。しかし、(100)面は劈開面であり、板面に平行に(100)面が揃った厚鋼板では、板厚方向の靭性が劣化するという問題を残していた。
更に、特許文献1、2記載の技術は、疲労亀裂伝播速度は低減するが、疲労亀裂発生寿命を含めたトータルの疲労寿命は顕著には増加しないという根本的な問題を有し、特許文献3に記載された技術では、鋼板表面に圧縮残留応力を付与するのに、焼戻し処理が必須で、生産性の良い圧延ままでの鋼板提供が不可能という問題を残していた。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、溶接鋼構造物向けとして好適な強度と靭性を備えた、板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋼板の延性・靭性の低下および板厚方向の靭性低下を伴うことなく、生産性のよい圧延ままで疲労特性を向上させるため、鋼板の内部残留応力に着目して鋭意研究を重ね、以下の知見を得た。
(1)板厚方向の疲労特性は、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲において、板厚方向に直角となる圧縮残留応力を100MPa以上とすることで、向上する。
(2)上記圧縮残留応力を備えた鋼板は、板厚中央部の温度を(Ar3点+50)℃以上として累積圧下率30%以上の熱間圧延を行い、その後、3℃/s以上の冷却速度で350℃以下まで冷却すると圧延ままで(焼戻し処理無しで)で製造可能である。
なお、本発明は、板厚:50mm以上の鋼板を対象とし、「耐疲労特性に優れた」とは、図1に示す寸法形状の3点曲げ疲労試験片を用いて、応力比が0.1となる条件で疲労試験を実施して、板厚方向の疲労寿命を求め、応力範囲340MPaでの疲労寿命が200万回以上である場合とする。
本発明は、得られた知見に、さらに検討を加えて完成されたもので、すなわち、本発明の要旨は次ぎのとおりである。
(1)鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲において、板厚方向に直角となる圧縮残留応力が100MPa以上であることを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板。
(2)前記厚鋼板が、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%を含み、さらにTi:0.005〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種または2種、N:0.0035〜0.0075%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする(1)に記載の厚鋼板。
(3)更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:2.0%以下、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0030%、B:0.0005〜0.0020%の1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする(2)に記載の厚鋼板。
(4)更に、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする(2)または(3)に記載の厚鋼板。
(5)(2)ないし(4)のいずれか一つに記載の化学成分を有する鋼素材を、1000〜1250℃の温度に加熱後、板厚中央部が(Ar3点+50)℃以上となる温度域で累積圧下率30%以上の熱間圧延を行い、その後、3℃/s以上の冷却速度にて350℃以下まで冷却することを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、板厚方向の耐疲労特性に優れた板厚50mm以上の厚鋼板を延性、靭性を損なわずに、容易に、しかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
疲労試験に使用する3点曲げ試験片の寸法形状を模式的に示す説明図。
以下、本発明で規定する鋼板の圧縮残留応力、好ましい成分組成、製造条件について説明する。
[鋼板の圧縮残留応力]
本発明に係る厚鋼板は、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲に板厚方向に直角となる、100MPa以上の圧縮残留応力を備える。
溶接構造物の製作において鋼板表面部への仮付溶接あるいは打ち傷等が避けられず、鋼板のごく表裏面部においては圧縮残留応力が損なわれるので、100MPa以上の圧縮残留応力の存在する範囲を鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmとする。
一方、圧縮残留応力の範囲が表面から4mmを超えて板厚の内部にまで拡がると、内部応力のバランスから疲労亀裂が発生する表面部付近の圧縮残留応力が小さくなるため、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲とする。
上記範囲内における板厚方向に直角方向の圧縮残留応力は100MPa以上とする。疲労亀裂の伝播抑制には、亀裂面と直角方向に圧縮応力を作用させることが有効である。本発明は板厚方向に伝播する亀裂を対象とするので、圧縮残留応力の圧縮方向を板厚方向と直角方向とする。
圧縮残留応力が100MPa未満では、疲労亀裂伝播速度は低減されるものの、疲労寿命の向上につながるほど顕著な効果は得られないため、100MPa以上とする。なお、より好ましくは、150MPa以上である。鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲を超える鋼板内の板厚方向に直角方向の圧縮残留応力については特に規定しないが、通常、板厚方向に4mmまでの範囲内より小さい大きさとなる。
本発明に係る厚鋼板に溶接鋼構造物用としての強度と靭性(引張強さTS:490MPa以上、板厚1/4採取のシャルピー衝撃値として−40℃における吸収エネルギー:100J以上)を兼備させるための、好ましい、成分組成と製造条件は以下の様である。
[成分組成] 説明において%は質量%とする。
C:0.03〜0.15%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するためには、0.03%以上含有することが好ましいが、0.15%を超えて含有すると、溶接熱影響部靭性が低下する。このため、Cは0.03〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、1.0%を超える含有は、溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Siは1.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.50%以下である。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所望の高強度を確保するためには、1.0%以上含有することが好ましいが、2.0%を超えて含有すると、母材靭性の低下が懸念される。このため、Mnは1.0〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.9〜1.60%である。
Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種または2種
Ti、Nbは、析出強化を介して強度を増加させるとともに、加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制し鋼板組織の微細化に寄与する元素であり、本発明では1種または2種を含有する。
Tiは、炭化物、窒化物を形成し、鋼板製造時のオーステナイト粒の微細化に寄与するとともに、溶接熱影響部の結晶粒粗大化を抑制し、溶接熱影響部靭性を向上させる。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましい。一方、0.05%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Tiは0.005〜0.05%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005〜0.02%である。
Nbは、Tiと同様に、析出強化を介して強度を増加させ、さらに組織を微細化するとともに、オーステナイトの再結晶を抑制し、所望の組織を形成するための圧延による効果を促進する作用を有する。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが好ましいが、0.05%を超える含有は、組織が針状化し靭性が低下する傾向となる。このため、Nbは0.001〜0.05%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.05%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化にも寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.015%以上含有することが望ましいが、0.1%を超える過剰の含有は、靭性の低下に繋がる。このため、含有する場合には、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.08%以下である。
N:0.0035〜0.0075%
Nは、TiNの必要量を確保するために必要な元素で、0.0035%未満では十分なTiN量が得られず、0.0075%を超えると溶接熱サイクルによってTiNが溶解する領域において固溶N量が増加して、いずれの場合も溶接部の靭性を著しく低下させるため、0.0075%以下とする。
更に特性を向上させる場合、上記基本成分に加えて、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W、Zr、B、Caの1種または2種以上を含有することができる。
Cu:0.01〜0.5%、Ni:2.0%以下、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0030%、B:0.0005〜0.0020%の1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Mo、V、W、Zr、Ca、Bは、鋼の強度および靭性を向上させる元素で、所望する特性に応じて1種または2種以上を含有する。
Cuは、主として析出強化を介して鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、析出強化が過多となり、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Cuは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.35%以下である。 Niは、鋼の強度を増加するとともに、靭性向上にも寄与する。
Niは、Cuによる熱間圧延時の割れを防止するために有効に作用する。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましい。しかし、2.0%を超えて多量に含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるとともに、Niは高価な元素であり多量の含有は材料コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Niは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以上である。
Crは、パーライト量を増加させ、鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、溶接部の靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.2%である。
Moは、鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、溶接部の靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.08%である。
Vは、固溶強化、析出強化を介して鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましいが、0.1%を超える含有は、母材靭性および溶接性を顕著に低下させる。このため、Vは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.1%である。
Wは、鋼の強度増加、とくに高温の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える多量の含有は、溶接部の靭性を低下させる。また、高価なWの多量含有は材料コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Wは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜0.4%である。
Zrは、鋼の強度増加に寄与するとともに、亜鉛めっき処理材における耐めっき割れ性を向上させる。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、溶接部靭性を低下させる。このため、含有する場合には、0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.1%である。
Bは、焼入れ性の向上を介し鋼の強度増加に寄与するとともに、圧延中にBNとして析出し、圧延後のフェライト粒の微細化に寄与する。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有することが望ましいが、0.0020%を超える含有は靭性を劣化させる。このため、含有する場合には、Bは0.0020%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001〜0.003%である。
Ca:0.0005%〜0.0030%
Caは、Sの固定による靭性改善効果を有する元素である。このような効果を発揮させるには少なくとも0.0005%は含有することが必要であるが、0.0030%を超えて含有しても効果が飽和するため、0.0005%〜0.0030%とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物で、P:0.035%以下、S:0.035%以下が許容できる。
[製造条件]
スラブ等の鋼素材の製造方法は、とくに限定しない。上記組成の溶鋼を、転炉等の常用の溶製炉を用いて溶製し、連続鋳造法等の常用の方法で、スラブ等の鋼素材とし、1000〜1250℃の温度に加熱する。
加熱温度が1000℃未満では、所望の熱間圧延が困難となる。一方、1250℃を超える加熱温度では、表面酸化が顕著となり、また、結晶粒の粗大化が顕著となる。このため、鋼素材の加熱温度は、1000〜1250℃の範囲の温度に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、靭性向上の観点から、1200℃以下である。
加熱された鋼素材に、熱間圧延を施す。熱間圧延は、(Ar3点+50)℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行い、後述の冷却条件との組み合わせで、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲に、100MPa以上の板厚方向に直角方向の圧縮残留応力を導入する。Ar3点は、例えば、Ar3(℃)=910−273×C−74×Mn−57×Ni−16×Cr−9×Mo−5×Cu(各元素は含有量(質量%))で求めることが可能である。
熱間圧延では、板厚50mm以上の鋼板とする。圧縮残留応力は、疲労特性を向上させるが、座屈性能を低下させ、その低下は板厚が薄い鋼板ほど顕著で板厚50mm未満では鋼板自体の座屈性能の低下が懸念されるため、板厚50mm以上とする。
尚、本発明は規定した温度域外での圧延を制限するものではなく、スラブ加熱後の高温で実施する粗圧延などを行うことが可能である。
圧延終了後、3℃/s以上の冷却速度にて350℃以下まで冷却する。冷却速度、冷却停止温度のどちらかが上記規定を外れると、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲において、板厚方向に直角となる100MPa以上の圧縮残留応力が得られない。より好ましくは、5℃/s以上の冷却速度にて300℃以下まで冷却する。
表1に示す組成の鋼素材に、表2に示す条件で熱間圧延を施し、板厚55〜70mmの厚鋼板とした。これら厚鋼板について、残留応力測定、引張試験、靭性試験、疲労試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)残留応力測定
得られた厚鋼板から、X線残留応力測定用試験片(大きさ:板厚(鋼板元厚まま)×12.5mm×300mm[板厚方向寸法×圧延直角方向寸法×圧延方向寸法])を採取し、測定面[12.5mm×300mmの面]に電解研磨を施した後、板厚方向に4mmピッチでX線により板厚方向に直角方向の残留応力を測定した。板厚方向に4mmピッチで測定するライン数は5ラインとした。測定された5ラインの残留応力を各板厚位置毎に5点平均して求めた残留応力の板厚方向分布図から、表面/裏面から4mmの位置における残留応力(マイナスの値)を求め、その絶対値を、圧縮残留応力とした。
(2)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201(1998)の規定に準拠して、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるように、JIS 4号引張試験片(平行部径:14mm)を採取した。試験片の採取位置は、板厚の1/4位置とした。引張試験は、JIS Z 2241(1998)に準拠して行い、YS:降伏強さまたは0.2%耐力TS:引張強さ、伸びELを求め、静的引張時の引張特性を評価した。
(3)靭性試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242(2005)の規定に準拠して、長手方向が圧延方向に平行となるように、Vノッチ試験片を採取し、−40℃における吸収エネルギーを求め、靭性を評価した。なお、Vノッチ試験片は、板厚の1/4位置から採取した。
(4)疲労試験
得られた厚鋼板から、疲労亀裂の伝播方向が板厚方向となるように、疲労試験用試験片(大きさ:板厚(鋼板元厚まま)×12.5mm×300〜350mm[板厚方向寸法×圧延垂直方向寸法×圧延方向寸法])を採取した。試験片は、図1に示す寸法形状の切欠き付き3点曲げ疲労試験片であり、疲労試験時の曲げスパンを板厚の4倍とするため、板厚が50〜65mmの場合、圧延方向寸法を300mm、板厚が80mmの場合、圧延方向寸法を350mmとした。疲労試験は、応力範囲が340MPa、応力比R(=最小荷重/最大荷重)が0.1となる条件で実施して、板厚方向の疲労特性(疲労寿命)を求めた。
得られた結果を表2に示す。本発明例(No.2、4、5、7、8、10)はいずれも、表面/裏面から4mmの位置(表面/裏面から4mmまでの範囲で圧縮残留応力が最低の位置)で、板厚方向に垂直方向の圧縮残留応力が100MPa以上となっており、靭性の低下もなく、板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板となっている。
一方、比較例(No.1、3、6、9)は、板厚方向に垂直方向の圧縮残留応力が100MPa未満となっており、板厚方向の耐疲労特性が劣る。比較例11は鋼の成分組成においてC量が0.23質量%と本発明の好ましい含有量の上限を超えるため、圧縮残留応力が100MPa未満で板厚方向の耐疲労特性が劣る。
Figure 0005949023
Figure 0005949023

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%を含み、更にTi:0.005〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種または2種、N:0.0035〜0.0075%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲において、板厚方向に直角となる圧縮残留応力が100MPa以上であることを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板。
  2. 更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:2.0%以下、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0030%、B:0.0005〜0.0020%の1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%を含み、更にTi:0.005〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種または2種、Al:0.1%以下、N:0.0035〜0.0075%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲において、板厚方向に直角となる圧縮残留応力が100MPa以上であり、板厚1/4位置での−40℃における吸収エネルギーvE−40℃が100〜220Jであることを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板。
  4. 質量%で、C:0.06〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%、Al:0.1%以下を含み、更にTi:0.005〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種または2種、Ni:0.1〜0.2%、N:0.0035〜0.0075%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼板の圧延面の両側または片側から板厚方向に4mmまでの範囲において、板厚方向に直角となる圧縮残留応力が100MPa以上であることを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板。
  5. 更に、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、W:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0030%、B:0.0005〜0.0020%の1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4に記載の厚鋼板。
  6. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の厚鋼板の製造方法であり、鋼素材を、1000〜1250℃の温度に加熱後、板厚中央部が(Ar3 点+50)℃以上となる温度域で累積圧下率30%以上の熱間圧延を行い、その後、3℃/s以上の冷却速度にて350℃以下まで冷却することを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板の製造方法。
  7. 請求項4ないし5のいずれかに記載の厚鋼板の製造方法であり、鋼素材を、1000〜1250℃の温度に加熱後、板厚中央部が(Ar3 点+50)℃以上となる温度域で累積圧下率30%以上の熱間圧延を行い、その後、3℃/s以上の冷却速度にて350℃以下まで冷却することを特徴とする板厚方向の耐疲労特性に優れた厚鋼板の製造方法。
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