JP4645461B2 - 耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法 - Google Patents

耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4645461B2
JP4645461B2 JP2006018329A JP2006018329A JP4645461B2 JP 4645461 B2 JP4645461 B2 JP 4645461B2 JP 2006018329 A JP2006018329 A JP 2006018329A JP 2006018329 A JP2006018329 A JP 2006018329A JP 4645461 B2 JP4645461 B2 JP 4645461B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
cooling
ferrite
ductile
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006018329A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007197777A (ja
Inventor
照輝 貞末
聡 伊木
高宏 久保
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2006018329A priority Critical patent/JP4645461B2/ja
Publication of JP2007197777A publication Critical patent/JP2007197777A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4645461B2 publication Critical patent/JP4645461B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、耐疲労亀裂伝播特性に優れ、かつ良好な耐延性亀裂発生特性を有する引張強度550MPa以上の高強度鋼材およびその製造方法に関し、船舶、海洋構造物、橋梁、建設機械、建築物、タンクなど各種溶接構造物に好適な、繰返し荷重を受けた場合に良好な耐疲労亀裂伝播特性を示す、耐延性亀裂発生特性に優れた引張強度550MPa以上の構造用鋼材ならびにその製造方法に関する。
近年、船舶、海洋構造物、橋梁、建設機械、建築物、タンクなどの構造物においては設計の合理化や鋼材重量の低減、薄肉化や溶接の省力化を目的として高強度鋼材が適用される事例が多くなってきている。
それらに用いられる引張強度550MPa以上の高強度鋼材では、靭性や溶接性に優れていること、構造安全性を確保するため耐疲労特性に優れていることが要求される。
さらに、鋼材は加工や供用中に大きなひずみ受ける場合がある。従って、鋼材には、大ひずみ下において切欠などの応力集中部から脆性破壊が生じないこと、かつ、延性亀裂発生抵抗に優れていることが求められる。
溶接構造物において、疲労破壊は、溶接止端部から疲労亀裂が発生し、鋼材中を伝播して破壊するケースが多い。これは、溶接止端部がその形状から応力集中部となりやすいこと、加えて溶接後に引張の残留応力が生じることなどに起因するとされている。
このため、溶接止端部からの亀裂発生を抑制させる手段として、付加溶接を施すなどして形状を改善し応力集中を低減させる技術、ショットピーニングなどで圧縮の残留応力を導入する技術などが広く知られている。
しかし、多数存在する溶接止端部にこのような処理を工業的規模で施すことは不可能に近く、コストの面でも現実的とは言いがたい。
そこで、仮に疲労亀裂が発生したとしてもその後の鋼材中の伝播速度を低減させることで疲労寿命を延命させることが重要であり、鋼材自身の疲労亀裂伝播特性を向上させることが産業界から強く要望されている。
高強度鋼材の疲労亀裂伝播特性の向上手法として、例えば、特許文献1には組織がフェライト、パーライト、ベイナイトの1種または2種以上で主に構成され、さらに平均存在間隔20μm以下でかつ平均扁平比5以上の島状マルテンサイトが0.5〜5%の割合で存在する耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼板ならびにその製造方法が記載されている。
特許文献2には主としてベイナイト/マルテンサイトからなり、ラス状組織の最小短辺長が1.3μm以下、かつ、ベイナイトを含む場合にはその組織中にアスペクト比が5以上である島状マルテンサイトを面積率で5%未満含む鋼材ならびにその製造方法が開示されている。
特許文献3には熱間圧延後に鋼板を500℃以下まで水冷後、Ac点+50℃〜Ac点−10℃の二相域に再加熱して圧延することで、組織を細粒フェライトとベイナイトもしくはマルテンサイトの混合組織とし、疲労強度を向上させる技術が記載されている。
特開平6−271985号公報 特開2003−342672号公報 特開平10−168542号公報
しかしながら、上記技術には、種々の問題点が指摘され、例えば、特許文献1の場合、島状マルテンサイトを多量に含むため、これを起点とした脆性破壊が生じやすいことや耐延性亀裂発生特性に劣ることが懸念される。
特許文献2の場合、基本的にフェライトを含まない硬質層(ベイナイト/マルテンサイト)のみの鋼材であるため軟質相/硬質層を有する鋼材と比べて疲労亀裂伝播速度に劣ることや焼戻し処理を行わない場合には遅れ破壊が生じることなどが懸念される。
また、特許文献3の場合、冷却後に再加熱し圧延する製造工程が煩雑であることから、製造コストが上昇し、生産能率が低下する。
そこで、本発明はこのような従来技術の課題を解決し、耐疲労亀裂伝播特性に優れ、かつ耐延性亀裂発生特性に優れた高靭性な鋼材、及び高能率で製造する技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく実験と検討を重ねた。その結果、ラス内に微細な炭化物を有するベイナイトもしくはマルテンサイトあるいはそれらの混合組織中にフェライトを分散させ、かつ、フェライト粒径と面積率を特定の範囲内とすることで優れた疲労亀裂伝播特性を示し、かつ耐延性亀裂発生特性と靭性にも優れた鋼材が得られることを見出した。
またそのような組織を有する鋼材は圧延、制御冷却、熱処理の各工程を高精度に制御し、かつ各工程を連続させて造りこむことによって高能率に生産できることを見出した。本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、
1.質量%で、C:0.03〜0.30%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、残部Fe及び不可避的不純物の鋼で、金属組織が、最大サイズが0.5μm以下のラス内炭化物もしくは窒化物または炭窒化物が存在する、ベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織で、前記金属組織中には粒径:50μm以下4μm以上のフェライトが面積分率:10%以上40%以下で存在することを特徴とする耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた引張強度550MPa以上の高強度鋼材。
2.更に、質量%でCu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下の一種または二種以上を含有する1に記載の耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた引張強度550MPa以上の高強度鋼材。
3.1または2に記載の成分の鋼を、1000℃以上、1300℃以下に加熱し、Ar点以上で累積圧下率50%以上の圧延を行い、Ar点からAr−200℃の温度範囲を冷却速度4℃/s未満で5s以上、300s以下に冷却後、Ms点以下までを5℃/s以上の冷却速度で直接焼入れし、その後1℃/s以上の昇温速度でAc点未満まで再加熱することを特徴とする耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた引張強度550MPa以上の高強度鋼材の製造方法。
本発明によれば、特殊な工程や多量の合金元素の添加を必要とせずに、耐疲労亀裂伝播特性を高め、かつ、耐延性亀裂発生特性と靭性にも優れた鋼材の製造が可能で、船舶、橋梁、建築物に代表されるような溶接構造物の主要部材に対し脆性破壊を阻止し、延性亀裂発生のみならず疲労破壊の安全裕度を拡大できる鋼材が提供可能である。
また、圧延、冷却、再加熱を組み合わせた一連の加工熱処理により製造できるため、上記のような諸特性に優れる鋼材を短納期で、安価に提供することが可能で、産業上極めて有用である。
本発明に係る鋼材は化学成分、金属組織を規定する。
[化学成分]以下の説明での%は全て質量%である。
C:0.03〜0.30%
Cは強度確保のために0.03%以上の添加が必要である。しかし、0.30%超えの添加は溶接性を阻害する。したがって0.03%以上0.30%以下に限定する。好ましくは0.05%以上0.25%以下とする。
Si:0.01〜0.50%
Siは脱酸剤として有効であるとともに高強度化のためには0.01%以上必要であるが、0.50%を越えて添加すると溶接性、靭性を劣化させる。従って0.01%以上0.50%以下に限定する。好ましくは0.05%以上0.40%以下とする。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは安価に焼入れ性の増加を通じて強度を高めるだけでなく靭性向上の観点から0.5%以上必要であるが、2.0%を越えると溶接性が劣化する。従って0.5%以上2.0%以下に限定する。好ましくは0.5%以上1.8%以下とする。
P:0.05%以下
Pは鋼の靭性を劣化させるため、その含有量はできるだけ低いことが望ましい。このため上限を0.05%とした。好ましくは0.03%以下とする。
S:0.02%以下
Sは多量に添加すると鋼の靭性を低下させるため極力低減するのが望ましい。このため、上限を0.02%とした。好ましくは0.01%以下とする。
以上を本発明の基本成分とするが、強度、靭性や溶接性等の調整、耐候性の付与などを目的としてCu,Ni,Cr,Mo,Nb,V,Ti,Bの一種または二種以上を添加しても良い。
Cu:1.0%以下
Cuは固溶による強度上昇効果をもたらすとともに耐候性を向上させる。しかし、その含有量が1.0%を超えると溶接性を損なうとともに鋼材製造時に疵が生じやすくなる。従って、添加する場合はその上限を1.0%とする。好ましくは0.05%以上0.5%以下とする。
Ni:2.0%以下
Niは低温靭性を向上させるとともに耐候性やCuを添加した場合に生ずる熱間脆性の改善に有効である。しかし、その添加量が2.0%を超えると溶接性を阻害する上、コストが上昇する。従って、添加する場合はその上限を2.0%とする。好ましくは0.05%以上1.0%以下とする。
Cr:1.0%以下
Crは耐候性や強度を向上させる。しかし、その含有量が1.0%を超えると溶接性および靭性を損なう。従って、添加する場合は上限を1.0%とする。好ましくは0.05%以上0.5%以下とする。
Mo:1.0%以下
Moは強度を上昇させる。しかし、その含有量が1.0%を超えると溶接性および靭性の劣化が生じる。従って、添加する場合はその上限を1.0%とする。好ましくは0.05%以上0.5%以下とする。
Nb:0.1%以下
Nbは圧延時のオーステナイト再結晶を抑制し細粒化を図ると同時に、析出を通じた高強度化をもたらす働きを有する。しかし、0.1%以上添加すると靭性が劣化する。従って添加する場合は0.1%以下に限定する。好ましくは0.01%以上0.05%以下とする。
V:0.1%以下
VもNbと同様、析出により高強度化をもたらす働きを有する。しかし、0.1%超えの添加は溶接性および靭性の低下を招く。従って添加する場合は0.1%以下に限定する。好ましくは0.01%以上0.07%以下とする。
Ti:0.1%以下
Tiは強度上昇と溶接部靭性を改善する。しかし、その含有量が0.1%を超えるとコスト上昇を招く傾向にある。従って添加する場合は上限を0.1%とする。好ましくは0.01%以上0.05%以下とする。
B:0.005%以下
Bは焼入れ性を高め強度上昇に寄与する。しかし、0.005%を超えて添加すると溶接性を害する。従って上限を0.005%とする。好ましくは0.0005%以上0.003%以下とする。
[金属組織]
本発明に係る耐疲労亀裂伝播特性および耐延性亀裂発生特性に優れた高強度鋼材は金属組織が、ベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織であって、当該金属組織中に粒径:50μm以下4μm以上のフェライトが面積分率:10%以上40%以下で存在し、且つ最大サイズが0.5μm以下のラス内炭化物もしくは窒化物または炭窒化物が存在することを特徴とする。
ベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織中の、面積分率:10%以上40%以下の粒径:50μm以下4μm以上のフェライト
ベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織とすることにより高強度化が達成され、さらに、それらの組織中にフェライトを生成させることで、疲労亀裂進展速度はフェライトとの界面で局所的な低下を見せるようになり耐疲労亀裂伝播特性が向上する。
そして、フェライト粒径と面積分率をそれぞれ50μm以下4μm以上、10%以上40%以下とすることで耐疲労亀裂伝播特性は飛躍的に向上する。フェライト面積分率はより好ましくは10%以上30%以下である。
最大サイズが0.5μm以下の、ラス内炭化物もしくは窒化物または炭窒化物
上記規定のフェライトを備えたベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織中に最大サイズで0.5μm以下の微細な炭化物もしくは窒化物または炭窒化物を生成させることで、高い耐疲労亀裂伝播特性を維持しつつ、耐延性亀裂発生特性と靭性が向上する。最大径ラス内に炭化物もしくは窒化物または炭窒化物が存在しない場合やそれらが最大サイズで0.5μmを超える場合、耐延性亀裂発生特性や靭性が低下する。なお、炭化物もしくは窒化物または炭窒化物サイズは楕円形を仮定した時の長軸方向の全長を言う。
図1に、フェライトとベイナイトもしくはマルテンサイトあるいはそれらの混合組織で、最大サイズが0.5μm以下のラス内の炭化物もしくは窒化物または炭窒化物が存在する金属組織において、フェライトの粒径と面積率を変化させて引張強度で550MPa以上とした鋼材について疲労亀裂伝播特性と延性亀裂発生特性を調べた結果を示す。試験材は後述する表1のAで示す成分の鋼を、種々の条件で製造した。
図1より、高い強度を有しつつ、耐疲労亀裂伝播特性と耐延性亀裂発生特性に優れる鋼とするため、粒径:50μm以下4μm以上のフェライトで、当該フェライトの面積分率を10%以上40%以下とする。
高い強度の鋼において、耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性を向上させる特異なフェライト粒径と面積率の範囲が存在する理由は、フェライト粒径および面積率がそれぞれ4μm未満、10%未満では、変形能の少ない硬質相が多くなるために延性亀裂発生抵抗に劣ること、さらには、疲労亀裂が硬質相内を優先的に伝播するために、フェライト界面での伝播速度遅延効果が期待できず、一方、フェライト粒径および面積率がそれぞれ50μm超え、40%超えると、高い強度が得られなくなるとともに、疲労亀裂がフェライト内を優先的に伝播し易くなって硬質相界面での伝播速度遅延効果が期待できないためと推察される。
尚、本発明では上述した金属組織に、不可避的に少量の他の組織が混在することは許容する。
本発明の鋼材は上記成分を有する鋼を、1000℃以上1300℃以下に加熱し、Ar点以上で累積圧下率50%以上の圧延を行い、Ar点からAr−200℃の温度範囲において冷却速度で4℃/s未満で5s以上300s以下冷却後、Ms点以下まで5℃/s以上の冷却速度で直接焼入れし、その後1℃/s以上の昇温速度でAc点未満まで再加熱することによって得られる。なお、上記温度は鋼材表面温度とし、冷却速度は鋼材の厚さ方向での平均値とする。
加熱温度:1000℃以上1300℃以下
加熱温度を1000℃未満にするとその後の圧延温度が確保できない。また、1300℃を超える温度にすると鋼の結晶粒が粗大化するので靭性の確保が困難となる。
Ar点以上で累積圧下率50%以上
Ar点以上で累積圧下率50%以上の圧延を行うことにより旧オーステナイト粒を微細化させて靭性を向上させるとともに、この後に続く冷却過程でのフェライト生成を促進する。Ar点未満の圧延ではフェライトが過度に生成し、累積圧下率が50%未満では旧オーステナイト粒の微細化が達成されない。
Ar点からAr−200℃の温度範囲において冷却速度で4℃/s未満で5s以上300s以下冷却
冷却中にフェライトを生成させる手段として、Ar〜Ar−200℃の温度範囲で冷却速度4℃/s未満となる工程を5s以上設ける。温度がAr点を超える場合あるいはAr点−200℃を下回る場合にはフェライトが生成しない。
また、その温度域においても冷却速度が4℃/s未満であり、かつその冷却時間が5s以上でないと耐疲労亀裂伝播特性と耐延性亀裂発生特性を向上させるための十分なフェライト量(面積分率10%以上)が得られない。
一方、上記のフェライト生成時間が300sを超える場合、製造能率の低下とともに面積分率40%を超える過度のフェライト生成により疲労特性および強度が低下する。より好ましくは上記冷却時間を5s以上200s以下である。
上記冷却過程後、Ms点以下まで5℃/s以上の冷却速度で直接焼入れし、その後1℃/s以上の昇温速度でAc点未満まで再加熱
本構成は、上記冷却過程後でフェライト変態が完了しないうちに、残りの未変態オーステナイトをベイナイト、マルテンサイト、あるいはそれらの混合組織とし、かつ、それらのラス中に微細な炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を生成させるため規定する。
冷却速度が5℃/s未満ではフェライトやパ―ライトが生成するため、5℃/s以上とする。また、Ms点以下まで冷却し、未変態オーステナイトをベイナイト、マルテンサイト、あるいはそれらの混合組織とすることで高強度化が図れる。
さらには、その後に、1℃/s以上の昇温速度でAc点未満まで急速に再加熱を行うことでラス中に微細な炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を生成させることができ、高い耐疲労亀裂伝播特性を有しつつ耐延性亀裂発生特性と靭性が向上する。
昇温速度が1℃/sを下回る場合、炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物が粗大となること、Ac点以上に再加熱すると島状マルテンサイトが生成されることでそれぞれ靭性や耐延性亀裂発生特性が低下する。
昇温速度はより好ましくは3℃/s以上である。なお、Ar点、Ms点、Ac点は例えば、Ar(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo、Ms(℃)=517−300C−33Mn−22Cr−17Ni−11Mo−11Si、Ac(℃)=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Cr(但し、元素記号は鋼材中の各元素の質量%での含有量を表す)で表される関係式により鋼材の成分組成に基づいて導くことが出来る。
上記のような一連の冷却は例えば、圧延終了後に、1.水冷→徐冷→水冷、2.水冷→放冷→水冷、3.徐冷→水冷、4.放冷→水冷などの工程で行えばよく、Ar点〜Ar−200℃の間で徐冷、放冷期間を設けることでフェライトを導入し、その後、水冷を行って残部をベイナイト、マルテンサイト、あるいはそれらの混合組織とすれば良い。
図2に板厚25mmtの鋼材を上記2の方法で800℃から冷却して650−640℃で放冷期間を設けた後、再び100℃まで冷却し、すぐに500℃まで再加熱して、再び放冷したときの板厚内平均温度と時間を(a)に、得られる組織の模式図を(b)に示す(試験材は後述の実施例No.1の鋼板を用いた)。所望の組織が一連の工程で、かつ、非常に短時間(冷却開始から再加熱終了まで100s未満)で得られている。
なお、本製造法で加速冷却と再加熱を上述の図2のように最も効率的に行う場合には、加速冷却装置と加熱装置は同一ライン上にレイアウトされていることが好ましい。また、加熱装置と加速冷却装置との距離が離れている場合には通常のオフラインTemperを施しても特性上は差し支えない。加熱方式は昇温速度が達成されれば誘導加熱、雰囲気加熱などどのようなものでも良く特に規定しない。
また、再加熱は、所望の強度・靭性が得られる範囲内で、目標温度での等温保持を行っても行わなくても良く、さらに再加熱後には炉冷/放冷/急冷のいずれを選択しても良く特に規定しない。
表1に示す組成を有する鋼片から表2に示す条件により板厚12〜100mmの鋼板を製造した。得られた鋼板について、下記に示す手順にて、組織観察、引張強度、靭性、耐延性亀裂発生特性、曲げ性、疲労亀裂伝播速度を調査した。
組織観察は板厚/4位置から採取した試料を研磨した。ミクロ組織観察は2%ナイタール腐食液によりエッチングした面について、光学顕微鏡観察により組織、フェライトの面積分率ならびにフェライトの粒径を測定した。
フェライト面積分率、フェライト粒径は1試料について5視野を測定し、その平均値とした。また、同一の採取位置から電解研磨により薄膜を採取し、TEM観察によりラス内における最大の炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物のサイズを測定した。
強度は圧延方向に直角方向に採取したJIS Z2201 1A号の全厚試験片(板厚50mm以上は板厚/4位置でのJIS Z2201 4号丸棒試験片)により評価した。
靭性は板厚/4位置(板厚25mm未満は板厚/2位置)で圧延方向と平行方向に採取したJIS Z 2202のVノッチシャルピー衝撃試験片により評価した。
耐延性亀裂発生特性は図3に示す板厚中央部−圧延直角方向から採取した0.25mmの切欠を有する丸棒引張試験にて調査し、切欠底より0.1mmの延性亀裂が発生する時の標点間(26mm)での平均ひずみを求めた。
曲げ性は150mm幅の広幅試験にて全厚(板厚50mm超えは50mmまで片面減厚)の表曲げ試験により実施した。
疲労亀裂伝播速度は圧延直角方向に亀裂が進展するL−T方向に全厚(板厚25mmを超えるものは25mmtまで片面減厚)のCT試験を採取し、応力比0.1、周波数20Hz、室温大気中でASTM E647に準拠して行った。
本発明において、強度はTSで550MPa以上、靭性はシャルピー衝撃試験での延性/脆性破面遷移温度が−30℃以下、延性亀裂発生特性は平均ひずみ2.0%以上で延性亀裂が発生すること、曲げ加工性は曲げ半径=試験片厚にて割れが生じないこと、疲労亀裂伝播特性は大気中において△K=20MPa√mのときの疲労亀裂伝播速度が5.0×10−8m/cycle以下であった場合を合格とした。
表3に試験結果を示す。本発明に規定の成分および製造法を採用し、本発明に規定のミクロ組織を有するNo.1〜No.8の鋼板は、優れた耐疲労亀裂伝播特性と耐延性亀裂発生特性を有しており、しかも高い強度、靭性、曲げ加工性をも兼ね備えていることがわかる。
これに対し、P、Sが本発明範囲を超えるNo.9の鋼板は本発明に規定の製造方法と組織としても低い靭性を示し、延性亀裂発生特性と曲げ加工性に劣る。また、Ar点以上の累積圧下率が本発明下限に満たないNo.10の鋼板は、フェライトの面積率とフェライト粒径が本発明の下限値に満たず、疲労亀裂伝播速度が高く、靭性、耐延性亀裂発生特性、曲げ加工性に劣る。
Ar〜Ar−200℃の温度範囲で4℃/s未満の放冷や徐冷工程を5s以上設けなかったNo.11、No.12の鋼板は、組織中にフェライトが導入出来ておらず、耐疲労亀裂伝播特性、耐延性亀裂発生特性、曲げ加工性に劣る。
水冷を行わなかったNo.13の鋼板はフェライト・パーライト組織となり、かつ、フェライトの面積率と粒径が本発明の上限値を超えている。このため、低強度であり、靭性と耐疲労亀裂伝播特性に劣る。Ms点以下まで冷却後に再加熱を行わなかったNo.14の鋼板はラス内に炭化物が生成されておらず、低靭性であり、耐延性亀裂発生特性、曲げ加工性に劣る。
再加熱時の温度がAc点を超えるNo.15の鋼板はラス内に炭化物がなく(島状マルテンサイトが生成)、低靭性であり、耐延性亀裂発生特性、曲げ加工性に劣る。再加熱時の昇温速度が本発明の下限を下回るNo.16の鋼板は、ラス内炭化物のサイズが本発明の上限を超えるため、低靭性であり、耐疲労亀裂伝播特性が劣る。
Figure 0004645461
Figure 0004645461
Figure 0004645461
ベイナイト、マルテンサイト、あるいはそれらの混合組織中に粒径と面積率を変化させてフェライトを導入した場合の曲げ加工性と耐疲労亀裂伝播特性との関係 圧延後に水冷、放冷、水冷、再加熱を行った場合の板厚平均温度と時間の関係ならびにその各工程により得られるミクロ組織の模式図 延性亀裂発生特性の評価試験(切欠丸棒引張試験)

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.30%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、残部Fe及び不可避的不純物の鋼で、金属組織が、最大サイズが0.5μm以下のラス内炭化物もしくは窒化物または炭窒化物が存在する、ベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織で、前記金属組織中には粒径:50μm以下4μm以上のフェライトが面積分率:10%以上40%以下で存在することを特徴とする耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた引張強度550MPa以上の高強度鋼材。
  2. 更に、質量%でCu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下の一種または二種以上を含有する請求項1に記載の耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた引張強度550MPa以上の高強度鋼材。
  3. 請求項1または2に記載の成分の鋼を、1000℃以上、1300℃以下に加熱し、Ar点以上で累積圧下率50%以上の圧延を行い、Ar点からAr−200℃の温度範囲を冷却速度4℃/s未満で5s以上、300s以下に冷却後、Ms点以下までを5℃/s以上の冷却速度で直接焼入れし、その後1℃/s以上の昇温速度でAc点未満まで再加熱することを特徴とする耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた引張強度550MPa以上の高強度鋼材の製造方法。
JP2006018329A 2006-01-27 2006-01-27 耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法 Active JP4645461B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006018329A JP4645461B2 (ja) 2006-01-27 2006-01-27 耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006018329A JP4645461B2 (ja) 2006-01-27 2006-01-27 耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007197777A JP2007197777A (ja) 2007-08-09
JP4645461B2 true JP4645461B2 (ja) 2011-03-09

Family

ID=38452661

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006018329A Active JP4645461B2 (ja) 2006-01-27 2006-01-27 耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4645461B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105154761A (zh) * 2008-12-26 2015-12-16 杰富意钢铁株式会社 焊接热影响部及母材部的耐延性破裂发生特性优良的钢材及其制造方法
CN104114733A (zh) * 2012-02-15 2014-10-22 Jfe条钢株式会社 软氮化用钢以及以该钢作为原材的软氮化部件
JP5928405B2 (ja) * 2013-05-09 2016-06-01 Jfeスチール株式会社 耐水素誘起割れ性に優れた調質鋼板及びその製造方法
CN111118395A (zh) * 2020-01-07 2020-05-08 浙江普兰卡钎具股份有限公司 锥孔球齿钎头壳体用合金钢及其制备方法
CN116287969B (zh) * 2022-09-08 2024-03-08 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种低裂纹率低合金高强度钢异型坯的生产方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07258788A (ja) * 1994-03-18 1995-10-09 Nippon Steel Corp 脆性亀裂伝播停止特性と低温靭性の優れた厚鋼板の製造方法
JPH09202936A (ja) * 1995-11-24 1997-08-05 Kobe Steel Ltd 大入熱溶接部の熱影響部靱性が優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法
JP2000129392A (ja) * 1998-10-20 2000-05-09 Nippon Steel Corp 耐疲労き裂進展特性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2000144309A (ja) * 1998-11-02 2000-05-26 Nippon Steel Corp 耐食性に優れた構造用鋼及びその製造方法
JP2002256380A (ja) * 2001-03-06 2002-09-11 Sumitomo Metal Ind Ltd 脆性亀裂伝播停止特性と溶接部特性に優れた厚肉高張力鋼板およびその製造方法
JP2003003229A (ja) * 2001-06-19 2003-01-08 Nippon Steel Corp 疲労強度に優れた厚鋼板とその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07258788A (ja) * 1994-03-18 1995-10-09 Nippon Steel Corp 脆性亀裂伝播停止特性と低温靭性の優れた厚鋼板の製造方法
JPH09202936A (ja) * 1995-11-24 1997-08-05 Kobe Steel Ltd 大入熱溶接部の熱影響部靱性が優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法
JP2000129392A (ja) * 1998-10-20 2000-05-09 Nippon Steel Corp 耐疲労き裂進展特性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP2000144309A (ja) * 1998-11-02 2000-05-26 Nippon Steel Corp 耐食性に優れた構造用鋼及びその製造方法
JP2002256380A (ja) * 2001-03-06 2002-09-11 Sumitomo Metal Ind Ltd 脆性亀裂伝播停止特性と溶接部特性に優れた厚肉高張力鋼板およびその製造方法
JP2003003229A (ja) * 2001-06-19 2003-01-08 Nippon Steel Corp 疲労強度に優れた厚鋼板とその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007197777A (ja) 2007-08-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6465266B1 (ja) 熱延鋼板及びその製造方法
JP5418047B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5365112B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5070744B2 (ja) 耐疲労亀裂伝播特性に優れる鋼材の製造方法
JP5034308B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP4897125B2 (ja) 高強度鋼板とその製造方法
JP5251208B2 (ja) 高強度鋼板とその製造方法
WO2011013845A1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5439973B2 (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、pwht後の落重特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP6064896B2 (ja) 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材およびその製造方法並びに耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材の判定方法
JP6036616B2 (ja) 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた溶接構造物用鋼板およびその製造方法
JP2007039795A (ja) 耐疲労亀裂伝播特性および靭性に優れた高強度鋼材の製造方法
JP2010121191A (ja) 耐遅れ破壊特性および溶接性に優れる高強度厚鋼板およびその製造方法
JP4645461B2 (ja) 耐延性亀裂発生特性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法
JP4547944B2 (ja) 高強度高靭性厚鋼板の製造方法
JP4998708B2 (ja) 材質異方性が小さく、耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2008255468A (ja) 疲労き裂伝播遅延鋼材およびその製造方法
JP6036615B2 (ja) 溶接性および耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた溶接構造物用鋼板およびその製造方法
JP2007197776A (ja) 耐遅れ破壊特性と耐疲労き裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法
JP5369585B2 (ja) 耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材およびその製造方法
KR101791324B1 (ko) 피로 특성이 우수한 고강도 강재 및 그 제조 방법
JP4645462B2 (ja) 強度依存性の小さい耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法。
JP4924047B2 (ja) 表面残留応力の絶対値が150N/mm2以下の耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JP2007277697A (ja) 耐疲労亀裂伝播特性および脆性亀裂伝播停止特性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法
JP2011195944A (ja) 耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080925

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101026

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101109

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101122

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131217

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4645461

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250