JP2009084656A - 母材靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板 - Google Patents

母材靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板を提供する。
【解決手段】化学組成がmass%、C:0.02〜0.12%、Si:0〜0.25%、Mn:1.0〜2.0%、P:0〜0.03%、S:0〜0.02%、Al:0〜0.050%、Ti:0.005〜0.100%、REM:0.0001〜0.0500%、Zr:0.0001〜0.0500%、Ca:0.0005〜0.0100%、N:0.0040〜0.0300%、O:0.0005〜0.0100%を含有し、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。鋼中酸化物を形成するREM、Zr、Ca、Mnなどの元素の濃度に基づいて算出したREM2O3、ZrO2、CaO、MnOの酸化物割合がREM2O3:10〜50%、ZrO2:5〜50%、CaO:5〜50%、MnO:1〜20%である。さらに、鋼材断面で観察される、円相当径で0.10μmより小さいTi含有窒化物が5.0×106個/mm2以上、かつ、円相当径0.10〜1.0μmのTi含有窒化物が1.0×104個/mm2以下、かつ、円相当径で1.0μmより大きいTi含有窒化物が5個/mm2以下である。さらに、鋼材断面で観察される、MAの面積率が5.0%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、造船、建築等の分野において構造材として用いられ、母材部の靭性に優れた、溶接用高張力厚鋼板に関するものである。
橋梁、高層建築物、船舶等に使用される厚鋼板においては、脆性破壊防止の観点から、母材部の靭性向上に関する研究が数多く行われてきた。現在、母材靭性を確保する手段として、制御圧延が広く用いられている。制御圧延とは、鋼中介在物のピン止め効果により、母材加熱時のオーステナイト粒粗大化を抑制し、圧延により、転位等のフェライト核生成サイトを導入することで、変態組織を微細化し、母材靭性を向上させる技術である。
近年、建築、造船分野における溶接構造物の大型化に伴い、鋼板の厚肉化が要求されている。しかしながら、鋼板の厚肉化は、圧延時の圧下量の減少をもたらすため、組織微細化が十分に達成されず、しばしば十分な母材靭性が得られない。そのため、鋼板板厚によらず、母材靭性を確保できる技術が必要とされている。
母材靭性確保のため用いられる代表的な技術として、鋼中介在物の微細分散による、オーステナイト粒粗大化抑制、鋼中介在物を起点としたフェライト変態促進技術が挙げられる。いずれも、母材部の組織微細化により、靭性を確保することを目的とした技術である。
例えば、特開2003−213366号公報(特許文献1)には、主としてTi窒化物、Zr窒化物によりオーステナイト粒成長を抑制し、母材部の靭性を向上させる技術が示されている。また、特開2005−29840号公報(特許文献2)には、Ti、REM(希土類元素)の添加方法の改善により、高温で安定なREM酸化物あるいは硫化物、およびTi窒化物を微細分散させ、加熱オーステナイト粒径を制御することで、母材靭性に優れた高強度溶接構造用鋼を得る技術が提案されている。
また、特開2003−49237号公報(特許文献3)には、溶鋼中への元素添加を制御することで、高温で安定なREM、Ca、Mg酸化物を微細分散させ、さらに、圧延、冷却法を詳細に規定することで、母材靭性を向上させる技術が示されている。
また、介在物を起点とするフェライト生成を利用した技術としては、特開2001−20031号公報(特許文献4)に、TiNを用いたオーステナイト粒ピン止め、フェライト生成の促進により、優れた母材靭性を得る手段が記載されている。また、特開2000−1738号公報(特許文献5)には、酸化物組成を適切に制御することで、高温での酸化物表面へのTi窒化物の晶出を抑制し、地鉄中のTi窒化物析出量を確保することで、オーステナイト粒ピン止め、フェライト生成を促進し、母材靭性を向上させる技術が提案されている。
特開2003−213366号公報 特開2005−29840号公報 特開2003−49237号公報 特開2001−20031号公報 特開2000−1738号公報
しかしながら、一般に、高温で安定な酸化物は、溶鋼中で生成し、容易に粗大化が進行するため、靭性向上に有効な粒子数を十分に確保できないという課題が残されている。また、Ti窒化物は、溶鋼中の固体酸化物表面に晶出しやすいため、Ti、N添加量に対して、微細粒子として析出するTi窒化物量が減少するという問題がある。
Ti窒化物晶出の改善を意図した技術として、上記特許文献5に記載の技術があるが、単にTi窒化物の晶出を抑制するだけでは、鋳造後の冷却過程において、固溶Tiの増大をもたらし、高温で析出したTi窒化物が急速に成長しやすくなるため、微細なTi窒化物を多量に得ることは困難である。
また、鋼中介在物を利用した組織微細化が達成されても、鋼中に、粗大介在物、MA(マルテンサイト及びオーステナイトの混合組織)などが存在すると、これら硬質第二相を起点に脆性破壊が発生するため、十分な母材靭性が得られない。よって、優れた母材靭性を得るためには、組織微細化に加え、硬質第二相の低減が不可欠である。
本発明は、以上の問題を解決し、母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を達成するために、オーステナイト粒のピン止め、およびフェライト変態の促進に有効なTi含有窒化物の微細分散形態、ならびにMA低減技術について実験、検討を行った。その結果、鋼中の酸化物を形成するREM、Zr、Ca及びMnの各酸化物量を制御することにより、酸化物の融点が低下し、溶鋼中で酸化物が液体になるため、溶鋼中での粗大Ti含有窒化物の晶出が抑制され、加えて、鋳造後の冷却条件、ならびに圧延前の加熱条件を適切に制御することによって、微細なTi含有窒化物が鋼中に高密度に析出することを見出した。また、圧延後の冷却条件を適切に制御することにより、微細かつMAの低減された変態組織が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づきなされたもので、所定の鋼組成の下、酸化物組成、およびTi含有窒化物、ならびにMAを適切な形態に制御することによって、母材部の靭性を著しく改善することに成功したものである。
すなわち、本発明に係る溶接用高張力厚鋼板は、化学組成が質量%で、
C :0.02〜0.12%、
Si:0.25%以下(0%を含む)、
Mn:1.0〜2.0%、
P :0.03%以下(0%を含む)、
S :0.02%以下(0%を含む)、
Al:0.050%以下(0%を含む)、
Ti:0.005〜0.100%、
REM:0.0001〜0.0500%、
Zr:0.0001〜0.0500%、
Ca:0.0005〜0.0100%、
N :0.0040〜0.0300%、
O :0.0005〜0.0100%を含有し、
残部がFeおよび不可避的な不純物からなり、鋼中に存在する酸化物を形成するある元素の平均濃度に(当該元素の酸化物の分子量/当該元素の原子量)を掛けて算出した値を当該元素の酸化物の酸化物換算値というとき、鋼中に存在する酸化物を形成する元素の内、REM、Zr、Ca、Mn、Mg、Al、Siのそれぞれの平均濃度(質量%)に基づいて算出したREM23、ZrO2 、CaO、MnO、MgO、Al23、SiO2 の各酸化物換算値と前記酸化物中のSの平均濃度の合計値に対する前記REM23、ZrO2 、CaO、MnOの各酸化物換算値の割合が、REM23:10〜50%、ZrO2 :5〜50%、CaO:5〜50%、MnO:1〜20%とされる。さらに、鋼材断面で観察される、円相当径で0.10μmより小さいTi含有窒化物が5.0×106 個/mm2 以上、かつ、円相当径で0.10〜1.0μmのTi含有窒化物が1.0×104 個/mm2 以下、かつ、円相当径で1.0μmより大きいTi含有窒化物が5個/mm2 以下とされ、さらにまた鋼材断面で観察される、MAの面積率が5.0%以下とされる。
また、前記化学組成において、下記(1)式で定義される値Zが57未満かつ50より大きくなるように成分調整することが好ましい。
Z=(8.5×[Ti]−(0.5×[O]−0.8×[REM]−0.2×[Al] −0.3×[Ca]+0.1×[S])+1.4)/([N]+0.02) …(1)
ここで、[Ti]、[O]、[REM]、[Al]、[Ca]、[S]、[N]は、それぞれ質量%で表される各元素の添加量である。
さらにまた、上記基本成分にA郡(Ni:0.05〜1.50%、Cu:0.05〜1.50%)、B郡(Cr:0.10〜1.50%、Mo:0.10〜1.50%)、C郡(Nb:0.002〜0.10%、V:0.002〜0.10%)、B:0.0010〜0.0050%の内、1種以上の元素を添加して下記(1) から(5) の化学組成とすることができる。
(1) 基本成分+A郡から1種以上
(2) 基本成分又は上記(1) の成分+B郡から1種以上
(3) 基本成分、上記(1) 又は上記(2) の成分+C郡から1種以上
(4) 基本成分、上記(1) 〜(3) のいずれかの成分+D郡から1種以上
(5) 基本成分、上記(1) 〜(4) のいずれかの成分+B
本発明によると、所定の鋼組成の下、鋼中の酸化物の融点を低下させ、これにより粗大Ti含有窒化物が晶出し難い酸化物組成とし、またTi含有窒化物、ならびにMAを適切な形態に規定したので、従来の厚鋼板に比して、母材部の靭性を著しく改善することができ、母材靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板を提供することができる。
以下に、本発明の溶接用高張力厚鋼板について、鋼中の酸化物組成、Ti含有窒化物の分布、MA量、および鋼組成について順次説明する。まず、鋼中の酸化物組成およびTi含有窒化物の分布について、製造条件と共に説明する。
一般に、微細な組織は母材靭性向上に有利であり、組織微細化のためには、圧延時のオーステナイト粒粗大化の抑制、および、冷却過程でのフェライト変態の促進が有効である。Ti含有窒化物は、いずれに対しても優れて有効な鋼中介在物であるが、その効果を最大限に利用するためには、微細なTi含有窒化物粒子を高密度に分散させる必要がある。
微細なTi含有窒化物粒子を確保するには、まず、溶鋼中に固体酸化物の生成を抑制する必要がある。固体酸化物が存在すると、その表面に粗大なTi含有窒化物が晶出するため、微細なTi含有窒化物粒子が十分に確保できなくなるからである。しかし、粗大なTi含有窒化物の晶出を抑制するだけでは、固溶Ti増加に伴い、Ti含有窒化物の成長速度が上昇するため、鋳造後の冷却過程、あるいは、圧延前の加熱過程において、Ti含有窒化物の粗大化が進行しやすくなる。
そこで発明者らは、粗大なTi含有窒化物の晶出を抑制する酸化物組成、ならびにTi含有窒化物の粗大化を抑制する鋳造後の冷却条件、ならびに圧延前の加熱条件について、実験、検討を行った。その結果、酸化物組成、および鋳造後の冷却条件、ならびに圧延前の加熱条件を、以下のとおり制御することで、微細なTi含有窒化物粒子が鋼中に高密度に分散することを見出した。
鋼中の酸化物の組成を説明するに際し、先ず、その表現方法について説明する。本発明では鋼中酸化物の組成を表現方法として、直感的に捉え易いように、鋼中酸化物を構成する元素であるREM、Zr、Ca、Mn、Mg、Al、Siの各酸化物をREM23、ZrO2 、CaO、MnO、MgO、Al23、SiO2 と仮定し、ある元素の平均濃度(mass%)に(当該元素の酸化物の分子量/当該元素の原子量)を掛けて算出した値を当該元素の酸化物の酸化物換算値とし、ある構成元素についての酸化物換算値の割合P(%)を下記式によって求め、これによって、鋼中酸化物の組成を表わすこととした。以下、Pを当該元素の酸化物の酸化物割合という。
P=(ある元素の酸化物の酸化物換算値)×100/(各元素の酸化物の酸化物換算値およびS平均濃度の合計値)
ここで、分母の酸化物換算値の対象となる元素は、上記REM、Zr、Ca、Mn、Mg、Al、Siの7元素である。
鋼中酸化物を構成する元素濃度はEPMAによって測定することができる。また、鋼中酸化物を構成する元素には上記元素の他、TiおよびSがあるが、酸化物を構成するTiはTi含有窒化物を構成するTiと区別ができないため、EPMA測定において酸化物を構成するTi濃度を測定することができない。このため、上記Pの計算式の分母の酸化物換算値の元になる元素として、Tiを除外した。また、計算式の分母にSの平均濃度を含めたのは、SはCa等と硫化物を形成し易く、不可避的に鋼中酸化物に含まれるからである。
上記表現による鋼中酸化物の組成の一例を示す。EPMAにより測定した鋼中酸化物中の平均濃度(mass%)を、Ce=14.2%、La=6.9%、Zr=7.2%、Ca=8.7%、Mn=5.5%、Mg=0.2%、Al=2.4%、Si=1.7%、S=6.8%とすると、Ce23の酸化物換算値(mass%)は(14.2×Ce2O3の分子量/Ceの原子量)=16.6%であり、以下同様に他の元素の酸化物換算値は、La23=8.1%、ZrO2 =9.7%、CaO=12.1%、MnO=7.0%、MgO=0.3%、Al23=4.6%、SiO2 =3.6%である。これらの酸化物換算値とSの平均濃度の合計は68.8%であり、これより、例えばREM(CeとLaの合計)、Zrに対する酸化物割合はREM23=35.9%、ZrO2 =14.1%となる。
鋼中に存在する酸化物の組成は、溶鋼中における酸化物の形態を規定し、鋼中酸化物の組成を適切に制御することによって、酸化物の融点が低下し、溶鋼中に液体状態で存在するようになる。このため、酸化物表面への粗大Ti含有窒化物晶出が抑制される。鋼中の複合酸化物を形成する元素の内、その融点に影響を与える元素として、Mg、Al、Si、TiはREM、Zr、Ca、Mnに比較して影響が小さいので、鋼中酸化物中のREM、Zr、Ca、Mnの元素の酸化物に対する酸化物割合が重要である。本発明ではこれらの酸化物割合を、REM23:10〜50%、ZrO2 :5〜50%、CaO:5〜50%、MnO:1〜20%に制御する。これによって、その後の微細Ti含有窒化物の析出量を確保することができる。
前記REM23、ZrO2 、CaO、MnOの各酸化物の酸化物割合が、REM23:10〜50%、ZrO2 :5〜50%、CaO:5〜50%、MnO:1〜20%から逸脱すると、溶鋼において固体で存在する酸化物の割合が増加し、粗大なTi含有窒化物の晶出が十分に抑制されなくなる。なお、前記REM23、ZrO2 、CaO、MnOの各酸化物割合は、REM23:15〜45%、ZrO2 :10〜45%、CaO:10〜45%、MnO:5〜15%に保たれることが好ましい。
鋼中酸化物の平均組成(酸化物割合)を上記範囲に制御するためには、鋳造時において、Mnを添加した後の溶存酸素量を、質量%で0.0020〜0.0100%に制御した後に、REM、Zr、Caを添加すればよい。前記Mn添加後の溶存酸素量は、例えば、脱酸元素であるSi、Alを添加することによって制御することができる。
溶鋼中の酸化物を上記組成に調整した上で、以下の条件で冷却、圧延前再加熱を行うことにより、鋳造後のTi含有窒化物の粗大化が抑制される。すなわち、鋳造後の冷却過程において、1550℃から、(2)式で定義される温度Tf(℃)までの冷却時間を800s以下とする。さらに、圧延前の再加熱において、最高加熱温度を1050℃から1200℃の間に保ち、かつ、加熱開始から圧延開始までの時間を4hr以内とする。1550℃からTf(℃)までの冷却時間が800sを超える、あるいは、圧延前の再加熱において、最高加熱温度が1200℃を超える、あるいは、加熱開始から圧延開始までの時間が4hrを超えると、Ti含有窒化物の粗大化が進行して、微細なTi含有窒化物が十分に得られなくなる。また、圧延前の最高加熱温度が1050℃より低いと、オーステナイト化が十分に進行しないようになる。
鋳造後の冷却において、1550℃からTf(℃)までの温度範囲を問題にするのは、この温度範囲では母相が主としてδ相として存在し、δ相におけるTi含有窒化物の成長速度はγ相に比べて大きいためである。このため、鋳造時の冷却過程において、δ相安定温度域をできる限り速く通過させることにより、Ti含有窒化物の粗大化を抑制することができる。なお、Tfに対しては、特にC、Cu、Niの与える影響が大きいため、Tfを決定する下記(2) 式においてはこれらの元素量をパラメータとした。また、各元素量の係数、定数は実験により決定した。
Tf=1350+1000[C]+11[Cu]+26[Ni]……(2)
ここで、[C]、[Cu]、[Ni]は、それぞれ質量%で表される各元素の添加量である。
以上の制御を組み合わせることで、圧延時のオーステナイト粒ピン止め、圧延後の冷却過程におけるフェライト変態促進に有効な、円相当径(Ti含有窒化物の面積に相当する円の直径)で0.1μmより小さい微細なTi含有窒化物を、5.0×106 個/mm2 以上の高密度で分散させることが可能となる。Ti含有窒化物の円相当径が0.1μm以上になると、オーステナイト粒ピン止め、およびフェライト変態促進の効果が低下する。また、円相当径で0.1μm未満のTi含有窒化物が、5.0×106 個/mm2 より少ないと、オーステナイト粒ピン止め、およびフェライト変態促進の効果が十分に得られなくなる。さらに、この時、円相当径で0.1〜1.0(0.1以上、1.0以下)μmのTi含有窒化物個数が1.0×104 個/mm2 を超える(超になる)、あるいは、円相当径で1.0μmより大きいTi含有窒化物個数が5個/mm2 を超える(超になる)と、脆性破壊を助長して、十分な靭性が得られなくなる。このため、0.1〜1.0μmのTi含有窒化物個数を1.0×104 個/mm2 以下とし、1.0μm超のTi含有窒化物個数を5個/mm2 以下とする。なお、円相当径で0.1μm未満のTi含有窒化物は、5.5×106 個/mm2 以上分散させることが望ましく、同様に、円相当径で0.1〜1.0μmのTi含有窒化物は8.0×103 個/mm2 以下、円相当径で1.0μm超のTi含有窒化物個数は3個/mm2 以下であることが望ましい。
上記の条件により鋳造片を冷却し、再加熱した鋳造片は、通常の低炭素鋼の熱間圧延に従って、圧延開始温度を950℃程度、圧延終了温度を880℃程度とし、圧延を終了する。圧延終了後の冷却条件については後述する。
鋼中、Ti含有窒化物の微細分散が達成され、微細な変態組織が得られても、硬質のMAが存在すると優れた靭性は得られない。上記の酸化物組成、およびTi含有窒化物分散形態が達成されたうえで、優れた母材靭性を確保するためには、MA分率(面積%)を5.0%以下に抑制する必要がある。なお、MA分率は4.0%以下であることが好ましい。
鋼中のMAの分率を5.0%以下に抑制するためには、圧延後の冷却過程において、冷却速度を2〜15℃/sの範囲内に調整したうえで、冷却停止温度を300〜500℃に制御すればよい。この時、冷却速度を2℃/sより小さくする、あるいは、冷却停止温度を500℃より高くすると、フェライト粒が粗大化して、靭性が低下する。また、冷却速度を15℃/sより大きくする、あるいは、冷却停止温度を300℃より低くすると、MA分率が5%を超え、靭性が低下する。ただし、冷却停止温度が300℃より低くても、その後に、300℃以上でテンパー処理を施すことで、靭性を確保することは可能である。
次に、本発明の厚鋼板の化学組成およびその成分限定理由を説明する。単位は質量%(mass%)である。
C:0.02〜0.12%
Cは、鋼材の強度確保に必須の元素であり、含有量が0.02%より少ないと必要な強度が得られないため、下限を0.02%とした。また、含有量が0.12%より多いと、MA増加による靭性低下を招くため、上限を0.12%とした。なお、好ましくは0.04〜0.10%である。
Si:0.25%以下(0%を含む)
Siは、固溶強化により、鋼材の強度を確保する元素であり、含有量が0.25%より多いと、MA増加による靭性低下を招くため、上限を0.25%とした。なお、好ましくは0.18%以下(0%を含む)である。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、酸化物の低融点化による、粗大Ti含有窒化物の抑制に必須の元素であり、含有量が1.0%より少ないと、酸化物の低融点化が十分に達成されないため、下限を1.0%とした。また、含有量が2.0%より多いと、強度の過大な上昇を招いて、靭性低下の原因となるため、上限を2.0%とした。なお、好ましくは1.4〜1.8%である。
P:0.03%以下(0%を含む)
Pは、粒界偏析によって粒界破壊の原因となる不純物元素であり、含有量が0.03%より多いと、靭性低下を招くため、上限を0.03%とした。なお、好ましくは0.02%以下(0%を含む)である。
S:0.02%以下(0%を含む)
Sは、粒界偏析によって粒界破壊の原因となる不純物元素であり、含有量が0.020%より多いと、靭性低下を招くため、上限を0.020%とした。なお、好ましくは0.015%以下(0%を含む)である。
Al:0.050%以下(0%を含む)
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、含有量が0.050%より多いと、粗大酸化物を形成して靭性低下を招くため、上限を0.050%とした。なお、好ましくは0.040%以下(0%を含む)である。
Ti:0.005〜0.100%
Tiは、窒化物の生成に必須の元素であり、含有量が0.005%より少ないと、十分な量の窒化物が得られないため、下限を0.005%とした。また、含有量が0.100%より多いと窒化物の粗大化により靭性低下を招くため、上限を0.100%とした。なお、好ましくは0.010〜0.080%であり、より好ましい上限は0.060%、さらに好ましい上限は0.050%である。
REM(希土類元素):0.0001〜0.0500%
REMは、酸化物の低融点化による、粗大Ti含有窒化物の抑制に必須の元素であり、含有量が0.0001%より少ないと、酸化物の低融点化が十分に達成されないため、下限を0.0001%とした。また、含有量が0.0500%より多いと、粗大酸化物を形成して靭性低下を招くため、上限を0.0500%とした。なお、好ましくは0.0005〜0.0400%である。
Zr:0.0001〜0.0500%
Zrは、酸化物の低融点化による、粗大Ti含有窒化物の抑制に必須の元素であり、含有量が0.0001%より少ないと、その効果が十分に得られなくなるため、下限を0.0001%とした。また、含有量が0.0500%より多いと、粗大酸化物、あるいは析出強化をもたらす微細な炭化物を形成して靭性低下を招くため、上限を0.0500%とした。なお、好ましくは0.0005〜0.0400%である。
Ca:0.0005〜0.0100%
Caは、酸化物の低融点化による、粗大Ti含有窒化物の抑制に必須の元素であり、含有量が0.0005%より少ないと、酸化物の低融点化が十分に達成されないため、下限を0.0005%とした。また、含有量が0.0100%より多いと、粗大酸化物を形成して靭性低下を招くため、上限を0.0100%とした。なお、好ましくは0.0010〜0.0080%である。
N:0.0040〜0.0300
Nは、Ti含有窒化物の生成に必須の元素であり、微細なTi含有窒化物として、オーステナイト粒ピン止めおよびフェライト変態を促進し、靭性向上をもたらす。含有量が0.0040%より少ないと、十分な靭性向上効果が得られないため、下限を0.0040%とした。また、含有量が0.0300%より多いと、固溶Nが増加し靭性低下を招くため、上限を0.0300%とした。なお、好ましくは0.0050〜0.0250%であり、より好ましい上限は0.0200%、さらに好ましい上限は0.0150%である。
O:0.0005〜0.0100%
Oは、酸化物の生成に必須の元素であり、含有量が0.0005%より少ないと、十分な量の酸化物が得られないため、下限を0.0005%とした。また、含有量が0.0100%より多いと、酸化物の粗大化によりHAZ靭性低下を招くため、上限を0.0100%とした。なお、好ましくは0.0010〜0.0080%である。
上記成分範囲を満たした上で、下記(1)式で定義される値Zが50超、57未満となるよう、Ti、O、REM、Al、Ca、S、N添加量を調整することが好ましい。
Z=(8.5×[Ti]−(0.5×[O]−0.8×[REM]−0.2×[Al] −0.3×[Ca]+0.1×[S])+1.4)/([N]+0.02) …(1)
ここで、[Ti]、[O]、[REM]、[Al]、[Ca]、[S]、[N]は、それぞれ質量%で表される各元素の添加量である。
上記(1) 式は、窒化物形成に寄与するTiとNの割合を表現した式である。Ti含有窒化物を適切に分散させるためには、TiとNの割合を適正な範囲に制御する必要がある。Tiは鋼中において酸化物、窒化物として存在するものの、酸化物の方が窒化物に比べて安定なため、窒化物形成に寄与するTiを考慮する際には、酸化物として存在するTiを差し引く必要がある。このため、(1) 式では、Nを除き、酸化物形成に必要なOおよびTiと同程度以上の酸化物生成能を有する元素並びにSを式の構成要素とした。Sは酸化物形成に直接的には関連しないものの、酸化物あるいは硫化物を生成するCa等の元素に対し、酸化物として存在し得る量を変動させることで、間接的にTi酸化物量に影響を与える。なお、(1) 式中の元素濃度に付した係数および定数は実験的に決定したものである。
上記のとおり、値Zは50<Z<57になるように成分調整することが好ましい。値Zが57以上になると、微細なTi含有窒化物が十分に得られなくなるため、57未満とした。また、値Zが50以下になると、固溶窒素が増加して、十分な靭性が得られなくなるため、50より大きい値とした。なお、好ましくは56.8未満かつ50.2より大きい値である。
さらにまた、上記基本成分にA郡(Ni:0.05〜1.50%、Cu:0.05〜1.50%)、B郡(Cr:0.10〜1.50%、Mo:0.10〜1.50%)、C郡(Nb:0.002〜0.10%、V:0.002〜0.10%)、B:0.0010〜0.0050%の1種以上を添加して下記(1) から(5) の組成とすることができる。
(1) 基本成分+A郡から1種以上
(2) 基本成分又は上記(1) の成分+B郡から1種以上
(3) 基本成分、上記(1) 又は上記(2) の成分+C郡から1種以上
(4) 基本成分、上記(1) 〜(3) のいずれかの成分+D郡から1種以上
(5) 基本成分、上記(1) 〜(4) のいずれかの成分+B
Ni、Cuは、Tfを上昇させることで、Ti含有窒化物粒子の粗大化抑制に有効な元素であり、それぞれ、含有量が0.05%より少ないと、その効果が十分に得られなくなるため、下限を0.05%とする。また、それぞれ、含有量が1.50%より多いと、強度の過大な上昇を招いて、靭性低下をもたらすため、上限を1.50%とする。なお、好ましくは、それぞれ0.10〜1.20%である。
Cr、Moは、いずれも鋼材の高強度化に有効な元素であり、それぞれ、含有量が0.10%より低いと、その効果が十分に得られないため、下限を0.10%とする。また、それぞれ、含有量が1.50%を超えると、強度の過大な上昇を招いて、靭性低下をもたらすため、上限を1.50%とする。なお、好ましくは、それぞれ0.20〜1.20%である。
Nb、Vは、いずれも炭窒化物として析出することで、オーステナイト粒粗大化を抑制する元素であり、それぞれ、含有量が0.002%より少ないと、その効果が十分に得られないため、下限を0.002%とする。また、それぞれ、含有量が0.10%を超えると、粗大炭窒化物として靭性低下を招くため、上限を0.10%とする。なお、好ましくは、それぞれ0.005〜0.08%である。
Bは、粒界フェライト生成を抑制することで、靭性を向上させる元素であり、含有量が0.0010%より少ないと、その効果が十分に得られないため、下限を0.0010%とする。また、含有量が0.0050%より多いと、BNとしてオーステナイト粒界に析出し、靭性低下を招くため、上限を0.0050%とする。なお、好ましくは0.0015〜0.0040%である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定的に解釈されるものではない。
表1および表2に示す化学組成の鋼を真空溶解炉(150kg)を用い、1550℃〜Tf(℃)の冷却時間t1(s)を変化させて溶製し、得られたスラブを、最高加熱温度Th(℃)、および加熱開始から圧延開始までの時間t2(hr)を変化させて加熱し、続いて圧延開始温度を950℃程度とし、最終圧延温度を880℃として熱間圧延を施し、圧延後の冷却速度Rc(℃/s)および冷却停止温度Ts(℃)を変化させて、厚さ50〜80mmの厚鋼板を製造した。組成より求まる値Zを表1および表2に、Tf(℃)、t1(s)、Th(℃)、t2(hr)、Rc(℃/s)およびTs(℃)を表3および表4に示す。
なお、表1に示したNo. 1〜52のサンプル鋼の内、No. 36を除く51サンプルについては、いずれも鋳造時において、Mnを添加後の溶存酸素量を、フェロシリコンを添加して、質量%で0.0020〜0.0100%に制御した後に、REM、Zr、Caを添加したものである。No. 36については、鋳造時においてMnとREM、Zr、Caを同時に添加したものである。
得られた各厚鋼板のt(板厚)/4位置から試験片を切出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を、EPMA装置(装置名:EPMA−8705、島津製作所製)を用いて観察し、酸化物の平均組成を測定した。以下に測定方法を示す。まず、EPMA装置の観察倍率を200倍に設定し、4mm×8mmの観察視野内に存在する、最大直径が2μm以上である酸化物について、個々の酸化物について質量%で表される平均組成の定量分析を行った。なお、鋼中酸化物の組成は、サイズによって大きく変動せず、2μm 未満の酸化物を含めて、各酸化物中の含有元素に対する酸化物割合の全酸化物における平均値を求めても、2μm 以上の酸化物のみを用いて求めた場合とほとんど変わらないため、2μm 未満の酸化物は観察から除外した。
そして、各鋼中酸化物に含まれるREM(Ce、La) 、Zr、Ca、Mn、Mg、Al、Si、Sの平均濃度を基に、REM23、ZrO2 、CaO、MnO、MgO、Al23、SiO2 の酸化物換算値およびREM23、ZrO2 、CaO、MnOの各酸化物の酸化物割合を求め、全ての鋼中酸化物における前記4種の酸化物の酸化物割合(%)の平均値を求め、それぞれW(REM)、W(Zr)、W(Ca)、W(Mn)として、表3および表4に併せて示す。
また、得られた各厚鋼板のt(板厚)/4位置から試験片を切出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を、抽出レプリカ法により、TEMを用いて観察し、円相当径0.10μmより小さいTi含有窒化物の試験片表面の個数密度N1(個/mm2 )、および円相当径0.10〜1.0μmのTi含有窒化物の試験片表面の個数密度N2(個/mm2 )を測定した。以下に測定方法を示す。
まず、TEMの観察倍率を60000倍に設定し、4μm2 の面積を有する視野を無作為に5視野選択し、視野中の介在物に含まれる元素を、TEMに付属のEDXにより測定し、Tiが検出された介在物をTi含有窒化物を定義した。得られた視野より、画像ソフト(Image−Pro Plus)を用いた画像解析により、Ti含有窒化物の面積を測定して円相当径を求め、N1を算出した。なお、最大径にして0.01μm未満の粒子は、EDX分析結果に十分な信頼性が得られないため、分析対象から除外した。また、TEMの観察倍率を6000倍に設定し、400μm2 の面積を有する視野を無作為に5視野選択し、N1と同様に、N2を算出した。得られたN1およびN2の値を表3および表4に併せて示す。
また、得られた各厚鋼板のt(板厚)/4位置から試験片を切出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を、電界放射式走査型電子顕微鏡(装置名:SUPRA 35、Carl Zeiss社製)(以下、FE−SEMと呼称する)を用いて観察し、円相当径で1.0μmより大きいTi含有窒化物表面の個数密度N3(個/mm2 )を測定した。以下に測定方法を示す。
まず、FE−SEMの観察倍率を1000倍に設定し、0.06mm2 の面積を有する視野を無作為に20視野選択し、最大径1.0μm超の介在物粒子について、中央部の組成を、FE−SEM付属のEDX(エネルギー分散型X線検出器)による半定量分析から求め、Nを含み、かつ、質量%で測定されたTi濃度値を、Fe、Oを除く、介在物に含まれる元素の濃度の合計で規格化した値(除した値)が、50%以上である介在物を、Ti含有窒化物と定義し、前記画像ソフトを用いた画像解析により、介在物の円相当径を求めた。そのうちで、円相当径が1.0μm超である介在物の個数を、1000倍の20視野の画像にてカウントし、N3(個/mm2 )を算出した。得られたN3の値を表3および表4に併せて示す。
なお、Ti濃度値を規格化するに際してベースとなる元素からFe、Oを除外したのは以下の理由による。Feを除外するのは、測定結果に及ぼす地鉄中のFeの影響を除去するためである。また、Oを除外するのは、介在物の主体がTi含有窒化物であることを判定するためである。すなわち、Tiの酸化物生成能はREM等に比べ同等以下のため、酸化物の主体がTi酸化物となることは無いと考えられる。このため、Oを除いた元素濃度でTiが50%を超えるようなTi主体の介在物は、Ti含有窒化物であると判定される。
また、得られた各厚鋼板のt(板厚)/4位置から試験片を切出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を鏡面研磨の後、レペラ試薬により腐食した試料から、MAの面積分率SAを求めた。すなわち、光学顕微鏡の倍率を400倍に設定し、40000μm2 の面積を有する視野を無作為に3視野選択し、前記画像ソフトを用いた画像解析により、SA(面積%)を算出した。得られたSAの値を表3および表4に併せて示す。
また、得られた各厚鋼板のt(板厚)/4位置から、圧延方向にシャルピー衝撃試験片(JIS Z 2201の4号試験片)を採取し、JIS Z 2242に準拠して−60℃にてシャルピー衝撃試験を実施し、得られる吸収エネルギーvE-60(J)の最小値が、120Jを超えるものを、靭性に優れると評価した。得られたvE-60(J)の最小値を表3および表4に併せて示す。
表3および表4から明らかなとおり、本発明例No. 1〜30は、厚鋼板の組成、鋳造および圧延プロセスを適切に制御したので、酸化物およびTi含有窒化物を適切な形態で分散させるとともに、MA分率を5%以下に抑制することに成功し、高い靭性値が得られている。一方、比較例No. 31〜35では、鋳造あるいは圧延プロセスにおいて、冷却時間t1、再加熱温度Th、加熱開始から圧延開始までの時間t2、圧延後の冷却速度Rc、冷却停止温度Tsの値が適正な範囲から逸脱するなどの理由によって、W(REM)、W(Zr)、W(Ca)、W(Mn)、あるいはTi含有窒化物の分散形態、あるいはMA分率が、適正な範囲内に含まれていないため、靭性が低下している。また、比較例No.36は鋼の鋳造時において、Mn添加後に溶存酸素濃度を制御してからREM、Zr、Caを添加することを行っていないため、W(Mn)が低く、また1μm超のTiN個数が5個を超えて靭性が低下している。また、比較例No.37〜52は、鋼の組成が発明成分範囲から逸脱し、W(REM)、W(Zr)、W(Ca)、W(Mn)、あるいはTi含有窒化物の分散形態、あるいはMA分率が、適正な範囲内に含まれていないため、あるいは、おそらくは粗大介在物の増加、不純物の増加、過度の強化、固溶元素の粒界偏析などの理由により、靭性が低下している。
Figure 2009084656
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Claims (6)

  1. 化学組成が質量%で、
    C :0.02〜0.12%、
    Si:0.25%以下(0%を含む)、
    Mn:1.0〜2.0%、
    P :0.03%以下(0%を含む)、
    S :0.02%以下(0%を含む)、
    Al:0.050%以下(0%を含む)、
    Ti:0.005〜0.100%、
    REM:0.0001〜0.0500%、
    Zr:0.0001〜0.0500%、
    Ca:0.0005〜0.0100%、
    N :0.0040〜0.0300%、
    O :0.0005〜0.0100%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的な不純物からなり、
    鋼中に存在する酸化物を形成するある元素の平均濃度に(当該元素の酸化物の分子量/当該元素の原子量)を掛けて算出した値を当該元素の酸化物の酸化物換算値というとき、鋼中に存在する酸化物を形成する元素の内、REM、Zr、Ca、Mn、Mg、Al、Siのそれぞれの平均濃度(質量%)に基づいて算出したREM23、ZrO2 、CaO、MnO、MgO、Al23、SiO2 の各酸化物換算値と前記酸化物中のSの平均濃度の合計値に対する前記REM23、ZrO2 、CaO、MnOの各酸化物換算値の割合が、REM23:10〜50%、ZrO2 :5〜50%、CaO:5〜50%、MnO:1〜20%であり、
    さらに、鋼材断面で観察される、円相当径で0.10μmより小さいTi含有窒化物が5.0×106 個/mm2 以上、かつ、円相当径で0.10〜1.0μmのTi含有窒化物が1.0×104 個/mm2 以下、かつ、円相当径で1.0μmより大きいTi含有窒化物が5個/mm2 以下であり、
    さらに、鋼材断面で観察される、MAの面積率が5.0%以下であることを特徴とする、母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板。
  2. 下記(1)式で定義される値Zが57未満かつ50より大きい、請求項1に記載した母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板。
    Z=(8.5×[Ti]−(0.5×[O]−0.8×[REM]−0.2×[Al] −0.3×[Ca]+0.1×[S])+1.4)/([N]+0.02) …(1)
    ここで、[Ti]、[O]、[REM]、[Al]、[Ca]、[S]、[N]は、それぞれ質量%で表される各元素の添加量である。
  3. 前記組成に加えて、質量%で、
    Ni:0.05〜1.50%、
    Cu:0.05〜1.50%
    のうち一種あるいは二種以上を含む、請求項1または2に記載した母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板。
  4. 前記組成に加えて、質量%で
    Cr:0.10〜1.50%、
    Mo:0.10〜1.50%
    のうち一種あるいは二種以上を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載した母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板。
  5. 前記組成に加えて、質量%で
    Nb:0.002〜0.10%、
    V :0.002〜0.10%
    のうち一種あるいは二種以上を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載した母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板。
  6. 前記組成に加えて、質量%で0.0010〜0.0050%のBを含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載した母材部の靭性に優れた溶接用高張力厚鋼板。
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