JP2016141834A - 靭性に優れた高強度極厚h形鋼及びその製造方法 - Google Patents

靭性に優れた高強度極厚h形鋼及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フランジの厚みが100mm以上で、靭性に優れた高強度極厚H形鋼及びその製造方法の提供。
【解決手段】炭素当量Ceq(=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15)が0.35〜0.50であり、円相当径で0.005〜0.5μmのMgを含有する酸化物が合計で100〜5000個/mm存在し、フランジ5の長さ方向で表面から1/6、厚さ方向で表面から1/4の位置7における、鋼材組織におけるベイナイト分率が80%以上であり、降伏強度又は0.2%耐力が450MPa以上・引張強度が550MPa以上であり、かつフランジの長さ方向で表面から1/2、厚さ方向で表面から3/4の位置8における、鋼材組織におけるフェライト及びパーライトの合計分率が80%以上であり、フェライトの円相当粒径が60μm以下であり、シャルピー試験の吸収エネルギーが150J以上である、靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築建造物の構造部材などに用いられる、靭性に優れた高強度極厚H形鋼に関するものである。
近年、高層ビルなど建築物の巨大化に伴い、使用される鋼材の厚手化が進展している。特に、大型の建築物には、フランジの厚みが100mm以上のH形鋼(以下、極厚H形鋼という。)の使用が望まれている。一般に、鉄鋼材料は、製品の厚さが増大するほど、強度の確保が難しくなる傾向にあり、更に靭性も低下する傾向にある。従って、厚手の鋼材では、高強度化と高靭性化との両立が困難である。
また、特にH形鋼は、形状が特異であり、ユニバーサル圧延では圧延条件(温度、圧下率)が制限される。そのため、特に、極厚H形鋼を製造する場合、ウェブ、フランジ、フィレット等の各部位で、圧延温度、圧下率、加速冷却時の冷却速度に大きな差が生じる。その結果、極厚H形鋼の断面内では、部位によって強度、延性、靭性に大きな変化が生じる。特にフィレット部など鋼材の内部では結晶粒が粗大になり、靭性を確保することが困難になる。
従来、H形鋼の靭性向上に関して、Ti系酸化物を分散させ、温度制御圧延及び加速冷却を行って、高強度で靭性に優れた圧延形鋼を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2及び3、参照)。また、Mgを含有する酸化物を鋼中に分散させてオーステナイト粒径を微細化し、靭性に優れた圧延形鋼を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献4及び5、参照)。更に、Al-Mg-Ti系酸化物を分散させ、かつ温度制御圧延及び加速冷却によって高強度で靭性に優れた圧延形鋼を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献6、参照)。
特開2000−54060号公報 国際公開2011−065479号公報 特開平5−263182号公報 特開平10−147834号公報 特開2000−328174号公報 特開平7−216498号公報
鋼材の表面近傍の強度を確保するためには、表面近傍が変態開始温度(Ar点)に到達する前に圧延を終了し、水冷を開始し、ベイナイトなどの低温変態組織を生成させることが必要である。しかし、フランジ厚が100mm以上の極厚H形鋼を製造する場合、圧延過程において表面と内部との温度差が大きくなる傾向にある。
本発明者らは、計算機シミュレーションによって検討を行い、例えば、フランジ厚125mmのH形鋼を製造する場合、圧延終了時に表面と内部の温度差が200℃にも達することを明らかにした。そのため、鋼材の内部では表面に比べてオーステナイト粒が粗大化し、靭性が低下する傾向にある。
鋼材内部のオーステナイト粒の粗大化を抑制するためには圧延温度を低下させることが有効である。しかし、圧延温度を大きく下げると圧延時の造形性を著しく損なうだけでなく、表面に近い部位でのオーステナイト粒径が過剰に小さくなり、焼入性が低下し、また、鋼材の表面に近い部位の温度が水冷開始前にAr点を下回り、フェライトが多量に生成して強度が低下するという問題も発生する。このように、フランジ厚が100mm以上の極厚H形鋼の鋼材表面に近い部位での強度確保と鋼材内部での靭性確保は、圧延温度の制御によるオーステナイト粒径の微細化という手法のみでは両立が困難であることがわかった。
また、連続鋳造によって得られた鋳片には、板厚中心部に合金元素の偏析(中心偏析)が生じている。この中心偏析は、高強度極厚H形鋼の断面を示す図1の1/2F線上(図1の中央を縦方向に)に分布している。即ち、圧延後のH形鋼のフィレット部の位置は、鋳片の中心偏析が生じた部位(中心偏析部)に相当し、MA(Martensite−Austenite Constituent)などの硬質相、アルミナやMnS等の多数の介在物が生成している。したがって、図1の靭性評価部位8に示す位置(フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置)で靭性を評価すると、偏析に起因するMA及び介在物(MnS等)によって、更に靭性が劣化することが本発明者らの検討により明らかとなった。なお、図1の高強度極厚H形鋼の断面において、4はH形鋼、5はフランジ、6はウェブ、7は強度評価部位、8は靭性評価部位、Fはフランジ長さ全長、Hは高さ、tはウェブの厚み、tはフランジの厚みを示している。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フランジの厚みが100mm以上であり、靭性に優れた高強度極厚H形鋼及びその製造方法を提供するものである。なお、本発明のH形鋼は、鋼板を溶接して形成されるビルドアップH形鋼ではなく、熱間圧延と加速冷却によって成形され、焼戻し熱処理を必要としない、圧延H形鋼である。
本発明者らは、極厚H形鋼のフィレット、特に高強度極厚H形鋼の断面を示す図1の靭性評価部位8に示す位置の靭性を確保するため、この部位の鋼材組織をフェライト及びパーライトの混合組織(フェライト・パーライトということがある。)とすることが有効であるという知見を実験により見出した。更に、この部位のフェライトの円相当粒径(フェライト粒径、フェライト粒径、ということがある。)を60μm以下にすることで、アルミナやMnS等の介在物による靭性の低下の抑制が可能であることを実験により明らかにした。
図1の靭性評価部位8に示す位置においてフェライトとパーライトの混合組織を得るためには、図1の靭性評価部位8に示す位置において加速冷却時の800℃から500℃の間の冷却速度を小さくする緩冷却が効果的である。しかし、優れた靭性を得るには、フェライトの粒径を60μm以下にする必要があり、緩冷却だけでは靭性向上の効果は充分ではない。図1の靭性評価部位8に示す位置では、先に述べたように鋼材の内部にあるため圧延温度が充分に下がらず、フェライトを微細化することができないためである。
そのため、本発明らは熱間圧延後のオーステナイト粒径を小さくし、オーステナイトから変態によって生成するフェライト・パーライトを微細化する方法を検討した。具体的には、高温でも熱的に安定な粒子を鋼材中に分散させ、その粒子による粒界のピニング効果を利用し、オーステナイト粒の粗大化を抑制し、冷却によって生成するフェライトの粒径を微細化する方法である。そして、本発明者らは、オーステナイトを微細化するためのピニング粒子として、Mgを含む酸化物粒子が有効であることを詳細な実験を通じて明らかにした。
Mgを含む酸化物粒子を微細分散させた鋼片を用いて熱間圧延を行い、加速冷却を行い鋼材の表面(図1の強度評価部位7に示す位置)、即ち、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置で、厚さ方向で表面から1/4の位置の強度評価部位7をベイナイトにしつつ、同時に、図1の靭性評価部位8に示す位置では、800℃から500℃の冷却速度を0.3℃/秒以下に抑制した。その結果、図1の靭性評価部位8に示す位置での鋼材組織がフェライト及びパーライトの混合組織となり、かつフェライトの粒径が60μm以下となり、中心偏析に起因するMA及び介在物の影響も低減できることがわかった。更に、Si、Mn、V等の成分を適正に制御することにより、高強度極厚H形鋼の靭性を顕著に向上させることに成功し、本発明を完成した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C :0.05〜0.16%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.70〜2.00%、
V :0.01〜0.20%、
Al:0.0001〜0.10%、
Ti:0.003〜0.030%、
N :0.0010〜0.0150%、
O :0.0003〜0.0100%、
Mg:0.0003〜0.0050%
を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記式(1)によって求められる炭素当量Ceqが0.35〜0.50であり、
円相当径で0.005〜0.5μmのMgを含有する酸化物が合計で100〜5000個/mm存在し、
フランジの厚みが100〜150mmであり、
フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置における、鋼材組織におけるベイナイト分率が80%以上であり、
フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置における、鋼材組織におけるフェライト及びパーライトの合計分率が80%以上であり、フェライトの円相当粒径が60μm以下である
ことを特徴とする靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
eq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ・・式(1)
ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは各元素の含有量で、含有されない場合は0とする。
[2] 更に、質量%で、
Ni:0.01〜0.50%
Cr:0.01〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Mo:0.001〜0.30%、
Nb:0.001〜0.050%、
B :0.0001〜0.0020%
Ca:0.0001〜0.0050%
のうち、1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
[3] フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置における、降伏強度又は0.2%耐力が450MPa以上、引張強度が550MPa以上であり、フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置におけるシャルピー試験の吸収エネルギーが150J以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
[4] 上記[1]〜[3]の何れかに記載の高強度極厚H形鋼の製造方法であって、上記[1]又は[2]に記載の成分組成を有する鋼片を1100〜1350℃に加熱した後に圧延を開始し、表面温度800℃以上で圧延を終了して水冷を開始し、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置における800℃から500℃の冷却速度が2.2℃/秒以上であり、かつフランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で3/4の位置における800℃から500℃の冷却速度が0.3℃/秒以下になるように冷却することを特徴とする靭性に優れた高強度極厚H形鋼の製造方法。
本発明によれば、フランジ厚が100〜150mmであり、降伏強度又は0.2%耐力が450MPa以上、引張強度が550MPa以上、21℃でのシャルピー吸収エネルギーは、150J以上という、靭性に優れた高強度極厚H形鋼を得ることができる。本発明の高強度極厚H形鋼は、多量の合金の添加や製鋼負荷の大きい極低炭素化を行わずに、製造することが可能であるため、製造コスト低減、工期の短縮による大幅なコスト削減を図ることができる。したがって、経済性を損なうことなく、大型建造物の信頼性を向上させることができるなど、本発明は産業上の貢献が極めて顕著である。
高強度極厚H形鋼の試験片を採取する位置を説明する図である。 本発明のH形鋼の製造装置の一例を示す図である。
本発明者らは、フランジ厚が100mm以上の極厚H形鋼において、高強度極厚H形鋼の断面を示す図1の靭性評価部位8の位置における靭性を確保するために、鋼の成分組成、酸化物粒子、金属組織について検討を行った。その結果、脱酸時に溶鋼にMgを添加して、Mgを含む酸化物を鋼中に微細に分散させ、炭素当量Ceqを適正な範囲とすることにより、フランジ厚が100mm以上の極厚H形鋼においても、良好な靭性を確保できることを見出した。Mgを含む酸化物は、TiN析出物に内包される場合がある。
フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置(図1の靭性評価部位8の位置)では、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって測定したフェライトの円相当粒径が60μm以下に微細化されていることがわかった。これは、酸化物粒子によって微細化されたオーステナイト粒から生成するフェライトのサイズが、粗大なオーステナイト粒から生成するフェライトのサイズよりも小さくなるためであると考えられる。また、図1の靭性評価部位8の位置において、800℃から500℃の間の冷却速度を0.3℃/秒以下にすることにより、フェライトとパーライトの合計分率が80%以上の金属組織となり、シャルピー試験の吸収エネルギーが150J以上にできることがわかった。
同時に、熱間圧延後、図1の強度評価部位7の位置において800℃から500℃の冷却速度が2.2℃/秒以上となるように水冷による加速冷却を施して極厚H形鋼を製造すると、オーステナイト粒界から変態するフェライトの生成が抑制される。その結果、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置(図1の強度評価部位7の位置)におけるベイナイトの面積分率が80%以上となり、降伏強度又は0.2%耐力が450MPa以上、引張強度が550MPa以上の強度も確保できることも見出した。
以下、本発明について説明する。まず、本発明形鋼の成分範囲の限定理由について述べる。ここで、成分元素についての「%」は質量%を意味する。
(C:0.05〜0.16%)
Cは、鋼の強化に有効な元素であり、含有量の下限値を0.05%以上とする。好ましくは、0.07%以上のCを添加する。一方、C量が0.16%を超えると炭化物の生成量が過剰となり靭性が低下するため、C量の上限を0.16%以下とする。靭性を向上させるためには、C量の上限を0.13%以下とすることが好ましい。
(Si:0.01〜0.50%)
Siは、脱酸元素であり、強度の向上にも寄与するため、本発明では、Si量の下限を0.01%以上とする。一方、過剰なSiの添加はマルテンサイト−オーステナイト混合物(MAという場合がある。)の生成を助長し靭性を劣化させるため、Si含有量の上限を0.50%以下とする。靭性を確保するためには、Si量の上限は0.40%以下が好ましく、より好ましくは0.30%以下である。
(Mn:0.70〜2.00%)
Mnは、焼入れ性を高める元素であり、図1の強度評価部位7の位置ではベイナイトの生成を促進し、強度の向上に寄与するため、0.70%以上を添加する。強度を高めるには、Mn量を1.00%以上にすることが好ましく、1.30%以上が更に好ましい。一方、2.00%を超えるMnを添加すると、MAの生成を助長し靭性を損なうため、Mn量の上限を2.00%以下とする。Mn量の好ましい上限は1.80%以下であり、1.60%以下がより好ましい。
(V:0.01〜0.20%)
Vは、焼入れ性の向上に寄与し、更には炭窒化物を生成し、組織の微細化及び析出強化にも寄与するため、0.01%以上を添加する。好ましくは、0.04%以上のVを添加する。しかし、Vを過剰に添加すると、析出物の粗大化に起因して靭性を損なうことがあるため、V量の上限を0.20%以下とする。好ましくは、V量の上限を0.08%以下とする。
(Al:0.0001〜0.10%)
Alは脱酸元素であり、本発明では0.0001%以上を添加する。Alは、Mgと共に酸化物を形成してオーステナイトのピニングに寄与するため、0.0005%以上を添加することが好ましい。ただし、Alを過剰に添加すると、酸化物が粗大化して脆性破壊の起点となり靭性が低下するので、Alの上限は0.10%以下とする。好ましくはAl量の上限を0.050%以下とする。
(Ti:0.003〜0.030%)
Tiは、TiNを形成する元素であり、ピニング効果によってオーステナイトを細粒化する効果を有し、更に、Mgを含有する酸化物の周囲に析出してピニング効果を向上するのに有効な元素である。本発明では、この効果を得るために0.003%以上のTiを添加する。更に、Bを添加する場合は、TiNを形成してNを固定し、固溶Bを確保して焼入れ性を高めることができるので、Tiを0.008%以上添加することが好ましい。一方、Ti量が0.030%を超えると、粗大なTiNが生成し、靭性を損なうため、Ti量の上限を0.030%以下とする。好ましくはTi量の上限を0.020%以下とする。
(N:0.0010〜0.0150%)
Nは、TiNやVNを形成し、組織の細粒化や析出強化に寄与する元素であるため、含有量を0.0010%以上とする。しかし、N量が過剰になると、母材の靭性が低下し、鋳造時の表面割れや製造された鋼材の歪時効による材質不良の原因となるため、上限を0.0150%以下とする。好ましくはN量の上限を0.0100%以下とする。
(O:0.0003〜0.0100%)
Oは、本発明においては、Mgを含む酸化物を形成し、ピニング効果によるオーステナイトの細粒化に必要な元素であり、含有量を0.0003%以上とする。好ましくはO量の下限を0.0005%以上とする。しかし、Oを過剰に含有させると、固溶Oの影響や酸化物粒子の粗大化によって靭性が低下するため、O量の上限を0.0100%とする。好ましくはO量の上限を0.0050%以下とする。
(Mg:0.0003〜0.0050%)
Mgは、本発明においては、酸化物を形成し、ピニング効果によるオーステナイトの細粒化に必要な元素であり、0.0003%以上を添加する。好ましくはMg量の下限を0.0005%以上とし、より好ましくは0.0010%以上とする。しかし、Mgを過剰に添加すると酸化物粒子の粗大化による靭性の低下を招くため、上限を0.0050%とする。好ましくはMg量の上限を0.0040%以下とする。
P、Sは不純物であり、含有量を特に限定しないが、P、Sは、凝固偏析による溶接割れや靭性低下の原因となるので、低減することが好ましい。P量は0.03%以下に制限することが好ましく、更に好ましい上限は0.01%以下である。また、S量の含有量は、0.02%以下に制限することが好ましい。
更に、強度や靭性を高めるために、Ni、Cr、Cu、Mo、Nb、B、Caの1種又は2種以上を含有させてもよい。
(Ni:0.01〜0.50%)
Niは、鋼の強度及び靭性を高めるために、極めて有効な元素である。これらの効果を得るために、0.01%以上のNiを添加することが好ましい。特に、強度を高めるためにはNi量は、0.10%以上が好ましい。一方、過剰にNiを添加するとMAの生成を助長して靭性の低下を招くため、Ni含有量の上限を0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくはNi量の上限を0.30%以下とする。
(Cr:0.01〜0.50%)
Crは、焼入れ性を向上させて強度上昇に寄与する元素である。焼入れ性の向上には0.01%以上のCrの添加が好ましく、より好ましくは0.10%以上を添加する。0.50%を超えてCrを添加するとMAの生成を助長したり、Cr炭化物の粗大化を招き、靭性が低下したりすることがあるので、Cr含有量の上限は0.50%以下が好ましい。より好ましくはCr量の上限を0.30%以下とする。
(Cu:0.01〜0.50%)
Cuは、焼入れ性を向上させ、析出強化によって鋼材の強化に寄与する元素である。これらの効果を得るには0.01%以上のCuの添加が好ましく、より好ましくは0.10%以上を添加する。しかし、過剰な添加はMAの生成を助長したり、強度が過剰となって、靭性が低下したりすることがあるので、Cu含有量の上限を0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくはCu量の上限を0.30%以下とする。
(Mo:0.001〜0.30%)
Moは、鋼中に固溶して焼入れ性を高める元素であり、強度の向上に寄与する。特に、Bを添加した場合には、焼入れ性に関するBとMoとの相乗効果は顕著であり、添加する場合はMo量の下限を0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以上のMoを添加する。しかし、0.30%超のMoを含有させるとMAの生成を助長して靭性の低下を招くことがある。したがって、Moを含有させる場合は、上限を0.30%以下とする。
(Nb:0.001〜0.050%)
Nbは、Moと同様、焼入れ性を高める元素であり、強度の向上に寄与する。強度向上の効果を得るためには0.001%以上の添加が好ましく、より好ましくは0.010%以上を添加する。ただし、Nbを過度に添加すると、著しい靭性の低下を招くことがある。したがって、Nbを含有させる場合は、上限を0.050%以下とする。より好ましいNb量の上限は0.020%以下である。
(B:0.0001〜0.0020%)
Bは、微量の添加で焼入性を上昇させ、オーステナイト粒界からのフェライト変態を抑制し、強度の向上に有効であるため、0.0001%以上を添加することが好ましい。より好ましくは0.0003%以上を添加し、更に好ましくは、0.0008%以上を添加する。一方、0.0020%を超えるBを含有すると、MAの生成を助長して、靭性が低下することがある。したがって、Bを含有させる場合は、上限を0.0020%以下とする。より好ましくは0.0015%以下である。
(Ca:0.0001〜0.0050%)
Caは、Mgを含有する酸化物に含まれ、Mgを含有する酸化物の熱的安定性を高め、微細化と個数密度の増加をもたらす効果を有するため、0.0001%以上を添加することが好ましい。より好ましくは0.0010%以上を添加する。一方、0.0050%を超えるCaを添加すると、靭性が低下することがある。したがって、Caを添加する場合は、上限を0.0050%以下とする。より好ましくは0.0030%以下である。
本発明では、焼入れ性を高め、図1の強度評価部位7の位置ではベイナイトの生成を促進させるために、下記式(1)で求められる炭素当量Ceqを0.35〜0.50とする。Ceqが0.35未満であるとベイナイトの生成が不十分になり、強度及び靭性が低下する。好ましくは、Ceqを0.35以上とする。一方、Ceqが0.50を超えると、強度が高くなりすぎて、靭性が低下する。好ましくは、Ceqを0.45以下とし、より好ましくは、0.43以下とする。
eqは、焼入性の指標(炭素当量)であって、公知の次式(1)で求める。ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは鋼中の各元素の含有量で、含有されない元素は0とする。
eq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ・・・式(1)
次に、本発明の極厚H形鋼のミクロ組織について説明する。極厚H形鋼の場合、表面近傍では、圧延仕上温度が低くなるため、オーステナイト粒が微細になる。一方、内部では、圧延仕上温度が高くなり、オーステナイト粒が粗大になる。
本発明においては、平均的な組織が得られると考えられる部位において強度の評価に使用する試料を採取し、ミクロ組織の観察、及びベイナイトの面積率(ベイナイト分率)の測定を行う(強度評価部位7)。図1に示すように、強度評価部位7は、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置である。金属組織は、光学顕微鏡による観察で判別することができる。ミクロ組織の面積率は、200倍で撮影した光学顕微鏡による組織写真を用いて、一辺が50μmの格子状に測定点を配置し、400の測定点で組織を判別し、各組織の粒の数の割合として算出する。
強度評価部位7において、強度を確保するためには、鋼材組織がベイナイトを面積率で80%以上含むことが必要である。なお、残部は、フェライト、パーライト、MAの1種又は2種以上である。ベイナイト分率の増加は強度の向上に寄与するため、ベイナイト分率の上限は特に規定せず、100%でも良い。
また、フランジの厚みの中央部やフィレットなどの表面から遠い位置では、圧延仕上温度が高いためオーステナイト粒が粗大になりやすい。したがって、本発明においては、靭性が最も低下する部位から試料を採取して靭性を評価し、同じ部位でミクロ組織を観察する(靭性評価部位)。図1に示すように、靭性評価部位8は、フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置である。
本発明者らは、靭性評価部位8におけるミクロ組織を観察し靭性の評価を行ったところ、靭性を高めるためには、フェライト及びパーライトの分率の合計を80%以上、上限は特に規定せず100%でもよく、フェライトの円相当粒径を60μm以下とする必要があることを知見した。なお、フェライト及びパーライトの分率の合計は、光学顕微鏡によって測定される面積率であり、靭性評価部位8におけるフェライトの粒径は、EBSDによって測定する。
次に、本発明の特徴であるMgを含有する酸化物の分散状態について説明する。なお、本発明のMgを含有する酸化物は、TiN析出物に内包される場合がある。Mgを含む酸化物がTiN析出物に内包されるとは、Mgを含む酸化物の周囲にTiNが析出物した状態をいう。Mgを含む酸化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、単独で観察される場合と、Mgを含む酸化物の周囲にTiN析出物が観察される場合とがある。
強度評価部位7におけるオーステナイト粒径は、焼入れ性を確保するために大きい方が好ましく、靭性評価部位8におけるオーステナイト粒径は、靭性を向上させるために小さい方が好ましい。しかし、圧延仕上温度が高くなる靭性評価部位8の方が、オーステナイト粒径が粗大化し易いため、強度評価部位7における強度確保と靭性評価部位8における靭性確保とは、両立が難しい課題である。
オーステナイト粒径が粗大であると靭性が低下し、一方、過剰に微細化すると焼入れ性の低下によって強度が低下するため、ピニング効果を適正に制御することが重要である。本発明者らは、適切な範囲のピニング効果を実現するためには、サイズが円相当径で0.005〜0.5μmのMgを含有する酸化物が合計で100個/mm以上、5000個/mm以下存在することが必要であることを実験により見出した。このようなピニング粒子が100個/mmより少ないと靭性評価部位8で充分なピニング効果が得られず、オーステナイト粒が粗大化し、その後に変態によって生成するフェライトの粒径も60μm超となり靭性が低下する。一方、ピニング粒子が5000個/mmより多いとピニングの効果によって強度評価部位7のオーステナイトが過剰に細粒化し、焼入れ性の低下に起因して強度が低下する場合がある。
なお、酸化物粒子の個数密度は、製造したH形鋼から抽出レプリカを作製し、それを電子顕微鏡にて観察して算出した。酸化物の組成は、電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)を用いて行った。
次に、本発明が対象とする極厚H形鋼の形状と機械的特性について述べる。
本発明のH形鋼のフランジの厚みは、100〜150mmとする。これは、例えば、高層建築構造物に用いられるH形鋼に、フランジの厚みが100mm以上の強度部材が求められているためであるが、一方で、150mmを超えると十分な冷却速度が得られず、強度と靭性の確保が難しいため、上限を150mmとする。H形鋼のウェブの厚みは特に規定しないが、50〜150mmであることが好ましい。
フランジ/ウェブの厚みの比に関しては、H形鋼を熱間圧延で製造する場合を想定して、0.5〜2.0とすることが好ましい。フランジ/ウェブの厚みの比が2.0を超えると、ウェブが波打ち状の形状に変形することがある。一方、フランジ/ウェブの厚みの比が0.5未満の場合は、フランジが波打ち状の形状に変形することがある。
機械特性の目標値は、常温の降伏強度又は0.2%耐力が450MPa以上、引張強度が550MPa以上である。なお、応力−歪曲線で降伏現象が現れる場合は降伏強度を求め、降伏現象が現れない場合は0.2%耐力を求める。また、21℃でのシャルピー吸収エネルギーは、150J以上である。強度が高すぎると靭性を損なうことがあるため、常温の降伏強度又は0.2%耐力は550MPa以下、引張強度は680MPa以下が好ましい。本発明によれば、上記目標値を達成できる。
次に、本発明の極厚H形鋼の好ましい製造方法について説明する。
Mgを含有する酸化物の組成、個数及び大きさを所定の条件に制御するためには製鋼工程における脱酸方法が重要になる。本発明では、脱酸方法として、転炉出鋼後、一次脱酸によって溶存酸素濃度を0.0010〜0.0100%の範囲内に調整する。その後、Ti、Al及びMgを、順次、添加し、成分調整する。
製鋼工程で、溶鋼の化学成分を調整した後、鋳造し、鋼片を得る。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましいが、製造されるH形鋼に近い形状のビームブランクでも構わない。また、鋼片の厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましく、偏析の低減や、熱間圧延における加熱温度の均質性などを考慮すると、350mm以下が好ましい。
また、H形鋼の製造を連続鋳造スラブから行う場合、靭性評価部位8はスラブの中心偏析の位置に相当しており、靭性の低下を更に抑制するために、中心偏析を軽減することが好ましい。中心偏析は、連続鋳造時の軽圧下や均質化熱処理などによって、軽減することができる。
次に、鋼片を加熱し、熱間圧延を行う。鋼片の加熱温度は、1100℃未満であると仕上圧延時の変形抵抗が高くなるため、1100℃以上とする。Nbなど、炭化物、窒化物を形成する元素を十分に固溶させるため、加熱温度の下限を1150℃以上とすることが好ましい。一方、加熱温度が1350℃よりも高温になると、素材である鋼片の表面のスケールが液体化して製造に支障が出るため、上限は1350℃とする。
本発明では、酸化物粒子によるピニング効果によって靭性評価部位8のオーステナイト粒径の上限が決まり、一方、より低温圧延となる強度評価部位7のオーステナイト粒径は圧延再結晶によって決まる。オーステナイト粒径が過剰に微細化すると焼入れ性が低下することから、強度評価部位7での強度を確保するために圧延温度は高い方が好ましい。そのために仕上圧延温度は、鋼材表面で800℃以上とする。
なお、一次圧延して500℃以下に冷却した後、再度、1100〜1350℃に加熱し、二次圧延を行う製造するプロセス、いわゆる2ヒート圧延を採用してもよい。2ヒート圧延では、熱間圧延での塑性変形量が少なく、圧延工程での温度の低下も小さくなるため、加熱温度を低めにすることができる。
仕上圧延後、高い強度を得るために、フランジやウェブなどを水冷する。水冷は、スプレーによる水の吹き付けや、水槽での浸漬水冷によって行うことができる。本発明においては、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置(強度評価部位7)において800℃から500℃までの冷却速度が2.2℃/s以上となるように水冷を行うことが必要である。2.2℃/秒未満の冷却速度では、必要な焼入れ組織が得られない場合がある。
更に、水冷にあたっては、フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置(靭性評価部位8)の800℃から500℃までの冷却速度が0.3℃/秒以下になるように冷却しなければならない。0.3℃/秒より大きい冷却速度では、フェライト及びパーライトの面積分率が合計で80%未満になる場合がある。
また、H形鋼全体に吹き付ける冷却水の量を均一にする場合、図1の強度評価部位7と靭性評価部位8では、強度評価部位7の方が鋼材の表面に近く、水冷時の冷却速度が速くなる。そのため、強度評価部位7を800℃から500℃までの冷却速度が2.2℃/秒以上になるように冷却した後、直ちに水冷を停止することにより、靭性評価部位8が800℃から500℃に冷却される速度を0.3℃/秒以下に制御することができる。
また、H形鋼全体に吹き付ける冷却水の量を均一としない場合は、例えば強度評価部位7を含むフランジ部を強力に水冷し、逆に靭性評価部位8に近いフィレット部周囲は冷却水の量を減らすか又は水冷しないようにすれば、強度評価部位7の800℃から500℃の冷却速度を2.2℃/秒以上、かつ、靭性評価部位8の800℃から500℃の冷却速度を0.3℃/秒以下にすることができる。
加速冷却の条件は、予め、H形鋼の各部位に熱電対を取り付けて種々の条件で加熱、冷却を行い、温度変化を測定し、更に、計算機シミュレーションなどに基づいて、決定することができる。
表1に示す成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により、厚みが240〜300mmの鋼片を製造した。鋼の溶製は転炉で行い、一次脱酸し、合金を添加して成分を調整し、必要に応じて、真空脱ガス処理を行った。Mgを添加する場合、一次脱酸によって溶存酸素濃度を0.0010〜0.0100%の範囲内に調整した後、Ti、Al及びMgを、順次、添加し、成分調整を行った。得られた鋼片を加熱し、熱間圧延を行い、H形鋼を製造した。表1に示した成分は、製造後のH形鋼から採取した試料を化学分析して求めた。
Figure 2016141834
H形鋼の製造工程を図2に示す。熱間圧延は、加熱炉1で加熱した鋼材をユニバーサル圧延装置列で行い、熱間圧延を粗圧延機2aで粗圧延した後、パス間水冷圧延とする場合、圧延パス間の水冷には、中間ユニバーサル圧延機(中間圧延機)2bの前後面に設けた水冷装置3a、3bを用い、フランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延を行った。制御圧延後の水冷は、仕上ユニバーサル圧延機(仕上圧延機)2cで仕上圧延の終了後、後面に設置した冷却装置(水冷装置)3cにより行った。
製造の際の鋼片の加熱温度、熱間圧延と加速冷却などの製造条件を表2に示す。表2の冷却速度は、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置のもの、及び、フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置の800℃から500℃までの冷却速度である。ただし、これらは直接測定したものではなく、別途実施した同サイズのオフライン加熱による測定時に該当部位に熱電対を取り付けて測定した結果、及び計算機シミュレーションによる予測を基に、水冷の開始温度と停止温度、及び適用時間から算出したものである。
Figure 2016141834
Figure 2016141834
製造したH形鋼について、図1に示す強度評価部位7から、引張試験、ベイナイト分率の測定に用いる試料を採取し、降伏強度又は0.2%耐力及び引張強度を評価し、ベイナイト分率を測定した。また、図1に示す靭性評価部位8から、シャルピー試験、フェライト及びパーライトの分率の測定及びフェライト粒径の測定に用いる試料を採取し、靭性を評価し、フェライト及びパーライトの分率(面積率)及びフェライト粒径を測定した。なお、図1においてtはウェブの厚み、tはフランジの厚み、Fはフランジの長さ、Hは高さである。
引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行い、降伏挙動を示す場合は降伏点、降伏挙動を示さない場合は0.2%耐力を求め、YSとした。シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠し、21℃で行った。また、光学顕微鏡で強度評価部位7のベイナイトの面積率(ベイナイト分率)を測定し、更に光学顕微鏡で靭性評価部位8のフェライト及びパーライトの面積率の合計(フェライト及びパーライト分率)の測定を行い、EBSDでフェライト粒径を測定した。更に、靭性評価部位8から抽出レプリカを作製し、電子顕微鏡及びEDSにより酸化物及び析出物の組成を確認し、Mgを含有する酸化物の個数密度を求めた。なお、Mgを含有する酸化物には、TiN析出物に内包されるMgを含有する酸化物も含まれている。
以上、Mgを含有する酸化物の個数密度、強度評価部位7の降伏強度(YS)、引張強度(TS)、強度評価部位7のベイナイト分率、靭性評価部位8の21℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE21)、フェライト及びパーライト分率、及びフェライトの円相当粒径を表3に示す。機械特性の目標値は、室温の降伏強度又は0.2%耐力(YS)が450MPa以上、引張強度(TS)が550MPa以上である。また、21℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE21)は、150J以上である。
表3に示すように、本発明の製造No.1〜7、10〜14、及び17〜20は、YS及びTSが、それぞれ、目標の下限値である450MPa及び550MPa以上を満足していた。更に、21℃でのシャルピー吸収エネルギーは、150J以上であり、目標を十分に満たしていた。一方、表3の製造No.8、9、15、16、21〜33は、化学成分、製造方法、Mgを含有する酸化物の密度、強度評価部位7のベイナイト分率、靭性評価部位8のフェライト及びパーライト分率、靭性評価部位8のフェライト粒径、の何れか1以上が本発明の範囲外である。そのため、YS、TS又は21℃でのシャルピー吸収エネルギーのいずれか1以上が上記の目標を満たさなかった。
1 加熱炉
2a 粗圧延機
2b 中間圧延機
2c 仕上圧延機
3a、3b 中間圧延機前後面の水冷装置
3c 仕上圧延機後面の水冷装置
4 H形鋼
5 フランジ
6 ウェブ
7 強度評価部位
8 靭性評価部位
F フランジ長さ全長
H 高さ
ウェブの厚み
フランジの厚み

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.05〜0.16%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.70〜2.00%、
    V :0.01〜0.20%、
    Al:0.0001〜0.10%、
    Ti:0.003〜0.030%、
    N :0.0010〜0.0150%、
    O :0.0003〜0.0100%、
    Mg:0.0003〜0.0050%
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記式(1)によって求められる炭素当量Ceqが0.35〜0.50であり、
    円相当径で0.005〜0.5μmのMgを含有する酸化物が合計で100〜5000個/mm存在し、
    フランジの厚みが100〜150mmであり、
    フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置における、鋼材組織におけるベイナイト分率が80%以上であり、
    フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置における、鋼材組織におけるフェライト及びパーライトの合計分率が80%以上であり、フェライトの円相当粒径が60μm以下である、
    ことを特徴とする靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
    eq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ・・・式(1)
    ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは各元素の含有量で、含有されない場合は0とする。
  2. 更に、質量%で、
    Ni:0.01〜0.50%、
    Cr:0.01〜0.50%、
    Cu:0.01〜0.50%、
    Mo:0.001〜0.30%、
    Nb:0.001〜0.050%、
    B :0.0001〜0.0020%
    Ca:0.0001〜0.0050%
    のうち、1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
  3. フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置における、降伏強度又は0.2%耐力が450MPa以上、引張強度が550MPa以上であり、フランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で表面から3/4の位置におけるシャルピー試験の吸収エネルギーが150J以上であることを特徴とする上記請求項1又は請求項2に記載の靭性に優れた高強度極厚H形鋼。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の高強度極厚H形鋼の製造方法であって、請求項1又は請求項2に記載の成分組成を有する鋼片を1100〜1350℃に加熱した後に圧延を開始し、表面温度800℃以上で圧延を終了して水冷を開始し、フランジの長さ方向で表面から1/6の位置、厚さ方向で表面から1/4の位置における800℃から500℃の平均冷却速度が2.2℃/秒以上であり、かつフランジの長さ方向で表面から1/2の位置、厚さ方向で3/4の位置における800℃から500℃の平均冷却速度が0.3℃/秒以下になるように冷却することを特徴とする靭性に優れた高強度極厚H形鋼の製造方法。
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