JP2000328174A - フィレット部靭性および耐ut欠陥特性の優れたh形鋼およびその製造方法 - Google Patents

フィレット部靭性および耐ut欠陥特性の優れたh形鋼およびその製造方法

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JP2000328174A
JP2000328174A JP13424399A JP13424399A JP2000328174A JP 2000328174 A JP2000328174 A JP 2000328174A JP 13424399 A JP13424399 A JP 13424399A JP 13424399 A JP13424399 A JP 13424399A JP 2000328174 A JP2000328174 A JP 2000328174A
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cooling
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Taku Yoshida
卓 吉田
Hiroaki Satou
寛哲 佐藤
Ryuji Uemori
龍治 植森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィレット部の靭性および耐UT欠陥特性の優
れたH 形鋼とそれを安価に製造する方法を提供する。 【解決手段】 製鋼工程で特定成分の調整に加えてMgを
添加した鋳片を熱間圧延し、粒径1 μm以上のMgを含む
複合酸化物が20個/mm2以上分布していることを特徴とす
るフィレット部の靭性と耐UT欠陥特性の優れたH 形鋼。
さらに、上記特定成分の鋳片を熱間圧延する際、その途
中で、鋼材表層部の温度を700 ℃以下に水冷し圧延パス
間の復熱過程で圧延する工程を1 回以上繰り返す方法、
もしくは、圧延終了後に700 〜400 ℃間の平均冷却速度
で0.4 〜10℃/sの範囲内で冷却し、その後放冷する方法
のいずれか、または、双方の方法を適用して、H 形鋼フ
ィレット部の靭性と耐UT欠陥特性を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築構造物の構造
部材として用いられる靭性の優れた高張力圧延H形鋼お
よびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】建築物の高層化や安全基準の厳格化など
から、建築物の柱・梁に用いられる形鋼、特に、H 形鋼
には、一層の機械的特性の向上が求められている。H 形
鋼では、所定の強度を確保するため多量の合金元素を添
加することがひとつの方策として採用されているが、こ
の多量の合金元素の添加は、同時に靭性の低下と溶接性
の悪化をもたらす。一方、鋼において、靭性や溶接性を
確保するには、低合金成分組成であることが必須条件で
あるが、低合金成分組成の鋼では、圧延ままで強度を確
保することができない。低合金成分組成の鋼で強度と靭
性の双方を確保する方法として、圧延終了後の鋼材を加
速冷却する方法(TMCP 法) が周知であるが、仕上げ圧延
直後の鋼材温度がAr3 点以上のγ域から加速冷却する
と、ベイナイト相あるいはマルテンサイト相の組織分率
が上昇し、靭性が著しく損なわれる。また、特公昭62-5
0548号公報、特公昭62-54862号公報、特開平10-60576号
公報には、VNの析出を利用してミクロ組織を細粒化する
方法が提案されているが、この方法単独では、優れた靭
性を得るためのV 添加による製造原価の上昇が懸念さ
れ、安価で安定した鋼の製造ができない。また、一方で
は、強度、靭性及び溶接性を同時に満足させるため、圧
延−冷却終了後に焼準処理などの熱処理を施すことも行
なわれてきた。しかし、熱処理プロセスの付加は、熱処
理コストの増加および製造工期の長期化につながり、結
局、生産効率の低下と大幅なコスト上昇を招き、経済性
に問題が残る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の課題
を解決するためになされたものである。そして、その特
徴は、製鋼から圧延、冷却までのプロセスを総合的にと
らえて熱延条件や冷却条件を設定した新規の製造方法に
より、特に、フィレット部において、靭性および耐UT欠
陥特性の優れたH 形鋼を低コストで製造して提供するこ
とを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、従来の
発想とは異なり、Mgを添加して生成させた酸化物による
組織の微細化により、H 形鋼のフィレット部の靭性およ
び耐UT欠陥特性を向上させた点にある。加えて、本発明
で採用した加速冷却(TMCP)の特徴は、形鋼圧延での軽
圧下圧延においても、厚鋼板の製造において実施されて
いる大圧下圧延に代わり、効率的な組織の細粒化が可能
なように、圧延パス間で水冷し圧延と水冷を繰り返す方
法、あるいは、圧延終了後に加速冷却する方法のいずれ
か、あるいは双方の方法を採用した点にある。
【0005】製鋼過程において溶鋼中にMgを添加するこ
とにより、鋳片内に、Mgを含む複合酸化物を分散して晶
出させる。次いで、この鋳片を熱間で圧延造形してH 形
鋼を製造するが、再加熱時および熱間圧延による回復再
結晶に伴なう粒界移動に対し、前述の複合酸化物のピン
ニング効果による抑制力が作用し、ミクロ組織が微細化
され靭性が向上する。また、Mgは、MnよりもS との化学
的親和力が強いことから、Mgを含む複合酸化物に、S が
補足されやすくなる。この場合、ミクロ組織中のMnS の
粒子サイズおよび粒子数が減少するため、MnS と母相と
の界面の総面積が減少する。従って、この界面で発生す
る頻度が高い割れが抑制され、UT欠陥の発生率が低下す
る。
【0006】圧延パス間で水冷し圧延と水冷を繰り返す
方法は、鋼材表面を水冷することにより鋼材表層部と内
部との間に温度差を与え、軽圧下条件下においても、よ
り高温となる鋼材内部への圧下浸透を高め、多くの加工
転位を導入して、ミクロ組織を微細化するために実施さ
れる。Mgを含む複合酸化物を分散晶出させた場合、この
複合酸化物が転位の障害物として作用し、より一層、ミ
クロ組織の細粒化に有効に寄与することとなる。
【0007】また、圧延終了後に加速冷却する方法は、
圧延終了後にフェライト粒成長によるミクロ組織の粗大
化を抑制するために実施する。あらかじめMgを含む複合
酸化物のピンニング効果により、γ相は細粒化され焼入
れ性が低下しているので、前述した加速冷却によるベイ
ナイト相あるいはマルテンサイト相の組織分率の上昇は
抑制される。このため、Mgを添加しない従来方法の場合
よりも良好な靭性が確保される。
【0008】すなわち、これら冷却に関する二つの方法
は、Mgを添加することにより、一層の細粒化効果を発揮
することとなる。このことは、H 形鋼において、特に、
高温圧延、低冷却速度となるフィレット部の靭性向上に
極めて有効な手段となる。本発明は、格別な設備を必要
とせず、経済的で効率良く、靭性および耐UT欠陥特性の
優れた高品質のH 形鋼およびその製造方法を提供するも
のである。
【0009】本発明の要旨は下記(1) 〜(4) 項のとおり
である。 (1) 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:0.01〜0.25
%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S :0.015%以
下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.0001〜0.0030
%、を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
かつ、粒径1 μm以上のMgを含む複合酸化物が20個/mm2
以上分布していることを特徴とするフィレット部靭性お
よび耐UT欠陥特性の優れたH 形鋼。
【0010】(2) 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:
0.01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S
:0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.000
1〜0.0030%、更に、Cu:1.0 %以下、Ni:2.0 %以
下、Mo:1.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Nb:0.05%以
下、Ti:0.005 〜0.025 %、V :0.02〜0.20%、N :60
〜120ppm、および、B :3 〜30ppm 、のうち、いずれか
1 種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不
純物からなり、かつ、粒径1 μm以上のMgを含む複合酸
化物が20個/mm2以上分布していることを特徴とするフィ
レット部靭性および耐UT欠陥特性の優れたH 形鋼。
【0011】(3) 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:
0.01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S
:0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.000
1〜0.0030%、を含有し、残部がFeおよび不可避不純物
からなる鋳片を、1100〜1300℃の温度域に再加熱後、熱
間圧延を開始し、 圧延工程で、鋼材表層部の温度を700 ℃以下に水冷
し、圧延パス間の復熱過程で圧延する工程を、1 回以上
繰り返して圧延する、もしくは、 圧延終了後に、700 〜400 ℃間の平均冷却速度で0.
4 〜10℃/sの範囲内で冷却し、その後放冷する、 の、いずれか一方または双方の制御条件で熱間圧延する
ことを特徴とするフィレット部靭性および耐UT欠陥特性
の優れたH 形鋼の製造方法。
【0012】(4) 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:
0.01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S
:0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.000
1〜0.0030%、更に、Cu:1.0 %以下、Ni:2.0 %以
下、Mo:1.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Nb:0.05%以
下、Ti:0.005 〜0.025 %、V :0.02〜0.20%、N :60
〜120ppm、および、B :3 〜30ppm 、のうち、いずれか
1 種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不
純物からなる鋳片を、1100〜1300℃の温度域に再加熱
後、熱間圧延を開始し、 圧延工程で、鋼材表層部の温度を700 ℃以下に水冷
し、圧延パス間の復熱過程で圧延する工程を、1 回以上
繰り返して圧延する、もしくは、 圧延終了後に、700 〜400 ℃間の平均冷却速度で0.
4 〜10℃/sの範囲内で冷却し、その後放冷する、 の、いずれか一方または双方の制御条件で熱間圧延する
ことを特徴とするフィレット部靭性および耐UT欠陥特性
の優れたH 形鋼の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。鋼の高強度化は、フェライト結晶粒の微細化、合
金元素による固溶強化、硬化相による分散強化、微細析
出物による析出強化等によって達成される。また、高靭
性化は、結晶粒の微細化、フェライト中の固溶N および
C の低減、破壊の発生起点となる高炭素島状マルテンサ
イトおよび粗大析出物の低減等により達成される。一般
的には、鋼材の強度を高めると靭性は低下するので、高
強度化と高靭性化には相反する対処が必要である。そし
て、強度と靭性の双方を同時に満足する冶金因子は、唯
一、結晶粒の微細化である。
【0014】本発明の特徴は、製鋼工程におけるMg添加
により鋳片組織中にMgを含む複合酸化物を晶出分散さ
せ、そのピンニング効果によりミクロ組織の微細化を実
現すること、および、この鋳片を熱間圧延する際、圧延
制御に、圧延パス間および圧延終了後の冷却制御を組み
合わせて、さらにミクロ組織を微細化することである。
以下に、本発明のH 形鋼の成分範囲と制御条件の限定理
由について述べる。
【0015】なお、含有量の単位は、「質量%」である
が、「質量」を省略して表示した。まず、C は、鋼の強
度を向上させる有効な成分として添加するもので、0.00
5%未満では構造用鋼として必要な強度が得られず、一
方、0.18% を超える添加は、靭性を著しく低下させるの
で、下限を0.005 %、上限を0.18% とした。次いで、Si
は、母材の強度確保や溶鋼の脱酸などに必要であるが、
靭性を低下させるので、その添加はできるだけ抑制する
必要があり、上限を0.25%とした。なお、Siはできる限
り低いことが望ましいが、溶鋼の脱酸にも機能すること
を考慮して、その下限を0.01%とした。
【0016】Mnは、強度の確保に0.4 %以上の添加が必
要であるが、過度に添加すると、靭性の低下やUT欠陥の
発現が懸念されるため、その添加の上限を2.0 %とし
た。不可避不純物として含有するP, Sは、その量が多い
場合には、凝固偏析による割れや靭性低下などの材質不
良の原因となる。そこで、P を0.02%以下、S を0.015
%以下に限定した。
【0017】Alを0.015 %以下に限定するのは、0.015
%を超える添加では、前述のMgを含む複合酸化物が形成
されなくなりピンニング効果が低下することに加え、N
と化合してAlN を形成し、高温域で脆化を引き起こすこ
とが懸念されるためである。Mgは、強力な脱酸元素であ
り、鋼中では他の脱酸元素を含む複合酸化物を形成して
分散分布する。実際にピンニングに有効に機能する複合
酸化物は、粒径1 μm以下の複合酸化物であるが、粒度
分布を考慮すると、粒径1 μm以上のMgを含む複合酸化
物が20個/ mm2 以上分布していれば、粒径1 μm以下の
Mgを含む複合酸化物が十分に存在することとなり、この
複合酸化物がピンニング効果を発揮することから、粒径
1μm以上のMgを含む複合酸化物の鋼中分散密度を、20
個/mm 2 以上と限定した。Mg含有量の下限を0.0001%に
限定したのは、0.0001%未満では、上述の分散密度の下
限である、粒径1μm以上のMgを含む複合酸化物20個/m
m2 を達成できないためである。また、0.0030%を超え
ると、添加したMgの多くはスラグ化して鋼から分離され
歩留りが低下し、これに伴ない経済性が低下する。した
がって、Mg含有量の上限を0.0030%とした。なお、Mgを
含む複合酸化物の個数は、X 線マイクロアナライザー(E
PMA)で測定し決定したものである。
【0018】本発明のH 形鋼は、以上の元素に加えて、
母材強度の向上等の目的で、Cu, Ni, Mo, Cr, Nb, Ti,
V, N及びB の1 種または2 種以上を含有することができ
る。Cuは、母材の強化と耐候性向上に有効な元素である
が、過剰の添加は、焼戻し脆性、溶接割れ、熱間加工割
れ等を促進するため、上限を1.0 %とした。Niは、母材
の強靭性を向上させるのに有効な元素であるが、2.0 %
を超える添加は、合金コストを上昇させ経済的ではない
ので、上限を2.0 %とした。
【0019】Moは、母材の常温強度および高温強度の確
保に有効な元素である。しかし、1.0 %を超える添加は
靭性の低下をもたらすので、上限を1.0 %とした。Cr
は、焼入れ性を向上させ母材の強化に有効に機能する。
しかし、1.0 %を超える添加は靭性低下および硬化をも
たらすので、上限を1.0 %とした。Nbは、微量の添加に
より圧延組織を微細にすることが可能な元素である。し
かし、Nbの過剰な添加は溶接部の硬化や母材の高降伏点
化をもたらすので、上限を0.05%とした。
【0020】Tiは、N と化合し窒化物TiN を生成する。
後述するVNと同様に、TiN は、析出強化に有効であるの
に加え、γ粒内からのフェライト生成を促進させる核と
しても機能し、ミクロ組織の微細化にも重要な作用をな
すものである。Tiが0.005 %未満では、TiN の析出量が
不十分であり粒内フェライト生成核としての機能が低下
するため、下限を0.005 %とした。また、Tiが0.025 %
超では、TiC を生成して著しい硬化を発現させ、溶接熱
影響部靭性の低下など材質劣化を引き起こすので、上限
を0.025 %とした。
【0021】V は、N と化合し窒化物VNを生成する。Ti
N と同様に、VNは、析出強化に有効であるのに加え、γ
粒内からのフェライト生成を促進する核としても作用
し、ミクロ組織の微細化にも重要な役割をなすものであ
る。V が0.02%未満では、この機能を活用するためのVN
析出量が不十分であり、0.20%超では、VN析出量が過剰
となり靭性を低下させる。従って、V 含有量の下限は0.
02%、上限は0.20%とした。
【0022】N は、上述したようにTiN やVNの析出には
極めて重要な元素であり、析出強化に有効に機能する元
素である。60ppm 未満では、これらの析出量が不足し、
強度、靭性等の機械的特性の向上には寄与しない。N 含
有量が120ppmを超えると、母材の靭性を低下させ、鋳造
時の表面割れや製造された鋼材の歪時効等の材質不良の
原因となる。従って、N 含有量の下限は60ppm 、上限は
120ppmとした。
【0023】B は、微量の添加で焼入れ性を著しく上昇
させ強度上昇に寄与する。しかし、30ppm を超えてB を
添加すると、上部ベイナイト組織中に高炭素島状マルテ
ンサイトが生成し、靭性が著しく低下する。また、3ppm
未満の添加では、B 添加による焼入れ性の上昇効果は明
確に現れない。従って、B の含有量は3 〜30ppm とし
た。
【0024】次に、本発明の製造方法における制御条件
の限定理由について述べる。まず、上記の成分組成を有
する鋳片を、1100〜1300℃の温度域に再加熱するが、こ
の温度域に再加熱温度を限定したのは以下の理由によ
る。熱間加工によるH形鋼の製造においては、塑性変形
を容易にするため、鋳片を、1100℃以上に加熱する必要
があることに加え、V, Nb などが添加されている場合
は、これら元素を十分に固溶させる必要があるため、再
加熱温度の下限値を1100℃とした。また、上限値につい
ては、加熱設備の性能や経済性の観点から、1300℃に限
定した。
【0025】圧延工程で鋼材表層部の温度を700 ℃以下
に水冷し、圧延パス間の復熱過程で圧延する工程を1 回
以上繰り返して圧延するのは、圧延パス間の水冷により
鋼材の表層部と内部とで温度差をつけ、軽圧下条件の下
でも、加工を内部へ浸透させるためと、低温圧延を短時
間で効率的に行なうためである。鋼材表層部の温度を70
0 ℃以下に冷却するのは以下の理由による。圧延に引き
続き加速冷却するため、通常のγ温度域からの冷却で
は、表層部に焼きが入り硬化相が形成されて加工性が損
なわれる。700 ℃以下に冷却すれば、一旦、γ/ α変態
温度以下となり、次の圧延パスまで表層部は復熱昇温
し、二相共存温度域での加工となり、焼入れ性が著しく
低減されて、加速冷却による表面層の硬化を防止するこ
とができる。
【0026】また、圧延終了後に700 〜400 ℃間の平均
冷却速度で0.4 〜10℃/sの範囲内で冷却し、その後放冷
するのは、加速冷却によりフェライトの粒成長を抑制
し、組織を微細化するためである。加速冷却停止温度を
400 ℃としたのは、400 ℃以上では、フェライト粒が成
長するためである。
【0027】
【実施例】試作鋼は、溶鋼中で成分調整した後、鋳片に
鋳造し、この鋳片を1300℃に再加熱し熱間圧延を施すこ
とにより製造した。再加熱、粗圧延工程の図示は省略す
るが、図1 に、H 形鋼を圧延するユニバーサル圧延装置
列を示す。圧延パス間水冷は中間ユニバーサル圧延機4
の前後に、水冷装置5aを設置し、フランジ外側面へのス
プレー水冷とリバース圧延の繰り返しにより行なった。
また、圧延終了後の加速冷却は仕上げユニバーサル圧延
機6 で圧延を終了した後に、その後面に設置した水冷装
置5bでフランジ外側面へスプレー冷却することにより実
施した。機械的特性は、図2 に示すフランジ幅全長(B)
の1/2 幅(1/2B)の板厚中心部(1/2F)から採取した試験片
を用いて求めた。
【0028】表1 には、本発明鋼および比較鋼の化学成
分値を、表2 には、それらの鋼からH 形鋼を製造した際
の圧延・ 冷却条件、および、そのH 形鋼に係る機械試験
特性値を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】機械試験特性値において、強度は引張強
度、靭性はシャルピー衝撃試験での0℃における衝撃吸
収エネルギー値を代表させた。UT欠陥特性は、感度STB-
N1 100%+ 1.5dBの条件でUT最大エコー高さが30%以上あ
る場合は有害であるとみなし、30%未満であれば実用上
問題ないとみなす。なお、鋳片の再加熱温度を1300℃に
揃えたのは, 一般的に加熱温度の低下によりγ粒は細粒
化し機械的特性を向上させることが周知であり、高温加
熱条件下の方が低い機械的特性を示すと推定されること
から、この1300℃加熱を経た鋼の機械試験特性値が、13
00℃よりも低い加熱温度で製造した鋼の機械試験特性値
を代表できると判断したためである。
【0032】表2 に示すように、鋼1 〜6 が本発明鋼で
ある。鋼1 〜3 は、請求項1 記載のH 形鋼に相当し、そ
れに対応する比較鋼は、鋼7 〜9 である。次いで、鋼4
〜6は、請求項2 記載のH 形鋼に相当し、それに対応す
る比較鋼は、鋼10〜13である。このうち鋼1,2,3,7,8,9
のグループ、鋼4、10,11のグループ、鋼5,12のグルー
プ、鋼6,13のグループは、各々ほぼ同等の強度レベルで
あり比較対象となる。
【0033】本発明鋼である鋼1 〜6 (表2 に示すよう
に、粒径が1 μm以上のMg系複合酸化物が20個/mm2以上
分布している。)においては、すべて、フィレット部の
靭性が優れ(0℃衝撃吸収エネルギー(J)参照)、か
つ、UT最大エコー高さも低値で推移している。特に、鋼
3 は、圧延工程で鋼材表層部の温度を700 ℃以下に水冷
し、圧延パス間の復熱過程で圧延する工程を4 回以上繰
り返しており、この工程を経ていない鋼1 よりも、靭性
はさらに向上しているものである。また、鋼5は、圧延
終了後に、700 〜400 ℃間の平均冷却速度で0.4 〜10℃
/sの範囲内の1.00℃/sで冷却し、その後放冷するプロ
セスを経ており、圧延パス間水冷のみの場合よりも靭性
(0℃衝撃吸収エネルギー(J)参照)は低下している
が、強度レベルが高く、高強度化と高靭性化を同時に達
成しているものである。UT最大エコー高さは、鋼5 およ
び6 (いずれも、高強度鋼)において15〜20%である
が、この値は実用上問題のないレベルである。
【0034】一方、鋼7 〜13(比較鋼)では、Mgが添加
されておらず、鋼1,2,3,7,8,9 のグループ、鋼4、10,11
のグループ、鋼5,12のグループ、鋼6,13のグループで、
それぞれ、0 ℃衝撃吸収エネルギーを比較すると、Mg無
添加の比較鋼は、Mg添加の本発明鋼よりも低いレベルに
ある。また、鋼10〜13(比較鋼)においては、UT欠陥が
検出され、特に、パス間水冷を実施しない鋼12および13
においては、UT最大エコー高さが30%以上を超え、有害
なレベルに達している。
【0035】なお、実施例における鋼は、転炉製鋼法で
製造することを前提とするが、電気炉もしくは電気炉と
補助的溶融炉との組み合わせ工程を採用して製造しても
よい。また圧延パス間の復熱過程は、リバース圧延もし
くは連続圧延における圧延開始より終了までで、パス間
で実施するが、この復熱を、強制的な急速加熱にかえて
もよい。
【0036】また、本発明が対象とするのは、高温域で
の圧延加工となるフィレット部を有するH 形鋼である
が、本発明が、H 形鋼のみならず、局所的あるいは全体
的に高温域での圧延が不可避となる他形状の形鋼、例え
ばI 形鋼、山形鋼、溝形鋼等にも適用できることは自明
である。
【0037】
【発明の効果】本発明による合金設計と制御圧延を適用
したH 形鋼は、機械的特性が最も保証されにくいフィレ
ット部においても、十分な靭性および耐UT欠陥特性を有
している。加えて、圧延ままで、所望の機械的特性を有
するH 形鋼を製造することが可能であるから、本発明の
H 形鋼とその製造方法は、経済性にも優れている。した
がって、本発明のH 形鋼とその製造方法は、大型鋼構造
物の信頼性の向上、安全性の確保、経済性の向上等の点
で、産業上の効果が極めて顕著なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】H 形鋼を圧延するユニバーサル圧延装置列を示
す図である。
【図2】H 形鋼から採取する試験片の位置を示す図であ
る。
【符号の説明】
1…H 形鋼 2…フランジ 4…中間圧延機 5a…中間圧延機前後面の水冷装置 5b…仕上げ圧延機後面の水冷装置 6…仕上げ圧延機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植森 龍治 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4K032 AA00 AA01 AA02 AA04 AA05 AA11 AA14 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA24 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 BA00 CA02 CA03 CD01 CD02 CD05 CD06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:0.
    01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S :
    0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.0001〜
    0.0030%、を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から
    なり、かつ、粒径1 μm以上のMgを含む複合酸化物が20
    個/mm2以上分布していることを特徴とするフィレット部
    靭性および耐UT欠陥特性の優れたH 形鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:0.
    01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S :
    0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.0001〜
    0.0030%、更に、Cu:1.0 %以下、Ni:2.0 %以下、M
    o:1.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Nb:0.05%以下、T
    i:0.005 〜0.025 %、V :0.02〜0.20%、N :60〜120
    ppm、および、B :3 〜30ppm 、のうち、いずれか1 種
    または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物
    からなり、かつ、粒径1 μm以上のMgを含む複合酸化物
    が20個/mm2以上分布していることを特徴とするフィレッ
    ト部靭性および耐UT欠陥特性の優れたH 形鋼。
  3. 【請求項3】 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:0.
    01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S :
    0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.0001〜
    0.0030%、を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から
    なる鋳片を、1100〜1300℃の温度域に再加熱後、熱間圧
    延を開始し、 圧延工程で、鋼材表層部の温度を700 ℃以下に水冷
    し、圧延パス間の復熱過程で圧延する工程を、1 回以上
    繰り返して圧延する、もしくは、 圧延終了後に、700 〜400 ℃間の平均冷却速度で0.
    4 〜10℃/sの範囲内で冷却し、その後放冷する、 の、いずれか一方または双方の制御条件で熱間圧延する
    ことを特徴とするフィレット部靭性および耐UT欠陥特性
    の優れたH 形鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 質量%で、C :0.005 〜0.18%、Si:0.
    01〜0.25%、Mn:0.4 〜2.0 %、P :0.02%以下、S :
    0.015%以下、Al:0.015 %以下、および、Mg:0.0001〜
    0.0030%、更に、Cu:1.0 %以下、Ni:2.0 %以下、M
    o:1.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Nb:0.05%以下、T
    i:0.005 〜0.025 %、V :0.02〜0.20%、N :60〜120
    ppm、および、B :3 〜30ppm 、のうち、いずれか1 種
    または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物
    からなる鋳片を、1100〜1300℃の温度域に再加熱後、熱
    間圧延を開始し、 圧延工程で、鋼材表層部の温度を700 ℃以下に水冷
    し、圧延パス間の復熱過程で圧延する工程を、1 回以上
    繰り返して圧延する、もしくは、 圧延終了後に、700 〜400 ℃間の平均冷却速度で0.
    4 〜10℃/sの範囲内で冷却し、その後放冷する、 の、いずれか一方または双方の制御条件で熱間圧延する
    ことを特徴とするフィレット部靭性および耐UT欠陥特性
    の優れたH 形鋼の製造方法。
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