JP3285732B2 - 耐火用圧延形鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐火用圧延形鋼およびその製造方法

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JP3285732B2 JP08961795A JP8961795A JP3285732B2 JP 3285732 B2 JP3285732 B2 JP 3285732B2 JP 08961795 A JP08961795 A JP 08961795A JP 8961795 A JP8961795 A JP 8961795A JP 3285732 B2 JP3285732 B2 JP 3285732B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建造物の構造部材とし
て用いられる耐火性、靭性の優れたH形鋼等フランジを
有する圧延形鋼と制御圧延による圧延形鋼の製造方法に
係わるものである。
【0002】
【従来の技術】建築物の超高層化、建築設計技術の高度
化などから耐火設計の見直しが建設省総合プロジェクト
により行われ、昭和62年3月に「新耐火設計法」が制
定された。この規定により、旧法令による火災時に鋼材
の温度を350℃以下にするように耐火被覆するとした
制限が解除され、鋼材の高温強度と建築物の実荷重との
かねあいにより、それに適合する耐火被覆方法を決定で
きるようになった。即ち600℃での設計高温強度を確
保できる場合はそれに見合い耐火被覆を削減できるよう
になった。
【0003】このような動向に対応し、先に特開平2−
77523号公報の耐火性の優れた建築用低降伏比鋼お
よび鋼材並びにその製造方法が提案されている。この先
願発明の要旨は600℃での降伏点が常温時の70%以
上となるようにMo、Nbを添加し高温強度を向上させ
たものである。鋼材の設計高温強度を600℃に設定し
たのは、合金元素による鋼材費の上昇とそれによる耐火
被覆施工費との兼ね合いから最も経済的であるという知
見に基づいたものである。
【0004】また、従来は鋼のAl脱酸は溶製過程の初
期段階でAl添加され、溶鋼の脱酸と生成したAl2
3 を浮上分離し高清浄化することを目的にしていた。即
ち、如何に溶鋼の酸素濃度を下げ、鋼中の粗大な一次脱
酸酸化物個数を減らすかに主題がおかれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は前述の先
願技術によって製造された鋼材を各種の形鋼、特に複雑
な形状から厳しい圧延造形上の制約を有するH形鋼の素
材に適用することを試みた結果、ウエブ、フランジ、フ
ィレットの各部位での圧延仕上げ温度、圧下率、冷却速
度に差が生じることから、部位により組織、特にベイナ
イト割合が著しく異なり、常温・高温強度、延性、靭性
がバラツキ、溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106) 等の規準
に満たない部位が生じた。また、粒内フェライトの生成
による組織微細化では、フェライトの組織割合が比較的
高い成分では効果的であるが、ベイナイトの割合が高く
なると組織の微細化が困難となる欠点があった。
【0006】上記の課題を解決するためには、圧延時の
加熱温度1200〜1300℃でもγ粒径をASTM
No. で6番以上に細粒化ができればベイナイト割合の
高い組織でも組織微細化が可能となるので、このγ細粒
化法の開発が課題となる。この目的を達成するには高温
で分解せず安定に存在する微細な析出物を分散分布さ
せ、これにより成長するγ粒界をピンニングし、γ粒成
長を抑制し細粒化する方法が考えられれる。本発明はこ
の析出物として微細なMg系酸化物が効果的であること
を見出しこれらを微細晶出させた鋼を開発することを指
向した。
【0007】本発明は従来の発想とは異なり、製鋼過程
における脱酸剤の選択、その添加順序及び凝固過程の冷
却制御により酸化物の組成とサイズ、分散密度を制御
し、生成させた酸化物を異相析出の優先析出サイトとし
活用する点にある。本願出願人は先に特願平6−117
05号で、前記酸化物を粒内フェライト変態核として機
能させ、粒内フェライトの生成により組織を微細し、H
形鋼の部位間の材質特性の均質化と高靭性化を達成する
手段を提案した。本発明はこれとは異なり、高温安定性
の高い微細なMg系酸化物(主としてMgO)を高密度
分散させ、これらの析出物を圧延加熱時の1200〜1
300℃でのγ粒の粒成長を抑制するためのピンニング
サイトととして機能させ、γ粒の細粒化により組織を微
細化することによりH形鋼の部位間の材質特性の均質化
と高靭性・高温高強度化を達成することを特徴としてい
る。
【0008】また、製造法におけるTMCPの特徴は厚
鋼板で多く行われている低温・大圧下圧延とは異なり、
形鋼における軽圧下の熱間圧延においても効率的に組織
の細粒化が可能となるように圧延パス間で水冷し、水
冷、圧延、水冷とを繰り返す工程をとる方法にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、組織を微細化
することを目的とし、製鋼過程において適正な脱酸処
理を行い、溶鋼の高清浄化、溶存酸素濃度の規制、およ
びSi-Mg 合金及びNi-Mg 合金の添加を行い、微細なMg系
酸化物を含有させた鋳片を圧延しH形鋼としたものと、
該鋳片を素材として熱間圧延パス間で水冷することに
より、H形鋼のフランジの表面と内部に温度差を与え、
軽圧下条件下においても、より高温の内部への圧下浸透
を高め、α生成核となる加工転位を導入し、板厚中心部
での組織の微細化が達成できる圧延中水冷方法を開発し
た。加えて、圧延後のγ/α変態温度域を冷却制御する
ことにより、その核生成させたフェライトの粒成長を抑
制する方法によればミクロ組織の細粒化ができ、高能率
で製造コストの安価な耐火用圧延形鋼の生産が可能であ
ると言う知見に基づき前記課題を解決したもので、その
要旨とするところは、以下のとおりである。
【0010】(1)質量%で、C :0.04〜0.2
0%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.4〜
1.8%、Mo:0.4〜1.0%、N :0.004
〜0.015%、Al:0.004%以下、Mg:0.
001〜0.005%、を含有し、残部Feおよび不可
避的不純物からなり、かつ、大きさ3μm以下のMg系
酸化物を50個/mm2 以上含有する鋳片を熱間圧延して
製造したことを特徴とする耐火用圧延形鋼。
【0011】(2)質量%で、更に、Cr:1.0%以
下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Nb:
0.01%以下の何れか1種または2種以上を含有する
ことを特徴とする上記(1)記載の耐火用圧延形鋼。
【0012】(3)上記(1)記載の耐火用圧延形鋼の
製造方法であって、前記成分組成を含有する鋳片を12
00〜1300℃の温度域に再加熱した後に圧延を開始
し、この圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を700℃
以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延する
水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了後
に0.5〜10℃/sの冷却速度で700〜400℃ま
で冷却し、その後放冷することを特徴とする請求項1記
載の耐火用圧延形鋼の製造方法。
【0013】(4)上記(2)記載の耐火用圧延形鋼の
製造方法であって、前記成分組成を含有する鋳片を12
00〜1300℃の温度域に再加熱した後に圧延を開始
し、この圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を700℃
以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延する
水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了後
に0.5〜10℃/sの冷却速度で700〜400℃ま
で冷却し、その後放冷することを特徴とする請求項2記
載の耐火用圧延形鋼の製造方法。
【0014】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。鋼材の
高温強度は鉄の融点のほぼ1/2 の温度の700 ℃以下では
常温での強化機構とほぼ同様であり、フェライト結晶
粒径の微細化、合金元素による固溶体強化、硬化相
による分散強化 微細析出物による析出強化等によっ
て支配される。一般に高温強度の上昇にはMo、Crの
添加による析出強化と転位の消失抑制による高温での軟
化抵抗を高めることにより達成されている。しかしM
o、Crの添加は著しく焼き入れ性を上げ、母材のフェ
ライト+ パーライト組織をベイナイト組織に変化させ
る。ベイナイト組織を生成し易い成分系鋼を圧延H形鋼
に適応した場合は、その特異な形状からウェブ、フラン
ジ、フィレットの各部位で、圧延仕上げ温度、圧下率、
冷却速度に差を生じるため、各部位によりベイナイト組
織割合が大きく変化する。その結果として常温・高温強
度、延性、靭性がバラツキ、規準に満たない部位が生じ
る。加えて、これらの元素の添加により溶接部を著しく
硬化させ、靭性を低下させる。
【0015】本発明の特徴は、製鋼工程において、脱酸
の制御、鋳込み後の冷却速度を規制し、鋳片内に多数の
微細なMg系酸化物を晶出・分散させた鋳片により、圧
延加熱時のγ粒径を細粒化した状態から圧延し耐火性・
靭性に優れたH形鋼を得ることである。加えて本発明で
は、熱間圧延工程において、熱間圧延パス間でフランジ
表面を水冷し、その復熱時に圧延することを繰り返すこ
とによりフランジの板厚中心部に圧下浸透効果を付与
し、この部位においてもTMCPによる組織微細化効果
を高め、この組織微細化によりH形鋼の各部位における
母材の機械特性を向上するとともに均一化を達成するも
のである。
【0016】以下に本発明形鋼の成分範囲と制御条件の
限定理由について述べる。まず、Cは鋼を強化するため
に添加するもので、0.04% 未満では構造用鋼として必要
な強度が得られず。また、0.20% を超える過剰の添加
は、母材靭性、耐溶接割れ性、溶接熱影響部(以下HA
Zと略記)靭性などを著しく低下させるので、下限を0.
04% 、上限を0.20% とした。
【0017】次に、Siは母材の強度確保、溶鋼の予備
脱酸などに必要であるが、0.50% を超えるとHAZ組織
内に硬化組織の高炭素島状マルテンサイトを生成し、溶
接継手部靭性を著しく低下させる。また、0.05% 未満で
は必要な溶鋼の予備脱酸ができないためSi含有量を0.
05〜0.50% の範囲に限定した。Mnは母材の強度、靭性
の確保には0.4%以上の添加が必要であるが、溶接部の靭
性、割れ性などの許容できる範囲で上限を1.8%とした。
【0018】Moは母材強度および高温強度の確保に有
効な元素である。0.4%未満ではMo炭化物(Mo2 C)
の析出が不十分で強化作用を持たないため十分な高温強
度が確保できず、1.0%超では焼き入れ性が上昇しすぎ母
材及びHAZの靭性が劣化するため0.4 〜1.0%に制限し
た。Nは窒化物を生成し、析出強化および粒径の制御作
用を有するが、固溶Nはフェライトを強化し、またベイ
ナイト相のラス境界に高炭素島状マルテンサイトを形成
させ靭性を劣化させるためN含有量0.004%以下に制限し
た。
【0019】Alを0.004%以下としたのは、Alは強力
な脱酸元素であり、0.004%超の含有ではAl含有量の多
い粒子径の大きなAlー Mg系複合酸化物を生成し、微
細な3μm以下のMg系酸化物が形成されず、高温再加
熱時においてのγ細粒化ができないためAlを0.004%以
下とした。成分を調整した溶鋼を予備脱酸処理を行い溶
存酸素を重量%で0.003 〜0.015%に調整するのは、溶鋼
の高清浄化と同時に鋳片内に微細なMg系酸化物を晶出
させるために行うものである。予備脱酸後の[O] 濃度が
0.003%未満では微細な酸化物が減少し、細粒化できず靭
性を向上できない。一方、0.015%を超える場合は、他の
条件を満たしていても、酸化物が3μm以上の大きさに
粗大化し脆性破壊の起点となり、靭性を低下させるため
に予備脱酸後の[O] 濃度を重量%で0.003 〜0.015%に限
定した。
【0020】予備脱酸処理は真空脱ガス、Al、Si、
Mg脱酸により行った。その理由は真空脱ガス処理は直
接溶鋼中の酸素をガスおよびCOガスとして除去し、A
l、Si、Mgなどの強脱酸により生成する酸化物系介
在物は浮上、除去しやすく溶鋼の清浄化に有効なためで
ある。次に上述の溶鋼にMg合金を添加し重量%でMg:0.0
01〜0.005%に成分調整した溶鋼を後述する一定の鋳造冷
却速度で鋳込む。
【0021】Mg添加に使用したMg合金はSi-Mg 及びNi
-Mg である。Mg合金を用いた理由は合金化によりMg
の濃度を低くし、Mg酸化物生成時の反応を抑え、添加
時の安全性確保とMgの歩留を上げるためである。Mg
を0.001 〜0.005%に限定するのは、Mgも強力な脱酸元
素であり、晶出したMg酸化物は溶鋼中で容易に浮上分
離されるため0.005%を超えての添加では歩留が低いため
その上限を0.005%とした。また、0.001%未満では目的の
Mg系酸化物の分散密度が不足するため下限を0.001%と
した。なお、ここでのMg系酸化物は、主にMgOを表
しているが、この酸化物は微量のAlおよび不純物とし
て含まれているCaなどの酸化物と複合化している場合
が多いのでこのような表現を用いた。
【0022】不可避不純物として含有するP、Sはその
量について特に限定しないが凝固偏析による溶接割れ、
靱性の低下を生じるので、極力低減すべきであり、望ま
しくはP、S量はそれぞれ0.02% 未満である。以上の成
分に加えて、母材強度の上昇、および母材の靱性向上の
目的で、Cr、Cu、Ni、Nb、Tiの1種または2
種以上を含有することができる。
【0023】Crは焼き入れ性の向上により、母材の強
化に有効である。しかし1.0%を超える過剰の添加は、靭
性および硬化性の観点から有害となるため、上限を1.0%
とした。Cuは母材の強化、耐候性に有効な元素である
が、応力除去焼鈍による焼き戻し脆性、溶接割れ性、熱
間加工割れを促進するため、上限を1.0%とした。
【0024】Niは、母材の強靱性を高める極めて有効
な元素であるが2.0%を超える添加は合金コストを増加さ
せ経済的でないので上限を2.0%とした。Nb、Tiは微
量添加により圧延組織を微細化でき、それらの炭窒化物
の析出により強化することから低合金化でき溶接特性を
向上できる。しかしながら、これらの元素の過剰な添加
は溶接部の硬化や、母材の高降伏点化をもたらすので、
各々の含有量の上限をNb:0.04%、Ti:0.025% とした。
【0025】成分調整を終了した溶鋼を鋳込む際の冷却
速度は、Mg系酸化物粒子の個数の増加とその大きさを
制御するため、鋳込み開始から900 ℃までの冷却速度を
0.5〜20℃/sで冷却するのが望ましい。すなわち、過冷
却により晶出する複合酸化物の核生成数を増加させると
同時に冷却中の粒子成長を抑制し、大きさ3μm以下に
した酸化物を鋳片に50個/mm2 以上含有させるため
に行うものである。この温度間の冷却速度が0.5℃/
s未満の緩冷却では複合酸化物は凝集粗大化し、50個
/mm2 未満となり靭性、延性を低下させ、一方、冷却
速度の上限は現状の鋳造技術での冷却速度の限界である
20℃/sとする。
【0026】次に、鋳片に複合酸化物が50個/mm2
以上含む必要がある理由について述べる。製品の材質特
性は製鋼、鋳造工程に支配される先天的因子の鋳片の凝
固組織、成分偏析、本発明の微細複合酸化物、析出物等
と圧延、TMCP、熱処理工程等により支配される後天
的因子のミクロ組織により決定される。当然、この先天
的因子である鋳片の性質は後の工程に継承される。本発
明の特徴は、この鋳片の先天的因子の1つを制御するこ
とにあり、鋳片中に高温でのγ粒成長の抑制機能を発揮
する微細なMg系酸化物を分散晶出させることにある。
この粒子の分散個数が50個/mm2 未満では、120
0〜1300℃加熱におけるγ粒径がASTM No.
6番以上の細粒をえることはできないため下限を50個
/mm2とした。
【0027】なお、Mg系酸化物個数はX線マイクロア
ナライザー(EPMA)で測定し決定したものである。
上記の処理を経た鋳片は次に1200〜1300℃の温
度域に再加熱する。この温度域に再加熱温度を限定した
のは、熱間加工による形鋼の製造には塑性変形を容易に
するため1200℃以上の加熱が必要であり、且つV、
Nbなどの元素を十分に固溶させる必要があるため再加
熱温度の下限を1200℃とした。その上限は加熱炉の
性能、経済性から1300℃とした。
【0028】熱間圧延のパス間で水冷し、圧延中に一回
以上、フランジ表面温度を700℃以下に冷却し、以降
の圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を1
回以上繰り返し行うとしたのは、圧延パス間の水冷によ
り、フランジの表層部と内部とに温度差を付け、軽圧下
条件においても内部への加工を浸透させるためと、低温
圧延を短時間で効率的に行うためである.フランジ表面
温度を700℃以下に冷却した後、復熱過程で圧延する
のは、仕上げ圧延後の加速冷却による表面の焼入れ硬化
を抑制し軟化させるために行うものである。その理由は
フランジ表面温度を700℃以下に冷却すれば一旦γ/
α変態温度を切り、次の圧延までに表層部は復熱昇温
し、圧延はγ/αの二相共存温度域での加工となり、γ
細粒化と加工された微細αとの混合組織を形成する。こ
れにより表層部の焼き入性を著しく低減でき、加速冷却
により生じる表面層の硬化を防止できるからである。
【0029】また、圧延終了後、引続き、0.5〜10
℃/Sの冷却速度で700〜400℃まで冷却し放冷す
るとしたのは、加速冷却によりフェライトの粒成長抑制
とベイナイト組織を微細化し高強度・高靭性を得るため
である。引き続く加速冷却を700〜400℃で停止す
るのは、700℃を超える温度で加速冷却を停止する
と、一部がAr1 点以上となりγ相を残存し、このγ相
が、共存するフェライトを核にフェライト変態し、さら
にフェライトが成長し粗粒化するために加速冷却の停止
温度を700℃以下とした。また、400℃未満の冷却
では、その後の放冷中にベイナイト相のラス間に生成す
る高炭素マルテンサイトが、冷却中にセメンタイトを析
出することにより分解できず、硬化相として存在するこ
とになる。これが脆性破壊の起点として作用し、靭性の
低下を招くために、この温度範囲に限定した。
【0030】
【実施例】試作形鋼は転炉溶製し、合金を添加後、予備
脱酸処理を行い、溶鋼の酸素濃度を調整後、Mg合金を添
加し、連続鋳造により250 〜300mm 厚鋳片に鋳造した。
鋳片の冷却はモールド下方の二次冷却帯の水量と鋳片の
引き抜き速度の選択により制御した。該鋳片を加熱し、
粗圧延工程の図示は省略するが、図1に示す、ユニバー
サル圧延装置列でH形鋼に圧延した。圧延パス間水冷は
中間ユニバーサル圧延機4の前後に水冷装置5aを設
け、フランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延の繰
り返しにより行い、圧延後の加速冷却は仕上げユニバー
サル圧延機6で圧延終了後にその後面に設置した冷却装
置5bでフランジ外側面をスプレー冷却した。
【0031】機械特性は図2に示す、フランジ2の板厚
2 の中心部(1/2t2 )でフランジ幅全長(B) の1/4,1/
2 幅(1/4B,1/2B) から、試験片を採集し求めた。なお、
これらの箇所の特性を求めたのはフランジ1/4F部はH形
鋼の平均的な機械特性を示し、フランジ1/2F部はその特
性が最も低下するので、これらの2箇所によりH形鋼の
機械試験特性を代表できると判断したためである。
【0032】表1、表3には、本発明鋼及び比較鋼の化
学成分値を、表2、表4には、それらの鋼の鋳込み後の
冷却速度及び鋳片中のMg系酸化物の分散密度を示す。
表5、表6および表7には、圧延加熱時のγ粒度、圧延
・加速冷却条件及び製品の機械試験特性値を示す。な
お、圧延加熱温度を1300℃に揃えたのは、一般的に
加熱温度の低下はγ粒を細粒化し機械特性を向上させる
ことは周知であり、高温加熱条件では機械特性の最低値
を示すと推定され、この値がそれ以下の加熱温度での機
械試験特性を代表できると判断したためである。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】表5、6および7に示すように、本発明に
よるH形鋼1〜5、A1〜A3は目標の常温の降伏点範
囲がJIS規格の下限値+120N/mm2以内のSM490 ではYP
=325〜445N/mm2、SM520 ではYP=355〜475N/mm2、に制御
され、しかも、降伏比(YP/TS )も0.8 以下の低YR値を
満たし、抗張力(前記JISG3106)及び600℃
での降伏強度と常温の降伏強度の比が2/3以上であ
り、−10℃でのシャルピー衝撃値47(J) 以上を十分
に満たしている。一方、比較鋼のH形鋼6では、成分の
NとAlが本発明の上限値を超えたため、過剰のNはフ
ェライトの靭性を低下し、過剰のAlはMg系酸化物の
生成を阻害し、この分散個数で50個/mm2 未満とな
り、γ粒度がASTM No.6番以下と粗粒化し微細
組織が得られない。これのためシャルピー衝撃値が開発
目標の−10℃で47J以上を達成できない。比較鋼の
H形鋼7では、Mg添加前の溶鋼の酸素濃度が本発明の
下限値以下となっているためにMg系酸化物の個数が不
足し、それに反し、比較鋼のH形鋼8では、この酸素濃
度の上限値を超えているために3μm以上の大きさの粗
大な酸化物が形成されるために、何れもシャルピー衝撃
値が開発目標の−10℃で47J以上を達成できない。
比較鋼のH形鋼9では、Mgが添加されていない。次い
で、比較鋼のH形鋼10では、成分・製鋼条件は満たし
ているものの圧延中でのフランジ外側面を700℃以下
に水冷する処理が施されていないので、水冷停止温度が
710℃と水冷停止温度の制限の上限を超え、圧延後の
冷却速度が1/2F部では冷却速度の制限以下となるた
め常温強度及び600℃での強度不足をきたす。
【0041】規格強度、520MPa級鋼に区分される
比較鋼のH形鋼A4では、Mo含有量が本発明の下限値
を以下であるため600℃での強度不足となり、加えて
Mgが添加されていないので組織の微細化ができずシャ
ルピー衝撃値が開発目標の−10℃で47J以上を達成
できない。また、比較鋼のH形鋼A5では、鋳込み後の
冷却速度が下限値以下であるのでMg系酸化物の個数が
不足し、シャルピー衝撃値がクリアーできない。
【0042】即ち、本発明の製造法の要件が総て満たさ
れた時に、表5、6および7に示されるH形鋼1〜5、
A1〜A3のように、圧延形鋼の機械試験特性の最も保
証しにくいフランジ板厚1/2,幅1/2 部においても十分な
常温・高温強度、低温靭性を有する、耐火性及び靭性の
優れた圧延形鋼の生産が可能になる。なお、本発明が対
象とする圧延形鋼は上記実施例のH形鋼に限らずI形
鋼、山形鋼、溝形鋼、不等辺不等厚山形鋼等のフランジ
を有する他の形鋼にも適用できることは勿論である。
【0043】
【発明の効果】本発明による圧延形鋼は機械試験特性の
最も保証しにくいフランジ板厚1/2,幅1/2 部においても
十分な強度、靭性を有し、高温特性に優れ、耐火材の被
覆厚さが従来の20〜50%で耐火目的を達成できる、
優れた耐火性及び靭性を持つ形鋼が圧延ままで製造可能
になり、施工コスト低減、工期の短縮による大幅なコス
ト削減が図られ、大型建造物の信頼性向上、安全性の確
保、経済性等の産業上の効果は極めて顕著なものがあ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法を実施する装置配置例の略図である。
【図2】H形鋼の断面形状および機械試験片の採取位置
を示す図である。
【符号の説明】
1…H形鋼 2…フランジ 3…ウェブ 4…中間圧延機 5a…中間圧延機前後面の水冷装置 5b…仕上げ圧延機後面冷却装置 6…仕上げ圧延機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/00 C21C 7/00 - 7/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.04〜0.20%、 Si:0.05〜0.50%、 Mn:0.4〜1.8%、 Mo:0.4〜1.0%、 N :0.004〜0.015%、 Al:0.004%以下、 Mg:0.001〜0.005%、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、か
    つ、大きさ3μm以下のMg系酸化物を50個/mm2
    上含有する鋳片を熱間圧延して製造したことを特徴とす
    る耐火用圧延形鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、更に、Cr:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Nb:0.
    01%以下、Ti:0.025%以下の何れか1種また
    は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の
    耐火用圧延形鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の耐火用圧延形鋼の製造方
    法であって、前記成分組成を含有する鋳片を1200〜
    1300℃の温度域に再加熱した後に圧延を開始し、こ
    の圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を700℃以下に
    水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・
    圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了後に0.
    5〜10℃/sの冷却速度で700〜400℃まで冷却
    し、その後放冷することを特徴とする請求項1記載の耐
    火用圧延形鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の耐火用圧延形鋼の製造方
    法であって、前記成分組成を含有する鋳片を1200〜
    1300℃の温度域に再加熱した後に圧延を開始し、こ
    の圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を700℃以下に
    水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・
    圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了後に0.
    5〜10℃/sの冷却速度で700〜400℃まで冷却
    し、その後放冷することを特徴とする請求項2記載の耐
    火用圧延形鋼の製造方法。
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