JP3426433B2 - 高張力圧延鋼材及びその製造方法 - Google Patents

高張力圧延鋼材及びその製造方法

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JP3426433B2 JP00593896A JP593896A JP3426433B2 JP 3426433 B2 JP3426433 B2 JP 3426433B2 JP 00593896 A JP00593896 A JP 00593896A JP 593896 A JP593896 A JP 593896A JP 3426433 B2 JP3426433 B2 JP 3426433B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建造物の構造部材
として用いられる靱性の優れた高張力圧延鋼材、および
高張力圧延鋼材の製造方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】建築物の超高層化、安全規準の厳格化な
どから、柱用に用いられる鋼材、例えば特に板厚の大き
なサイズのH形鋼(以下、極厚H形鋼と称す)には、一
層の高強度化、高靱性化、低降伏比化が求められてい
る。例えば1994年に建設省と社団法人鋼材倶楽部に
より「高性能鋼利用技術指針」が発表され、SA440
(常温での引張強度が590MPa 以上、0.2%耐力が
440MPa 以上、0℃衝撃吸収エネルギー47J以上)
等の具体的な機械特性仕様が提案されている。
【0003】このような要求特性を満たすために、従来
は圧延終了後に焼準処理などの熱処理を施すことが行わ
れた。熱処理の付加は熱処理コストと生産効率の低下な
ど大幅なコスト上昇を招き、経済性に問題があった。こ
の課題を解決するためには圧延ままで高性能の材質特性
を得られるように、新しい合金設計による高張力圧延鋼
材とその製造法の開発が必要となった。
【0004】一般に、鋼材、例えばH形鋼をユニバーサ
ル圧延により製造すると、圧延造形上の制約およびその
形状の特異性からウェブ、フランジ、フィレットの各部
位で圧延仕上げ温度、圧下率、冷却速度に差を生じる。
その結果、部位間に強度、延性、靱性のバラつきが発生
し、例えば溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)
等の規準に満たない部位が生じる。
【0005】特に極厚H形鋼は連続鋳造スラブを素材と
し圧延する場合には連続鋳造設備で製造可能なスラブ最
大厚みに限界があるため、低圧下比となり、圧延による
加工と再結晶のくり返しによる鍛練が不十分となる。さ
らに、圧延造形上の寸法精度の制約から板厚の厚いフラ
ンジ部は高温圧延となり、圧延終了後の鋼材冷却は徐冷
となる。このような製造条件においては、ミクロ組織は
粗粒化するため、強度および靱性は著しく低下する。
【0006】この対策として、強圧下圧延や圧延終了後
に強制的に加速冷却させる加工熱処理(以降TMCPと
略記)による細粒化法がある。しかし、形鋼圧延では形
鋼造形上の制約から強圧下圧延は困難であり、一方圧延
後の加速冷却に関しても厚肉のサイズでは十分な冷却を
施すまでに多大な時間を要し、生産性を低下させる問題
が発生する。
【0007】また、厚鋼板分野ではVNの析出効果を利
用し高強度・高靱性鋼を製造する、例えば特公昭62−
50548号公報、特公昭62−54862号公報の技
術が提案されている。しかし、この方法は引張強度が5
90MPa 級の高強度材になると上部ベイナイト組織を含
むようになる。一般にこの上部ベイナイト組織では、高
炭素島状マルテンサイトを生成し靱性を著しく低下させ
るため、従来高強度化鋼には適用できなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記の課題を解決する
ためには、圧延ままで低炭素ベイナイトを生成させ組織
を微細化し、加えて靱性低下の主原因となる高炭素島状
マルテンサイト相の組織分率を低減させる必要がある。
それには製鋼過程でのマイクロアロイの微量添加制御に
よる成分調整した鋳片の製造が必須である。
【0009】加えて採用したTMCPの特徴は厚鋼板で
実施されている強圧下圧延に代わるものであり、形鋼圧
延での軽圧下の熱間圧延においても効率的に組織の細粒
化が可能なように圧延パス間で水冷し、圧延と水冷を繰
り返す方法にある。この方法はさらに仕上げ圧延温度を
低下させることになり、圧延後の加速冷却においても、
必要とする加速冷却温度域が狭くなるので、水冷時間を
低減し、生産性の低下を回避できる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、高強度かつ高
靱性を得ることを目的とし、低炭素ベイナイトの生成に
よる組織微細化を製鋼過程においてのNb,V,Moの
微量添加と高Cu添加による合金設計をおこなった。加
えて、熱間圧延工程での圧延パス間で水冷することによ
り、鋼板の表層部と内部に温度差を与え、軽圧下条件下
においても、より高温の内部への圧下浸透を高め、粒内
ベイナイト生成核となる加工転位を導入し、粒内ベイナ
イト生成核を増加させる。さらに、圧延後のγ/α変態
温度域を冷却制御することにより、その核生成させたベ
イナイトの粒成長を抑制する方法によればミクロ組織の
細粒化ができ、高能率で製造コストの安価な制御圧延形
鋼の製造が可能であると言う知見に基づき前記課題を解
決したもので、その要旨とするところは、以下のとおり
である。 (1)重量%でC:0.02〜0.06%、Si:0.
05〜0.25%、Mn:0.8〜1.8%、Cu:
0.7〜1.5%、Ti:0.02%以下、Mg:0.
0005〜0.005%、Nb:0.03%以下、V:
0.1%以下、Mo:0.4%以下、B:0.0003
%以下、N:0.004%以下、Al:0.1%以下、
を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
%〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
0%となるNb,V,Mo量を含有し、残部がFeおよ
び不可避不純物からなり、それを熱間圧延で成形した形
材あるいは板材の引張強度が590MPa 以上、0.2%
耐力が440MPa 以上、0℃でのシャルピー衝撃吸収エ
ネルギーが47J以上であることを特徴とする高張力圧
延鋼材。 (2)重量%でC:0.02〜0.06%、Si:0.
05〜0.25%、Mn:0.8〜1.8%、Cu:
0.7〜1.5%、Ti:0.02%以下、Mg:0.
0005〜0.005%、Nb:0.03%以下、V:
0.1%以下、Mo:0.4%以下、B:0.0003
%以下、N:0.004%以下、Al:0.1%以下、
を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
%〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
0%となるNb,V,Mo量を含有し、加えてCr:
1.0%以下、Ni:2.0%以下、のいずれかの1種
または2種を含有し残部がFeおよび不可避不純物から
なり、それを熱間圧延で成形した形材あるいは板材の引
張強度が590MPa 以上、0.2%耐力が440MPa 以
上、0℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが47J以
上であることを特徴とする高張力圧延鋼材。 (3)重量%でC:0.02〜0.06%、Si:0.
05〜0.25%、Mn:0.8〜1.8%、Cu:
0.7〜1.5%、Ti:0.02%以下、Mg:0.
0005〜0.005%、Nb:0.03%以下、V:
0.1%以下、Mo:0.4%以下、B:0.0003
%以下、N:0.004%以下、Al:0.1%以下、
を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
%〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
0%となるNb,V,Mo量を含有し、残部がFeおよ
び不可避不純物からなる鋳片を1200〜1300℃の
温度域に再加熱した後に圧延を開始し、圧延工程で鋼材
の表面温度を700℃以下に水冷し、以降の圧延パス間
の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を一回以上繰り返
し圧延し、圧延終了後に平均温度が700〜400℃ま
で0.5〜10℃/sの冷却速度で冷却し、その後放冷
することを特徴とする高張力圧延鋼材の製造方法。 (4)重量%でC:0.02〜0.06%、Si:0.
05〜0.25%、Mn:0.8〜1.8%、Cu:
0.7〜1.5%、Ti:0.02%以下、Mg:0.
0005〜0.005%、Nb:0.03%以下、V:
0.1%以下、Mo:0.4%以下、B:0.0003
%以下、N:0.004%以下、Al:0.1%以下、
を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
%〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
0%となるNb,V,Mo量を含有し、加えてCr:
1.0%以下、Ni:2.0%以下のいずれかの1種ま
たは2種以上を含有し残部がFeおよび不可避不純物か
らなる鋳片を1200〜1300℃の温度域に再加熱し
た後に圧延を開始し、圧延工程で鋼材の表面温度を70
0℃以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延
する水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終
了後に平均温度が700〜400℃まで0.5〜10℃
/sの冷却速度で冷却し、その後放冷することを特徴と
する高張力圧延鋼材の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。鋼の高強度化は・フェライト結晶の微細化・合金
元素による固溶体強化、硬化相による分散強化・微細析
出物による析出強化等によって達成される。また、高靱
性化は・結晶の微細化・母相(フェライト)の固溶N,
Cの低減・破壊の発生起点となる硬化相の高炭素マルテ
ンサイト及び粗大な酸化物、析出物の低減と微細化等に
より達成される。一般的には鋼の高強度化により靱性は
低下し、高強度化と高靱性化は相反する対処が必要であ
る。両者を同時に満たす冶金因子は唯一、結晶の微細化
である。
【0012】本発明の特徴は、製鋼工程における、Mg
添加による微細Mg酸化物の分散とマイクロアロイング
を添加する合金設計に基づき低炭素ベイナイト組織化
し、さらに組織微細化による高強度・高靱性化を達成す
るものである。加えて本発明では、熱間圧延工程におい
て、熱間圧延パス間でフランジ表面を水冷し、その復熱
時に圧延することを繰り返すことによりフランジの板厚
中心部に圧下浸透効果を付与し、この部位においてもT
MCPによる組織微細化効果を高め、この組織微細化に
よりH形鋼の各部位における母材の機械特性を向上させ
るとともにバラツキを低減し均質化を達成するものであ
る。
【0013】以下に本発明形鋼の成分範囲と制御条件の
限定理由について述べる。まず、Cは鋼を強化するため
に添加するもので、0.02%未満では構造用鋼として
必要な強度が得られず。また、0.06%を超える過剰
の添加は、母材靱性、耐溶接割れ性、溶接熱影響部(以
下HAZと略記)靱性などを著しく低下させるので、下
限を0.02%、上限を0.06%とした。
【0014】次に、Siは母材の強度確保、溶鋼の予備
脱酸などに必要であるが、0.25%を超えるとHAZ
内に硬化組織の高炭素島状マルテンサイトを生成し、溶
接継手部靱性を著しく低下させる。また、0.05%未
満では溶鋼の予備脱酸が十分にできないためSi含有量
を0.05〜0.25%の範囲に限定した。Mnは母材
の強度、靱性の確保には0.8%以上の添加が必要であ
るが、溶接部の靱性、割れ性などに対する許容濃度の上
限から1.8%とした。
【0015】Cuはα温度域での保持及び緩冷却により
α相中の転位上にCu相を析出し、その析出硬化により
母材の常温強度を増加させる。ただし、このα中でのC
u相の析出は0.7%未満ではα中でのCuの固溶限内
であり、析出が生じないためCu析出による強化は得ら
れない。また1.5%以上ではその析出強化は飽和する
のでCu:0.7〜1.5%に限定した。
【0016】Tiは0.02%を超えると過剰なTiは
TiCを析出し、その析出硬化により母材および溶接熱
影響部の靱性を劣化させるため0.02%以下に制限し
た。Nbは鋼中に固溶し著しく焼入性を上昇させ強度を
増加させる目的で添加している。0.03%超ではNb
炭窒化物を析出量が増加し固溶Nbとしての効果が飽和
するので0.03%以下に制限した。
【0017】Vは微量添加により圧延組織を微細化で
き、V炭窒化物の析出により強化することから低合金化
でき溶接特性を向上できる。しかしながら、Vの過剰な
添加は溶接部の硬化や、母材の高降伏点化をもたらすの
で、含有量の上限をV:0.1%とした。Moは母材強
度および高温強度の確保に有効な元素である。0.4%
超ではMo炭化物(Mo2C)を析出し固溶Moとして
の焼入性向上効果が飽和するので0.4%以下に制限し
た。
【0018】Bは0.0003%を超えると靱性低下の
主原因となる高炭素島状マルテンサイトが顕著に増加す
るので0.0003%以下に制限した。Nは窒化物を生
成し、析出強化および粒成長を抑制するが、固溶Nはフ
ェライトを強化し、またベイナイト相のラス境界に高炭
素島状マルテンサイトの生成を促進し靱性を劣化させる
ためN含有量を0.004%以下に制限した。
【0019】Alを0.1%以下としたのは、Alは強
力な脱酸元素であり、0.1%超の含有では粗大な介在
物の生成および鋳込み時のノズル詰まりなどを生じるた
め0.1%以下に制限した。次にマイクロアロイのなか
でNb,V,Moの含有量について、MAeq.=10
〔Nb%〕+5〔V%〕+〔Mo%〕の式で示すMAe
q.が0.4〜1.0%となるよう規定した。すなわ
ち、これらの各元素の焼入性に対する寄与を求めた結
果、各元素の重みが関係するという知見によってこの関
係式を設定したものである。この式でのMAeq.が
0.4%未満では目標のベイナイト組織割合が得られ
ず、また1.0%超ではベイナイトは得られるものの過
剰元素が炭窒化物として析出し、靱性低下をもたらすの
で0.4〜1.0%の範囲に限定した。
【0020】不可避不純物として含有するP,Sについ
ては、それらの量を特に限定しないが凝固偏析による溶
接割れ、靱性の低下を生じるので、極力低減すべきであ
り、望ましくはP,S量はそれぞれ0.02%未満に制
限することが望ましい。以上の元素に加えて、母材強度
の上昇、および母材の靱性向上の目的で、Cr,Niの
1種または2種以上を含有することができる。
【0021】Crは焼入性の向上により、母材の強化に
有効である。しかし1.0%を超える過剰の添加は、靱
性および硬化性の観点から有害となるため、上限を1.
0%とした。Niは母材の強靱性を高める極めて有効な
元素であるが2.0%を超える添加は合金コストを増加
させ経済的でないので上限を2.0%とした。
【0022】Mg添加に使用したMg合金はSi−Mg
−Al及びNi−Mgである。Mg合金を用いた理由は
合金化によりMg含有濃度を低減し、溶鋼への添加時の
脱酸反応を抑制し、添加時の安全性の確保とMgの歩留
を向上させるためである。Mgを0.0005〜0.0
05%に限定するのは、Mgも強力な脱酸元素であり、
晶出したMg酸化物は溶鋼中で容易に浮上分離されるた
め0.005%を超えて添加しても、これ以上は歩留ま
らないため上限を0.005%とした。また、0.00
05%未満では目的のMg系酸化物の分散密度が不足す
るため下限を0.0005%とした。なお、ここでのM
g系酸化物は、主にMgOと表記しているが、電子顕微
鏡解析などによると、この酸化物はTi、微量のAlお
よび不純物として含まれているCaなどとの複合酸化物
を形成している。
【0023】上記の処理を経た鋳片は次に1200〜1
300℃の温度域に再加熱する。この温度域に再加熱温
度を限定したのは、熱間加工による形鋼の製造には塑性
変形を容易にするため1200℃以上の加熱が必要であ
り、且つV,Nbなどの元素を十分に固溶させる必要が
あるため再加熱温度の下限を1200℃とした。その上
限は加熱炉の性能、経済性から1300℃とした。
【0024】熱間圧延のパス間で水冷し、圧延中に一回
以上、フランジ表面温度を700℃以下に冷却し、次の
圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を1回
以上繰り返し行うとしたのは、圧延パス間の水冷によ
り、フランジの表層部と内部とに温度差を付与し、軽圧
下条件においても内部への加工歪みを浸透させるため
と、水冷により短時間で低温圧延を実現させTMCPを
効率的に行うためである。
【0025】フランジ表面温度を700℃以下に冷却し
た後、復熱過程で圧延するのは、仕上げ圧延後の加速冷
却による表面の焼入れ硬化を抑制し軟化させるために行
うものである。その理由はフランジ表面温度を700℃
以下に冷却すれば一旦γ/α変態温度を切り、次の圧延
までに表層部は復熱昇温し、圧延はγ/αの二相共存温
度域での加工となり、γ細粒化と加工された微細αとの
混合組織を形成する。これにより表層部の焼入性を著し
く低減でき、加速冷却により生じる表面層の硬化を防止
できるからである。
【0026】また、圧延終了後、引続き、平均温度が7
00〜400℃まで0.5〜10℃/sの冷却速度で冷
却し放冷するとしたのは、加速冷却によりフェライトの
粒成長抑制とベイナイト組織を微細化し高強度・高靱性
を得るためである。次いで、加速冷却を700〜400
℃で停止するのは、700℃を超える温度で停止した場
合には、表層部の一部がAr1点以上となりγ相を残存
し、この共在するγ相が、フェライトに変態し、さらに
フェライトが成長し粗粒化するため加速冷却の停止温度
を700℃以下とした。また、400℃未満の冷却で
は、その後の放冷中にベイナイト相のラス間に生成する
高炭素マルテンサイトが、冷却中にセメンタイトを析出
することにより分解できず、硬化相として存在すること
になる。この高炭素マルテンサイトは脆性破壊の起点と
して作用し、靱性の低下を招くことになる。これらの理
由により、加速冷却の停止温度を700〜400℃に限
定した。
【0027】
【実施例】試作形鋼は転炉溶製した後、Mg以外の合金
を添加し、連続鋳造機のモールドでSi−Mg−Al合
金を添加し、250〜300mm厚鋳片に鋳造した。鋳片
の冷却はモールド下方の二次冷却帯の水量と鋳片の引き
抜き速度の選択により制御した。該鋳片を加熱し、粗圧
延工程の図示は省略するが、図1に示す、ユニバーサル
圧延装置例でH形鋼に圧延した。圧延パス間水冷は中間
ユニバーサル圧延機4の前後に水冷装置5aを設け、フ
ランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延の繰り返し
により行い、圧延後の加速冷却は仕上げユニバーサル圧
延機6で圧延終了後にその後面に設置した冷却装置5b
でフランジ外側面をスプレー冷却した。
【0028】機械特性は図2に示す、フランジ2の板厚
2 の中心部(1/2t2 )でフランジ幅全長(B)の
1/4,1/2幅(1/4B,1/2B)から、採集し
た試験片を用い求めた。なお、これらの箇所についての
特性を求めたのは、フランジ1/4F部はH形鋼の平均
的な機械特性を示し、フランジ1/2F部はその特性が
最も低下するので、これらの2箇所によりH形鋼の機械
試験特性を代表できると判断したためである。
【0029】表1には、本発明鋼及び比較鋼の化学成分
値とMAeq.値を、表2には、それらの鋼からH形鋼
を製造した際の圧延・加速冷却条件およびその機械試験
特性値を示す。なお、圧延加熱温度を1300℃に揃え
たのは、一般的に加熱温度の低下によりγ粒は細粒化
し、機械試験特性を向上させることは周知であり、高温
加熱条件では機械特性の最低値を示すと推定され、この
値がそれ以下の加熱温度での機械試験特性を代表できる
と判断したためである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】表2に示すように、本発明によるH形鋼1
〜5では、0.2%耐力、抗張力ともに590MPa 級鋼
でのJIS規格値を満たしている。すなわち0.2%耐
力はその下限値の440MPa を超え、抗張力も590MP
a を超えており、またこれらの降伏比(YS/TS)は
0.8以下の低YR値を満たしている。シャルピー衝撃
値についても0℃で47Jを超えておりJIS規格値を
十分に満たしている。特にH形鋼5のようにMgを添加
すると同様の成分でMgを添加しない比較鋼のH形鋼1
a〜5aと比較して靱性が顕著に向上する。
【0033】一方、比較鋼のH形鋼6ではMn含有量
が、H形鋼7ではCu含有量が、下限値未満であり、強
度が低下し規格値を満たさない。H形鋼8ではCとNb
含有量が、H形鋼9ではMo含有量が、H形鋼10はB
が過剰であるため、焼入性が向上し強度は十分である
が、0℃での衝撃吸収エネルギーは規格値に届かない。
H形鋼11では、N濃度が上限値を超えるため、固溶N
量が増加し、靱性が不十分である。
【0034】また、H形鋼12では、MAeq.値が本
発明の下限値0.4%未満であるため、強度不足を生じ
る。一方H形鋼13では、MAeq.値が上限値1.0
%を超えるため析出強化を生じ靱性値低下をもたらしそ
の規格値を満たすことができない。H形鋼6〜13と同
様の成分でMgを添加しない比較鋼のH形鋼6a〜13
aでは、靱性がさらに低下する傾向にある。
【0035】すなわち、本発明の製造法の要件が総て満
たされた時に、表2に示されるH形鋼1〜5のように、
圧延形鋼の機械試験特性の最も保証しにくいフランジ板
厚1/2、幅1/2部においても十分な強度、靱性を有
する、高張力圧延形鋼の生産が可能になる。なお、本発
明が対象とする圧延形鋼は上記実施例のH形鋼に限らず
I形鋼、山形鋼、溝形鋼、不等辺不等厚山形鋼等のフラ
ンジを有する形鋼や厚鋼板にも適用できることは勿論で
ある。
【0036】
【発明の効果】本発明による合金設計された鋳片と制御
圧延法を適用した圧延形鋼は機械試験特性の最も保証し
にくいフランジ板厚1/2、幅1/2部においても十分
な強度を有し、優れた靱性を持つ形鋼の製造が圧延まま
で可能となり、大型鋼構造物の信頼性の向上、安全性の
確保、経済性等の産業上の効果は極めて顕著なものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法を実施する装置配置例の略図である。
【図2】H形鋼の断面形状および機械試験片の採取位置
を示す図である。
【符号の説明】
1…H形鋼 2…フランジ 3…ウェブ 4…中間圧延機 5a…中間圧延機前後面の水冷装置 6a…仕上げ圧延機後面冷却装置 6…仕上げ圧延機
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−111397(JP,A) 特開 平8−283902(JP,A) 特開 平7−216498(JP,A) 特開 平7−76751(JP,A) 特開 平6−279848(JP,A) 特開 平5−43977(JP,A) 特開 昭61−117213(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 C21D 8/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で C:0.02〜0.06%、 Si:0.05〜0.25%、 Mn:0.8〜1.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 Ti:0.02%以下、 Mg:0.0005〜0.005%、 Nb:0.03%以下、 V:0.1%以下、 Mo:0.4%以下、 B:0.0003%以下、 N:0.004%以下、 Al:0.1%以下、 を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
    %〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
    0%となるNb,V,Mo量を含有し、残部がFeおよ
    び不可避不純物からなり、それを熱間圧延で成形した形
    材あるいは板材の引張強度が590MPa 以上、0.2%
    耐力が440MPa 以上、0℃でのシャルピー衝撃吸収エ
    ネルギーが47J以上であることを特徴とする高張力圧
    延鋼材。
  2. 【請求項2】 重量%で C:0.02〜0.06%、 Si:0.05〜0.25%、 Mn:0.8〜1.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 Ti:0.02%以下、 Mg:0.0005〜0.005%、 Nb:0.03%以下、 V:0.1%以下、 Mo:0.4%以下、 B:0.0003%以下、 N:0.004%以下、 Al:0.1%以下、 を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
    %〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
    0%となるNb,V,Mo量を含有し、加えてCr:
    1.0%以下、Ni:2.0%以下、のいずれかの1種
    または2種を含有し残部がFeおよび不可避不純物から
    なり、それを熱間圧延で成形した形材あるいは板材の引
    張強度が590MPa 以上、0.2%耐力が440MPa 以
    上、0℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが47J以
    上であることを特徴とする高張力圧延鋼材。
  3. 【請求項3】 重量%で C:0.02〜0.06%、 Si:0.05〜0.25%、 Mn:0.8〜1.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 Ti:0.02%以下、 Mg:0.0005〜0.005%、 Nb:0.03%以下、 V:0.1%以下、 Mo:0.4%以下、 B:0.0003%以下、 N:0.004%以下、 Al:0.1%以下、 を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
    %〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
    0%となるNb,V,Mo量を含有し、残部がFeおよ
    び不可避不純物からなる鋳片を1200〜1300℃の
    温度域に再加熱した後に圧延を開始し、圧延工程で鋼材
    の表面温度を700℃以下に水冷し、以降の圧延パス間
    の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を一回以上繰り返
    し圧延し、圧延終了後に平均温度が700〜400℃ま
    で0.5〜10℃/sの冷却速度で冷却し、その後放冷
    することを特徴とする高張力圧延鋼材の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で C:0.02〜0.06%、 Si:0.05〜0.25%、 Mn:0.8〜1.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 Ti:0.02%以下、 Mg:0.0005〜0.005%、 Nb:0.03%以下、 V:0.1%以下、 Mo:0.4%以下、 B:0.0003%以下、 N:0.004%以下、 Al:0.1%以下、 を含み、かつ、MAeq.=10〔Nb%〕+5〔V
    %〕+〔Mo%〕の式で示すMAeq.が0.4〜1.
    0%となるNb,V,Mo量を含有し、加えてCr:
    1.0%以下、Ni:2.0%以下のいずれかの1種ま
    たは2種以上を含有し残部がFeおよび不可避不純物か
    らなる鋳片を1200〜1300℃の温度域に再加熱し
    た後に圧延を開始し、圧延工程で鋼材の表面温度を70
    0℃以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延
    する水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終
    了後に平均温度が700〜400℃まで0.5〜10℃
    /sの冷却速度で冷却し、その後放冷することを特徴と
    する高張力圧延鋼材の製造方法。
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