JP5447778B2 - 非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、橋梁、造船、建築、ラインパイプ、建産機械などに用いて好適な、高張力厚鋼板に係り、とくに地震によって大きな塑性変形を受け、耐震性を必要とする建築構造物用として好適な低降伏比を有する高張力厚鋼板に関する。
近年、建築構造物などでは、地震時の安全性確保という観点から、優れた耐震性を有する鋼材が要求されている。また、従来の研究結果から、降伏比の低い鋼材ほど耐震性に優れることが明らかとなっている。そのため、建築構造物には降伏比80%以下の鋼材を使用することが義務付けられている。
また、建築構造物の高層化や大スパン化などに伴い、従来より高い強度を有する、例えば550MPa級高張力鋼材の建築構造物への適用が増加している。
従来、建築構造物用として用いられる、低降伏比550MPa級高張力鋼材は、二相域熱処理やその後の焼戻熱処理などの複数回の熱処理を実施して製造されるのが一般的であった。しかし、複数回の熱処理を実施することは、製造コストを高騰させるうえ、製造工期の長期化など、問題を残していた。
このような問題に対し、二相域熱処理やその後の焼戻熱処理などの熱処理の省略、すなわち非調質化、の検討が進められてきた。
たとえば、特許文献1には、粗圧延の後に加速冷却を行って、オーステナイト(γ)を過冷却したうえで、フェライト(α)変態を促進させるための仕上圧延を行い、さらに仕上圧延後に加速冷却を行うことで、軟質相であるαの微細化と、軟質相と硬質相の比率を適切に制御して高靭性と低降伏比とを両立させる、低降伏比高張力鋼材の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、高価な合金元素の添加や生産性の低い複雑な熱処理を施すことを必要とすることなく、低降伏比高張力鋼材の製造ができるとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、粗圧延と仕上圧延との間で加速冷却を行うため、鋼材内での温度むらを生じやすく、そのため鋼材各位置での特性ばらつきが増加することが懸念される。
また、特許文献2には、C:0.02〜0.04%、固溶B:0.0002〜0.002%を含有し、合金元素含有量に関係する式CENを所定の範囲とする組成と、ベイナイトを主体とし、島状マルテンサイトを0.8〜2.5体積%分散させた組織とからなる590MPa級の非調質型低降伏比高張力鋼板が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、広い板厚の範囲にわたり、溶接施工において予熱不要の特性と、低降伏比とを具備した非調質高張力鋼板が製造可能であるとしている。しかし、特許文献2に記載された技術では、C含有量を狭い範囲で低炭素化する必要があるとともに、強度確保のために、多量の合金元素を含有させる必要があり、製造コストの高騰を招くという問題があった。
また、特許文献3、特許文献4、特許文献5には、合金元素添加量を削減するために、加速冷却を活用して、高強度と低降伏比とを両立させる低降伏比非調質高張力鋼材の製造方法が記載されている。
特許文献3に記載された技術では、少なくともAr3変態点以上で圧延を終了させ、その後所定の温度になるまで空冷してフェライトを適量、生成させ、その後、二相域の所定の温度から350〜600℃間の温度まで加速冷却して、非調質で低降伏比を有する高強度鋼板を得る。また、特許文献4に記載された技術では、少なくともAr3変態点以上で圧延を終了させ、その後所定の温度になるまで空冷してフェライトを適量、生成させ、その後、二相域の所定の温度から250℃以下の温度まで加速冷却して、その後焼もどし熱処理を行なう。また、特許文献5に記載された技術では、Nb を0.003〜0.030%含有する鋼片に、少なくともAr3変態点以上で圧延を終了させる熱間圧延を施し、その後所定の温度になるまで空冷してフェライトを適量、生成させ、その後、二相域の所定の温度から400〜550℃間の温度まで加速冷却する。しかし、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載された技術では、わずかな冷却開始温度の違いによって、フェライトの生成量が異なり、材質のばらつきが大きくなることが懸念される。そのため、実作業においては、厳密な冷却開始温度の管理が必要となり、安定した製造が困難となり、生産性が低下するという問題があった。
また、特許文献6には、Mo、Wを(Mo+W/2)換算で0.08〜0.70%含有する鋼素材に、圧延終了温度が800〜950℃の範囲の温度となる熱間圧延と、所定の冷却速度で加速冷却し、500〜670℃で加速冷却を停止する冷却処理とを施し、低降伏比を有する高張力厚鋼板を得る、非調質高張力厚鋼板の製造方法が記載されている。特許文献6に記載された技術によれば、板厚中央部組織を、軟質相であるフェライトを主相とし、島状マルテンサイトを主とする20体積%以下の硬質相を含む複合組織とすることができ、低降伏比で、板厚方向の材質変動が少ない厚鋼板とすることができるとしている。
特開平10−306316号公報 特開2000−219934号公報 特開昭63−219523号公報 特開昭63−223123号公報 特開平01−301819号公報 特開2007−177325号公報
しかし、特許文献6に記載された技術では、高価なMo、Wを多量に含有させる必要があり、製造コストの高騰を招くという問題がある。
また、上記した従来技術におけるような加速冷却を、比較的薄肉の厚鋼板、とくに板厚30mm以下の厚鋼板に適用した場合、加速冷却の冷却停止温度が低くなると、板厚全域に亘り、硬質相が形成され、降伏比が増加する傾向となり、一方、加速冷却の冷却停止温度が高くなると、板厚全域がフェライト+パーライト組織となり、所望の高強度を確保できなくなるという問題がある。このため、従来の技術を用いて、引張強さ550MPa以上の高強度と、降伏比80%以下の低降伏比とを兼備した板厚30mm以下の、比較的薄肉の厚鋼板を製造するためには、加速冷却処理を、非常に狭い冷却停止温度に管理して行うことが必要となり、従来技術によっては、安定して上記した所望の特性を有する厚鋼板を、高い生産性で製造することは困難であった。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、熱処理を施すことなく非調質で、かつ多量の合金元素を含有することなく安価で、引張強さ550MPa以上の高強度と、降伏比80%以下の低降伏比とを兼備した板厚30mm以下の非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記した厚鋼板を、低温での制御圧延を施すことなく、また熱処理を施すことなく生産性高く、製造することを目的とする。なお、ここでいう「厚鋼板」は、板厚30mm以下12mm以上の鋼板をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、低降伏比を確保するための方策について鋭意研究した。その結果、鋼板の表層部を硬質な組織とし、板厚中央部を比較的軟質な組織とした板厚方向に組織が異なる複層組織厚鋼板とすることにより、板厚方向全域を軟質相と硬質相とが分散したミクロな二相組織とすることなく、高強度でかつ低降伏比を有する厚鋼板とすることができることに想到した。すなわち、板厚中央部を比較的軟質な組織とし、かつ板厚中央部と表層部とで、硬さあるいは強度が大きく異なる場合には、全厚試験片を用いた引張試験で、明瞭な上下降伏点が消失する降伏挙動を示し、結果として板厚方向全域をミクロな二相組織とした場合と同様に、降伏比が低下することを新規に見出した。なお、ここでいう「板厚中央部」とは、板厚中央を中心にして板厚の1/4の厚さの領域を、又「表裏層部」とは、表面または裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの領域をいうものとする。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.12〜0.18%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.2〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.08%以下を含み、さらにCu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
(ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.34〜0.40%の範囲となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面及び裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの表裏層部が、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含み、平均硬さで230〜290HVとなる組織を有し、板厚中央を中心にして板厚の1/4の厚さの領域が、平均粒径が12μm以上のフェライトを体積率で50〜85%と、さらに平均粒径が50μm以下の第二相を含み、平均硬さで190HV以下となる組織を有し、引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下であることを特徴とする、板厚30mm以下の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
(2)質量%で、C:0.12〜0.18%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.2〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.030%を含み、さらにCu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
(ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.34〜0.40%の範囲となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面及び裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの表裏層部が、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含み、平均硬さで235〜290HVとなる組織を有し、板厚中央を中心にして板厚の1/4の厚さの領域が、平均粒径が12μm以上のフェライトを体積率で50〜85%と、さらに平均粒径が37μm以下の第二相を含み、平均硬さで190HV以下となる組織を有し、引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下であることを特徴とする、板厚30mm以下の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.030%を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板。
)(1)ないしのいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板。
)鋼素材に、熱間圧延工程と、それに続く冷却工程とを施して、厚鋼板とする厚鋼板の製造方法において、前記鋼素材を、質量%で、C:0.12〜0.18%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.2〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.08%以下を含み、さらにCu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%のうちから選ばれた1種または2種以上を、含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を、1050〜1250℃に加熱し、表面温度で900〜1000℃の範囲での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が830〜900℃の範囲の温度である熱間圧延を施す工程であり、前記冷却工程が、前記熱間圧延終了後、770℃以上の温度から冷却を開始し、550〜670℃の範囲の温度まで平均冷却速度:10〜80℃/sで加速冷却する工程である、ことを特徴とする板厚30mm以下で引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
)()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.030%を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
)()または()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
)鋼素材に、熱間圧延工程と、それに続く冷却工程とを施して、厚鋼板とする厚鋼板の製造方法において、前記鋼素材を、質量%で、C:0.12〜0.18%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.2〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.030%を、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
(ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.34〜0.40%の範囲となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を、1050〜1250℃に加熱し、表面温度で950〜1050℃の範囲での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が880〜920℃の範囲の温度である熱間圧延を施す工程であり、前記冷却工程が、前記熱間圧延終了後、770℃以上の温度から冷却を開始し、550〜670℃の範囲の温度まで平均冷却速度:35〜80℃/sで加速冷却する工程である、ことを特徴とする板厚30mm以下で引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
)()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
10)()または()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.030%を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
(1)()ないし(10)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、建築構造物用として好適な、引張強さ550MPa以上の高強度と、降伏比80%以下の低降伏比とを兼備した板厚30mm以下の非調質低降伏比高張力厚鋼板を、熱処理を施すことなく非調質で、かつ多量の合金元素を含有することなく適正な合金元素添加で製造でき、安価でしかも生産性にも優れ、産業上格段の効果を奏する。
実施例における硬さ測定の要領を模式的に示す説明図である。
まず、本発明厚鋼板の製造方法について説明する。
本発明で使用する鋼素材の組成限定理由について、まず説明する。以下、とくに断わらない限り質量%は単に%と記す。
C:0.12〜0.18%
Cは、鋼の強度を増加させるとともに、フェライト以外の硬質相の含有量を増加させる作用を有する元素であり、高強度でかつ低降伏比を確保するために有用な元素である。本発明では所望の高強度と低降伏比を確保するために、0.12%以上の含有を必要とする。一方、0.18%を超える含有は、溶接性を顕著に低下させる。このため、Cは0.12〜0.18%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.13〜0.16%である。
Si:0.05〜0.45%
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果は0.05%以上の含有で認められるようになる。一方、0.45%を超えて含有すると、母材の靭性が低下するとともに、溶接熱影響部靭性が低下する。このため、Siは0.05〜0.45%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.35%である。
Mn:1.2〜1.8%
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、本発明では他の合金元素の含有を最小限に抑え、所望の引張強さ550MPa以上の高強度を確保するために、1.2%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超えて含有すると、母材の靭性が低下するとともに溶接熱影響部靭性も著しく低下する。このため、Mnは1.2〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.6%以下である。
P:0.020%以下
Pは、鋼の強度を増加させるが靭性を低下させ、さらに溶接部靭性を著しく低下させる作用を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。とくに、0.020%を超えて含有するとその傾向が顕著となるため、本発明では0.020%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。また、Pの過度の低減は、精錬コストを高騰させ、経済的に不利となるため、0.005%以上とすることがより好ましい。
S:0.005%以下
Sは、通常、介在物として鋼中に存在し、延性、靭性を低減させるとともに、熱間脆性を生じさせる作用を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。とくに、0.005%を超える含有は、鋼素材の中央偏析部に多量のMnSが生成し、鋳造欠陥等の欠陥が生じやすくなるとともに、母材および溶接部靭性を低下させる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。また、Sの過度の低減は、精錬コストを高騰させ、経済的に不利となるため、0.001%以上とすることがより好ましい。
Al:0.08%以下
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶製において最も汎用的に使用される元素であり、このような作用を確保するためには0.005%以上含有させることが望ましいが、0.08%を超える含有は、鋼(母材)の靭性を低下させる。また、溶接部においては溶接金属に混入し、溶接金属の靭性を低下させる。このため、Alは0.08%以下に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.045%である。
本発明で使用する鋼素材は、上記した成分にさらに、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%、Nb:0.005〜0.030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する。
Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%、Nb:0.005〜0.030%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Mo、V、B、Nbは、いずれも鋼の強度を増加させる元素であり、高強度化のために、1種または2種以上を選択して含有する。
Cuは、固溶強化や焼入れ性増加を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上含有することを必要とするが、0.20%を超える含有は、熱間脆性が顕著となり表面性状の劣化を招く。このため、含有する場合には、0.05〜0.20%の範囲に限定した。
Niは、靭性を向上させるとともに、靭性の低下を招くことなく鋼の強度を増加させる作用を有し、さらに溶接熱影響部靭性への悪影響も小さい元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超えて含有すると、製造コストの増大を招く。このため含有する場合には、Niは0.05〜0.10%の範囲に限定した。
Crは、焼入れ性の向上を介して鋼の強度を増加させる作用を有し、高強度化のためには有用な元素である。このような効果は0.1%以上の含有で認められるが、0.3%を超える含有は、製造コストの増大を招く。このため含有する場合には、Crは0.1〜0.3%の範囲に限定した。
Moは、焼入れ性の向上を介して鋼の強度を増加させる作用を有し、高強度化のためには有用な元素である。とくにMoの含有は第二相の硬さを増加させ、降伏比の低下と高強度化を同時に達成することができる。このような効果は0.03%以上の含有で認められる。一方、0.3%を超える含有は、製造コストの増大を招く。このため含有する場合には、Moは0.03〜0.10%の範囲に限定した。
Vは、析出硬化を介して鋼の強度を増加させる作用を有し、高強度化のためには有用な元素である。このような効果は0.010%以上の含有で認められる。一方、0.080%を超える含有は、母材の靭性低下、溶接熱影響部の靭性低下を招く。このため含有する場合には、Vは0.010〜0.080%の範囲に限定した。
Bは、焼入れ性を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、このような効果は0.0003%以上の含有で得られる、一方、0.0030%を超える含有は、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため含有する場合には、Bは0.0003〜0.0030%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0007〜0.0020%である。
Nbは、焼入れ性を向上させ、さらに制御圧延の効果を促進させ、ミクロ組織を微細化させて、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.030%を超える含有は、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため含有する場合には、Nbは0.005〜0.030%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.007〜0.020%である。
上記した成分が基本の成分であるが、さらに本発明で使用する鋼素材では、これら基本の組成に加えてさらに、Ti:0.003〜0.030%、および/または、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することができる。
Ti:0.003〜0.030%
Tiは、Nとの結合力が強く、凝固時にTiNとして析出し、溶接時に溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制する、あるいはフェライト変態核として作用し溶接熱影響部の高靭性化に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.003%以上の含有を必要とするが、0.030%を超える含有は、TiN粒の粗大化を促進し、上記した効果が期待できなくなる。このため、含有する場合には、Tiは0.003〜0.030%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.010〜0.020%である。
Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上
Ca、REM、Mgはいずれも、硫化物の形態制御を介して、母材の靭性および延性向上に寄与するとともに、微細な硫化物粒子として鋼中に分散させた場合には、フェライト変態核として作用し溶接熱影響部の高靭性化に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有することができる。このような効果を得るためには、少なくともCa:0.0005%、REM:0.0010%、Mg:0.0010%をそれぞれ含有することを必要とする。一方、それぞれ、Ca:0.0050%、REM:0.0050%、Mg:0.0050%を超える含有は、過剰の介在物が生成され、靭性が低下する場合がある。このため、含有する場合には、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
本発明では、上記した成分を、上記した含有量範囲でかつ、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
(ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceq(%)が0.34〜0.40%の範囲となるように含有する。強度と降伏比とをバランスよく有し、さらに良好な溶接性を確保させるために、本発明では、(1)式で定義される炭素当量Ceqを0.34〜0.40%の範囲内に調整する。
Ceqが0.34%未満では、所望の高強度と所望の低降伏比とを安定して確保することが困難となる。一方、Ceqが0.40%を超えると、溶接性が顕著に低下する。このため、炭素当量Ceq(%)は0.34〜0.40%の範囲に限定した。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
鋼素材は、上記した組成を有していれば、その製造方法はとくに限定する必要はないが、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製方法で溶製し、必要に応じてさらに脱酸処理や脱ガスプロセス等を経て、連続鋳造法等の鋳造法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
本発明では、上記した組成の鋼素材に、熱間圧延工程と、それに続く冷却工程を施し、所望の形状の板厚30mm以下の厚鋼板とする。
熱間圧延工程では、鋼素材に、まず加熱炉等で1050〜1250℃の範囲の温度に加熱する。
加熱温度が1050℃未満では、合金元素が十分に固溶せず、製品である厚鋼板の強度が低下し、所望の高強度を確保できない。一方、加熱温度が1250℃を超えると、オーステナイト結晶粒の粗大化が顕著となり、所望の高靭性を確保できなくなる。このため、鋼素材の加熱温度は1050〜1250℃の範囲の温度に限定した。なお、好ましくはオーステナイト粒の整粒化の観点から1050〜1150℃である。
また、熱間圧延工程では、Nbを含有しない場合には、表面温度で900〜1000℃の範囲での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が830〜900℃の範囲の温度である熱間圧延を施す。一方、Nbを含有する場合には、表面温度で950〜1050℃の範囲での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が880〜920℃の範囲の温度である熱間圧延を施す。なお、熱間圧延工程における温度は、とくに断わらない限り表面温度を用いるものとする。
本発明では、低降伏比と高強度を同時に満足する厚鋼板とするために、板厚中央部を軟質層とすることが重要となる。そのために本発明では、板厚中央部で適正量のフェライトを生成させる必要があり、熱間圧延時にオーステナイトの再結晶を生じさせてオーステナイトの微細化を図る。オーステナイトが微細化すれば、適正量のフェライトが生成するとともに、フェライト以外の第二相も微細化し靭性の低下を防止できる。このため、Nbを含有しない場合には、表面温度で900〜1000℃の温度範囲における累積圧下率が50%以上となる制御圧延を施す。一方、Nbを含有する場合には、表面温度で950〜1050℃の温度範囲における累積圧下率が50%以上となる制御圧延とする。Nbを含有しない場合には900〜1000℃の温度範囲における、またはNbを含有する場合には950〜1050℃の温度範囲における累積圧下率が50%未満では、累積圧下率が少なすぎて、所望のオーステナイトの再結晶が進行しない。このため、オーステナイトの微細化が達成できず、適正粒径のフェライトが適正量生成せず、所望の低降伏比を確保できなくなる。なお、当該温度範囲の累積圧下率は60%以上とすることが好ましい。
また、熱間圧延工程において、圧延終了温度が、830℃未満(Nbを含有しない場合)あるいは880℃未満(Nbを含有する場合)では、オーステナイト未再結晶温度域での制御圧延が過度となり、板厚中央部では得られるフェライト粒が微細化しすぎて、降伏点が上昇し、所望の低降伏比を確保できなくなる。また表裏層部では、フェライト生成量が多くなり、冷却工程で急冷しても所望の硬質相からなる組織を確保できなくなる。一方、圧延終了温度が、900℃を超える温度(Nbを含有しない場合)、950℃を超える温度(Nbを含有する場合)では、再結晶した微細粒が粗大化し、オーステナイトの微細化が達成できなくなる。このため、熱間圧延工程における圧延終了温度は、Nbを含有しない場合には、830〜900℃の範囲の温度に、Nbを含有する場合には、880〜920℃の範囲の温度に限定した。
熱間圧延工程に引続いて冷却工程を施す。なお、冷却工程における温度は、とくに断わらない限り表面温度を用いるものとする。
冷却工程では、熱間圧延終了後、770℃以上の温度から冷却を開始し、550〜670℃の範囲の温度(冷却停止温度)まで平均冷却速度:10〜80℃/sで加速冷却する。
加速冷却の冷却開始温度が、770℃未満では表裏層部にフェライトが生成するため、急冷後の硬さが低下し、表裏層部を所望の硬さを有する硬質な組織を有する領域とすることが困難となる。このため、冷却工程における冷却開始温度は770℃以上の温度に限定した。
また、冷却停止温度が670℃を超える温度では、強度が低下し所望の高強度を確保する厚鋼板とすることができなくなる。また、冷却停止温度が550℃未満となると、とくに本発明の組成範囲の板厚30mm以下の比較的薄肉鋼板では、板厚方向全域がベイナイトおよび/またはマルテンサイトとなり、高強度ではあるが高降伏比の厚鋼板となる。このため、冷却工程における冷却停止温度は、550〜670℃の範囲の温度に限定した。
また、加速冷却の冷却速度が、Nbを含有しない場合に平均で10℃/s未満、Nbを含有する場合に平均で35℃/s未満では、表裏層部においても、加速冷却途中でフェライト変態が誘起され所望の硬質な組織を確保できなくなる。一方、加速冷却の冷却速度が、平均で80℃/sを超えると、反りを生じる場合があり鋼板形状を平坦に保つことが困難となる。このため、加速冷却の冷却速度を平均で10〜80℃/s(Nbを含有しない場合)、あるいは35〜80℃/s(Nbを含有する場合)に限定した。
上記した製造方法で得られる厚鋼板は、上記した組成を有し、表面及び裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの表裏層部が、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含み、平均硬さで230〜290HVとなる組織を有し、かつ板厚中央を中心にして板厚の1/4の厚さの領域の板厚中央部が、平均粒径が12μm以上のフェライトを体積率で50〜85%含み、さらに平均粒径が50μm以下の第2相を含み、平均硬さで190HV以下となる組織を有し、引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板である。
本発明では、表裏層部の組織を、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを主体とする硬質な組織とする。マルテンサイトおよび/またはベイナイトを主体とする組織とすることにより、降伏点が消失し降伏比を低下させることが可能となる。一方、フェライトが生成し、マルテンサイトおよび/またはベイナイトの体積率が80%未満となる組織では、上降伏点が現れ降伏比が高くなる。そしてまた、表裏層部の硬さが、Nbを含有しない場合に平均硬さで230HV未満、Nbを含有する場合に平均硬さで235HV未満では、所望の高強度(引張強さ550MPa以上)を確保できないか、あるいは降伏比80%以下の低降伏比が達成できなくなる。また、表裏層部の硬さが、平均で290HVを超えると、鋼板表面の割れや靭性低下を招く。このため、表裏層部を、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含み、平均硬さで230〜290HV(Nbを含有しない場合)、あるいは235〜290HV(Nbを含有する場合)となる組織に限定した。なお、マルテンサイトおよび/またはベイナイト以外の第二相は、存在する場合には体積率20%未満のフェライト、あるいはさらにパーライトである。
また、本発明では、板厚中央部の組織を、体積率で50〜85%のフェライトと、残部第二相からなり、平均硬さで190HV以下の軟質な組織とする。そして、フェライトは、平均粒径が12μm以上、第二相はNbを含有しない場合に平均粒径が50μm以下、Nbを含有する場合に平均粒径が37μm以下とする。
本発明では、板厚中央部を軟質な組織とすることが、高強度と低降伏比とを兼備させるために肝要となる。板厚中央部を、平均硬さで190HV以下の軟質な組織とすることにより、表裏層部との硬さ差が大きくなり、低降伏比と高強度とを兼備させることができるようになる。板厚中央部を、平均硬さで190HV以下の軟質な組織とするためには、軟質なフェライトを体積率で50%以上とする必要があるが、板厚中央部でフェライトを85%を超えて含有すると、強度が著しく低下するため、全板厚での引張強さが低下し、550MPa以上の引張強さを達成できなくなる。また、板厚中央部のフェライトが平均粒径で12μm未満の微細な粒では、降伏強さが上昇し低降伏比の達成が困難となる。また、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の第二相の平均粒径が50μm(Nbを含有しない場合)、あるいは37μm(Nbを含有する場合)を超えると、靭性の低下が著しくなる。このため、板厚中央部の組織は、平均粒径が12μm以上のフェライトを体積率で50〜85%と、さらに平均粒径が50μm以下(Nbを含有しない場合)、あるいは37μm以下(Nbを含有する場合)の第2相を含み、平均硬さで190HV以下となる組織に限定した。
以下さらに、実施例に基づいてさらに、本発明について詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、さらに取鍋精錬を施したのち、連続鋳造法で鋼素材(スラブ)とした。これら鋼素材に、表2に示す条件で熱間圧延工程、冷却工程を施し、板厚12〜30mmの厚鋼板とした。
得られた厚鋼板から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、硬さ試験、衝撃試験を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた厚鋼板の表裏部、または板厚中央部を含む組織観察用試験片を採取し、圧延方向に直交する断面を研磨し、ナイタール液で腐食し、各位置での組織を観察した。組織の観察は、光学顕微鏡倍率:400倍)で各5視野以上観察し撮像して、各相の分率、および粒径を測定した。各相の分率、および粒径は、画像解析装置を用いて測定した。なお、平均粒径は、各粒の面積を測定し、平均面積の平方根(公称粒径)を求め、平均粒径とした。
(2)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201の規定に準拠してJIS 5号全厚引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏強さYS(0.2%耐力)、引張強さTSを求め、降伏比(=(YS/TS)×100%)を算出した。
(3)硬さ試験
得られた厚鋼板から、表面または裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの領域(表裏層部)および板厚中央を中心にして板厚の1/4の厚さの領域(板厚中央部)を含むように硬さ試験片を採取し、ビッカース硬さ計(試験力:98N)を用いて、図1に示すような要領でビッカース硬さを測定した。表裏層部では、板厚方向に表面または裏面から板厚tの1/8位置または7/8位置(1/8t位置または7/8t位置)までをピッチ0.5mmで、また板厚中央部では、板厚の1/4位置(1/4t位置)から板厚の3/4位置(3/4t位置)までをピッチ0.5mmで測定した。得られた値の算術平均をその厚鋼板の各位置での平均硬さとした。
(4)衝撃試験
得られた厚鋼板の表面下1mm位置から、試験片中心が表面下6mmの位置となるように、JIS Z 2242の規定に準拠してVノッチ衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度Trs50(℃)を求めた。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005447778
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Figure 0005447778
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本発明例はいずれも、引張強さ:550MPa以上の高強度と、80%以下の低降伏比を有し、優れた靭性を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、強度が不足しているか、靭性が低下しているか、降伏比が高くなっているか、あるいは強度、靭性、降伏比のいずれもが所定の値を満足していないか、のいずれかであった。

Claims (11)

  1. 質量%で、
    C:0.12〜0.18%、 Si:0.05〜0.45%、
    Mn:1.2〜1.8%、 P:0.020%以下、
    S:0.005%以下、 Al:0.08%以下
    を含み、さらにCu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.34〜0.40%の範囲となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    表面及び裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの表裏層が、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含み、平均硬さで230〜290HVとなる組織を有し、
    板厚中央部を中心にして板厚の1/4の厚さの領域が、平均粒径が12μm以上のフェライトを体積率で50〜85%と、さらに平均粒径が50μm以下の第二相を含み、平均硬さで190HV以下となる組織を有し、
    引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下であることを特徴とする、板厚30mm以下の非調質低降伏比高張力厚鋼板。

    Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
    ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
  2. 質量%で、
    C:0.12〜0.18%、 Si:0.05〜0.45%、
    Mn:1.2〜1.8%、 P:0.020%以下、
    S:0.005%以下、 Al:0.08%以下、
    Nb:0.005〜0.030%
    を含み、さらにCu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.34〜0.40%の範囲となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    表面及び裏面から板厚方向に板厚の1/8位置までの表裏層が、体積率で80%以上のマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含み、平均硬さで235〜290HVとなる組織を有し、
    板厚中央部を中心にして板厚の1/4の厚さの領域が、平均粒径が12μm以上のフェライトを体積率で50〜85%と、さらに平均粒径が37μm以下の第二相を含み、平均硬さで190HV以下となる組織を有し、
    引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下であることを特徴とする、板厚30mm以下の非調質低降伏比高張力厚鋼板。

    Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
    ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.030%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
  5. 鋼素材に、熱間圧延工程と、それに続く冷却工程とを施して、厚鋼板とする厚鋼板の製造方法において、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.12〜0.18%、 Si:0.05〜0.45%、
    Mn:1.2〜1.8%、 P:0.020%以下、
    S:0.005%以下、 Al:0.08%以下
    を含み、さらにCu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を、含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を1050〜1250℃に加熱し、表面温度で900〜1000℃の範囲での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が830〜900℃の範囲の温度である熱間圧延を施す工程であり、
    前記冷却工程が、前記熱間圧延終了後、770℃以上の温度から冷却を開始し、550〜670℃の範囲の温度まで平均冷却速度:10〜80℃/sで加速冷却する工程である、
    ことを特徴とする板厚30mm以下で引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.030%を含有する組成とすることを特徴とする請求項に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項またはに記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  8. 鋼素材に、熱間圧延工程と、それに続く冷却工程とを施して、厚鋼板とする厚鋼板の製造方法において、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.12〜0.18%、 Si:0.05〜0.45%、
    Mn:1.2〜1.8%、 P:0.020%以下、
    S:0.005%以下、 Al:0.08%以下、
    Nb:0.005〜0.030%
    を、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.34〜0.40%の範囲となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を1050〜1250℃に加熱し、表面温度で950〜1050℃の範囲での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が880〜920℃の範囲の温度である熱間圧延を施す工程であり、前記冷却工程が、前記熱間圧延終了後、770℃以上の温度から冷却を開始し、550〜670℃の範囲の温度まで平均冷却速度:35〜80℃/sで加速冷却する工程である、ことを特徴とする板厚30mm以下で引張強さ:550MPa以上、降伏比:80%以下を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。

    Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ‥‥(1)
    ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.10%、Cr:0.1〜0.3%、Mo:0.03〜0.10%、V:0.010〜0.080%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  10. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.003〜0.030%を含有する組成とすることを特徴とする請求項またはに記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  11. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項ないし10のいずれかに記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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