JP7213650B2 - フェライト系ステンレス鋼管、管端増肉構造体及び溶接構造体 - Google Patents
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この環境で起こる腐食は、隙間腐食ではなく、隙間環境で塩水や排ガス凝縮水が滞留しやすくなることにより促進される塩害腐食である。このように隙間部での腐食が促進される恐れがあるため、使用されるステンレス鋼としては、隙間部での耐塩害性に優れる鋼種が求められる。特に排気系部品では、腐食による穴あきは排気ガスの漏れに繋がるため、耐穴あき性の高い材料を適用することが重要となる。
A=[Cr]+[Si]+0.5[Mn]+10[Al]+15([Sn]+[Sb]) ・・・式(2)
特許文献5に記載の技術では、Sn、Sbを添加することで加熱後の耐食性を向上させているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
A=[Si]×[Sn]+0.014[Si] ・・・(1)
ここで[Si]、[Sn]は、それぞれSi、Snの質量%としての含有量である。
特許文献8に記載の技術では、排気系部品の加熱後の耐食性について開示しているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
A=[Mo]×[Sn] ・・・(1)
特許文献9に記載の技術では、排気系部品の加熱後の耐食性について開示しているが、管端増肉部の隙間構造における隙間間隔と塩害腐食との関係については述べられていない。
[1] 鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有し、
前記鋼母材部が、質量%で、
C:0.001~0.100%、
Si:0.01~5.00%、
Mn:0.01~2.00%、
P:≦0.050%、
S:≦0.0100%、
Cr:9.0~30.0%、
Sn:0.001~3.00%、
Ti:0.01~1.00%およびNb:0.01~1.00%の1種又は2種、Al:0.010~5.000%、
N:0.001~0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
前記鋼管部の管端に折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられ、前記管端増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧Cr2/{1000(Al+Si+Sn)}(式中のCr、Al、Si及びSnはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼管。
[2] さらに質量%で、
Ni:0.01~3.00%、
Mo:0.01~3.00%、
Cu:0.01~3.00%、
B:0.0001~0.0100%、
W:0.001~1.000%、
V:0.001~1.000%、
Sb:0.001~0.100%、
Co:0.001~0.500%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Mg:0.0001~0.0050%、
Zr:0.0001~0.0300%、
Ga:0.0001~0.0100%、
Ta:0.001~0.050%、
REM:0.001~0.100%
のうち何れか1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼管。
[3] 前記管端増肉部が、前記鋼管部に対して拡管または縮管されていることを特徴とする[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼管。
[4] [1]乃至[3]の何れか一項に記載のステンレス鋼管からなることを特徴とする管端増肉構造体。
[5] [4]に記載の管端増肉構造体の前記管端増肉部と、鋼管部材とが重ね隅肉溶接部により接合されてなることを特徴とする溶接構造体。
[6] 前記重ね隅肉溶接部の前記管端増肉部側の最大溶け込み深さが、前記鋼管部の肉厚tに対して0.3t~2.0tの範囲とされていることを特徴とする[5]に記載の溶接構造体。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、鋼部が、質量%で、C:0.001~0.100%、Si:0.01~5.00%、Mn:0.01~2.00%、P:≦0.050%、S:≦0.0100%、Cr:9.0~30.0%、Sn:0.001~3.00%、Ti:0.01~1.00%およびNb:0.01~1.00%の1種又は2種、Al:0.010~5.000%、N:0.001~0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、前記鋼部の管端に折り返し曲げ部からなる増肉部が設けられ、前記増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧Cr2/{1000(Al+Si+Sn)}(式中のCr、Al、Si及びSnはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすフェライト系ステンレス鋼である。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、さらに質量%で、Ni:0.01~3.00%、Mo:0.01~3.00%、Cu:0.01~3.00%、B:0.0001~0.0100%、W:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Sb:0.001~0.100%、Co:0.001~0.500%、Ca:0.0001~0.0050%、Mg:0.0001~0.0050%、Zr:0.0001~0.0300%、Ga:0.0001~0.0100%、Ta:0.001~0.050%、REM:0.001~0.100%のうち何れか1種または2種以上を含有することが好ましい。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼管は、さらに質量%で、Ni:0.01~3.00%、Mo:0.01~3.00%、Cu:0.01~3.00%、B:0.0001~0.0100%、W:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Sb:0.001~0.100%、Co:0.001~0.500%、Ca:0.0001~0.0050%、Mg:0.0001~0.0050%、Zr:0.0001~0.0300%、Ga:0.0001~0.0100%、Ta:0.001~0.050%、REM:0.001~0.100%のうち何れか1種または2種以上を含有することが好ましい。
ここで、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。REMは、これら希土類元素から選択される1種以上であり、REMの量とは、希土類元素の合計量である。
また、鋼管部の端部を径方向外側に折り曲げて増肉する場合と、径方向内側に折り曲げて増肉する場合が考えられるが、径方向外側に折り曲げて増肉する場合は、造肉箇所の内径は素管の鋼管部1aの内径と同じになる。一方、径方向内側に折り曲げて造肉する場合は、管端増肉部1bの外径は素管である鋼管部の外径と同じになる。
更に、管端増肉部1bを形成した後、次工程にて拡管または縮管を行う工法を採用してもよい。
(実施例1)
表1に示す組成の鋼を溶製した。特にSnはその効果を調べるため0.005、0.010、0.030、0.100%および0.300%の5水準とした。溶製した鋼に板厚4mmまで熱間圧延を施し、1050℃で1分間焼鈍を行い、酸洗を施した。その後、板厚0.8mmまで冷間圧延を施した。
従って、表1に示す結果から、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼管からなる管端増肉構造体では、隙間間隔d(μm)が、d≧Cr2/{1000(Al+Si+Sn)}の値(Cr、Al、Si及びSnはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすことで、最大孔食深さの小さい管端増肉構造体を提供できることがわかる。
表2Aに示す組成の鋼板を用いて、TIG溶接により直径60mmのフェライト系ステンレス鋼管を作製した。次いで、スピニング加工により、フェライト系ステンレス鋼管の端部を径方向内側に180°折り返すことで、長さ50mmの管端増肉部を作製した。以上により、直径が60mm、内側に折り返した端部(管端増肉部)の長さが50mmの管端増肉構造体を作製した。そして、折り返し部から60mmの長さで管端増肉構造体を切断した。
なお、管端増肉部における隙間部の隙間間隔は、スピニング加工の条件を調整することで種々の値とした。
即ち、本実施形態は産業上極めて有益である。
Claims (6)
- 鋼母材部と溶接部とからなる鋼管部を有し、
前記鋼母材部が、質量%で、
C:0.001~0.100%、
Si:0.01~5.00%、
Mn:0.01~2.00%、
P:≦0.050%、
S:≦0.0100%、
Cr:9.0~30.0%、
Sn:0.001~3.00%、
Ti:0.01~1.00%およびNb:0.01~1.00%の1種又は2種、Al:0.010~5.000%、
N:0.001~0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
前記鋼管部の管端に折り返し曲げ部からなる管端増肉部が設けられ、前記管端増肉部に形成される隙間間隔d(μm)が、d≧Cr2/{1000(Al+Si+Sn)}(式中のCr、Al、Si及びSnはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す)の関係を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼管。 - さらに質量%で、
Ni:0.01~3.00%、
Mo:0.01~3.00%、
Cu:0.01~3.00%、
B:0.0001~0.0100%、
W:0.001~1.000%、
V:0.001~1.000%、
Sb:0.001~0.100%、
Co:0.001~0.500%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Mg:0.0001~0.0050%、
Zr:0.0001~0.0300%、
Ga:0.0001~0.0100%、
Ta:0.001~0.050%、
REM:0.001~0.100%
のうち何れか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼管。 - 前記管端増肉部が、前記鋼管部に対して拡管または縮管されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼管。
- 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼管からなることを特徴とする管端増肉構造体。
- 請求項4に記載の管端増肉構造体の前記管端増肉部と、鋼管部材とが重ね隅肉溶接部により接合されてなることを特徴とする溶接構造体。
- 前記重ね隅肉溶接部の前記管端増肉部側の最大溶け込み深さが、前記鋼管部の肉厚tに対して0.3t~2.0tの範囲とされていることを特徴とする請求項5に記載の溶接構造体。
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