JP2020041268A - 地盤改良工法 - Google Patents
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図8における領域αは、拡大して図9で示されている。図9において、改良体10(図8)の外周縁部に係る凸部は符号A1で示されており、凹部は符号A2で示されている。ここで、改良体10の有効径D1は、相互に点対称な凹部A2、A2間の距離(直径)を基準にして設定される。
図9を、改良体10(図8)の円周方向(図8における円周方向と同じ)に展開した状態が図10で示されている。図10において、凸部A1と凹部A2の円周方向寸法(図10の左右方向寸法:凸部A1と凹部A2の幅寸法)は同一である。すなわち、図9、図10では、同一幅寸法の凸部A1と凹部A2が円周方向(図10の左右方向)に交互に連続して配置されており、隣接する凹部A2同士は凸部A1の幅寸法と等しい間隔を隔てて配置されており、隣接する凸部A1同士は凹部A2幅寸法と等しい間隔を隔てて配置されている。そして図10において、凸部A1と凹部A2の幅寸法を符号1PTで表示している。
上述した通り有効径D1は凹部A2を基準に設定するので、凸部A1は地中で固化しているにも拘らず、改良体10の有効径D1には寄与せず、無駄に固化された部分となってしまう。
また、ポンプの脈動を防止することが出来る液体加圧装置(特許文献3)も提案されているが、回転している噴射ロッドに設けられたノズルから流体物を噴射して原位置土を切削し撹拌して回転体状の改良体を造成する地盤改良工法に適用する旨は開示されておらず、上述した問題を解決することを意図するものではない。
ポンプの脈動により、ポンプの吐出流量、吐出圧が低下すると改良体外周縁部に凹部が形成され、ポンプの吐出流量、吐出圧が増加すると改良体外周縁部に凸部が形成される。
そして発明者は、その様なポンプの脈動により形成される改良体外周縁部の凹凸について、凹部に凸部を重畳させれば、改良体外周縁部は凸部の外端に漸近し、改良体の有効径を拡大出来ることを見出した。
回転している噴射ロッド(1)に設けられたノズル(N)から流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法において、
流体物の供給系統(2)にはポンプ(P)が介装されており、
前記ポンプ(P)の脈動に起因して改良体の外周縁部には凹部(A2)及び凸部(A1)が形成され、先行して形成される凹部(A2)に、後行して形成される凸部(A1)が重畳し、改良体の有効径を拡大することを特徴としている。
ここで、改良体(10)の円周方向において隣接する凸部(A1)同士の間隔或いは隣接する凹部(A2)同士の間隔、幅寸法或いは位置関係を、本明細書では「位相」と表現する場合がある。
複数の供給系統(例えば2系統:2−1、2−2)の何れか(例えば供給系統2−1)を経由して何れかのノズル(例えばN5)からの流体物噴流毎に、前記凹部(A2)及び凸部(A1)の間隔が変動している(位相がずれている)のが好ましい。
或いは、改良体造成の施工仕様と、ポンプ(P)の特性値に加えて、前記凹部(A2)及び凸部(A1)の間隔は、凸部(A1)と凹部(A2)の幅(改良体周方向寸法)の比率に基づいて決定されるのが好ましい。
ここで、改良体造成の施工仕様としては、噴射用ロッド(1)の引上げ速度、繰り返し回数、引上げピッチが選択されるのが好ましい。またポンプ特性値としては、ポンプ(P)の回転数が選択されるのが好ましい。
上記方法で凹凸或いは角の形成が抑制出来れば、改良体外周面は平坦(平滑)に漸近し、改良体の有効径が拡大する。
そのため、本発明により造成された改良体(10)の有効径(D2)は、図9で示す従来技術における凹部A2の「谷」を基準とする有効径D1に比較して大きくなる。前記の重畳を複数回行うことで、本発明による有効径(D2)はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、本発明による有効径はさらに拡大する。
その様な場合においても、先行して形成される凹部(A2)に後行して形成される凸部(A1)が重畳される様になれば、改良体(10)の外周面は平坦(平滑)に漸近する。そして、改良体(10)の有効径は、凹部(A2)の「谷」に相当する箇所を基準とせずに、凸部(A1)の「山」(外周端面)方向に移行して決定されることになる。そのため、改良体(10)の有効径は、従来技術における凹部(凹部A2の「谷」)を基準とする有効径に比較して大きくなる。このような場合にも、本発明における前記の重畳を複数回行うことで、有効径(D2)はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、有効径がさらに拡大する。
最初に、図1、図2を参照して、本発明の実施形態の原理を説明する。
ここで、図示の実施形態に係る地盤改良工法では、回転している噴射ロッド1(図3〜6参照)のノズルN(図3〜図6参照)から流体物(例えば、セメントミルク等の固化材、高圧エア)を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体10(図8参照)を造成している。前記流体物は供給系統(例えば、図6の供給系統2−1或いは2−2)を介して噴射ロッド1に供給され、前記供給系統にはポンプ(例えば図6のポンプP1或いはP2)が介装されている。
図1、図2では、上述の様に回転体状の改良体を造成する際に、改良体の外周縁部に形成される凸部と凹部を重畳する原理を模式的に示している。
図1において、符号「プラス(+)」は、図1上方の実線で示す位相と、図1下方の点線で示す位相を重畳し、凹部A2に凸部A1を重畳することを意味している。
図1、図2では簡略化のため、凸部A1(A11、A12)或いは凹部A2(A21、A22)の幅寸法及び間隔は、全く同一になっている。しかし、実際の施工においては、凸部A1(A11、A12)或いは凹部A2(A21、A22)の幅寸法及び間隔は同一ではなく、異なっている場合が多い。
図1上方の実線で示す位相と、図1下方の点線で示す位相を重畳した状態が、図2で模式的に示されている。
図2において実線で示す凸部A11の領域は、図1において実線で示すA11と点線で示す凹部A22とが重畳しており、図2において点線で示す凸部A12の領域は、図1において実線で示す凹部A21と点線で示す凸部A12とが重畳している。
同一の脈動(供給系統におけるポンプの脈動)に起因して形成された凹凸(凸部A11、A12、凹部A21、A22)の位相は同一であるため、図2で示す様に、凹部A21、A22(図1)は、凸部A12、A11と重畳する。そのため、改良体の外周面(図2における上端縁部)の凹凸が抑制され、凸部A12、A11の半径方向最外方(図2の上縁部)を連結した平坦(平滑)な面(仮想面:図示せず)に漸近する。
図2から明らかな様に、図2における凸部A11、A12の上端面方向に移行して決定される有効径D2は、図9で示す従来技術における凹部A2を基準とする有効径D1に比較して大きい。すなわち、凹部A21、A22(図1)と凸部A12、A11を重畳して造成された改良体は、従来技術で造成された改良体に比較して有効径が大きくなる(D2>D1)。前記の重畳を複数回行うことで、有効径D2はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、有効径はさらに拡大する。
そして上述した様に、凸部A1(A11、A12)、凹部A2(A21、A22)が形成されるのは、供給系統におけるポンプの脈動に起因している。
図3で示す様に、噴射用ロッド1の外周における2箇所の位置(直径方向両端近傍の位置)には、固化材噴射用の一対のノズルN1、N2が設けられている。ノズルN2の位置は、ノズルN1のロッド中心点Oに対して点対称な位置Nn1(図3において、点線で示す位置)から、噴射用ロッド1の回転方向(矢印CW方向)とは反対方向(反時計方向CCW方向)に、中心角δ1で示す分だけ偏奇している。
そのため、ノズルN2を中心角δ1だけ偏奇させることによって、ノズルN2から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域に造成される改良体の外周縁部の凸部A1、凹部A2(図1、図2)の位相は、ノズルN1から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域に造成される改良体の外周縁部の凸部A1、凹部A2の位相に対して、凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)の分だけ位相が遅れる(偏奇する)ことになる。
凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)の分だけ位相が遅れる(偏奇する)ため、ノズルN1から噴射される噴流で形成される凹凸の位相と、ノズルN2から噴射される噴流で形成される凹凸の位相は、図2に示す様に重ね合わせられて凹凸の形成が抑制される。そして改良体の外周面(図2における上端縁部)が平坦(平滑)面に漸近すると、造成された改良体の有効径は、凸部A11、A12の上端方向に移行して決定され、造成される改良体の有効径D2(図2)が大きくなる。
一方、図3の左側半分では、ノズルN2から固化材噴流を噴射した領域をノズルN1から噴射した固化材噴流で切削、撹拌、混合することになり、ノズルN1からの噴流で形成された凹凸の位相が、先行するノズルN2からの噴流で形成された凹凸の位相に比較して、凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)の分だけ速くなる。
そのため、図3における右半分の領域においても、左半分の領域においても、凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)の分だけ、ノズルN1、N2から噴射される噴流で形成される凹凸が偏奇し、当該偏奇した二つの凹凸の位相が重畳され、改良体の外周面(図2における上端縁部)に形成される凹凸は抑制される。
図4の第2実施形態においては、噴射用ロッド1が半回転する度毎に当該回転を一時的に(1瞬間だけ)停止して、再度(同方向に)回転する。噴射用ロッド1の回転(矢印CW)を停止する時間は、回転を停止しない場合に各ノズルが存在した位置Nn3、Nn4(図4では点線で示す)に対して、中心角δ2だけに位相が遅れるのに相当する時間であり、中心角δ2は凸部A1、凹部A2(図1、図2参照)の位相における凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)に相当する角度である。
噴射用ロッド1が半回転する度毎に当該回転を一時的に(1瞬間だけ)停止することにより、図4で示す様に中心角δ2に相当する遅れが発生し、停止前にノズルN3、N4から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域の凹凸の位相と、停止後に回転を再開してノズルN3、N4から噴射される固化材噴流で切削、撹拌、混合される領域の凹凸の位相は、凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)の分だけ偏奇する(位相が遅れる)。
そのため、図4の第2実施形態においても、ノズルN3、N4から噴射される噴流で形成される凹凸が重畳され、改良体の外周面(図2における上端縁部)に形成される凹凸は抑制され、有効径D2(図2)が大きくなる。前記の重畳を複数回行うことで、D2はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、有効径はさらに拡大する。
第2実施形態におけるその他の構成、作用効果は、図3の第1実施形態と同様である。
図5において、噴射用ロッド1は当該ロッド1の中心Oに対して点対称に配置された2つのノズルN5、N6を備えている。
第3実施形態では2系統の固化材供給系統2を有しており、第1のノズルN5には第1の固化材供給系統2−1が連通しており、第2のノズルN6には第2の固化材供給系統2−2が連通している。
一方、第2の固化材供給系統2−2は、第2の固化材供給源3−2、第2のポンプP2を備えており、噴射ロッド1を駆動する回転掘削機構4を介して、噴射ロッド1に接続されている。そして第2の固化材供給系統2−2は、ロッド1に配置された第2のノズルN6に接続されている。
ここで、第1及び第2のポンプP1、P2の脈動の相違等に起因して、第1の固化材供給系統2−1を経由して第1のノズルN5から噴射される固化材噴流により切削、撹拌、混合される領域の凹凸の位相と、第2の固化材供給系統2−2を経由して第2のノズルN6から噴射される固化材噴流により切削、撹拌、混合される領域の凹凸の位相は、単一の凸部A1或いは凹部A2の幅寸法(隣接する凸部A1同士或いは隣接する凹部A2同士の間隔)の分だけ偏奇して設定されている。
そして、図5、図6の第3実施形態においても、第1のノズルN5、第2のノズルN6から噴射される噴流で形成される凹凸は重ね合わせられ(重畳され)、改良体の外周面(図2における上端縁部)に形成される凹凸は抑制され、有効径D2(図2)が大きくなる。前記の重畳を複数回行うことで、D2はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、有効径はさらに拡大する。
第3実施形態におけるその他の構成、作用効果は、図3、図4の実施形態と同様である。
しかし、改良体外周面の凹部と凸部の幅寸法が同一ではない場合も存在する。
図7は、図3〜図6の各実施形態の変形例に相当し、凸部A1の幅寸法B(図7の上下方向寸法)に対して、凹部A2Aの幅寸法(図7の上下方向寸法)が2倍(寸法2B)である場合を示している。
この様な場合は、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて対応することが出来る。
具体的には、図3の第1実施形態に係る噴射用ロッドを、図4の第2実施形態で示す様に、半回転ごとに一定時間停止して、再回転する。それにより、噴射ロッドが回転する度毎に、二つの凸部A1が凹部A2Aに重畳して、幅寸法「B×2=2B」の凹部A2Aが二つの凸部A1で充填される。
その結果、2つのノズルから噴射される噴流で形成される凹凸は重ね合わせられ、改良体の外周面(図2における上端縁部)に形成される凹凸は抑制され、有効径D2(図2)が大きくなる。前記の重畳を複数回行うことで、D2はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、有効径はさらに拡大する。
その様に構成すれば、第1のノズルN5から噴射される噴流がどの様な凹凸の位相であっても、それと相補的な凹凸の位相が第2のノズルN6から噴射される噴流で構成されるので、図1における実線の位相と点線の位相と同様な関係となり、両者が重畳されることにより、改良体の外周面(図2における上端縁部)に形成される凹凸は抑制され、有効径D2(図2)が大きくなる。前記の重畳を複数回行うことで、D2はさらに凸部(A1:A11、A12)の外周端面に漸近していき、有効径はさらに拡大する。
図7に示す変形例におけるその他の構成、作用効果は、図3〜図6の実施形態と同様である。
或いは、改良体造成の施工仕様と、ポンプPの特性値に加えて、凸部A1と凹部A2の幅(改良体周方向寸法)の比率に基づいて決定される。
ここで、改良体造成の施工仕様としては、噴射用ロッド1の引上げ速度、繰り返し回数、引上げピッチがある。またポンプ特性値としては、ポンプPの回転数がある。
その様な場合においても、先行して形成される凹部A2に、後行して形成される凸部A1が重畳されて、凸部A1が凹部A2と重なり合えば、改良体10の外周面は平坦(平滑)に漸近する。そして、改良体10の有効径は、凹部A2の「谷」に相当する箇所を基準にするのではなく、凸部A1の「山」(外周端面)方向に移行して決定されることになり、改良体10の有効径は、従来技術における凹部(凹部A2の「谷」)を基準とする有効径に比較して大きくなる。
2、2−1、2−2・・・固化材供給系統(流体物供給系統)
10・・・改良体
A1・・・凸部
A2・・・凹部
N、N1、N2、N3、N4、N5、N6・・・ノズル
P、P1、P2・・・ポンプ
Claims (6)
- 回転している噴射ロッドに設けられたノズルから流体物を噴射して原位置土を切削し、撹拌して、回転体状の改良体を造成する地盤改良工法において、
流体物の供給系統にはポンプが介装されており、
前記ポンプの脈動に起因して改良体の外周縁部には凹部及び凸部が形成され、先行して形成される凹部に、後行して形成される凸部が重畳し、改良体の有効径を拡大することを特徴とする地盤改良工法。 - 前記噴射ロッドに1対のノズルが設けられ、一方のノズルは他方のノズルの噴射ロッドの中心軸に対して対称な位置から偏奇した位置に配置され、その偏奇量は前記凹部及び凸部の間隔に対応して決定される請求項1の地盤改良工法。
- 前記噴射ロッドの回転速度が変動し、回転速度が変動した後の各ノズルの位置は回転速度が変動しない場合に各ノズルが存在した位置に対して所定の中心角だけ変位し、当該中心角が前記凹部及び凸部の間隔に対応する様に、回転速度が制御される請求項1、2の何れかの地盤改良工法。
- 前記噴射ロッドには複数のノズルが設けられ、噴射ロッドに流体物を供給する供給系統が複数設けられており、複数の供給系統の各々は複数のノズルの何れかに接続されており、
複数の供給系統の何れかを経由して何れかのノズルからの流体物噴流毎に、前記凹部及び凸部の間隔が変動している請求項1に記載の地盤改良工法。 - 前記凹部及び凸部の間隔は、改良体造成の施工仕様と、ポンプの特性値に基づいて決定される請求項1〜4の何れか1項に記載の地盤改良工法。
- 前記凹部及び凸部の間隔は、凸部と凹部の幅の比率に基づいて決定される請求項5に記載の地盤改良工法。
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